説明

接着剤組成物、接着シートおよび半導体装置の製造方法

【課題】薄型化しつつある半導体チップを実装したパッケージにおいて、薄いダイシングブレードを用いてダイシングした場合であっても接着剤層同士が癒着することなく、かつ厳しいリフロー条件に曝された場合であっても、高いパッケージ信頼性を達成できる接着剤組成物および該接着剤組成物からなる接着剤層を有する接着シートならびこの接着シートを用いた半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】重量平均分子量(Mw)が90万以上であり分子量分布(Mw/Mn)が7以下であるアクリル重合体(A)、エポキシ系樹脂(B)および熱硬化剤(C)を含有することを特徴とする接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子(半導体チップ)を有機基板やリードフレームにダイボンディングする工程およびシリコンウエハ等をダイシングし且つ半導体チップを有機基板やリードフレームにダイボンディングする工程で使用するのに特に適した接着剤組成物および該接着剤組成物からなる接着剤層を有する接着シートならびに該接着シートを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハは大径の状態で製造され、このウエハは素子小片(半導体チップ)に切断分離(ダイシング)された後に次の工程であるマウント工程に移されている。この際、半導体ウエハは予め接着シートに貼着された状態でダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンディング、ピックアップの各工程が加えられた後、次工程のボンディング工程に移送される。
【0003】
これらの工程の中でピックアップ工程とボンディング工程のプロセスを簡略化するために、ウエハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えたダイシング・ダイボンディング用接着シートが種々提案されている(たとえば、特許文献1〜4)。
【0004】
特許文献1〜4には、特定の組成物よりなる接着剤層と、基材とからなる接着シートが開示されている。この接着剤層は、ウエハダイシング時には、ウエハを固定する機能を有し、さらにエネルギー線照射により接着力が低下し基材との間の接着力がコントロールできるため、ダイシング終了後、チップのピックアップを行うと、接着剤層は、チップとともに剥離する。接着剤層を伴った半導体チップを基板に載置し、加熱すると、接着剤層中の熱硬化性樹脂が接着力を発現し、半導体チップと基板との接着が完了する。
【0005】
上記特許文献に開示されている接着シートは、いわゆるダイレクトダイボンディングを可能にし、ダイ接着用接着剤の塗布工程を省略できるようになる。上記特許文献に開示されている接着剤は、エネルギー線硬化性成分として、低分子量のエネルギー線硬化性化合物が配合されてなる。エネルギー線照射によって、エネルギー線硬化性化合物が重合硬化し、接着力が低下し、基材からの接着剤層の剥離が容易になる。また上記の接着シートの接着剤層は、エネルギー線硬化および熱硬化を経たダイボンド後には全ての成分が硬化し、チップと基板とを強固に接着する。
【0006】
ところで、近年、半導体装置に対する要求物性は、非常に厳しいものとなっている。たとえば、厳しい熱湿環境下におけるパッケージ信頼性が求められている。しかし、半導体チップ自体が薄型化した結果、チップの強度が低下している。さらには接着層そのものも薄型化しており、厳しい熱湿環境下におけるパッケージ信頼性は十分なものとは言えなくなってきた。
【0007】
また近年電子部品の接続において行われている表面実装法ではパッケージ全体が半田融点以上の高温化にさらされる表面実装法(リフロー)が行われている。最近では環境への配慮から鉛を含まない半田への移行により実装温度が従来の240℃から260℃へと上昇し、半導体パッケージ内部で発生する応力が大きくなり、パッケージクラック発生の危険性はさらに高くなっている。
【0008】
すなわち、半導体チップの薄型化および接着層の薄型化および実装温度の上昇が、パッケージの信頼性低下を招いている。
【特許文献1】特開平2−32181号公報
【特許文献2】特開平8−239636号公報
【特許文献3】特開平10−8001号公報
【特許文献4】特開2000−17246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このため、薄型化しつつある半導体チップを実装したパッケージにおいて、厳しいリフロー条件に曝された場合であっても、高いパッケージ信頼性を実現することが要求されている。
【0010】
また、ダイシング・ダイボンディング用接着シートを用いてのウエハのダイシングには、従来は厚さが40μm程度のダイシングブレードが用いられていたが、最近では、小さくかつ寸法精度の高いチップを得るために、従来よりも薄いダイシングブレードを用いてダイシングを行なうことがある。しかしながら、カーフ幅が狭いため、切断された接着剤層同士が、ダイシング後に時間の経過と共に流動して再びくっ付いてしまい(癒着してしまい)、チップをピックアップする際に隣接するチップもピックアップされてしまう場合があることがわかった。
【0011】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、薄型化しつつある半導体チップを実装したパッケージにおいて、薄いダイシングブレードを用いてダイシングした場合であっても接着剤層同士が癒着することなく、かつ厳しいリフロー条件に曝された場合であっても高いパッケージ信頼性を達成できる接着剤組成物、該接着剤組成物からなる接着剤層を有する接着シートおよびこの接着シートを用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 重量平均分子量(Mw)が90万以上であり分子量分布(Mw/Mn)が7以下であるアクリル重合体(A)、エポキシ系樹脂(B)および熱硬化剤(C)を含有することを特徴とする接着剤組成物。
【0013】
[2] 前記アクリル重合体(A)が水酸基を有することを特徴とする上記[1]に記載の接着剤組成物。
[3] 前記エポキシ系樹脂(B)が不飽和炭化水素基を有することを特徴とする上記[1]または[2]に記載の接着剤組成物。
【0014】
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかに記載の接着剤組成物からなる接着剤層が、基材上に形成されてなる接着シート。
[5] 上記[4]に記載の接着シートの接着剤層に半導体ウエハを貼着し、前記半導体ウエハをダイシングして半導体チップとし、前記半導体チップ裏面に接着剤層を固着残存させて基材から剥離し、前記半導体チップをダイパッド部上に前記接着剤層を介して熱圧着する工程を含む半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特に、重量平均分子量が高く分子量分布が小さいアクリル重合体(A)が用いられていることから、薄型化しつつある半導体チップを実装したパッケージにおいて、ダイシング後に接着剤層同士が癒着することなく、かつ厳しいリフロー条件に曝された場合であっても、高いパッケージ信頼性を達成できる接着剤組成物および該接着剤組成物からなる接着剤層を有する接着シートならびこの接着シートを用いた半導体装置の製
造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
本発明に係る接着剤組成物は、アクリル重合体(A)(以下「(A)成分」とも言う。他の成分についても同様である。)、エポキシ系樹脂(B)(以下「化合物(B)」または「(B)成分」とも言う。)、熱硬化剤(C)を必須成分として含み、各種物性を改良するため、必要に応じ他の成分を含んでいても良い。以下、これら各成分について具体的に説明する。
【0017】
(A)アクリル重合体;
アクリル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は90万以上であり、好ましくは300万以下であり、より好ましくは95万以上200万以下であり、さらに好ましくは100万以上150万以下である。アクリル重合体の重量平均分子量が低過ぎると、接着剤層から低分子量成分が染み出し、ダイシング後の接着剤層が癒着を起こすことがある。また、アクリル重合体の重量平均分子量が高過ぎると基板凹凸へ接着剤層が追従できないことがありボイドなどの発生要因になる。
【0018】
アクリル重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は7以下であり、好ましくは6以下であり、より好ましくは5以下である。分子量分布が7を超えるアクリル重合体は、重量平均分子量が高くても染み出しやすい低分子量成分を多く含んでおり、この低分子量成分がダイシング後の接着剤層の癒着を起こすことがある。分子量分布の下限値は、各成分の相溶性という観点からは1.5程度である。
【0019】
アクリル重合体の重量平均分子量および分子量分布は、重合反応時の溶媒の種類、反応温度、反応時間等によって変わる。例えば、トルエンのような連鎖移動を起しやすい溶媒を用いた場合には重量平均分子量は低くなる。また、2−ブタノンのような極性の高い溶媒を用いた場合には重量平均分子量が高く、分子量分布は狭くなる傾向がある。溶媒は各種混合して使用することもできる。また、反応温度を高くしたり、反応時間を長くすると分子量分布が広くなる傾向がある。
【0020】
なお、本発明におけるアクリル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により、後述する実施例での測定条件下で測定される場合の値である。
【0021】
アクリル重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−10℃以上50℃以下、さらに好ましくは0℃以上40℃以下、特に好ましくは0℃以上30℃以下の範囲にある。ガラス転移温度が低過ぎると接着剤層と基材との剥離力が大きくなってチップのピックアップ不良が起こることがあり、高過ぎるとウエハを固定するための接着剤層の接着力が不十分となるおそれがある。
【0022】
このアクリル重合体(A)を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーあるいはその誘導体が挙げられる。例えば、アルキル基の炭素数が1〜18である
(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられ、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルたとえば(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イミドアクリレート等が挙げられ、2-ヒドロキシエチルアクリレ
ート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等が挙げられる。アクリル重合体(A)には、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等が共重合されていてもよい。
【0023】
また水酸基を有しているアクリル重合体(A)が、エポキシ系樹脂(B)との相溶性が良いため好ましい。
また複数種のアクリル重合体を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(B)エポキシ系樹脂;
エポキシ系樹脂(B)としては、従来公知の種々のエポキシ樹脂を用いることができる。接着剤組成物中のエポキシ系樹脂(B)の含量は、アクリル重合体(A)100重量部に対して1〜1500重量部であることが好ましく、3〜1000重量部であることがより好ましい。エポキシ系樹脂(B)の含量がアクリル重合体(A)100重量部に対して1重量部未満であると十分な接着性が得られないことがあり、1500重量部を超えると、接着剤組成物からなる接着剤層と基材との接着力が高くなり、ピックアップ不良がおこることがある。
【0025】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテルやその水添物、下記式(1)で表されるオルソクレゾールノボラック樹脂、下記式(2)で表されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、下記式(3)もしくは(4)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂もしくはビフェニル化合物など、分子中に2つ以上の官能基が含まれるエポキシ化合物が挙げられる。
【0026】
【化1】

【0027】
(但し、式中nは0〜10の整数である。)
【0028】
【化2】

【0029】
(但し、式中nは0〜10の整数である。)
【0030】
【化3】

【0031】
(但し、式中nは0〜10の整数である。)
【0032】
【化4】

【0033】
(但し、式中Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基である。)
これらは1種単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
化合物(B)としては、1分子中に不飽和炭化水素基およびエポキシ基を有している化合物が望ましい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ系樹脂は、不飽和炭化水素基を有さないエポキシ系樹脂と比較してアクリル重合体(A)(特に、分子量の高いアクリル重合体(A))との相溶性が高い点で好ましい。また、この相溶性が低いと接着剤層からアクリル重合体(A)の低分子量成分が分離して染み出すことがあり、これが癒着につながる可能性がある。相溶性が高いとこのような分離を防ぐことができる。
【0034】
化合物(B)としては、接着剤の熱硬化後の強度や耐熱性が向上するため、芳香環を有する樹脂が好ましい。
不飽和炭化水素基を有する化合物(B)としては、たとえば、多官能のエポキシ系熱樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を含む基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、たとえば、エポキシ基へアクリル酸を付加反応ことにより合成できる。あるいは、エポキシ系樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を含む基が直接結合した化合物などが挙げられる。
【0035】
不飽和炭化水素基を有する化合物(B)の具体例としては、下記式(5)で表される化合物(たとえば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの一部のエポキシ基へアクリル酸を付加反応させて得られる化合物(下記式(6)))、クレゾールノボラックエポキシ型樹脂の一部のエポキシ基へ(メタ)アクリル酸を付加反応させて得られる化合物(下記式(7))、あるいはエポキシ系樹脂の一部のエポキシ基ヘアクリル酸を付加反応させて得られる化合物が挙げられる。
【0036】
【化5】

mは0〜10の整数であり、nは0〜10の整数である。〕
また上記式(5)において、
【0037】
【化6】

【0038】
とすると、AおよびBは、AAABBのようにブロックとして配列していてもよく、ABAABのようにランダムに配列していてもよい。
上記式(5)で表される化合物の例としては、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0039】
【化7】

【0040】
〔RはH−またはCH3−であり、nは0〜10の整数である。〕
【0041】
【化8】

nは0〜10の整数である。〕
なお、エポキシ化合物とアクリル酸との反応により得られる化合物は、未反応物やエポキシ基が完全に消費された化合物との混合物となっている場合があるが、本発明においては、上記化合物が実質的に含まれているものであればよい。
【0042】
化合物(B)の数平均分子量は、特に制限されないが、接着剤の硬化性や硬化後の強度や耐熱性の観点からは好ましくは300〜30000、さらに好ましくは400〜10000、特に好ましくは500〜3000である。
【0043】
(C)熱硬化剤;
熱硬化剤(C)は、エポキシ系樹脂(B)と反応し熱硬化剤として機能する。好ましい熱硬化剤(C)としては、1分子中にエポキシ基と反応しうる官能基を2個以上有する化
合物が挙げられ、その官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基および酸無水物基などが挙げられる。これらのうちフェノール性水酸基、アミノ基および酸無水物基が好ましく、フェノール性水酸基およびアミノ基がより好ましい。
【0044】
これらの具体的な例としては、下記式(8)で表されるノボラック型フェノール樹脂や、下記式(9)で表されるジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、下記式(10)に示す多官能系フェノール樹脂、下記式(11)で表されるアラルキルフェノール樹脂等のフェノール性熱硬化剤や、DICY(ジシアンジアミド)などのアミン系熱硬化剤が挙げられる。これら熱硬化剤は、1種単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
【化9】

【0046】
(但し、式中nは0〜10の整数を表す)
【0047】
【化10】

【0048】
(但し、式中nは0〜10の整数を表す)
【0049】
【化11】

【0050】
(但し、式中nは0〜10の整数を表す)
【0051】
【化12】

【0052】
(但し、式中nは0〜10の整数を表す)
接着剤組成物中の熱硬化剤(C)の含量は、エポキシ系樹脂(B)100重量部に対して、好ましくは0.1〜500重量部であり、より好ましくは1〜200重量部である。熱硬化剤(C)の量が過小であると、接着剤組成物の硬化性が不足して接着剤層の接着性が得られないことがあり、過剰であると接着剤組成物の吸湿率が高まりパッケージの信頼性が低下することがある。
【0053】
本発明に係る接着剤組成物は、上記アクリル重合体(A)、エポキシ系樹脂(B)および熱硬化剤(C)を必須成分として含み、各種物性を改良するために、下記の成分を含んでいてもよい。
【0054】
(D)硬化促進剤;
硬化促進剤(D)は、接着剤組成物の硬化速度を調整するために用いられる。好ましい硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基やアミン等との反応を促進し得る化合物が挙げられ、具体的には、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0055】
硬化促進剤(D)の含量は、エポキシ系樹脂(B)および熱硬化剤(C)の合計100重量部に対して好ましくは0.001〜100重量部であり、より好ましくは0.01〜50重量部であり、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。
【0056】
(E)カップリング剤;
カップリング剤は、接着剤組成物の被着体に対する接着性を向上させるために用いられる。また、カップリング剤を使用することで、接着剤組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性を損なうことなく、その耐水性を向上することができる。カップリング剤としては、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分等が有する官能基と反応する基を有する化合物が好ましく使用される。カップリング剤としては、シランカップリング剤が望ましい。このようなカップリング剤としてはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上混合して使用することができる。これらカップリング剤を使用する際には、エポキシ系樹脂(B)100重量部に対して通常0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.3〜5重量部の割合で用いられる。0.1重量部未満だと効果が得られない可能性があり、20重量部を超えるとアウトガスの原因となりパッケージ信頼性が低下する可能性がある。
【0057】
(F)架橋剤;
接着剤組成物の初期接着力および凝集力を調節するために、架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては有機多価イソシアナート化合物、有機多価イミン化合物が挙げられる。
【0058】
上記有機多価イソシアナート化合物としては、芳香族多価イソシアナート化合物、脂肪族多価イソシアナート化合物、脂環族多価イソシアナート化合物およびこれらの多価イソシアナート化合物の三量体、ならびにこれら多価イソシアナート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。有機多価イソシアナート化合物のさらに具体的な例としては、たとえば2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシレンジイソシアナート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイ
ソシアナート、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアナート、3−メチルジフェニル
メタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−
2,4'−ジイソシアナート、リジンイソシアナートなどが挙げられる。
【0059】
上記有機多価イミン化合物の具体例としては、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオナート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオナート、N,N'-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる

【0060】
架橋剤(F)はアクリル重合体(A)100重量部に対して通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜3重量部の比率で用いられる。
(G)エネルギー線重合性化合物;
接着剤層には、エネルギー線重合性化合物(G)が配合されてもよい。エネルギー線重合性化合物(G)をエネルギー線照射によって硬化させることで、接着剤層の接着力を低
下させることができるため、基材と接着剤層との層間剥離を容易に行えるようになる。
【0061】
エネルギー線重合性化合物(G)は、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けると重合硬化する化合物である。このエネルギー線重合性化合物としては、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレート、イタコン酸オリゴマーなどのアクリレート系化合物が用いられる。このような化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有し、通常は、重量平均分子量が100〜30000、好ましくは300〜10000程度である。
【0062】
エネルギー線重合性化合物(G)を使用する場合は、アクリル重合体(A)100重量部に対して通常1〜40重量部、好ましくは3〜30重量部、より好ましくは3〜20重量部の割合で用いられる。40重量部を超えると、有機基板やリードフレームに対する本発明の接着剤組成物の接着性を低下させることがある。
【0063】
(H)光重合開始剤;
本発明の接着剤組成物は、その使用に際して、紫外線等のエネルギー線を照射して、接着力を低下させることがある。この際、該組成物中にエネルギー線重合性化合物(G)とともに光重合開始剤(H)を添加することで、重合硬化時間ならびに光線照射量を少なくすることができる。
【0064】
このような光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサンソン、α-ヒドロキシ
シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、β−クロールアンスラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。光重合開始剤(H)は1種類単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
光重合開始剤(H)の配合割合は、理論的には、接着剤中に存在する不飽和結合量やその反応性および使用される光重合開始剤の反応性に基づいて、決定される。
(その他の成分)
本発明の接着剤組成物には、上記成分の他に、必要に応じて各種添加剤が配合されてもよい。たとえば、硬化後の可とう性を保持するため可とう性成分を添加することができる。可とう性成分は、常温および加熱下で可とう性を有する成分であり、加熱やエネルギー線照射では実質的に硬化しないものが選択される。可とう性成分は、熱可塑性樹脂やエラストマーからなるポリマーであってもよいし、ポリマーのグラフト成分、ポリマーのブロック成分であってもよい。また、可とう性成分がエポキシ樹脂に予め変性された変性樹脂であってもよい。
【0066】
さらに、接着剤組成物の各種添加剤としては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維、ガラス繊維等の無機充填材を接着剤に配合することができる。
【0067】
その他、接着剤組成物の各種添加剤としては可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料、
染料等を用いてもよい。
(接着剤組成物)
本発明の接着剤組成物は感圧接着性と加熱硬化性とを有し、未硬化状態では各種被着体を一時的に保持する機能を有する。そして熱硬化を経て最終的には耐衝撃性の高い硬化物を与えることができ、しかも剪断強度と剥離強度とのバランスにも優れ、厳しい熱湿条件下においても充分な接着物性を保持し得る。
【0068】
本発明に係る接着剤組成物は、上記各成分を適宜の割合で混合して得られる。混合に際しては、各成分を予め溶媒で希釈しておいてもよく、また混合時に溶媒を加えても良い。
(接着シート)
本発明に係る接着シートは、基材上に、上記接着剤組成物からなる接着剤層が積層してなる。本発明に係る接着シートの形状は、テープ状、ラベル状などあらゆる形状をとり得る。
【0069】
接着シートの基材としては、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等の透明フィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。また、上記の透明フィルムの他、これらを着色したフィルム、不透明フィルムを用いることができる。ただし、本発明の接着シートは、その使用に際して、基材面側から紫外線等のエネルギー線照射を行うことがあるため、基材は使用するエネルギー線に対して透明であることが好ましい。
【0070】
本発明に係る接着シートは、各種の被着体に貼付され、被着体に所要の加工を施した後、接着剤層は、被着体に固着残存させて基材から剥離される。すなわち、接着剤層を、基材から被着体に転写する工程を含むプロセスに使用される。このため、基材の接着剤層に接する面の表面張力は、好ましくは5mN/m以上40mN/m以下、さらに好ましくは5mN/m以上37mN/m以下、特に好ましくは5mN/m以上35mN/m以下であることが望ましい。このような表面張力が低い基材は、材質を適宜に選択して得ることが可能であるし、また基材の表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施すことで得ることもできる。
【0071】
基材の剥離処理に用いられる剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系等が用いられるが、特にアルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が耐熱性を有するので好ましい。
【0072】
上記の剥離剤を用いて基材の表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま無溶剤で、または溶剤希釈やエマルション化して、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーター等により塗布して、常温または加熱あるいは電子線硬化させたり、ウェットラミネーションやドライラミネーション、熱溶融ラミネーション、溶融押出ラミネーション、共押出加工などで積層体を形成すればよい。
【0073】
基材の膜厚は、通常は10〜500μm、好ましくは15〜300μm、特に好ましくは20〜250μm程度である。
また、接着剤層の厚みは、通常は1〜500μm、好ましくは5〜300μm、特に好ましくは10〜150μm程度である。
【0074】
接着シートの製造方法は、特に限定はされず、基材上に、接着剤層を構成する組成物を塗布乾燥することで製造してもよく、また接着剤層を剥離フィルム上に設け、これを上記基材に転写することで製造してもよい。なお、接着シートの使用前に、接着剤層を保護するために、接着剤層の表面に剥離フィルムを積層しておいてもよい。接着剤層の塗布方法としては、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の公知の塗布装置を使用した方法が挙げられる。
【0075】
また、接着剤層の表面外周部には、リングフレーム等の他の治具を固定するために別途接着剤層や接着テープが設けられていてもよい。
(接着シートの利用方法)
次に本発明に係る接着シートの利用方法について、該接着シートを半導体装置の製造に適用した場合を例にとって説明する。
【0076】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、
本発明に係る接着シートの接着剤層に半導体ウエハを貼着し、前記半導体ウエハをダイシングして半導体チップとし、前記半導体チップ裏面に接着剤層を固着残存させて基材から剥離し、前記半導体チップをダイパッド部上に上記接着剤層を介して熱圧着する工程を含んでいる。
【0077】
本発明に係る半導体装置の製造方法においては、まず、本発明に係る接着シートをダイシング装置上に、リングフレームにより固定し、シリコンウエハの一方の面を接着シートの接着剤層上に載置し、軽く押圧し、ウエハを固定する。その際、接着シートを30〜40℃程度に加温してもよい。
【0078】
その後、接着剤層に、基材側からエネルギー線を照射し、接着剤層の凝集力を上げ、接着剤層と基材との間の接着力を低下させてもよい。照射されるエネルギー線としては、紫外線(UV)または電子線(EB)等が用いられ、好ましくは紫外線が用いられる。なお、エネルギー線照射は、半導体ウエハの貼付後、半導体チップの剥離前のいずれの段階で行ってもよく、たとえばダイシングの後に行ってもよく、また下記のエキスパンド工程の後に行ってもよい。さらにエネルギー線照射を複数回に分けて行ってもよい。
【0079】
次いで、ダイシングソーなどの切断手段を用いて、上記のシリコンウエハを切断し半導体チップを得る。この際の切断深さは、シリコンウエハの厚みと、接着剤層の厚みとの合計およびダイシングソーの磨耗分を加味した深さにする。本発明によれば、ダイシングソーなどに装着するダイシングブレードが薄い(たとえば15〜25μm)ために接着剤層のカーフ幅が狭い(たとえば15〜25μm)場合であっても、切断された接着剤層同士が癒着せず、しかもパッケージが厳しいリフロー条件に曝された場合であっても高いパッケージ信頼性が達成される。
【0080】
次いで必要に応じ、接着シートのエキスパンドを行うと、半導体チップ間隔が拡張し、半導体チップのピックアップをさらに容易に行えるようになる。この際、接着剤層と基材との間にずれが発生することになり、接着剤層と基材との間の接着力が減少し、チップのピックアップ性が向上する。
【0081】
このようにして半導体チップのピックアップを行うと、切断された接着剤層を半導体チップ裏面に固着残存させて基材から剥離することができる。
次いで接着剤層を介して半導体チップをダイパッド部に載置する。ダイパッド部は半導体チップを載置する前に加熱するか載置直後に加熱される。加熱温度は、通常は80〜200℃、好ましくは100〜180℃であり、加熱時間は、通常は0.1秒〜5分、好ま
しくは0.5秒〜3分であり、チップマウント圧力は、通常1kPa〜200MPaであ
る。
【0082】
ICチップをダイパッド部にチップマウントした後、必要に応じさらに加熱を行ってもよい。この際の加熱条件は、上記加熱温度の範囲であって、加熱時間は通常1〜180分、好ましくは10〜120分である。
【0083】
また、チップマウント後の加熱処理は行わずに仮接着状態としておき、後工程で行われる樹脂封止での加熱を利用して接着剤層を硬化させてもよい。
このような工程を経ることで、接着剤層が硬化し、半導体チップとダイパッド部とを強固に接着することができる。接着剤層はダイボンド条件下では流動化しているため、ダイパッド部の凹凸にも十分に埋め込まれ、ボイドの発生を防止できる。
【0084】
すなわち、得られる実装品においては、チップの固着手段である接着剤が硬化し、かつダイパッド部の凹凸にも十分に埋め込まれた構成となるため、過酷な条件下にあっても、十分なパッケージ信頼性とボード実装性が達成される。
【0085】
なお、本発明の接着剤組成物および接着シートは、上記のような使用方法の他、半導体化合物、ガラス、セラミックス、金属などの接着に使用することもできる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、各種評価は次のように行った。
【0087】
「癒着性の評価」
#2000研磨したシリコンウエハ(150mm径,厚さ150μm)の研磨面に、実施例および比較例の接着シートの貼付をテープマウンター(リンテック社製,Adwill RAD2500)により行い、ウエハダイシング用リングフレームに固定した。その後、紫外線照射装置(リンテック社製,Adwill RAD2000)を用いて、接着剤層に基材面側から紫外線を照射(350mW/cm2,190mJ/cm2)した。次いで、ダイシング装置(株式会社ディスコ製,DFD651,ブレード:NBC−ZH103J−SE27HCBB(厚さ:20〜25μm))を使用してシリコンウエハを2mm×2mmのチップサイズにダイシングした。ダイシングの際の切り込み量については、基材を20μm切り込むようにした。
【0088】
ダイシングされたシリコンウエハを30℃で7日間放置した後に癒着の有無を確認した。本発明において「癒着」とは、ダイシングして切断された接着剤層同士が再びくっついてしまうことを意味する。このような状態においては、一つのチップをピックアップしようとしても隣接するチップも同時にピックアップされてしまう。
【0089】
本発明では、ダイボンダー(キャノンマシナリー株式会社製,BESTEM−D02)を用いて100個のチップに対してピックアップを行ない、癒着の発生数を数えた。ピックアップ時はエキスパンド量(引き落とし量)を3mmに調整した。
【0090】
「表面実装性の評価」
(1)半導体チップの製造
#2000研磨したシリコンウエハ(150mm径,厚さ150μm)の研磨面に、実施例および比較例の接着シートの貼付をテープマウンター(リンテック社製,Adwill RAD2500)により行い、ウエハダイシング用リングフレームに固定した。その
後、紫外線照射装置(リンテック社製,Adwill RAD2000)を用いて、接着剤層に基材面側から紫外線を照射(350mW/cm2,190mJ/cm2)した。次いで、ダイシング装置(株式会社ディスコ製,DFD651)を使用してシリコンウエハを8mm×8mmのチップサイズにダイシングした。ダイシングの際の切り込み量については、基材を20μm切り込むようにした。
【0091】
(2)半導体パッケージの製造
基板として銅箔張り積層板(三菱ガス化学株式会社製,CCL-HL830)の銅箔に
回路パターンが形成され、パターン上にソルダーレジスト(太陽インキ製,PSR-40
00 AUS5)を有している基板(株式会社ちの技研製)を用いた。上記(1)で得た接着シート上のチップを接着剤層とともに基材から取り上げ、基板上に、接着剤層を介して120℃,100gf,1秒間の条件で圧着した。その後、モールド樹脂(京セラケミカル株式会社製,KE-1100AS3)で封止厚400μmになるように封止し(封止
装置 アピックヤマダ株式会社製,MPC−06M Trial Press)、175℃、5時間の条件でモールド樹脂を硬化させた。ついで、封止された基板をダイシングテープ(リンテック株式会社製,Adwill D-510T)に貼付して、ダイシング装
置(株式会社ディスコ製,DFD651)を使用してシリコンウエハを12mm×12mmサイズにダイシングすることで信頼性(表面実装性)評価用の半導体パッケージを得た。
【0092】
(3)半導体パッケージ表面実装性の評価
得られた半導体パッケージを85℃,60%RH条件下に168時間放置し、吸湿させた後、最高温度260℃、加熱時間1分間のIRリフロー(リフロー炉:相模理工製,WL-15-20DNX型)を3回行なった際に、接合部の浮き・剥がれの有無、パッケージクラック発生の有無を走査型超音波探傷装置(日立建機ファインテック株式会社製,Hye-Focus)および断面観察により評価した。基板と半導体チップとの接合部に0.
25mm2以上の大きさの剥離を観察した場合を剥離していると判断して、パッケージを
25個試験に投入し剥離が発生しなかった個数を数えた。
【0093】
また、接着剤組成物を構成する各成分は下記の通りであった。
(A)アクリル重合体
(A)−1.
モノマーとしてメチルアクリレート87g、2−ヒドロキシエチルアクリレート13g、重合開始剤としてα,α'-アゾビスイソブチロニトリル0.2g、ならびに溶剤として
2−ブタノン60gおよび酢酸エチル60gを混合し、60℃、24時間窒素雰囲気下で攪拌することで、以下の諸物性を有するアクリル重合体(A)−1.を得た。
メチルアクリレート(90mol%)/2−ヒドロキシエチルアクリレート(10mol%)共重合体。重量平均分子量:103万,分子量分布:4.2,Tg:6℃
(A)−2.
モノマーとしてメチルアクリレート93g、2−ヒドロキシエチルアクリレート7g使用する以外はアクリル重合体(A)−1.と同様にして、以下の諸物性を有するアクリル重合体(A)−2.を得た。
メチルアクリレート(95mol%)/2−ヒドロキシエチルアクリレート(5mol%)共重合体。重量平均分子量:110万,分子量分布:3.9,Tg:8℃
(A)−3.
溶剤として2−ブタノン30g、酢酸エチル90gを混合する以外はアクリル重合体(A)−2.と同様にして、以下の諸物性を有するアクリル重合体(A)−3.を得た。
メチルアクリレート(95mol%)/2−ヒドロキシエチルアクリレート(5mol%)共重合体。重量平均分子量:101万,分子量分布:5.0,Tg:8℃
(A)−4.
溶剤として2−ブタノン120gを使用する以外はアクリル重合体(A)−1.と同様にして、以下の諸物性を有するアクリル重合体(A)−4.を得た。
メチルアクリレート(89mol%)/2−ヒドロキシエチルアクリレート(10mol%)共重合体。重量平均分子量:150万,分子量分布:4.4,Tg:6℃
(A)−5.
80℃、48時間窒素雰囲気下で攪拌する以外はアクリル重合体(A)−1.と同様にして、以下の諸物性を有するアクリル重合体(A)−5.を得た。
メチルアクリレート(89mol%)/2−ヒドロキシエチルアクリレート(10mol%)共重合体。重量平均分子量:101万,分子量分布:12.4,Tg:6℃
(A)−6.
溶剤としてトルエン60g、酢酸エチル60gを混合する以外はアクリル重合体(A)−1.と同様にして、以下の諸物性を有するアクリル重合体(A)−6.を得た。
メチルアクリレート(89mol%)/2−ヒドロキシエチルアクリレート(10mol%)共重合体。重量平均分子量:64万,分子量分布:4.1,Tg:6℃
(A)−7.
溶剤としてトルエン120gを混合し、80℃48時間窒素雰囲気下で攪拌する以外はアクリル重合体(A)−1.と同様にして、以下の諸物性を有するアクリル重合体(A)−7.を得た。
メチルアクリレート(89mol%)/2−ヒドロキシエチルアクリレート(10mol%)共重合体。重量平均分子量:57万,分子量分布:9.6,Tg:6℃
なお、上記アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は下記方法で測定した。
【0094】
測定方法:ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン標準)
装置:東ソー社製 GELPERMEATION CHROMATOGRAPH
カラム:東ソー社製 TSK-GEL GMHXL 7.8*300mm
溶媒:THF
濃度:1% (分子量100万を超え、溶解性が悪ければ〜0.1%程度まで希釈)
注入量:80μm
流速:1.0ml/min。
(B)エポキシ系樹脂
(B)−1. アクリロイル基付加クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製,CNA−147,エポキシ当量:518g/eq,数平均分子量:2100,不
飽和炭化水素基含有量:518g/eq)
(B)−2.アクリロイル基付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製,ZAA−278,エポキシ当量:675g/eq,数平均分子量:1800,不飽和炭
化水素基含有量:675g/eq)
(C)熱硬化剤:ザイロック型フェノール樹脂(三井化学株式会社製,ミレックスXLC−4L)
(D)硬化促進剤:イミダゾール(四国化成工業株式会社製,キュアゾール2PHZ)
(E)カップリング剤:シランカップリング剤(三菱化学株式会社製,MKCシリケートMSEP2)
(F)架橋剤:芳香族性ポリイソシアナート(日本ポリウレタン工業株式会社製,コロネートL)
また、接着シートの基材としては、ポリエチレンフィルム(厚さ100μm、表面張力33mN/m)を用いた。
【0095】
(実施例および比較例)
表1に記載の組成の接着剤組成物を使用した。表中、数値は固形分換算の重量部を示す
。表1に記載の組成の接着剤組成物をシリコーン処理された剥離フィルム(リンテック株式会社製,SP−PET3811(S))上に30μmの厚みになるように塗布、乾燥(乾燥条件オーブンにて100℃1分間)した後に基材と貼り合せて、接着剤層を基材上に転写することで接着シートを得た。
【0096】
得られた接着シートを用いて、癒着性および表面実装性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量(Mw)が90万以上であり分子量分布(Mw/Mn)が7以下であるアクリル重合体(A)、エポキシ系樹脂(B)および熱硬化剤(C)を含有することを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル重合体(A)が水酸基を有することを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記エポキシ系樹脂(B)が不飽和炭化水素基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物からなる接着剤層が、基材上に形成されてなる接着シート。
【請求項5】
請求項4に記載の接着シートの接着剤層に半導体ウエハを貼着し、前記半導体ウエハをダイシングして半導体チップとし、前記半導体チップ裏面に接着剤層を固着残存させて基材から剥離し、前記半導体チップをダイパッド部上に前記接着剤層を介して熱圧着する工程を含む半導体装置の製造方法。

【公開番号】特開2009−292888(P2009−292888A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145696(P2008−145696)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】