説明

樹脂封止半導体装置

【課題】 半導体素子を安定保持できるとともに外郭の機械的強度も十分な樹脂封止構造を持つ半導体装置を提供すること。
【解決手段】 半導体発光素子2とこれを駆動するIC素子3とを低ガラス転移点の内皮樹脂5で被膜封止するとともに、内皮樹脂5周りを高ガラス転移点の外皮樹脂6で被膜封止し、内皮樹脂5の軟らかさを利用して半導体発光素子2及びIC素子3の電極やボンディング位置を含めて密に封止し、外皮樹脂6の硬さによって機械的強度を保つ。また、内皮樹脂5と外皮樹脂6とを同じ組成材質のエポキシ樹脂とすることで、線膨張係数の差をなくし内皮及び外皮の樹脂5,6の界面の接合度を高く維持する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体発光素子または受光素子などを備える半導体装置に係り、特に発光面や受光面などへの充填が十分にできしかも外郭の機械的強度も高いパッケージ構造を持つ樹脂封止半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】発光や受光などの素子及びその他の半導体素子を備える半導体装置は、リードフレームや基板の上に実装搭載され、主としてエポキシ系の樹脂でパッケージしたものが典型的な構造である。このような樹脂パッケージによる半導体装置の中で、たとえばプリント配線基板などの表面に半田付けで実装されるいわゆる表面実装型の半導体装置では、実装時にリフロー工程が行われる。このリフロー工程では、半導体装置の全体が加熱されるので、樹脂パッケージに含まれた水分が水蒸気化して樹脂パッケージが割れることがある。このため、従来から耐リフロー性を上げるために、樹脂パッケージを二重モールドする構造とすることで対応している。このような二重モールド構造の半導体装置としては、たとえば特開平5−315475号公報に記載のものがある。
【0003】この公報に記載の半導体装置は、半導体素子の周辺部を液状または柔軟性のある未硬化の状態の部分とこれらの周囲の硬化した部分で封止した内部樹脂と、この内部樹脂の外側に形成した機械的強度に優れた外部樹脂との組合せとしたものである。内部樹脂は、ポリエステルアクリレートやエポキシアクリレートなどのUV硬化樹脂などであり、その外表部のみ硬化反応を進行させ内部を未硬化の状態とし、外部樹脂はエポキシ樹脂などとしたものである。そして、このような構成とすることで、内部樹脂及び外部樹脂にボイドの発生が無く、水分等の凝集が低減されるので耐熱性が向上し、外部応力にも十分な耐力を持つとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、内部樹脂はその表面部分だけを硬化させて内側は未硬化の状態となるように形成するので、製造工程だけでなく検査や品質管理も含めて複雑で煩雑になる。すなわち、硬化と未硬化の度合いを適切に調節するためには専用の製造装置が必要となるほか、加熱及び冷却操作の温度制御も複雑になりやすい。また、製造した後では樹脂パッケージの表面の機械的強度については比較的簡単に検査できるものの、内部樹脂の未硬化度を知るためには専用の検査装置を用いるか、ロット内の数個の製品を打ち抜いて破壊検査をする以外にない。したがって、検査設備の拡充が必要となるほか製造歩留りも低下してしまう。
【0005】更に、封止された半導体素子は未硬化状態の樹脂によって支持されるだけなので、機械的な保持力の安定性に欠ける。したがって、半導体装置が激しい振動を受けやすい機器に組み込まれるような場合では、半導体素子が無用に揺れ動く可能性があり、導通構造の保全が図れなくなることがある。
【0006】そこで、本発明は、半導体素子を安定保持できるとともに外郭の機械的強度も十分な樹脂封止構造を持つ樹脂封止半導体装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、半導体素子を2層の樹脂層で被覆封止する樹脂封止半導体装置であって、前記2層の樹脂層を、前記半導体素子の全体を封止する低ガラス転移点のエポキシ樹脂を使用した内皮樹脂と、前記内皮樹脂の全体を封止し当該内皮樹脂と同じ組成材質のエポキシ樹脂であって且つ前記内皮樹脂よりも高ガラス転移点の外皮樹脂とから構成したことを特徴とする。
【0008】このような構成では、装置の外郭を構成する外皮樹脂は高ガラス転移点であり、硬い樹脂による被膜が得られるので、機械的強度を十分なものとすることができる。また、内皮樹脂は軟らかいので半導体素子の周りを密に封止できるとともに、内皮樹脂全体を一旦完全に硬化させるので、安定した半導体素子の保持ができる。
【0009】
【発明の実施の形態】請求項1に記載の発明は、半導体素子を2層の樹脂層で被覆封止する樹脂封止半導体装置であって、前記2層の樹脂層を、前記半導体素子の全体を封止する低ガラス転移点のエポキシ樹脂を使用した内皮樹脂と、前記内皮樹脂の全体を封止し当該内皮樹脂と同じ組成材質のエポキシ樹脂であって且つ前記内皮樹脂よりも高ガラス転移点の外皮樹脂とから構成したことを特徴とする樹脂封止半導体装置であり、ガラス転移点が異なる樹脂層の組み合わせによって半導体素子の周りの最適な封止と外郭の機械的強度も十分な製品が得られるという作用を有する。また、内皮樹脂及び外皮樹脂を同じエポキシ樹脂の組成材質とすることで線膨張率を一様化でき、内外皮樹脂どうしの間の界面の接合度を高く維持できるとともに剥離も防止できる。
【0010】請求項2に記載の発明は、前記半導体素子は、その上面を発光面または受光面とした構成とし、前記半導体発光素子の上面のみを前記内皮樹脂で被膜したことを特徴とする請求項1記載の樹脂封止半導体装置であり、半導体素子の発光や受光が良好に行えると同時に装置全体を薄型化できるという作用を有する。
【0011】請求項3に記載の発明は、前記半導体素子は、その上面を電極の形成面またはワイヤのボンディング面とした構成とし、前記半導体素子の上面のみを前記内皮樹脂で被膜したことを特徴とする請求項1記載の樹脂封止装置であり、電極やボンディング面の周りを内皮樹脂により密に封止でき導通構造の保全が図れるという作用を有する。
【0012】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】図1は本発明の実施の形態における樹脂封止半導体装置であって、発光素子を含む半導体発光装置の例として示す概略縦断面図である。
【0014】図1において、表面にプリント配線パターン(図示せず)を形成した基板1の上に半導体発光素子2及びこれを駆動するためのIC素子3が導通搭載されている。半導体発光素子2は、たとえば絶縁性のサファイアを基板としてGaNの化合物半導体を積層した青色発光のもので、その上面を主光取出し面としてp側電極2a及びn側電極2bをともに上面側に形成したものである。駆動用のIC素子3は電源側に導通して入力信号に応じて半導体発光素子2への通電を制御する。このIC素子3はその底面に電極を形成して基板1のプリント配線パターンに導通させるとともに、上面の他極側の電極と半導体発光素子2のp側電極2aとの間をワイヤ4aによってボンディングしている。また、半導体発光素子2のn側電極2bと基板1のプリント配線パターンとの間をワイヤ4bによってボンディングしている。このような導通構造より、電源側からの通電があるとIC素子3によって半導体発光素子2が駆動されて発光する。
【0015】半導体発光素子2、IC素子3及びワイヤ4a,4bは内皮樹脂5により被膜され、更に内皮樹脂は外皮樹脂6によって被膜されている。内皮樹脂5及び外皮樹脂6はいずれも光透過性のエポキシ樹脂を素材としたものであるが、それぞれのガラス転移点(転移温度)Tgが異なるものを使用する。すなわち、内皮樹脂5のガラス転移点Tgは20℃〜50℃程度であり、外皮樹脂6のそれは120℃〜160℃程度である。
【0016】半導体発光素子2とIC素子3を基板1に実装搭載してワイヤ4a,4bをボンディングした工程の後に内皮及び外皮の樹脂5,6がモールド法によって成形される。この成形では、ガラス転移点Tgが低い内皮樹脂5をモールド成形し、その硬化後にガラス転移点Tgが高い外皮樹脂6をモールド成形する。この外皮樹脂6の成形の際の加熱温度は150℃程度であり、この程度の高温とすることによって内皮樹脂5と外皮樹脂6との間を高密着度で接合できる。
【0017】以上の構成において、内皮樹脂5はそのガラス転移点Tgが20℃〜50℃程度の低い温度なので、この温度域よりも低い温度でモールドすれば結晶化が抑制される。すなわち、内皮樹脂5を軟らかくて流動性がある状態でモールドできるので、半導体発光素子2及びIC素子3の周囲に満遍なく周り込み、ボイドを含まない樹脂封止が実現できる。そして、外皮樹脂6はガラス転移点Tgが高く常温時でもその硬さを維持できるので、外郭の機械的強度を十分に高くできる。
【0018】このように、半導体発光素子2とIC素子3とをガラス転移点Tgが低い内皮樹脂5で被膜することにより、これらの素子2,3やワイヤ4a,4bの表面との間に隙間などがない樹脂封止ができる。また、ガラス転移点Tgが低いエポキシ樹脂では、シリコーンなどと比べると吸湿性が低くなりしかもガラス転移点Tgが低いほど吸湿性は更に低くなる。したがって、内皮樹脂5に含まれる水分の量は微量であり、リフロー工程の加熱によっても水蒸気爆発による破壊の危険性が大幅に低減される。
【0019】更に、内皮樹脂5及び外皮樹脂6は同じエポキシ樹脂であり、それぞれのガラス転移点の値が異なるだけである。このため、内皮樹脂5及び外皮樹脂6の線膨張係数は極めて近似または等しくすることができ、リフロー工程での約230℃程度の温度雰囲気での加熱時の膨張及び工程後の冷却の期間を通じて膨張及び収縮度を均一に保つことができる。このため、内皮樹脂5と外皮樹脂6との間の界面の密着度を高く維持できるとともに剥離も確実に防止できる。したがって、半導体発光素子2からの発光が歪んだり配光性が不均一になることがなく、良好な発光形態が得られる。
【0020】図2は別の実施の形態を示す半導体装置の概略縦断面図である。なお、図1に示したものと同じ構成部材については共通の符号で指示し、その詳細な説明は省略する。
【0021】図2において、半導体発光素子2とIC素子3の上面だけに内皮樹脂7がモールド成形され、基板1の全体が外皮樹脂8によってモールド成形されている。内皮樹脂7と外皮樹脂8はそれぞれ図1に示した内皮樹脂5と外皮樹脂6と同様にエポキシ樹脂であり、ガラス転移点Tgも全く同じである。
【0022】このように半導体発光素子2及びIC素子3の上面だけをガラス転移点Tgが低くて軟らかい内皮樹脂7で被膜することにより、半導体発光素子2の主光取出し面やワイヤ4a,4bのボンディング点を密に封止できる。そして、図1の例と同様に内皮樹脂7と外皮樹脂8との間の界面も密に接合できるので剥離も生じず、外皮樹脂8により機械的強度も高く保持される。また、内皮樹脂7は素子2,3の上に形成されるだけなので、外皮樹脂8を含めた全体の厚さを薄くでき、小型薄型化も可能となる。
【0023】なお、以上の例では半導体発光素子2による半導体発光装置として説明したが、これに代えて半導体受光素子を基板1の上に搭載し、IC素子を半導体受光素子からの信号を受けて外部出力する半導体装置としてもよい。また、発光素子と受光素子とを備え得るフォトカプラーなどであってもよい。
【0024】
【発明の効果】請求項1の発明では、ガラス転移点が異なる樹脂層の組み合わせによって半導体素子の周りの最適な封止と外郭の機械的強度も十分な製品が得られる。また、内皮樹脂及び外皮樹脂を同じエポキシ樹脂の組成材質とすることで線膨張率を一様化できるので、内外皮樹脂どうしの間の界面の接合度を高く維持できるとともに剥離も防止できる。
【0025】請求項2の発明では、半導体素子の発光や受光が良好に行えると同時に装置全体を薄型化できる。
【0026】請求項3の発明では、電極やボンディング面の周りを内皮樹脂により密に封止でき導通構造の保全が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の樹脂封止半導体装置であって半導体発光装置の例とした縦断面図
【図2】半導体発光素子及びIC素子の表面だけを内皮樹脂で被膜した例を示す縦断面図
【符号の説明】
1 基板
2 半導体発光素子
2a p側電極
2b n側電極
3 IC素子
4a,4b ワイヤ
5 内皮樹脂
6 外皮樹脂
7 内皮樹脂
8 外皮樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体素子を2層の樹脂層で被覆封止する樹脂封止半導体装置であって、前記2層の樹脂層を、前記半導体素子の全体を封止する低ガラス転移点のエポキシ樹脂を使用した内皮樹脂と、前記内皮樹脂の全体を封止し当該内皮樹脂と同じ組成材質のエポキシ樹脂であって且つ前記内皮樹脂よりも高ガラス転移点の外皮樹脂とから構成したことを特徴とする樹脂封止半導体装置。
【請求項2】 前記半導体素子は、その上面を発光面または受光面とした構成とし、前記半導体発光素子の上面のみを前記内皮樹脂で被膜したことを特徴とする請求項1記載の樹脂封止半導体装置。
【請求項3】 前記半導体素子は、その上面を電極の形成面またはワイヤのボンディング面とした構成とし、前記半導体素子の上面のみを前記内皮樹脂で被膜したことを特徴とする請求項1記載の樹脂封止半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2001−223305(P2001−223305A)
【公開日】平成13年8月17日(2001.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−32921(P2000−32921)
【出願日】平成12年2月10日(2000.2.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】