説明

気相成長装置

【課題】GaN系などの成長結晶層の膜厚均一性を向上させることができ、歩留まりが高い気相成長装置を提供する。
【解決手段】基板215を保持し、加熱および回転させるサセプタ216と、複数のチャネルを含み、基板の上面に沿って平行な方向に流れる材料ガス流を供給するノズル213と、複数のガス供給系統180と、該ガス供給系統のいずれの一系統にもガスの供給または停止を制御する開閉弁を有して材料ガスを前記複数のチャネルへ供給するマニホールド211と、開閉弁駆動制御部300と、を含む気相成長装置において、開閉弁駆動制御部300は、各ガス系統毎にガスを時間的に分割して、かつ、該ガスを時間的に途切れなく複数のチャネルの各々に対して分散して、供給することで複数のチャネルの各々の材料ガスの流れを連続的とするように開閉弁を駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体結晶のエピタキシャル成長を行う気相成長装置、特に2フローリアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
エピタキシャル成長(気相成長)を行う結晶成長装置は、その反応容器(リアクタ)内に導入された反応ガス(材料ガス)が、加熱された基板(ウエハ)上で熱分解反応して、化合物やその固溶体結晶となり、その時基板の結晶面方位を維持したまま同じ結晶面の単結晶層が該基板上に成長するようにした気相成長装置である。
【0003】
気相成長反応装置のうち、2フローリアクタでは、ウエハ上の材料ガスの層流と押さえガス流の合成流で成膜ガス流が形成され、材料ガスは基板と平行に、かつ直上に流される。そして、押さえガス流は材料ガス流に垂直、または垂直から40°程度まで傾けた角度で流される。その結果、材料ガスが基板に押し付けられるように流れる。この2つのガス流(フロー)構成により、例えば、GaN結晶成長において、材料ガスが基板上で高温1000℃程度になり約4.5倍の体積膨張が起こっても、基板上で安定的な材料ガス流が保たれる。
【0004】
図1は従来の2フローリアクタの排気可能な反応容器(図示せず)の内部構造を示す概略断面図である。同図において、213は材料ガスノズルであり、214は押さえガス噴出器であり、217は材料ガスを基板に水平に誘導するためのフロー補助板であり、216はサセプタであり、215は半導体の基板であり、220は遮熱板であり、219は加熱器であり、218は水冷ジャケットである。
【0005】
2フローリアクタは、横形の成長炉として構成されたもので、反応容器は大気を遮断できる構造となっている。円盤状のSiCコートグラファイトから成るサセプタ216が回転自在に配置され、このサセプタ216上に半導体基板215が載置される。基板215の中央部上方に押さえガス噴出器214が配置される。
【0006】
材料ガスノズル213は、基板215の全面に沿って材料ガスの層流を、サセプタから離れて基板215の中心へ向けて水平に供給する。
【0007】
押さえガス噴出器214は、材料ガスの層流をサセプタ216と基板215の全面に押さえる押さえガスを供給する。
【0008】
サセプタ216は加熱器219により輻射加熱されており、該サセプタ216上にセットされた基板215にエピタキシャル成長による薄膜が形成される。
【0009】
具体的には、材料ガスノズル213からの材料ガス流(フロー)としては、結晶成膜材料であるTMGa(トリメチルガリウム)、NH(アンモニア)およびキャリアガスであるH(水素)またはN(窒素)の混合ガスを基板215の上面に平行に吹付ける。
【0010】
押さえガス噴出器214からの押さえガス流(フロー)としては、基板215を覆う面積で、基板と垂直からやや斜めの角度θ(0°≦θ<40°)にH、Nまたはその混合ガスを吹付ける。
【0011】
サセプタ216は、円盤形状をしており中心に回転軸を持ち、10回/min〜30回/minで回転できる。またフロー補助板217は、サセプタに取り付けられており一緒に、回転する。また加熱器219は、サセプタ下面に取り付けられており、サセプタより若干大きくサセプタを均一な温度に加熱できる。
【0012】
遮熱板220は、加熱器の外周に位置し、加熱器の輻射熱でノズル213が加熱されないように遮断する。なお、遮熱板220の外周に水冷ジャケット218が設けると更に断熱性は向上する。また、水冷ジャケット218の上端はフロー補助板217の直下まで延長されている。但し、フロー補助板217の回転を妨げないように僅かな隙間を設けてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−173981
【特許文献2】特開2009−272496
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
2フローリアクタを用いた例えば有機金属気相成長(MOCVD)法によれば、図2に示すように、基板215上に沿ってガスを流した場合、材料ガスフローの速い流れの層と、この流れの層下の基板表面上に遅い流れの境界層(淀み層)が形成される。結晶成長において、材料ガス分子は速い流れの層から境界層へ供給され境界層で拡散して熱分解を伴って、基板上の結晶成長に至る。
【0015】
材料ガスの濃度はノズル近くの上流部で高く、離れた下流部で消費された分だけ低くなる。よって、基板上のエピタキシャル層は、ノズル側前方の上流部の膜厚が厚く、ノズルから遠い後方の下流部の膜厚が薄くなる。即ち、境界層上を流れる材料ガス流中の材料ガス濃度によりエピタキシャル層の膜厚は左右される。そこで、基板を回転させて膜厚の均一化を図っている。しかし、基板の回転のみでは、基板中央部分と基板周辺部とで膜厚は均一とはならない。理由を以下に説明する。
【0016】
基板表面に対して材料ガス流(フロー)を水平に流す様式の結晶成長装置においては、図2に示すように境界層(淀み層)のガス温度は、ノズルの近い側の上流から遠方の下流に向かって加熱される。その温度勾配は、フロー補助板217上で200℃程度になり、サセプタ216周縁にて400℃〜600℃の高温に至り、更にサセプタ温度(基板温度)と同等になり飽和する。ここで、材料ガス(例えばTMGaとNH)は400℃〜450℃を境に熱分解を開始する。この材料ガスが熱分解を開始する温度の分布線を材料ガス分解熱等温度線と呼ぶことにする(なお、等温度線と省略する場合もある)。
【0017】
ここで、図3のように円形基板を成長基板として用いる場合、基板の均熱性の作りやすさから、サセプタ216および加熱器219は円形に構成される。この場合の等温度線は、加熱器219の形状に沿った円弧状となる。
【0018】
ここで、この場合の膜厚分布を検討する。例えば、材料ガス流路上のGaN系結晶膜厚として、図4(A)に示すようにノズル213からの材料ガス流路F1(基板215中心)、F2(基板215中心からの第1半径位置)、F3(基板215中心からの第1より遠い第2半径位置)を考える。ガス材料分解熱等温度線(cp1、cp2、cp3)によりガス材料分解が始まる。材料ガス層流において基板直径の両端へ行くほど(材料ガス流路F2、F3)、基板エリアの中心線CL上では等温度線と近くなる。このため、材料ガスが消費されていない分、両端側が厚く堆積される。したがって、回転の結果、基板中央よりも基板周辺部のほうが厚膜になる。具体的に、基板中心線CLを通り流路F1、F2、F3との交点CL1、CL2、CL3の膜厚は図4(d)のグラフに示すように、流路の基板両端側程厚くなる(t(CL))。かかるGaN層の凹状膜厚分布は中央部と周辺部で約10%程度の差異となる場合がある。図4(a)(b)(c)のグラフは、基板が回転しない場合の材料ガス流路F1、F2、F3上の膜厚分布(t(cp1)、t(cp2)、t(cp3))を示す。ノズル側の流路上流部の膜厚が厚く、下流部の膜厚が薄くなる。が、基板が回転する場合、上流側と下流側が回転毎に入替るので、基板の回転軸を中心とした円周上では、膜厚が平均化(t(CL1)、t(CL2)、t(CL3))される。ところが、熱等温度線が円弧状になっている為に、材料ガス流路F1、F2、F3上の膜厚はこの順に厚くなる(t(CL1)<t(CL2)<t(CL3))。結果、熱等温度線が円弧状の場合、基板回転しても膜厚均一にならず凹状になる(特許文献1、2、参照)。
【0019】
特許文献1に開示の技術では、その膜厚均一化の解決策として基板の半分よりもノズルから遠い位置で第2のガスを噴射し原料ガスを希釈することで膜厚の分布を低減することを提案している。しかし、材料ガスノズルから噴き出した材料ガスフロー(層流)を乱し、良好な2次元結晶成長過程を阻害する。また、第2の噴射口から基板に吹き付けるガスで、基板表面温度が回転周期で不均一化し、結晶性が低下する問題がある。
【0020】
特許文献2に開示の技術では、基板上の成長膜厚がその中央が凹になる問題を解決するため、複数のノズルからの複数の材料ガスの流量を成長中に変更制御(成長中に動的変化)する方法を提案している。しかし、材料ガスの流量を変化させる方法は基板表面温度が時間的に変化するために結晶性が低下する問題がある。さらに、特許文献2開示の方法は、早い材料ガス流部分と遅い材料ガス流部分で材料供給速度を変えて成長速度差を付けノズルからの材料ガス流を変更制御するので、単一材料ガスから結晶成長する場合には適用できるが、化合物半導体の成長には不向きである。化合物結晶成長においてはガスフローの速い部分と遅い部分では、結晶性の不均一化が起こる。この不均一化が原因となり組成の不均一化や不純物濃度の不均一化も発生する。
【0021】
またさらに、特許文献2開示先行文献の方法はガス材料のみを使用する方法なので、ガス供給源において、流量調整器のみでガス材料の供給量変更が可能である(CVD法)。即ち流量調整器の1次側の圧力管理は流量調整器の動作差圧が確保できれば良い程度である。しかし、バブリングによるガス化工程を要するMOCVD法では、分流装置の1次側圧力変動が有機金属材料のバブリング安定性を損ない、供給量が不安定になる問題がある。
【0022】
そこで、本発明は、エピタキシャル成長に必要とするガスフローに基づいた、途切れない制御など成長原理に鑑み、GaN層の凹状膜厚分布は中央部と周辺部で結晶成長層の膜厚均一性を向上させることができ、歩留まりが高い気相成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の気相成長装置は、基板を保持し、かつ、基板を加熱および回転させるサセプタと、複数のチャネルを含み、かつ、基板の上面に沿って基板の上面に平行な方向に流れる材料ガス流を供給するノズルと、複数の材料ガスのガス供給部からノズルへ材料ガスを供給する複数のガス供給系統と、複数のガス供給系統とノズルの間に設けられ、かつ、複数のガス供給系統のいずれの一系統も、複数のチャネルの各々との間に材料ガスの供給または停止を制御する開閉弁を有し、材料ガスを複数のチャネルへ供給するマニホールドと、開閉弁を駆動制御する開閉弁制御部と、を含み、開閉弁制御部は、複数のガス供給系統の各々毎に材料ガスを時間的に分割し、分割された材料ガスを時間的に途切れなく複数のチャネルの各々に対して供給することで複数のチャネルの各々の材料ガスの流れを連続的とし、かつ、複数のチャネルの各々の材料ガスの濃度を設定するように開閉弁を駆動制御すること、を特徴とする。かかる構成によれば、基板上の材料ガス流速を一定に保ちつつガス濃度を変えることができる。すなわち、基板成長面内のガス流速が変化しないので、結晶性の不均一化を発生させない。このマニホールドは、動作差圧を必要としない電磁式の開閉弁を用い、シークエンスで常に何れかの開閉弁が開くように制御しているので、ガス供給系統の圧力変動がなく、安定した有機金属材料のバブリングが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の2フローリアクタの内部構造を示す概略断面図である。
【図2】従来の2フローリアクタにおけるサセプタおよび基板の概略断面図である。
【図3】従来の2フローリアクタのサセプタとノズルの関係を示す概略上面図である。
【図4】従来の2フローリアクタにおけるサセプタおよび基板上の熱等温度線と膜厚分布を説明するための図である。
【図5】本発明による本実施形態の2フローリアクタの概略構成を示す構成図である。
【図6】本発明による本実施形態の2フローリアクタにおけるノズルチャネルとマニホールドの構造を説明するための構成図である。
【図7】本発明による本実施形態の2フローリアクタにおけるノズルチャネルを説明する概略断面図である。
【図8】本発明による本実施形態の2フローリアクタにおける開閉弁制御部の制御下でのマニホールドの開閉弁制御シークエンスを示すタイミングチャートである。
【図9】本発明による本実施形態の2フローリアクタにおける開閉弁制御部の制御下でのマニホールドの開閉弁制御シークエンスを示すタイミングチャートである。
【図10】本発明による本実施形態の2フローリアクタにおける開閉弁制御部の制御下でのマニホールドの開閉弁制御シークエンスを示すタイミングチャートである。
【図11】本発明による本実施形態の2フローリアクタにおける開閉弁制御部の制御下でのマニホールドの開閉弁制御シークエンスを示すタイミングチャートである。
【図12】本発明による本実施形態の2フローリアクタにおける開閉弁制御部の制御下でのマニホールドの開閉弁制御シークエンスを示すタイミングチャートである。
【図13】本発明による本実施形態の2フローリアクタにおける開閉弁制御部の制御下でのマニホールドの開閉弁制御シークエンスを示すタイミングチャートである。
【図14】本発明による実施形態の2フローリアクタにおけるサセプタおよび基板上の熱等温度線と膜厚分布を説明するための図である。
【図15】本発明による本実施形態の変形例の2フローリアクタにおけるノズルチャネルとマニホールドの構造を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明による一実施形態の装置について、図面を用いて説明する。
【0026】
図5は、本実施形態の2フローリアクタの概略を示す構成図を示す。2フローリアクタ装置は、図に示すように、主に、ガス供給部180、リアクタ部190、並びにガス供給部180およびリアクタ部190特にノズル213の間に挿設されたマニホールド211で構成されている。
【0027】
(ガス供給部180)
図5に示すように、ガス供給部180は、結晶成長材料ガスである有機金属化合物を気化する機能と、気化した有機金属ガスと水素化物ガス等の流量を制御しリアクタ部190へ供給する機能を有する。リアクタ部190へのガス供給系統は主に、有機金属材料ガス供給系統181、第1水素化物ガス供給系統182、第2水素化物ガス供給系統183、押さえガス供給系統184の4系統で構成される。
【0028】
ガス供給部180は、窒素ガス(N)供給源11と、水素ガス(H)供給源12と、TMGa(トリメチルガリウム)供給源13と、TMAl(トリメチルアルミニウム)供給源14と、Cp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)供給源15と、TEGa(トリエチルガリウム)供給源16と、TMIn(トリメチルインジウム)供給源17と、第1アンモニアガス(NH)供給源18と、第2アンモニアガス(NH)供給源19と、シランガス(SiH)供給源20と、を含む。
【0029】
水素ガス供給源12はバブリング用としてTMGa供給源13とTMAl供給源14とCp2Mg供給源15へ接続されている。窒素ガス供給源11はバブリング用としてTEGa供給源16とTMIn供給源17へ接続されている。水素ガス供給源12は、圧力調整弁222を介して排気ポンプ223が接続されているベント系統へ流量調整器200を介して接続されている。かかるベント系統には、TMGa供給源13とTMAl供給源14とCp2Mg供給源15とTEGa供給源16とTMIn供給源17と第1アンモニアガス供給源18と第2アンモニアガス供給源19とシランガス供給源20とが、それぞれガス供給弁203a、204a、205a、206a、207a、208a、209a、210aを介して接続されている。
【0030】
有機金属材料ガス供給系統181には、TMGa供給源13とTMAl供給源14とCp2Mg供給源15とTEGa供給源16とTMIn供給源17がそれぞれガス供給弁203b、204b、205b、206b、207bを介して接続されている。窒素ガス供給源11は、流量調整器201aおよび供給弁202aを介して有機金属材料ガス供給系統181へ接続されている。水素ガス供給源12も、流量調整器201bおよび供給弁202bを介して有機金属材料ガス供給系統181へ接続されている。
【0031】
第1水素化物ガス供給系統182には、第1アンモニアガス供給源18とシランガス供給源20がそれぞれガス供給弁208b、210bを介して接続されている。窒素ガス供給源11は、流量調整器201cおよび供給弁202cを介して第1水素化物ガス供給系統182へ接続されている。水素ガス供給源12も、流量調整器201dおよび供給弁202dを介して第1水素化物ガス供給系統182へ接続されている。
【0032】
第2水素化物ガス供給系統183には、第2アンモニアガス供給源19とシランガス供給源20がそれぞれガス供給弁209b、210cを介して接続されている。窒素ガス供給源11は、流量調整器201eおよび供給弁202eを介して第2水素化物ガス供給系統183へ接続されている。水素ガス供給源12も、流量調整器201fおよび供給弁202fを介して第2水素化物ガス供給系統183へ接続されている。
【0033】
本実施形態においては、有機金属材料ガス供給系統181、第1水素化物ガス供給系統182、第2水素化物ガス供給系統183は、材料ガスを含む流量を等価に制御または調整する。例えば、材料ガス総流量が10L/minならば、3.33L/min、3.33L/min、3.33L/minに制御または調整する。これは、ノズル213の各チャネルからの噴出流量を一定に保つためである。
【0034】
押さえガス供給系統184には、窒素ガス供給源11が、流量調整器201gおよび供給弁202gを介して接続され、水素ガス供給源12も、流量調整器201hおよび供給弁202hを介して接続されている。
【0035】
(リアクタ部190)
図5に示すように、リアクタ部は、主に、窒素ガス供給源11に接続されている反応容器212内に配置された、主に、複数のチャネルからなるノズル213、押さえガス噴出器214、基板215、サセプタ216、フロー補助板217、水冷ジャケット218、加熱器219、遮熱板220で構成される。反応容器212には、排気口224が設けられ、圧力調整弁222を介して排気ポンプ223が接続されている。
【0036】
リアクタ部190は、ガス供給部180から送気された材料ガスを基に、単結晶基板上に半導体単結晶を成長させる機能を有する。有機金属材料ガス供給系統181と第1水素化物ガス供給系統182と第2水素化物ガス供給系統183は、マニホールド211で合流し、ノズル213へ接続されている。押さえガス供給系統184はガス噴出器214へ接続されている。
【0037】
第1のガス流(フロー)としてノズル213のチャネルより、例えば、結晶成膜材料であるTMGa(トリメチルガリウム)、NH(アンモニア)およびキャリアガスであるH(水素)またはN(窒素)の混合ガスを基板215の上面に平行に吹付ける。
【0038】
第2のガス流(フロー)として押さえガス噴出器214より、基板215を覆う面積で、基板と垂直からやや斜め(0°≦θ<40°)にH、Nまたはその混合ガスを吹付ける。
【0039】
円形サセプタ215は、その中心の回転軸が基板回転装置221に接続され、10〜30回/minで回転される。また、フロー補助板217は、サセプタに組み合わせれており一緒に回転する。また加熱器219は、サセプタ下面に取り付けられており、サセプタより若干大きくサセプタを均一な温度に加熱する。加熱器219が加熱する範囲の形状は円形となる。
【0040】
(マニホールド211)
マニホールド211は、図5に示すように、ガス供給部180とノズル213の間に設置されている。
【0041】
図6に示すように、マニホールド211は、流入側3系統(有機金属材料ガス供給系統181、第1水素化物ガス供給系統182、第2水素化物ガス供給系統183)と送気側3系統の接続ラインn1n6、n2n5、n3n4を備え、流入側3系統からのガスを複数の開閉弁の開閉で送気側3系統に分割できる配管および開閉弁の構成になっている。すなわち、有機金属材料ガス供給系統181と第1水素化物ガス供給系統182と第2水素化物ガス供給系統183は、それぞれ独立に開閉弁Va1、開閉弁Vb1、開閉弁Vc1を介して接続ラインn1n6へ合流されている。また、有機金属材料ガス供給系統181と第1水素化物ガス供給系統182と第2水素化物ガス供給系統183は、それぞれ独立に開閉弁Va2、開閉弁Vb2、開閉弁Vc2を介して接続ラインn2n5へ合流されている。さらに、有機金属材料ガス供給系統181と第1水素化物ガス供給系統182と第2水素化物ガス供給系統183は、それぞれ独立に開閉弁Va3、開閉弁Vb3、開閉弁Vc3を介して接続ラインn3n4へ合流されている。
【0042】
かかる開閉弁としては、電磁式の高速開閉が可能なタイプを用いる。開閉弁の開閉速度は、制御周期を考えると0.1秒から0.05秒程度が良く、0.01秒なら制御周期を短くできるので更に良い。また、この開閉弁は分割分流が目的なので完全密閉できる必要はない。
【0043】
このように、マニホールド211は、流入側3系統の各々に対して独立して送気側3系統を介してノズル213のチャネルの各々への材料ガスの供給または停止を制御する開閉弁の3群を含み、開閉弁の制御により、材料ガスをノズル213のチャネルへ供給する。
【0044】
本実施形態の装置は、開閉弁制御用の例えばマイクロコンピュータからなる開閉弁制御部300を備え、開閉弁制御部300は開閉弁Va1、Vb1、Vc1、Va2、Vb2、Vc2、Va3、Vb3、Vc3を開閉弁制御シークエンスに基づいて駆動制御して、有機金属材料ガス供給系統181と第1水素化物ガス供給系統182と第2水素化物ガス供給系統183の各々毎に材料ガスフローを時間的に分割し、分割された材料ガスフローをノズル213へ時間的に途切れのなく合流させ複数のチャネルの各々へ連続的に供給して複数のチャネルの各々の材料ガスの濃度を設定する。
【0045】
(ノズル213)
ノズル213は、図6に示すように、6個のチャネルn1、n2、n3、n4、n5、n6に分割されており、接続ラインn1n6、n2n5、n3n4側の根元でチャネルn3とn4、n2とn5、n1とn6が結合されている。複数のチャネルn1、n2、n3、n4、n5、n6は、噴出する材料ガスの層流が、基板215の中心へ向けた材料ガス流に対して対称に分割された材料ガス流となるように、基板215に平行に並設されている。すなわち、外側のチャネルn1とn6は中央のチャネルn3とn4(両者仕切りを除去してもよい)に関して対称であり、内側のチャネルn2とn5も中央のチャネルn3とn4に関して対称である。このように、6つのチャネルに分割したものを、中央部のチャネルから外側へ配置された順に2つのチャネルをそれぞれ1つに合流され、それぞれチャネルn1とn6、n2とn5、n3とn4を、マニホールドの3つの流入系統の接続ラインn1n6、n2n5、n3n4へ結合した構造とすることができる。
【0046】
本実施形態においては、例えば、ノズル幅は80mmであり、各チャネル幅は13.3mmとした。チャネル長は、電子式開閉弁の応答性が遅い場合は長くし、速い場合は短くできる。また、分割パターン(後述)の1周期時間が長い場合は長くする必要があり、短い場合は短くできる。即ち、有機金属材料ガス供給系統181、第1水素化物ガス供給系統182、第2水素化物ガス供給系統183の材料ガスの時間間隔幅が長い場合いは混合にチャネル長が長い必要があり、短い場合は混合に必要なチャネル長は短くても良い。本実施形態においては、開閉弁の応答速度0.05秒、最大周期0.45秒とし、かつチャネル長を200mmとした。なお、後述する開閉弁制御シークエンスにおける「パターン内分散化シークエンス」や、「パターン統合散在化シークエンス」を用いる場合はチャネル長が100mm程度で十分である。
【0047】
チャネルn1、n2、n3、n4、n5、n6の各々の流路内には、内部を流れる材料ガスを滞留せしめ混合する構造物を設けることが好ましい。たとえば、図7に示すように、かかる滞留構造物は、チャネル流路内の材料ガス上流に向け凸である円弧壁部を有するポケット状構造の滞留素子251や、円柱状の分流素子252とすることができる。
【0048】
マニホールド211からノズル213へ送気されてきたガスは、分流素子252により2方向に分割される、更に有機金属材料ガス供給系統181、第1水素化物ガス供給系統182、第2水素化物ガス供給系統183から交互に流入する分割されたガスフローは、滞留素子251により時間的に空間的に均一なガスに混合される。分流素子252にはドットによるベクトル散乱方式を用い、滞留素子251にはガスフロー下流側に開いた円弧状の素子を用いた。なお、時間的に空間的に均一なガスに混合される効果は、分流素子252と滞留素子251の明確な機能的境はなく双方の相互作用によるところが大きい。
【0049】
さらに、かかる滞留構造物は、マニホールド211の3系統の接続ラインn1n6、n2n5、n3n4の各々の流路内壁にも同様に設けることも好ましい。下流のノズル213のチャネル内のガスフローの整流に貢献するからである。
【0050】
(開閉弁制御シークエンス)
開閉弁制御部300が開閉弁Va1、Vb1、Vc1、Va2、Vb2、Vc2、Va3、Vb3、Vc3を制御するために実行する開閉弁制御シークエンスを、図8のタイミングチャートを用いて説明する。なお、開閉弁制御シークエンスにおいて、最小開閉時間(開状態時間または閉状態時間の単位期間)=0.05秒、分割パターンの1周期=0.45秒としてある。最小開閉時間は0.01秒〜0.05秒を使用できる。
【0051】
本発明の装置における開閉弁制御部300が実行する開閉弁制御シークエンスは、常に、マニホールド211に流入するガスの流れに途切れを与えず、かつ送気ガスに途切れを与えないように、開閉弁の3群の各々において少なくとも1つの開閉弁は開状態となっている開閉弁用の開閉パターンの組み合わせからなる。有機金属材料ガス供給系統181、第1水素化物ガス供給系統182、第2水素化物ガス供給系統183の材料ガスは、開閉弁Va1、Vb1、Vc1、Va2、Vb2、Vc2、Va3、Vb3、Vc3の開閉弁制御シークエンスにより、各ノズルチャネルに途切れることなく分割されて供給される。
【0052】
例えば、開閉弁の開状態の期間をT()として表すと、図8に示すように、開閉弁制御部300の制御の下で、有機金属材料ガス供給系統181ガスは、開閉弁Va3よりT(A1)、開閉弁Va2よりT(A2)、開閉弁Va1よりT(A3)だけ各チャネルに供給する。よって、タイミングチャートでの開閉パターンからなる分割パターンa(a分割パターン)に示されるように、有機金属材料ガス供給系統181の流入ガスは、T(A1)→T(A2)→T(A3)の順に、チャネルn3,n4→n2,n5→n1,n6へ供給するのでガス流入の途切れがない。また、送気側チャネルn3,n4(接続ラインn3n4)について見れば、T(A1)→T(C2)→T(B3)の順に有機金属材料ガス供給系統181と第1水素化物ガス供給系統182と第2水素化物ガス供給系統183のガスが順に途切れなく流れ、マニホールド211から送気される。チャネルn1,n6(接続ラインn1n6)とチャネルn2,n5(接続ラインn2n5)についても同様に途切れることなくマニホールド211から送気される。
【0053】
結果、流入側、送気側ともにガス流に途切れなく流れると同時に、ガスの分割が可能になる。送気側のガスの途切れは、基板に供給される材料ガス流の乱れを誘発し、単結晶層の結晶性の低下を初め、膜厚分布を発生させることになるが、本実施形態では、それらが発生せず、材料ガス流量を全く変えずに材料ガス濃度を変えるシステムであるので、マニホールド211の流入側および送気側ともにガス流の連続性が保たれる。
【0054】
また、本実施形態の装置において、ノズルのチャネルに供給するガス濃度は、制御される開閉弁のon(開状態)、off(閉状態)の時間比率を変えることで可能となる。すなわち、有機金属材料ガス供給系統181の開閉弁の開時間と第1水素化物ガス供給系統182の開閉弁の開時間と第2水素化物ガス供給系統183の開閉弁の開時間との比率(時分割比)を変えてガスフロー濃度を設定制御するのである。パターン周期は、開閉弁の最小開閉時間とガスフローの時分割比により決まる。例えば開閉弁の最小開閉時間が0.05秒の場合、時分割比が3:3:3ならば周期は0.45秒になる。また、時分割比が4:3:2ならば周期は最小0.45秒になる。よって、開閉弁制御部300は、マニホールドの開閉弁の所定の開閉パターンを一定の周期時間内で繰り返して、複数のチャネルの各々の材料ガスの濃度を設定する。
【0055】
本実施形態の装置において、図8に示す開閉弁制御シークエンスで結晶成長したGaN層の膜厚結果は、基板中央で5%の凸状分布となった(比較例1、参照)。
【0056】
すなわち、図8に示すa分割パターンT(A1)→T(A2)→T(A3)では分割比が4:3:2となっており、基板中央のチャネルn3,n4の開期間が最も長く、基板外側のチャネルn1,n6の開期間が最も短く、基板内側のチャネルn2,n4の開期間が中庸であるので、材料ガス濃度は、基板中央フローが最も濃く、基板外側のフローが最も薄く、基板内側では中濃度となる事になり、基板中央でGaN層膜厚の5%の凸状分布の原因であることが分かる。よって、図8の開閉弁制御シークエンス場合、時分割比4:3:2の不等長時間制御なのでaaa(凸凸凸)パターンと呼ぶことにする。
【0057】
つぎに、他の例として、不等長時間制御でない例えば等長時間制御も、図9に示す開閉弁制御シークエンスが本実施形態の装置において実行可能である。この場合では図9に示す分割パターンb(b分割パターン)のT(A1)→T(A2)→T(A3)の順では時分割比が3:3:3となっており、全チャネルの開期間で等価であり、材料ガスフロー濃度も基板上で一様となり、従来の結晶成長と変わらない。図9の開閉弁制御シークエンスは、従来と同じく均等なガス濃度で材料ガスを、本実施形態の方法で再現したものとなり、実際、結晶成長したGaN層の膜厚分布は基板中央で10%の凹状分布となる(比較例2、参照)。よって、図9の開閉弁制御シークエンス場合、時分割比3:3:3の等長時間制御なので、bbb(凹凹凹)パターンと呼ぶことにする。
【0058】
図8に示すa分割パターンと図9に示すb分割パターンを混在させた開閉弁制御シークエンスを実行すれば、異なる分割比を組み合わすことで結晶膜厚の均一化が可能となることが分かる。例えば、図9の3:3:3の割合の場合に膜厚分布が10%の差異を有する凹状になり、図8の4:3:2の割合の場合に膜厚分布が5%の差異を有する凸状になる場合は、3:3:3の比を総成長時間の1/3とし4:3:2の比を総成長時間の2/3とすれば膜厚分布は均一化される。
【0059】
さらに、例えば、図10に示す開閉弁制御シークエンスでは不等時間制御と等長時間制御を混在させている。このパターンは、基板中央凸状となるa分割パターンを2回に、凹状となるb分割パターンを1回の比率で実施したaab(凸凸凹)シークエンスである。繰返しパターンがa×2+b×1となるので、膜厚が(+5%)×2/3+(−10%)×1/3=0%となり、GaN層の膜厚分布は補正され均一化される。図8に示すa分割パターンと図9に示すb分割パターンを混在させたパターン(パターン混在シークエンスと呼ぶことにする)により結晶膜厚の均一化が可能となるのである。よって、かかるパターン混在シークエンスにはaab(凸凸凹)の他、aba(凸凹凸)、baa(凹凸凸)などがある。
【0060】
(パターン内分散化シークエンス)
時分割した材料ガスフローを時間混合して供給する本実施形態は、材料ガスをノズル内に滞留させて、材料ガスフローを空間的に均一に混合させている。しかし、シークエンス周期が長くなると、混合性が低下し、結果、成長結晶の膜質が低下する。そこで、分割パターンを開閉弁の最小開閉時間まで時間軸上で細分化し、パターン内で分散化することで、ノズルへ供給されるガス種の時間間隔を短くするのである。これにより、材料ガスの混合性は向上し、ガス濃度をさらに均一化できる。すなわち、マニホールド211の開閉弁の開閉パターンが、開閉器の開閉最小時間単位で一定の周期時間内で、細分化されているのである。
【0061】
例えば、図10に示すパターン混在シークエンスaab(凸凸凹)のb分割パターンのb部を最小開閉時間を分散化したものが、図11に示す開閉弁制御シークエンスである。図11のようなシークエンスをパターン内分散化シークエンスと呼ぶことにするが、その一例が図11ということである。このパターン混在シークエンスにより、aab分割パターンにおけるb部の材料ガスフローの時間分割幅が細かくなり、材料ガスのノズルでの混合性が向上する。
【0062】
また、図12に示すマニホールド211の開閉弁制御シークエンスは、図10に示すパターン混在シークエンスaab(凸凸凹)のb分割パターンのb部とa分割パターンのa部をそれぞれ最小開閉時間を分散化したパターン(パターン内分散化シークエンスの一例)となっている。これで、aab分割パターンのb部同様にa部も材料ガスフローの時間分割幅が細かくなり、材料ガスのノズルでの混合性が向上する。a部の最小開閉時間のパターンは、b部の「3」が「1」に置き換わったパターンであることが解る。図12に示すパターン内分散化シークエンスにより、材料ガスの時間分割幅は、最大0.10秒(2単位期間)まで短縮できる。
【0063】
さらに、図13に示すマニホールド211の開閉弁制御シークエンスは概略は上記aab(凸凸凹)パターンであるが、各分割パターン部分は細分化と分散化と散在化とがなされたパターン(パターン統合散在化シークエンスの一例)となっている。
【0064】
すなわち、全体の散在化がなされ、aab分割パターンを1周期と考え、a部の最小開閉時間を散在化したのである。これにより、材料ガスの時間分割幅は0.05秒(1単位期間)まで短縮される(最小開閉時間と等しい)。このパターン統合散在化シークエンスにて、材料ガスのノズル部での混合性は最も向上する。すなわち、マニホールド211の開閉弁の開閉パターンが、開閉器の開閉最小時間単位で一定の周期時間内で、散在化されているのである。
【0065】
このように、シークエンスパターンを統合し、開閉弁の最小開閉時間まで細分化したパターン区画を散在させることで、ノズルへ供給されるガス種の時間間隔は開閉弁の最小開閉時間まで短くできる。これにより材料ガスの混合性は一段と向上し、ガス濃度を均一化できる。
【0066】
(材料ガス分解熱等温度線)
本発明によれば、ノズルの中央チャネル(n3とn4)からの材料ガスフローの濃度を濃くし、次の中間チャネル(n2とn4)からの材料ガスフローの濃度を少し薄くし、外端チャネル(n1とn6)を薄くすることで基板上に流れる材料ガス濃度をフロー中心からフロー端にかけて薄くできる。
【0067】
マニホールド211とノズル213のチャネル等の効果により、流路F1、F2、F3に掛けてガス濃度が薄くすると、図14(A)に示すように、材料ガス分解熱等温度線が基板215に沿って屈曲していても、基板外縁と材料ガス流路F1、F2、F3が交差する地点wt1、wt2、wt3からの成長膜厚を薄くすることができる。すなわち、材料ガス流路F1、F2、F3の基板上エピタキシャル膜の膜厚は、基板回転しない場合、それぞれグラフ図14(a)、(b)、(c)に示すように、全ての流路上で同じ傾斜であるが、材料ガス流路F2、F3上の膜厚はガス濃度を制御しない場合(傾斜破線)と比較して減少することになる。そのため基板回転時には交点CL1、CL2、CL3の膜厚は全て等しくなる(t(CL1)=t(CL2)=t(CL3)=t(CL))。なお、図において、本実施形態の場合と従来との場合での基板中心線CL上の膜厚の変化を白丸と黒丸で示してある。
【0068】
結果、CL1、CL2、CL3地点上の膜厚は等価にできるので、基板回転した場合に均一化された成長膜厚が得られることになる。
【0069】
(変形例)
図15に本発明の気相成長装置の変形例、特にノズルの変形例を示す。この変形例はノズル以外、図6に示す構成と同一である。
【0070】
図15に示すように、マニホールド211を介して流入側3系統(有機金属材料ガス供給系統181、第1水素化物ガス供給系統182、第2水素化物ガス供給系統183)に接続されたノズル213の噴出口には、そのノズル長Lに対して1/4・L〜1/3・Lの長さLnでチャネル間仕切り板の存在しない筒部213nが設けられている。ノズル213のチャネル間仕切り板をノズル開口端から奥部にて終端させるとチャネル間の材料ガスが筒部213nで相互に混合し、隣り合うガス流の間における材料ガスの濃度分布がブロードになる。これによって、膜厚均一性を更に向上させることができる。
【実施例1】
【0071】
上記実施形態の2フローリアクタ装置によりGaN結晶を成長させた。
【0072】
(基板)
成長用の基板には、2インチφのc面サファイア単結晶基板、厚みt=0.43mm、面方位が<10−10>方向へ0.05°傾いた0.05°オフ基板、いわゆる(0001)0.05°off to<10−10>基板を用いた。
【0073】
(成長)
ここでは、材料ガスフローの開閉弁制御シークエンスは、図10に示す「パターン混在シークエンス」を用いた。
【0074】
基板熱処理として、ノズルからH(水素)を10L/min流し、押さえガスとしてH(水素)+N(窒素)を1:1の混合比で39L/min流し、1000℃で10分熱処理した。なお、ここでは、有機金属材料ガス供給系統181において材料ガスは10/3(L/min)、第1水素化物ガス供給系統182において材料ガスは10/3(L/min)、第2水素化物ガス供給系統183において材料ガスは10/3(L/min)とした。
【0075】
緩衝層の形成として、ノズルからTMGa(トリメチルガリウム)を20μmol/min、NH(アンモニア)2L/min、そして総量が10L/minになるようにH(水素)を加えて流した。押さえガスにはH(水素)+N(窒素)を1:1の混合比で30L/min流し、成長温度約550℃で10分成長し、低温GaN層を成長した。なお、ここでは、有機金属材料ガス供給系統181において材料ガスは10/3(L/min)、第1水素化物ガス供給系統182において材料ガスは10/3(L/min)、第2水素化物ガス供給系統183において材料ガスは10/3(L/min)とし、有機金属材料を有機金属材料ガス供給系統181より供給し、アンモニアは第1水素化物ガス供給系統182と第2水素化物ガス供給系統183にて等分して供給した。
【0076】
緩衝層の熱処理として、ノズルからH(水素)を10L/min流し、押さえガスとしてH(水素)+N(窒素)を1:1の混合比で30L/min流し、1050℃で10分熱処理し低温GaN層を熱処理した。なお、ここでは、有機金属材料ガス供給系統181において材料ガスは10/3(L/min)、第1水素化物ガス供給系統182において材料ガスは10/3(L/min)、第2水素化物ガス供給系統183において材料ガスは10/3(L/min)とした。
【0077】
高温GaN層の形成処理として、次に、ノズルよりTMGa(トリメチルガリウム)を40μmol/minとNH(アンモニア)4L/min、総量が10L/minになるようにH(水素)を加えて流した。押さえガスにはH(水素)+N(窒素)を1:1の混合比で30L/min流した。成長温度約1050℃で2時間成長し、膜厚約6.5μmのGaN層を形成した。なお、ここでは、有機金属材料ガス供給系統181において材料ガスは10/3(L/min)、第1水素化物ガス供給系統182において材料ガスは10/3(L/min)、第2水素化物ガス供給系統183において材料ガスは10/3(L/min)とし、有機金属材料を有機金属材料ガス供給系統181より供給し、アンモニアは第1水素化物ガス供給系統182と第2水素化物ガス供給系統183から等分に供給した。
【実施例2】
【0078】
材料ガスフローの開閉弁制御シークエンスとして図12に示す「パターン内分散シークエンス」を用いた以外、実施例1と同一の成長プロセスを実行した。
【実施例3】
【0079】
材料ガスフローの開閉弁制御シークエンスとして図13に示す「パターン統合散在シークエンス」を用いた以外、実施例1と同一の成長プロセスを実行した。
【0080】
(比較例1)
材料ガスフローの開閉弁制御シークエンスとして図8に示す「aaa(凸凸凸)パターン」を用いた以外、実施例1と同一の成長プロセスを実行した。但し、成長時間は1時間とし、膜厚約3μmで成長した。
【0081】
(比較例2)
材料ガスフローの開閉弁制御シークエンスとして図9に示す「bbb(凹凹凹)パターン」を用いた以外、実施例1と同一の成長プロセスを実行した。
(実施結果:膜厚分布比較)
比較例と実施例で得たGaN層の膜厚分布の比較を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
*上記の膜厚は中央部(膜厚中心値)と周囲部(基板外周より3mm内側(膜厚周囲値)で比較した。差異は(式1)に基づき%で記載した。
【0084】
*差異(%)={|(周囲部−中央部)|/(周囲部と中央部のうち薄い側の膜厚)}×100・・・(式1)。
【0085】
実施例1〜3の膜厚分布は、2%程度以内と良好なGaN層の膜厚分布を得た。
【0086】
比較例1は、材料ガスの分割比を4:3:2のパターンで実施した成長であった。全てをこのパターンで成長すると、5%の分布を持つ凸状の膜厚分布となった。
【0087】
また、比較例2は、従来装置の2フローリアクタで成長したものであった。分割比は3:3:3のパターンで実施した。全てをこのパターンで成長すると10%の分布を持つ、凹状の膜厚分布となった。
【符号の説明】
【0088】
180…ガス供給部
181…有機金属材料ガス供給系統
182…第1水素化物ガス供給系統
183…第2水素化物ガス供給系統
190…リアクタ部
211…マニホールド
212…反応容器
213…ノズル
214…押さえガス噴出器
215…基板
216…サセプタ
217…フロー補助板
300…開閉弁制御部
n1n6、n2n5、n3n4…接続ライン
Va1、Va2、Va3…有機金属材料ガス供給系統開閉弁
Vb1、Vb2、Vb3…第1水素化物ガス供給系統開閉弁
Vc1、Vc2、Vc3…第2水素化物ガス供給系統開閉弁
n1、n2、n3、n4、n5、n6…チャネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持し、かつ、前記基板を加熱および回転させるサセプタと、
複数のチャネルを含み、かつ、前記基板の上面に沿って前記基板の上面に平行な方向に流れる材料ガス流を供給するノズルと、
複数の材料ガスのガス供給部から前記ノズルへ前記材料ガスを供給する複数のガス供給系統と、
前記複数のガス供給系統と前記ノズルの間に設けられ、かつ、前記複数のガス供給系統のいずれの一系統も、前記複数のチャネルの各々との間に材料ガスの供給または停止を制御する開閉弁を有し、前記材料ガスを前記複数のチャネルへ供給するマニホールドと、
前記開閉弁を駆動制御する開閉弁制御部と、を含み、
前記開閉弁制御部は、前記複数のガス供給系統の各々毎に前記材料ガスを時間的に分割し、分割された材料ガスを時間的に途切れなく前記複数のチャネルの各々に対して供給することで前記複数のチャネルの各々の前記材料ガスの流れを連続的とし、かつ、前記複数のチャネルの各々の前記材料ガスの濃度を設定するように前記開閉弁を駆動制御すること、を特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記開閉弁制御部は、前記マニホールドの前記開閉弁の開閉パターンを一定の周期時間内で繰り返して、前記複数のチャネルの各々の前記材料ガスの濃度を設定することを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記マニホールドから前記複数のチャネルへの接続ラインまたは複数のチャネルの各々の流路内に設けられた、内部を流れる材料ガスを滞留せしめ混合する構造物を有することを特徴とする請求項1または2に記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記複数のチャネルは、前記材料ガスの層流を、前記基板の中心へ向けた材料ガス流に対して対称に分割された材料ガス流として、噴出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の気相成長装置。
【請求項5】
前記複数のガス供給系統の少なくとも1つが有機金属材料ガスを供給する系統であり、少なくとも1つが水素化物ガスを供給する系統であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の気相成長装置。
【請求項6】
前記有機金属材料ガス材料がトリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムの何れか1つ以上であり、水素化物ガスがNHを含んだガスであることを特徴とする請求項5に記載の気相成長装置。
【請求項7】
更に、前記材料ガス流を前記サセプタと前記基板の上面に押さえる押さえガスを供給する押さえガス噴出器を前記サセプタの上方に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の気相成長装置。
【請求項8】
気相成長装置の反応容器内において材料ガスの層流を基板上に水平に供給するノズルであって、複数のチャネルと前記複数のチャネルに対応した複数の開口部を有し、前記複数のチャネルの内部に、内部を流れる材料ガスを混合する構造物を有することを特徴とするノズル。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1に記載の気相成長装置を用いて基板上に結晶を成長するに際して、結晶の厚みの分布が前記基板の中央に対して前記基板の外周が厚くなる第一の開閉弁用開閉パターンと、前記基板の中央に対して前記基板の外周が薄くなる第二の開閉弁用開閉パターンとを決定し、第一の開閉弁用開閉パターンと第二の開閉弁用開閉パターンとを所定の比率で混合した第三の開閉弁用開閉パターンに従って前記開閉弁を駆動し、結晶の厚みの分布が前記基板の中央に対して前記基板の外周が略同一となる結晶を成長することを特徴とする気相成長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−192727(P2011−192727A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56044(P2010−56044)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】