歩行者の動態検知装置
【課題】
上下移動を伴う歩行動態を正確に認識できる装置がなかった。また、上下移動を伴う歩行動態では、平面歩行とは異なる歩幅で歩く事になるがそれを検知する装置がなかった。
【解決手段】
高度変化を検知するセンサと平面での歩行動態を検知する装置を組合せ上下移動を考慮した歩行動態を検知する。
【効果】
本発明によれば、上下移動を伴うような歩行動態が認識できるようになる。さらに、歩幅を正確に検知できるようになり精度の高い位置検知が可能になる。また、歩行動態と地理情報を比較して地理上のどこにいるかを推定できるようになる。
上下移動を伴う歩行動態を正確に認識できる装置がなかった。また、上下移動を伴う歩行動態では、平面歩行とは異なる歩幅で歩く事になるがそれを検知する装置がなかった。
【解決手段】
高度変化を検知するセンサと平面での歩行動態を検知する装置を組合せ上下移動を考慮した歩行動態を検知する。
【効果】
本発明によれば、上下移動を伴うような歩行動態が認識できるようになる。さらに、歩幅を正確に検知できるようになり精度の高い位置検知が可能になる。また、歩行動態と地理情報を比較して地理上のどこにいるかを推定できるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者の動態検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平地での歩行者の動態検知技術に関しては、従来、歩行に伴う歩行者の上下の振動を加速度センサを用いて観測しスペクトル解析を用いて歩行状態を認識している(例えば、特許文献1参照)。また、従来は、認識した歩行状態と地理データ(建物内部の通路データや道路データなど)を比較し、認識された歩行状態に対応する位置を推定している。
【0003】
さらに、認識された歩行状態から歩幅を推定して移動距離を算出している(例えば、特許文献2及び非特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−113343号公報
【特許文献2】特開2004−085511号公報
【非特許文献1】電子情報通信学会論文誌A,Vol.J87−A,No.1,pp.78−86,2004年1月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、歩行者の動きにより生じる物理的な力(加速度・角速度など)を観測し歩行状態を認識する。加速度・角速度のみでも階段歩行時に観測される波形から階段歩行を認識できるが、階段歩行に近い平地での走行運動と誤認識する可能性が高くなる。また、動作認識結果と地理情報を比較し位置の補正を行う場合、誤認識により間違った位置と判断する可能性が高くなる。さらに、この従来技術の位置の特定方法では、歩行者の進行方向に関しては考慮されていない。
【0006】
また、従来技術では、歩幅を推定して移動距離を算出しているが、階段の上り下り時の移動距離までは考慮されていない。
【0007】
本発明は、上下移動を伴うような歩行動態においても、正確な歩行状態を認識することができる歩行者の動態検知装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明では、平地での歩行動作の認識装置と上下移動を検知できる手段を併用し、平地での歩行動作の認識装置から出力される認識結果との組合わせににより認識精度が向上できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上下移動を伴うような歩行動態が認識できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施例である、歩行者の動態検知装置を示す。動態変化検知装置1は動態変化信号を検知する。動態変化信号とは、歩行者の移動に伴う加速度変化を検知する装置から出力される信号や、歩行者の角速度,関節の変位,歩行者の位置や移動に伴い基準局から送信される電界強度の変化等を検知する装置から出力される信号である。動態認識装置2は、「歩く」「走る」等の歩行者の動態や動態の変化を認識する。例えば、動態変化検知装置1として、歩行者の動態に伴う上下の加速度変化を検知する加速度センサを用い、動態認識装置2は、動態変化信号を周波数解析しその特徴量から「歩く」「走る」等の歩行者の動態変化を認識する。また、動態変化検知装置1として、基準局から送信されている電波を歩行者が所持している端末で受信するする受信装置を用いても良く、動態認識装置2は、歩行者の移動に伴い観測される電波の電界強度波形変化の特徴量を用いて歩行者の動態や動態の変化を認識しても良い。高度検知装置3は歩行者の高度を検知する。高度検知装置3としては、例えば、気圧変化を観測する気圧センサが用いられる。また、高度検知装置は、GPS等の衛星測位装置から得られる高度情報を利用して高度を検知したり、RFIDや無線ビーコンなどのID情報と、事前に計測しておいた高度情報との対応を示すテーブルを参照し高度を検知したりしても良い。高度変化勾配検知装置4は、歩行者の高度の変化勾配すなわち単位時間あたりの高度変化を検知する。例えば、気圧センサを用いて観測した気圧データを単位時間で微分して高度変化勾配が検知される。組合せ分類・認識装置5は、動態認識装置2及び高度変化勾配検知装置4から出力される結果を、分類用テーブル記憶装置6に記憶されている分類テーブルを用いて分類し、歩行者の動態認識結果として出力する。
【0011】
次に処理の流れを図2を用いて説明する。なお、図1では動態検知信号1や高度検知装置3として様々な装置がある旨を述べたが説明の簡素化のために以後、動態検知信号として加速度,高度検知装置として気圧センサを用いた場合を例にとり説明を行う。
【0012】
21で加速度センサの値を入力する。例えば、加速度センサから出力されるアナログ信号をA/Dコンバータを持ちいて信号の取り込みを行う。取り込んだ加速度センサの出力は22でFFT等を用いて周波数領域に変換される。23で周波数領域に変換されたデータから歩行者の歩調を表すスペクトルの周波数とそのスペクトルの強さを抽出する。24このスペクトルの強さをメンバーシップ関数をもちいて分類し歩行者の動態(「静止」
「歩く」「走る」など)を認識する。(特開平10−113343の認識装置と同様の認識処理)これにより、歩行者が平面上を移動したと仮定した場合の歩行者の動態が認識される。
【0013】
加速度センサと並行して24において気圧センサの値をA/Dコンバータなどを用いて入力する。入力された気圧センサの値を25で単位時間あたりで微分し気圧の変化量に変換する。
【0014】
歩行動態の認識判定結果24及び気圧勾配の算出25の結果を元に分類処理27では2種類の判定結果を複合して歩行動態を認識する。この27では以下のような処理を行う。
【0015】
例として歩行者が上下方向に移動する可能性として、階段,エレベータがある場合を例にとる。また、分類のテーブル(6)の一例として分類テーブルの内容を図3に示す。
【0016】
歩行者が平面上を移動する場合、上下移動に伴う気圧変動がないため観測される気圧変動はその時点における海面気圧に連動した気圧変動となる。この気圧変動は、低気圧や台風の通過により急激に変化する場合があるが数hPa以下である。例えば、2005年の台風11号通過時の横浜の最大気圧変動は26日AM3時からAM4時の1時間で5.1hPaとなっている。この気圧変動を高度の変動に変換すると約43mとなり、1時間の時間で約43m、1分で約70cmの高度変化を行ったのと同じ気圧変動が観測される。これに比べ、歩行者が階段を登る場合、通常1フロアー4m程度を10〜15秒程度で移動する。従って、1分では約16m移動することになり、台風接近時に比べ約20倍程度気圧勾配が異なってる。従って、この気圧勾配を利用してある気圧勾配を閾値として大きな気圧勾配の場合、上下移動のある移動と判断でき、気圧勾配がある閾値よりも小さい場合、平面上での移動と判断できる。図3では、横軸が歩行動態の種類、縦軸が気圧変動の有無を表している。気圧勾配の閾値は38のラインである。38を境に気圧変動が小さい場合が平面移動36、大きな場合が上下移動あり37と判定される。気圧勾配だけでは歩行動態に関してまでは判定できない。そこで、歩行動態の判定24で行った判定結果を組み合わせて歩行動態を判定する。図3の横軸が24で判定した結果である。33が静止状態、34が歩行状態、35が走行状態になっている。
【0017】
気圧勾配で平面と判定(36)され、24で静止と判定された場合、平面移動との交点である平地で静止301が判定結果として出力される。同様に、歩行(34)の場合には、平地を歩行(302)が、走行(35)の場合には平地を走行(303)が認識結果となる。
【0018】
気圧勾配で上下移動あり(37)と判定され、24で静止と判断された場合には、歩行者の動きが静止であるのに気圧変動があるのでエレベータで移動(304)と判断される。同様に、気圧勾配が37の領域であり歩行(34)と認識された場合には階段を歩いて移動(305)、走行(35)と判定された場合には階段を走って移動(306)と判断される。認識結果は28として出力される。
【0019】
図4は本発明で判定した実際の例である。横軸は経過時間である。波形40は気圧データであり左側の軸がAD変換した値、右側が高度に変換した値になっている。波形42は23で抽出した歩調スペクトルの強度である。左側の軸にスペクトル強度の量が表記されている。スペクトル強度が0.05を超えると歩行状態と判定され0.4を超えると走行状態と判定される。この例では0.4 を超えるスペクトル強度が存在しないので、この区間では静止及び歩行のみを行っている。波形41が判定結果である。判定された結果は右の軸に記載されており、41の引き出し線付近は静止状態と判定されている。先ず区間43を見てみる。この区間では気圧の変動がなく、歩調スペクトルの強さが0.05〜0.1程度の値(歩行状態)を示している。従って、気圧勾配がなく歩行状態であるので歩行(平地での歩行)と判定されている。区間44では気圧勾配があり、動態は静止状態である。従って、エレベータと判断されている。このとき気圧勾配の傾きの符号を利用し、この例のように符号が正であるのでエレベータ上りと判定することも可能である。区間45では気圧勾配が正の傾きを持ち、歩調スペクトルの強さから歩行状態を表している。従って、階段を上っていると判定されている。区間46では、気圧勾配の傾きが負、動態が歩行状態であるので階段を下っていると判定されている。
【0020】
このように平面と仮定した歩行動態認識装置と気圧勾配による認識を組み合わせることにより上下運動を伴った歩行動態を認識できるようになる。
【0021】
図5は高度勾配の閾値を図3によりも多くし、気圧勾配の閾値を歩行動作の激しさ(歩行に比べて走行の方が激しい)に応じ気圧勾配閾値に傾きを設け、更に多くの歩行動態を認識するようにした実施形態である。上下移動の認識対象は、階段の他に坂道,エスカレータを追加している。歩行者が静止状態における気圧勾配の閾値は、静止してエスカレータに乗っていると認識する閾値501とエレベータ移動と認識する502からなる。閾値501や閾値502は、エスカレータやエレベータの上昇速度をもとに決定される。歩行動作が伴っている場合、歩行による高度上昇変化を加える必要があるいため、エスカレータの高度上昇変化に加え、歩行の激しさ(速度)を加味した気圧勾配の閾値が必要になってくる。図5において気圧勾配の閾値直線504及び505が走行動作になるにつれて大きな閾値にしているのはそのためである。歩行動態の認識の振り分けは図3で行った装置と同様に、24で認識した結果と気圧勾配の閾値の関係より図5のテーブルにより行う。また同様に28から認識結果を出力する。
【0022】
このように本実施形態では気圧勾配の閾値を上下移動方法に応じて複数設けることにより上下運動を伴った歩行動態の認識の種類を拡張できるようになる。
【0023】
なお、上記実施形態では歩行動態の認識にとどまっているが、歩行動態より運動の消費カロリーも計算可能である。例えば、平面歩行の場合の消費カロリー,階段歩行での消費カロリーなど、歩行動態の違いにより消費する消費カロリーは異なっている。従って、前以て各歩行動態に対応する消費カロリーのテーブルを作成しておいて検知した歩行動態よりこのテーブルを参照することにより歩行動態に伴う運動消費カロリーを算出することができるようになる。
【0024】
このように本実施形態では、歩行動態に応じた運動消費カロリーを検知することが出来るようになる。
【0025】
次に、歩行動態の検知装置を利用し気圧センサなどで検知した高度を補正する実施形態について図9を用いて説明する。図4の波形40が高度検知装置(気圧センサ)で検知した出力である。このデータは実験の最初の時刻(時間0)と最後の時刻(時間240)では、同じ位置(同じ高度)で観測した場合の例である。従って、最初と最後では同じ高度を示すはずであるが、最初の高度(矢印48)と最後の高度(矢印49)を比べると最後の高度が若干上昇している。これは、先に台風の例で説明したように時間の経過と伴い低気圧の接近などにより気圧が変動したためである。こような気圧変動があると気圧計で求めた高度に誤差が生じることになる。そこで、図9に示すような処理フローを用い誤差を補正する。先ず、90で初期高度をセットする。これは、利用者が手動でセットしても良いし、GPSから出力される高度情報などを利用しても構わない。次に、上下移動を伴う歩行者の動態検知が可能である検知装置91(図1で説明した装置など)を用い、上下の移動を伴った動態か否かを92を用いて判定する。上下移動を伴う動態の場合、検知している高度勾配(4)は上下の移動に伴う気圧変動であるので93の1計算サイクル前の高度に高度変化を加える処理を行い94で高度を出力する。92で上下移動を伴う歩行動態でないと判断された場合、ここで観測された気圧勾配の値は、上下移動に伴う高度変化ではないので93の処理を行わないで1計算サイクル前の値と同じ高度として現在の高度を出力する(94)。以後、同じ処理を繰り返して高度を検知する。処理の結果が、図4の波形47である。48,49で生じていた高度差が補正され正しい高度を示していることがわかる。なお、本実施形態では、上下移動中の気圧変動(海面気圧)に関しては考慮していない。これは、通常平地歩行を行っている時間に比べ、上下移動を行っている時間は短く、上下移動中の海面気圧変動を考慮しないでも大きな誤差とならないためである。
【0026】
本実施形態によれば、上下移動を伴う歩行動態の区間だけ気圧変の量を考慮することにより、海面気圧変動の影響を補正する湖とが可能になる。
【0027】
次に、上記発明で認識した歩行動態を利用し上下移動を伴う歩行においても正確な歩幅を推定し位置検知技術に応用する装置について図6及び図7を用いて説明する。図7が歩幅推定及び位置検知を行うための構成図、図6は歩幅推定を行うための説明図である。平面歩行における歩行者の移動速度(移動距離)の推定は従来技術で述べられているが、大まかに下記のような処理を行う。
(1)上下の加速度変化波形を周波数解析し歩調を表す周波数とそのスペクトル強度を抽出する。
(2)これより歩幅は
歩幅=歩調スペクトルの強度×動作毎の係数
(動作毎の係数は歩行と走行では歩行形態が異なり歩幅に変換する係数が異なる値を利用する)
(3)歩幅から移動速度は
移動速度=歩幅×歩調
(4)移動距離
移動距離=移動速度の時間積分
で求めている。水平面を移動する場合、歩行動態の違いによる歩幅の変動を考慮しているため、歩いた場合でも走った場合でも正確な移動速度を求めることが出来る。処が、階段を移動する場合、上り方向と下り方向では異なった強さのスペクトル強度を示してしまい(図4の区間45及び区間46)、上りと下りで異なった移動距離となってしまう。これは、上り階段に比べ下り階段では着地時に受ける加速度が大きいためである。また、階段の踏面の寸法は一定であるので歩行動態の違いにより歩幅が変化することはない(段飛ばしは除く)。
【0028】
そこで、図7の70の上下移動を考慮した歩幅推定装置を用いて推定を行う。70には動態の認識装置(2)で得られる歩調スペクトルの周波数と歩調スペクトルの強さ及び歩行の動態認識結果出力(7)が入力データして利用される。70の処理内容を図6を用いて説明する。60及び61は加速度センサ単独で認識した歩行の状態を表している。60が歩行、61が走行である。動態認識結果出力(7)で平地移動(63)と認識された場合には、平地移動での歩幅推定計算(従来技術の歩幅推定方法)65及び66を行う。階段移動(64)と認識された場合には歩行動態に依存せず67のように固定歩幅×歩調の計算を行い移動速度を算出する。この固定歩幅の値は、標準的な踏面の長さ約30cm程度にしてもよいし、精度を上げるために階段の踏面の長さを地理情報の中に入れておき、歩行者が通過している階段の踏面の長さを利用してもかまわない(歩行者がどこの階段を通過しているかを判断する装置については後述する)。このようにして歩幅(移動速度)を推定した後は、71の進行方向の検知装置で歩行者の移動方向を検知し、72の移動軌跡の算出方法で、移動速度と移動方向を積分し移動軌跡を求め、移動軌跡を出力(73)できるようになる。
【0029】
本実施形態では、階段などの上下移動を伴うような歩行形態でも正確な歩幅推定を行う事ができるようになり、またこの歩幅より移動軌跡を推定できるようにもなる。
【0030】
次に、認識した歩行者の動態と周囲の地理情報を比較し認識した歩行状態に対応する位置を推定する実施形態について、図8,図10を用いて説明する。図8は階段移動の説明図である。図10は本実施形態を実現するための構成図である。図10の101は歩行動態の認識装置でありこれまで説明してきた、上下方向の移動を含む歩行動態を認識する装置である。102は歩行者の位置検知装置である。例えば、図7で説明した歩幅推定による移動軌跡の検知装置でもかまわないしGPSや無線LANによる位置検知装置でもかまわない。この実施形態で説明する位置検知装置は、102による位置検知装置により検知された位置情報よりも更に高精度な位置を検知することが目的である。103は地理情報であり、建物の位置や階段・エレベータ等の建物内部の構造や位置情報、更に外の道路や地形情報が格納されている。104は歩行動態による地理情報の検索方法である。ここでは、102で検知した歩行動態に対応する地理情報の位置を大まかな位置情報102を用い103のデータベースから探索する処理を行う。ここで、歩行動態に対応する地理情報とは、階段歩行=「階段の地理情報」,エレベータ移動=「エレベータの地理情報」,エスカレータ移動=「エスカレータの地理情報」等を示している。従って、階段歩行を認識している場合歩行者は階段の場所にいることになるので階段の地理情報を参照することにより階段の位置情報などが取得できるようになる。階段が複数ある場合を想定し、102で検知した歩行者の大まかな位置情報を元に103の地理情報データベースから一番近くにある対応する地理情報を探索する。これにより歩行者動態検知結果とおおまかな現在位置から対応する地理情報を探索するかとが出来、地理情報の中の位置情報から位置を推定できるようになる。(ここまでは、特開平10−113343号公報と同様の処理である)更に、108の歩行動態の変化を利用した地理情報変化点の検知と進行方向検知処理を用いて検知精度の向上と進行方向の検知を行う。処理の方法を図8及び図9を用いて説明する。80は階段を表している104の処理で歩行者がこの階段の中にいると判定されているとする。この階段は87に示すように上り方向が北、下り方向が南側を向いている。歩行者が区間81(階段)から区間82(平地)へ向かった場合を考える。この場合、歩行者の動態認識結果は区間81を移動中には「上り階段」、区間82を移動中は「平面歩行」と認識される。従って、動態認識結果が「上り階段」から「平面歩行」へ変化する85の地点は上り階段の終点となる。階段の形状と位置データは地理情報データベースの中に格納されているのでこの情報を元に85の位置を割り出す事が出来る。このように、歩行動態の変化点を参照することにより104で検索した結果よりも更に詳細な位置情報を求めることが出来る。更に、この階段は上り方向は北に向かっているので階段を上っている歩行者は北を向いて歩行していることになる。従って、歩行者の進行方向も検知できるようになる。下りの場合も同様である。区間83では「下り階段」区間84では「平面歩行」と認識されその変化点が下り階段の終点である86の位置となる。進行方向は下り階段を歩行してきたので南方向に移動していると判定される。
【0031】
このように、本実施形態では歩行動態の認識結果と地理情報を比較し歩行者がいる場所を推定する事が可能になり、歩行者の現在位置と進行方向を検知することができるようになる。
【0032】
次に、前述の歩行動態の検知装置を利用した位置及び進行方向の検知装置を利用し、単位時間あたりの速度と進行方向を積分して位置を検知する装置(自立的位置検知装置あるいは慣性航法)の位置補正として利用する実施形態について図11,図12,図13を用いて説明する。図11は本実施形態の処理フロー、図12及び図13は検知した移動軌跡の例である。
【0033】
図12は、図7を用いて説明した装置で求めた移動軌跡の例である。125は出発位置、120及び121は階段である。図12の例で実際に歩行した経路は、125を出発点として階段120を3フロアー分上り3フロアー上の階層を階段121の階段の方向に移動し121の階段を3フロアー分下がり再度125の地点に戻るように行った。実際に図7の装置で検知した移動軌跡は124である。125の出発地点から120の階段までは正確な移動軌跡を示している。処が、120の階段を上っている間に、ジャイロなどの方向検知センサのドリフトのために方位に誤差が蓄積してしまい階段121に到達していると考えられる点線で囲んだ領域123になっても移動軌跡124は階段の121の位置に達していない。本実施形態ではこのような状況に陥っても正確な位置に補正する装置を提供する。先ず、図11の110で歩行者の初期位置をセットする。歩行者が自分の位置を地図から確認して位置座標や進行方向を入力しても良いし、GPSなど絶対位置の検知できる装置が使える領域であればこの装置で検知した絶対位置及び進行方向を入力データとしてもかまわない、或はRFIDなどを利用して位置に対応するID情報を発信するタグなどを敷設し、このID情報を読み取る事により位置情報を検知し検知した位置情報を入力データとしてもかまわない。111で歩行動態の検知及び地理情報を利用した位置及び進行方向の推定方法の処理を行う。この処理は例えば図10で説明した装置を用いる。ここでは(1)位置及び進行方向の推定が可能か否かの判断、(2)可能な場合の位置及び進行方向の算出を行う。位置及び進行方向の推定が可能な場合分岐112により113の推定した位置及び進行方向を用い現在位置及び進行方向の再セットを行う。位置及び進行方向の推定が可能な場合とは、階段の上り下りなどを認識し該当する位置が推定できた場合である。例えば、図12,図13の例では、階段120及び121を歩行者が通過した場合にこの状検知なり、階段の位置及び進行方向が再セットされる。その後114の単位時間ごとの速度と進行方向検知装置で速度と進行方向を検知し(例えば図7で説明した装置)、115において時間積分を行い移動軌跡を算出し116で現在の位置と進行方向が出力される。分岐112で位置及び進行方向が推定できない場合(階段以外の場所を歩行中など)は113の再セット処理を行わず、114,115の処理を行い116で現在の位置と進行方向が出力される。以後、再度111の処理に戻り処理を繰り返して連続的に位置と進行方向情報を出力する。図13は、図12と同じデータを用い本実施形態の効果を示したものである。132から出発した移動軌跡は階段の領域134に入ると120の階段の位置と進行方向に合致するように補正されていいる(途中移動軌跡が切れている場所が補正処理が行われた場所)。更に、121の階段の領域131へ進むと、同様に階段121の位置と進行方向が合致するように補正されている。最終的に終点133に到達するが出発点132とほぼ同じ位置となっており図12の終点126に比べ位置検知精度が向上していることがわかる。
【0034】
なお、上記実施形態では、GPSによる位置補正は、初期位置のセット(110)のみに利用しているが、分岐112において動態検知による位置補正に加え、GPSの精度が信頼できるか否かの判断を行い精度が信頼できる値の場合、113の補正値をGPSの値を用いて行ってもかまわない。精度が信頼できるか否かの判定はDOPなどの情報をりようしてもかまわない。また、動態検知による位置補正及びGSPによる位置検知両方が位置検知可能と判断された場合には、精度が高い動態検知による位置補正を選択してもかまわない。
【0035】
本実施形態によれば、自律位置検知装置の補正装置として利用する事ができ、誤差が時間と共に増加する、自律位置検知装置の位置補正手段として利用できる。
【0036】
次に、本発明を利用した歩行者ナビゲーション端末に関して図14を用いて説明する。144は加速度センサ、142は気圧センサ、147は方向センサ(磁気方位やジャイロセンサ)である。143はGPS装置である。146は地理情報のデータベース、141が演算処理用CPU、145が表示装置となっている。これらの装置が一体化され140が歩行者ナビゲーション端末となっている。
【0037】
144は図1の動態変化信号の検知装置(1)に142は高度検知装置(3)に対応するセンサである。141演算処理用CPUでは、144及び142の情報をもとに図1を用いて説明した歩行者の動態検知、147のセンサを追加して利用し図7を用いて説明した歩行者の移動軌跡の検知装置、図10を用いて説明した歩行動態による位置及び方向の検知装置などが処理される。また、143のGPSはGPS衛星の電波が良好に受信できる屋外などでは、GPSから取得した位置情報を自分の位置としてそのまま利用したり、受信状態が悪くなる直前の値を図11で説明した装置の110の初期位置のリセット情報として利用する。146は地理情報であり、歩行動態の検知結果から対応する地理情報
(階段の位置など)を探索したり、図11で説明した移動軌跡の検知装置で求めた移動軌跡と、周囲の地理情報(建物や階段,道などの情報)を描画するためのデータが格納されている。146及び141で処理した結果が145の表示装置を用いて描画される。描画される情報としては、図1により求めた歩行動態の検知結果や運動消費カロリー、図7や図10,図11により求めた歩行者の現在の移動軌跡とそれと重ねて表示した地理情報などである。これにより端末140を持った歩行者は、自分が今どこにいるかを表示画面
145を見ることにより確認できるようになり自分がどこにいるかを把握できるようになる。なお、本実施形態では、自分の現在位置と移動軌跡の検知方法について述べているが、これらの情報をもとにカーナビゲーション(以下カーナビ)で一般的に行われている、経路探索情報をもとにした経路案内を行っても構わない。カーナビと本実施例の違いは、(1)GPSが使える領域ではカーナビと同様、(2)GPSが使えない場合、カーナビでは移動距離を車速パルスなどを利用するが本実施形態では歩幅推定技術を利用、(3)位置検知誤差が生じる場合、カーナビでは道路に沿って位置を補正(マップマッチング)するが、本実施形態では歩行動態に対応した地理情報(階段やエレベータ,エスカレータなど)で補正する違いがある。
【0038】
本実施形態によれば歩行者用のナビゲーションが可能になる。
【0039】
次に、表示画面(表示用端末)151を分離した例を図15に示す。図14との違いは、表示画面を分離しただけで処理内容は同様である。これは、歩行者の動態検知や歩幅推定を行うためには、144の加速度センサや147の方向センサを人間の重心位置である腰の位置に置くのが望ましい。処が、図14の例の場合、通常腰の位置に取りつけて検知処理を行ったとしても、現在位置を確認するために画面を見る必要があり、結果的に腰から外し画面を見る動作により検知結果に誤認識や位置検知誤差が生じてしまう可能性が出てくる。従って、図15の例では、センサ部分を搭載した152のくしに装着する装置と、利用者が手に持って画面などを確認できる利用者が見る表示端末153に分離して、通信回線150を用い画面情報等の情報をやり取りしながら表示する構成にしている。通信回線150は有線でも良いし無線を用いても構わない。これにより、画面と歩行者の動態検知を行うセンサを分離する事が可能になるので歩行動態の誤認識や位置検知誤差が生じにくくなる。なお、端末分離の目的は、歩行者の動態検知を行うセンサを一番条件の良い場所に配置するのが目的である。図15の構成では演算用CPUや地理情報146を腰に装着する端末側に配置しているが、位置精度に影響を与える144や147だけを腰に装着する端末152側に配置しその他のセンサや処理回路を153の利用者が見る表示端末側に配置しても構わない。
【0040】
本実施形態によれば、歩行動態の検知精度や移動軌跡の検知精度に影響を与えるセンサ群を条件の良い場所に分離して配置できるといった効果がある。
【0041】
次に、作業員の状態検知用システムに利用する場合の実施形態を図16の構成図を用いて説明する。160の作業員が取り付ける作業員端末160と作業員から離れた場所に配置する作業員監視用装置167から構成される。作業員用の端末(160)は図14で説明した構成図に通信装置161が追加されている。作業員用端末160では、図14で説明した処理機能が搭載されており、歩行者(作業員)の動態や位置検知・移動軌跡検知を行う事ができる。これらの情報は、図14で説明したのと同様に作業員が表示装置145を用いて見ることが出来るが、通信装置161を用いて遠隔地に置かれた作業員監視用装置167へ転送することが可能になっている。162は通信回線(無線通信など)、163は通信装置、164は地理情報データベース、165は処理用PC,166表示装置になっている。162を介して送られて来た作業員用の端末160で検知した情報は、163の通信装置で受信され処理用PC165へ送られる。処理用PC165では送られて来た情報の描画処理などを行う。例えば、歩行者(作業員)の動態検知結果が送られて来た場合、その動態(「歩く」「走る」「階段を上る」など)の結果を画像情報に変換して表示装置166へ送って描画する。移動軌跡や位置・進行方向情報が送られて来た場合には、地理情報164の情報と重ね合わせて、歩行者(作業員)が地図上のどこにいるかを描画することが出来る。従って、作業員監視用装置167を用いることにより遠隔地から作業員の動態や位置を検知する事が可能になる。なお、図16では作業員端末は1つ書かれているが、複数の端末と接続し、複数の作業員の動態情報や位置情報を描画することも可能である。また、160は画面とセンサ群が一体型の端末であるが図15で説明したようにセンサ群と表示画面を分離してもかまわない。
【0042】
本実施形態によれば、作業員の位置及び動態を遠隔地から検知可能になる。
【0043】
上記、実施例によれば、つぎのような作用・効果を生じる。
【0044】
平面と仮定した歩行動態認識装置と気圧勾配による認識を組み合わせることにより上下運動を伴った歩行動態を認識できるようになる。
【0045】
歩行動態に応じた運動消費カロリーを検知することが出来るようになる。
【0046】
上下移動を伴う歩行動態の区間だけ気圧変の量を考慮することにより、海面気圧変動の影響を補正することが可能になる。
【0047】
階段などの上下移動を伴うような歩行形態でも正確な歩幅推定を行う事ができるようになり、またこの歩幅より移動軌跡を推定できるようにもなる。
【0048】
歩行動態の認識結果と地理情報を比較し歩行者がいる場所を推定する事が可能になり、歩行者の現在位置と進行方向を検知することができるようになる。
【0049】
自律位置検知装置の補正装置として利用する事ができ、誤差が時間と共に増加する、自律位置検知装置の位置補正手段として利用できる。
【0050】
歩行者用のナビゲーションが可能になる。また、作業員の位置及び動態を遠隔地から検知可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】上下移動を伴う歩行動態検知装置の構成図。
【図2】上下移動を伴う歩行動態検知装置の処理フロー。
【図3】分類テーブル。
【図4】実際の判定例。
【図5】認識項目を多くした場合の分類テーブル。
【図6】歩幅推定の説明図。
【図7】歩幅推定及び位置検知を行うための構成図。
【図8】階段の例。
【図9】高度補正のフローチャート。
【図10】歩行動態を利用した位置及び進行方向検知装置の構成。
【図11】自律航法の初期値に利用した場合の処理フロー。
【図12】移動軌跡の例(補正なし)。
【図13】移動軌跡の例(補正あり)。
【図14】歩行者ナビゲーション端末の構成図。
【図15】歩行者ナビゲーション端末の構成図(画面分離型)。
【図16】作業員の遠隔検知システムの構成図。
【符号の説明】
【0052】
1…動態検知信号の検知装置、2…動態の認識装置、3…高度検知装置、4…高度変化勾配の検知装置、5…組合せ分類・認識処理、6…分類用テーブル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者の動態検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平地での歩行者の動態検知技術に関しては、従来、歩行に伴う歩行者の上下の振動を加速度センサを用いて観測しスペクトル解析を用いて歩行状態を認識している(例えば、特許文献1参照)。また、従来は、認識した歩行状態と地理データ(建物内部の通路データや道路データなど)を比較し、認識された歩行状態に対応する位置を推定している。
【0003】
さらに、認識された歩行状態から歩幅を推定して移動距離を算出している(例えば、特許文献2及び非特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−113343号公報
【特許文献2】特開2004−085511号公報
【非特許文献1】電子情報通信学会論文誌A,Vol.J87−A,No.1,pp.78−86,2004年1月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、歩行者の動きにより生じる物理的な力(加速度・角速度など)を観測し歩行状態を認識する。加速度・角速度のみでも階段歩行時に観測される波形から階段歩行を認識できるが、階段歩行に近い平地での走行運動と誤認識する可能性が高くなる。また、動作認識結果と地理情報を比較し位置の補正を行う場合、誤認識により間違った位置と判断する可能性が高くなる。さらに、この従来技術の位置の特定方法では、歩行者の進行方向に関しては考慮されていない。
【0006】
また、従来技術では、歩幅を推定して移動距離を算出しているが、階段の上り下り時の移動距離までは考慮されていない。
【0007】
本発明は、上下移動を伴うような歩行動態においても、正確な歩行状態を認識することができる歩行者の動態検知装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明では、平地での歩行動作の認識装置と上下移動を検知できる手段を併用し、平地での歩行動作の認識装置から出力される認識結果との組合わせににより認識精度が向上できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上下移動を伴うような歩行動態が認識できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施例である、歩行者の動態検知装置を示す。動態変化検知装置1は動態変化信号を検知する。動態変化信号とは、歩行者の移動に伴う加速度変化を検知する装置から出力される信号や、歩行者の角速度,関節の変位,歩行者の位置や移動に伴い基準局から送信される電界強度の変化等を検知する装置から出力される信号である。動態認識装置2は、「歩く」「走る」等の歩行者の動態や動態の変化を認識する。例えば、動態変化検知装置1として、歩行者の動態に伴う上下の加速度変化を検知する加速度センサを用い、動態認識装置2は、動態変化信号を周波数解析しその特徴量から「歩く」「走る」等の歩行者の動態変化を認識する。また、動態変化検知装置1として、基準局から送信されている電波を歩行者が所持している端末で受信するする受信装置を用いても良く、動態認識装置2は、歩行者の移動に伴い観測される電波の電界強度波形変化の特徴量を用いて歩行者の動態や動態の変化を認識しても良い。高度検知装置3は歩行者の高度を検知する。高度検知装置3としては、例えば、気圧変化を観測する気圧センサが用いられる。また、高度検知装置は、GPS等の衛星測位装置から得られる高度情報を利用して高度を検知したり、RFIDや無線ビーコンなどのID情報と、事前に計測しておいた高度情報との対応を示すテーブルを参照し高度を検知したりしても良い。高度変化勾配検知装置4は、歩行者の高度の変化勾配すなわち単位時間あたりの高度変化を検知する。例えば、気圧センサを用いて観測した気圧データを単位時間で微分して高度変化勾配が検知される。組合せ分類・認識装置5は、動態認識装置2及び高度変化勾配検知装置4から出力される結果を、分類用テーブル記憶装置6に記憶されている分類テーブルを用いて分類し、歩行者の動態認識結果として出力する。
【0011】
次に処理の流れを図2を用いて説明する。なお、図1では動態検知信号1や高度検知装置3として様々な装置がある旨を述べたが説明の簡素化のために以後、動態検知信号として加速度,高度検知装置として気圧センサを用いた場合を例にとり説明を行う。
【0012】
21で加速度センサの値を入力する。例えば、加速度センサから出力されるアナログ信号をA/Dコンバータを持ちいて信号の取り込みを行う。取り込んだ加速度センサの出力は22でFFT等を用いて周波数領域に変換される。23で周波数領域に変換されたデータから歩行者の歩調を表すスペクトルの周波数とそのスペクトルの強さを抽出する。24このスペクトルの強さをメンバーシップ関数をもちいて分類し歩行者の動態(「静止」
「歩く」「走る」など)を認識する。(特開平10−113343の認識装置と同様の認識処理)これにより、歩行者が平面上を移動したと仮定した場合の歩行者の動態が認識される。
【0013】
加速度センサと並行して24において気圧センサの値をA/Dコンバータなどを用いて入力する。入力された気圧センサの値を25で単位時間あたりで微分し気圧の変化量に変換する。
【0014】
歩行動態の認識判定結果24及び気圧勾配の算出25の結果を元に分類処理27では2種類の判定結果を複合して歩行動態を認識する。この27では以下のような処理を行う。
【0015】
例として歩行者が上下方向に移動する可能性として、階段,エレベータがある場合を例にとる。また、分類のテーブル(6)の一例として分類テーブルの内容を図3に示す。
【0016】
歩行者が平面上を移動する場合、上下移動に伴う気圧変動がないため観測される気圧変動はその時点における海面気圧に連動した気圧変動となる。この気圧変動は、低気圧や台風の通過により急激に変化する場合があるが数hPa以下である。例えば、2005年の台風11号通過時の横浜の最大気圧変動は26日AM3時からAM4時の1時間で5.1hPaとなっている。この気圧変動を高度の変動に変換すると約43mとなり、1時間の時間で約43m、1分で約70cmの高度変化を行ったのと同じ気圧変動が観測される。これに比べ、歩行者が階段を登る場合、通常1フロアー4m程度を10〜15秒程度で移動する。従って、1分では約16m移動することになり、台風接近時に比べ約20倍程度気圧勾配が異なってる。従って、この気圧勾配を利用してある気圧勾配を閾値として大きな気圧勾配の場合、上下移動のある移動と判断でき、気圧勾配がある閾値よりも小さい場合、平面上での移動と判断できる。図3では、横軸が歩行動態の種類、縦軸が気圧変動の有無を表している。気圧勾配の閾値は38のラインである。38を境に気圧変動が小さい場合が平面移動36、大きな場合が上下移動あり37と判定される。気圧勾配だけでは歩行動態に関してまでは判定できない。そこで、歩行動態の判定24で行った判定結果を組み合わせて歩行動態を判定する。図3の横軸が24で判定した結果である。33が静止状態、34が歩行状態、35が走行状態になっている。
【0017】
気圧勾配で平面と判定(36)され、24で静止と判定された場合、平面移動との交点である平地で静止301が判定結果として出力される。同様に、歩行(34)の場合には、平地を歩行(302)が、走行(35)の場合には平地を走行(303)が認識結果となる。
【0018】
気圧勾配で上下移動あり(37)と判定され、24で静止と判断された場合には、歩行者の動きが静止であるのに気圧変動があるのでエレベータで移動(304)と判断される。同様に、気圧勾配が37の領域であり歩行(34)と認識された場合には階段を歩いて移動(305)、走行(35)と判定された場合には階段を走って移動(306)と判断される。認識結果は28として出力される。
【0019】
図4は本発明で判定した実際の例である。横軸は経過時間である。波形40は気圧データであり左側の軸がAD変換した値、右側が高度に変換した値になっている。波形42は23で抽出した歩調スペクトルの強度である。左側の軸にスペクトル強度の量が表記されている。スペクトル強度が0.05を超えると歩行状態と判定され0.4を超えると走行状態と判定される。この例では0.4 を超えるスペクトル強度が存在しないので、この区間では静止及び歩行のみを行っている。波形41が判定結果である。判定された結果は右の軸に記載されており、41の引き出し線付近は静止状態と判定されている。先ず区間43を見てみる。この区間では気圧の変動がなく、歩調スペクトルの強さが0.05〜0.1程度の値(歩行状態)を示している。従って、気圧勾配がなく歩行状態であるので歩行(平地での歩行)と判定されている。区間44では気圧勾配があり、動態は静止状態である。従って、エレベータと判断されている。このとき気圧勾配の傾きの符号を利用し、この例のように符号が正であるのでエレベータ上りと判定することも可能である。区間45では気圧勾配が正の傾きを持ち、歩調スペクトルの強さから歩行状態を表している。従って、階段を上っていると判定されている。区間46では、気圧勾配の傾きが負、動態が歩行状態であるので階段を下っていると判定されている。
【0020】
このように平面と仮定した歩行動態認識装置と気圧勾配による認識を組み合わせることにより上下運動を伴った歩行動態を認識できるようになる。
【0021】
図5は高度勾配の閾値を図3によりも多くし、気圧勾配の閾値を歩行動作の激しさ(歩行に比べて走行の方が激しい)に応じ気圧勾配閾値に傾きを設け、更に多くの歩行動態を認識するようにした実施形態である。上下移動の認識対象は、階段の他に坂道,エスカレータを追加している。歩行者が静止状態における気圧勾配の閾値は、静止してエスカレータに乗っていると認識する閾値501とエレベータ移動と認識する502からなる。閾値501や閾値502は、エスカレータやエレベータの上昇速度をもとに決定される。歩行動作が伴っている場合、歩行による高度上昇変化を加える必要があるいため、エスカレータの高度上昇変化に加え、歩行の激しさ(速度)を加味した気圧勾配の閾値が必要になってくる。図5において気圧勾配の閾値直線504及び505が走行動作になるにつれて大きな閾値にしているのはそのためである。歩行動態の認識の振り分けは図3で行った装置と同様に、24で認識した結果と気圧勾配の閾値の関係より図5のテーブルにより行う。また同様に28から認識結果を出力する。
【0022】
このように本実施形態では気圧勾配の閾値を上下移動方法に応じて複数設けることにより上下運動を伴った歩行動態の認識の種類を拡張できるようになる。
【0023】
なお、上記実施形態では歩行動態の認識にとどまっているが、歩行動態より運動の消費カロリーも計算可能である。例えば、平面歩行の場合の消費カロリー,階段歩行での消費カロリーなど、歩行動態の違いにより消費する消費カロリーは異なっている。従って、前以て各歩行動態に対応する消費カロリーのテーブルを作成しておいて検知した歩行動態よりこのテーブルを参照することにより歩行動態に伴う運動消費カロリーを算出することができるようになる。
【0024】
このように本実施形態では、歩行動態に応じた運動消費カロリーを検知することが出来るようになる。
【0025】
次に、歩行動態の検知装置を利用し気圧センサなどで検知した高度を補正する実施形態について図9を用いて説明する。図4の波形40が高度検知装置(気圧センサ)で検知した出力である。このデータは実験の最初の時刻(時間0)と最後の時刻(時間240)では、同じ位置(同じ高度)で観測した場合の例である。従って、最初と最後では同じ高度を示すはずであるが、最初の高度(矢印48)と最後の高度(矢印49)を比べると最後の高度が若干上昇している。これは、先に台風の例で説明したように時間の経過と伴い低気圧の接近などにより気圧が変動したためである。こような気圧変動があると気圧計で求めた高度に誤差が生じることになる。そこで、図9に示すような処理フローを用い誤差を補正する。先ず、90で初期高度をセットする。これは、利用者が手動でセットしても良いし、GPSから出力される高度情報などを利用しても構わない。次に、上下移動を伴う歩行者の動態検知が可能である検知装置91(図1で説明した装置など)を用い、上下の移動を伴った動態か否かを92を用いて判定する。上下移動を伴う動態の場合、検知している高度勾配(4)は上下の移動に伴う気圧変動であるので93の1計算サイクル前の高度に高度変化を加える処理を行い94で高度を出力する。92で上下移動を伴う歩行動態でないと判断された場合、ここで観測された気圧勾配の値は、上下移動に伴う高度変化ではないので93の処理を行わないで1計算サイクル前の値と同じ高度として現在の高度を出力する(94)。以後、同じ処理を繰り返して高度を検知する。処理の結果が、図4の波形47である。48,49で生じていた高度差が補正され正しい高度を示していることがわかる。なお、本実施形態では、上下移動中の気圧変動(海面気圧)に関しては考慮していない。これは、通常平地歩行を行っている時間に比べ、上下移動を行っている時間は短く、上下移動中の海面気圧変動を考慮しないでも大きな誤差とならないためである。
【0026】
本実施形態によれば、上下移動を伴う歩行動態の区間だけ気圧変の量を考慮することにより、海面気圧変動の影響を補正する湖とが可能になる。
【0027】
次に、上記発明で認識した歩行動態を利用し上下移動を伴う歩行においても正確な歩幅を推定し位置検知技術に応用する装置について図6及び図7を用いて説明する。図7が歩幅推定及び位置検知を行うための構成図、図6は歩幅推定を行うための説明図である。平面歩行における歩行者の移動速度(移動距離)の推定は従来技術で述べられているが、大まかに下記のような処理を行う。
(1)上下の加速度変化波形を周波数解析し歩調を表す周波数とそのスペクトル強度を抽出する。
(2)これより歩幅は
歩幅=歩調スペクトルの強度×動作毎の係数
(動作毎の係数は歩行と走行では歩行形態が異なり歩幅に変換する係数が異なる値を利用する)
(3)歩幅から移動速度は
移動速度=歩幅×歩調
(4)移動距離
移動距離=移動速度の時間積分
で求めている。水平面を移動する場合、歩行動態の違いによる歩幅の変動を考慮しているため、歩いた場合でも走った場合でも正確な移動速度を求めることが出来る。処が、階段を移動する場合、上り方向と下り方向では異なった強さのスペクトル強度を示してしまい(図4の区間45及び区間46)、上りと下りで異なった移動距離となってしまう。これは、上り階段に比べ下り階段では着地時に受ける加速度が大きいためである。また、階段の踏面の寸法は一定であるので歩行動態の違いにより歩幅が変化することはない(段飛ばしは除く)。
【0028】
そこで、図7の70の上下移動を考慮した歩幅推定装置を用いて推定を行う。70には動態の認識装置(2)で得られる歩調スペクトルの周波数と歩調スペクトルの強さ及び歩行の動態認識結果出力(7)が入力データして利用される。70の処理内容を図6を用いて説明する。60及び61は加速度センサ単独で認識した歩行の状態を表している。60が歩行、61が走行である。動態認識結果出力(7)で平地移動(63)と認識された場合には、平地移動での歩幅推定計算(従来技術の歩幅推定方法)65及び66を行う。階段移動(64)と認識された場合には歩行動態に依存せず67のように固定歩幅×歩調の計算を行い移動速度を算出する。この固定歩幅の値は、標準的な踏面の長さ約30cm程度にしてもよいし、精度を上げるために階段の踏面の長さを地理情報の中に入れておき、歩行者が通過している階段の踏面の長さを利用してもかまわない(歩行者がどこの階段を通過しているかを判断する装置については後述する)。このようにして歩幅(移動速度)を推定した後は、71の進行方向の検知装置で歩行者の移動方向を検知し、72の移動軌跡の算出方法で、移動速度と移動方向を積分し移動軌跡を求め、移動軌跡を出力(73)できるようになる。
【0029】
本実施形態では、階段などの上下移動を伴うような歩行形態でも正確な歩幅推定を行う事ができるようになり、またこの歩幅より移動軌跡を推定できるようにもなる。
【0030】
次に、認識した歩行者の動態と周囲の地理情報を比較し認識した歩行状態に対応する位置を推定する実施形態について、図8,図10を用いて説明する。図8は階段移動の説明図である。図10は本実施形態を実現するための構成図である。図10の101は歩行動態の認識装置でありこれまで説明してきた、上下方向の移動を含む歩行動態を認識する装置である。102は歩行者の位置検知装置である。例えば、図7で説明した歩幅推定による移動軌跡の検知装置でもかまわないしGPSや無線LANによる位置検知装置でもかまわない。この実施形態で説明する位置検知装置は、102による位置検知装置により検知された位置情報よりも更に高精度な位置を検知することが目的である。103は地理情報であり、建物の位置や階段・エレベータ等の建物内部の構造や位置情報、更に外の道路や地形情報が格納されている。104は歩行動態による地理情報の検索方法である。ここでは、102で検知した歩行動態に対応する地理情報の位置を大まかな位置情報102を用い103のデータベースから探索する処理を行う。ここで、歩行動態に対応する地理情報とは、階段歩行=「階段の地理情報」,エレベータ移動=「エレベータの地理情報」,エスカレータ移動=「エスカレータの地理情報」等を示している。従って、階段歩行を認識している場合歩行者は階段の場所にいることになるので階段の地理情報を参照することにより階段の位置情報などが取得できるようになる。階段が複数ある場合を想定し、102で検知した歩行者の大まかな位置情報を元に103の地理情報データベースから一番近くにある対応する地理情報を探索する。これにより歩行者動態検知結果とおおまかな現在位置から対応する地理情報を探索するかとが出来、地理情報の中の位置情報から位置を推定できるようになる。(ここまでは、特開平10−113343号公報と同様の処理である)更に、108の歩行動態の変化を利用した地理情報変化点の検知と進行方向検知処理を用いて検知精度の向上と進行方向の検知を行う。処理の方法を図8及び図9を用いて説明する。80は階段を表している104の処理で歩行者がこの階段の中にいると判定されているとする。この階段は87に示すように上り方向が北、下り方向が南側を向いている。歩行者が区間81(階段)から区間82(平地)へ向かった場合を考える。この場合、歩行者の動態認識結果は区間81を移動中には「上り階段」、区間82を移動中は「平面歩行」と認識される。従って、動態認識結果が「上り階段」から「平面歩行」へ変化する85の地点は上り階段の終点となる。階段の形状と位置データは地理情報データベースの中に格納されているのでこの情報を元に85の位置を割り出す事が出来る。このように、歩行動態の変化点を参照することにより104で検索した結果よりも更に詳細な位置情報を求めることが出来る。更に、この階段は上り方向は北に向かっているので階段を上っている歩行者は北を向いて歩行していることになる。従って、歩行者の進行方向も検知できるようになる。下りの場合も同様である。区間83では「下り階段」区間84では「平面歩行」と認識されその変化点が下り階段の終点である86の位置となる。進行方向は下り階段を歩行してきたので南方向に移動していると判定される。
【0031】
このように、本実施形態では歩行動態の認識結果と地理情報を比較し歩行者がいる場所を推定する事が可能になり、歩行者の現在位置と進行方向を検知することができるようになる。
【0032】
次に、前述の歩行動態の検知装置を利用した位置及び進行方向の検知装置を利用し、単位時間あたりの速度と進行方向を積分して位置を検知する装置(自立的位置検知装置あるいは慣性航法)の位置補正として利用する実施形態について図11,図12,図13を用いて説明する。図11は本実施形態の処理フロー、図12及び図13は検知した移動軌跡の例である。
【0033】
図12は、図7を用いて説明した装置で求めた移動軌跡の例である。125は出発位置、120及び121は階段である。図12の例で実際に歩行した経路は、125を出発点として階段120を3フロアー分上り3フロアー上の階層を階段121の階段の方向に移動し121の階段を3フロアー分下がり再度125の地点に戻るように行った。実際に図7の装置で検知した移動軌跡は124である。125の出発地点から120の階段までは正確な移動軌跡を示している。処が、120の階段を上っている間に、ジャイロなどの方向検知センサのドリフトのために方位に誤差が蓄積してしまい階段121に到達していると考えられる点線で囲んだ領域123になっても移動軌跡124は階段の121の位置に達していない。本実施形態ではこのような状況に陥っても正確な位置に補正する装置を提供する。先ず、図11の110で歩行者の初期位置をセットする。歩行者が自分の位置を地図から確認して位置座標や進行方向を入力しても良いし、GPSなど絶対位置の検知できる装置が使える領域であればこの装置で検知した絶対位置及び進行方向を入力データとしてもかまわない、或はRFIDなどを利用して位置に対応するID情報を発信するタグなどを敷設し、このID情報を読み取る事により位置情報を検知し検知した位置情報を入力データとしてもかまわない。111で歩行動態の検知及び地理情報を利用した位置及び進行方向の推定方法の処理を行う。この処理は例えば図10で説明した装置を用いる。ここでは(1)位置及び進行方向の推定が可能か否かの判断、(2)可能な場合の位置及び進行方向の算出を行う。位置及び進行方向の推定が可能な場合分岐112により113の推定した位置及び進行方向を用い現在位置及び進行方向の再セットを行う。位置及び進行方向の推定が可能な場合とは、階段の上り下りなどを認識し該当する位置が推定できた場合である。例えば、図12,図13の例では、階段120及び121を歩行者が通過した場合にこの状検知なり、階段の位置及び進行方向が再セットされる。その後114の単位時間ごとの速度と進行方向検知装置で速度と進行方向を検知し(例えば図7で説明した装置)、115において時間積分を行い移動軌跡を算出し116で現在の位置と進行方向が出力される。分岐112で位置及び進行方向が推定できない場合(階段以外の場所を歩行中など)は113の再セット処理を行わず、114,115の処理を行い116で現在の位置と進行方向が出力される。以後、再度111の処理に戻り処理を繰り返して連続的に位置と進行方向情報を出力する。図13は、図12と同じデータを用い本実施形態の効果を示したものである。132から出発した移動軌跡は階段の領域134に入ると120の階段の位置と進行方向に合致するように補正されていいる(途中移動軌跡が切れている場所が補正処理が行われた場所)。更に、121の階段の領域131へ進むと、同様に階段121の位置と進行方向が合致するように補正されている。最終的に終点133に到達するが出発点132とほぼ同じ位置となっており図12の終点126に比べ位置検知精度が向上していることがわかる。
【0034】
なお、上記実施形態では、GPSによる位置補正は、初期位置のセット(110)のみに利用しているが、分岐112において動態検知による位置補正に加え、GPSの精度が信頼できるか否かの判断を行い精度が信頼できる値の場合、113の補正値をGPSの値を用いて行ってもかまわない。精度が信頼できるか否かの判定はDOPなどの情報をりようしてもかまわない。また、動態検知による位置補正及びGSPによる位置検知両方が位置検知可能と判断された場合には、精度が高い動態検知による位置補正を選択してもかまわない。
【0035】
本実施形態によれば、自律位置検知装置の補正装置として利用する事ができ、誤差が時間と共に増加する、自律位置検知装置の位置補正手段として利用できる。
【0036】
次に、本発明を利用した歩行者ナビゲーション端末に関して図14を用いて説明する。144は加速度センサ、142は気圧センサ、147は方向センサ(磁気方位やジャイロセンサ)である。143はGPS装置である。146は地理情報のデータベース、141が演算処理用CPU、145が表示装置となっている。これらの装置が一体化され140が歩行者ナビゲーション端末となっている。
【0037】
144は図1の動態変化信号の検知装置(1)に142は高度検知装置(3)に対応するセンサである。141演算処理用CPUでは、144及び142の情報をもとに図1を用いて説明した歩行者の動態検知、147のセンサを追加して利用し図7を用いて説明した歩行者の移動軌跡の検知装置、図10を用いて説明した歩行動態による位置及び方向の検知装置などが処理される。また、143のGPSはGPS衛星の電波が良好に受信できる屋外などでは、GPSから取得した位置情報を自分の位置としてそのまま利用したり、受信状態が悪くなる直前の値を図11で説明した装置の110の初期位置のリセット情報として利用する。146は地理情報であり、歩行動態の検知結果から対応する地理情報
(階段の位置など)を探索したり、図11で説明した移動軌跡の検知装置で求めた移動軌跡と、周囲の地理情報(建物や階段,道などの情報)を描画するためのデータが格納されている。146及び141で処理した結果が145の表示装置を用いて描画される。描画される情報としては、図1により求めた歩行動態の検知結果や運動消費カロリー、図7や図10,図11により求めた歩行者の現在の移動軌跡とそれと重ねて表示した地理情報などである。これにより端末140を持った歩行者は、自分が今どこにいるかを表示画面
145を見ることにより確認できるようになり自分がどこにいるかを把握できるようになる。なお、本実施形態では、自分の現在位置と移動軌跡の検知方法について述べているが、これらの情報をもとにカーナビゲーション(以下カーナビ)で一般的に行われている、経路探索情報をもとにした経路案内を行っても構わない。カーナビと本実施例の違いは、(1)GPSが使える領域ではカーナビと同様、(2)GPSが使えない場合、カーナビでは移動距離を車速パルスなどを利用するが本実施形態では歩幅推定技術を利用、(3)位置検知誤差が生じる場合、カーナビでは道路に沿って位置を補正(マップマッチング)するが、本実施形態では歩行動態に対応した地理情報(階段やエレベータ,エスカレータなど)で補正する違いがある。
【0038】
本実施形態によれば歩行者用のナビゲーションが可能になる。
【0039】
次に、表示画面(表示用端末)151を分離した例を図15に示す。図14との違いは、表示画面を分離しただけで処理内容は同様である。これは、歩行者の動態検知や歩幅推定を行うためには、144の加速度センサや147の方向センサを人間の重心位置である腰の位置に置くのが望ましい。処が、図14の例の場合、通常腰の位置に取りつけて検知処理を行ったとしても、現在位置を確認するために画面を見る必要があり、結果的に腰から外し画面を見る動作により検知結果に誤認識や位置検知誤差が生じてしまう可能性が出てくる。従って、図15の例では、センサ部分を搭載した152のくしに装着する装置と、利用者が手に持って画面などを確認できる利用者が見る表示端末153に分離して、通信回線150を用い画面情報等の情報をやり取りしながら表示する構成にしている。通信回線150は有線でも良いし無線を用いても構わない。これにより、画面と歩行者の動態検知を行うセンサを分離する事が可能になるので歩行動態の誤認識や位置検知誤差が生じにくくなる。なお、端末分離の目的は、歩行者の動態検知を行うセンサを一番条件の良い場所に配置するのが目的である。図15の構成では演算用CPUや地理情報146を腰に装着する端末側に配置しているが、位置精度に影響を与える144や147だけを腰に装着する端末152側に配置しその他のセンサや処理回路を153の利用者が見る表示端末側に配置しても構わない。
【0040】
本実施形態によれば、歩行動態の検知精度や移動軌跡の検知精度に影響を与えるセンサ群を条件の良い場所に分離して配置できるといった効果がある。
【0041】
次に、作業員の状態検知用システムに利用する場合の実施形態を図16の構成図を用いて説明する。160の作業員が取り付ける作業員端末160と作業員から離れた場所に配置する作業員監視用装置167から構成される。作業員用の端末(160)は図14で説明した構成図に通信装置161が追加されている。作業員用端末160では、図14で説明した処理機能が搭載されており、歩行者(作業員)の動態や位置検知・移動軌跡検知を行う事ができる。これらの情報は、図14で説明したのと同様に作業員が表示装置145を用いて見ることが出来るが、通信装置161を用いて遠隔地に置かれた作業員監視用装置167へ転送することが可能になっている。162は通信回線(無線通信など)、163は通信装置、164は地理情報データベース、165は処理用PC,166表示装置になっている。162を介して送られて来た作業員用の端末160で検知した情報は、163の通信装置で受信され処理用PC165へ送られる。処理用PC165では送られて来た情報の描画処理などを行う。例えば、歩行者(作業員)の動態検知結果が送られて来た場合、その動態(「歩く」「走る」「階段を上る」など)の結果を画像情報に変換して表示装置166へ送って描画する。移動軌跡や位置・進行方向情報が送られて来た場合には、地理情報164の情報と重ね合わせて、歩行者(作業員)が地図上のどこにいるかを描画することが出来る。従って、作業員監視用装置167を用いることにより遠隔地から作業員の動態や位置を検知する事が可能になる。なお、図16では作業員端末は1つ書かれているが、複数の端末と接続し、複数の作業員の動態情報や位置情報を描画することも可能である。また、160は画面とセンサ群が一体型の端末であるが図15で説明したようにセンサ群と表示画面を分離してもかまわない。
【0042】
本実施形態によれば、作業員の位置及び動態を遠隔地から検知可能になる。
【0043】
上記、実施例によれば、つぎのような作用・効果を生じる。
【0044】
平面と仮定した歩行動態認識装置と気圧勾配による認識を組み合わせることにより上下運動を伴った歩行動態を認識できるようになる。
【0045】
歩行動態に応じた運動消費カロリーを検知することが出来るようになる。
【0046】
上下移動を伴う歩行動態の区間だけ気圧変の量を考慮することにより、海面気圧変動の影響を補正することが可能になる。
【0047】
階段などの上下移動を伴うような歩行形態でも正確な歩幅推定を行う事ができるようになり、またこの歩幅より移動軌跡を推定できるようにもなる。
【0048】
歩行動態の認識結果と地理情報を比較し歩行者がいる場所を推定する事が可能になり、歩行者の現在位置と進行方向を検知することができるようになる。
【0049】
自律位置検知装置の補正装置として利用する事ができ、誤差が時間と共に増加する、自律位置検知装置の位置補正手段として利用できる。
【0050】
歩行者用のナビゲーションが可能になる。また、作業員の位置及び動態を遠隔地から検知可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】上下移動を伴う歩行動態検知装置の構成図。
【図2】上下移動を伴う歩行動態検知装置の処理フロー。
【図3】分類テーブル。
【図4】実際の判定例。
【図5】認識項目を多くした場合の分類テーブル。
【図6】歩幅推定の説明図。
【図7】歩幅推定及び位置検知を行うための構成図。
【図8】階段の例。
【図9】高度補正のフローチャート。
【図10】歩行動態を利用した位置及び進行方向検知装置の構成。
【図11】自律航法の初期値に利用した場合の処理フロー。
【図12】移動軌跡の例(補正なし)。
【図13】移動軌跡の例(補正あり)。
【図14】歩行者ナビゲーション端末の構成図。
【図15】歩行者ナビゲーション端末の構成図(画面分離型)。
【図16】作業員の遠隔検知システムの構成図。
【符号の説明】
【0052】
1…動態検知信号の検知装置、2…動態の認識装置、3…高度検知装置、4…高度変化勾配の検知装置、5…組合せ分類・認識処理、6…分類用テーブル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行動態の検知装置において、平面での歩行動態の認識装置と高度変化を検知する手段を用い、平面での歩行動態と高度変化の組み合わせにより、上下移動も加味した歩行動態を検知する事を特徴とする、歩行者の動態検知装置。
【請求項2】
請求項1において、歩行動態の認識装置の特徴量を検知する手段として加速度変化や電界強度の変動・ジャイロセンサを使う事を特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項3】
請求項1において、高度変化を検知する手段として気圧計やGPSによる高度・RFIDから求めた高度を利用することを特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項4】
請求項1において、歩行者の動態に応じた運動消費カロリーのテーブルを設け、歩行者の動態検知結果から上記テーブルを参照して、歩行者の動態に応じた運動消費カロリーを出力することを特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項5】
請求項1において、歩行者の動態検知結果から上下移動に伴う歩行区間における気圧変動のみを積分し高度変化を検知することを特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項6】
請求項1において、平面歩行時の歩幅推定装置を有し、平面歩行時には平面歩行時の歩幅推定装置を用い、上下移動を伴う歩行動態の場合には、対応する歩行動態に応じた歩幅補正を行い歩行者の移動速度や移動距離を検知することを特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項7】
歩行動態の検知装置と検知した歩行動態に対応する地理情報を有し、検知した歩行動態情報をもとに対応する地理情報を探索し位置情報と進行方向情報を検知することを特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項8】
請求項7において、検知した歩行者の位置情報及び進行方向を慣性航法の補正情報として利用する事を特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項9】
請求項1,2,3,4,5,6,7,8のいずれか1項において、歩行者用ナビゲーション装置を実現する事を特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項10】
上記請求項1,2,3,4,5,6,7,8のいずれか1項において、作業員の遠隔位置及び動態検知を実現する事を特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項1】
歩行動態の検知装置において、平面での歩行動態の認識装置と高度変化を検知する手段を用い、平面での歩行動態と高度変化の組み合わせにより、上下移動も加味した歩行動態を検知する事を特徴とする、歩行者の動態検知装置。
【請求項2】
請求項1において、歩行動態の認識装置の特徴量を検知する手段として加速度変化や電界強度の変動・ジャイロセンサを使う事を特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項3】
請求項1において、高度変化を検知する手段として気圧計やGPSによる高度・RFIDから求めた高度を利用することを特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項4】
請求項1において、歩行者の動態に応じた運動消費カロリーのテーブルを設け、歩行者の動態検知結果から上記テーブルを参照して、歩行者の動態に応じた運動消費カロリーを出力することを特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項5】
請求項1において、歩行者の動態検知結果から上下移動に伴う歩行区間における気圧変動のみを積分し高度変化を検知することを特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項6】
請求項1において、平面歩行時の歩幅推定装置を有し、平面歩行時には平面歩行時の歩幅推定装置を用い、上下移動を伴う歩行動態の場合には、対応する歩行動態に応じた歩幅補正を行い歩行者の移動速度や移動距離を検知することを特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項7】
歩行動態の検知装置と検知した歩行動態に対応する地理情報を有し、検知した歩行動態情報をもとに対応する地理情報を探索し位置情報と進行方向情報を検知することを特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項8】
請求項7において、検知した歩行者の位置情報及び進行方向を慣性航法の補正情報として利用する事を特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項9】
請求項1,2,3,4,5,6,7,8のいずれか1項において、歩行者用ナビゲーション装置を実現する事を特徴とする歩行者の動態検知装置。
【請求項10】
上記請求項1,2,3,4,5,6,7,8のいずれか1項において、作業員の遠隔位置及び動態検知を実現する事を特徴とする歩行者の動態検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−93433(P2007−93433A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284426(P2005−284426)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153421)株式会社日立アドバンストシステムズ (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153421)株式会社日立アドバンストシステムズ (9)
【Fターム(参考)】
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