説明

欠陥検出レベル調整方法および欠陥検査システム

【課題】 実機による欠陥検査の作業工数を低減させ、欠陥検査装置のスループットを向上させる欠陥検出レベル調整方法および欠陥検査システムを提供することを課題とする。
【解決手段】 欠陥検査装置で、欠陥検出アルゴリズムに対して高感度パラメータを設定し、実検出データを取得した後は、前記欠陥検査装置に対してオフライン上で、所望の検出レベルを達成するまで、感度パラメータの再設定とシミュレーション検出データの取得及び/またはレビュー用データ生成を繰り返す欠陥検出レベル調整方法およびこの調整方法の実行可能な欠陥検査システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査対象物の欠陥検出レベル調整方法及び欠陥検査システムに関し、特に、フォトマスクや半導体ウェハなどの被検査対象物の欠陥の検出レベルを最適化することが可能な欠陥検出レベル調整方法及び欠陥検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトマスクや半導体ウェハなどの製品の品質保証のためには、これらの製品に存在する欠陥を検出し、製品の合否判定を行い、必要に応じて欠陥修正を施すことが必要となる。この欠陥検出の精度は、欠陥を検出する1以上の欠陥検出アルゴリズムに対して設定する感度パラメータによって決定される。
【0003】
ここで感度パラメータとは、欠陥検査システムが非検査対象物のある箇所を欠陥だと判定するための閾値のことである。例えば、比較検査方法において相違量として検出された値が、予め設定された感度パラメータより大きい場合に、その箇所が欠陥として検出される。
【0004】
この感度パラメータは、設計上の安全係数を考慮して、過剰に高感度に設定すると、本来欠陥として検出する必要のない欠陥(以下「ニューサンス欠陥」という)を実欠陥として検出するため、過剰品質のマスク等を製造することになり、ひいては歩留り低下を招くという不都合が生じる。
【0005】
従って、欠陥検出作業を行う前に、最適な感度パラメータの設定が重要になってくるが、最適な感度パラメータの設定は、パターンの種別、テクノロジーノード、RET(Resolution Enhancement Technologies)処理などの複雑さ、程度によって異なるため、一律に設定することはできない。
【0006】
また、設定した所定の感度パラメータで同じ非検査対象物に対して2回以上の欠陥検出を行った場合、理想的には、欠陥の検出率は一定の値を示すはずであるが、実際には、検査対象となる欠陥のサイズは、nmオーダーの微細なものであるため、欠陥検出装置の装置振動、光学系の劣化、光源変動、ステージ走行精度(ヨーイングやピッチング)、ステージの静定精度、気圧変動、温度変動など、様々な要因により、欠陥検出の都度、検出率が変動する可能性がある。
【0007】
そこで、前記感度パラメータの最適化を図るためには、ダイ比較方法や透過光、反射光の照明方法などの検査方法と被検査対象物の検査パターン、材質などの性状に対応して設計された欠陥検出アルゴリズムとを選択したうえで、欠陥検査装置(実機)で実際にマスクなどの被検査対象物にあらかじめ欠陥のサイズデータや座標データなどから構成される特定データに基づいて作り込まれた複数のプログラム欠陥を検出し、レビューにより欠陥検出状態を確認しながら、試行錯誤のうえ、最適な感度パラメータを設定しなければならなかった。
【0008】
図7は、上記一般的な感度パラメータの適正化手順を示す処理フローである。まず、検査方法と欠陥検出アルゴリズムを選択し(図示せず)、欠陥検査装置(実機)で、任意の感度パラメータを設定する(S11)。設定された感度パラメータにより、被検査対象物の欠陥検査を行う(S12)。オペレータが、この欠陥検査の結果を実機に対してオフライン上でレビューするとともに(S13)、上記欠陥検査装置で作成された感度表に基づき(S14)、感度表の判定を行う(S15)。レビュー及び感度表の判定を行った結果、所望の検出レベルを達成している場合は、S11で設定された感度パラメータを、実際の欠陥検査に適用する。一方、所望の検出レベルを達成してない場合には、感度パラメータを変更して再設定し、上記S11〜S15までの処理を繰り返す。
【0009】
ここで、感度表とは、前記欠陥検査を2回以上行って得られた実測定データの検査回数に対する検出率を可視化したものをいう。
【0010】
図8は、検出された各プログラム欠陥の反応値(比較検査方法において相違量として検出された値)と感度パラメータとの関係を示す図である。たとえば、感度パラメータを任意の高感度である閾値0のレベルに設定した場合に検出された実欠陥をr1、r2、ニューサンス欠陥をn1、n2、n3、n4,n5,n6,n7,n8とし、実欠陥r1及びr2のみを検出できるように、感度パラメータを設定しなければないない場合に、感度パラメータを閾値1のレベルで設定すると、ニューサンス欠陥のうち、n4,n5,n6,n7,n8は、除外するように、フィルタリングすることができるが、実欠陥r1及びr2のほか、ニューサンス欠陥n1、n2、n3も検出してしまうため、適正な設定ができていないことになる。
【0011】
次いで、閾値1を閾値2に変更して再設定すると、検出される欠陥は、r1及びr2のみとなり、ニューサンス欠陥n1、n2、n3もフィルタリングすることができるため、感度パラメータの設定が最適化されたことになる。
【0012】
図8では、10個のプログラム欠陥について例示的に説明したが、実際には膨大な数の欠陥数から、感度パラメータの最適化を図るために、上記閾値の再設定を繰り返さなければならない。また、欠陥検出アルゴリズムが複数使用される場合には、最適化が必要なパラメータが複数存在するため、最適化に必要な上記閾値設定の繰り返し数はさらに多くなる。そのため、図7で示した感度パラメータの設定にかかる所要時間は、感度パラメータの設定処理を行うオペレータの熟練度に左右され、非効率的であった。
【0013】
さらに、上記の通り、同一の感度パラメータ設定でも、様々な要因により、欠陥検出の都度、検出率が変動する可能性があるため、通常は、同一の感度パラメータについて複数回(たとえば、10回)欠陥検出を行い、検出回数に対する検出率を確定してから、感度表を生成して検出率を確認し、次の感度パラメータの再設定を行うことになる。従って、実機の占有時間は、感度パラメータの再設定の回数分の所要時間及び各々の感度パラメータについて感度表を生成する所要時間のほか、設定した各感度パラメータにつき、上記複数回の欠陥検出に要する時間を加算した時間となるため、トータルでは膨大な時間となっていた。
【0014】
そこで、従来、短時間で感度パラメータの最適化をはかるために、感度パラメータを変化させて欠陥情報の取得を複数回行い、各感度パラメータとこの欠陥情報とを対応付けた組み合わせデータを取得し、この組み合わせデータを用いて、所望の統計量データと前記感度パラメータとの関係を示す関数を作成し、この関数に基づいて感度パラメータを決定するようにし、定量的に効率よく感度パラメータの最適化を図ることが可能であった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−138563(請求項1の記載の記載)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、上記従来技術では、図7で説明した作業工数の低減に資するものの、実機上で感度パラメータを変化させて欠陥情報の取得を複数回行う必要があり、高価な欠陥検査装置(実機)による作業工数は、低減せず、装置のスループットを低下させるという不都合があった。また、欠陥検出アルゴリズムが複数使用される場合には、感度パラメータを設定するための関数が非常に複雑になり、必要な統計量を得る為に必要な組み合わせデータの数が膨大になるため、さらに実機作業工数が多くなるという不都合があった。
【0016】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、実機による欠陥検査の作業工数を低減させ、欠陥検査装置のスループットを向上させる欠陥検出レベル調整方法および欠陥検査システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明にかかる欠陥検出レベル調整方法は、被検査対象物の欠陥の検出レベルを所望のレベルにするために、欠陥検出アルゴリズムに対して設定する感度パラメータを最適化する欠陥検出レベル調整方法であって、欠陥検査装置によって、上記感度パラメータを任意の高感度に設定し、上記被検査対象物に所与の特定データに基づいて作り込まれたプログラム欠陥を検出して実検出データを取得し、前記欠陥検査装置に対してオフライン上で、前記実検出データからレビュー用データを生成し、前記所望の検出レベルを達成していない場合には、前記オフライン上で、感度パラメータの再設定と、再設定された感度パラメータによるプログラム欠陥のシミュレーション検出データの取得と、このシミュレーション検出データによるレビュー用データの生成とを繰り返して前記所望の検出レベルを達成する最適な感度パラメータを設定することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、最初に高感度パラメータを設定して欠陥検査装置で実検出データを取得すると、以後、感度パラメータを変更して再設定した場合の検出データは、実機を使用せずに、シミュレーション処理によって取得することが可能になる。
【0019】
また、前記欠陥検出装置による検査で得られた実検出データの検査回数に対する検出率及び前記各実検出データに基づいて算出される前記シミュレーション検出データの検出率を可視化した感度表を前記オフライン上で自動生成させてもよい。この構成により、感度パラメータの最適化作業のうち、感度表の生成に要する時間も、実機作業の所要時間から低減させることができる。
【0020】
設定された感度パラメータに対して検出される欠陥の個数は、検査対象が同じで欠陥検査装置が安定していれば、一定の関係で変化する。そこで、前記高感度パラメータによる実検出データから、感度パラメータの変更に伴う欠陥検出個数の変化の関係データを欠陥検出アルゴリズムごとに求めて格納し、前記感度パラメータを再設定すると、前記格納された関係データを読み出して、再設定された感度パラメータに対応する欠陥検出個数を求めるようにしてもよい。
【0021】
ところで、前記感度表の自動生成をするためには、あらかじめ前記プログラム欠陥の特定データを取得する必要があるが、特定データが付与されていない被検査対象物、すなわち、特定データが不明な実欠陥を対象として感度パラメータの最適化を図る場合には、前記のような方法では、感度表の生成ができない。
【0022】
そこで、上記のような被検査対象物については、上記欠陥検査装置で、2回以上検査し、検出された欠陥の検出率及び座標値からなる基準検出データを取得し、この基準検出データから前記オフライン上でレビュー用データ及び感度表を自動生成し、この生成されたレビュー用データと感度表から所望の欠陥検出レベルを設定すればよい。
【0023】
上記課題を解決するため、本発明にかかる欠陥検査システムは、被検査対象物の欠陥の検出レベルを所望のレベルにするために、欠陥検出アルゴリズムに対して設定する感度パラメータを最適化し、欠陥検出レベルの調整が可能な欠陥検査システムであって、前記被検査対象物の性状に応じて適用する欠陥検出アルゴリズムを1以上選択することができる検出条件選択手段と、上記被検査対象物に所与の特定データに基づいて作り込まれた複数のプログラム欠陥を検出するために、前記選択された欠陥検出アルゴリズムに対して感度パラメータを設定するパラメータ設定手段と、この設定された感度パラメータによって欠陥検出を行う欠陥検出処理手段と、前記欠陥検出処理手段に対してオフライン上で、この欠陥検出処理によって得られた実検出データを使用して、最適の感度パラメータをシミュレーション処理によって設定するシミュレーション処理手段とを有し、このシミュレーション処理手段は、前記実検出データからレビュー用データを生成するレビュー用データ生成手段と、前記実検出データの検査回数に対する検出率を可視化した感度表生成手段と、前記感度パラメータを変更して再設定する感度パラメータ変更手段と、再設定された感度パラメータによってシミュレーション検出データを取得する欠陥検出オフライン処理手段とを備え、このシミュレーション検出データに基づいて、前記レビュー用データ生成手段と感度表生成手段によってレビュー用データと感度表を生成するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から明らかなように、本発明にかかる欠陥検出レベル調整方法および欠陥検査システムは、感度パラメータの再設定、この再設定された感度パラメータによる欠陥の検出個数の推定、さらに、レビュー用データ及び感度表の自動生成をシミュレーション処理によって行うことができるため、実機による欠陥検査の作業工数を低減させ、欠陥検査装置のスループットを向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明にかかる欠陥検査システムのブロック構成図である。図1は、本発明の説明に必要な構成を抽出して説明したものであり、この構成に限定する趣旨ではない。また、本実施の形態では、ダイトゥーデータベース比較方式を例に説明するが、欠陥検査の方法は、これに限定する趣旨ではなく、ダイトゥーダイ比較方式であってもよい。
【0026】
1は、フォトマスク等の被検査対象物(以下「フォトマスク等」という)を反射照明方式または透過照明方式の少なくともいずれか一方の照明モードによって走査して反射画像または透過画像を読取るスキャナである。スキャナ1は、レーザ光源を分岐させて、透過検査と反射検査を同時に実施できる態様のものでもよい。
【0027】
なお、図1の矢印のうち、1点鎖線はステージ制御信号、2点鎖線は実画像データ、実線は設計データ、破線は欠陥検出データの流れを示す。
【0028】
スキャナ1で読取られたフォトマスク等の画像は、欠陥検出処理を行うために、スキャナ制御部2によって検査処理系に転送される。また、このスキャナ制御部2は、スキャナ1でフォトマスク等を載置するステージ(図示せず)のX、Y、Z方向の駆動及び傾きθの制御も行う。
【0029】
データ準備処理部3で、パターンデータサーバ(図示せず)から、パターンデータを読み出して収集し、検査データとしてシステム制御、GUI処理部4に提供する。このシステム制御、GUI処理部4は、展開、参照画生成処理部5で、設計データの画像を生成させる。また、データ準備処理部3またはシステム制御、GUI処理部4において、検査条件として検査方式やフォトマスク等の性状に応じて適用する欠陥検出アルゴリズムを選択し、感度パラメータを設定する。
【0030】
スキャナ1からスキャナ制御部2に転送されたフォトマスク等の実画像データ及び展開、参照画生成処理部5で生成された設計データは、ともに分配処理部6に送り込まれ、比較可能なようにデータを分配処理し、欠陥検出処理部7に転送される。欠陥検出処理部7では、設計データと実画像データとを比較し、相違が発生する欠陥部分を検出し、座標位置データとともに記憶する。たとえば、比較すべき設計データと実画像データとを各々正負逆の電気信号にし、比較論理回路で両者を加算して正負いずれかの信号となる部分を欠陥部分として検出するなどの比較方法がある。
【0031】
検出された欠陥は、上記検査条件及び、各欠陥を検出したアルゴリズム情報及び、欠陥と判定する根拠となった各欠陥の反応値(比較検査方法において相違量として検出された値)とともに、システム制御、GUI処理部4に送られ、検査結果データとして記憶される。この記憶された検査結果データは、結果管理処理部8で読み出され、モニタ、プリンタに出力され、外部記憶媒体に記憶することもできる。
【0032】
ところで、フォトマスク等に対する最適の感度パラメータは、フォトマスク等に作りこまれたプログラム欠陥を検出することにより設定することができるが、本発明にかかる欠陥検査システムでは、このプログラム欠陥の検出を上記スキャナ1から結果管理処理部8までの一連の処理(すなわち、実機による処理)に代えて、実機のオフライン上でシミュレーションすることができる。以下、感度パラメータの最適化を行うシミュレーション処理部9の構成について説明する。なお、上記プログラム欠陥は、少なくとも、サイズデータ及び座標データから構成される特定データに基づいて上記フォトマスク等に作りこまれたものである。
【0033】
上記検査条件で、プログラム欠陥が作りこまれたフォトマスク等に対して任意に設定された感度パラメータによって検出された欠陥の検査結果データ(以下「実検出データ」という)に基づいて、レビュー用データ及び感度表が、シミュレーション処理部9のレビュー用データ生成部91と感度表生成部92によって生成される。
【0034】
オペレータは、レビュー用データを使ったレビューと感度表による判定を行って、所望の検出レベルを達成していない場合は、感度パラメータ変更部93により、上記任意に設定された感度パラメータを変更して再設定する。
【0035】
再設定された感度パラメータによって、欠陥検出オフライン処理部94で欠陥検出処理、すなわち、上記実機で行われる処理をシミュレーションし、シミュレーション検出データが得られる。以後、上記所望の検出レベルとなる最適の感度パラメータが特定できるまで、このシミュレーション処理部9でのオペレーションを繰り返す。
【0036】
最適の感度パラメータが特定できると、その感度パラメータを実機、すなわち、データ準備処理部3の検査条件で設定し、実際の欠陥検出作業に適用することができる。
【0037】
上記シミュレーション処理部9は、欠陥検査システムにおいて感度パラメータを設定する専用の装置として構成してもよいが、シミュレーション処理部9の機能を備えたコンピュータソフトウェアプログラムを汎用のパーソナルコンピュータにインストールし、これをLANなどで上記実機と通信自在に接続する構成としてもよい。
【0038】
図2は、本発明にかかる感度パラメータの適正化手順を示す処理フロー図である。まず、プログラム欠陥が作りこまれたフォトマスク等の性状を考慮して、最適の検査方法と欠陥検出アルゴリズムを選択し(図示せず)、欠陥検査装置(実機)で、任意の感度パラメータを設定する(S1)。
【0039】
次いで、設定された感度パラメータにより、フォトマスク等の実機による欠陥検査を行う(S2)。なお、この実機による欠陥検査は、1回でもよいが、実際には、欠陥検出装置の装置振動、光学系の劣化、光源変動、ステージ走行精度(ヨーイングやピッチング)、ステージの静定精度、気圧変動、温度変動など、様々な要因により、欠陥検出の都度、検出率が変動する可能性があるため、通常は、複数回(例えば、同じ感度パラメータについて、10回程度)繰り返して検出回数に対する検出率を求める。
【0040】
実機による欠陥検査の結果から、実機に対してオフライン上でレビュー用データを生成し、レビューを行う(S3)。また、この実機による欠陥検査の結果から、感度表も作成する(S4)。この感度表の作成処理もオフライン上で行うことができる。
【0041】
レビュー及び感度表判定(S5)の結果、所望の検出レベルを達成している場合は、S1で設定された感度パラメータで、欠陥検査を行う。一方、所望の検出レベルを達成してない場合には、感度パラメータを変更して再設定し(S6)、再設定された感度パラメータによって、上記オフライン上でシミュレーション検査を行い(S7)、以後、所望の検出レベルに達するまで上記S3〜S7の処理を繰り返す。
【0042】
図7で説明した従来の処理フロー図と比較すると、従来は、感度表作成、感度再設定及び再設定後の検査のルーチンを実機によって行っていたが、本発明では、これらのルーチンをオフライン上のシミュレーション処理によって行うことが出来るようになっている。
【0043】
なお、最初に実機上で設定する感度パラメータは、いわゆる実用感度に比べて、高感度に設定することが好ましい。上記プログラム欠陥は、すくなくも、サイズデータと座標データとからなる特定データに基づいて被検査対象物に作り込まれたものであるが、これを実機上、高感度に設定した感度パラメータで網羅的に検出し、上記特定データを記憶させることにより、感度パラメータの再設定では、この記憶された特定データに基づきシミュレーション処理が可能になるからである。
【0044】
図3は、感度パラメータの変更に伴う欠陥検出個数の変化の関係を示す図である。上述の検査結果には、上記検査条件及び、各欠陥を検出したアルゴリズム情報及び、各欠陥の反応値(比較検査方法において相違量として検出された値)が格納されている。感度パラメータは、各欠陥の反応値に対する欠陥と判定するための閾値である。設定した感度パラメータに対して検出される欠陥の個数は、同一のフォトマスク等であって、欠陥検出装置が安定していれば、各欠陥検出アルゴリズムについて一定である。従って、反応値を横軸にとり、反応値ごとに検出される欠陥の個数を縦軸にとると、欠陥検出アルゴリズムごとにユニークな検出カーブが得られる。複数の欠陥検出アルゴリズムは、形状やサイズなどの種類が異なる欠陥を検出するために相互に補完し合うことが一般的であるため、ある欠陥が複数の欠陥検出アルゴリズムで検出されることもある。
【0045】
図3では、例示的に欠陥検出アルゴリズムAと欠陥検出アルゴリズムBの検出カーブを示した。図2で説明したとおり、最初に任意に設定した感度パラメータを高感度で設定し、その検査結果から、この検出カーブを求めておけば、要検出欠陥数のラインを設定すると、そのラインと検出カーブとが交わる点近傍で欠陥検出アルゴリズムAと欠陥検出アルゴリズムBそれぞれの最適感度Op1、Op2を求めることができる。図3では、1種類の要欠陥検出数が決められている例を図示したが、欠陥検出アルゴリズムAと欠陥検出アルゴリズムBが、異なる特性の欠陥を検出対象とする場合には、各々の検出カーブ毎に異なる要欠陥検出数を設定することが一般的である。
【0046】
従って、図3で示す関係を求めておけば、感度パラメータの設定感度の最適化を迅速に求めることができ、検出する欠陥の個数のフィルタリングを簡単にシミュレーションすることが可能になる。
【0047】
予め欠陥として検出すべき箇所が判明している場合には、欠陥個数ではなく具体的な欠陥を対象に感度パラメータを設定することもできる。図8は、検出された各プログラム欠陥の反応値をプロットした図である。たとえば、感度パラメータを任意の高感度である閾値0のレベルに設定した場合に検出された実欠陥をr1、r2、ニューサンス欠陥をn1、n2、n3、n4,n5,n6,n7,n8とし、実欠陥r1及びr2のみを検出できるように、感度パラメータを設定する為には、実欠陥r1、r2の反応値を確認し、感度パラメータを閾値2のレベルに設定すれば良い。
【0048】
図4は、上記レビュー用データの例を示したものである。本実施の形態では、レビュー用データは、欠陥検出イメージデータI1、I2と設定感度パラメータリストL1、L2から構成されている。欠陥検出イメージデータI1及びI2には、パターンデータの画像とともに、ランダムに点在している点が欠陥として表示されている。また、設定感度パラメータリストL1及びL2は、照明モードごとに、選択された欠陥検出アルゴリズムと欠陥検出アルゴリズムごとに設定された感度パラメータ値が表示されている。本実施の形態では、透過照明方式については、欠陥検出アルゴリズムap1〜ap6、反射照明方式については、欠陥検出アルゴリズムar1〜ar3が選択されている。
【0049】
たとえば、欠陥検出イメージデータI1では、欠陥検出個数が多く過剰検出と判断された場合は、選択された欠陥検出アルゴリズムのうち、いくつかについて感度を下げて検出される欠陥検出個数をフィルタリングすればよい。すなわち、本実施の形態では、設定感度パラメータリストL1の欠陥検出アルゴリズムap3の感度パラメータを80から9に、欠陥検出アルゴリズムap4の感度パラメータを60から70に、ar2の感度パラメータ60から90に、ar3の感度パラメータを80から90に変更すると(設定感度パラメータリストL2の1点鎖線で囲まれた部分参照)、欠陥検出イメージデータI2のように、欠陥として検出される白い点が、欠陥検出イメージデータI1に比べて減少していることをレビューすることができる。
【0050】
図5は、感度表の例を示した図である。感度表とは、欠陥の検出率を可視化したものである。感度表のSi1は、フォトマスク等に作り込まれたプログラム欠陥のタイプを表示する欄である。本実施の形態では、A〜Lまで12のタイプを示した。
【0051】
Si2には、各プログラム欠陥に付されたナンバーを示し、Si3には、各々のプラグラム欠陥のサイズ(nm)を示す。Si4は、所望の欠陥レベルを示し、Si5は、初回の検出率、すなわち、実検出データによる検出率を示す。これに対して、Si6は、感度パラメータを再設定し、シミュレーション検出データによる検出率を示している。
【0052】
Si4で表示されている数字は、各プログラム欠陥のサイズを示し、Si5及びSi6で表示されている数字は、Si4で示されているプログラム欠陥のサイズの検出率を示している。Si4及びSi5の棒グラフによって示されている部分に対応するプログラム欠陥は、100%の検出率を示している。
【0053】
なお、同一条件で欠陥検出処理を行っても、様々な理由から、必ずしも一定の検出率が得られるとは限らない。そこで、通常は、複数回(たとえば、10回)の欠陥検出を行ってこれらの検出回数に対する検出率を算出する。
【0054】
この感度表を前記オフライン上で自動生成させることにより、感度パラメータの最適化作業のうち、感度表の生成に要する時間も、実機作業の所要時間から低減させることができる。
【0055】
図6は、実欠陥データから基準検出データを取得する方法を説明した図である。上記図1から図5までの説明は、フォトマスク等に作り込まれたプログラム欠陥のサイズデータや座標データなどの特定データがあらかじめ付与されているが、このようなプログラム欠陥がない(すなわち、特定データは不明な実欠陥のみの)フォトマスク等に対しては、上記のような方法では、レビュー用データや感度表を生成することはできない。
【0056】
そこで、上記のようなフォトマスク等については、上記欠陥検査装置(実機)で、2回以上実測し、検出された欠陥の検出率及び座標値からなる基準検出データを取得し、この基準検出データから前記オフライン上でレビュー用データ及び感度表を自動生成し、この生成されたレビュー用データと感度表から所望の欠陥検出レベルを設定すればよい。
【0057】
図6では、第1回目の検査結果では、○印の6つの欠陥が検出され、第2回目の検査結果では、▲印の7つの欠陥が検出されたことを示している。この2回の検査結果の集計データを算出、表示させると、点線で囲まれた領域で検出された欠陥は、第1回目及び第2回目の双方で検出されているため、検出率が100%となり、この領域外に存在する3つの欠陥(○印は1個、▲印は2個)は、検出率が各々50%ということになる。
【0058】
そこで、この検出された欠陥の検出率及び座標値によって基準検出データを生成し、この基準検出データから前記オフライン上でレビュー用データ及び感度表を自動生成し、この生成されたレビュー用データと感度表から所望の欠陥検出レベルにするために、感度パラメータの最適化を図るようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明にかかる欠陥検査システムのブロック構成図
【図2】本発明にかかる感度パラメータの適正化手順を示す処理フロー図
【図3】感度パラメータの変更に伴う欠陥検出個数の変化の関係を示す図
【図4】レビュー用データを例示した図
【図5】感度表を例示した図
【図6】実欠陥データから基準実測定データを取得する方法を説明した図
【図7】従来の感度パラメータの適正化手順を示す処理フロー図
【図8】検出された各プログラム欠陥の反応値と閾値との関係を示す図
【符号の説明】
【0060】
1 スキャナ
2 スキャナ制御部
3 データ準備処理部
4 システム制御、GUI処理部
5 展開、参照画生成処理部
6 分配処理部
7 欠陥検出処理部
8 結果管理処理部
9 シミュレーション処理部








【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象物の欠陥の検出レベルを所望のレベルにするために、欠陥検出アルゴリズムに対して設定する感度パラメータを最適化する欠陥検出レベル調整方法であって、
欠陥検査装置によって、上記感度パラメータを任意の高感度に設定し、上記被検査対象物に所与の特定データに基づいて作り込まれたプログラム欠陥を検出して実検出データを取得し、前記欠陥検査装置に対してオフライン上で、前記実検出データからレビュー用データを生成し、前記所望の検出レベルを達成していない場合には、前記オフライン上で、感度パラメータの再設定と、再設定された感度パラメータによるプログラム欠陥のシミュレーション検出データの取得と、このシミュレーション検出データによるレビュー用データの生成とを繰り返して前記所望の検出レベルを達成する最適な感度パラメータを設定することを特徴とする欠陥検出レベル調整方法。
【請求項2】
前記欠陥検出装置による検査で得られた実検出データの検査回数に対する検出率及び前記各実検出データに基づいて算出される前記シミュレーション検出データの検出率を可視化した感度表を前記オフライン上で自動生成することを特徴とする請求項1記載の欠陥検出レベル調整方法。
【請求項3】
前記高感度パラメータによる実検出データから、感度パラメータの変更に伴う欠陥検出個数の変化の関係データを欠陥検出アルゴリズムごとに求めて格納し、前記感度パラメータを再設定すると、前記格納された関係データを読み出して、再設定された感度パラメータに対応する欠陥検出個数を求めることを特徴とする請求項1または請求項2記載の欠陥検出レベル調整方法。
【請求項4】
所与の特定データに基づいて生成されるプログラム欠陥を作りこんでいない被検査対象物を欠陥検査装置で、2回以上検査して実検出データを取得し、前記欠陥検査装置に対してオフライン上で検出された欠陥の検出率及び座標値からなる基準検出データを取得し、この基準検出データから前記オフライン上でレビュー用データ及び感度表を自動生成し、この生成されたレビュー用データと感度表から所望の欠陥検出レベルを設定することを特徴とする欠陥検出レベル調整方法。
【請求項5】
被検査対象物の欠陥の検出レベルを所望のレベルにするために、欠陥検出アルゴリズムに対して設定する感度パラメータを最適化し、欠陥検出レベルの調整が可能な欠陥検査システムであって、
前記被検査対象物の性状に応じて適用する欠陥検出アルゴリズムを1以上選択することができる検出条件選択手段と、上記被検査対象物に所与の特定データに基づいて作り込まれた複数のプログラム欠陥を検出するために、前記選択された欠陥検出アルゴリズムに対して感度パラメータを設定するパラメータ設定手段と、この設定された感度パラメータによって欠陥検出を行う欠陥検出処理手段と、前記欠陥検出処理手段に対してオフライン上で、この欠陥検出処理によって得られた実検出データを使用して、最適の感度パラメータをシミュレーション処理によって設定するシミュレーション処理手段とを有し、
このシミュレーション処理手段は、前記実検出データからレビュー用データを生成するレビュー用データ生成手段と、前記実検出データの検査回数に対する検出率を可視化した感度表生成手段と、前記感度パラメータを変更して再設定する感度パラメータ変更手段と、再設定された感度パラメータによってシミュレーション検出データを取得する欠陥検出オフライン処理手段とを備え、このシミュレーション検出データに基づいて、前記レビュー用データ生成手段と感度表生成手段によってレビュー用データと感度表を生成するものであることを特徴とする欠陥検査システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−229218(P2009−229218A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74377(P2008−74377)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】