説明

投影システムの倍率を計測する方法、デバイス製造方法およびコンピュータプログラム製品

【課題】投影リソグラフィで使用するための、投影システムの倍率を決めるための改良された方法を提供する。
【解決手段】投影システムにより投影された空間像を検知できるイメージセンサを有するリソグラフィ投影装置の投影システムの倍率を計測する方法であって、該方法が、二成分マーカの一成分の像を投影するステップであって、該二成分マーカはその二つの成分のプリント間のオーバーレイ誤差に対して感度を有するステップと投影された像における二成分マーカの該成分の位置をイメージセンサにより計測するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、リソグラフィ装置用の投影システムの倍率を計測する方法、リソグラフィ装置によるデバイス製造方法、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板へ、通常は基板のターゲット部分へ施す機器であり、例えば集積回路(IC)を製造する際に使用することができる。そのような場合、別名マスクまたはレチクルと称されるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に回路パターンを形成させることができる。このパターンは基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば一つまたは幾つかのダイの部分を含む)へ転写することができる。パターンの転写は、代表的には、基板上に設けられた放射線感応性物質(レジスト)の層へ、結像を介して行われる。一般に、単一の基板は、連続してパターニングされる隣接するターゲット部分のネットワークを含む。公知のリソグラフィ装置には、パターン全体をターゲット部分へ1回で露光することにより各ターゲット部分が照射されるいわゆるステッパと、放射ビームを介してパターンを所定方向(「走査」方向)に走査すると同時に基板をこの方向に対して平行または逆平行に同期走査することにより各ターゲット部分が照射されるいわゆるスキャナとを含む。また、パターンを基板へインプリントすることによって、パターニングデバイスからパターンを基板に転写することも可能である。
【0003】
[0003] リソグラフィ装置によるデバイス製造方法では、歩留まり、すなわち適切に製造されるデバイスの割合の重要な要素として、あらかじめ形成されている層に対して層がプリントされる精度がある。これはオーバーレイとして知られており、オーバーレイ誤差バジェットはしばしば10nm以下とされる。このような精度を達成するには、基板が、プリントすべきマスクパターンに対して高い精度で位置合わせされなければならない。
【0004】
[0004] 基板およびマスクを位置合わせするための或る公知のプロセスはオフラインアライメントとして既知であり、計測ステーションと露光ステーションとを別々に有するリソグラフィ装置において実行される2段階のプロセスである。まず、計測ステーションにて、基板テーブル上に設けられた基準として知られている一つ以上の固定マーカに対して、基板上にプリントされる複数の(例えば16の)アライメントマーカの位置が計測され記憶される。その後、基板がやはりそこにしっかりと固着されている基板テーブルが露光ステーションに移送される。アライメントセンサにより検出可能なマーカと同様にこの基準も透過イメージセンサ(TIS)を含む。このセンサは、基板へ露光すべきマスクパターン内に含まれるマスクマーカの空間像の位置を空間に設置するのに使用される。マスクマーカの像に対するTISの位置、したがって固定マーカの位置が既知であり、また、固定マーカに対する基板アライメントマーカの位置が既知であるので、マスクパターンに対して基板を適切に露光するのに所望される位置に基板を位置決めすることが可能である。
【0005】
[0005] プリントされる層のオーバーレイを決める際の別の重要な要素として、投影システムの倍率、具体的にはその公称値1/4または1/5からの偏差がある。通常、投影システムの倍率はシステムの要素の位置を調整することによって調整できるので、周期的に倍率を計測し、適宜調整するのが普通である。このことは、二つ以上の離間したアライメントマーカを1回の露光でプリントし、集積アライメントシステムによりそれらの相対位置を計測することにより行うことができる。予測される間隔からの偏差が倍率誤差を示す。
【0006】
[0006] 品質管理手段として、デバイス層をプリントする際には、一つ以上のオーバーレイマーカもプリントすることが一般的である。オーバーレイマーカは二つ以上の成分を有し、これらの成分は、別々のデバイス層内または同一の層上に、ただし重複フィールドを用いてプリントされる。オフラインツール、例えば高倍率顕微鏡または散乱計においてオーバーレイマーカ全体を調べる場合、これらの二つの成分がプリントされた層または重複フィールドを相対的に位置決めする際の誤差、すなわちオーバーレイ誤差が明白となるように、オーバーレイマーカは設計されている。複数のオーバーレイマーカが単一のデバイスにプリントされる場合、アライメントマーカの場合と同様に、投影システムの倍率は、オーバーレイマーカの間隔を計測することにより決定することができる。幾つかのオーバーレイマーカは倍率誤差に敏感な成分であってもよく、またはそれを有することができる。
【0007】
[0007] したがって、リソグラフィ装置の投影システムの倍率の、独立した二つの計測(つまり一つはアライメントマーカから、一つはオーバーレイマーカから)を得ることが可能である。これらの二つの計測が異なる場合、何が投影システムの「真の」倍率であるかを知ることは困難である。このことは、同一の種類の異なる例とは対照的に、異なる装置、特に、異なる種類の装置でプリントされた層を重ねる必要がある場合、特に重要となり得る。多くの事例において、特に軸外照明を使用してデバイス層がプリントされる場合、倍率は例えば使用される形状、密度、および照明設定等の要因に依存するので、倍率の独立した二つの計測は異なることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008] 従って、投影リソグラフィで使用するための、投影システムの倍率を決めるための改良された方法を提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009] 本発明の一側面によれば、投影システムにより投影された空間像を検知できるイメージセンサを有するリソグラフィ投影装置の投影システムの倍率を計測する方法であって、該方法が、
【0010】
[0010] 二成分マーカの一成分の像を投影するステップであって、該二成分マーカはその二つの成分のプリント間のオーバーレイ誤差に対して感度を有するステップと、
【0011】
[0011] 投影された像における二成分マーカの該成分の位置をイメージセンサにより計測するステップと、を含む方法が提供される。
【0012】
[0012] 本発明の一側面によれば、投影システムと、該投影システムにより投影された空間像を検知できるイメージセンサとを有するリソグラフィ投影装置によるデバイス製造方法であって、該方法が
【0013】
[0013] 二成分マーカの一成分の像を投影するステップであって、該二成分マーカはその二つの成分のプリント間のオーバーレイ誤差に対して感度を有するステップと、
【0014】
[0014] 投影された像における二成分マーカの該成分の位置をイメージセンサにより計測するステップと、
【0015】
[0015] 計測された位置から投影システムの倍率を示す値を決定するステップと、
【0016】
[0016] 像を基板上に投影するステップと、を含む方法が提供される。
【0017】
[0017] 本発明の一側面によれば、投影システムと、該投影システムにより投影された空間像を検知できるイメージセンサとを有するリソグラフィ装置を制御し、投影システムの倍率を計測する方法を実行するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品であって、該方法が、
【0018】
[0018] 二成分マーカの一成分の像を投影するステップであって、該二成分マーカはその二つの成分のプリント間のオーバーレイ誤差に対して感度を有するステップと、
【0019】
[0019] 投影された像における二成分マーカの該成分の位置をイメージセンサにより計測するステップと、を含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[0020] 次に、本発明の実施形態を単なる例示として、添付の略図を参照して説明する。図中、対応する参照符号は対応する部分を示している。
【0021】
[0028] 図1は、本発明の1実施形態によるリソグラフィ装置を略示する。この装置は、
【0022】
[0029] 放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調節するように構成されている照明システム(照明器)ILと、
【0023】
[0030] パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構成されているとともに、あるパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1ポジショナPMに接続されている支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
【0024】
[0031] 基板(例えばレジストコートされたウェーハ)Wを保持するように構成されているとともに、あるパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2ポジショナPWに接続されている基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、
【0025】
[0032] パターニングデバイスMAにより放射ビームBに伝えられるパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば一つ以上のダイを含むもの)へ投影するように構成されている投影システム(例えば屈折(型)投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0026】
[0033] 照明システムは、放射の誘導、成形、または制御を行なうために、多様な種類の光学部品、例えば屈折、反射、磁気、電磁気、静電気、またはその他の種類の光学部品、あるいはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0027】
[0034] 支持構造はパターニングデバイスの重量を支持して(すなわち支えて)おり、パターニングデバイスの配向、リソグラフィ装置の設計、およびその他の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境内で保持されるかどうか等に応じた方法でパターニングデバイスを保持する。支持構造は、機械式、真空式、静電式、あるいはその他のクランプ技術を使用してパターニングデバイスを保持することができる。支持構造は、例えば固着可能または必要に応じて可動とすることのできるフレームまたはテーブルとすることができ、パターニングデバイスが例えば投影システムに関して確実に所望の位置にあるようにすることができる。本明細書において「レチクル」または「マスク」という用語は、より総括的な用語である「パターニングデバイス」と同義とみなすことができる。
【0028】
[0035] 本明細書において使用する用語「パターニングデバイス」は、例えば基板のターゲット部分にパターンを生成するために、その断面にパターンを有する放射ビームを伝えるのに使用可能なデバイスを参照するものとして広範に解釈されるべきである。放射ビームに伝えられるパターンは、例えばパターンが位相シフト特徴(特徴形体)またはいわゆるアシスト特徴を含む場合には、基板のターゲット部分内で所望のパターンに正確には一致しなくてもよいということに留意すべきである。一般的に、放射ビームに与えられるパターンは、ターゲット部分で生成されるデバイス内の特定の機能層、例えば集積回路に相当することになる。
【0029】
[0036] パターニングデバイスは透過性または反射性とすることができる。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルを含む。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、例えばバイナリ、交互位相シフト、減衰位相シフト等のマスク型のみならず、種々のハイブリッドマスク型も含む。プログラマブルミラーアレイの1例は小型ミラーのマトリクス配置を用いており、入射する放射ビームを様々な方向に反射できるようにミラーの各々を個々に傾けることができる。傾けられたミラーは、ミラー・マトリクスにより反射された放射ビームにパターンを伝える。
【0030】
[0037] 本明細書において使用する用語「投影システム」は、露光放射が使用されるのに適したものとしての、あるいはその他の要因、例えば浸液の使用、または真空の使用に適したものとしての、屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁光学システム、静電光学システム、またはそれらの任意の組み合わせを含む任意の種類の投影システムを包含するものとして広範に解釈されるべきである。本明細書における用語「投影レンズ」のいかなる使用も、より総括的な用語「投影システム」と同義と見なすことができる。
【0031】
[0038] ここで示すように、装置は透過型(例えば透過性マスクを用いる)である。別法として、装置は反射型(例えば上記で参照した種類のプログラマブルミラーアレイを用いるか、または反射性マスクを用いる)とすることもできる。
【0032】
[0039] リソグラフィ装置は、二つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(および/または二つ以上のマスクテーブル)を有するタイプとすることができる。このような「多段」機器では、付加的なテーブルを並行して使用することができ、または、一つ以上のテーブルを露光に使用しつつ、一つ以上の他のテーブル上で予備のステップを実行することができる。
【0033】
[0040] リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するゆおに、基板の少なくとも一部を、比較的高い屈折率を有する液体(例えば水)で覆うことができるタイプでもよい。浸液は、リソグラフィ装置内の他の空間、例えばマスクと投影システムとの間に適用することもできる。投影システムの開口数を増加させるための液漬技術は当技術分野ではよく知られている。本明細書において使用する用語「液浸」は、構造体(例えば基板)が液体に浸水される必要があることを意味しているのではなく、露光中に投影システムと基板との間に液体を配置するというだけの意味である。
【0034】
[0041] 図1を参照すると、照明器ILは放射源SOからの放射ビームを受け取る。例えば、放射源がエキシマレーザである場合、放射源とリソグラフィ装置とは個別の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を成すとは見なされず、放射ビームは、例えば好適な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを有するビーム送出システムBDにより放射源SOから照明器ILへと通過する。その他の場合、例えば放射源が水銀ランプである場合には、放射源はリソグラフィ装置の一体部品とすることができる。放射源SOおよび照明器ILは、必要であればビーム送出システムBDと共に、放射システムと称することもできる。
【0035】
[0042] 照明器ILは、放射ビームの角度強度分布を調整するためのアジャスタADを含むことができる。一般に、照明器の瞳面における強度分布の少なくとも外側および/または内側の半径方向広がり(通常はそれぞれσ‐outerおよびσ‐innerと称される)は調整することができる。さらに、照明器ILは、その他の種々の部品、例えば積分器INおよびコンデンサCOを含むことができる。照明器を使用して放射ビームを調節し、その断面に所望の均一性および強度分布を得ることができる。
【0036】
[0043] 放射ビームBは、支持構造体(例えばマスクテーブルMT)上に保持されたパターニングデバイス(例えばマスクMA)に入射し、パターニングデバイスによりパターニングされる。放射ビームBは、マスクMAを通過したあと投影システムPSを通り、この投影システムがビームを基板Wのターゲット部分Cへ集束する。基板テーブルWTは、第2ポジショナPWおよび位置センサIF(例えば干渉デバイス、リニアエンコーダ、または容量センサ)により、例えば放射ビームBの経路中に様々なターゲット部分Cを位置決めするよう正確に移動することができる。基板アライメントマーカは二つのみ示されているが、これを増やして使用し、基板の場所の測定を改良することができる。同様に、第1ポジショナPMおよび別の位置センサ(図1では明確に示していない)を使用して、例えばマスクMAをマスクライブラリから機械的に取り出した後、あるいは走査中に、該マスクを放射ビームBの経路に対し正確に位置決めすることができる。一般に、マスクテーブルMTの移動は、第1ポジショナPMの一部を成すロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)により実現することができる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2ポジショナPWの一部を成す長ストローク・モジュールおよび短ストローク・モジュールにより実現することができる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTはショートストロークアクチュエータのみに接続しあるいは固定することができる。マスクMAおよび基板Wは、マスクアライメントマーカM1、M2および基板アライメントマーカP1、P2により位置合わせすることができる。図示する基板アライメントマーカは専用のターゲット部分を占めるが、これをターゲット部分間の空間内に設置してもよい(これらは罫書き線アライメントマーカとして公知である)。同様に、マスクMA上に二つ以上のダイが設けられている状況では、マスクアライメントマーカはダイ間に設置してもよい。
【0037】
[0044] 図示する装置は、以下のモードのうちの少なくとも一つにおいて使用可能である。
【0038】
[0045] 1.ステップモードでは、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTが基本的に静止されている一方、放射ビームに伝えられたパターン全体が、ターゲット部分Cへ1回で投影される(すなわち1回の静的露光)。次に、基板テーブルWTがX方向および/またはY方向にシフトされて、異なるターゲット部分Cを露光することができる。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズにより、1回の静的露光で結像されるターゲット部分Cの寸法が制限される。
【0039】
[0046] 2.スキャンモードでは、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTが同期走査される一方、放射ビームに伝えられたパターンがターゲット部分Cへ投影される(すなわち1回の動的露光)。マスクテーブルMTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの倍率(縮小率)および像反転特性によって決めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、1回の動的露光におけるターゲット部分の(非走査方向における)幅が限定されるのに対して、スキャン動作の長さによってターゲット部分の(走査方向における)高さが決定される。
【0040】
[0047] 3.別のモードでは、マスクテーブルMTが、プログラマブルパターニングデバイスを保持しつつ基本的に静止されており、基板テーブルWTが移動または走査されながら、放射ビームに与えられたパターンがターゲット部分Cへ投影される。この方式では一般にパルス状の放射源が用いられ、プログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの各移動後に、または走査中に連続する放射パルスの間で、必要に応じて更新される。この動作モードは、プログラマブルパターニングデバイス、例えば前述したような種類のプログラマブルミラーアレイを活用するマスクなしリソグラフィに容易に適用することができる。
【0041】
[0048] 上述した使用モード、または全く異なる使用モードに関する組み合わせおよび/または変更を用いることもできる。
【0042】
[0049] この装置はアライメントセンサASも含み、このアライメントセンサはデュアルステージ装置の計測ステーションに搭載することができ、この計測ステーションは、基板W上にプリントされたアライメントマーカおよび基板テーブル上に設けられた固定マーカ(基準)を検出するのにも使用される。このことは図2に示されており、基板上にプリントされた4つのアライメントマーカP1〜P4と、基板テーブルWT上に設けられた基板プレートTIS1、TIS2上に設置されている4つの固定マーカとが示されている。基板テーブルは、投影システムの特性(例えば収差)を計測する干渉システム用のセンサIAと、投影システムPSにより投影された像の特性を検出するその他のシステム用のセンサを上に有することができる。基板テーブルWTを、変位計測システムIFによりその移動した跡を追いながらアライメントセンサASのもとで走査することにより、基板プレートTIS1、TIS2上に設置された4つの固定マーカに対する基板マーカP1〜P4の破線矢印で示す位置を決定することができる。
【0043】
[0050] 二つの基板プレートTIS1、TIS2は二つのイメージセンサを組み込んでおり、これらのイメージセンサを使用すれば、空間像を通してイメージセンサを走査することによりマスクマーカの像の場所を決定することができる。マスクマーカおよび固定マーカの像の相対位置はこのように決定することができ、あらかじめ得られた基板マーカの相対位置により、基板を、投影された像に対して所望する任意の位置に高い精度で位置決めすることが可能になる。
【0044】
[0051] 図3は、本発明の一実施形態に使用できるアライメントマーカP1を示す。図からわかるように、アライメントマーカは、正方形に配置された4つの格子(x方向に対して平行に位置合わせされた1対の格子、およびy方向に対して平行に位置合わせされた1対の格子)を含む。各対のうち、一方は所定のピッチ(例えば16μm)を有し、他方は所定のピッチの11/10倍のピッチ(例えば17.6μm)を有する。各格子から回折する放射を別々に検知するセンサに対してマーカを走査することにより、各格子に関連する出力のピークが一致する時期を検出することによってマーカの中心を検出することができる。このようなマーカを検出するのに使用できる軸外アライメントシステムのさらなる詳細は、EP0906590Aに示されており、その文献を参照することによってその全体が組み込まれる。
【0045】
[0052] 上述のイメージセンサは同様のやり方で作動する。これを図4に示す。各イメージセンサは3つの感光性検出器11〜13を含む。感光性検出器11は不透明(例えばクロム)層により被覆されており、この層に、y方向に延びる線を有する格子が縁取られている。一方、検出器13は同様のものであるが、格子の線はx方向に延びている。残りの感光性検出器12は層で被覆されてはいない。これらの感光性検出器にわたって提供された格子に対応する格子の空間像を通して検出器が走査されると、マーカ格子の像の明るい部分と不透明層にエッチングされた格子のアパーチャとが一致したりしなかったりするのと同時に検出器の出力が変動することになる。出力信号の適合がピークに達するとxおよびyにおける各格子の中心が検出される。Z軸に沿った様々な位置でマーカを通してセンサを走査することにより、検出器の出力の変動が最大振幅となるレベルを検出して、最良の集束の平面を検出することができる。被覆されていない中央の検出器12を使用すれば、空間像における格子の大まかな位置を公知の捕捉手順で見つけることができ、また、この検出器を使用して、格子検出器からの信号を正規化し、照明システムILの出力の変化に起因する変動、例えば放射源の出力変動に起因する変動を除去することができる。
【0046】
[0053] 従来のオーバーレイマーカkを図5に示す。これはボックスインボックス式として知られている種類であり、外側開ボックスkoおよび内側閉ボックスまたは正方形kiである二つの成分を含み、これらがデバイスの別々の層内または異なった、ただし重複するフィールド内にプリントされる。現像の後および/または最終のボックス(内側、外側またはその両方)がプリントされる層を処理した後、左側のdx1、右側のdx2、上側のdy1、下側のdy2上の外側ボックスの内周と内側の正方形の外周の間隔の(平均)値が、例えば走査電子顕微鏡等の高倍率顕微鏡により計測される。次に、内側および外側ボックスがプリントされた層またはフィールド間のオーバーレイ誤差が、x方向では(dx1−dx2)/2、y方向では(dy1−dy2)/2で与えられる。オーバーレイマーカのその他の形体が既知であるので、それらは本発明の方法において使用することができる。
【0047】
[0054] アライメントマーカとオーバーレイマーカとは共に、投影システムの倍率の計測を導くのに使用することができる。一般に、例えば罫書き層内の各デバイスの外側の周りで離間された単一のマスク像から、各種類のマーカの複数の例がプリントされることになる。基板上にプリントされるものとしてのマーカの間隔をオフラインツールにより計測することにより、あるいは、一体型センサを使用するアライメントマーカの場合の空間像においては、マスク内のマーカの相対位置が既知であることから、投影システムの倍率は簡単な計算により導くことができる。倍率は実際にはあらゆる方向で同一ではないことがあり、フィールド全体で均一ではないことがあるということに留意すべきである。その故に、本明細書において使用する用語「倍率」は、入手可能な情報を表すのに最も都合の良いものとしての、複数の値、マップ、またはマトリックスを参照することができる。
【0048】
[0055] 二つの異なるデバイスを有する或る実際の物体の同一パラメータを計測する際、必然的に、オフラインツールにより計測される倍率と、一体型センサにより計測される倍率とが異なることがある。これは、具体的には投影システムの倍率が、複数の要因、例えば形状、向きおよび密度のみならず照明モードにも依存し得るために起こり得る。そこで、倍率のどの値を適切と見なすかということに関する問題が存在する。多くの事例において、オフラインツールにより得られる値が適切と見なされることになる。というのも、これにより、異なるリソグラフィ装置間の比較が可能となるからである。
【0049】
[0056] 例えば、図5に示すような、オーバーレイマーカの成分の空間像の信頼できる検出を透過イメージセンサにより行うことができる。これは、例えば図4に示す特定のマーカの像を検出するために透過イメージセンサが最適化されているという事実にもかかわらず行うことができる。従って、空間像におけるオーバーレイマーカの成分の位置は、プレートTIS1、TIS2上に設置された透過イメージセンサにより得ることができ、上述したのと同じやり方で倍率の値を得ることができる。
【0050】
[0057] オーバーレイマーカの成分の空間像の検出は、感光性検出器11〜13の一つをこの空間像を通して走査し、その結果生じる信号を好適なアルゴリズムによって、マーカの正確な形状が検出されることおよび検出器が使用されることに応じて処理することにより行うことができる。例えば、最大出力信号を提供する、被覆されていない検出器12(本発明の具体的な実施形態において10〜40μmの範囲の辺を有する実質正方形である)を用いてボックスインボックス式マーカの中央ボックスの像を検出すると、検出器12は像を通して走査され、図7に示すような台形の出力信号を提供する。初めは出力は低く、像が検出されない。検出器の先端がボックスの像内へと動くにつれ、検出器全体が像の範囲内に入るまで検出器の信号が確実に上昇する。次に、検出器がボックスの像から出始め、出力信号が減少して低レベルになるまでは平坦部が存在する。台形の出力信号の幅は検出器の幅にも内側ボックスの幅にも左右される。直線を出力信号の二つの傾斜部に適合させ、それらの交点を計算することにより、像の中心の位置を得ることができる。
【0051】
[0058] 上述したように、オーバーレイマーカの正確な形状はボックスインボックス式マーカとは異なってもよいが、適合を容易にするために、基板レベルでの像は、センサがこの像を通して走査される方向(走査方向)に対して垂直な線について対称的であること、および/またはセンサよりも小型であることが望ましい。像は、マーカ全体というよりはむしろ複合マーカの簡易な特徴形状とすることができる。
【0052】
[0059] 透過イメージセンサによりオーバーレイマーカ成分から得られる倍率の値は、マスクアライメントマーカを検出する透過イメージセンサとオーバーレイマーカを検出するオフラインツールとにより従来どおり得られた値を結びつける。その故に、本発明の実施形態による倍率決定を用いて、現像後および/または基板の処理後にオフラインツールにより得られることになる倍率の早期予測を提供することができる。これにより、歩留まりおよび処理能力を改良しつつ、必要ならば露光前に是正処置を行うこと、例えば投影システム内部に調整可能な要素を用いて投影システムの倍率を調整することが可能になる。付加的な倍率値も、リソグラフィ装置を較正する際に、また倍率の問題および/またはオーバーレイ問題の原因を認識する際に有益である。
【0053】
[0060] したがって、図6に示すように、本発明の1実施形態による方法は、
【0054】
[0061] 操作S1にて、少なくとも一つのオーバーレイマーカの成分および少なくとも一つのマスクアライメントマーカの像を投影するステップと、
【0055】
[0062] 操作S2にて、少なくとも一つのオーバーレイマーカの成分および任意で少なくとも一つのマスクアライメントマーカの位置を計測するステップと、
【0056】
[0063] 操作S3にて、任意の是正処置が必要であるかどうか、またその場合、それを操作S4で実行するかどうかを決めるステップと、
【0057】
[0064] 操作S5にて、デバイスパターンと、少なくとも一つのオーバーレイマーカの成分および任意で少なくとも一つのアライメントマーカとをプリントするステップと、
【0058】
[0065] 操作S6にて、オフラインツールによりオーバーレイマーカを計測してとりわけ倍率の値を導くステップと、
【0059】
[0066] 操作S7にて、必要ならばリソグラフィ装置を較正または再較正するステップと、を含む。
【0060】
[0067] さらに、説明した方法は、投影システムの倍率の決定ばかりでなく、xおよびyへの並行移動(TxおよびTy)、ならびにレチクルのz軸の周りの回転(Rz)の決定にも適用することができる。
【0061】
[0068] 本文ではICを製造する際のリソグラフィ装置の使用を具体的に参照することが可能であるが、当然ながら、本明細書において説明されるリソグラフィ装置は、例えば集積光学システム、磁区メモリ用の誘導および検出パターン、フラットパネル・ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造など、他の応用例を有することができる。このような代替の応用例に関連して、本明細書における用語「ウェーハ」または「ダイ」のいかなる使用も、それぞれ、より総括的な用語「基板」または「ターゲット部分」と同義と見なすことができるということを当業者は理解するであろう。本明細書で参照される基板は、露光の前または後に、例えばトラック(通常はレジスト層を基板に塗布し、露光済みレジストを現像するツール)、計測ツールおよび/または検査ツールにおいて処理することができる。応用可能な場合、本明細書における開示内容は、このような基板処理ツールおよびその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、2回以上処理することができる。したがって、本明細書において使用する基板という用語は、何度も処理された層を既に含んでいる基板も参照することができる。
【0062】
[0069] 光学リソグラフィに関連して本発明の実施形態の使用を上で具体的に参照することができたが、本発明はその他の応用例、例えばインプリントリソグラフィに使用してもよく、状況が許せば光学リソグラフィに限定されないということが理解されよう。インプリントリソグラフィでは、基板上で生成されるパターンはパターニングデバイスのトポグラフィにより規定される。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層へ押し付けることができ、該基板上でレジストは、電磁放射、熱、圧力、またはそれらの組み合わせを与えることにより硬化される。パターニングデバイスはレジストから移動され、レジストの硬化後、そこにパターンが残る。
【0063】
[0070] 本明細書において使用する「放射」および「ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば波長が365nm、355nm、248nm、193nm、157nm、126nmであるか、あるいはそれらの近似値であるもの)、および極紫外(EUV)放射(例えば波長が5〜20nmの範囲内であるもの)だけでなく、粒子ビーム、例えばイオンビームまたは電子ビームを含むあらゆる種類の電磁放射を網羅する。
【0064】
[0071] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気および静電気光学部品を含む様々な種類の光学部品のうちの任意の一つまたはそれらの組み合わせを指す。
【0065】
[0072] 本発明の具体的な実施形態を上で説明したが、本発明は記載した以外の方法で実施することもできるということが理解されよう。例えば、本発明は、上で開示したような方法を記述する機械読取り可能な命令のうち一つ以上のシーケンス、あるいはこのようなコンピュータプログラムがそこに記憶されているデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気または光学ディスク)を含むコンピュータプログラムの形態をとることができる。
【0066】
[0073] 上記の説明は限定ではなく例示を目的としている。したがって、説明された本発明を、請求の範囲から逸脱することなく変更可能であるということが当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】[0021]本発明の1実施形態によるリソグラフィ装置を示す図である。
【図2】[0022]図1の装置の基板ステージを示す図である。
【図3】[0023]基板アライメントマーカを示す図である。
【図4】[0024]透過イメージセンサを示す図である。
【図5】[0025]オーバーレイマーカを示す図である。
【図6】[0026]本発明の1実施形態による方法を示す図である。
【図7】[0027]線を検出器の出力データに適合させ、マーカの中心を決定する一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影システムにより投影された空間像を検知できるイメージセンサを有するリソグラフィ投影装置の投影システムの倍率を計測する方法であって、
二成分マーカの一成分の像を投影するステップであって、前記二成分マーカはその二つの成分のプリント間のオーバーレイ誤差に対して感度を有するステップと、
前記投影された像における前記二成分マーカの前記成分の位置を前記イメージセンサにより計測するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記イメージセンサが、前記リソグラフィ投影装置の基板テーブル上に搭載されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記イメージセンサが複数の感光性検出器を含み、前記感光性検出器の少なくとも一つは、透過性部分により格子が形成されている不透明層を有する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記イメージセンサは、上に重なる格子を有しない感光性検出器を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記感光性検出器は上に重なる格子を有しなておらず、10〜40μmの範囲内の寸法形状を有する、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記イメージセンサが透過イメージセンサである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記センサが反射イメージセンサを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記二成分マーカがボックスインボックス式マーカである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
投影される前記像が第2の二成分マーカの一成分の像をさらに含み、計測するステップが反復されて前記第2の二成分マーカの前記成分の位置が計測される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記像が、デバイスの層の少なくとも一部の像をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
投影システムと、前記投影システムにより投影された空間像を検知できるイメージセンサとを有するリソグラフィ投影装置によるデバイス製造方法であって、前記方法が、
二成分マーカの一成分の像を投影するステップであって、前記二成分マーカは前記二つの成分のプリント間のオーバーレイ誤差に対して感度を有するステップと、
前記投影された像における前記二成分マーカの前記成分の位置を前記イメージセンサにより計測するステップと、
前記計測された位置から前記投影システムの倍率を示す値を決定するステップと、
前記像を基板へ投影するステップと
を含む方法。
【請求項12】
前記像を前記基板へ投影する前に、前記投影システムの倍率を調整するステップをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記二成分マーカのプリントされた像を現すために前記基板を現像するステップと、
前記二成分マーカの前記プリントされた像の位置をオフラインツールにより計測するステップと、
前記プリントされた像の前記計測された位置から前記投影システムの倍率を示す第2の値を決定するステップと
をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記リソグラフィ装置の一部を、前記投影システムの倍率を示す前記値により較正するステップをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
投影システムと、前記投影システムにより投影された空間像を検知できるイメージセンサとを有するリソグラフィ装置を制御し、前記投影システムの倍率を計測する方法を実行するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品であって、前記方法が、
二成分マーカの一成分の像を投影するステップであって、前記二成分マーカは前記二つの成分のプリント間のオーバーレイ誤差に対して感度を有するステップと、
前記投影された像における前記二成分マーカの前記成分の位置を前記イメージセンサにより計測するステップと
を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項16】
投影システムと、前記投影システムにより投影された空間像を検知できるイメージセンサとを有するリソグラフィ装置を制御し、デバイス製造方法を実行するプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品であって、前記方法が、
二成分マーカの一成分の像を投影するステップであって、前記二成分マーカは前記二つの成分のプリント間のオーバーレイ誤差に対して感度を有するステップと、
前記投影された像における前記二成分マーカの前記成分の位置を前記イメージセンサにより計測するステップと、
前記計測された位置から前記投影システムの倍率を示す値を決定するステップと、
前記像を基板へ投影するステップと
を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
透過イメージセンサを使用して、オーバーレイマーカの空間像の一部を検出するステップを含む方法。
【請求項18】
リソグラフィ投影装置内の基板テーブル上に搭載されたセンサを使用して空間像の一部の特性を検出するステップを含む方法であって、前記センサが、第1マーカの態様の透過性部分を有する不透明層を有し、特性が検出されるその前記空間像の前記一部が、前記第1マーカとは態様の異なる第2マーカの像である方法。
【請求項19】
投影システムにより投影された空間像を検知できるイメージセンサを有するリソグラフィ投影装置の投影システムの倍率を計測する方法であって、前記イメージセンサは前記装置の基板テーブル上に搭載されており、複数の格子を含むアライメントマーカに応じてパターニングされた不透明層を有する方法であり、前記方法が、
二成分マーカの一成分の像を投影するステップであって、前記二成分マーカが第1および第2ボックスを含み、前記第1ボックスは開口しており前記第2ボックスは前記第1ボックスの内部に設置されているステップと、
前記投影された像における前記二成分マーカの前記成分の位置を前記イメージセンサにより計測するステップと
を含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−150297(P2007−150297A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−308493(P2006−308493)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】