説明

有機デバイスの製造方法並びに電子機器

【課題】溶液の広がりや飛散若しくは誤滴下等による寄生容量やリークパスの発生を防止することのできる有機デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の有機デバイスの製造方法は、基板10上に導電性有機材料を含む溶液を配置する工程と、前記溶液を乾燥することにより導電性有機膜15を形成する工程と、不所望な領域に配置された前記導電性有機膜15a,15b,18に光Lを照射し、前記導電性有機膜15a,15b,18の導電性を低下させる工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性有機材料を用いた有機デバイスの製造技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気伝導性を有する有機材料(導電性有機材料)を用いた有機デバイスの開発が進められている。有機デバイスは、薄型軽量化に適すること、可撓性を有する基板上に形成できること、材料コストが安価であること等の長所を有しており、フレキシブルディスプレイ等への適用が検討されている。例えば、有機トランジスタや有機EL素子は、有機材料を溶液化することにより、インクジェット法を初めとする液体プロセスが可能となり、プロセスコストの低減や大面積製膜が容易になること等から、非常に期待されている技術分野である。これらの有機デバイスにおいては、特定の領域のみに溶液化された有機材料を製膜するために、インクジェット法やスクリーン印刷法等が用いられ、精細な塗り分けを実現している(例えば、特許文献1〜2を参照)。
【特許文献1】特開2005−223286号公報
【特許文献2】特開平10−12377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように塗り分けを行う目的としては、溶液の使用量の低減だけでなく、次のような目的も挙げられる。例えば、面内方向に微細化され接近した配線間でのリーク電流の低減や、積層構造の最適化による電気特性の向上である。後者の例としては、有機EL素子が挙げられる。有機EL素子では、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等を積層することにより、発光効率の高い有機EL素子が実現できる。
【0004】
有機材料の塗り分けが必要とされる有機デバイスには、例えば液体プロセスが得意とするディスプレイや太陽電池等の大面積デバイスが挙げられる。しかしながら、近年では、有機デバイスを構成する回路の高密度化、大面積化がますます進み、溶液パターンについてもさらなる微細化、細線化が要求されている。このような高密度化、大面積化が進むほど塗り分けには高い技術が必要となり、欠陥の発生確率は高まることになる。例えば、インクジェット法により溶液を塗布した場合には、塗布した溶液が不必要な場所に広がったり、飛散若しくは誤滴下されることにより、寄生容量の増大やリークパスの発生が生ずる場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、溶液の広がりや飛散若しくは誤滴下等による寄生容量やリークパスの発生を防止することのできる有機デバイスの製造方法を提供することを目的とする。また、このような有機デバイスを備えることにより、歩留まりが高く、電気的特性に優れた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の有機デバイスの製造方法は、基板上の第1領域に導電性有機材料を含む溶液を配置する工程と、前記溶液を乾燥することにより前記第1領域に導電性有機膜を形成する工程と、前記第1領域以外の第2領域に配置された前記導電性有機膜に光を照射し、前記導電性有機膜の導電性を低下させる工程とを備えたことを特徴とする。この方法によれば、不所望な領域(第2領域)に配置された導電性有機膜の導電性を光によって低下させることができる。このため、所望の領域に精度良く薄膜素子を形成することができる。また、薄膜素子のサイズが溶液の濡れ広がりによって制限されないため、溶液の塗布面積よりも小さなサイズの薄膜素子を形成することができる。
【0007】
なお、本発明において「導電性有機材料」とは、一定の導電性を備えた有機材料を意味し、絶縁性有機材料以外の材料を広く含む概念である。この「導電性有機材料」の中には、金属導電性を備えた有機導電材料の他、半導体性を備えた有機半導体材料が含まれる。導電性有機材料で形成される膜(導電性有機膜)は、配線層、半導体層又は電極として用いられる。このような膜を備えた有機デバイスとしては、薄膜トランジスタ、ダイオード、抵抗、インダクタ、キャパシタ、その他能動素子、受動素子を問わない単体の素子、一定の機能を奏するように素子が集積され配線された集積回路等の回路(チップ)、さらに複数の素子の組み合わせからなる回路の一部、集積回路等の回路を1以上組み合わせて一定の機能を奏するように構成された装置の全部又は一部を意味し、有機デバイスの構成や形状、大きさに限定はない。
【0008】
本発明において「光」とは、少なくとも対象となる導電性有機膜の電気伝導に関与する部分を破壊するものであれば良く、紫外線又は可視光のいずれでも良い。多くの有機膜は酸素や水分の存在下で紫外線等の光を照射することにより、酸化等による構造変化の進行速度が加速される。そのため、前記光としては紫外線を用いることが最も有効である。しかし、π共役系の有機材料は可視光によって励起されるものもあり、可視光によって分子の立体的な構造、配置を変化させることができれば、それによって導電性を大きく低下させることができる。可視光の場合は紫外線と比べて光のエネルギーが小さいため、光照射によって与えるダメージが少なく、歩留まりの高い有機デバイスが提供できる。
【0009】
本発明においては、前記導電性有機膜はπ共役系有機膜であり、前記光は、π共役に係わる分子骨格の立体構造を変化させ、前記分子骨格内におけるπ電子軌道の重なりを切断することのできる波長及びエネルギーを持った光であることが望ましい。この方法によれば、例えば、紫外線等によって分子の結合を物理的に切断する場合に比べて、エネルギーの小さい光を用いることができる。具体的には可視光用いることができるが、可視光であれば光照射によるダメージが少ないため、歩留まりの高い有機デバイスが提供できる。
【0010】
本発明においては、前記導電性有機膜はπ共役系有機膜であり、前記光は、酸素又は水分の存在下で前記導電性有機膜を酸化させることのできる波長及びエネルギーを持った光であることが望ましい。この方法によれば、π電子を酸素が付加された部分に局在化させることができるため、導電性が大幅に低下する。前記光としては紫外線を用いることが望ましく、これにより確実に酸化を行うことができる。
【0011】
本発明においては、前記光は、レーザ光又はレンズで絞った光であり、前記第2領域に選択的に照射されるものとすることができる。或いは、前記光は、前記第2領域に前記光を透過する光透過領域を備えたマスクを用いて照射されるものとすることができる。この方法によれば、前記光として紫外線を用いた場合でも、光照射によるダメージを極力小さくすることができる。
【0012】
本発明においては、前記第1領域に前記光を透過しない導電層を形成し、前記導電層をマスクとして前記基板の全面に前記光を照射するものとすることができる。例えば、前記光を照射する側から見て、前記導電層は、前記第1領域における前記導電性有機膜の一部を覆うように形成されているものとすることができる。より具体的には、前記導電層は薄膜トランジスタのゲート電極であり、前記導電性有機膜の一部は前記薄膜トランジスタのチャネル領域であるものとすることができる。この方法によれば、有機デバイスの一部として形成された導電層をマスクとするため、新たに露光マスクを用意する必要がない。このため、製造工程が簡単になり、プロセスコストも低減できる。
【0013】
本発明においては、前記導電性有機膜を形成した後、前記導電性有機膜をアニールする工程を備え、前記アニールする工程は、前記導電性有機膜に光を照射する工程の後に行われることが望ましい。アニール処理は導電性有機材料の配向状態を良好にし、分子間の電気伝導性(ホッピング伝導)を向上するために行うものであるが、導電性有機材料を配向させた後(アニール処理後)に光照射を行った場合には、導電性有機材料間のホッピング伝導は良好なものとなっているので、光照射による効果は限定的なものとなる。しかし、導電性有機材料を配向する前(アニール処理前)に光照射を行った場合には、導電性有機材料の分子骨格の変化によって導電性有機材料の配向性(液晶性)が低下するため、アニール処理を行っても、十分なホッピング伝導が期待できない。したがって、アニールを行う前に光照射を行えば、その分だけ導電性有機膜の導電性を低下させることができるため、効果は大きくなる。
【0014】
本発明の電子機器は、前述した本発明の有機デバイスの製造方法により製造されてなる有機デバイスを備えたことを特徴とする。この構成によれば、歩留まりが高く、電気的特性に優れた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではない。下記の実施形態において、各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0016】
また、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。この際、水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。例えば本実施形態においては、X軸方向を走査線の延在方向、Y軸方向をデータ線の延在方向、Z軸方向を観察者による観察方向としている。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の有機デバイスの一実施形態である有機薄膜トランジスタ13を備えた電気光学装置1の概略構成図である。電気光学装置1は、互いに対向する第1基板10及び第2基板20と、第1基板10及び第2基板20の間に挟持された電気光学層50とを備えている。
【0018】
電気光学層50は、液晶、電気泳動分散液等の電気光学物質を備えている。本実施形態の場合、電気光学層50は、分散媒中に1種又は2種以上の電気泳動粒子を分散させた電気泳動分散液を備えている。電気泳動粒子はTiO等の無機酸化物又は無機水酸化物からなる直径0.01μm〜10μm程度の微粒子であり、分散媒の水素イオン指数PHによってその表面電荷密度(帯電量)が制御されている。電気泳動粒子は画素電極11と対向電極21との間の電界によって泳動し、一方の電極の表面に付着することにより画像表示を行う。なお、電気泳動分散液はマイクロカプセルの内部に封入しても良い。
【0019】
第1基板10の電気光学層50側には複数の画素電極11が設けられている。画素電極11はX軸方向及びY軸方向に配列されており、画素電極11の間隙に沿ってY軸方向に延在する複数のデータ線13が設けられている。画素電極11の配置された領域は表示の最小単位であるサブ画素を構成し、該サブ画素がX軸方向及びY軸方向に配列することにより全体としての表示領域10Aが形成されている。
【0020】
データ線13と画素電極11との間には、有機デバイスである有機薄膜トランジスタ(Organic Thin Film Transistor;以下、「有機TFT」と略記する)30が設けられている。有機TFT30は、X軸方向を長手方向とする長尺状の半導体層15と、半導体層15を覆うゲート絶縁膜16と、ゲート絶縁膜16を介して半導体層15と対向するゲート電極17とを備えている。
【0021】
半導体層15は、有機半導体材料からなる有機半導体層である。半導体層15はデータ線13と画素電極11とに跨って設けられている。半導体層15はデータ線13の一部に乗り上げるように設けられており、両者が重なり合う部分において半導体層15とデータ線13とが電気的に接続されている(ソースコンタクト部)。また、半導体層15は画素電極11の一部に乗り上げるように設けられており、両者が重なり合う部分において半導体層15と画素電極11とが電気的に接続されている(ドレインコンタクト部)。
【0022】
画素電極11、データ線13及び半導体層15を覆ってゲート絶縁膜16が設けられている。ゲート絶縁膜16は表示領域10Aの全面に設けられている。ゲート絶縁膜16上には画素電極11の間隙に沿ってX軸方向に延在する複数の走査線12が設けられている。走査線12はY軸方向に突出する突出部を備えており、該突出部がゲート電極17となっている。ゲート電極17は半導体層15と対向して設けられており、両者が平面的に重なる部分において半導体層15のチャネル領域が形成されている。ゲート電極17はデータ線13と画素電極11とに跨るように設けられている。ゲート電極17のX軸方向の幅はデータ線13(ソースコンタクト部)と画素電極11(ドレインコンタクト部)との間の距離(チャネル長)よりも大きくなっており、半導体層15のソースコンタクト部とドレインコンタクト部までの領域がゲート電極17によって覆われるようになっている。
【0023】
表示領域10Aの周囲には配線領域10Bが設けられている。配線領域10Bには、走査線12と電気的に接続された引き廻し配線14が設けられている。配線領域10Bにはゲート絶縁膜16は設けられておらず、走査線12はゲート絶縁膜16の端部を覆って配線領域10Bに引き出されている。走査線12は引き廻し配線14の一部に乗り上げるように設けられており、両者が重なり合う部分において走査線12と引き廻し配線14とが電気的に接続されている。図示は省略したが、走査線12の端部は配線領域10Bに向けて一本毎に交互に図示右方向及び左方向に引き出されている。配線領域10Bには複数の走査線12の何れかに対応した複数の導通端子14tが設けられている。図示左側の配線領域10Bには、各々が偶数行目の走査線12の何れかに対応する複数の導通端子14tが設けられており、図示右側の配線領域10Bには、各々が奇数行目の走査線12の何れかに対応する複数の導通端子14tが設けられている。走査線12は一方の端部が左右の何れかの配線領域10Bまで延びており、何れかの導通端子14tと電気的に接続されている。
【0024】
配線領域10Bには、複数の導通端子14tの何れかに対応した複数の引き廻し配線14が設けられている。引き廻し配線14は表示領域10Aの外周に沿ってY軸方向に延在しており、その先端部が導通端子14tとなっている。引き廻し配線14と導通端子14tは、例えば、データ線12と同一材料により同一工程で形成されている。引き廻し配線14とデータ線13は、第1基板10の図示略の端子部に引き廻され、該端子部に形成された外部端子と電気的に接続されている。
【0025】
第2基板20の電気光学層50側にはカラーフィルタ22が設けられている。カラーフィルタ22は互いに色の異なる複数の着色層22R,22G,22Bを備えている。着色層22R,22G,22Bは、例えば、Y軸方向に延在するストライプ状に形成され、これらが赤(R)、緑(G)、青(B)の順でX軸方向に互いに交互に並んでいる。各サブ画素には3原色(R,G,B)のうちの1色の着色層が配置されており、3つのサブ画素によって3色の着色層22R,22G,22Bを含む1つの画素が形成されている。カラーフィルタ22の電気光学層50側には対向電極21が設けられている。対向電極21は表示領域10Aの全面を覆っており、各画素電極11に共通の共通電極となっている。
【0026】
次に、図2〜図6を用いて電気光学装置1の製造方法を説明する。図2〜図6では第1基板10の製造工程を中心に説明し、他の工程の説明は省略する。
【0027】
図2に示すように、まず第1基板10上に、データ線13、引き廻し配線14及び画素電極11を形成する。第1基板10としては、ガラス基板、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)、石英基板、シリコン基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。電気光学装置1に可撓性を付与する場合には、第1基板10として樹脂基板が選択される。
【0028】
データ線13、引き廻し配線14及び画素電極11としては、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cu又はこれらを含む合金等の導電性材料、ITO、FTO、ATO、SnO等の導電性酸化物、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly-ethylenedioxythiophene)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシラン又はこれらの誘導体等の導電性高分子材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前記導電性高分子材料は、通常、酸化鉄、ヨウ素、無機酸、有機酸、ポリスチレンサルフォニック酸などの高分子でドープされ導電性を付与された状態で用いられる。
【0029】
次に、図3に示すように、液体プロセスを用いてデータ線13と画素電極11との間(第1領域)に半導体層を形成する。液体プロセスとしては、インクジェット法、スピンコート法、ディッピング法、ロールコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等の各種印刷方法が挙げられるが、膜厚制御性が高く、吐出位置が正確に制御できることから、インクジェット法が好適に採用される。本実施形態では、導電性有機材料の一種である有機半導体材料を溶液42中に分散又は溶解し、その溶液をインクジェットヘッド40に充填する。そして、インクジェットヘッド40と第1基板10とを相対移動させながら、インクジェットヘッド40のノズル41から1滴当たりの液量が制御された溶液42をデータ線13と画素電極11との間に吐出する。そして、溶液42の塗膜43の溶媒を乾燥することにより、半導体層を形成する。
【0030】
有機半導体材料としては、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、フタロシアニン、ペリレン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、スチルベン、アリールビニル、ピラゾリン、トリフェニルアミン、トリアリールアミン、オリゴチオフェン、フタロシアニンまたはこれらの誘導体のような低分子の有機半導体材料や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ポリアリールアミン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂、フルオレン−ビチオフェン共重合体、フルオレン−アリールアミン共重合体またはこれらの誘導体のような高分子の有機半導体材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、π共役系が1次元的に繋がったπ共役系の有機半導体材料は、高い移動度が得られることから、好ましく用いることができる。π共役系の有機半導体材料は、その特有な電子雲の広がりにより、キャリアの移動能が特に高く、ペンタセン等の低分子有機半導体材料においてはアモルファスシリコンに匹敵する高い移動度が実現されている。
【0031】
このような有機半導体材料としては、液体プロセスにより簡易に成膜できることから、高分子の有機半導体材料が好ましく用いられるが、低分子の有機半導体材料を用いることも可能である。低分子の有機半導体材料は通常は蒸着法によって成膜されるが、最近では、前駆体を用いる方法や、直接溶媒に分散又は溶解して塗布する方法により成膜した例が報告されている。例えば、下記の参考文献1及び2には、溶媒に可溶な前駆体状態で塗布した後、熱による脱離反応を利用してペンタセンを得る方法が記載されている。また、参考文献3には、ポルフィリン系の低分子有機半導体材料を液体プロセスで成膜する方法が記載されている。この方法では、前駆体のポルフィリン系低分子材料を、成膜後、加熱することにより分解する。これにより、分子構造が高い平面性を備えた構造となり、π共役系が実現される。
参考文献1:J. AM. CHEM. SOC.124 (2002) 8812, Ali Afzali, Christos D. Dimitrakopoulos, and Tricia L. Breen
参考文献2:Adv. Mater. 11 (1990) 490, Peter T. Herwig and Klaus Mullen
参考文献3:Applied Phsics Letters,84 (2004) 2085, Shinji Aramaki et al.
【0032】
次に、図4に示すように、データ線13と画素電極11との間に配置された塗膜を乾燥し、導電性有機膜である半導体層15を形成する。そして、半導体層15のガラス転移温度Tg付近(Tg±50℃)まで加熱する(アニール処理)。このアニール処理は、有機半導体の配向状態を整え、有機半導体間の伝導性(ホッピング伝導)を高めるものである。さらに、画素電極11、データ線13及び半導体層15を覆ってゲート絶縁膜16を形成する。ゲート絶縁膜16は配線領域10Bを除く表示領域10Aの全面に形成する。
【0033】
ゲート絶縁膜16は、主として有機材料(特に有機高分子材料)で構成されているのが好ましい。有機材料を主材料とするゲート絶縁膜16は、有機半導体である半導体層15との間で高い密着性が得られる。特に有機高分子材料を主材料とするものは、液体プロセスによって容易に形成可能であることから好ましい。このような有機高分子材料としては、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルフェニレン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂、ポリビニルフェノールあるいはノボラック樹脂のようなフェノール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテンなどのオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、ゲート絶縁膜16は、後述の光照射工程によって照射する光L(図6参照)に対して透過率の高い材料であることが望ましい。後述のように、光Lは半導体層15が吸収可能な波長の光であるため、ゲート絶縁膜16の材料としては、半導体層15の材料に応じて、例えば光Lによってゲート絶縁膜16が劣化しないような材料が選択される。
【0035】
ゲート絶縁膜16を形成するに当たっては、予め配線領域10Bにマスキングテープを配置しておくことが望ましい。マスキングテープとしては公知の粘着テープを用いることができる。マスキングテープを用いた場合、基板全面にゲート絶縁膜16を形成した後、マスキングテープを取り除くことで、容易に配線領域10Bを露出させることができる。
【0036】
次に、図5に示すように、ゲート絶縁膜16上に走査線12及びゲート電極17を形成する。走査線12は、一方の端部を配線領域10Bまで引き出し、引き廻し配線14の導通端子14tと重なるように配置する。走査線12及びゲート電極17としては、Ag、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、CuおよびNiまたはこれらを含む合金、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム酸化物(IO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)および酸化錫(SnO)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。その他、導電性材料としては、例えば、データ線13及び画素電極11で挙げたような導電性高分子材料を用いることもできる。
【0037】
ここで、図3のように液体プロセスを用いて半導体層15を形成すると、塗布した溶液42が不必要な場所に広がったり、飛散若しくは誤滴下される場合がある。図3において、符号43aは、塗膜43のうちデータ線13を越えて隣の画素電極11に濡れ広がった部分を示している。符号44bは、塗膜43のうち走査線12を越えて隣の画素電極11に濡れ広がった部分を示している。符号44は、溶液42の飛散又は誤滴下によって引き廻し配線14間に配置された塗膜を示している。塗膜43a,43b,44は、乾燥して半導体層を形成すると、画素電極11,11間又は引き廻し配線14,14間にリーク電流を発生させる。また、塗膜43a,43bによって半導体層15が大きく広がるため、ゲート電極17とデータ線13との間又はゲート電極17と画素電極11との間の寄生容量が大きくなり、表示不良の原因となる。
【0038】
そこで、本実施形態では、図6に示すように、光源45を用いて不所望な領域(第2領域)に配置された半導体層18,15a,15bに光Lを照射し、半導体層18,15a,15bを構成する有機半導体材料の導電性を低下させている。光Lは、少なくとも対象となる有機半導体材料の電気伝導に関与する部分を破壊するものであれば良く、紫外線又は可視光のいずれを用いても良い。光Lとしてはレーザ光を用いても良く、レンズによって絞った光を半導体層18,15a,15bに選択的に照射しても良い。
【0039】
光Lとしては、酸素又は水分の存在下で半導体層18,15a,15bの有機半導体材料を酸化させる波長及びエネルギーを持った光を用いることができる。この場合の光Lとしては、紫外線を用いることが望ましい。多くの有機膜は、酸素や水分の存在下で紫外線を照射することにより、酸化等による構造変化の進行速度が加速されるからである。π共役系に係わる部分を酸化した場合には、π電子を特定領域(例えば酸化によって酸素が付与された部分)に局在化させることができるため、導電性は大幅に低下する。
【0040】
紫外線の波長は200nm〜350nm程度であることが好ましい。この波長の紫外線により殆どの有機物の酸化反応が進行可能となる。この波長の紫外線が酸化に関与する理由は、下記の表1に示すように、有機物の骨格であるC−C結合やベンゼン環のC=C結合等を切断できる以上のエネルギーがあるためである。例えば、有機半導体の主骨格とされるベンゼン環のC=C結合(共役二重結合)のエネルギーは530kJ/mol程度であり、225nm以下の波長の紫外線よって切断される。同様に、側鎖に溶解性の向上又は配向性の向上のために導入されるアルキル基(CH)については、結合エネルギーが347kJ/mol程度であるので、345nm以下の波長の光によって分解される。
【0041】
【表1】

【0042】
紫外線により分解された分子は、反応性の高いラジカルや、イオン、中性分子等になる。さらに、ラジカル状態のものは酸素等と反応し、酸化物へと変化していく。例えば、紫外線でC−H結合が切断されてしまうと、その後は以下に示すような一連の自動酸化機構で反応が進んでいき、分子の立体構造変化に伴うπ共役系の消失によって、導電性を有しない分子へと変化する可能性が高い。なお、下記の化学式において、Rはアルキル基であり、・は不対電子である。
【0043】
<開始過程>:紫外線照射により開始
RH → H・+R・
<進行過程>
R・+O → ROO・
ROO・+RH → ROOH+R・
ROOH → HO・+RO・
ROOH+RH → RO・+HO+ R・
2ROOH → RO・+ROO・+ H
<停止過程>
R・+R・ → R−R
R・+RO・ → R−O−R…不活性物質(停止反応)
RO・+RO・ → ROOR
ROO・+ROO・ → ROOR+O
R・+HO・ → ROH
【0044】
光Lとしては、π共役に係わる分子骨格の立体構造を変化させ、該分子骨格内におけるπ電子軌道の重なりを切断することのできる波長及びエネルギーを持った光を用いることもできる。この場合の光Lとしては可視光を用いることができる。可視光は紫外線よりもエネルギーが小さいため、光照射によるダメージは少なくなる。
【0045】
ここで「π電子軌道の重なりが切断される」とは、置換基の導入等による立体障害の作用によってπ電子の軌道が相互作用できなくなることをいう。具体的には、単結合の両端にある2つの不飽和結合のπ電子の軌道が同一平面上にない状態のことをいい、一般にその平面同士の角度が0°から90°に近づくほど相互作用しにくくなり、90°になったときに最も相互作用しにくくなる。π電子軌道の重なりが切断されると、分子骨格内の電荷の移動が阻害されるため、有機膜全体として導電性が著しく低下する。なお、π電子軌道の重なりが切断されることを「π共役系が切断される」という場合がある。
【0046】
2つのπ電子軌道は同一平面上にあるときが最も相互作用しやすく安定であり、2つのπ電子軌道が直交するときが最も相互作用しにくく不安定になると考えられている。安定な電子軌道はエネルギーの小さい光によって励起することができる。例えば、可視光によってπ電子軌道を励起し、分子骨格内に新たな置換基を導入することができる。この場合、置換基の立体障害によって分子の立体構造が変化し、π電子軌道の重なりが切断される。また、可視光によってπ電子軌道を励起し、分子骨格内にもともとあった置換基を除去することもできる。この場合も、分子の立体構造の変化によってπ電子軌道の重なりを切断することができる。
【0047】
例えば、下式(1)〜(5)の有機半導体材料を例に挙げて説明すると、式(1)〜(5)はいずれもチオフェン環に側鎖としてアルキル基を導入した分子骨格を有するものである。有機半導体材料に側鎖を導入する理由としては、溶解性の向上を期待したものと、溶解性だけでなくπ共役系に係わる骨格部分の平面性の向上を期待したものとに大別される。式(1)のF8、式(2)のF8BT及び式(3)のF8T2は前者の例であり、式(4)のP3HT及び式(5)のPQTは後者の例に該当する。いずれの場合も、側鎖の導入によって分子内に立体障害が生じ、そのバランスによって平面性が保たれる点では共通している。後者の平面性の向上を図る理由としては、平面性を向上することにより分子間のスタッキング性(配向性)が良くなり、隣接する分子間のπ電子軌道の重なりによる導電性の向上が図られることが挙げられる。また、平面性を向上することにより、分子に液晶性を発現させ、分子の配向によりホッピング伝導を促進する効果も挙げられる。
【0048】
【化1】

【0049】
【化2】

【0050】
【化3】

【0051】
【化4】

【0052】
【化5】

【0053】
このような有機半導体材料に光を照射すると、照射エネルギーによっては、側鎖と主鎖との間の分子結合や側鎖内の分子結合が切断される。その結果、分子内の立体障害によって保たれていたバランスが崩れ、主鎖の平面性が変化し、π共役系の広がりが低下(切断)する。また、分子の平面性により配向性が低下した場合、ホッピング伝導による導電性も失われるため、電気的特性はさらに低下する。
【0054】
また、フルオレン骨格を有する材料(式(1)〜(3))では、下式(6)のような劣化機構が知られている。この劣化機構では、チオフェン環のアルキル基が導入された部分が酸化されることにより、アルキル基が酸素原子に置換される。この反応では、分子量の大きなアルキル基に代わって分子量の小さい酸素原子が導入されるため、分子内の立体的なバランスが崩れ、分子全体としての平面性が失われる。また、酸素原子は電子吸引性を有するため、分子全体に非局在化していた電子が酸素原子の近傍に局在化されるようになり、π共役系が切断又は消滅する。
【0055】
【化6】

【0056】
例えば、式(7)の有機半導体材料(BFTT)を例に挙げて説明すると、式(7)の有機半導体材料は、中央で結合された2つのチオフェン環と、その両側に結合された2つのフルオレンとを備えた分子骨格を有する。この有機半導体材料は高い平面性を有しており、分子全体に電子が非局在化している。しかし、中央の5員環を光によって酸化すると、酸素原子の強い電子吸引性によって電子が局在化し、π共役系が切断又は消滅する。例えば、大気雰囲気において波長380nmの青色の光(50mW/cm)を6時間照射すると、1/10程度の伝導度に低下することが報告されており(Yong-Young Noh et.al.,Appl. Phys. Lett.,85 (2004) 2953.)、単純計算すると、市販されている数十W/cmの照射強度の紫外線を照射することで、0.36秒で同様の効果が得られるものと考えられる。
【0057】
【化7】

【0058】
以上により第1基板10が完成したら、第1基板上又は第2基板上に電気光学層を形成し、第1基板と第2基板とを貼り合わせる。或いは、第1基板と第2基板とを貼り合わせた後、第1基板と第2基板との間に電気光学層を形成する。以上により、図1に示した電気光学装置1が完成する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、不所望な領域に配置された半導体層18,15a,15bの導電性を光Lによって低下させるため、所望の領域に精度良く有機TFT30を形成することができる。また、有機TFT30のサイズが溶液42の濡れ広がりによって制限されないので、溶液42の塗布面積よりも小さなサイズの有機TFT30を形成することができる。また、光Lとしてレーザ光又はレンズで絞った光を用いているため、光Lとして紫外線を用いた場合でも光照射によるダメージを小さくすることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、半導体層18,15a,15bへの光照射をアニール処理後に行っているが、光照射はアニール処理前に行っても良い。アニール処理は有機半導体材料の配向状態を良好にし、分子間の電気伝導性(ホッピング伝導)を向上するために行うものであるが、有機半導体材料を配向させた後(アニール処理後)に光照射を行った場合には、有機半導体材料間のホッピング伝導は良好なものとなっているので、光照射による効果は限定的なものとなる。しかし、有機半導体材料を配向する前(アニール処理前)に光照射を行った場合には、有機半導体材料の分子骨格の変化によって有機半導体材料の配向性(液晶性)が低下するため、アニール処理を行っても、十分なホッピング伝導が期待できない。したがって、アニールを行う前に光照射を行えば、その分だけ半導体層18,15a,15bの導電性を低下させることができるため、効果は大きくなる。
【0061】
また本実施形態では、有機デバイスの一例として有機TFT13を説明したが、本発明の有機デバイスは有機TFT13に限定されるものではない。例えば、走査線12、データ線13、引き廻し配線14等を導電性有機材料で製造する場合にも、本実施形態と同様の製造方法を適用することができる。走査線12、データ線13、引き廻し配線14等は、高精細化が進むと、配線間のピッチが小さくなり、インクジェット法によって形成された配線では解像度に限界がある。このような場合には、配線間に形成された不要な導電部(溶液の濡れ広がりや、溶液の飛散若しくは誤滴下により配線同士が重なった部分)に光を照射し、導電性を低下させることで、配線間のリークを防止することができる。
【0062】
[第2の実施の形態]
図7は光照射工程の第2の実施形態の説明図である。図7は第1実施形態の図6に対応する図である。本実施形態では、面光源とマスク46を用いて配線領域10Bの半導体層18に光Lを照射している。マスク46は配線領域10Bに光透過領域46aを備えており、配線領域10B全面に一括で光Lを照射するようになっている。光Lとしては、第1実施形態で説明した光Lと同じものを用いることができる。この方法では、配線領域全体に光Lが照射されるため、一度の処理で配線領域10Bに存在する全ての半導体層を処理することができる。このため、製造工程が簡略化され、プロセスコストも低減できる。なお、表示領域10Aには光Lが照射されないので、表示領域10Aの半導体層15a,15bについては別の工程で光を照射する必要がある。この方法としては、図6に示した方法が適用できる。
【0063】
[第3の実施の形態]
図8は光照射工程の第3の実施形態の説明図である。図8(a)は第1実施形態の図6に対応する図であり、図8(b)は有機TFT30の断面図である。本実施形態では、ゲート電極17をマスクとして表示領域10Aと配線領域10Bの半導体層15a,15b,18に光Lを照射している。光Lとしては、第1実施形態で説明した光Lと同じものを用いることができる。この方法では、基板全体に光Lが照射されるため、一度の処理で表示領域10Aと配線領域10Bに存在する全ての半導体層を処理することができる。また、ゲート電極7をマスクとするため、新たに露光マスクを用意する必要がない。このため、製造工程が簡単になり、プロセスコストも低減できる。本実施形態の場合、有機TFT30のチャネル領域はゲート電極17によって保護されるため、有機TFT30の電気的特性が劣化される惧れはない。特にゲート電極17の幅はチャネル長よりも長く形成されているので、半導体層31の保護を万全にすることができる。
【0064】
なお、本実施形態ではトップゲート構造の有機TFT30を形成したが、ボトムゲート構造の有機TFTの場合も同様に処理することができる。図9はボトムゲート構造の有機TFTの断面図である。同図において光Lは半導体層15に対してゲート17側から照射される。この場合、基板10としては光Lを透過する透光性の基板を用いる必要がある。
【0065】
[電子機器]
図10は、本発明の有機デバイスを備えた電子機器の一実施形態である電子ペーパー1400の概略構成図である。電子ペーパー1400は、上記実施形態の電気光学装置を搭載した表示部1401と、従来の紙と同様の質感及び柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体1402とを備えている。なお、本発明の有機デバイスは、前述した電子ペーパーに限らず、種々の電子機器に搭載することができる。この電子機器としては例えば、電子ブック、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等がある。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1実施形態の電気光学装置の概略構成図である。
【図2】同電気光学装置の製造方法の説明図である。
【図3】同電気光学装置の製造方法の説明図である。
【図4】同電気光学装置の製造方法の説明図である。
【図5】同電気光学装置の製造方法の説明図である。
【図6】同電気光学装置の製造方法の説明図である。
【図7】第2実施形態の電気光学装置の製造方法の説明図である。
【図8】第3実施形態の電気光学装置の製造方法の説明図である。
【図9】同製造方法の変形例の説明図である。
【図10】電子機器の概略構成図である。
【符号の説明】
【0067】
1…電気光学装置、10…第1基板、15,15a,15b,18…半導体層(導電性有機膜)、17…ゲート電極(導電層)、30…有機TFT(有機デバイス)、42…溶液、46…マスク、46a…光透過領域、1400…電子ペーパー(電子機器)、L…光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の第1領域に導電性有機材料を含む溶液を配置する工程と、
前記溶液を乾燥することにより前記第1領域に導電性有機膜を形成する工程と、
前記第1領域以外の第2領域に配置された前記導電性有機膜に光を照射し、前記導電性有機膜の導電性を低下させる工程とを備えたことを特徴とする有機デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記導電性有機膜はπ共役系有機膜であり、
前記光は、π共役に係わる分子骨格の立体構造を変化させ、前記分子骨格内におけるπ電子軌道の重なりを切断することのできる波長及びエネルギーを持った光であることを特徴とする請求項1に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記光は、可視光であることを特徴とする請求項2に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記導電性有機膜はπ共役系有機膜であり、
前記光は、酸素又は水分の存在下で前記導電性有機膜を酸化させることのできる波長及びエネルギーを持った光であることを特徴とする請求項1に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記光は、紫外線であることを特徴とする請求項4に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記光は、レーザ光又はレンズで絞った光であり、前記第2領域に選択的に照射されることを特徴とする請求項5に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記光は、前記第2領域に前記光を透過する光透過領域を備えたマスクを用いて照射されることを特徴とする請求項5に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第1領域に前記光を透過しない導電層を形成し、前記導電層をマスクとして前記基板の全面に前記光を照射することを特徴とする請求項5に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記光を照射する側から見て、前記導電層は、前記第1領域における前記導電性有機膜の一部を覆うように形成されていることを特徴とする請求項8に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記導電層は薄膜トランジスタのゲート電極であり、
前記導電性有機膜の一部は前記薄膜トランジスタのチャネル領域であることを特徴とする請求項9に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記導電性有機膜を形成した後、前記導電性有機膜をアニールする工程を備え、
前記アニールする工程は、前記導電性有機膜に光を照射する工程の後に行われることを特徴とする請求項1〜10のいずれかの項に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかの項に記載の有機デバイスの製造方法により製造されてなる有機デバイスを備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−205262(P2008−205262A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40606(P2007−40606)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】