説明

樹脂組成物、絶縁層付支持材料、プリプレグ、発光素子用積層板、発光素子用回路基板および発光装置

【課題】発光素子の温度上昇を抑制し、さらに発光ロスを低減することによって、高輝度、高寿命、低コスト、省スペースである発光素子用樹脂組成物、絶縁層付支持材料、プリプレグ、発光素子用積層板、発光素子用回路基板および発光装置を提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、熱可塑性樹脂とを含み、前記熱可塑性樹脂がポリエーテルスルホンであり、前記無機充填材は、屈折率2.2以上の第一の無機充填材と、屈折率が2.2未満で、熱伝導率が10W/m・K以上の第二の無機充填材を含むことを特徴とする発光素子の基板に用いられる樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、絶縁層付支持材料、プリプレグ、発光素子用積層板、発光素子用回路基板および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(以下LED)は、小型で発光効率が高いため、照明用の白熱電球や蛍光灯、車のヘッドライト、液晶バックライトの冷陰極管の代替光源として注目されている。
【0003】
LEDの特長として、発光波長が、近赤外線から紫外線領域まで幅広いことが挙げられる。白色発光させるには、例えば赤、緑、青の発光をもつ3種のLEDを用いたり、紫外線を発生する紫LEDと赤緑青蛍光体の組み合わせ、青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせ、青色LEDと緑、赤蛍光体の組み合わせ、補色を利用した組み合わせからも白色発光を得ることができる。このことから、LEDは白熱電球、蛍光灯、HIDのような種々の白色を作り出すことができる。
【0004】
また駆動電圧が低いことから、同じ明るさを得るのに、他の発光装置と比べ消費電力を低くすることが可能である。LEDの構造は、従来からある主に表示用に用いられてきた砲台型と、高輝度を目的とした表面実装型が挙げられる。表面実装型は、出力が1W以上のものは、特にパワーLEDとも言われ注目されている。従来のLEDを使用した発光装置では、要求される発光輝度も小さかったため、従来の通電量、消費電力量で実用上大きな問題は生じていなかった。ところが、近年、LED発光装置の応用範囲が拡大されるにしたがい、消費電力量は1W以上、消費電流量も0.5A以上となり、これらを安定的に実現するLED発光装置が求められている。 そのため、LEDの高輝度化、発光効率の向上、寿命の向上、低コスト化、省スペースなどが課題となっている。
【0005】
LEDの高輝度化の手法としては、LED素子に投入する電流量を増加させることが考えられるが、それに伴い発熱量が増大するので、LED素子を破壊させないためにも、高輝度を維持しながら放熱を行う必要がある。例えば、回路基板の熱伝導率を向上させ、放熱効率を向上させることが考えられる(例えば特許文献1および2)。
【0006】
また、一般的に積層板の表面を白色層とすることで、照射したい方向と反対側に発光する光も白色層で反射し、照射側の発光輝度を補うことが行われている(例えば特許文献3および4)。
【0007】
しかしながら、高輝度を達成させるために、高放熱性、高反射率、高熱伝導率をすべてを満足する発光素子用基板はなく、開発が待たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−044824号公報
【特許文献2】特開2003−277479号公報
【特許文献3】特開平07−241952号公報
【特許文献4】特開2007−266647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、発光素子の温度上昇を抑制し、さらに発光ロスを低減することによって、高輝度、高寿命、低コスト、省スペースである発光素子用樹脂組成物、絶縁層付支持材料、プリプレグ、発光素子用積層板、発光素子用回路基板および発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記(1)〜(24)によって達成される。
(1)エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、熱可塑性樹脂としてポリエーテルスルホンと、を含むことを特徴とする発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
(2)前記無機充填材は、屈折率2.2以上の第一の無機充填材と、屈折率が2.2未満で、熱伝導率が10W/m・K以上の第二の無機充填材を含む上記(1)に記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
(3)前記第一の無機充填材の含有率は、樹脂組成物全体の1重量%以上、40重量%以下である上記(2)に記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
(4)前記第二の無機充填材の含有率は、樹脂組成物全体の49重量%以上、95重量%以下である上記(2)または(3)に記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
(5)前記第一の無機充填材と、前記第二の無機充填材との合計含有量は、樹脂組成物全体の50重量%以上、96重量%以下である上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
(6)前記ポリエーテルスルホンは、重量平均分子量が10〜10である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
(7)前記ポリエーテルスルホンは、末端が水酸基変性されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
(8)前記エポキシ樹脂は、室温で液状であるエポキシ樹脂を含む上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
(9)金属箔または樹脂フィルムからなる支持材料の少なくとも一方の面側に上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて絶縁層を形成したものである絶縁層付支持材料。
(10)前記絶縁層は、絶縁基材に前記樹脂組成物を含浸させたものである上記(9)に記載の絶縁層付支持材料。
(11)前記絶縁基材がガラス織布である上記(10)に記載の絶縁層付支持材料。
(12)上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の樹脂組成物を絶縁基材に含浸してなるプリプレグ。
(13)前記絶縁基材がガラス織布である上記(12)に記載のプリプレグ。
(14)コアと、前記コアの少なくとも一方の面側に上記(9)ないし(11)のいずれかに記載の絶縁層付支持材料が、前記絶縁層面側が前記コア面側に対向するように積層成形され絶縁樹脂層を形成している発光素子用積層板。
(15)コアと、前記コアの少なくとも一方の面側に上記(12)または(13)に記載のプリプレグが積層成形され絶縁樹脂層を形成している発光素子用積層板。
(16)前記コアが、金属板である上記(14)または(15)に記載の発光素子用積層板。
(17)前記コアが、絶縁樹脂板である上記(14)または(15)に記載の発光素子用積層板。
(18)前記絶縁樹脂層面側において前記コアが露出したコア露出部を有している上記(14)ないし(17)のいずれかに記載の発光素子用積層板。
(19)前記露出部に、熱伝導体が埋設されている上記(18)に記載の発光素子用積層板。
(20)上記(14)ないし(19)のいずれかに記載の発光素子用積層板を回路加工してなる
発光素子用回路基板。
(21)前記発光素子用積層板を形成している前記絶縁樹脂層の、前記コアとは反対面側の前記絶縁樹脂層表面の表面粗度
Rzが、1μm以上である上記(20)に記載の発光素子用回路基板。
(22)上記(20)または(21)に記載の発光素子用回路基板に発光素子を搭載してなる発光装置。
(23)前記発光装置は、接着剤を介して前記発光素子用回路基板に接着されている上記(22)に記載の発光装置。
(24)前記接着剤が、導電性を有する接着剤である上記(23)に記載の発光装置。
(25)前記発光素子が表面実装型発光ダイオードである上記(22)ないし(24)のいずれかに記載の発光装置。
(26)エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、ガラス転移温度が150℃以上、300℃以下の熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発光素子の温度上昇を抑制し、さらに発光ロスを低減することによって、高輝度、高寿命、低コスト、省スペースである発光素子用樹脂組成物、絶縁層付支持材料、プリプレグ、発光素子用積層板、発光素子用回路基板および発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の絶縁層付支持材料の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の絶縁層付支持材料の一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明のプリプレグの一実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の発光素子用積層板の一実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の発光素子用積層板の一実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の発光素子用積層板の一実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の発光素子用積層板の一実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の発光素子用積層板の一実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明の発光装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【図10】本発明の発光装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【図11】本発明の発光装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【図12】本発明の発光装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【図13】本発明の発光装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【図14】本発明の発光装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【図15】本発明の発光装置の製造方法の一実施形態を示す工程概略図である。
【図16】本発明の発光装置の製造方法の一実施形態を示す工程概略図である。
【図17】本発明の発光装置の製造方法の一実施形態を示す工程概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の樹脂組成物、絶縁層付支持材料、プリプレグ、発光素子用積層板、発光素子用回路基板および発光装置について説明する。
【0014】
本発明の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、熱可塑性樹脂としてポリエーテルスルホンと、を含む構成となっている。
【0015】
以下、本発明の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物を構成する各要素について説明する。
【0016】
本発明の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂としては、特に限定はされないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、ナフタレン変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂、ビフェニル変性エポキシ樹脂、アラルキル変性エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、クレゾールノボラックエポキシ樹脂が、高耐熱性を発現するために好ましく、また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および脂環式エポキシ樹脂は、耐光性に優れる点で好ましい。
【0017】
また難燃性を発現させるためにこれらのエポキシ樹脂をハロゲン化したものを使用することもできる。ハロゲン化されたエポキシ樹脂としては、臭素化率20%以上、重量平均分子量10000〜30000の臭素化エポキシ樹脂を用いることが好ましい。臭素化エポキシ樹脂としては、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられ、この中でも、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
また、軟化点が室温以下の液状のエポキシ樹脂を一種以上もちいることが好ましい。軟化点が室温以下の液状のエポキシ樹脂としては、特に限定はされないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、多塩基酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂、アミノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを用いることができる。特に、本発明では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いることが望ましく、これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。軟化点が室温以下の液状のエポキシ樹脂の含有量は、特に限定はされないが、エポキシ樹脂全体を100としたとき10〜90wt%含むことが好ましい。これにより、絶縁層を形成するエポキシ樹脂混合物を溶剤に溶解した後、金属箔あるいは樹脂フィルムなどの支持材料に塗工し、溶剤を除去した場合でも、エポキシ樹脂と支持材料との密着を十分に取ることが可能となる。エポキシ樹脂としては、例えば、硬化後のTgが150℃以上になるような樹脂、たとえば3官能以上のエポキシ樹脂と2官能エポキシ樹脂を組成物に含むことが好ましい。さらに、絶縁信頼性を考慮した場合、用いるエポキシ樹脂はナトリウム、カリウム、鉄などイオン性不純物の低いものが好ましく、また形成する絶縁層の厚みを超えるサイズの異物が無いことが好ましい。
【0019】
本発明の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物は、硬化剤を含む。硬化剤としては、特に限定はされないが、例えば、アミン系化合物、イミダゾール化合物、酸無水物、フェノール樹脂化合物などが挙げられる。アミン系化合物は少量でエポキシ樹脂を十分に硬化させることができ、樹脂の難燃性を発揮できるので好ましい。アミン系化合物は、融点150℃以上の常温で固形であり、有機溶剤に可溶で、エポキシ樹脂への溶解性が小さく、150℃以上の高温になって、エポキシ樹脂と速やかに反応するものが特に好ましい。具体的にはジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等がある。これらのアミン系化合物は溶剤に溶解させ、樹脂組成物ワニス中に均一に分散される。エポキシ樹脂との相溶性が小さいので、溶剤を揮発、除去した場合、ミクロに樹脂中に分散され、常温〜100℃では反応が進行せず、従って保存安定性を良好に保ちつつ均一なエポキシ樹脂硬化物を得ることができる。エポキシ樹脂と硬化剤との当量比は特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なくするため、エポキシ樹脂に対して硬化剤を0.6〜1.6当量の範囲に設定することが好ましく、0.7〜1.4当量がより好ましく、0.8〜1.2当量がさらに好ましい。0.6.〜1.6当量の範囲からはずれた場合、未反応分が多くなり信頼性が低下する傾向がある。
【0020】
本発明の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物は、無機充填材を含む。無機充填材としては、特に限定はされないが、溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク、マイカなどの酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化けい素などの窒化物、また炭化ケイ素、炭化ボロンのような炭化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウムのような炭酸塩イオン性無機化合物が好ましい。また、無機充填材としては、屈折率2.2以上の第一の無機充填材と、屈折率が2.2未満で、熱伝導率が10W/m・K以上の第二の無機充填材を含むことが好ましい。第一の無機充填材としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素などが挙げられ、第二の無機充填材としては、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミナ炭化ケイ素等挙げられる。これらの中でも、第一の無機充填材としては、酸化チタンが好ましく、第二の無機充填材としては、アルミナ、窒化ホウ素が好ましい。これにより、絶縁層の反射率を向上させることができる。第一の無機充填材の屈折率が2.2未満では、50%以上の反射率を得ることが困難である。ここで反射率とは、樹脂組成物をシート状に成形し、該シートに対して可視光線を一定角度から入射し、任意の角度で受光したときの光線強度の比率をいう。シートの垂線方向に対して45°から入射した光を45°で受光する場合、またシート垂直方向に対して0°から入射したものを45°で受光する場合などが考えられるが、いずれであっても、50%以上あることが、発光装置を構成する上で好ましい。また反射率を測定する際の絶縁層厚みは、該絶縁層が発光装置に使用される場合の厚みのことをいう。
また第二の無機充填材の熱伝導率が10W/m・K未満では、絶縁層の熱伝導率を1W/m・K以上にすることは困難である。ここで無機充填材の熱伝導率とは、無機充填材を板状に加工したものの測定値を表す。また絶縁層の熱伝導率とは、本発明の樹脂組成物をシート状に成形したものの測定値を表す。
【0021】
第一の無機充填材の含有率は、樹脂組成物全体の1重量%以上40重量%以下が好ましい。1重量%未満では十分な反射率を得ることが難しく、40重量%より大きい場合、第二の無機充填材の含有率を49重量%以上にすることができない。第二の無機充填材の含有率は、樹脂組成物全体の49重量%以上95重量%以下が好ましい。49重量%未満では樹脂組成物の熱伝導率のを1W/m・K以上にすることは困難である。また95重量%より大きい場合、該樹脂組成物からなる絶縁層の加工が困難となる。すなわち第一と第二の無機充填材の合計含有率は、樹脂組成物全体の50重量%以上、96重量%以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルスルホンを用いる。ポリエーテルスルホンは、ガラス転移点が200℃以上であるので、発光素子用回路基板を作製した場合、絶縁層の耐熱温度を向上させながら可撓性を付与することができる。その他、芳香族ポリアミド樹脂、液晶ポリマー、変性アクリル樹脂、などを用いることが可能である。また、ガラス転移点が200℃以上で、いくつかの有機溶剤に可溶である、芳香族ポリアミド樹脂ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂などを用いることが可能である。また、熱可塑性樹脂を含むことにより、発光素子用回路基板が可撓性を有するので、該基板を用いた発光素子および発光装置は、冷熱サイクル試験において、基板内部に生じる応力を緩和することができるので信頼性が向上する。また発光素子用基板の外形加工、穴あけにおける絶縁層の割れ、バリの発生を防止することが可能になり生産性が向上する。熱可塑性樹脂はポリマー骨格が一部変性もしくは末端が水酸基などで官能基化されていてもよく、エポキシ樹脂との相溶性、支持材料との密着性が向上し好ましい。本発明の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度としては、150℃以上、300℃以下が好ましく、より好ましくはガラス転移温度が200℃以上、300℃以下である。
【0023】
ポリエーテルスルホンの、重量平均分子量は10〜10であることが好ましい。また、末端が水酸基変性のポリエーテルスルホンであることが好ましい。これにより、成形時の絶縁接着剤の軟化を小さくし、ラミネート後の絶縁層の厚みを維持すること、絶縁層に可撓性を付与すること、絶縁層の高耐熱化の目的で配合されているが、さらに、難燃性、電気特性をも向上させることが期待できる。この高分子量ポリエーテルスルホンの割合は絶縁接着剤全体に対して5〜20重量%である。この下限値以上であれば、ラミネート成形時の加熱により層間厚みを確保でき、また、熱硬化時に溶融粘度が下がりすぎることなく皺などの発生を抑制することができる。一方、上限値以下であれば、接着剤組成物の弾力性に優れ、ラミネート成形時の凹凸への追従性、密着性が良好であり、成形ボイド発生を押さえることが可能となる。また、この高分子量ポリエーテルスルホンの末端が水酸基で変性されていれば、エポキシ樹脂との反応性も良いことから熱硬化後にポリエーテルスルホンとエポキシ樹脂との相分離を抑えるとともに、硬化物の耐熱性も向上させる。このため上記変性が行われていることが望ましい。
【0024】
本発明の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物は、上述したエポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、熱可塑性樹脂とを必須成分として含有するが、本発明の目的に反しない範囲において、その他の樹脂、例えばフェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂など、また、硬化促進剤、難燃剤、カップリング剤、界面活性剤、UV吸収剤、酸化防止剤、着色剤、可撓化剤などを添加することは差し支えない。硬化促進剤としては、アミン硬化において作用が大きいイミダゾール系が好ましい。
【0025】
次に、本発明の絶縁層付支持材料について説明する。
【0026】
図1および図2は、本発明の一実施形態による絶縁層付支持材料の断面図である。絶縁層付支持材料120および121は、金属箔または樹脂フィルムからなる支持材料200と、支持材料200の一方の面に設けられた絶縁層100、101とを備える。絶縁層が、樹脂が絶縁基材300に含浸された構成の絶縁層101でもよいし(図2)、樹脂成分から構成される絶縁層100であってもよい(図1)。樹脂が絶縁基材300に含浸されている方が、絶縁層付支持材料121のロール巻き取り時、あるいは所望の形状に裁断、打ち抜き加工時に、絶縁層が割れにくく、加工性が向上する。この絶縁層101の厚さは、10μm以上、300μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以上、200μm以下である。
【0027】
本発明で用いる絶縁基材300としては、例えば、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維、ガラス以外の無機化合物を含む織布または不織布等の無機繊維、あるいは、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等から構成される有機繊維等が挙げられる。これら基材の中でも、熱時の剛性、強度の点で、ガラス織布に代表されるガラス繊維基材が好ましい。
【0028】
本発明の金属箔または樹脂フィルムからなる支持材料200としては、例えば、銅または銅系合金、アルミニウムまたはアルミニウム系合金、鉄または鉄系合金、またはステンレス等で構成される金属箔、あるいは、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、またはポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等で構成される樹脂フィルム等が挙げられる。
【0029】
本発明の樹脂組成物を用いて絶縁層付支持材料120、121を製造する方法としては、特に限定されないが、本発明の樹脂組成物を金属箔または樹脂フィルムからなる支持材料200の少なくとも一方の面に塗工することにより製造することができる。生産性を考慮すると、樹脂組成物を単独で均一に薄く成形するよりも、樹脂組成物を支持材料200上に形成し、連続で生産することが好ましい。支持材料200上に塗工される樹脂組成物は、塗工時には有機溶剤を含んでいてもよいが、塗工後乾燥することから、有機溶剤はできるだけ少ない方が、樹脂組成物から成形される絶縁性の耐熱性が低下しないので好ましい。また樹脂組成物は半硬化であるので、後述の絶縁樹脂板500やヒートシンクなどの役割を有する金属板510に接着一体化することができる。
【0030】
樹脂組成物を支持材料上に絶縁層として形成する方法としては、ディップコート、バーコート、スプレイコート、ダイコート、カーテンコート、スクリーン印刷、グラビア印刷などいずれの方法を用いてもよい。ディップコートする場合は、コンマロール、スクイーズロール、などで、成形する樹脂組成物の厚みを制御することが好ましい。また、絶縁層101が、絶縁基材300に樹脂組成物を含浸させたものである絶縁層付支持材料121を製造する方法としては、例えば、支持材料200の一方の面に予め絶縁基材300を重ね合わせておき、絶縁基材300側の面に樹脂組成物を塗工することが挙げられる。また他の例としては、支持材料200に樹脂組成物を一旦塗工した後、樹脂組成物の面に絶縁基材300を貼り合わせることによっても製造することができる。
【0031】
次に、本発明のプリプレグについて説明する。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態によるプリプレグの断面図である。プリプレグ130とは、絶縁基材300に樹脂組成物を含浸乾燥させ、樹脂成分をBステージ化したものをいう。前述した、絶縁層付支持材料120、121の、絶縁層101に絶縁基材300を用いた構成で、支持材料200を用いないところが異なる。プリプレグ130は、一般に、後述の金属箔と金属板510、絶縁樹脂板500または回路基板とを積層接着する際に用いられる。絶縁基材300を用いることで支持材料が無くとも絶縁層をロールに巻き取ることが可能で、かつ所望の形状に裁断、打ち抜き加工時に、絶縁層が割れにくく、積層基板を製造する際の加工性が向上する。プリプレグ130の厚さは、20μm以上、300μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以上、100μm以下である。
【0033】
本発明で用いる絶縁基材300としては、例えば、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維、ガラス以外の無機化合物を含む織布または不織布等の無機繊維、あるいは、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等のから構成される有機繊維等が挙げられる。これら基材の中でも、熱時の剛性、強度の点で、ガラス織布に代表されるガラス繊維基材が好ましい。
【0034】
本発明の樹脂組成物を用いてプリプレグ130を製造する方法としては、特に限定されないが、本発明の樹脂組成物を絶縁基材300に含浸させることにより製造することができる。樹脂組成物を絶縁基材300に含浸させ、連続で生産することが好ましい。絶縁基材300に含浸される樹脂組成物は、含浸時には有機溶剤を含んでいてもよいが、含浸乾燥させるため、有機溶剤はできるだけ少ない方が、該樹脂組成物から成形される絶縁性の耐熱性が低下しないので好ましい。
【0035】
樹脂組成物を絶縁基材300に含浸しプリプレグ130として形成する方法としては、ディップコート、バーコート、スプレイコート、ダイコート、カーテンコート、スクリーン印刷、グラビア印刷などの方法を用いることができる。ディップコートする場合は、コンマロール、スクイーズロール、などで、含浸させた樹脂組成物の厚みを制御することが好ましい。
【0036】
次に、発光素子用積層板について説明する。
【0037】
図4〜図8は、本発明の一実施形態を示す発光素子用積層板125、127、135、145、155の断面図である。発光素子用積層板125、127、135、145、155は、コア500、510と、絶縁層付支持材料120またはプリプレグ130とが積層成形されて形成されている。発光素子用積層板125、127、135、145、155の構成としては、特に限定されないが、例えば、図5に示すように、コアとして絶縁樹脂板500、または図4および図6に示すような金属板510などが用いられる。また、図示はされていないが、いずれか一方の面側に導体回路が形成された回路基板をコアとして用いることもできる。回路基板をコアとして用いた場合、多層基板として用いることも可能であり、回路基板の小型化が可能となる。絶縁樹脂板500の材質は、特に限定されず、プラスチック、ゴム、繊維強化プラスチックなど用いることができるが、電気特性を考慮するとガラス織布・ガラス不織布基材エポキシ樹脂積層板(CEM−3)、ガラス織布基材エポキシ樹脂積層板(FR−4)などのガラス繊維を含む熱硬化性樹脂が好ましい。金属板510の材質としては、特に限定はされないが、アルミニウム、鉄、ニッケル、マグネシウム、チタン、銅、ステンレス、金属酸化物、金属窒化物、炭素鋼など用いることができ、放熱性を考慮するとアルミニウム、銅が好ましい。金属板510の形状は特に限定されず、放熱性を考慮するとくし型構造や、発光装置を含む製品筐体そのものでもよい。金属板510は、発光素子などから発生する熱を金属板510の界面で空気中へ熱伝達したり、また熱放射によって空気中へ熱を放出したり、さらに金属板510が接している他の部材へ、効率的に熱を伝導させることができる。
【0038】
本発明の発光素子用積層板は、図10に示す発光装置の一実施形態に示すように、絶縁樹脂層面側においてコア500が露出したコア露出部505を有していてもよい。また、 本発明の発光素子用積層板は、図7または図8に示すように、このコア露出部に、熱伝導体670が埋設されていてもよい。コア露出部505を有し、さらに熱伝導体670がコア露出部505に埋設されていることによって、発光素子で発生する熱を、効率的に熱伝導体670を通して積層板外部に放熱することが可能になる。熱伝導体670の形成方法としては、特に限定はされないが、電気めっきによりコア上に形成露出部505を埋設するようにしてもよいし、導電性ペーストをスクリーン印刷法などを用いて埋設するか、金属板で構成されたコア510の場合、例えばエッチングすることにより必要部分を残して除去し熱伝導体670を形成するようにしてもよい。またクリーム半田、熱伝導率0.5m/W・K以上の熱伝導性ペーストあるいは熱伝導性シートを用いても良い。さらに予め成形加工された金属板を用いても良い。
【0039】
次に、発光素子用回路基板について説明する。
【0040】
本発明の、発光素子用回路基板700は、発光素子用積層板125、127、135、145、155を回路加工することにより得られる。例えば図4または図5に記載の発光素子用積層板125、127を用いた場合、図9〜12に示すような構成を持った発光装置とすることができる。ここで回路加工された回路基板は、回路以外の絶縁層100部分の反射率が高く、また放熱性に優れることから、該回路基板が発光装置に使用された場合、発光素子の温度上昇を抑制し、さらに発光ロスを低減することができる。
【0041】
本発明の発光装置における、発光素子面側の絶縁層の表面粗度Rzは1μm以上が好ましい。表面の凹凸が1μmより大きいほど、絶縁層が空気と接触する面積が大きくなるため、放熱効率が向上する。さらに指向性の強いLED光を絶縁層部分で反射する際、凹凸が可視光の波長以上なので光干渉による光ロスが少なくなり好ましい。表面凹凸の形成方法としては特に限定されないが、例えば、薬液による樹脂成分、あるいはフィラー成分の部分的溶解による化学的手法、サンドブラストなどによる機械的手法、回路を形成する銅箔の粗化面を絶縁層に転写する方法などが挙げられるが、生産性を考慮すると、銅箔の粗化面を絶縁層に転写することが好ましい。すなわち、発光素子用基板を製造する際、絶縁層の表面粗度Rzが1μm以上になるよう、たとえば表面粗度Rzが1μm以上の銅箔面に絶縁層を積層することが好ましい。
【0042】
次に、発光装置について説明する。
【0043】
本発明の発光装置630は、図9〜14に示すように、発光素子用回路基板700に発光素子600を搭載することにより得られる。発光素子600は、接着剤650を介して発光素子用回路基板700に接着されるようにしてもよい。また、接着剤650が、導電性を有する接着剤であってもよい。例えば、図4に記載の発光素子用積層板を用いた場合、図12に示すような発光装置630を製造することができる。発光装置の製造方法としては、特に限定はなく、例えば図15に示すように、支持材料200を銅箔として作製した絶縁層付支持材料(図15(a))を金属板510上にプレス機などで貼り合せた後(図15(b))、回路加工を行い、発光素子用回路基板700(図15(c))を得る。次に発光素子600を接着剤650を介して実装することで、金属板510が最下層に配置される発光装置630を得ることができる。ここで接着剤650としては、ハンダ、熱伝導性グリース、金属ペーストなどの導電性を有するものを使用することができる。有害物質を使用しないことを考えると、鉛フリーハンダ、銀ペースト、銅ペーストを用いることが好ましく、コスト、取り扱い性を考慮すると銅ペーストが好ましい。また、非導電性の熱伝導シート、熱伝導ペーストを用いることもできる。
【0044】
図1に記載の絶縁層付支持材料120を用いた発光装置630としては図10に示すように、発光素子600が絶縁層100を介さず、接着剤650を介して直接金属板510に配置される発光装置630を製造することができる。製造方法としては例えば図16に示すように、支持材料200を銅箔として作製した絶縁層付支持材料120(図16(a))に、予め発光素子600が配置される位置に穴あけ加工を行い(図16(b))、その後プレス機などで金属板510上に貼り合せた後(図16(c))、銅箔をエッチング加工することによって導体回路210を得る(図16(d))、次に発光素子600をハンダなどの接着剤650を介して実装することで、発光素子600が直接接着剤650を介して金属板510に配置される発光装置630を得ることができる。
【0045】
図7に記載の発光素子用積層板145を用いた場合、図11に示すような発光装置630を製造することができる。製造方法の一例としては図17に示すように、支持材料200を銅箔として作製した絶縁層付支持材料120(図17(a))および熱伝導体670が形成されている絶縁樹脂板500(図17(b))をプレス機などで貼り合せた後、発光素子用積層板145を作製し(図17(c))、銅箔をエッチング加工することによって導体回路210を得る(図17(d))、次に発光素子600をハンダなどの接着剤650を介して実装することで、熱伝導体670が絶縁層100中に配置される発光装置630を得ることができる(図17(e))。発光素子用積層板145などを製造する際、絶縁層付支持材料120、熱伝導体670、および絶縁樹脂板500の接着性を向上させるために本発明の樹脂組成物を溶剤に溶解して使用することが好ましい。
【0046】
本発明の発光装置としては、例えば図13に示されるような、発光素子600と金属板510が、サーマルビア800と呼ばれる、金属製のスルーホールで連結されていてもよく、図14に示されるように、発光素子600からの発光を、所望の方向に反射させる光制御板750を備えていてもよい。
【0047】
本発明の発光装置630に使用される発光素子600としては、各種発光素子(LED)を用いることが可能であるが、高照度で放熱性が必要とされる表面実装型発光ダイオードを用いるものが特に好ましい。
【0048】
以下、本発明の樹脂組成物、絶縁層付支持材料、プリプレグ、発光素子用積層板、発光素子用回路基板および発光装置の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
(樹脂組成物の調製)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ社製、エピクロンN−690)を10重量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、ジェイイーアール830S)を10重量部、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(小西化学工業社製)7.5重量部、酸化チタン(堺化学社製、R11P、屈折率2.7、熱伝導率7W/m/K)を10重量部、アルミナ(昭和電工社製、AS50、屈折率1.7、熱伝導率20W/m/K)を70重量部、末端水酸基変性ポリエーテルスルホン(住友化学社製、スミカエクセル5003P、重量平均分子量24000、ガラス転移温度230℃)を10重量部、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(四国化成社製、2P4MZ)を0.2重量部、カップリング剤(信越化学工業社製、KBM−403)を0.5重量部含む混合物をメチルイソブチルケトンとジメチルアセトアミドの溶剤に溶解し、溶剤を含む樹脂組成物を得た。
【0050】
(絶縁層付支持材料の製造)
先に調整した溶剤を含む樹脂組成物を、支持材料として電解銅箔(古河サーキットフォイル製、F2WS−12(粗化面の粗度Rz=1μm)の粗化面側に塗工し、100℃〜150℃で10分乾燥し、図1または図15(a)に示すような絶縁層付支持材料を製造した。
【0051】
(発光素子用積層板の製造)
コアとして、金属板である0.018mm厚の銅箔を用い、絶縁層付支持材料の絶縁層側が金属板と対向するように積層し、200℃で1時間、真空プレス成形することで、発光素子用積層板(図4または図15(b))を得た。
【0052】
(発光素子用回路基板および発光装置の製造)
図15に示すように、発光素子用積層板(図15(b))の表面銅箔上に、エッチングなどにより電気配線を作製し、発光素子用回路基板(図15(c))を作製した。絶縁樹脂層の表面粗度Rは、1.5μmであった。
次に、LED素子(Philips Lumileds Lighting Company社製、Luxeon K2 LXK−PW14)を接着剤(サンハヤト社製、熱伝導性シート、0.5W/m・K)を介して発光素子用回路基板(図15(c))に接着し、回路基板上の電気配線と、LED端子を半田接続した。回路基板に定電流電源(700mA)を接続することで、発光装置(図15(d))を作製した。
【0053】
(実施例2)
(樹脂組成物の調製)
樹脂組成物中のアルミナを酸化亜鉛(堺化学社製、LPZINC、屈折率1.9、熱伝導率20W/m・K)80重量部とした以外は、実施例1と同様にして、溶剤を含む樹脂組成物を得た。
その後、実施例1と同様にして、絶縁層付支持材料の製造、発光素子用積層板の製造、発光素子用回路基板および発光装置の製造を行い発光装置を得た(図15)。
【0054】
(実施例3)
(樹脂組成物の調製)
樹脂組成物中のビスフェノールF型エポキシ樹脂をビフェニル変性エポキシ樹脂(日本触媒社製NC3000)10重量部、アルミナ(昭和電工社製、AS50、屈折率1.7、熱伝導率20W/m/K)75重量部とした以外は、実施例1と同様にして、溶剤を含む樹脂組成物を得た。
その後、実施例1と同様にして、絶縁層付支持材料の製造、発光素子用積層板の製造、発光素子用回路基板および発光装置の製造を行い発光装置を得た(図15)。
【0055】
(実施例4)
(樹脂組成物の調製)
樹脂組成物中のビスフェノールF型エポキシ樹脂をビフェニル変性エポキシ樹脂(日本触媒社製NC3000)10重量部とした以外は、実施例1と同様にして、溶剤を含む樹脂組成物を得た。
(プリプレグの製造)
上記溶剤を含む樹脂組成物を縦型塗布乾燥装置を用いて、厚さ0.043mm、幅530mmの長尺シート状のガラス織布(日東紡社製、WEA−1078)に、塗布し、180℃で2分間加熱乾燥して、厚み120μmであるプリプレグを製造した。
(発光素子用積層板の製造)
上記プリプレグの表裏に、0.018mm厚の電解銅箔を配置し、200℃で1時間、真空プレス成形することで、発光素子用積層板(図6)を製造した。
その後、実施例1と同様にして、発光素子用回路基板および発光装置の製造を行い発光装置を得た。
【0056】
(実施例5)
(樹脂組成物の調製)
樹脂組成物中のビスフェノールF型エポキシ樹脂をビフェニル変性エポキシ樹脂(日本触媒社製NC3000)10重量部、アルミナ(昭和電工社製、AS50、屈折率1.7、熱伝導率20W/m/K)を75重量部とした以外は、実施例1と同様にして、溶剤を含む樹脂組成物を得た。
(絶縁層付支持材料の製造)
電解銅箔の粗化面側にガラスクロス(日東紡社製、WEA−1027)を積層し、ガラスクロス上に、先に調整した溶剤を含む樹脂組成物を塗工し、180℃で2分間乾燥して絶縁層付支持材料を製造した。
その後、実施例1と同様にして、発光素子用積層板の製造、発光素子用回路基板および発光装置の製造を行い発光装置を得た。
【0057】
(実施例6)
樹脂組成物の調製は、実施例1と同様にして行った。
次に、絶縁層付支持材料の支持材料として電解銅箔(古河サーキットフォイル製、F2WS−12(粗化面のRz=1μm))を、電解銅箔(古河サーキットフォイル製、F3WS(粗化面のRz=3μm))とした。
その後は、実施例1と同様にして、発光素子用回路基板および発光装置の製造を行い発光装置を得た(図15)。
【0058】
(実施例7)
樹脂組成物の調製、絶縁層付支持材料の製造、発光素子用積層板の製造および発光素子用回路基板は、実施例1と同様に行った。
次に、発光装置(図15(d))を作製する際、接着剤として熱伝導性シートの代わりに半田を使用して接続し発光装置を得た。
【0059】
(実施例8)
樹脂組成物の調製および絶縁層付支持材料の製造は、実施例1と同様に行った。
(発光素子用積層板の製造)
発光素子用積層板(図17(c))を作製する際、コアとして、絶縁樹脂板であるガラス織布基材エポキシ樹脂積層板(FR−4、住友ベークライト社製、ELC−4765、厚み1mm、片面側に厚さ35μmの銅箔)をもちいて、エッチングにより所定部分以外の銅箔を除去し、熱伝導体を作製した(図17(b))。次に、熱伝導体を作製した絶縁樹脂板の熱伝導体面側に、絶縁層付支持材料の絶縁層側が対向するように積層し、200℃で1時間、真空プレス成形することで、発光素子用積層板(図17(c))を製造した。次に回路加工を行い、発光素子用回路基板(図17(d))を作製し、絶縁樹脂層表面に露出している熱伝導体上に、LED素子を接着剤を介して接着しLED発光装置(図17(e))を作製した以外は、実施例1と同様にして発光装置を得た。
【0060】
(比較例1)
樹脂組成物中の無機充填材を含まない以外は、実施例1と同様にして、溶剤を含む樹脂組成物を得た。
その後、実施例1と同様にして、絶縁層付支持材料、発光素子用回路基板および発光装置を得た(図15)。
【0061】
(比較例2)
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂を含まない以外は、実施例1と同様にして、溶剤を含む樹脂組成物および絶縁層付支持材料を得た。
その後、実施例1と同様にして、発光素子用回路基板および発光装置を得た(図15)。
【0062】
(比較例3)
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂として末端水酸基変性ポリエーテルスルホンを、ポリカーボネート(住友ダウケミカル社製、200−13、ガラス転移温度130℃)とした以外は、実施例1と同様にして、溶剤を含む樹脂組成物を得た。
その後、実施例1と同様にして、絶縁層付支持材料、発光素子用回路基板および発光装置を得た(図15)。
【0063】
(比較例4)
樹脂組成物中の無機充填材を含まない以外は、実施例1と同様にして、溶剤を含む樹脂組成物を得た。
(発光素子用積層板の製造)
発光素子用積層板(図17(c))を作製する際、コアとして、絶縁樹脂板であるガラス織布基材エポキシ樹脂積層板(FR−4、住友ベークライト社製、ELC−4765、厚み1mm、片面側に厚さ35μmの銅箔)をもちいて、エッチングにより所定部分以外の銅箔を除去し、熱伝導体を作製した(図17(b))。次に、熱伝導体を作製した絶縁樹脂板の熱伝導体面側に、絶縁層付支持材料の絶縁層側が対向するように積層し、200℃で1時間、真空プレス成形することで、発光素子用積層板(図17(c))を製造した。次に回路加工を行い、発光素子用回路基板(図17(d))を作製し、絶縁樹脂層表面に露出している熱伝導体上に、LED素子を接着剤を介して接着し発光装置(図17(e))を作製した以外は、実施例1と同様にして発光装置を得た。
【0064】
評価結果を表1にまとめた。
【0065】
【表1】

【0066】
・評価項目
【0067】
(1)絶縁層の反射率
ガラス転移温度測定時に作製した樹脂硬化物シートから50mm×50mmのテストピースを切り出し、下記装置、条件にて反射率を測定した。
装置名:(株)村上色彩技術研究所 変角分光測定システム GCMS−4
測定方式:ダブルビーム方式 拡散反射
入射角:45度 受光角:45〜75度
波長:460nm
【0068】
(2)熱伝導率
ガラス転移温度測定時に作製した樹脂硬化物シートについて、レーザーフラッシュ法(NETZSCH社製LFA447)により、厚み方向の熱拡散係数を測定する。次に水中置換法で絶縁体硬化物の比重する。さらにDSC法(PERKIN−ELMER社製DSC7)で比熱を測定し、これらの物性値よりの熱伝導率を算出した。本発明に用いた無機充填材の熱伝導率は、そのものの組成を有するシートから同様に求めた。
【0069】
(3)絶縁樹脂層の表面粗度
ガラス転移温度測定時に作製した両面銅箔付き積層板より50mm×50mmのサンプルピースを切り出し、全面の銅箔をエッチングし除去した。下記装置、条件にて表面粗度を測定した。
装置名:ビーコ社製NT1100
測定方式:Rz(10点平均粗さ)
【0070】
(4)吸湿半田耐熱性
ガラス転移温度測定時に作製した両面銅箔付き積層板より50mm×50mmのサンプルピースを切り出し、片面およびもう片面の1/2の銅箔をエッチングし除去した。125℃のプレッシャークッカーで2時間処理した後、260℃の半田槽に30秒浸漬し、ふくれ・はがれの有無を確認した。
【0071】
(5)発光装置の最高到達温度
前記実施例および比較例で作製した発光装置を、20℃一定温度環境にて通電し、LEDを発光させた。赤外線サーモグラフ(FLIR社製、SC600)を用い、LED点灯時のLED素子周辺の最高到達温度を測定した。
【0072】
表1から明らかなように、実施例1〜7のように、コアとして金属板を用いた発光装置は、絶縁層の反射率が70%以上であり、発光素子の光ロスを低減するのに十分高い値であった。また、LEDの最高到達温度も45〜50℃とすることが出来た。これに対して比較例1は、無機充填材を含まないために、絶縁層の反射率が30%となり、光ロスが大きくなった。また比較例2は熱可塑性樹脂を含まないために、絶縁層付支持基材の絶縁層をロールで製造することが困難であった。さらに比較例3では、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度が低いために、吸湿半田耐熱性が悪化した。
実施例8は、コアとして絶縁板を用いた発光装置は、LEDの最高到達温度も70〜80℃にすることが出来た。これに対して比較例4は、無機充填材を含まないために、絶縁層の反射率が30%となり、光ロスが大きくなった。また、熱伝導性に優れた無機充填材も含まないため、LEDの最高到達温度も90〜100℃と悪化した。
【符号の説明】
【0073】
100、101 絶縁層
120、121 絶縁層付支持材料
125、127、135、145、155 発光素子用積層板
130 プリプレグ
200 支持材料
210 導体回路
300 絶縁基材
500 絶縁樹脂板(コア)
505 コア露出部
510 金属板(コア)
600 発光素子(発光ダイオード)
610 接続端子
630 発光装置
650 接着剤
670 熱伝導体
700 発光素子用回路基板
750 光制御板
800 サーマルビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、熱可塑性樹脂とを含み、
前記熱可塑性樹脂がポリエーテルスルホンであることを特徴とする発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機充填材は、屈折率2.2以上の第一の無機充填材と、屈折率が2.2未満で、熱伝導率が10W/m・K以上の第二の無機充填材を含む請求項1に記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
【請求項3】
前記第一の無機充填材の含有率は、樹脂組成物全体の1重量%以上、40重量%以下である請求項2に記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
【請求項4】
前記第二の無機充填材の含有率は、樹脂組成物全体の49重量%以上、95重量%以下である請求項2または3に記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
【請求項5】
前記第一の無機充填材と、前記第二の無機充填材との合計含有量は、樹脂組成物全体の50重量%以上、96重量%以下である請求項2ないし4のいずれかに記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリエーテルスルホンは、重量平均分子量が10〜10である請求項1ないし5のいずれかに記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリエーテルスルホンは、末端が水酸基変性されている請求項1ないし6のいずれかに記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂は、室温で液状であるエポキシ樹脂を含む請求項1ないし7のいずれかに記載の発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。
【請求項9】
金属箔または樹脂フィルムからなる支持材料の少なくとも一方の面側に請求項1ないし8のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて絶縁層を形成したものである絶縁層付支持材料。
【請求項10】
前記絶縁層は、絶縁基材に前記樹脂組成物を含浸させたものである請求項9に記載の絶縁層付支持材料。
【請求項11】
前記絶縁基材がガラス織布である請求項10に記載の絶縁層付支持材料。
【請求項12】
請求項1ないし8のいずれかに記載の樹脂組成物を絶縁基材に含浸してなるプリプレグ。
【請求項13】
前記絶縁基材がガラス織布である請求項12に記載のプリプレグ。
【請求項14】
コアと、前記コアの少なくとも一方の面側に請求項9ないし11のいずれかに記載の絶縁層付支持材料が、前記絶縁層面側が前記コア面側に対向するように積層成形され絶縁樹脂層を形成している発光素子用積層板。
【請求項15】
コアと、前記コアの少なくとも一方の面側に請求項12または13に記載のプリプレグが積層成形され絶縁樹脂層を形成している発光素子用積層板。
【請求項16】
前記コアが、金属板である請求項14または15に記載の発光素子用積層板。
【請求項17】
前記コアが、絶縁樹脂板である請求項14または15に記載の発光素子用積層板。
【請求項18】
前記絶縁樹脂層面側において前記コアが露出したコア露出部を有している請求項14ないし17のいずれかに記載の発光素子用積層板。
【請求項19】
前記露出部に、熱伝導体が埋設されている請求項18に記載の発光素子用積層板。
【請求項20】
請求項14ないし19のいずれかに記載の発光素子用積層板を回路加工してなる
発光素子用回路基板。
【請求項21】
前記発光素子用積層板を形成している前記絶縁樹脂層の、前記コアとは反対面側の前記絶縁樹脂層表面の表面粗度
Rzが、1μm以上である請求項20に記載の発光素子用回路基板。
【請求項22】
請求項20または21に記載の発光素子用回路基板に発光素子を搭載してなる発光装置。
【請求項23】
前記発光素子は、接着剤を介して前記発光素子用回路基板に接着されている請求項22に記載の発光装置。
【請求項24】
前記接着剤が、導電性を有する接着剤である請求項23に記載の発光装置。
【請求項25】
前記発光素子が表面実装型発光ダイオードである請求項22ないし24のいずれかに記載の発光装置。
【請求項26】
エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、ガラス転移温度が150℃以上、300℃以下の熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする発光素子の基板に用いられる樹脂組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−189614(P2010−189614A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43523(P2009−43523)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】