説明

有機半導体装置、有機半導体装置の製造方法、電子デバイス、電子機器および絶縁層形成組成物

【課題】吸湿性が低く、特性が経時的に劣化し難い有機半導体装置、かかる有機半導体装置を備え信頼性の高い電子デバイスおよび電子機器を提供すること。
【解決手段】ゲート絶縁層40と、バッファ層(第2の絶縁層)60とを有し、ゲート絶縁層40およびバッファ層60の少なくとも一方は、下記一般式(I)で表される高分子の端部の少なくとも一方がフッ素原子またはフッ素原子を含有する置換基で置換したものであって、理論フェノール価が2.0KOHmg/ポリマーg以下である絶縁性高分子を主材料として構成されている。


[ただし、式中、Rは、芳香環を含む二価の連結基を示し、式中、Yは、酸素原子または硫黄原子を示し、式中、Zは、カルボニル基または硫黄原子を含む二価の連結基を示す。また、nは、2以上の整数である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体装置、有機半導体装置の製造方法、電子デバイス、電子機器および絶縁層形成組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体的な電気伝導を示す有機材料(有機半導体材料)を使用した薄膜トランジスタの開発が進められている。
この薄膜トランジスタは、薄型軽量化に適すること、可撓性を有すること、材料コストが安価であること等の長所を有しており、フレキシブルディスプレイ等のスイッチング素子として期待されている。
【0003】
このような薄膜トランジスタにおいて、ゲート絶縁層の材料として無機材料を用いたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、ゲート絶縁層の形成に気相成膜法を用いるため、ゲート絶縁層の形成に手間と時間とを要するという問題や、ゲート絶縁層の形成時に有機半導体層に変質・劣化を生じさせてしまうおそれがある。
【0004】
かかる不都合を解消すべく、ゲート絶縁層の構成材料として、例えば、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等を用いることが行われる。
ところが、これらの樹脂は、極性を有しているため、吸湿性が高い。かかる薄膜トランジスタを大気中で使用した場合、ゲート絶縁体層が吸湿し、ゲート絶縁体層中の水分が上昇すると、イオン電流が流れるようになり、しきい電圧(Vth)のシフト、ゲートリーク電流の上昇、絶縁破壊等が生じ易くなるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−103719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、吸湿性が低く、特性が経時的に劣化し難い有機半導体装置および有機半導体装置の製造方法、かかる有機半導体装置に用いられる絶縁層形成組成物、かかる有機半導体装置を備え信頼性の高い電子デバイスおよび電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の有機半導体装置は、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、該ゲート電極に対して前記ソース電極および前記ドレイン電極を絶縁するゲート絶縁層と、該ゲート絶縁層に接触して設けられた有機半導体層と、該有機半導体層の前記ゲート絶縁層と反対側に接触して設けられた第2の絶縁層とを有し、
前記ゲート絶縁層および前記第2の絶縁層の少なくとも一方は、下記一般式(I)で表される高分子の端部の少なくとも一方がフッ素原子またはフッ素原子を含有する置換基で置換されたものであって、理論フェノール価が2.0KOHmg/ポリマーg以下である絶縁性高分子を主材料として構成されていることを特徴とする。
【0008】
【化1】

[ただし、式中、Rは、芳香環を含む二価の連結基を示し、式中、Yは、酸素原子または硫黄原子を示し、式中、Zは、カルボニル基または硫黄原子を含む二価の連結基を示す。また、式中、nは、2以上の整数である。]
これにより、ポリマー構造と水酸基含有量を規定することにより、吸湿性が低く、特性が経時的に劣化し難い有機半導体装置が得られる。また、Yが酸素原子である場合には、絶縁性高分子をより極性の高い溶媒に溶解することが可能となるとともに、絶縁性高分子をゲート絶縁層に用いる場合には、酸素原子が有機半導体層中に生起した正孔を捕捉して、有機半導体層の導電化をより確実に防止することができるようになる。
【0009】
本発明の有機半導体装置では、前記フッ素原子を含有する置換基は、下記化2で表わされるものであることが好ましい。
【化2】

[ただし、式中、Xは、1〜5の整数を示す。]
フッ素原子がベンゼン(共役系の構造)に結合しているため、絶縁性高分子の分子構造内において、電子がフッ素原子側に偏在しており、そのため、隣接する分子から電子を引き抜く力が弱い。そのため、特に、絶縁性高分子を主材料としてゲート絶縁層を構成することにより、有機半導体層からの電子吸引力が弱いものとなり、有機半導体層の導電化を防止することができる。
【0010】
本発明の有機半導体装置では、前記Rは、下記化3のうちのいずれかで表わされるものであることが好ましい。
【化3】

これにより、絶縁性高分子が高い絶縁性を示すようになり、高い絶縁性を有するゲート絶縁層および/または第2の絶縁層を形成することができる。また、絶縁性高分子で形成された膜の機械的強度(膜強度)が向上する。
【0011】
本発明の有機半導体装置では、前記Rは、極性基を有しないものであることが好ましい。
これにより、絶縁性高分子の極性を比較的低くすることができる。そのため、有機半導体層中に電気伝導を妨げるようなキャリアの捕獲準位の形成を抑制することができるため、特に、ゲート絶縁層の構成材料として適したものとなる。
【0012】
本発明の有機半導体装置では、前記Rは、下記化4のうちのいずれかで表わされるものであることが好ましい。
【化4】

これにより、芳香環間の凝集力が働き絶縁膜の強度が増す。
【0013】
本発明の有機半導体装置では、前記式(I)中Zは、下記化5のうちのいずれかで表わされるものであることが好ましい。
【化5】

[ただし、式中、Rは、芳香環を含む二価の連結基を示す。]
これにより、絶縁性高分子をより極性の高い溶媒に溶解することが可能となる。また、酸素原子を含むZを有する絶縁性高分子をトップゲート構造の有機半導体装置において、そのゲート絶縁層に用いる場合には、酸素原子が有機半導体層中に生起した正孔を捕捉して、有機半導体層の導電化をより確実に防止することができるようになる。
【0014】
本発明の有機半導体装置では、前記Zは、カルボニル基またはエステル基を少なくとも1つ含んでいることが好ましい。
特に、カルボニル基またはエステル基を含むことにより、絶縁性高分子のケトン系溶媒やエステル系溶媒のように比較的極性の高い溶媒への溶解度がさらに高まる。これらの溶媒は、有機半導体層を溶解または膨潤し難い溶媒であるため、トップゲート構造の有機半導体装置において、ゲート絶縁層を液相プロセスにより形成する場合であっても、有機半導体層が変質・劣化するのを好適に防止することができる。
【0015】
本発明の有機半導体装置では、前記Rは、下記化6のうちのいずれかで表わされるものであることが好ましい。
【化6】

これにより、絶縁性高分子が高い絶縁性を示すようになり、高い絶縁性を有するゲート絶縁層および/または第2の絶縁層を形成することができる。また、絶縁性高分子で形成された膜の機械的強度(膜強度)が向上する。
【0016】
本発明の有機半導体装置では、前記Rは、極性基を有しないものであることが好ましい。
これにより、絶縁性高分子の極性を比較的低くすることができる。そのため、有機半導体層中に電気伝導を妨げるようなキャリアの捕獲準位の形成を抑制することができるため、特に、ゲート絶縁層の構成材料として適したものとなる。
【0017】
本発明の有機半導体装置では、前記Rは、下記化7のうちのいずれかで表わされるものであることが好ましい。
【化7】

これにより、芳香環間の凝集力が働き絶縁膜の強度が増す。
【0018】
本発明の有機半導体装置では、前記ゲート絶縁層および前記第2の絶縁層の少なくとも一方は、100kHzにおける誘電率が2.9以上であることが好ましい。
特に、ゲート絶縁層の誘電率が上記範囲内である場合には、十分な絶縁性を発揮しつつ、有機半導体装置の作動電圧を低くすることができる。
本発明の有機半導体装置では、当該有機半導体装置は、基板を有し、前記ソース電極および前記ドレイン電極が前記ゲート電極より前記基板側に位置するトップゲート構造であり、少なくとも前記ゲート絶縁層を、前記絶縁性高分子を主材料として構成したことが好ましい。
前記絶縁性高分子を主材料としてゲート絶縁層を構成することにより、トップゲート構造の有機半導体装置において、ゲート絶縁層を液相プロセスにより形成する場合であっても、有機半導体層が変質・劣化するのを好適に防止することができる。
【0019】
本発明の有機半導体装置では、前記ゲート絶縁層の平均厚さは、10〜5000nmであることが好ましい。
これにより、ソース電極およびドレイン電極とゲート電極とを確実に絶縁しつつ、薄膜トランジスタの動作電圧を低くすることができる。
本発明の有機半導体装置では、前記式(I)で表される絶縁性高分子の重量平均分子量は、5000〜500000であることが好ましい。
これにより、絶縁性高分子で形成された膜の機械的強度を高めることができる。また、溶媒へ溶解した際の溶液の粘度を液相プロセスに適したものとすることができる。よって、液相プロセスを用いて、比較的容易に、十分な膜強度を有するゲート絶縁層および/または第2の絶縁層を形成することができる。
【0020】
本発明の有機半導体装置の製造方法は、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、該ゲート電極に対して前記ソース電極および前記ドレイン電極を絶縁するゲート絶縁層と、該ゲート絶縁層に接触して設けられた有機半導体層と、該有機半導体層の前記ゲート絶縁層と反対側に接触して設けられた第2の絶縁層とを有する有機半導体装置の製造方法であって、
前記第2の絶縁層を形成する第1の工程と、
前記第2の絶縁層上に、前記ソース電極および前記ドレイン電極を互いに離間して形成する第2の工程と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極とに接触するように、前記有機半導体層を形成する第3の工程と、
前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記有機半導体層を覆うように、前記ゲート絶縁層を形成する第4の工程と、
前記ゲート絶縁層上に、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の領域に対応するように前記ゲート電極を形成する第5の工程とを有し、
前記第1の工程および前記第4の工程の少なくとも一方は、下記一般式(I)で表される高分子の端部の少なくとも一方がフッ素原子またはフッ素原子を含有する置換基で置換されたものであって、理論フェノール価が2.0KOHmg/ポリマーg以下の絶縁性高分子を溶媒に溶解した溶液を用いた液相プロセスにより行われるものであることを特徴とする。
【化8】

[ただし、式中、Rは、芳香環を含む二価の連結基を示し、式中Yは、酸素原子または硫黄原子を示し、式中、Zは、カルボニル基または硫黄原子を含む二価の連結基を示す。また、式中nは、2以上の整数である。]
液相プロセスによれば、低温での層形成が可能なため、高温の熱履歴を経ることによる有機半導体装置の特性の低下を防止することができる。その結果、吸湿性が低く、特性が経時的に劣化し難い有機半導体装置が得られる。
【0021】
本発明の有機半導体装置の製造方法では、前記溶媒は、ケトン系溶媒およびエステル系溶媒のうちの少なくとも一方を主成分とするものであることが好ましい。
前記絶縁性高分子は、ケトン系溶媒やエステル系溶媒のように比較的極性の高い溶媒に良好に溶解させることができる。また、これらの溶媒は、有機半導体層を溶解または膨潤し難い溶媒であるため、特にトップゲート構造の有機半導体装置において、ゲート絶縁層を液相プロセスにより形成する場合であっても、有機半導体層が変質・劣化するのを好適に防止することができる。
【0022】
本発明の有機半導体装置の製造方法では、前記第5の工程は、導電性高分子または金属粒子を水系分散媒に分散してなる電極形成用材料を用いて液相プロセスにより行われるものであることが好ましい。
かかる液相プロセスにおいて、例えば、電極形成用材料をインクジェト法により供給することにより、寸法精度の高いゲート電極を簡便に形成することができる。
本発明の電子デバイスは、本発明の有機半導体装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子デバイスが得られる。
本発明の電子機器は、本発明の電子デバイスを備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【0023】
本発明の絶縁層形成組成物は、下記一般式(I)で表される高分子の端部の少なくとも一方がフッ素原子またはフッ素原子を含有する置換基で置換されたものであって、理論フェノール価が2.0KOHmg/ポリマーg以下である絶縁性高分子を含むことを特徴とする。
【化9】

[ただし、式中、Rは、芳香環を含む二価の連結基を示し、式中Yは、酸素原子または硫黄原子を示し、式中、Zは、カルボニル基または硫黄原子を含む二価の連結基を示す。また、式中nは、2以上の整数である。]
これにより、吸湿性が低く特性が劣化し難い有機半導体装置を得られるだけでなく、前記絶縁性高分子を含む溶液に対する溶媒の選択範囲を大幅に拡げることができる。例えば液相プロセスに最適な溶液を作製することが可能になり、容易にかつ均一性の高い十分な膜強度を有する、有機半導体装置のゲート絶縁層および/または第2の絶縁層(バッファ層)を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、以下、本発明の有機半導体装置、有機半導体装置の製造方法、電子デバイス、電子機器および絶縁層形成組成物について、好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下では、本発明の有機半導体装置をアクティブマトリクス装置に適用した場合を一例に説明する。
【0025】
<アクティブマトリクス装置>
図1は、本発明の有機半導体装置を適用したアクティブマトリクス装置の構成を示すブロック図、図2は、図1に示すアクティブマトリクス装置が備える有機薄膜トランジスタの構成を示す図(縦断面図および平面図)、図3および図4は、それぞれ、図2に示す有機薄膜トランジスタの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図2〜図4中上側を「上」、下側を「下」として説明する。
【0026】
図1に示すアクティブマトリクス装置300は、基板500と、いずれも基板500上に設けられ、互いに直交する複数のデータ線301と、複数の走査線302と、これらのデータ線301と走査線302との各交点付近に設けられた有機薄膜トランジスタ1(以下、「薄膜トランジスタ1」と言う。)および画素電極303とを有している。
そして、薄膜トランジスタ1が有するゲート電極50は走査線302に、ソース電極20aはデータ線301に、ドレイン電極20bは後述する画素電極(個別電極)303に、それぞれ接続されている。
【0027】
本実施形態の薄膜トランジスタ1は、ソース電極20aおよびドレイン電極20bがゲート電極50より基板500側に位置するトップゲート構造(トップゲート型)の薄膜トランジスタである。
具体的には、図2(a)に示すように、この薄膜トランジスタ1は、基板500上に設けられたバッファ層(第2の絶縁層)60と、バッファ層60上に、互いに分離して設けられたソース電極20aおよびドレイン電極20bと、ソース電極20aおよびドレイン電極20bに接触して設けられた有機半導体層30と、有機半導体層30とゲート電極50との間に位置するゲート絶縁層40と、これらの各層を覆うように設けられた保護層70とを有している。
以下、各部の構成について、順次説明する。
【0028】
基板500は、薄膜トランジスタ1(アクティブマトリクス装置300)を構成する各層(各部)を支持するものである。
基板500には、例えば、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリイミド(PI)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)、石英基板、シリコン基板、金属基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。
【0029】
薄膜トランジスタ1に可撓性を付与する場合には、基板500には、プラスチック基板、あるいは、薄い(比較的膜厚の小さい)金属基板が選択される。
基板500上には、バッファ層(下地層)60が設けられている。
このバッファ層60は、後述する有機半導体層30に水分が浸入するのを防止する機能や、基板500がガラス材料等で構成される場合、基板500から有機半導体層30にイオン等が拡散するのを防止する機能を有する。
【0030】
このような有機半導体層30に接触するバッファ層60、および、後述するゲート絶縁層40の少なくとも一方(好ましくは双方)が、後述する一般式(I)で表される高分子の端部の少なくとも一方をフッ素原子またはフッ素原子を含有する置換基で置換したものであって、理論フェノール価が2.0KOHmg/ポリマーg以下である絶縁性高分子を主材料として構成されている。この絶縁性高分子については、後に詳述する。
【0031】
バッファ層60の平均厚さは、0.01〜20μm程度であるのが好ましく、0.1〜1μm程度であるのがより好ましい。
バッファ層60上には、所定の間隔を離間して、ソース電極20aおよびドレイン電極20bが設けられている。
ソース電極20aおよびドレイン電極20bの構成材料としては、例えば、Au、Ag、Cu、Pt、Ni、Cr、Ti、Ta、Alまたはこれらを含む合金のような金属材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
これらの中でも、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの構成材料としては、それぞれ、Au、Ag、Cu、Ptまたはこれらを含む合金を主とするものが好ましい。これらのものは、比較的仕事関数が大きいため、有機半導体層30がp型である場合には、ソース電極20aをこれらの材料で構成することにより、有機半導体層30への正孔(キャリア)の注入効率を向上させることができる。
【0033】
なお、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、10〜2000nm程度であるのが好ましく、50〜1000nm程度であるのがより好ましい。
ソース電極20aとドレイン電極20bとの距離、すなわち、図2(b)に示すチャネル長Lは、0.5〜100μm程度であるのが好ましく、1〜50μm程度であるのがより好ましい。このような範囲にチャネル長Lの値を設定することにより、薄膜トランジスタ1の特性の向上(特に、ON電流値の上昇)を図ることができる。
【0034】
また、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの長さ、すなわち、図2(b)に示すチャネル幅Wは、0.1〜5mm程度であるのが好ましく、0.3〜3mm程度であるのがより好ましい。このような範囲にチャネル幅Wの値を設定することにより、寄生容量を低減させることができ、薄膜トランジスタ1の特性の劣化を防止することができる。また、薄膜トランジスタ1の大型化を防止することもできる。
ソース電極20aおよびドレイン電極20bに接触するように、有機半導体層30が設けられている。
【0035】
有機半導体層30の構成材料としては、例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)(PTV)、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PFO)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−メトキシフェニル)−ビス−N,N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン)(PFMO)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ベンゾチアジアゾール)(BT)、フルオレン−トリアリールアミン共重合体、トリアリールアミン系ポリマー、フルオレン−ビチオフェン共重合体(F8T2)、ポリアリールアミン(PAA)のような高分子の有機半導体材料、フラーレン、金属フタロシアニンまたはその誘導体、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン等のアセン分子材料、クォーターチオフェン(4T)、セキシチオフェン(6T)、オクチチオフェン(8T)、ジヘキシルクォーターチオフェン(DH4T)、ジヘキシルセキシチオフェン(DH6T)等のα−オリゴチオフェン類のような低分子の有機半導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
これらの中でも、特に、高分子の有機半導体材料を主成分とするものを用いるのが好ましい。高分子の有機半導体材料は、キャリア輸送能に優れることから好ましい。
また、高分子の有機半導体材料を主材料として構成される有機半導体層30は、薄型化・軽量化が可能であり、可撓性にも優れるため、フレキシブルディスプレイのスイッチング素子等として用いられる薄膜トランジスタ1への適用に適している。
【0037】
この有機半導体層30の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜1000nm程度であるのが好ましく、1〜500nm程度であるのがより好ましく、1〜100nm程度であるのがさらに好ましい。
なお、有機半導体層30は、ソース電極20aとドレイン電極20bとの間の領域(チャネル領域)に選択的に設けられた構成のものであってもよく、ソース電極20aおよびドレイン電極20bのほぼ全体を覆うように設けられた構成のものであってもよい。
【0038】
有機半導体層30と接触し、かつ、有機半導体層30、ソース電極20aおよびドレイン電極20bを覆うように、ゲート絶縁層40が設けられている。
このゲート絶縁層40は、ソース電極20aおよびドレイン電極20bに対して、後述するゲート電極50を絶縁するものである。
ゲート絶縁層40の平均厚さは、特に限定されないが、10〜5000nm程度であるのが好ましく、100〜2000nm程度であるのがより好ましい。ゲート絶縁層40の厚さを前記範囲とすることにより、ソース電極20aおよびドレイン電極20bとゲート電極50とを確実に絶縁しつつ、薄膜トランジスタ1の動作電圧を低くすることができる。後述すように、ゲート絶縁層を構成する絶縁性高分子(後述する一般式(I)で表わされる高分子(絶縁層形成組成物))は、液相プロセスに適した高分子であるため、液相プロセスを用いて、比較的容易かつ高精度に、上記範囲内に属するような比較的薄い層を形成することができる。
【0039】
ゲート絶縁層40上の所定の位置、すなわち、ソース電極20aとドレイン電極20bとの間の領域に対応する位置には、有機半導体層30に電界をかけるゲート電極50が設けられている。
このゲート電極50の構成材料としては、例えば、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cuまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素材料、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体、およびこれらを含む混合物等の導電性高分子材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、混合物系の導電性高分子材料としては、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)等が挙げられる。
【0040】
ゲート電極50の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000nm程度であるのが好ましく、1〜200nm程度であるのがより好ましい。
また、以上のような各層を覆うようにして、保護層70が設けられている。
この保護層70は、有機半導体層30に水分が浸入するのを防止する機能や、ゲート電極50に異物が接触して、隣接する薄膜トランジスタ1同士がショートするのを防止する機能を有する。
【0041】
保護層70の構成材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルフェニレン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂、ポリパラキシリレンのようなパリレン樹脂、ポリビニルアルコールのようなポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルフェノールあるいはノボラック樹脂のようなフェノール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテンなどのオレフィン系樹脂のような有機系絶縁材料、SiO、SiNのような無機系絶縁材料等が挙げられる。また、後述する一般式(I)で表される絶縁性高分子材料を用いることもできる。
保護層70の平均厚さは、特に限定されないが、0.05〜20μm程度であるのが好ましく、0.1〜5μm程度であるのがより好ましい。
なお、保護層70は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
【0042】
−薄膜トランジスタ1の作動−
このような薄膜トランジスタ1では、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの間に電圧を印加した状態で、ゲート電極50にゲート電圧を印加すると、有機半導体層30のゲート絶縁層40との界面付近にチャネル(キャリアの流路)が形成され、チャネル領域をキャリア(正孔)が移動することで、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの間に電流が流れる。
【0043】
すなわち、ゲート電極50に電圧が印加されていないOFF状態では、ソース電極20aおよびドレイン電極20bとの間に電圧を印加しても、有機半導体層30中にほとんどキャリアが存在しないため、微少な電流しか流れない。
一方、ゲート電極50に電圧が印加されているON状態では、有機半導体層30のゲート絶縁層40に面した部分に電荷が誘起され、チャネルが形成される。この状態でソース電極20aおよびドレイン電極20bの間に電圧を印加すると、チャネル領域を通って電流が流れる。
【0044】
ここで、ゲート絶縁層40およびバッファ層60の少なくとも一方(好ましくは両方)は、100kHzにおける誘電率が2.9以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましい。特に、ゲート絶縁層40の誘電率を前記範囲内とすることにより、前記ON状態では、有機半導体層30のゲート絶縁層40に面した部分に電荷がより誘起され易くなる。そのため、ゲート絶縁層40の十分な絶縁性を保ちつつ、薄膜トランジスタ1の動作電圧を低くすることができる。
次に、下記一般式(I)で表される高分子に、絶縁性高分子の端部の少なくとも一方をフッ素原子またはフッ素原子を含有する置換基で置換した絶縁性高分子について説明する。言い換えれば、このような絶縁性高分子は、少なくとも一方の端がフッ素原子で終端しているものであるとも言える。
【0045】
【化10】

[ただし、式中、Rは、芳香環を含む二価の連結基を示し、式中、Yは、酸素原子または硫黄原子を示し、式中、Zは、カルボニル基または硫黄原子を含む二価の連結基を示す。nは、2〜500までの整数である。]
【0046】
この絶縁性高分子は、フッ素原子を含有する置換基と、フッ素化された芳香環とを含むため吸湿性が低い。すなわち、絶縁性高分子は高い耐吸湿性を示す。そして、かかる絶縁性高分子で構成される層の吸水率を、0.1%以下(好ましくは0.07%以下程度)とすることができる。
また、本発明では、前記絶縁性高分子の理論フェノール価が2.0KOHmg/ポリマーg以下であることを特徴としている。ここで、理論フェノール価とは、高分子(ポリマー)1gあたりの水酸基(−OH)の数を理論的に表す数値である。この数値が小さい程、高分子の単位重量中に含まれる水酸基の数が少ないことを意味する。そのため、前記絶縁性高分子材料の理論フェノール価を前記のような範囲とすることにより、絶縁性がより高まることとなる。このような高分子は、ポリマーのフェノール端末を封止部材を用いて封止することでも得られるし、仕込み比率を変更することによっても得ることができる。
【0047】
このように、本発明では、十分な絶縁性を得るために、前記絶縁性高分子の理論フェノール価を2.0KOHmg/ポリマーg以下としたことを特徴としているが、理論フェノール価を1.0KOHmg/ポリマーg以下とすることがより好ましく、0(ゼロ)KOHmg/ポリマーgとすることがさらに好ましい。これにより、前述の効果がより顕著なものとなる。
【0048】
したがって、かかる絶縁性高分子を主材料として、ゲート絶縁膜40やバッファ層60を構成することにより、吸湿による薄膜トランジスタ1の特性の劣化、特に、イオン電流の発生に伴うしきい電圧(Vth)のシフト(変動)、ゲートリーク電流の上昇、絶縁破壊の発生等を防止することができる。
特に、前記絶縁性高分子では、フッ素化された芳香環を含んでいる。当該部分においては、フッ素原子がベンゼン(共役系の構造)に結合しているため、絶縁性高分子の分子構造内において、電子がフッ素原子側に偏在している。そのため、隣接する分子から電子を引き抜く力、すなわち、有機半導体層30からの電子吸引力が弱い。
【0049】
このようなことから、前記絶縁性高分子を主材料としてゲート絶縁層40を構成することにより、有機半導体層30の導電化を確実に防止するができる。
また、この絶縁性高分子は、フッ素化された芳香環を含むことにより、絶縁性高分子同士の凝集力が低下し、各種溶媒に対して高い溶解性を示す。このため、液相プロセスを用いて、ゲート絶縁膜40やバッファ層60を形成することが可能となり、薄膜トランジスタ1の製造コストの削減を図ることができる。また、液相プロセスによれば、低温での層形成が可能なため、高温の熱履歴を経ることによる薄膜トランジスタ1の特性の低下を防止することができる。このようなゲート絶縁膜40やバッファ層60を形成する方法については、後に詳述する。ここで、液相プロセスとは、成膜したい材料を溶解もしくは分散させることで液状体とし、この液状体を用いてスピンコート法、ディップ法、あるいは液滴吐出法(インクジェット法)等により薄膜を作製する方法である。
【0050】
このような絶縁性高分子の重量平均分子量としては、特に限定されないが、5千〜20万程度であるのが好ましく、2万〜10万程度であることがより好ましい。重量平均分子量は、GPCを用いて、ポリスチレン換算で求めることができる。重量平均分子量が小さ過ぎると、二価の連結基Z、Rの種類によっては、成膜後において、十分な膜強度等が得られないおそれがあり、一方、重量平均分子量が大き過ぎると、溶媒へ溶解した際の溶液の粘度が高くなり過ぎ、液相プロセスによる成膜が困難となるおそれがある。すなわち、絶縁性高分子の重量平均分子量を上記範囲とすることにより、液相プロセスを用いて、比較的容易に、十分な膜強度を有するゲート絶縁層40およびバッファ層60を形成することができる。
【0051】
前記絶縁性高分子は、前述したように、一般式(I)で表される高分子の端部の少なくとも一方(好ましくは両方)がフッ素原子またはフッ素原子を含有する置換基で置換されているものである。
このような置換基としては、特に限定されず、例えば、−CF、−CHCF等の非共役系の構造にフッ素原子が結合するもの、下記化11に示すような共役系の構造にフッ素原子が結合するものなどが挙げられる。この置換基としては、下記化11に示す置換基が好適である。
【0052】
【化11】

[ただし、Xは、1〜5の整数であり、芳香環に結合するFの数を示す。]
【0053】
さらに、化11で示される置換基のうちでも、特に、下記化12で示す、5つの水素全てがフッ素原子で置換されたものであるのがより好ましい。このような構成とすることにより、前記絶縁性高分子は、より高い耐吸湿性を示す。
また、このような構成をとることにより、フッ素原子がベンゼン(共役系の構造)に結合しているため、絶縁性高分子の分子構造内において、電子がフッ素原子側に偏在しており、そのため、隣接する分子から電子を引き抜く力、すなわち、有機半導体層30からの電子吸引力が弱い。このようなことから、前記絶縁性高分子を主材料としてゲート絶縁層40を構成することにより、有機半導体層30の導電化を確実に防止するができる。
【0054】
【化12】

【0055】
以下、式(I)中のY、Z、Rについて、それぞれ説明する。
まず、式(I)中のYについて説明する。
Yは、前述したように、酸素原子または硫黄原子であるが、酸素原子であるのがより好ましい。これにより、絶縁性高分子をより極性の高い溶媒に溶解することが可能となるとともに、絶縁性高分子をゲート絶縁層40に用いる場合には、酸素原子が有機半導体層30中に生起した正孔を捕捉して、有機半導体層30の導電化をより確実に防止することができるようになる。
【0056】
次いで、式(I)中のZについて説明する。
Zは、カルボニル基または硫黄原子を含む二価の連結基を示し、例えば、式(I)中のZとしては下記化13が好適である。
【0057】
【化13】

【0058】
これらは、カルボニル基(>C=O)、エステル基(−COO−)、スルホニル基(>S(=O))またはスルフィド結合(−S−)を有しているため、絶縁性高分子を極性の高い溶媒に溶解することが可能となる。
これらの中でも、カルボニル基またはエステル基を含むものがより好ましい。カルボニル基(またはエステル基)を含む前記絶縁性高分子においては、カルボニル基(またはエステル基)中の酸素原子が非共有電子対の存在により弱いルイス塩基としての性質を示すため、仮に有機半導体層30中に正孔が生起した場合でも、この正孔を捕捉することができる。
【0059】
特に、カルボニル基(またはエステル基)は、フッ素原子が結合したベンゼン環に直接結合しており、これらの構造間における共役により、カルボニル基(またはエステル基)が有する酸素原子は、正孔を捕捉した状態で安定化する能力に優れる。このため、前記絶縁性高分子は、有機半導体層30の導電化を防止する機能が極めて高い。
また、カルボニル基(またはエステル基)を含むことにより、前記絶縁性高分子材料を、ケトン系溶媒やエステル系溶媒のように比較的極性の高い溶媒に溶解させることができる。これらの溶媒は、有機半導体層30を溶解または膨潤し難い溶媒であるため、本実施形態のように、トップゲート構造の薄膜トランジスタ1において、ゲート絶縁層40を液相プロセスにより形成する場合であっても、有機半導体層30が変質・劣化するのを好適に防止することができる。
以上のようなことから、フッ素化されたベンゼン環を有し、かつ、カルボニル基(またはエステル基)を含む絶縁性高分子を主材料としてゲート絶縁層40を構成することにより、オン/オフ比が高く、低電圧駆動可能な薄膜トランジスタ1が得られる。
次いで、式(I)中のRおよびZ中のRについて説明する。
【0060】
およびRとしては、それぞれ、特に限定されないが、芳香環を少なくとも1つ含むものが好ましい。芳香環は、π電子を有するため、他の分子を引き付け易い性質を有する。そのため、前記絶縁性高分子に含まれるRおよびRが芳香環を含むことにより、複数の前記絶縁性高分子が互いに引き付け合い、前記絶縁性高分子の密度が高くなる。このような絶縁性高分子を主材料として、ゲート絶縁層40やバッファ層60を形成することで、芳香環により、この部分のポリマーの凝集力が増す為、膜にした時の機械的強度が増す。
【0061】
やRに含まれる芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、1,3,5−トリアジン環等が挙げられるが、これらの中でも、特に、ベンゼン環や1,3,5−トリアジン環等の1つの環で構成された芳香環が好適に用いられる。これにより、前記絶縁性高分子を溶媒へ溶解した際の溶液の粘度を液相プロセスに適した粘度とすることができる。
このようなRおよびRとしては、それぞれ、下記化14に示されるものが好適である。なお、RおよびRは、互いに同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。
【0062】
【化14】

およびRとして化14で示される基を用いることにより、絶縁性高分子は、より高い絶縁性を示すようになる。また、絶縁性高分子で形成される層(ゲート絶縁層40やバッファ層60)の機械的強度(膜強度)が向上する。
【0063】
さらに、RおよびRとしては、それぞれ、極性基を有していないものであることが好ましい。これにより、前記絶縁性高分子の極性を比較的低くすることができる。そのため、有機半導体層中に電気伝導を妨げるようなキャリアの捕獲準位の形成を抑制することができるため、特に、ゲート絶縁層40の構成材料として適したものとなる。
極性基としては、例えば、カルボニル基(>C=O)、スルホニル基(>S(=O))、−CF、−N(Bu)等が挙げられる。
【0064】
また、RおよびRとしては、それぞれ、化14で表わされた複数の基のうち、下記化15で表わすことのできるものであることが好ましい。より具体的には、RおよびRとしては、それぞれ、下記化16に示されるものが好適に用いられる。これにより、絶縁性高分子は、さらに高い絶縁性を示すようになる。
【0065】
【化15】

[ただし、式中Rは、酸素原子、炭素数1〜3のアルキレン基または2以上の芳香環を含む連結基を示す。]
【0066】
【化16】

【0067】
例えば、RおよびRを化14(好ましくは、化16)に示したものの中から、それぞれ選択することにより、薄膜トランジスタ1のしきい電圧(Vth)や、オン/オフ比等を所望のものに設定することができる。
以上、絶縁性高分子について詳細に説明した。このような絶縁性高分子は、例えば、下記化17で示されるフッ素モノマーのうちの1種と、下記化18で示されるビスフェノールのうちの1種とを縮合することにより得ることができる。なお、フッ素モノマーとしては、化17で示されるものに限定されず、同様に、ビスフェノールとしては、化18で示されるものに限定されない。
【0068】
【化17】

【0069】
【化18】

【0070】
例えば、より具体的には、前記絶縁性高分子としては、下記化20で示されるものが挙げられる。化20中の式(A)で示される絶縁性高分子材料は、下記化19の式(19−1)で示されるフッ素モノマーと式(18−1)で示されるビスフェノールとを所望の仕込み比率で縮合することにより得られる。同様に、式(B)で示される絶縁性高分子は、式(19−2)で示されるフッ素モノマーと式(18−1)で示されるビスフェノールとを所望の仕込み比率で縮合することにより得られ、式(C)で示される絶縁性高分子は、式(19−1)で示されるフッ素モノマーと式(18−2)で示されるビスフェノールとを所望の仕込み比率で縮合することにより得られる。式(A)〜(C)で表わされる絶縁性高分子は、いずれも、その両端にフッ素モノマーが位置しており、それにより、両端がいずれもフッ素原子(フッ素原子を含む置換基)で終端している(置換されている)。なお、絶縁性高分子としては、式(A)〜(C)に限定されるものではない。
【0071】
【化19】

【0072】
【化20】

【0073】
ここで、縮合する際の前記フッ素モノマーの仕込み量(mol数)をAとし、前記ビスフェノールの仕込み量(mol数)をBとしたとき、前記フッ素モノマーと前記ビスフェノールとの仕込み比率(モル比)A/Bは、1.2/1〜1/1程度であるのが好ましく、1.1/1〜1/1程度であるのがより好ましく、1.05/1〜1/1程度であるのがより好ましい。
【0074】
このような数値範囲とすることにより、より確実に、前記絶縁性高分子の理論フェノール価を2.0KOHmg/ポリマーg以下とすることができる。そのため、上記範囲の仕込み比率で得られた絶縁性高分子にて形成された薄膜は、優れた絶縁性を発揮することができる。これに対し、前記仕込み比率が上記上限値を超えると、フッ素モノマーの数(mol数)が、ビスフェノールの数に対して過剰となってしまい、反応条件等によっては、例えば、高分子量化を図ることが困難となり、膜強度が低下する場合がある。一方、前記仕込み比率が上記下限値未満であると、ビスフェノールの数がフッ素モノマーの数に対して過剰であるため、反応条件等によっては、高分子中に多量の水酸基(−OH)が存在してしまい、十分な絶縁性を発揮することができない場合がある。
次いで、理論フェノール価の算出方法について簡単に説明する。
【0075】
まず、ビスフェノールがフッ素モノマーに対して過剰に存在する場合について、前記仕込み比率A/Bを1/1.025とした場合、例えば、フッ素モノマー40molとビスフェノール41molとを反応(縮合)させた場合を例に説明する。なお、以下では、説明の便宜上、式(19−2)で示されるフッ素モノマーと式(18−1)で示されるビスフェノールとを縮合する場合について代表して説明する。
この場合、フッ素モノマーとビスフェノールとが全て縮合したと仮定すると、下記化21に示すように、両端が水酸基(−OH)で終端した絶縁性高分子が得られることとなる。
【0076】
【化21】

【0077】
このような絶縁性高分子のユニット(繰り返し単位)の分子量は、746であり、絶縁性高分子の分子量は30048である。理論フェノール価は、ポリマー1gあたりの水酸基(−OH)量をKOH換算で表わすものであるため、(価数(水酸基の数)/絶縁性高分子の分子量)×(1molのKOHの重量)で算出することができる。したがって、化21で示される絶縁性高分子のフェノール価は、(2/30048)×56.1で表わされ、当該式より、3.73KOHmg/ポリマーgと求まる。ちなみに、この数値は、本発明の範囲外であるため(上限値を超えるため)、このような絶縁性高分子により形成された薄膜は、十分な耐吸湿性および絶縁性を有していない。
【0078】
次いで、ビスフェノールとフッ素モノマーとが等量、すなわち、前記仕込み比率A/Bが1/1の場合について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、式(19−1)で示されるフッ素モノマーと式(18−1)で示されるビスフェノールとを縮合する場合について代表して説明する。
この場合、フッ素モノマーとビスフェノールとの縮合により、下記化22に示すように、一端が水酸基(−OH)で終端し、他端がフッ素原子で終端した絶縁性高分子が得られることとなる。
【0079】
【化22】

【0080】
この場合には、例えば、浸透クロマトグラフ分析(GPC)にて、縮合により得られた絶縁性高分子の数平均分子量Mnを求め、求められた数平均分子量Mnが例えば38000であった場合、この絶縁性高分子の理論フェノール価は、(1/38000)×56.1で表わされ、当該式より、1.48KOHmg/ポリマーgと求まる。
【0081】
次いで、フッ素モノマーがビスフェノールに対して過剰に存在する場合について説明する。この場合には、前述した式(A)〜(C)で示される高分子のように、両端がともにフッ素で終端している絶縁性高分子が得られる。この場合、この高分子中に水酸基が存在していないため(すなわち水酸基の数が0(ゼロ)であるため)、当該絶縁性高分子の理論フェノール価は、0(ゼロ)となる。
【0082】
−アクティブマトリクス装置の製造方法−
次に、アクティブマトリクス装置300の製造方法について説明する。
なお、以下では、薄膜トランジスタ1の製造方法(本願発明の製造方法)を中心に説明する。
【0083】
[1] バッファ層形成工程(図3(a)参照)
まず、基板500を用意し、基板500上にバッファ層60を形成する。
バッファ層60は、例えば、前述した絶縁性高分子を溶媒に溶解した溶液を、基板500上に供給した後、脱溶媒する方法(液相プロセス)により形成することができる。
溶液の調製に用いる溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、あるいはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0084】
また、溶液を基板500上に供給する方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、マイクロコンタクトプリンティング法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
脱溶媒の方法としては、例えば、自然乾燥、真空乾燥、加熱による乾燥、ガス(例えば不活性ガス等)を吹付けることによる乾燥等の方法を用いることができる。
【0085】
[2] ソース電極およびドレイン電極形成工程(図3(b)参照)
次に、バッファ層60上に、ソース電極20aおよびドレイン電極20bを所定距離離間して形成する。
まず、バッファ層60上に金属膜(金属層)を形成する。これは、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等により形成することができる。
【0086】
この金属膜上に、レジスト材料を塗布した後に硬化させ、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの形状に対応する形状のレジスト層を形成する。このレジスト層をマスクとして用いて、金属膜の不要部分を除去する。この金属膜の除去には、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
その後、レジスト層を除去することにより、ソース電極20aおよびドレイン電極20bが得られる。
なお、ソース電極20aおよびドレイン電極20bは、例えば、導電性粒子を含む導電性材料をバッファ層60上に供給して液状被膜を形成した後、必要に応じて、この液状被膜に対して後処理(例えば加熱、赤外線の照射、超音波の付与等)を施すことにより形成することもできる。
なお、この導電性材料を供給する方法には、前記工程[1]で挙げた方法を用いることができる。
また、このとき、データ線301および画素電極303も形成する。
【0088】
[3] 有機半導体層形成工程(図3(c)参照)
次に、ソース電極20aおよびドレイン電極20bとに接触するように、有機半導体層30を形成する。
【0089】
有機半導体層30は、例えば、有機半導体材料またはその前駆体を含む溶液を、バッファ層60上の、ソース電極20aとドレイン電極20bとの間の領域を含む所定の領域に供給して液状被膜を形成した後、必要に応じて、この液状被膜に対して後処理(例えば加熱、赤外線の照射、超音波の付与等)を施すことにより形成することができる。
なお、この溶液を供給する方法には、前記工程[1]で挙げた方法を用いることができる。
【0090】
[4] ゲート絶縁層形成工程(図3(d)参照)
次に、ソース電極20a、ドレイン電極20bおよび有機半導体層30を覆うように、ゲート絶縁層40を形成する。
ゲート絶縁層40は、前記バッファ層60と同様にして、液相プロセスにより形成することができる。
液相プロセスを用いることにより、有機半導体層30に不要な熱が加わるのを防止して、有機半導体層30の特性、ひいては、薄膜トランジスタ1の特性の低下を好適に防止することができる。
【0091】
この場合、溶液の調製に用いる溶媒には、有機半導体層30に溶解や膨潤を生じさせないものが選択される。かかる溶媒としては、前記工程[1]で挙げたものの中でも、特に、ケトン系溶媒およびエステル系溶媒のうちの少なくとも一方を主成分とすることが好適である。
なお、前記一般式(I)で表される絶縁性高分子は、フッ素化されたベンゼン環およびカルボニル基(またはエステル基)を有することから、ケトン系溶媒やエステル系溶媒のような比較的極性の高い溶媒にも十分に溶解する。
【0092】
[5] ゲート電極形成工程(図4(e)参照)
次に、ゲート絶縁層40上に、ソース電極20aとドレイン電極20bとの間の領域に対応するように、ゲート電極50を形成する。
ゲート電極50は、前記ソース電極20aおよびドレイン電極20bと同様にして形成することができる。
【0093】
中でも、ゲート電極50は、電極形成用材料(導電性材料)として、例えば、PEDOT/PSS(導電性高分子)の分散液や、銀コロイド、銅コロイドのような金属粒子を含む分散液等を用いた液相プロセスにより形成するのが好ましい。
かかる液相プロセスにおいて、例えば、電極形成用材料を、ゲート絶縁層40上にインクジェット法により供給することにより、寸法精度の高いゲート電極50を簡便に形成することができる。
【0094】
ここで、これらの電極形成用材料は、水系分散媒を用いて調製されるが、水系分散媒中には、不純物としてまたは金属粒子から溶出する等して各種イオンが溶存することが多い。
ところが、ゲート絶縁層40を、前述したような耐湿性の高い(吸湿性の低い)絶縁性高分子を主材料として構成することにより、各種イオンがゲート絶縁層40を拡散するのを防止することができる。これにより、ゲート絶縁層40にイオンが拡散することが原因となって生じる不都合(例えば、イオン電流の発生、絶縁破壊等)が防止され、薄膜トランジスタ1の特性を長期に亘って維持することができる。
また、このとき、走査線302を形成する。
【0095】
なお、本実施形態では、走査線302は、ゲート電極50とは別途形成されるが、隣接する薄膜トランジスタ1のゲート電極50を連続して形成することにより走査線302としてもよい。
[6] 保護層形成工程(図3(f)参照)
次に、ゲート絶縁層40上に、ゲート電極50を覆うように保護層70を形成する。
保護層70は、前記有機半導体層30と同様にして形成することができる。
【0096】
<電子デバイス>
次に、本発明の電子デバイスとして、前述したようなアクティブマトリクス装置が組み込まれた電気泳動表示装置を一例に説明する。
図5は、電気泳動表示装置の実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図5中上側を「上」、下側を「下」として説明する。
図5に示す電気泳動表示装置200は、前述したアクティブマトリクス装置300と、このアクティブマトリクス装置300上に設けられた電気泳動表示部400とで構成されている。
【0097】
この電気泳動表示部400は、透明電極(共通電極)403を備える透明基板404と、バインダ材405により透明電極403に固定されたマイクロカプセル402とで構成されている。
そして、マイクロカプセル402が画素電極303に接触するようにして、アクティブマトリクス装置300と電気泳動表示部400とが接合されている。
【0098】
各カプセル402内には、それぞれ、特性の異なる複数種の電気泳動粒子、本実施形態では、電荷および色(色相)の異なる2種の電気泳動粒子421、422を含む電気泳動分散液420が封入されている。
このような電気泳動表示装置200では、1本あるいは複数本の走査線302に選択信号(選択電圧)を供給すると、この選択信号(選択電圧)が供給された走査線302に接続されている薄膜トランジスタ1がONとなる。
【0099】
これにより、かかる薄膜トランジスタ1に接続されているデータ線301と画素電極303とは、実質的に導通する。このとき、データ線301に所望のデータ(電圧)を供給した状態であれば、このデータ(電圧)は画素電極303に供給される。
これにより、画素電極303と透明電極403との間に電界が生じ、この電界の方向、強さ、電気泳動粒子421、422の特性等に応じて、電気泳動粒子421、422は、いずれかの電極に向かって電気泳動する。
【0100】
一方、この状態から、走査線302への選択信号(選択電圧)の供給を停止すると、薄膜トランジスタ1はOFFとなり、かかる薄膜トランジスタ1に接続されているデータ線301と画素電極303とは非導通状態となる。
したがって、走査線302への選択信号の供給および停止、あるいは、データ線301へのデータの供給および停止を適宜組み合わせて行うことにより、電気泳動表示装置200の表示面側(透明基板404側)に、所望の画像(情報)を表示させることができる。
【0101】
特に、本実施形態の電気泳動表示装置200では、電気泳動粒子421、422の色を異ならせていることにより、多階調の画像を表示することが可能となっている。
また、本実施形態の電気泳動表示装置200は、アクティブマトリクス装置300を有することにより、特定の走査線302に接続された薄膜トランジスタ1を選択的にON/OFFすることができるので、クロストークの問題が生じにくく、また、回路動作の高速化が可能であることから、高い品質の画像(情報)を得ることができる。
【0102】
また、本実施形態の電気泳動表示装置200は、低い駆動電圧で作動するため、省電力化が可能である。
なお、前述したような薄膜トランジスタ1を備えるアクティブマトリクス装置が組み込まれた表示装置は、このような電気泳動表示装置200への適用に限定されるものではなく、例えば、液晶表示装置等に適用することもできる。
【0103】
<電子機器>
このような電気泳動表示装置200は、各種電子機器に組み込むことができる。以下、電気泳動表示装置200を備える本発明の電子機器について説明する。
<<電子ペーパー>>
まず、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態について説明する。
図6は、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
この図に示す電子ペーパー600は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体601と、表示ユニット602とを備えている。
このような電子ペーパー600では、表示ユニット602が、前述したような電気泳動表示装置200で構成されている。
【0104】
<<ディスプレイ>>
次に、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態について説明する。
図7は、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
この図に示すディスプレイ800は、本体部801と、この本体部801に対して着脱自在に設けられた電子ペーパー600とを備えている。なお、この電子ペーパー600は、前述したような構成、すなわち、図6に示す構成と同様のものである。
【0105】
本体部801は、その側部(図中、右側)に電子ペーパー600を挿入可能な挿入口805が形成され、また、内部に二組の搬送ローラ対802a、802bが設けられている。電子ペーパー600を、挿入口805を介して本体部801内に挿入すると、電子ペーパー600は、搬送ローラ対802a、802bにより挟持された状態で本体部801に設置される。
【0106】
また、本体部801の表示面側(下図(b)中、紙面手前側)には、矩形状の孔部803が形成され、この孔部803には、透明ガラス板804が嵌め込まれている。これにより、本体部801の外部から、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を視認することができる。すなわち、このディスプレイ800では、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を、透明ガラス板804において視認させることで表示面を構成している。
【0107】
また、電子ペーパー600の挿入方向先端部(図中、左側)には、端子部806が設けられており、本体部801の内部には、電子ペーパー600を本体部801に設置した状態で端子部806が接続されるソケット807が設けられている。このソケット807には、コントローラー808と操作部809とが電気的に接続されている。
このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600は、本体部801に着脱自在に設置されており、本体部801から取り外した状態で携帯して使用することもできる。
【0108】
また、このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600が、前述したような電気泳動表示装置200で構成されている。
なお、本発明の電子機器は、以上のようなものへの適用に限定されず、例えば、テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等を挙げることができ、これらの各種電子機器の表示部に、電気泳動表示装置200を適用することが可能である。
【0109】
以上、本発明の有機半導体装置およびその製造方法につき、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
前記実施形態では、薄膜トランジスタ1がトップゲート構造である場合を代表に説明したが、薄膜トランジスタ1は、ゲート電極50がソース電極20aおよびドレイン電極20bより基板500側に位置するボトムゲート構造であってもよい。
【実施例】
【0110】
1.薄膜トランジスタの製造
以下に示すようにして、実施例1〜13および比較例1〜9の薄膜トランジスタを、それぞれ、200個ずつ製造した。
(実施例1)
まず、前記式(19−1)で示されるフッ素モノマーであるビス(2、3、4、5、6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(以下BPDEと略する)15.45g(27.7mmol)、前記式(18−1)で示されるビスフェノールであるビスフェノールA(以下BisAと略する)6.16g(27mmol)、炭酸カリウム 11.17g(80.8mmol)、モレキュラーシーブ6.8g、メチルエチルケトン81gを加えて、79℃で7時間反応した。
【0111】
なお、前記式(19−1)で示されるフッ素モノマーと前記式(18−1)で示されるビスフェノールの仕込み比率は上述のように1.025/1であった。その後、酢酸ブチルで希釈した後に濾過を行ない、そのポリマー溶液を脱イオン水で分液洗浄し、洗浄したポリマー溶液を濃縮することで下記化23で示すような、理論フェノール価が0(ゼロ)の高分子(D)を得た。
【0112】
【化23】

絶縁性高分子を得る工程とは別に、ガラス基板(NECコーニング社製、「OA10」)を用意し、水を用いて洗浄した後、乾燥した。次に、ガラス基板上に、アクリル系紫外線硬化樹脂組成物を、スピンコート法(2400rpm、30秒)により塗布した後、紫外線を照射して硬化させた。これにより、平均厚さ500nmのバッファ層を得た。
【0113】
次に、バッファ層上に、蒸着法により金の薄膜を形成した後、フォトリソグラフィー法によりレジスト層を形成し、このレジスト層をマスクとして金の薄膜をエッチングした。これにより、平均厚さ100nm、チャネル長10μm/チャネル幅1mmのソース電極およびドレイン電極を得た。
次に、ソース電極およびドレイン電極を形成したバッファ層上に、1wt%となるように調製したポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,4−ジイル)(P3HT)のトルエン溶液を、インクジェット法により塗布した後、100℃×10分間で乾燥した。これにより、平均厚さ50nmの有機半導体層を得た。
【0114】
次に、有機半導体層、ソース電極およびドレイン電極を覆うように、7wt%となるように調製した高分子(D)の酢酸ブチル溶液を、スピンコート法(2000rpm、60秒)により塗布した後、60℃×10分間で乾燥した。これにより、平均厚さ500nmのゲート絶縁層を得た。
次に、ゲート絶縁層上の、ソース電極とドレイン電極との間の領域に対応する領域に、Ag粒子の水分散液を、インクジェット法により塗布した後、80℃×10分間で乾燥した。これにより、平均厚さ100nm、平均幅30μmのゲート電極を得た。なお、以下の表1中、ゲート電極の形成に、Ag粒子の水分散液を用いた場合を「Ag−IJ」と略して示す。
【0115】
(実施例2)
絶縁性高分子を得る際に、前記式(19−2)で示されるフッ素モノマーである2、2−ビス(2、3、4、5、6−ペンタフルオロベンゾイルオキシ)ジフェニルエーテル12.1g(20.5mmol)、前記式(18−1)で示されるBisA4.56g(20mmol)、炭酸カリウム5.53g(40mmol)、モレキュラーシーブ7g、メチルエチルケトン90gを加えて、79℃で7.5時間反応した。
【0116】
なお、前記式(19−2)で示されるフッ素モノマーと前記式(18−1)で示されるビスフェノールの仕込み比率は上述のように1.025/1であった。その後、酢酸ブチルで希釈した後に濾過を行ない、そのポリマー溶液を脱イオン水で分液洗浄し、洗浄したポリマー溶液を濃縮することで得られた下記化24で示すような、理論フェノール価が0(ゼロ)の高分子(E)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして薄膜トランジスタを製造した。
【0117】
【化24】

【0118】
(実施例3)
絶縁性高分子を得る際に、前記式(19−1)で示されるフッ素モノマーと前記式(18−1)で示されるビスフェノールとの仕込み比率を1/1として、重量平均分子量を150,000とした以外は、前記実施例1と同様にして薄膜トランジスタを製造した。
【0119】
(実施例4)
絶縁性高分子を得る際に、前記式(19−1)で示されるBPDE16.75g(30mmol)、前記式(18−2)で示される2、2−ジヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン10.08g(30mmol)、炭酸カリウム4.55g(32.9mmol)、モレキュラーシーブ5.4g、ジメチルアセトアミド90gを加えて、60℃で6時間反応した。
【0120】
なお、前記式(19−1)で示されるフッ素モノマーと前記式(18−2)で示される化合物の仕込み比率は上述のように1/1であった。その後、アセトンで希釈した後に濾過を行ない、そのポリマー溶液を脱イオン水に混合して再沈殿した。得られた固体を濾過し乾燥し、再度アセトンに溶解して脱イオン水で再沈殿工程を2回繰り返し行なった。得られた固体を濾過して乾燥することで得られた下記化25で示すような高分子(F)を用いた以外は前記実施例1と同様にして薄膜トランジスタを製造した。
【0121】
【化25】

【0122】
(実施例5)
絶縁性高分子を得る際に、前記式(19−1)で示されるフッ素モノマーと前記式(18−1)で示されるビスフェノールとの仕込み比率を1.04/1として、重量平均分子量を36,000とした以外は、前記実施例1と同様にして薄膜トランジスタを製造した。
(実施例6)
ゲート電極を、金を蒸着することにより形成した以外は、前記実施例1と同様にして薄膜トランジスタを製造した。なお、以下の表1中、ゲート電極の形成に、金の蒸着を用いた場合を「Au」と略して示す。
【0123】
(実施例7)
ゲート電極を形成する際に、Ag粒子の水分散液に代えて、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)の水分散液を用いた以外は、前記実施例1と同様にして薄膜トランジスタを製造した。なお、以下の表1中、ゲート電極の形成に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)の水分散液を用いた場合を「PEDOT/PSS」と略して示す。
【0124】
(実施例8)
前記実施例1と同様の方法で絶縁性高分子(D)を得た。
次に、絶縁性高分子を得る工程とは別にガラス基板(NECコーニング社製、「OA10」)を用意し、水を用いて洗浄した後、乾燥した。次に、ガラス基板上に、アクリル系紫外線硬化樹脂組成物を、スピンコート法(2400rpm、30秒)により塗布した後、紫外線を照射して硬化させた。これにより、平均厚さ500nmのバッファ層を得た。 次に、0.7wt%となるように調製した高分子(D)の酢酸ブチル溶液を、スピンコート法により塗布した後、60℃×10分間で乾燥した。これにより、平均厚さ50nmの絶縁性高分子(D)の薄膜を得た。
次に、前記絶縁性高分子(D)の薄膜上にソース電極およびドレイン電極の形状に対応するように、マスク蒸着法を用いて金の薄膜を形成した。これにより、平均厚さ100nm、チャネル長50μm/チャネル幅1mmの金のソース電極およびドレイン電極を得た。
【0125】
次に、ソース電極およびドレイン電極を形成したバッファ層上に、1wt%となるように調製したポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,4−ジイル)(P3HT)のトルエン溶液を、インクジェット法により塗布した後、100℃×10分間で乾燥した。これにより、平均厚さ50nmの有機半導体層を得た。
次に、有機半導体層、ソース電極およびドレイン電極を覆うように、7wt%となるように調製した高分子(D)の酢酸ブチル溶液を、スピンコート法(2000rpm、60秒)により塗布した後、60℃×10分間で乾燥した。これにより、平均厚さ500nmのゲート絶縁層を得た。
次に、ゲート絶縁層上の、ソース電極とドレイン電極との間の領域に対応する領域に、Ag粒子の水分散液を、インクジェット法により塗布した後、80℃×10分間で乾燥した。これにより、平均厚さ100nm、平均幅70μmのゲート電極を得た。
【0126】
(比較例1)
ゲート絶縁層を形成する際に、高分子(D)に代えて、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして薄膜トランジスタを製造した。
(比較例2)
絶縁性高分子を得る際に、前記式(19−1)で示されるフッ素モノマーと前記式(18−1)で示されるビスフェノールとの仕込み比率を1/1とし、1重量平均分子量を94,500とした以外は、前記実施例1と同様にして薄膜トランジスタを製造した。
【0127】
(比較例3)
絶縁性高分子を得る際に、前記式(19−2)で示されるフッ素モノマーと前記式(18−1)で示されるビスフェノールとの仕込み比率を1/1.025とした以外は、前記実施例1と同様にして薄膜トランジスタを製造した。
(比較例4)
絶縁性高分子を得る際に、前記式(19−1)で示されるフッ素モノマーと前記式(18−2)で示されるビスフェノールとの仕込み比率を1/1.025とした以外は、前記実施例2と同様にして薄膜トランジスタを製造した。
【0128】
(比較例5)
前記実施例1と同様の方法で絶縁性高分子(D)を得た。
次に、絶縁性高分子を得る工程とは別にガラス基板(NECコーニング社製、「OA10」)を用意し、水を用いて洗浄した後、乾燥した。次に、ガラス基板上に、アクリル系紫外線硬化樹脂組成物を、スピンコート法(2400rpm、30秒)により塗布した後、紫外線を照射して硬化させた。これにより、平均厚さ500nmのバッファ層を得た。
次に、前記絶縁性高分子(D)の薄膜上にソース電極およびドレイン電極の形状に対応するように、マスク蒸着法を用いて金の薄膜を形成した。これにより、平均厚さ100nm、チャネル長50μm/チャネル幅1mmの金のソース電極およびドレイン電極を得た。
【0129】
次に、ソース電極およびドレイン電極を形成したバッファ層上に、1wt%となるように調製したポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,4−ジイル)(P3HT)のトルエン溶液を、インクジェット法により塗布した後、100℃×10分間で乾燥した。これにより、平均厚さ50nmの有機半導体層を得た。
次に、有機半導体層、ソース電極およびドレイン電極を覆うように、7wt%となるように調製した高分子(D)の酢酸ブチル溶液を、スピンコート法(2000rpm、60秒)により塗布した後、60℃×10分間で乾燥した。これにより、平均厚さ500nmのゲート絶縁層を得た。
次に、ゲート絶縁層上の、ソース電極とドレイン電極との間の領域に対応する領域に、Ag粒子の水分散液を、インクジェット法により塗布した後、80℃×10分間で乾燥した。これにより、平均厚さ100nm、平均幅70μmのゲート電極を得た。
【0130】
2.各種測定
各実施例1〜14および各比較例1〜9で用いられる高分子(絶縁性高分子)について、それぞれ、誘電率、吸水率および分子量(Mw)を以下のようにして測定した。
≪誘電率≫
まず、銅板上に絶縁性高分子をスピンコーターを用いて塗布した後、80℃で10分間乾燥した後、150℃でさらに30分間乾燥し、厚さ10μmの薄膜(絶縁層)を得た。さらに、薄膜の表面(前記銅板と反対側の面)に金(Au)を蒸着して電極を形成し、これにより、絶縁層の両面に電極が形成された評価用サンプルを得た。このサンプルの誘電率をインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード社製、HP−4292A)を用いて測定した。
【0131】
≪吸水率≫
絶縁性高分子を適当な溶媒(酢酸ブチル、シクロヘキサン、トルエンから好適に選択される溶媒)に溶解してなる溶液を、アプリケータを用いてPETフィルム上に塗工し、80℃で120分間乾燥した(これにより、PETフィルム上に、絶縁性高分子を含む薄膜(フィルム)が形成されることとなる)。そして、PETフィルムを剥離した後、アフターヒートを行って、前記薄膜から溶媒を除去した。薄膜のサイズ(縦×横×厚さ)は、20cm×20cm×40μmであった。
このようにして得られた溶媒除去後の薄膜の重量を測定し、その後、当該薄膜を脱イオン水に浸漬して浸漬後の薄膜の重量を測定し、これら重量差(比)から吸水率を求めた。
【0132】
≪分子量(Mw)≫
高速GPC装置(東ソー(株)製、HLC−8220)を用いて、以下の条件で測定を行った。
展開溶媒:THF
カラム:TSK−gel GMHXL×2本
溶離液流量:1ml/min
カラム温度:40℃
【0133】
3.評価
実施例1〜14および比較例1〜9に用いられる絶縁性高分子について、以下のような試験を行った。
(3−1)薄膜形成性試験
絶縁性高分子を基板上にスピンコーターを用いて塗布し、乾燥させて厚さ約1μmの薄膜(フィルム)の形成を試みた。このような薄膜形成性試験を各絶縁性高分子について、それぞれ100回行った。薄膜形成性は、次のようにして評価した。
◎‥‥‥95〜100回、薄膜が形成された
○‥‥‥70〜94回、薄膜が形成された
△‥‥‥10〜69回、薄膜が形成された
×‥‥‥0〜9回、薄膜が形成された
【0134】
(3−2)溶剤溶解性試験
絶縁性高分子1gに、各溶剤(酢酸ブチル、シクロヘキサン、トルエン)を9g添加して溶解性を確認した。なお、この試験は、25℃の各溶剤を用いて行った。溶解性は、次のようにして評価した。
◎‥‥‥溶解
○‥‥‥一部溶解
△‥‥‥膨潤
×‥‥‥不溶
また、実施例1〜8および比較例1〜5により得られた有機半導体素子について、以下のような試験を行った。なお、各試験は、200個の有機半導体を用いて行った。
【0135】
(3−3)伝達特性試験
窒素(N)中または大気(air)中(25℃、60%RH)において伝達特性を測定した。そして、得られた結果から、それぞれの雰囲気での移動度、オン電流とオフ電流との比率であるオン/オフ比(on−off比)、しきい電圧(Vth)を算出した。
なお、表1には、移動度、on−off比、および、窒素中でのVthと大気中でのVthとの差(ΔVth=Vth(air)−Vth(N))とを示した。さらに、表1中には、大気中(25℃、60%RH)において絶縁破壊試験を5回以上行い、その最低値をVbdとして示した。また、表1中の各数値は、いずれも、200個の薄膜トランジスタで得られたデータの平均値である。
以上、2.各種測定、3.評価の各結果を表1に示した。
【0136】
【表1】

【0137】
表1に示すように、いずれの薄膜トランジスタも、窒素中に比べて、大気中では移動度が低下する傾向を示した。しかしながら、各実施例の薄膜トランジスタは、いずれも、その移動度の低下が、比較例の薄膜トランジスタの移動度の低下に比較して小さいことが明らかとなった。同様の傾向が、on−off比についても認められた。
また、各実施例の薄膜トランジスタは、いずれも、そのΔVthが、対応する比較例の薄膜トランジスタのΔVthに比較して小さいことも明らかとなった。
【0138】
さらに、大気中での絶縁破壊電圧は、各実施例の薄膜トランジスタの方が、全体的に各比較例の薄膜トランジスタより高くなる傾向を示し、この傾向は、ゲート電極をAg粒子やPEDOT/PSSで作製した場合に顕著であった。
また、各実施例の薄膜トランジスタは、いずれも、各比較例の薄膜トランジスタよりも、吸水率が低い。さらに、各実施例1〜14の中でも、理論フェノール価が0(ゼロ)の実施例の吸水率がより低くなっており、それらの中でも、仕込み比率が1.025/1の実施例がさらに低くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の有機半導体装置を適用したアクティブマトリクス装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すアクティブマトリクス装置が備える有機薄膜トランジスタの構成を示す図(縦断面図および平面図)である。
【図3】図2に示す有機薄膜トランジスタの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図4】図2に示す有機薄膜トランジスタの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図5】電気泳動表示装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0140】
1‥‥薄膜トランジスタ 20a‥‥ソース電極 20b‥‥ドレイン電極 30‥‥有機半導体層 40‥‥ゲート絶縁層 50‥‥ゲート電極 60‥‥バッファ層 70‥‥保護層 200‥‥電気泳動表示装置 300‥‥アクティブマトリクス装置 301‥‥データ線 302‥‥走査線 303‥‥画素電極 400‥‥電気泳動表示部 402‥‥マイクロカプセル 420‥‥電気泳動分散液 421、422‥‥電気泳動粒子 403‥‥透明電極 404‥‥透明基板 405‥‥バインダ材 500‥‥基板 600‥‥電子ペーパー 601‥‥本体 602‥‥表示ユニット 800‥‥ディスプレイ 801‥‥本体部 802a、802b‥‥搬送ローラ対 803‥‥孔部 804‥‥透明ガラス板 805‥‥挿入口 806‥‥端子部 807‥‥ソケット 808‥‥コントローラー 809‥‥操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、該ゲート電極に対して前記ソース電極および前記ドレイン電極を絶縁するゲート絶縁層と、該ゲート絶縁層に接触して設けられた有機半導体層と、該有機半導体層の前記ゲート絶縁層と反対側に接触して設けられた第2の絶縁層とを有し、
前記ゲート絶縁層および前記第2の絶縁層の少なくとも一方は、下記一般式(I)で表される高分子の端部の少なくとも一方がフッ素原子またはフッ素原子を含有する置換基で置換されたものであって、理論フェノール価が2.0KOHmg/ポリマーg以下である絶縁性高分子を主材料として構成されていることを特徴とする有機半導体装置。
【化1】

[ただし、式中、Rは、芳香環を含む二価の連結基を示し、式中、Yは、酸素原子または硫黄原子を示し、式中、Zは、カルボニル基または硫黄原子を含む二価の連結基を示す。また、式中、nは、2以上の整数である。]
【請求項2】
前記フッ素原子を含有する置換基は、下記化2で表わされるものである請求項1に記載の有機半導体装置。
【化2】

[ただし、式中、Xは、1〜5の整数を示す。]
【請求項3】
前記Rは、下記化3のうちのいずれかで表わされるものである請求項1または2記載の有機半導体装置。
【化3】

【請求項4】
前記Rは、極性基を有しないものである請求項3に記載の有機半導体装置。
【請求項5】
前記Rは、下記化4のうちのいずれかで表わされるものである請求項4に記載の有機半導体装置。
【化4】

【請求項6】
前記式(I)中Zは、下記化5のうちのいずれかで表わされるものである請求項1に記載の有機半導体装置。
【化5】

[ただし、式中、Rは、芳香環を含む二価の連結基を示す。]
【請求項7】
前記Zは、カルボニル基またはエステル基を少なくとも1つ含んでいる請求項6に記載の有機半導体装置。
【請求項8】
前記Rは、下記化6のうちのいずれかで表わされるものである請求項6に記載の有機半導体装置。
【化6】

【請求項9】
前記Rは、極性基を有しないものである請求項8に記載の有機半導体装置。
【請求項10】
前記Rは、下記化7のうちのいずれかで表わされるものである請求項9に記載の有機半導体装置。
【化7】

【請求項11】
前記ゲート絶縁層および前記第2の絶縁層の少なくとも一方は、100kHzにおける誘電率が2.9以上である請求項1ないし10のいずれかに記載の有機半導体装置。
【請求項12】
当該有機半導体装置は、基板を有し、前記ソース電極および前記ドレイン電極が前記ゲート電極より前記基板側に位置するトップゲート構造であり、少なくとも前記ゲート絶縁層を、前記絶縁性高分子を主材料として構成した請求項1ないし11のいずれかに記載の有機半導体装置。
【請求項13】
前記ゲート絶縁層の平均厚さは、10〜5000nmである請求項1ないし12のいずれかに記載の有機半導体装置。
【請求項14】
前記式(I)で表される絶縁性高分子の重量平均分子量は、5000〜500000である請求項1ないし13のいずれかに記載の有機半導体装置。
【請求項15】
ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、該ゲート電極に対して前記ソース電極および前記ドレイン電極を絶縁するゲート絶縁層と、該ゲート絶縁層に接触して設けられた有機半導体層と、該有機半導体層の前記ゲート絶縁層と反対側に接触して設けられた第2の絶縁層とを有する有機半導体装置の製造方法であって、
前記第2の絶縁層を形成する第1の工程と、
前記第2の絶縁層上に、前記ソース電極および前記ドレイン電極を互いに離間して形成する第2の工程と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極とに接触するように、前記有機半導体層を形成する第3の工程と、
前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記有機半導体層を覆うように、前記ゲート絶縁層を形成する第4の工程と、
前記ゲート絶縁層上に、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の領域に対応するように前記ゲート電極を形成する第5の工程とを有し、
前記第1の工程および前記第4の工程の少なくとも一方は、下記一般式(I)で表される高分子の端部の少なくとも一方がフッ素原子またはフッ素原子を含有する置換基で置換されたものであって、理論フェノール価が2.0KOHmg/ポリマーg以下の絶縁性高分子を溶媒に溶解した溶液を用いた液相プロセスにより行われるものであることを特徴とする有機半導体装置の製造方法。
【化8】

[ただし、式中、Rは、芳香環を含む二価の連結基を示し、式中Yは、酸素原子または硫黄原子を示し、式中、Zは、カルボニル基または硫黄原子を含む二価の連結基を示す。また、式中nは、2以上の整数である。]
【請求項16】
前記溶媒は、ケトン系溶媒およびエステル系溶媒のうちの少なくとも一方を主成分とするものである請求項15に記載の有機半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第5の工程は、導電性高分子または金属粒子を水系分散媒に分散してなる電極形成用材料を用いて液相プロセスにより行われるものである請求項15に記載の有機半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項1ないし14のいずれかに記載の有機半導体装置を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載の電子デバイスを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項20】
下記一般式(I)で表される高分子の端部の少なくとも一方がフッ素原子またはフッ素原子を含有する置換基で置換されたものであって、理論フェノール価が2.0KOHmg/ポリマーg以下である絶縁性高分子を含むことを特徴とする絶縁層形成組成物。
【化9】

[ただし、式中、Rは、芳香環を含む二価の連結基を示し、式中Yは、酸素原子または硫黄原子を示し、式中、Zは、カルボニル基または硫黄原子を含む二価の連結基を示す。また、式中nは、2以上の整数である。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−74087(P2010−74087A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242936(P2008−242936)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】