説明

検査方法および検査装置

【課題】ウェハ表面の膜の端部の高さを精度よく測定可能な検査方法を提供する。
【解決手段】ステージによりウェハを略水平に支持した状態で、高さ検出器によりウェハの平面部の高さ位置を検出するステップS101と、上ベベル部に位置する膜の端部に合焦させた状態で、撮像部により膜の端部を撮像するステップS102と、データ処理部により、ステップS102で撮像した膜の端部の画像に基づいて膜の端部の高さ位置を検出し、ステップS101で検出した平面部の高さ位置と膜の端部の高さ位置との差から、ウェハの平面部に対する膜の端部の降下量を求めるステップS103とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハや液晶ガラス基板等の基板の端部近傍を検査するための検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェハに形成される回路素子パターンの集積度が高くなるとともに、半導体製造工程でウェハの表面処理に用いられる膜の種類が増加している。これに伴い、膜の端部が位置するウェハの端部近傍の検査が重要となってきている。すなわち、ウェハの端部近傍における欠陥管理が、ウェハから作り出される回路素子の歩留まりに影響する。
【0003】
そこで、半導体ウェハ等の円盤状に形成された基板の外周端部周辺(例えば、アペックスや上下のベベル)を複数の方向から観察して、異物や膜の剥離、膜内の気泡、膜の回り込み等といった異常の有無を検査している(例えば、特許文献1を参照)。また、EBR処理の管理や膜の塗布状態を管理する目的で、ウェハの端部近傍に位置する膜の端部位置を複数箇所でサンプリングし、膜の位置を管理する場合もある。
【0004】
ところで、いわゆる液浸露光プロセスにおいては、レジスト膜等に撥水性をもたせるため、トップコートと称される特殊な膜が塗布される。液浸露光プロセスで用いられる液体(水など)は露光時にウェハの端部まで達するためトップコートはウェハのベベルの途中まで設けられることから、膜の端部の高さを管理することが重要視されている。膜の端部の高さは、ウェハの端部近傍(ベベル部)の形状測定から換算された膜の端部位置を高さ情報に変換することで管理されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−20021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ウェハの端部近傍(ベベル部)の形状は、加工誤差等によりウェハの全周において必ずしも均一ではなく、膜の端部の高さを精度よく測定するための方策が求められていた。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、膜の端部の高さを精度よく測定可能な検査方法および検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的達成のため、本発明に係る検査方法は、平面部および前記平面部の端部に繋がって下方に傾斜した傾斜部を有するとともに、上面に膜が形成された基板を支持するステージと、前記ステージに支持された前記基板の端部を前記基板の平面の延在する方向から撮像する撮像部と、前記撮像部に撮像された前記基板の端部の画像に基づいて前記基板の端部を検査する処理部とを備えた検査装置による検査方法であって、前記ステージにより前記基板を支持した状態で、高さ検出器により前記ステージに対する前記平面部の高さ位置を検出する検出ステップと、前記撮像部により、前記傾斜部に位置する前記膜の端部に合焦させた状態で、前記膜の端部を前記基板の平面の延在する方向から撮像する膜撮像ステップと、前記処理部により、前記膜撮像ステップで撮像した前記膜の端部の画像に基づいて前記ステージに対する前記膜の端部の高さ位置を検出し、前記検出ステップで検出した前記平面部の高さ位置と前記膜の端部の高さ位置との差から、前記平面部に対する前記膜の端部の降下量を求める高さ演算ステップとを有している。
【0009】
なお、上述の検査方法では、前記高さ検出器は、前記基板の上方から前記平面部を検出可能な検出光学系と、前記ステージに支持された前記基板と前記検出光学系とを上下に相対移動させることで前記検出光学系を前記平面部に対して合焦させる合焦装置とを有し、前記検出ステップにおいて、前記合焦装置により前記検出光学系を前記平面部に対して合焦させ、前記合焦時の前記上下の相対移動量から前記平面部の高さ位置を検出し、前記膜撮像ステップにおいて、前記合焦装置による前記合焦を行った状態で、前記膜の端部を撮像することが好ましい。
【0010】
また、上述の検査方法では、前記基板が略円板状に形成され、前記ステージは、前記基板を支持して前記基板の回転対象軸を中心に回転移動可能に構成されており、前記検出ステップにおいて、前記ステージにより前記基板を回転させながら前記傾斜部近傍における前記平面部の高さ位置を前記基板の全周に亘り検出し、前記膜撮像ステップにおいて、前記ステージにより前記基板を回転させながら前記膜の端部を前記基板の全周に亘り撮像し、前記高さ演算ステップにおいて、前記降下量を前記基板の全周に亘り求めることが好ましい。
【0011】
また、上述の検査方法では、前記高さ検出器は、前記基板の上方から前記平面部を検出可能な検出光学系と、前記ステージに支持された前記基板と前記検出光学系とを上下に相対移動させることで前記検出光学系を前記平面部に対して合焦させる合焦装置とを有し、前記合焦装置による前記合焦を行った状態で、前記撮像部により、前記平面部と前記傾斜部との境界部に合焦させた状態で前記境界部を前記基板の端部と対向する方向から撮像する境界部撮像ステップと、前記合焦装置による前記合焦を行わずに、前記撮像部により、前記平面部と前記傾斜部との境界部に合焦させた状態で前記境界部を前記基板の端部と対向する方向から撮像する反り撮像ステップと、前記処理部により、前記境界部撮像ステップで撮像した前記境界部の画像および、前記反り撮像ステップで撮像した前記境界部の画像から、前記基板の反り状態を求める反り演算ステップとをさらに有してもよい。
【0012】
また、上述の検査方法では、前記基板が略円板状に形成され、前記ステージは、前記基板を支持して前記基板の回転対象軸を中心に回転移動可能に構成されており、前記境界部撮像ステップおよび前記反り撮像ステップにおいて、前記基板を回転させながら前記境界部を前記基板の全周に亘り撮像し、前記反り演算ステップにおいて、前記基板の反り状態を前記基板の全周に亘り求めることが好ましい。
【0013】
また、上述の検査方法では、前記基板の下面側が前記ステージに対して吸着可能であり、前記検出ステップ、前記膜撮像ステップ、および前記高さ演算ステップにおいて、前記基板が前記ステージに吸着状態で支持され、前記境界部撮像ステップ、前記反り撮像ステップ、および前記反り演算ステップにおいて、前記基板が前記ステージに非吸着状態で支持されることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る検査装置は、平面部および前記平面部の端部に繋がって下方に傾斜した傾斜部を有するとともに、上面に膜が形成された基板を支持するステージと、前記基板が前記ステージに支持された状態で、前記ステージに対する前記平面部の高さ位置を検出する高さ検出器と、前記傾斜部に位置する前記膜の端部に合焦させた状態で、前記膜の端部を前記ステージに支持された前記基板の平面の延在する方向から撮像する撮像部と、前記撮像部に撮像された前記膜の端部の画像に基づいて前記ステージに対する前記膜の端部の高さ位置を検出し、前記高さ検出器により検出された前記平面部の高さ位置と前記膜の端部の高さ位置との差から、前記平面部に対する前記膜の端部の降下量を求める処理部とを備えて構成される。
【0015】
なお、上述の検査装置では、前記高さ検出器は、前記基板の上方から前記平面部を検出可能な検出光学系と、前記ステージに支持された前記基板と前記検出光学系とを上下に相対移動させることで前記検出光学系を前記平面部に対して合焦させる合焦装置とを有し、前記合焦装置により前記検出光学系を前記平面部に対して合焦させ、前記合焦時の前記上下の相対移動量から前記平面部の高さ位置を検出し、前記撮像部は、前記合焦装置による前記合焦を行った状態で、前記膜の端部を撮像することが好ましい。
【0016】
また、上述の検査装置では、前記基板が略円板状に形成され、前記ステージは、前記基板を支持して前記基板の回転対象軸を中心に回転移動可能に構成されており、前記高さ検出器は、前記ステージにより前記基板を回転させながら前記傾斜部近傍における前記平面部の高さ位置を前記基板の全周に亘り検出し、前記撮像部は、前記ステージにより前記基板を回転させながら前記膜の端部を前記基板の全周に亘り撮像し、前記処理部は、前記降下量を前記基板の全周に亘り求めることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、膜の端部の高さを精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る検査方法を示すフローチャートである。
【図2】本実施形態に係る検査装置の概略構成図である。
【図3】撮像部における視野の一例を示す図である。
【図4】ウェハの反り状態を求める処理を示すフローチャートである。
【図5】ウェハの平面部の高さ変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る検査装置を図2に示しており、この検査装置1は、半導体ウェハ10(以下、ウェハ10と称する)の端部または端部近傍における異常の有無を検査するためのものである。
【0020】
被検基板であるウェハ10は薄い略円盤状に形成されており、その表面(上面)には、ウェハ10から取り出される複数の半導体チップ(チップ領域)に対応した回路パターン(図示せず)を形成するため、例えばレジスト膜やトップコート等の膜15が形成される。また、ウェハ10は、上述の回路パターン(図示せず)が形成される平面部11と、当該平面部11の端部に繋がって下方に傾斜した上ベベル部12と、ウェハ10を基準として上ベベル部12とほぼ上下対称に形成された下ベベル部13と、ウェハ10の端部となるアペックス部14とを有している。
【0021】
ところで、表面検査装置1は、ウェハ10を支持して回転させるウェハ支持部20と、ウェハ支持部20に支持されたウェハ10の高さ位置を検出する高さ検出部30と、ウェハ支持部20に支持されたウェハ10の端部および端部近傍を撮像する撮像部40と、高さ検出部30や撮像部40から入力されたデータに対して所定のデータ処理を行うデータ処理部50と、照明制御部51および装置制御部52とを備えて構成される。
【0022】
ウェハ支持部20は、XYZステージ21と、XYZステージ21上に設けられてウェハ10を略水平に支持するθステージ22とを有して構成される。θステージ22は、上部の支持面が略円形に形成され、ウェハ10の中心を回転中心としてウェハ10を回転可能に支持する。θステージ22の内部には真空吸着機構(図示せず)が設けられており、真空吸着機構による真空吸着を利用してウェハ10の下面側をθステージ22に対して吸着できるようになっている。なお、ウェハ10はθステージ22の支持面よりも大きな径を有しており、θステージ22上にウェハ10が支持された状態で、上ベベル部12、下ベベル部13、およびアペックス部14を含むウェハ10の端部近傍がθステージ22からはみ出るようになっている。XYZステージ21は、θステージ22を3次元の方向にそれぞれ駆動することで、θステージ22上に支持されたウェハ10を前後左右方向(XY方向)だけでなく、上下方向(Z方向)にも移動させることができる。
【0023】
高さ検出部30は、ウェハ支持部20に支持されたウェハ10の平面部11を検出可能な検出光学系31と、検出光学系31をウェハ10の平面部11に対して合焦させるオートフォーカスユニット32とを有して構成される。検出光学系31は、ウェハ支持部20に支持されたウェハ10の上方に、ウェハ10の平面部11と対向するように配設され、ウェハ10の上方からウェハ10の平面部11を検出する。オートフォーカスユニット32は、検出光学系31および装置制御部52と電気的に接続されており、装置制御部52にオートフォーカス作動信号を出力して、装置制御部52の作動制御によりXYZステージ21がθステージ22上のウェハ10を上下移動させることで、検出光学系31をウェハ10の平面部11に対して合焦させる。このとき、オートフォーカスユニット32は、合焦作動時のXYZステージ21によるウェハ10の上下移動量から、ウェハ10の下面B(θステージ22の支持面)から上面A(平面部11)までの高さDaを検出し、装置制御部52を介してデータ処理部50へ出力する。なお、オートフォーカスユニット32は、検出光学系31から入力された検出信号に基づいて合焦の判定を行う。
【0024】
また、検出光学系31は、ウェハ10の平面部11の端部近傍の位置(例えば、直径300mmのウェハ10の場合、ウェハ10の端部から5mm以内の位置)の上方に配設されることが好ましい。これにより、ウェハ支持部20に支持されたウェハ10を回転させると、検出光学系31に対して平面部11の端部近傍がウェハ10の周方向へ相対回転するため、高さ検出部30により平面部11の高さ位置(高さDa)をウェハ10の全周に亘り検出することができる。
【0025】
撮像部40は、ウェハ10の端部(アペックス部14)と対向するようにウェハ支持部20の側方に配設され、レンズ部41と、落射照明部42と、本体部43とを有して構成される。落射照明部42による照明光がレンズ部41を介してウェハ10の端部近傍に照射されると、ウェハ10からの反射光がレンズ部41によって本体部43に内蔵されたイメージセンサ(図示せず)に導かれ、レンズ部41によりウェハ10の端部近傍の反射像がイメージセンサの撮像面上に結像される。そして、本体部43に内蔵されたイメージセンサ(図示せず)は、ウェハ10の端部近傍の反射像を撮像し、ウェハ10の端部近傍の画像データをデータ処理部50へ出力する。
【0026】
なお、ウェハ支持部20に支持されたウェハ10を回転させると、撮像部40の撮像領域に対してウェハ10の端部がウェハ10の周方向へ相対回転するため、撮像部40によりウェハ10の端部近傍を周方向(すなわち相対回転方向)へ連続的に複数撮像することができ、ウェハ10の全周に亘ってウェハ10の端部近傍を撮像することが可能になる。また、ウェハ支持部20に支持されたウェハ10の端部近傍の上方には、ウェハ10の上ベベル部12を撮像部40で明瞭に撮像できるように、上ベベル部12等に対して拡散照明を行うベベル照明部45が設けられている。
【0027】
データ処理部50は、撮像部40から入力された画像データより、ウェハ10の下面B(θステージ22の支持面)からウェハ10の基材と膜15との膜境界C(膜15の端部16)までの高さDcを検出する。そして、データ処理部50は、ウェハ10の下面Bから膜境界Cまでの高さDcを検出すると、高さ検出器30で検出したウェハ10の下面Bから上面Aまでの高さDaと、ウェハ10の下面Bから膜境界Cまでの高さDcとの差から、ウェハ10の平面部11(上面A)に対する膜15の端部16(膜境界C)の降下量D(=Da−Dc)を求める。
【0028】
照明制御部51は、落射照明部42およびベベル照明部45の作動を制御する。また、装置制御部52は、ウェハ支持部20(XYZステージ21およびθステージ22)や、オートフォーカスユニット32、データ処理部50等の作動を制御する。
【0029】
以上のように構成される検査装置1を用いた検査方法について、図1に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、図示しない搬送装置によりウェハ10をウェハ支持部20のθステージ22上に搬送し、ウェハ10がθステージ22上に吸着保持された状態で、高さ検出器30によりウェハ支持部20に対するウェハ10の平面部11の高さ位置を検出する(ステップS101)。このとき、高さ検出器30のオートフォーカスユニット32は、装置制御部52にオートフォーカス作動信号を出力し、装置制御部52の作動制御によりXYZステージ21がθステージ22上のウェハ10を上下移動させることで、検出光学系31をウェハ10の平面部11に対して合焦させる。そして、オートフォーカスユニット32は、合焦作動時のXYZステージ21によるウェハ10の上下移動量から、ウェハ10の下面B(θステージ22の支持面)から上面A(平面部11)までの高さDaを検出し、装置制御部52を介してデータ処理部50へ出力する。
【0030】
なお、予め、ウェハ支持部20において設定した所定の基準点から初期状態におけるθステージ22の支持面までの高さを計測し、既知データとして取得しておく。また、予め、上述の基準点から撮像部40に内蔵されたイメージセンサ(図示せず)の各画素までの高さを計測し、既知データとして取得しておく。これにより、ウェハ10の下面Bから上面Aまでの高さDaおよび、ウェハ10の下面Bから膜境界Cまでの高さDcを求めることができる。
【0031】
オートフォーカスユニット32による合焦作動を行った状態で、撮像部40により、上ベベル部12に位置する膜15の端部16をウェハ10の端部と対向する方向(すなわち、ウェハ10の平面の延在する方向)から撮像する(ステップS102)。このとき、落射照明部42による照明光がレンズ部41を介してウェハ10の端部近傍に照射されるとともに、ベベル照明部45による拡散光がウェハ10の端部近傍(上ベベル部12等)に照射されると、ウェハ10からの反射光がレンズ部41によって本体部43に内蔵されたイメージセンサ(図示せず)に導かれ、レンズ部41により膜15の端部16に合焦したウェハ10の端部近傍の反射像がイメージセンサの撮像面上に結像される。そして、本体部43に内蔵されたイメージセンサ(図示せず)は、膜15の端部16に合焦したウェハ10の端部近傍の反射像(図3を参照)を撮像し、画像データをデータ処理部50へ出力する。
【0032】
またこのとき、ウェハ支持部20(θステージ22)に支持されたウェハ10を回転させて、所定の回転角度(例えば1度)毎に、オートフォーカスユニット32による合焦作動および撮像部40による撮像を行うことで、ウェハ10の全周に亘る平面部11の(端部近傍における)高さ位置データおよびウェハ10の画像データを繰り返し取得する。
【0033】
次に、データ処理部50は、撮像部40から入力された、膜15の端部16に合焦したウェハ10の端部近傍の画像データより、ウェハ10の下面B(θステージ22の支持面)から膜境界C(膜15の端部16)までの高さDcを検出する(ステップS103)。このとき、撮像部40の視野(図3を参照)内に存在する膜境界C(膜15の端部16)の高さ位置(高さDc)は、基準画素からの画素数を倍率換算することで求めることができる。そして、データ処理部50は、ウェハ10の下面Bから膜境界Cまでの高さDcを検出すると、高さ検出器30で検出したウェハ10の下面Bから上面Aまでの高さDaと、ウェハ10の下面Bから膜境界Cまでの高さDcとの差から、ウェハ10の平面部11(上面A)に対する膜15の端部16(膜境界C)の降下量D(=Da−Dc)を求める(ステップS103)。なおこのとき、前述した所定の回転角度(例えば1度)毎に、ウェハ10の全周に亘り降下量Dを求める。
【0034】
ここで、データ処理部50は、ウェハ10の全周に亘って求めた降下量Dを利用して、ウェハ10の検査を行うことが可能である。このとき例えば、降下量Dについての標準偏差(もしくは3σ)を求め、求めた標準偏差が所定値より大きければ異常と判定し、その旨を報知するようにしてもよい。また例えば、降下量Dが所定範囲から外れた場合に異常と判定し、その旨を報知するようにしてもよい。
【0035】
この結果、本実施形態によれば、高さ検出器30で検出したウェハ10の平面部11の高さ位置および、撮像部40で撮像した膜15の端部16の画像に基づいて、ウェハ10の平面部11に対する膜15の端部16の降下量Dを求めるため、ウェハ10の平面部11を基準として、膜15の端部16の高さを精度よく測定することができる。なおここで、撮像部40の被写界深度DOFを図2に示す。図2からわかるように、撮像部40は、ウェハ10の平面部11および膜15の端部16の両方に合焦させることができない。そこで、平面部11の高さ位置を検出する高さ検出器30を別途設けることにより、ウェハ10の平面部11および膜15の端部16の画像を別々に撮像取得する必要がなく、膜15の端部16の高さを高速に精度よく測定することができる。
【0036】
なおこのとき、オートフォーカスユニット32を利用して平面部11の高さ位置(高さDa)を求めることで、平面部11の高さ位置(高さDa)、すなわち膜15の端部16の高さ(降下量D)を高速に測定することができる。またこのとき、ウェハ10を回転さることで、ウェハ10の全周に亘る膜15の端部16の高さ(降下量D)を高速に測定することができる。
【0037】
なお、上述の実施形態において、ウェハ10の反り状態を求めることも可能である。そこで、ウェハ10の反り状態を求める処理について、図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、オートフォーカスユニット32による合焦作動を行った状態で、撮像部40により、ウェハ10における平面部11と上ベベル部12との境界部11aをウェハ10の端部と対向する方向(すなわち、ウェハ10の平面の延在する方向)から撮像する(ステップS201)。この場合、撮像部40の本体部43に内蔵されたイメージセンサ(図示せず)の撮像面上には、平面部11と上ベベル部12との境界部11aに合焦したウェハ10の端部近傍の反射像が結像される。そして、イメージセンサ(図示せず)は、平面部11と上ベベル部12との境界部11aに合焦したウェハ10の端部近傍の反射像を撮像し、画像データをデータ処理部50へ出力する。
【0038】
またこのとき、ウェハ支持部20(θステージ22)に支持されたウェハ10を回転させて、所定の回転角度(例えば1度)毎に、オートフォーカスユニット32による合焦作動および撮像部40による撮像を行うことで、ウェハ10の全周に亘るウェハ10の画像データを繰り返し取得する。
【0039】
次に、オートフォーカスユニット32による合焦作動を行わずに、すなわち、θステージ22の高さが一定の状態で、撮像部40により、ウェハ10における平面部11と上ベベル部12との境界部11aをウェハ10の端部と対向する方向から撮像する(ステップS202)。この場合、オートフォーカスユニット32による合焦作動を行わないため、平面部11と上ベベル部12との境界部11aの高さ位置は、オートフォーカスユニット32による合焦作動を行った場合よりもばらつく。そして、イメージセンサ(図示せず)は、平面部11と上ベベル部12との境界部11aに合焦したウェハ10の端部近傍の反射像を撮像し、画像データをデータ処理部50へ出力する。
【0040】
またこのとき、ウェハ支持部20(θステージ22)に支持されたウェハ10を回転させて、所定の回転角度(例えば1度)毎に、撮像部40による撮像を行うことで、ウェハ10の全周に亘るウェハ10の画像データを繰り返し取得する。
【0041】
次に、データ処理部50は、撮像部40から入力された、オートフォーカスユニット32による合焦作動を行った場合のウェハ10の端部近傍の画像データおよび、合焦作動を行わない場合のウェハ10の端部近傍の画像から、ウェハ10の反り状態を求める(ステップS203)。具体的には、まず、オートフォーカスユニット32による合焦作動を行った場合のウェハ10の端部近傍の画像データより、前述した所定の基準点に対する境界部11aの高さ位置を検出する。なお、境界部11aの高さ位置は、前述したように、基準画素からの画素数を倍率換算することで求めることができる。この場合、オートフォーカスユニット32による合焦作動を行っているため、ウェハ10の全周に亘り境界部11aの高さ位置を求めると、図5の破線で示すように、ウェハ10の反りに拘わらず略一定の分布となる。
【0042】
次に、合焦作動を行わない場合のウェハ10の端部近傍の画像データより、所定の基準点に対する境界部11aの高さ位置を検出する。この場合、オートフォーカスユニット32による合焦作動を行っていないため、ウェハ10の全周に亘り境界部11aの高さ位置を求めると、図5の実線で示すように、ウェハ10の反りに応じた分布となる。そして、合焦作動を行った場合の境界部11aの高さ位置と、合焦作動を行わない場合の境界部11aの高さ位置との差を求めれば、ウェハ10の端部近傍における平面部11の高さ変動(すなわち、ウェハ10の反り状態)を求めることができる。
【0043】
なお、この処理において、ウェハ10が非吸着状態でθステージ22上に支持されていれば、吸着によるウェハ10の変形を排した自然に近い条件で、ウェハ10の反り状態をより精度よく求めることができる。
【0044】
また、上述の実施形態において、ウェハ10の検査を行っているが、これに限られるものではなく、例えば、液晶ガラス基板等の基板の検査を行う場合であってもよい。また、基板の形状は、略円盤状に限らず、例えば、矩形板状であってもよい。
【0045】
また、上述の実施形態において、ウェハ10の全周に亘り降下量Dを求めているが、これに限られるものではなく、ウェハ10の端部の一部についてだけ降下量Dを求めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 検査装置
10 半導体ウェハ(基板)
11 平面部(11a 境界部) 12 上ベベル部(傾斜部)
13 下ベベル部 14 アペックス部
15 膜 16 (膜の)端部
20 ウェハ支持部
21 XYZステージ 22 θステージ
30 高さ検出部 31 検出光学系
32 オートフォーカスユニット(合焦装置)
40 撮像部 50 データ処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面部および前記平面部の端部に繋がって下方に傾斜した傾斜部を有するとともに、上面に膜が形成された基板を支持するステージと、前記ステージに支持された前記基板の端部を前記基板の平面の延在する方向から撮像する撮像部と、前記撮像部に撮像された前記基板の端部の画像に基づいて前記基板の端部を検査する処理部とを備えた検査装置による検査方法であって、
前記ステージにより前記基板を支持した状態で、高さ検出器により前記ステージに対する前記平面部の高さ位置を検出する検出ステップと、
前記撮像部により、前記傾斜部に位置する前記膜の端部に合焦させた状態で、前記膜の端部を前記基板の平面の延在する方向から撮像する膜撮像ステップと、
前記処理部により、前記膜撮像ステップで撮像した前記膜の端部の画像に基づいて前記ステージに対する前記膜の端部の高さ位置を検出し、前記検出ステップで検出した前記平面部の高さ位置と前記膜の端部の高さ位置との差から、前記平面部に対する前記膜の端部の降下量を求める高さ演算ステップとを有することを特徴とする検査方法。
【請求項2】
前記高さ検出器は、前記基板の上方から前記平面部を検出可能な検出光学系と、前記ステージに支持された前記基板と前記検出光学系とを上下に相対移動させることで前記検出光学系を前記平面部に対して合焦させる合焦装置とを有し、
前記検出ステップにおいて、前記合焦装置により前記検出光学系を前記平面部に対して合焦させ、前記合焦時の前記上下の相対移動量から前記平面部の高さ位置を検出し、
前記膜撮像ステップにおいて、前記合焦装置による前記合焦を行った状態で、前記膜の端部を撮像することを特徴とする請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記基板が略円板状に形成され、
前記ステージは、前記基板を支持して前記基板の回転対象軸を中心に回転移動可能に構成されており、
前記検出ステップにおいて、前記ステージにより前記基板を回転させながら前記傾斜部近傍における前記平面部の高さ位置を前記基板の全周に亘り検出し、
前記膜撮像ステップにおいて、前記ステージにより前記基板を回転させながら前記膜の端部を前記基板の全周に亘り撮像し、
前記高さ演算ステップにおいて、前記降下量を前記基板の全周に亘り求めることを特徴とする請求項1または2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記高さ検出器は、前記基板の上方から前記平面部を検出可能な検出光学系と、前記ステージに支持された前記基板と前記検出光学系とを上下に相対移動させることで前記検出光学系を前記平面部に対して合焦させる合焦装置とを有し、
前記合焦装置による前記合焦を行った状態で、前記撮像部により、前記平面部と前記傾斜部との境界部に合焦させた状態で前記境界部を前記基板の端部と対向する方向から撮像する境界部撮像ステップと、
前記合焦装置による前記合焦を行わずに、前記撮像部により、前記平面部と前記傾斜部との境界部に合焦させた状態で前記境界部を前記基板の端部と対向する方向から撮像する反り撮像ステップと、
前記処理部により、前記境界部撮像ステップで撮像した前記境界部の画像および、前記反り撮像ステップで撮像した前記境界部の画像から、前記基板の反り状態を求める反り演算ステップとをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の検査方法。
【請求項5】
前記基板が略円板状に形成され、
前記ステージは、前記基板を支持して前記基板の回転対象軸を中心に回転移動可能に構成されており、
前記境界部撮像ステップおよび前記反り撮像ステップにおいて、前記基板を回転させながら前記境界部を前記基板の全周に亘り撮像し、
前記反り演算ステップにおいて、前記基板の反り状態を前記基板の全周に亘り求めることを特徴とする請求項4に記載の検査方法。
【請求項6】
前記基板の下面側が前記ステージに対して吸着可能であり、
前記検出ステップ、前記膜撮像ステップ、および前記高さ演算ステップにおいて、前記基板が前記ステージに吸着状態で支持され、
前記境界部撮像ステップ、前記反り撮像ステップ、および前記反り演算ステップにおいて、前記基板が前記ステージに非吸着状態で支持されることを特徴とする請求項4または5に記載の検査方法。
【請求項7】
平面部および前記平面部の端部に繋がって下方に傾斜した傾斜部を有するとともに、上面に膜が形成された基板を支持するステージと、
前記基板が前記ステージに支持された状態で、前記ステージに対する前記平面部の高さ位置を検出する高さ検出器と、
前記傾斜部に位置する前記膜の端部に合焦させた状態で、前記膜の端部を前記ステージに支持された前記基板の平面の延在する方向から撮像する撮像部と、
前記撮像部に撮像された前記膜の端部の画像に基づいて前記ステージに対する前記膜の端部の高さ位置を検出し、前記高さ検出器により検出された前記平面部の高さ位置と前記膜の端部の高さ位置との差から、前記平面部に対する前記膜の端部の降下量を求める処理部とを備えて構成されることを特徴とする検査装置。
【請求項8】
前記高さ検出器は、前記基板の上方から前記平面部を検出可能な検出光学系と、前記ステージに支持された前記基板と前記検出光学系とを上下に相対移動させることで前記検出光学系を前記平面部に対して合焦させる合焦装置とを有し、前記合焦装置により前記検出光学系を前記平面部に対して合焦させ、前記合焦時の前記上下の相対移動量から前記平面部の高さ位置を検出し、
前記撮像部は、前記合焦装置による前記合焦を行った状態で、前記膜の端部を撮像することを特徴とする請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
前記基板が略円板状に形成され、
前記ステージは、前記基板を支持して前記基板の回転対象軸を中心に回転移動可能に構成されており、
前記高さ検出器は、前記ステージにより前記基板を回転させながら前記傾斜部近傍における前記平面部の高さ位置を前記基板の全周に亘り検出し、
前記撮像部は、前記ステージにより前記基板を回転させながら前記膜の端部を前記基板の全周に亘り撮像し、
前記処理部は、前記降下量を前記基板の全周に亘り求めることを特徴とする請求項7または8に記載の検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−122935(P2011−122935A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280719(P2009−280719)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】