説明

排気エネルギー回収方法および排気エネルギー回収装置

【課題】電力需要が減少した場合に、排気タービン過給機からディーゼル機関に供給される圧縮空気の圧力が所定圧力を超えてしまうことを防止すること。
【解決手段】エンジン本体2が高負荷運転されているときに、コンプレッサ部3bから前記エンジン本体2に供給される外気の圧力が許容圧力内で出来るだけ高くなり、かつ、パワータービン4に流入する排ガス量が電力需要に応じて出来るだけ少なくなるように前記パワータービン4へ流入する排気ガス量および前記パワータービン4を迂回する排気ガス量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用ディーゼル機関や陸上発電機用ディーゼル機関等を構成するエンジン本体から排出された排気ガス(燃焼ガス)の排熱エネルギーを動力として回収する排気エネルギー回収方法および排気エネルギー回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排気ガス(燃焼ガス)の排熱エネルギーを動力として回収する排気エネルギー回収装置としては、例えば、特許文献1に開示された過給機およびパワータービンが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−186916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排ガスの一部を過給機に送らず、パワータービン等に導いて排気エネルギーを回収する装置を備えたディーゼル機関においては、排ガスの一部のエネルギーを過給機は利用できないので、過給効率が低下し、機関の熱効率が低下して、燃料消費率が増加する。
【0005】
近年においては、過給機の性能が向上しており、より多くの排ガスをパワータービンに導いても過給機はディーゼル機関に十分な空気を送ることが可能になった。その結果、上記特許文献1に開示されたディーゼル機関が高負荷運転された状態で、バイパス弁を絞る(すなわち、パワータービンの出力を減少させる)と、パワータービンを回転させるのに利用(使用)されていた排気ガスが過給機のタービンに供給されて、タービンとともに回転するコンプレッサの回転数が上昇し、コンプレッサからディーゼル機関に供給される圧縮空気の圧力(掃気圧力:給気圧力)が所定圧力(計画圧力)を超えてしまうおそれがある。
【0006】
したがって、従来の蒸気タービンとパワータービンで発電機を駆動する排熱回収システムにおいては、電力需要が発電可能な電力量より小さい場合、蒸気タービンへ入る蒸気を外部へダンプして、蒸気タービンの出力を下げていたので、ディーゼル機関の熱効率改善にはつながらない。
また、従来の前記排熱回収システムにおいては、回転数の制御を蒸気タービンへ送る蒸気流量の調整によって実施している。従って、急に電力需要が大幅に低下した場合、蒸気タービンは蒸気流量を制御代が取れない程小さくする必要が生じ、その結果、過剰なパワータービン出力により、その回転数制御が出来なくなり、電力系統の周波数が不安定になるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、電力需要が減少した場合に、発電機の回転数制御性を維持しながら、パワータービンに送る排ガス量を減らして、排気タービン過給機に送られるガス量を増やし、ディーゼル機関へ供給する圧縮空気の量を高めることで主機関をより熱効率が良い運転状態で稼動させ、かつ、パワータービンを回転させるのに利用されていた排気ガスが排気タービン過給機に供給されて、排気タービン過給機の回転数が上昇し、排気タービン過給機からディーゼル機関に供給される圧縮空気の圧力が所定圧力を超えてしまうことを防止することができる排気エネルギー回収方法および排気エネルギー回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る排気エネルギー回収方法は、エンジン本体から導かれた排気ガスによってタービン部を駆動することでコンプレッサ部を駆動させ、前記エンジン本体に外気を圧送する工程と、前記エンジン本体から導かれた排気ガスによってパワータービンを駆動する工程と、パワータービンへ流入する排気ガス量を制御する工程と、パワータービンを迂回する排気ガス量を制御する工程と、を備えた排気エネルギー回収方法であって、前記エンジン本体が高負荷運転されているときに、前記コンプレッサ部から前記エンジン本体に供給される外気の圧力が許容圧力内で出来るだけ高くなり、かつ、前記パワータービンに流入する排ガス量が電力需要に応じて出来るだけ少なくなるように前記パワータービンへ流入する排気ガス量および前記パワータービンを迂回する排気ガス量を制御する工程と、を備えている。
【0009】
本発明に係る排気エネルギー回収方法は、エンジン本体から導かれた排気ガスによってタービン部を駆動することでコンプレッサ部を駆動させ、前記エンジン本体に外気を圧送する工程と、前記エンジン本体から導かれた排気ガスによってパワータービンを駆動する工程と、パワータービンへ流入する排気ガス量を制御する工程と、パワータービンを迂回する排気ガス量を制御する工程と、を備えた排気エネルギー回収方法であって、前記エンジン本体が高負荷運転されており、かつ、電力需要が発電可能な電力量より大きい場合には、前記コンプレッサ部から前記エンジン本体に供給される外気の圧力が許容圧力内で出来るだけ高くなり、かつ、前記パワータービンに流入する排ガス量が電力需要に応じて出来るだけ少なくなるように前記パワータービンへ流入する排気ガス量を増やすとともに前記パワータービンを迂回する排気ガス量を減らす工程と、を備えている。
【0010】
本発明に係る排気エネルギー回収方法は、エンジン本体から導かれた排気ガスによってタービン部を駆動することでコンプレッサ部を駆動させ、前記エンジン本体に外気を圧送する工程と、前記エンジン本体から導かれた排気ガスによってパワータービンを駆動する工程と、パワータービンへ流入する排気ガス量を制御する工程と、パワータービンを迂回する排気ガス量を制御する工程と、を備えた排気エネルギー回収方法であって、前記エンジン本体が高負荷運転されており、かつ、電力需要が発電可能な電力量より小さい場合には、前記コンプレッサ部から前記エンジン本体に供給される外気の圧力が許容圧力内で出来るだけ高くなり、かつ、前記パワータービンに流入する排ガス量が電力需要に応じて出来るだけ少なくなるように前記パワータービンへ流入する排気ガス量を減らすとともに前記パワータービンを迂回する排気ガス量を増やす工程と、を備えている。
【0011】
本発明に係る排気エネルギー回収装置の運転方法は、エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、このタービン部により駆動されて前記エンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部とを有する排気タービン過給機と、前記エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるパワータービンと、前記エンジン本体に搭載された排気マニホールドと、前記パワータービンとを連通する排気管と、前記排気管の途中に接続されたガス入口制御弁と、前記ガス入口制御弁の上流側に位置する前記排気管に接続されて、前記パワータービンを迂回するバイパス管と、前記バイパス管の途中に接続された排ガスバイパス制御弁と、を備え、前記バイパス管の途中に、前記エンジン本体が高負荷運転され、前記パワータービンが全負荷運転状態とされているときに、前記ガス入口制御弁を流れる排気ガスと同量の排気ガスが、前記エンジン本体が高負荷運転され、前記パワータービンが停止状態とされているときに、前記排ガスバイパス制御弁を流れるようにするオリフィスを備えてなる排気エネルギー回収装置の運転方法であって、前記エンジン本体が高負荷運転されているときに、前記コンプレッサ部から前記エンジン本体に供給される外気の圧力が許容圧力内で出来るだけ高くなり、前記排気管に流入する排ガス量が出来るだけ少なくなるように前記ガス入口制御弁および前記排ガスバイパス制御弁の開度を調整する。
【0012】
本発明に係る排気エネルギー回収装置の運転方法によれば、パワータービンの出力を減少させた場合には、パワータービンを回転させるのにエンジン本体から抽出されていた排気ガス量が減少するので、エンジン本体にはより高い圧力の圧縮空気が供給されるから、エンジン本体の熱効率が改善されるとともに、必要に応じて排ガスバイパス制御弁を開くことで排気タービン過給機の回転数が上昇し、排気タービン過給機からエンジン本体に供給される圧縮空気の圧力が所定圧力を超えてしまうことを防止することができる。
【0013】
本発明に係る排気エネルギー回収装置は、エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、このタービン部により駆動されて前記エンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部とを有する排気タービン過給機と、前記エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるパワータービンと、前記エンジン本体に搭載された排気マニホールドと、前記パワータービンとを連通する排気管と、前記排気管に接続されて、前記パワータービンを迂回するバイパス管と、前記バイパス管の途中に接続された排ガスバイパス制御弁と、を備えてなるとともに、前記パワータービンは、前記エンジン本体から前記排気管を介して導かれた排気ガスの流入量を調整する可変ノズルを備えており、前記バイパス管の途中に、前記エンジン本体が高負荷運転され、前記パワータービンが全負荷運転状態とされているときに、前記可変ノズルを流れる排気ガスと同量の排気ガスが、前記エンジン本体が高負荷運転され、前記パワータービンが停止状態とされているときに、前記可変ノズルを流れるようにするオリフィスが設けられている。
【0014】
本発明に係る排気エネルギー回収装置によれば、電力需要が発電可能な電力量より小さい場合において、ディーゼル機関から過給機に送られず、排気エネルギー回収装置に導かれる排ガス量を減らして、過給効率を向上させ、機関の熱効率を改善できる。
【0015】
しかしながら、排気エネルギー回収装置に導かれる排ガス量を減らすと、過給機がディーゼル機関に送る圧縮空気の圧力が上昇する。ディーゼル機関にとってこの圧縮空気の圧力には上限がある。そこで、パワータービンの出力を大幅に低減する必要がある場合には、排ガスバイパス制御弁も同時に開き、その結果、パワータービンを回転させるのに利用されていた排気ガスは、バイパス管および排ガスバイパス制御弁を通って系外に排出されることとなるので、パワータービンを回転させるのに利用されていた排気ガスが排気タービン過給機に供給されて、排気タービン過給機の回転数が上昇し、排気タービン過給機からエンジン本体に供給される圧縮空気の圧力が所定圧力を超えてしまうことを防止することができる。
【0016】
上記排気エネルギー回収装置において、前記エンジン本体から導かれた排気ガスが内部を通過して蒸気を発生させる熱交換器と、前記熱交換器から導かれた蒸気によって駆動される蒸気タービンと、前記パワータービンおよび前記蒸気タービンによって駆動される発電機と、を備えているとさらに好適である。
【0017】
このような排気エネルギー回収装置によれば、熱交換器から蒸気タービンに供給される蒸気を最大限利用することができて、燃料消費率を向上させることができる。
また、蒸気タービンの負荷が過度に小さくなって、負荷制御ができなくなることを防止することができる。
【0018】
上記排気エネルギー回収装置において、前記蒸気タービンの負荷および/または前記蒸気タービンを迂回する蒸気の量を監視するとともに、前記蒸気タービンの負荷が低いと判断した場合に、前記可変ノズルに対して、開度を絞る信号を出力する制御器と、を備えているとさらに好適である。
【0019】
このような排気エネルギー回収装置によれば、パワータービンが全負荷運転状態とされる必要がないとき、エンジン本体から抽出される排ガス量を減少させてエンジン本体の熱効率を改善でき、必要に応じて排ガスバイパス制御弁を開くことで排気タービン過給機からエンジン本体に供給される外気の圧力を許容限度以下に保つことができて、エンジン本体の性能を最大限に引きだすことができる。
【0020】
本発明に係る舶用ディーゼル機関は、パワータービンの出力を減少させた場合に、排ガスをエンジンから抜き出す量を減少させることによって、エンジンが許容する範囲内で、エンジン本体に供給される圧縮空気の圧力を上昇させ、エンジン本体の機関性能を最大限引き出すことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る排気エネルギー回収方法および排気エネルギー回収装置によれば、パワータービンの出力を減少させた場合には、パワータービンを回転させるのにエンジン本体から抽出されていた排気ガス量が減少するので、エンジン本体にはより高い圧力の圧縮空気が供給されるから、エンジン本体の熱効率が改善されるとともに、必要に応じて排ガスバイパス制御弁を開くことで排気タービン過給機の回転数が上昇し、排気タービン過給機からエンジン本体に供給される圧縮空気の圧力が所定圧力を超えてしまうことを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排気エネルギー回収装置を具備した舶用ディーゼル機関の概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る排気エネルギー回収装置を具備した舶用ディーゼル機関の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る排気エネルギー回収装置の第1実施形態について、図1を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る排気エネルギー回収装置を具備した舶用ディーゼル機関1の概略構成図である。
【0024】
図1に示すように、舶用ディーゼル機関1は、ディーゼルエンジン本体(例えば、低速2サイクルディーゼル機関)2と、排気タービン過給機3、パワータービン4および蒸気タービン5を備えた排気エネルギー回収装置(図示せず)とを具備している。
ディーゼルエンジン本体(以下「エンジン本体」という。)2を構成するクランク軸(図示せず)には、プロペラ軸(図示せず)を介してスクリュープロペラ(図示せず)が直接的または間接的に取り付けられている。また、エンジン本体2には、シリンダライナ(図示せず)、シリンダカバー(図示せず)等からなるシリンダ部6が設けられており、各シリンダ部6内には、クランク軸と連結されたピストン(図示せず)が配置されている。さらに、各シリンダ部6の排気ポート(図示せず)は、排気マニホールド7と接続されている。排気マニホールド7は、第1の排気管L1を介して排気タービン過給機3のタービン部3aの入口側と接続され、第2の排気管L2を介してパワータービン4の入口側と接続されている。一方、各シリンダ部6の給気ポート(図示せず)は、給気マニホールド8と接続されており、給気マニホールド8は、給気管L3を介して排気タービン過給機3のコンプレッサ部3bと接続されている。
【0025】
排気タービン過給機3は、第1の排気管L1を介してエンジン本体2から導かれた排気ガス(燃焼ガス)によって駆動されるタービン部3aと、このタービン部3aにより駆動されてエンジン本体2に外気を圧送するコンプレッサ部3bと、これらタービン部3aとコンプレッサ部3bとの間に設けられてこれらを支持するケーシング(図示せず)とを備えている。
ケーシングには、一端部をタービン部3a側に突出させ、他端部をコンプレッサ部3bに突出させた回転軸3cが挿通されている。回転軸3cの一端部は、タービン部3aを構成するタービン・ロータ(図示せず)のタービン・ディスク(図示せず)に取り付けられており、回転軸3cの他端部は、コンプレッサ部3bを構成するコンプレッサ羽根車(図示せず)のハブ(図示せず)に取り付けられている。
【0026】
パワータービン4は、第2の排気管L2を介してエンジン本体2から導かれた排気ガスによって駆動される。
蒸気タービン5は、第1の蒸気管L4を介して熱交換器(例えば、排ガスボイラ)9から導かれた蒸気によって駆動される。また、第1の蒸気管L4の途中には、図示しないコントローラ(制御器)によってその開度が調整される第1のバルブ(流量調整弁)V1が接続されている。そして、蒸気タービン5で仕事を終えた蒸気は、第2の蒸気管L5を介して図示しないコンデンサ(復水器)に導かれる(戻される)ようになっている。
なお、コントローラには、エンジン本体2の負荷と、エンジン本体2が最大許容できる排気タービン過給機3からの圧縮空気の圧力との関係がデータベースとして記憶(保存)されている。すなわち、コントローラは、エンジン本体2の負荷に応じて、パワータービン4の出力を低減させるときにエンジン本体2の性能を最大限引き出すのに最適な、第3のバルブ(排ガスバイパス制御弁)V3の開度および第5のバルブ(ガス入口制御弁)V5の開度を出力する機能を備えている。
【0027】
パワータービン4の回転軸(図示せず)と、蒸気タービン5の回転軸(図示せず)とは、減速機(図示せず)およびカップリング10を介して連結され、蒸気タービン5の回転軸(図示せず)と、発電機11の回転軸(図示せず)とは、減速機(図示せず)およびカップリング12を介して連結されている。
また、発電機11は、制御用抵抗器13を介して船内(本実施形態では機関室内)に別途設置された配電盤14等と電気的に接続されており、発電機11が発電機として発生した電力を船内電源として使用(利用)することができるようになっている。
【0028】
第2の排気管L2には、パワータービン4を迂回(バイパス)する第1のバイパス管15および第2のバイパス管16が接続されており、第1のバイパス管15の途中には、図示しないコントローラによって開閉される第2のバルブ(非常停止用緊急バイパス弁)V2が接続され、第2のバイパス管16の途中には、図示しないコントローラによって開閉される第3のバルブ(排ガスバイパス制御弁)V3が接続されている。また、第2の排気管L2と第1のバイパス管15との分岐点よりも下流側で、第2の排気管L2と第2のバイパス管16との分岐点よりも上流側に位置する第2の排気管L2の途中には、図示しないコントローラによって開閉される第4のバルブ(非常停止用緊急遮断弁)V4が接続され、第2の排気管L2と第2のバイパス管16との分岐点よりも下流側に位置する第2の排気管L2の途中には、図示しないコントローラによって開閉される第5のバルブ(ガス入口制御弁)V5が接続されている。
【0029】
そして、第1の排気管L1、第2の排気管L2、第1のバイパス管15、第2のバイパス管16を通過した排気ガスは、集合管L6を介してファンネル(図示せず)に導かれた後、船外に排出されるようになっている。また、集合管L6の途中には、給水管17を介して内部に設けられた蒸発管(図示せず)内に供給された水を蒸発させて蒸気を発生させる熱交換器9が接続されている。
【0030】
コンプレッサ部3bの入口側に接続された給気管L3の途中には、消音器(図示せず)がそれぞれ配置されており、この消音器を通過した外気が、コンプレッサ部3bに導かれるようになっている。また、コンプレッサ部3bの出口側に接続された給気管L3の途中には、空気冷却器(インタークーラ)18や図示しないサージタンク等が接続されており、コンプレッサ部3bを通過した外気は、これら空気冷却器18やサージタンク等を通過した後、エンジン本体2の給気マニホールド8に供給されるようになっている。
【0031】
なお、図1中の符号19は、第3のバルブV3の下流側に位置する第2のバイパス管16の途中に接続されたオリフィスである。このオリフィス19は、ディーゼルエンジン本体2が高負荷運転(通常(航行)運転)され、パワータービン4が全負荷運転状態とされているとき(すなわち、第2のバルブV2が全閉、第3のバルブV3が全閉、第4のバルブV4が全開、第5のバルブV5が全開とされているとき)に、第5のバルブV5を流れる(通過する)排気ガスと同量の排気ガスが、ディーゼルエンジン本体2が高負荷運転され、パワータービン4が停止状態とされているとき(すなわち、第2のバルブV2が全閉、第3のバルブV3が全開、第4のバルブV4が全開、第5のバルブV5が全閉とされているとき)に、第3のバルブV3を流れるようにするためのものである。
また、第1の蒸気管L4の途中には、蒸気タービン5を迂回(バイパス)する第3のバイパス管20が接続されており、第3のバイパス管20の途中には、図示しないコントローラによって開閉される第6のバルブ(流量制御弁)V6が接続されている。
【0032】
さて、排気タービン過給機3と、パワータービン4と、蒸気タービン5とを備えてなる本実施形態に係る排気エネルギー回収装置は、ディーゼルエンジン本体2が高負荷運転されているときに、給気管L3を介して給気マニホールド8に供給される外気の圧力(掃気圧力:給気圧力)が許容圧力以下となり、かつ、第2の排気管L2に流入する排ガス量が、電力需要に応じて最小となるように、すなわち、第3のバルブV3を流れる排ガス量と、第5のバルブV5を流れる排ガス量との合計が最小となるように、コントローラにより第3のバルブV3および第5のバルブV5の開度が調整されるようになっている。
【0033】
また、ディーゼルエンジン本体2が高負荷運転中で、パワータービン4が停止状態とされている場合に、パワータービン4の運転を開始するには、第3のバルブV3を徐々に閉じるとともに、第5のバルブV5を徐々に開くようにすればよい。
一方、ディーゼルエンジン本体2が高負荷運転中で、パワータービン4が運転状態とされている場合に、パワータービン4の運転を停止するには、第3のバルブV3を徐々に開くとともに、第5のバルブV5を徐々に閉じるようにすればよい。
いずれの場合も、第2の排気管L2に流入する排ガス量は一定に保たれている。
【0034】
さらに、ディーゼルエンジン本体2が低負荷運転から高負荷運転に移行される運転中で、給気管L3を介して給気マニホールド8に供給される外気の圧力が所定圧力を超えてしまう場合には、第3のバルブV3および/または第5のバルブV5を徐々に開くようにすればよい。この場合、第2の排気管L2に流入する排ガス量は徐々に増加することになる。
一方、ディーゼルエンジン本体2が高負荷運転から低負荷運転に移行される運転中で、給気管L3を介して給気マニホールド8に供給される外気の圧力が所定圧力以下になってしまう場合には、第3のバルブV3および/または第5のバルブV5を徐々に閉じるようにすればよい。この場合、第2の排気管L2に流入する排ガス量は徐々に減少することになる。
【0035】
なお、パワータービン4を非常停止(緊急停止:危急停止)させる場合には、第2のバルブV2が全開とされ、同時に、第4のバルブV4が全閉とされる。
【0036】
本実施形態に係る排気エネルギー回収装置によれば、パワータービン4の出力を減少させた場合でも、パワータービン4を回転させるのに利用されていた排気ガスは、第2のバイパス管16および第3のバルブ(排ガスバイパス制御弁)V3を通って系外に排出されることとなるので、パワータービン4を回転させるのに利用されていた排気ガスが排気タービン過給機3に供給されて、排気タービン過給機3の回転数が上昇し、排気タービン過給機3からディーゼルエンジン本体2に供給される圧縮空気の圧力が所定圧力を超えてしまうことを防止することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る排気エネルギー回収装置によれば、コントローラは、蒸気タービン5の負荷および/または蒸気のダンプ量(すなわち、第3のバイパス管20および第6のバルブV6を通過する蒸気量)を監視するとともに、蒸気タービン5の負荷が低いと判断した場合に、第5のバルブV5に対して、開度を絞る信号が出力されるように構成されているので、熱交換器9から蒸気タービン5に供給される蒸気を最大限利用することができて、燃料消費率を向上させることができる。
【0038】
さらに、本実施形態に係る排気エネルギー回収装置によれば、排気タービン過給機3からディーゼルエンジン本体2に供給される外気の圧力(掃気圧力:給気圧力)が許容圧力内で出来るだけ高くなり、第2の排気管L2に流入する排ガス量が出来るだけ少なくなるように、コントローラによって第3のバルブV3および第5のバルブV5の開度が調整されるようになっているので、ディーゼルエンジン本体2の機関性能を最大限引き出すことができる。
【0039】
さらにまた、本実施形態に係る排気エネルギー回収装置によれば、ディーゼルエンジン本体2が高負荷運転中で、パワータービン4が停止状態とされている場合でも、第3のバルブV3を徐々に閉じるとともに、第5のバルブV5を徐々に開くことにより、パワータービン4の運転を開始することができる。
一方、ディーゼルエンジン本体2が高負荷運転中で、パワータービン4が運転状態とされている場合に、第3のバルブV3を徐々に開くとともに、第5のバルブV5を徐々に閉じることにより、パワータービン4の運転を停止することができる。
【0040】
さらにまた、本実施形態に係る排気エネルギー回収装置によれば、第2のバイパス管16の途中に、ディーゼルエンジン本体2が高負荷運転され、パワータービン4が全負荷運転状態とされているときに、第5のバルブV5を流れる排気ガスと同量の排気ガスが、ディーゼルエンジン本体2が高負荷運転され、パワータービン4が停止状態とされているときに、第3のバルブV3を流れるようにするオリフィス19が設けられている。すなわち、パワータービン4が全負荷運転状態とされているとき(第3のバルブV3が全閉、第5のバルブV5が全開とされているとき)でも、パワータービン4が停止状態とされているとき(第3のバルブV3が全開、第5のバルブV5が全閉とされているとき)でも第2の排気管L2に流入する排ガス量が一定に維持されることとなる。
これにより、ディーゼルエンジン本体2が高負荷運転された状態で、パワータービン4の運転を開始または停止したとしても、第1の排気管L1を介して排気タービン過給機3に供給される排気ガスの量が変化(変動)することがないため、排気タービン過給機3からディーゼルエンジン本体2に供給される外気の圧力を一定に保つことができて、ディーゼルエンジン本体2の出力を一定に保つことができる。
【0041】
さらにまた、本実施形態に係る排気エネルギー回収装置によれば、電力需要に応じてパワータービン4の出力を自由に無段階で調整することができるので、制御用抵抗器13として容量が小さく小型で安価なものを採用することができる。
【0042】
本発明に係る排気エネルギー回収装置の第2実施形態について、図2を参照しながら説明する。
図2は本実施形態に係る排気エネルギー回収装置を具備した舶用ディーゼル機関21の概略構成図である。
本実施形態に係る排気エネルギー回収装置は、第5のバルブ(ガス入口制御弁)V5およびパワータービン4の代わりに、パワータービン22を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0043】
パワータービン22は、ディーゼルエンジン本体2から第2の排気管L2を介して導かれた排気ガスの流入量を調整する可変ノズル(図示せず)を備えている。
【0044】
本実施形態に係る排気エネルギー回収装置によれば、第5のバルブV5を省略して(なくして)、構成要素の個数を減少させることができるので、構成の簡略化を図ることができる。
その他の作用効果は、第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0045】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、適宜必要に応じて変形実施および変更実施することができる。
また、上述した実施形態では、排気タービン過給機3、パワータービン4,22、蒸気タービン5をそれぞれ1台ずつ備えた排気エネルギー回収装置を一具体例として説明したが、本発明はこのようなものに限定されるものではなく、例えば、排気タービン過給機3を2台、パワータービン4,22を1台、蒸気タービン5を1台備えたものや、排気タービン過給機3を1台、パワータービン4,22を1台、蒸気タービン5を2台備えたものにも適用可能である。
【0046】
さらに、上述した実施形態では、排気タービン過給機3、パワータービン4,22、蒸気タービン5をそれぞれ1台ずつ備えた排気エネルギー回収装置を一具体例として説明したが、本発明はこのようなものに限定されるものではなく、例えば、排気タービン過給機3、パワータービン4,22をそれぞれ1台ずつ備えたものにも適用可能である。
そして、発電機11がパワータービン4,22のみで駆動される場合、すなわち、排気エネルギー回収装置が排気タービン過給機3とパワータービン4,22とで構成されている場合、コントローラは、制御用抵抗器13による電力の吸収量を監視するとともに、制御用抵抗器13による電力の吸収量が大きいと判断した場合に、第5のバルブV5または可変ノズルに対して、開度を絞る信号が出力されるように構成されている。
【符号の説明】
【0047】
1 舶用ディーゼル機関
2 ディーゼルエンジン本体(エンジン本体)
3 排気タービン過給機
3a タービン部
3b コンプレッサ部
4 パワータービン
5 蒸気タービン
7 排気マニホールド
9 熱交換器
11 発電機
16 第2のバイパス管(バイパス管)
19 オリフィス
21 舶用ディーゼル機関
22 パワータービン
L2 第2の排気管(排気管)
V3 第3のバルブ(排ガスバイパス制御弁)
V5 第5のバルブ(ガス入口制御弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体から導かれた排気ガスによってタービン部を駆動することでコンプレッサ部を駆動させ、前記エンジン本体に外気を圧送する工程と、
前記エンジン本体から導かれた排気ガスによってパワータービンを駆動する工程と、
パワータービンへ流入する排気ガス量を制御する工程と、
パワータービンを迂回する排気ガス量を制御する工程と、を備えた排気エネルギー回収方法であって、
前記エンジン本体が高負荷運転されているときに、前記コンプレッサ部から前記エンジン本体に供給される外気の圧力が許容圧力内で出来るだけ高くなり、かつ、前記パワータービンに流入する排ガス量が電力需要に応じて出来るだけ少なくなるように前記パワータービンへ流入する排気ガス量および前記パワータービンを迂回する排気ガス量を制御する工程と、を備えていることを特徴とする排気エネルギー回収方法。
【請求項2】
エンジン本体から導かれた排気ガスによってタービン部を駆動することでコンプレッサ部を駆動させ、前記エンジン本体に外気を圧送する工程と、
前記エンジン本体から導かれた排気ガスによってパワータービンを駆動する工程と、
パワータービンへ流入する排気ガス量を制御する工程と、
パワータービンを迂回する排気ガス量を制御する工程と、を備えた排気エネルギー回収方法であって、
前記エンジン本体が高負荷運転されており、かつ、電力需要が発電可能な電力量より大きい場合には、前記コンプレッサ部から前記エンジン本体に供給される外気の圧力が許容圧力内で出来るだけ高くなり、かつ、前記パワータービンに流入する排ガス量が電力需要に応じて出来るだけ少なくなるように前記パワータービンへ流入する排気ガス量を増やすとともに前記パワータービンを迂回する排気ガス量を減らす工程と、を備えていることを特徴とする排気エネルギー回収方法。
【請求項3】
エンジン本体から導かれた排気ガスによってタービン部を駆動することでコンプレッサ部を駆動させ、前記エンジン本体に外気を圧送する工程と、
前記エンジン本体から導かれた排気ガスによってパワータービンを駆動する工程と、
パワータービンへ流入する排気ガス量を制御する工程と、
パワータービンを迂回する排気ガス量を制御する工程と、を備えた排気エネルギー回収方法であって、
前記エンジン本体が高負荷運転されており、かつ、電力需要が発電可能な電力量より小さい場合には、前記コンプレッサ部から前記エンジン本体に供給される外気の圧力が許容圧力内で出来るだけ高くなり、かつ、前記パワータービンに流入する排ガス量が電力需要に応じて出来るだけ少なくなるように前記パワータービンへ流入する排気ガス量を減らすとともに前記パワータービンを迂回する排気ガス量を増やす工程と、を備えていることを特徴とする排気エネルギー回収方法。
【請求項4】
エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、このタービン部により駆動されて前記エンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部とを有する排気タービン過給機と、
前記エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるパワータービンと、
前記エンジン本体に搭載された排気マニホールドと、前記パワータービンとを連通する排気管と、
前記排気管の途中に接続されたガス入口制御弁と、
前記ガス入口制御弁の上流側に位置する前記排気管に接続されて、前記パワータービンを迂回するバイパス管と、
前記バイパス管の途中に接続された排ガスバイパス制御弁と、を備え、
前記バイパス管の途中に、前記エンジン本体が高負荷運転され、前記パワータービンが全負荷運転状態とされているときに、前記ガス入口制御弁を流れる排気ガスと同量の排気ガスが、前記エンジン本体が高負荷運転され、前記パワータービンが停止状態とされているときに、前記排ガスバイパス制御弁を流れるようにするオリフィスを備えてなる排気エネルギー回収装置の運転方法であって、
前記エンジン本体が高負荷運転されているときに、前記コンプレッサ部から前記エンジン本体に供給される外気の圧力が許容圧力内で出来るだけ高くなり、前記排気管に流入する排ガス量が出来るだけ少なくなるように前記ガス入口制御弁および前記排ガスバイパス制御弁の開度を調整することを特徴とする排気エネルギー回収装置の運転方法。
【請求項5】
エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、このタービン部により駆動されて前記エンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部とを有する排気タービン過給機と、
前記エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるパワータービンと、
前記エンジン本体に搭載された排気マニホールドと、前記パワータービンとを連通する排気管と、
前記排気管に接続されて、前記パワータービンを迂回するバイパス管と、
前記バイパス管の途中に接続された排ガスバイパス制御弁と、を備えてなるとともに、
前記パワータービンは、前記エンジン本体から前記排気管を介して導かれた排気ガスの流入量を調整する可変ノズルを備えており、
前記バイパス管の途中に、前記エンジン本体が高負荷運転され、前記パワータービンが全負荷運転状態とされているときに、前記可変ノズルを流れる排気ガスと同量の排気ガスが、前記エンジン本体が高負荷運転され、前記パワータービンが停止状態とされているときに、前記可変ノズルを流れるようにするオリフィスが設けられていることを特徴とする排気エネルギー回収装置。
【請求項6】
前記エンジン本体から導かれた排気ガスが内部を通過して蒸気を発生させる熱交換器と、
前記熱交換器から導かれた蒸気によって駆動される蒸気タービンと、
前記パワータービンおよび前記蒸気タービンによって駆動される発電機と、を備えてなることを特徴とする請求項5に記載の排気エネルギー回収装置。
【請求項7】
前記蒸気タービンの負荷および/または前記蒸気タービンを迂回する蒸気の量を監視するとともに、前記蒸気タービンの負荷が低いと判断した場合に、前記可変ノズルに対して、開度を絞る信号を出力する制御器と、を備えていることを特徴とする請求項6に記載の排気エネルギー回収装置。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか一項に記載の排気エネルギー回収装置を備えてなることを特徴とする舶用ディーゼル機関。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−60951(P2013−60951A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−248388(P2012−248388)
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2008−318318(P2008−318318)の分割
【原出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】