説明

気相成長装置

【課題】異なる組成の半導体層のそれぞれを、高面内均一性及び高再現性で形成できる気相成長装置を提供する。
【解決手段】III族原料ガスとV族原料ガスとを用いて基板上に窒化物系半導体層を気相成長させる気相成長装置が提供される。気相成長装置は、基板が配置される反応室と、反応室に連通し、III族及びV族原料ガスのいずれか一方を基板に向けて供給する第1ガス供給部と、反応室に連通し、III族及びV族原料ガスのいずれか他方を基板に向けて供給する第2ガス供給部と、を備える。第1及び第2ガス供給部の少なくともいずれかは、III族及びV族原料ガスを混合する混合部を有する。ガス供給部は、III族及びV族原料ガスの一方を供給して第1半導体層を成長させる動作と、混合されたガスを供給してIII組成比が第1半導体層とは異なる第2半導体層を成長させる動作と、を切り替え可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子には、III族元素の一部をAl及びInなどで置換したAlGaNやInGaN等の窒化物系半導体が用いられる。
【0003】
有機金属化学気相堆積法を用いてAlGaNを成長させる際に、III族原料ガスとV族原料ガスが装置内で過度に混合されると、基板上での成長に寄与しない反応生成物が生成し、Al組成に限界が生じ、また、組成及び膜厚の面内均一性及び再現性が低くなる。このため、III族とV族の原料ガスを基板近傍まで分離して導入する構成が採用される。例えば、特許文献1には、III族源と窒素源とを含む原料ガスを基板面にほぼ平行に且つ層状に導入する技術が開示されている。さらに、特許文献2には、気相反応をより均一な条件にするために、気相成長装置の仕切り板の終端部に原料ガスを混合するための貫通口を設ける技術が開示されている。
【0004】
一方、例えば、InGaNの成長の際には、V族原料ガスの流量比率が高いことが望ましいが、III族とV族の原料ガスを基板近傍まで分離して導入する構成で流量比率を高めると、乱流が発生し、面内均一性及び再現性が低下する。従来技術では、異なる組成の半導体層のそれぞれを適正な条件で成長させることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−354456号公報
【特許文献2】特開2007−317770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、異なる組成の半導体層のそれぞれを、高面内均一性及び高再現性で形成できる気相成長装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、III族原料ガスとV族原料ガスとを用いて基板上に窒化物系半導体層を気相成長させる気相成長装置が提供される。前記気相成長装置は、前記基板が配置される反応室と、前記反応室に連通し、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスのいずれか一方を前記基板に向けて供給する第1ガス供給部と、前記反応室に連通し、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスのいずれか他方を前記基板に向けて供給する第2ガス供給部と、を備える。前記第1ガス供給部及び前記第2ガス供給部の少なくともいずれかのガス供給部は、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスを混合させ、前記混合された前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスを前記少なくともいずれかのガス供給部の前記反応室の側に向けて供給する混合部を有する。前記少なくともいずれかのガス供給部は、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスのいずれか一方を前記基板に向けて供給して第1半導体層を成長させる第1動作と、前記混合部で混合された前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスを前記基板に向けて供給してIII族組成比が前記第1半導体層におけるIII族組成比とは異なる第2半導体層を成長させる第2動作と、を切り替えて実施可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異なる組成の半導体層のそれぞれを、高面内均一性及び高再現性で形成できる気相成長装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】気相成長方法を示すフローチャート図である。
【図2】半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図3】気相成長装置を示す模式図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は気相成長方法を示す模式図である。
【図5】比較例の気相成長方法を示す模式図である。
【図6】気相成長装置を示す模式図である。
【図7】気相成長方法を示すフローチャート図である。
【図8】気相成長方法を示すフローチャート図である。
【図9】気相成長装置を示す模式図である。
【図10】図10(a)及び図10(b)は気相成長方法を示す模式図である。
【図11】気相成長装置を示す模式図である。
【図12】気相成長装置を示す模式図である。
【図13】図13(a)及び図13(b)は気相成長方法を示す模式図である。
【図14】気相成長装置を示す模式図である。
【図15】気相成長装置を示す模式図である。
【図16】気相成長装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る気相成長方法を例示するフローチャート図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る気相成長方法及び気相成長装置を用いて製造される半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る気相成長装置の構成を例示する模式図である。
【0012】
まず、図2により、本発明の実施形態に係る気相成長方法及び気相成長装置を用いて製造される半導体発光素子の例について説明する。半導体発光素子は、例えば、青色発光ダイオード(LED)や白色LED、青色半導体レーザ(LD)、青紫色半導体LDなどである。以下では、半導体発光素子が、青色LEDである場合として説明する。
【0013】
図2に表したように、半導体発光素子110は、基板90の上に順次積層されたバッファ層101、n型コンタクト層102、発光層103、p型電子ブロック層104及びp型コンタクト層105を含む積層構造体を有する。バッファ層101には、例えば、多結晶GaNが用いられ、n型コンタクト層102には、例えば、SiがドープされたGaNが用いられる。発光層103は、例えば、障壁層と井戸層とが交互に複数積層された量子井戸構造を有する。障壁層には例えばGaNが用いられ、井戸層には、例えば、InGaNが用いられる。p型電子ブロック層104には、例えば、Mgがドープされ、Al組成が15%のAlGaNを用いることができる。p型コンタクト層105には、MgがドープされたGaNを用いることができる。
【0014】
なお、半導体発光素子110の積層構造体においては、n型コンタクト層102の一部、並びに、発光層103、p型電子ブロック層104及びp型コンタクト層105の一部が除去されて、n型コンタクト層102の一部が露出されており、n型コンタクト層102に接続されたn側電極108と、p型コンタクト層105に接続されたp側透明電極106と、p側透明電極に接続されたp側電極107と、がさらに設けられている。
【0015】
このように、窒化物系半導体を用いた半導体発光素子に含まれる積層構造体は、一般に、GaN、並びに、III族元素の一部をAl及びInなどで置換した混晶であるAlGaN、InGaN及びAlInGaNの半導体層を含む。このような半導体発光素子の積層構造体を形成する際には、例えば有機金属化学気相堆積法(MOCVD法)が用いられ、それぞれの半導体層の組成に従って、原料ガスの種類と流量とが制御される。
【0016】
上記の半導体発光素子110においては、p型電子ブロック層104(上記の例では、Mgがドープされ、Al組成が15%のAlGaN)は、III族中におけるAl組成比が10原子パーセント以上の窒化物系半導体を含む第1半導体層である。また、井戸層(上記の例では、InGaN)は、III族中におけるAl組成比が10原子パーセント未満の窒化物系半導体を含む第2半導体層である。
【0017】
このように、半導体発光素子110は、III族中におけるAl組成比が10原子パーセント以上の窒化物系半導体を含む第1半導体層と、III族中におけるAl組成比が10原子パーセント未満の窒化物系半導体を含む第2半導体層と、を含む。
【0018】
本実施形態に係る気相成長装置は、このように、Al組成が異なる第1及び第2半導体層を基板90の上に成長させる際に用いることができる。この気相成長装置は、III族原料ガスとV族原料ガスとを用いて、基板90上に窒化物系半導体層を気相成長させる気相成長装置である。
【0019】
図3に表したように、本実施形態に係る気相成長装置210は、基板90が配置される反応室50(例えばフローチャネル)と、第1ガス供給部10と、第2ガス供給部20と、を備える。また、第3ガス供給部30をさらに含むことができる。
【0020】
第1ガス供給部10は、反応室50に連通し、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか一方を反応室50内に配置された基板90に向けて供給する第1動作と、III族原料ガス及びV族原料ガスを混合して反応室50内に配置された基板90に向けて供給する第2動作と、を切り替えて行う。
【0021】
ここで、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか一方のガスを第1原料ガスとする。III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか他方のガスを第2原料ガスとする。以下では、第1原料ガスがIII族原料ガスであり、第2原料ガスがV族原料ガスである場合として説明する。
【0022】
第2ガス供給部20は、反応室50に連通し、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか他方(第2原料ガスであり、V族原料ガス)を反応室50内に配置された基板90に向けて供給する。
【0023】
このように、第1ガス供給部10は、第1原料ガスを基板90に向けて供給する動作モードと、混合された第1原料ガスと第2原料ガスとを反応室50内に配置された基板90に向けて供給する動作モードと、で動作可能である。一方、第2ガス供給部20は、第2原料ガスを供給する。
また、第3ガス供給部30は、反応室50に連通し、ガスの流れを整えるサブフローのためのガスを基板90に向けて供給することができる。
【0024】
気相成長装置210の具体的構成についてさらに説明する。
気相成長装置210は、横型反応室を有する例である。反応室50は、例えば、方形断面を有する筒状のフローチャネルである。反応室50の筒の軸が例えば水平に配置される。反応室50においては、原料ガスの流路が形成される。反応室50の底面の側に、サセプタ91が設けられ、サセプタ91の上面に気相成長が行われる基板90が載置される。サセプタ91が自転回転することにより、基板90も自転回転することができる。
【0025】
サセプタ91の下側には、ヒータ92が設けられ、ヒータ92により、サセプタ91を介して基板90は加熱される。なお、ヒータ92は、ヒータ制御部93により制御される。
【0026】
反応室50の一端のガス導入部51から後述する原料ガスが導入され、基板90に向けて、例えば基板90の表面に対して平行な方向に原料ガスが流れ、反応室50のガス導入部51とは反対の側に設けられるガス排出部(図示しない)から、反応後の原料ガスが排出される。
【0027】
本具体例では、ガス導入部51は、仕切り板により3つに分割されている。すなわち、サセプタ91の側である下側から、順に、第2ガス導入部21、第1ガス導入部11、及び、第3ガス導入部31、が設けられている。第1ガス導入部11と第2ガス導入部21との間には、第1仕切り板11aが設けられ、第1ガス導入部11と第3ガス導入部31との間には、第2仕切り板11bが設けられている。
【0028】
第1ガス導入部11は、第1仕切り板11aと第2仕切り板11bとの間の空間を囲う。第1ガス導入部11からガスが基板90に向けて供給される。第2ガス導入部21は、第1仕切り板11aと第2ガス導入部壁21nとの間の空間を囲う。第2ガス導入部21からガスが基板90に向けて供給される。第3ガス導入部31は、第2仕切り板11bと第3ガス導入部壁31nとの間の空間を囲う。第3ガス導入部31からガスが基板90に向けて供給される。すなわち、第1ガス供給部10と第2ガス供給部20とは、互いに仕切り板(第1仕切り板11a)で区分されている。また、第1ガス供給部10と第3ガス供給部30とは、互いに仕切り板(第2仕切り板11b)で区分されている。
【0029】
第1仕切り板11aの端部11aeは、サセプタ91に近接しており、第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21の端部は、基板90に近接する。これにより、第1ガス導入部11から供給されるガスと、第2ガス導入部21から供給されるガスと、は、互いに過度に混合されることなく、これらのガスが層状になり適度に分離された状態で、基板90に向けて導入される。
【0030】
第2仕切り板11bの端部11beは、サセプタ91に近接しており、第1ガス導入部11及び第3ガス導入部31の端部は、基板90に近接する。これにより、第1ガス導入部11から供給されるガスと、第3ガス導入部31から供給されるガスと、は、互いに過度に混合されることなく、これらのガスが層状になり適度に分離された状態で、基板90に向けて導入される。
【0031】
なお、図3に示した具体例では、第1仕切り板11aの端部11aeのガス導入方向に沿った位置と、第2仕切り板11bの端部11beのガス導入方向に沿った位置と、は、同じとされているが、第1仕切り板11aの端部11aeの位置と、第2仕切り板11bの端部11beの位置と、の関係は任意である。例えば、第2仕切り板11bの端部11beのガス導入方向に沿った位置は、第1仕切り板11aの端部11aeのガス導入方向に沿った位置よりも基板90に近接していても良い。
【0032】
第2ガス導入部21には、第2配管22が接続されている。第2配管22には、例えば、図示しないバルブと図示しないマスフローコントローラとを介して、例えば、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれかが導入される。これにより、第2ガス導入部21には、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれかが、その流量が制御されて導入される。
【0033】
さらに、第2配管22には、第2バルブ23vと第2マスフローコントローラ23mとを介して、第2原料ガス配管23が接続されている。第2原料ガス配管23の第2マスフローコントローラ23mとは反対の側には、例えば、NHガスのボンベが接続される。すなわち、第2原料ガス配管23には、第2原料ガスであるV族原料ガスのNHガスが供給される。これにより、第2ガス導入部21には、第2原料ガス(この例ではV族原料ガス)であるNHガスが、流量が制御されて供給される。
【0034】
一方、第1ガス導入部11には、第1配管12が接続されている。第1配管12には、例えば図示しないバルブと図示しないマスフローコントローラとを介して、例えば、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれかが導入される。これにより、第1ガス導入部11には、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれかが、その流量が制御されて導入される。
【0035】
さらに、第1配管12には、第1バルブ13vと第1マスフローコントローラ13mとを介して、第1原料ガス配管13が接続されている。第1原料ガス配管13の第1マスフローコントローラ13mとは反対の側には、例えば、第1原料ガスであるIII族原料ガスの有機金属ガスを導入する配管が接続されている。すなわち、第1原料ガス配管13には、第1原料ガスであるIII族原料ガスの有機金属ガスが供給される。
【0036】
さらに、第1配管12には、混合用ガスバルブ43vと混合用ガスマスフローコントローラ43mとを介して、混合用第2原料ガス配管43が接続されている。この混合用第2原料ガス配管43が第1配管12に接続される位置は、第1原料ガス配管13が第1配管12に接続される位置よりも下流側である。すなわち、混合用第2原料ガス配管43は、第1原料ガス配管13と第1ガス導入部11との間において、第1配管12に接続されている。そして、第1配管12において、混合用第2原料ガス配管43と第1ガス導入部11との間には、外部混合部45(混合部)が設けられている。
【0037】
このように、気相成長装置210は、III族原料ガスとV族原料ガスとを用いて基板90上に窒化物系半導体層を気相成長させる気相成長装置であって、基板90が配置される反応室50と、反応室50に連通し、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか一方を基板に向けて供給する第1ガス供給部10と、反応室50に連通し、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか他方を基板90に向けて供給する第2ガス供給部20と、を備える。
【0038】
そして、第1ガス供給部10及び第2ガス供給部20の少なくともいずれかのガス供給部(本具体例では第1ガス供給部10)は、III族原料ガス及びV族原料ガスを混合させ、混合されたIII族原料ガス及びV族原料ガスを上記の少なくともいずれかのガス供給部(本具体例では第1ガス供給部10)の反応室50の側に向けて供給する混合部(本具体例では外部混合部45)を有し、上記の少なくともいずれかのガス供給部(本具体例では第1ガス供給部10)は、混合部で混合されたIII族原料ガス及びV族原料ガスを反応室50内に配置された基板90に向けてさらに供給可能である。
【0039】
本具体例では、上記の混合部(外部混合部45)は、第1ガス供給部10に設けられている。そして、第1ガス供給部10は、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか一方(この場合はIII族原料ガス)が導入される第1配管12をさらに有する。混合部(外部混合部45)は、第1配管12と反応室50との間に設けられる。そして、混合部(外部混合部45)の第1配管12の側に、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか他方(この場合はV族原料ガス)が導入される配管(混合用第2原料ガス配管43)が接続される。
【0040】
第1配管12において、混合用第2原料ガス配管43から第2原料ガスを導入せず、第1原料ガス配管13から第1原料ガスを導入するときは、第1ガス導入部11には、第1原料ガスが導入される。すなわち、第1ガス導入部11からIII族原料ガスが導入される。このとき、第2ガス導入部21からV族原料ガスを導入すると、III族原料ガスとV族原料ガスとのそれぞれを、異なる出口(第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21)から供給することができる。
【0041】
そして、第1配管12において、第1原料ガス配管13から第1原料ガスを導入しつつ、混合用第2原料ガス配管43から第2原料ガスを導入すると、外部混合部45において、第1原料ガスと第2原料ガスとが混合され、混合された第1原料ガス及び第2原料ガスが第1ガス導入部11に導入される。すなわち、III族原料ガスとV族原料ガスとが同じ出口(第1ガス導入部11)から供給される。なお、このとき、第2ガス導入部21から第2原料ガス(V族原料ガス)を導入しても良く、これにより、V族原料ガスの流量比率を高めることができる。
【0042】
第1ガス供給部10は、III族原料ガス及びV族原料ガスを混合させ、混合されたIII族原料ガス及びV族原料ガスを第1ガス供給部10の反応室50の側に向けて供給する混合部(外部混合部45)を有し、第1ガス供給部10は、混合部で混合されたIII族原料ガス及びV族原料ガスを反応室50内に配置された基板90に向けてさらに供給可能である。
【0043】
これにより、本具体例の気相成長装置210においては、第1ガス導入部11に、第1原料ガス(例えばIII族原料ガス)が導入される動作と、第1ガス導入部11に、混合された第1原料ガス(例えばIII族原料ガス)及び第2原料ガス(例えばV族原料ガス)が導入される動作と、の2つの異なる動作が実施できる。
【0044】
なお、外部混合部45は、例えば、第1配管12よりも断面積の大きなチャンバー構造を有することができる。これにより、第1原料ガスと第2原料ガスとの混合の効率が向上する。ただし、本発明はこれに限らず、外部混合部45の構成は任意であり、例えば、外部混合部45として、第1配管12と同じ口径の配管を用いても、十分に混合の効果が得られる。
【0045】
また、第3ガス導入部31には、第3配管32が接続されている。第3配管32には、例えば図示しないバルブと図示しないマスフローコントローラとを介して、例えば、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれかが導入される。これにより、第3ガス導入部31には、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれかが、その流量が制御されて導入される。
【0046】
さらに、第3配管32には、第3バルブ33vと第3マスフローコントローラ33mとを介して、第3原料ガス配管33が接続されている。本具体例では、第3原料ガス配管33の第3マスフローコントローラ33mとは反対の側には、例えば、NHガスのボンベが接続される。すなわち、第3原料ガス配管33には、V族原料ガスのNHガスが供給される。これにより、第3ガス導入部31にも、第2原料ガス(この例ではV族原料ガス)であるNHガスが、流量が制御されて供給されることができる。
【0047】
気相成長装置210においては、第1ガス導入部11に、第1原料ガス(例えばIII族原料ガス)が導入される動作と、第1ガス導入部11に、混合された第1原料ガス(例えばIII族原料ガス)及び第2原料ガス(例えばV族原料ガス)が導入される動作と、の2つの動作を実施できることから、この2つの動作を使い分けて窒化物系半導体層を成長させることができる。
【0048】
すなわち、気相成長装置210は、基板90が配置される反応室50と、III族原料ガスとV族原料ガスとを互いに異なる出口から、反応室50内に配置された基板90に向けて供給して、III族中におけるAl組成比が10原子パーセント以上の窒化物系半導体を含む第1半導体層を成長させる動作と、III族原料ガスとV族原料ガスとを混合して同じ出口から、基板90に向けて供給して、III族中におけるAl組成比が10原子パーセント未満の窒化物系半導体を含む第2半導体層を成長させる動作と、を行うガス供給部80と、を備える。
【0049】
ここで、ガス供給部80は、第1ガス供給部10と第2ガス供給部20とを含む。
なお、第1ガス供給部10は、第1ガス導入部11、第1配管12、第1バルブ13v、第1マスフローコントローラ13m、第1原料ガス配管13、外部混合部45、混合用ガスバルブ43v、混合用ガスマスフローコントローラ43m、及び、混合用第2原料ガス配管43を含む。
第2ガス供給部20は、第2ガス導入部21、第2配管22、第2バルブ23v、第2マスフローコントローラ23m及び第2原料ガス配管23を含む。
【0050】
すなわち、例えば、ガス供給部80は、反応室50に連通し、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか一方(例えばIII族原料ガス)を反応室50内に配置された基板90に向けて供給する第1動作と、III族原料ガス及びV族原料ガスを混合して反応室50内に配置された基板90に向けて供給する第2動作と切り替えて行う第1ガス供給部10と、反応室50に連通し、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか他方(例えばV族原料ガス)を反応室50内に配置された基板90に向けて供給する第2ガス供給部20と、を有することができる。
【0051】
なお、ガス供給部80は、第3ガス供給部30をさらに含むことができる。
第3ガス供給部30は、第3ガス導入部31、第3配管32、第3バルブ33v、第3マスフローコントローラ33m及び第3原料ガス配管33を含む。
【0052】
例えば、このような気相成長装置210を用いることで、本実施形態に係る気相成長方法を実施することができる。
すなわち、図1に表したように、本実施形態に係る気相成長方法は、反応室内に設けられた、ガス供給管の複数の出口からIII族原料ガスとV族原料ガスとを反応室50内に供給して反応室50内に配置された基板90上に窒化物系半導体層を成膜する気相成長方法であって、III族原料ガスとV族原料ガスとを互いに異なる出口(例えば第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21)から基板90に向けて供給して、III族中におけるAl組成比が10原子パーセント以上の窒化物系半導体を含む第1半導体層(例えば、p型電子ブロック層104)を成長させる工程(ステップS110)と、III族原料ガスとV族原料ガスとを混合して同じ出口(例えば第1ガス導入部11)から基板90に向けて供給して、III族中におけるAl組成比が10原子パーセント未満の窒化物系半導体を含む第2半導体層(例えばInGaNの井戸層)を成長させる工程(ステップS120)と、を備える。
【0053】
そして、第2半導体層を成長させる工程(ステップS120)は、上記の同じ出口(第1ガス導入部11)とは異なる出口(例えば第2ガス導入部21)から、III族原料ガスとV族原料ガスのいずれか一方(例えばV族原料ガス)を基板90に向けてさらに供給することができる。これにより、例えば第2原料ガス(例えばV族原料ガスであるNHガス)の総流量に対する流量比率を高くすることができる。
【0054】
ただし、本発明はこれに限らず、ステップS120において、III族原料ガスとV族原料ガスとが混合されて同じ出口(例えば第1ガス導入部11)から供給されつつ、ステップS110で用いられる2つの出口(第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21)とは別の出口から、III族原料ガスとV族原料ガスのいずれか一方(例えばV族原料ガス)を基板90に向けてさらに供給しても良い。
【0055】
以下では、ステップS110においては、III族原料ガスとV族原料ガスとが、異なる出口である第1ガス導入部11と第2ガス導入部21とからそれぞれ供給され、ステップS120においては、III族原料ガスとV族原料ガスとが混合されて同じ出口である第1ガス導入部11から供給されつつ、V族原料ガスが第2ガス導入部21から供給される例として説明する。
【0056】
図4は、本発明の実施形態に係る気相成長方法を例示する模式図である。
すなわち、図4(a)は、Al組成比が10原子パーセント以上の窒化物系半導体を含む第1半導体層を成長させる工程(ステップS110)に相当し、図4(b)は、Al組成比が10原子パーセント未満の窒化物系半導体を含む第2半導体層を成長させる工程(ステップS120)に相当する。
【0057】
図4(a)に表したように、第1半導体層の成長の際には、第1ガス導入部11から、第1原料ガスg1を基板90に向けて供給する。第1原料ガスg1には、例えば、III族原料ガスである例えばトリメチルアルミニウム(TMA)が用いられる。
【0058】
そして、第2ガス導入部21から、第2原料ガスg2を基板90に向けて供給する。第2原料ガスには、V族原料ガスであるアンモニア(NH)が用いられる。
【0059】
そして、第3ガス導入部31から第3原料ガスg3を基板90に向けて供給する。第3原料ガスには例えばNが用いられる。第3原料ガスg3は、ガスの流れを整えるサブフローとなって基板90に向けて流れる。
【0060】
第1ガス導入部11と第2ガス導入部21との間に第1仕切り板11aが設けられているので、第1仕切り板11aの端部11aeまで、第1原料ガスg1と第2原料ガスg2とは互いに分離されている。第1原料ガスg1及び第2原料ガスg2は、それぞれ第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21を出た後も、分離された状態をほぼ維持して、層流glとして基板90に到達する。このため、基板90の上面以外の不要な部分には、反応生成物が付着し難い。このため、成長させる第1半導体層において、Al組成の制御範囲が広く、任意のAl組成の半導体層を得易い。そして、基板90へは原料ガスが層流glとなって到達するため、第1半導体層における組成、及び、第1半導体層の膜厚の面内均一性は高い。そして、第1半導体層における組成、及び、第1半導体層の膜厚の再現性も良好である。
【0061】
一方、図4(b)に表したように、第2半導体層の成長の際には、第1ガス導入部11から、第1原料ガスg1と第2原料ガスg2とを混合して基板90に向けて供給する。このときの第1原料ガスg1には、例えば、III族原料ガスである例えばトリメチルインジウム(TMI)が用いられる。また、第2原料ガスg2には、V族原料ガスのNHが用いられる。すなわち、第1ガス導入部11からは、III族原料ガスのTMIと、V族原料ガスのNH3と、の混合ガスgmが基板90に向けて供給される。
【0062】
そして、第2ガス導入部21から、第2原料ガスg2として、V族原料ガスであるNHガスを供給する。
【0063】
そして、第3ガス導入部31から第3原料ガスg3(例えばN)を供給する。この場合も第3原料ガスg3は、ガスの流れを整えるサブフローとなって基板90に向けて流れる。
【0064】
Al組成比が低い第2半導体層を成長させるときには、第2半導体層の結晶性及び成長効率の観点から、総流量に対するNHガスの流量比率を高めることが望ましい。本実施形態に係る気相成長方法及び気相成長装置210においては、第2ガス導入部21からNHを供給しつつ、第1ガス導入部11からTMIとNHとの混合ガスgmを供給できるため、NHの全体に対する割合を高めることが容易になる。例えば、第2ガス導入部21から供給するNHの流量を、他のガス導入部よりも高くすると乱流が発生することがあるが、第2ガス導入部21から供給するNHの流量を、他のガス導入部と同じ程度に押さえ、乱流が発生しない流量とし、第1ガス導入部11からTMIとNHとの混合ガスgmを供給することで、乱流の発生を抑制し、層流glを維持したまま、総流量に対するNHガスの流量比率を高めることができる。
【0065】
これにより、Al組成比が低い第2半導体層をNHガスの流量比率を高めて成長させ、第2半導体層における組成及び膜厚の面内均一性を高くし、第2半導体層における組成及び膜厚の再現性を高くすることができる。
このように、本実施形態に係る気相成長方法及び本実施形態に係る気相成長装置210によれば、異なる組成の半導体層のそれぞれを、高面内均一性及び高再現性で形成できる。
【0066】
図5は、比較例の気相成長方法を例示する模式図である。
図5(a)に表したように、第1比較例の気相成長装置218においては、第1ガス導入部11は第1原料ガス(例えばTMAやTMI)を供給し、第2ガス導入部21は第2原料ガス(NH)を導入する。なお、第1比較例の方法は、特許文献1に記載されている方法に相当する。Al組成比が高い第1半導体層を成長させるときには、図4(a)に関して説明したように、本実施形態に係る気相成長装置と同様に、不要な反応生成物の生成を抑制し、第1半導体層を成長させることができる。
【0067】
しかしながら、第1比較例の気相成長装置218においては、Al組成比が低い第2半導体層を成長させるときに、NHの流量を多くすると、乱流gtが発生する。すなわち、例えば、NHを供給する第2ガス導入部21の出口の流速と、第1ガス導入部11の出口の流速と、の差により、反応室50の内部に乱流gtが発生する。例えば、全体の流量に対する第1ガス導入部11の流量が0.5以上になると、乱流gtが発生する。
【0068】
乱流gtが発生すると、基板90の表面において原料ガスの濃度分布が生じ、結果として、生成される第2半導体層の組成及び膜厚に面内むらが生じる。また、組成及び膜厚の再現性も悪くなる。また、反応室50の内壁面は、基板90と共に加熱され、その部分に反応生成物が付着し易くなる。反応生成物の付着の程度や履歴が基板近傍の温度環境を変化させ、成長させる半導体層の再現性が低くなる。また、反応生成物が所望な場所以外に生成すると、材料の利用効率が低下し、また、気相成長装置の保守も困難になる。
【0069】
図5(b)に表したように、第2比較例の気相成長装置219においては、第1ガス導入部11と第2ガス導入部21との間の第1仕切り板11aの端部11aeの近傍において、第1仕切り板11aに貫通孔11ahが設けられている。なお、第2比較例の装置は、特許文献2に記載されている装置に相当する。この場合は、第1原料ガスg1と第2原料ガスg2とが、第1ガス導入部11と第2ガス導入部21との端部付近で、段階的に互いに混合される。これにより、基板90上に成長される半導体層の組成や膜厚が基板90の面内で均一化されることがある。
【0070】
しかしながら、Al組成比が高い第1半導体層の成長のときも、Al組成比が低い第2半導体層の成長のときも、貫通孔11ahの構成は同じなので、第1半導体層と第2半導体層の両方に最適な条件で成長させることが困難である。例えば、第1半導体層の成長に最適な条件になるように貫通孔11ahを設計すると、その貫通孔11ahは、第2半導体層の成長に最適な条件ではなくなる。
【0071】
貫通孔11ahを設けた気相成長装置219においては、貫通孔11ahにより、第1原料ガスg1と第2原料ガスg2とが常時混合される。第1原料ガスg1と第2原料ガスg2とが常時混合された状態で、Al組成比が高い第1半導体層を成長させると、基板90以外の場所で反応生成物bpが生成し易くなる。そして、第1原料ガスg1と第2原料ガスg2とが常時混合された状態で、Al組成比が低い第2半導体層を成長させると、第2ガス導入部11から供給される第2原料ガス(例えばNH)の流量を高くする必要があり、乱流gtが発生し易い。このように、第2比較例の気相成長装置219においても、第1半導体層と第2半導体層の両方を適正な条件で成長させることが困難である。
【0072】
これに対し、本実施形態に係る気相成長方法及び気相成長装置210においては、Al組成比が高い第1半導体層を生成する際には、第1原料ガスと第2原料ガスとを分離した状態で基板90に向けて供給する。これにより、第1半導体層の成長において層流glが実現できる。そして、Al組成比が低い第2半導体層を成長させる際には、第2ガス導入部21から第2原料ガスを供給しつつ、第1ガス導入部11から第1原料ガスと第2原料ガスとの混合ガスgmを供給できる。このため、第2ガス導入部21から供給する第2原料ガスの流量を乱流が発生しない比較的低い流量とし、第1ガス導入部11から第1原料ガスと第2源流ガスとの混合ガスgmを供給することで、乱流の発生を抑制し、層流glを維持したまま、総流量に対するNHガスの流量比率を高めることができる。すなわち、第1半導体層の成長の際も、第2半導体層の成長の際も、層流glを実現できる。
【0073】
本実施形態に係る気相成長方法及び気相成長装置210においては、Alの組成比が高い第1半導体層の成長(ステップS110)においては、III族原料ガスと、V族原料ガスとは、第1仕切り板11aの端部11aeまで分離されて供給される。そして、Alの組成比が低い第2半導体層の成長(ステップS120)においては、III族原料ガスと、V族原料ガスとは、第1仕切り板11aの端部11aeよりも上流側(基板90に向かう方向とは逆の方向)において、混合される。このように、ステップS110とステップS120とで、第1ガス導入部11の端部と、第2ガス導入部21の端部まで、原料ガスが分離されている状態と、第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21の端部よりも手前で原料ガスが混合される状態と、の2種類の状態を用いる。
【0074】
これに対し、第1比較例においては、どの状態のときも、第1ガス導入部11の端部及び第2ガス導入部21の端部まで、原料ガスが分離されている。一方、第2比較例においては、どの状態のときも、第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21の端部よりも手前で原料ガスが混合される。
【0075】
このように、本実施形態においては、上記の2種類の状態を実現する。
これにより、Alの組成比が高い第1半導体層の成長(ステップS110)においては、III族原料ガスとV族原料ガスとを基板90の近傍まで分離して反応室50内の基板90に向けて導入することにより、TMAとNHの気相反応を抑制できるため、第1半導体層における組成比と膜厚の基板面内均一性及び再現性を確保することができる。
【0076】
さらに、Alの組成比が低い、例えばAlを含まない第2半導体層(例えばInを含む半導体層)の成長(ステップS120)においては、総流量に対するNHの流量比を高くし、III族原料ガスとV族原料ガスとを混合して基板90に向けて供給することで、乱流gtを抑制し、層流glを維持することにより、第2半導体層における組成比と膜厚の基板面内均一性及び再現性を確保することができる。
【0077】
そして、本実施形態に係る気相成長装置210を用いることで、上記のステップS110とステップS120とを、一連の動作として実行することができる。このため、第1半導体層及び第2半導体層の両方において、基板面内均一性および再現性を同時に確保し、特性の優れた発光素子を歩留まり良く製造することが可能となる。
【0078】
このように、第1半導体層及び第2半導体層の両方において、組成比及び膜厚の面内均一性を向上できる。また、第1半導体層及び第2半導体層の成長の両方において、基板90以外の部分において反応生成物が生成されることを抑制し、反応室50内の環境変化の影響を抑制して、高い再現性を長期的に維持できる。このように、異なる組成の半導体層のそれぞれを、高面内均一性及び高再現性で形成できる。
【0079】
本実施形態に係る気相成長方法及び気相成長装置210において、III族原料ガスには、III族元素を含む化合物を含有する任意のガスを用いることができる。V族原料ガスには、V族元素を含む化合物を含有する任意のガスを用いることができる。
【0080】
例えば、III族原料ガス(例えば第1原料ガス)は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムハイドライド、エチルジメチルアミンアラン、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルインジウム及びトリエチルインジウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含むことができる。
【0081】
また、V族原料ガス(例えば第2原料ガス)は、アンモニア、モノメチルヒドラジン及びジメチルヒドラジンよりなる群から選択された少なくとも1つを含むことができる。
【0082】
さらに、III族原料ガス(例えば第1原料ガス)及びV族原料ガス(例えば第2原料ガス)は、成長させる半導体層に含まれるドーパントとなる任意のドーパントガスをさらに含むことができる。このようなドーパントガスとしては、n型のドーパントとなる、例えばモノシラン(SiH)ガスを用いることができる。また、p型ドーパントとなる、例えば、ビスシクロペンタディエニールマグネシウム(CpMg)及びビスメチルシクロペンタディエニールマグネシウム(MCpMg)を用いることができる。
【0083】
(第1実施例)
以下、本発明の実施形態に係る気相成長方法及び気相成長装置210の第1実施例として、窒化物系半導体を用いた半導体発光素子110(青色発光ダイオード)の製造方法の例について説明する。
【0084】
まず、基板90をサセプタ91に載置する。基板90には、例えばサファイアが用いられる。次に、第1ガス導入部11、第2ガス導入部21及び第3ガス導入部31のそれぞれから、例えば、10L(リットル)/分の流量で水素ガスを導入しつつ、反応室50の内部の圧力を500Torrに保持する。次に、ヒータ92により基板90を、例えば1100℃に加熱して10分間保持する。
【0085】
次に、基板90の温度を500℃に設定し、第3ガス導入部31から、10L/分の流量で窒素ガスを導入する。さらに、第1ガス導入部11から、第1原料ガス(III族原料ガス)であるトリメチルガリウム(TMG)ガスを含む水素ガスを、10L/分の流量で導入する。さらに、第2ガス導入部21から、7L/分の流量のNHガスと、3L/分の流量の水素ガスと、を導入する。これにより、基板90上に、多結晶GaNのバッファ層101を成長させる。
【0086】
次に、第1ガス導入部11から供給されていたTMGガスの導入を停止し、基板90の温度を1050℃に昇温する。
その後、第3ガス導入部31から、10L/分の流量で窒素ガスを導入し、第1ガス導入部11から、10L/分の流量で、TMGガス及びモノシランガスを含む水素ガスを導入し、第2ガス導入部21から、7L/分の流量のNHガスと、3L/分の流量の水素ガスと、を導入し、SiがドープされたGaNを含むn型コンタクト層102を成長させる。
【0087】
次に、第1ガス導入部11から導入されていたTMGガス及びモノシランガスの導入を停止し、基板90の温度を780℃に設定する。
その後、第3ガス導入部31から、7L/分の流量のNHガスと、3L/分の流量の窒素ガスと、を導入し、第1ガス導入部11から、3L/分の流量の、TMGガスを含む窒素ガスと、7L/分の流量のNHガスと、を導入し、第2ガス導入部21から7L/分の流量のNHガスと3L/分の流量の窒素ガスとを導入し、GaNを含む障壁層を成長させる。障壁層の厚さは、例えば5nm(ナノメートル)である。
【0088】
続いて、第1ガス導入部11の窒素ガス中に、トリメチルインジウム(TMI)ガスをさらに導入する。すなわち、第3ガス導入部31から、7L/分の流量のNHガスと、3L/分の流量の窒素ガスと、を導入し、第1ガス導入部11から、3L/分の流量の、TMGガスとTMIとを含む窒素ガスと、7L/分の流量のNHガスと、を導入し、第2ガス導入部21から7L/分の流量のNHガスと3L/分の流量の窒素ガスとを導入する。これにより、III族中におけるIn組成が15%(15%原子パーセント)のGaInNを含む井戸層を2.5nmの厚さで成長させる。
【0089】
この後、上記の障壁層と、上記の井戸層と、の組み合わせを、計7回繰り返してさらに成長させ、その後、その上に、上記と同じ条件で障壁層をさらに成長させる。これにより、多重量子井戸構造を有する発光層103が形成される。
【0090】
なお、上記の障壁層及び井戸層の形成において、NHガスの総流量に占める流量比は0.7と高いが、ガス導入部51が3つ(第1、第2及び第3ガス導入部11、21及び31)に分離され、それぞれのガス導入部(第1、第2及び第3ガス導入部11、21及び31)から導入されるガスの流量の比率が実質的に均等にされている。これにより、第1、第2及び第3ガス導入部11、21及び31から導入されるガスにおいて、ガスの流れの乱流gtが発生せず、安定した層流glが得られる。
【0091】
次に、第1ガス導入部11から導入されていたTMGガスおよびTMIガスの導入を停止し、基板90の温度を1000℃に昇温する。
この後、第3ガス導入部31から10L/分の流量の窒素ガスを導入し、第1ガス導入部11から、TMGガス、TMAガス及びCpMgガスを含む水素ガスを10L/分の流量で導入し、第2ガス導入部21から、5L/分の流量のNHガスと、5L/分の流量の水素ガスと、を導入し、p型電子ブロック層104を成長させる。p型電子ブロック層104は、MgがドープされたAl組成が15%のAlGaNである。ここで、第1ガス導入部11から導入されるTMAを含むIII族原料ガスと、第2ガス導入部21から導入されるNHガスとは、第1仕切り板11aにより出口(第1ガス導入部11の出口及び第2ガス導入部21の出口)まで互いに分離され、それぞれ別の出口から供給され、これらのガスは層流glとなり、基板90に向けて供給される。これにより、TMAガスとNHガスとの気相反応が抑制できる。
【0092】
次に、第1ガス導入部11から導入されていたTMAガスの導入を停止し、他のガスの状態を維持して、p型コンタクト層105を成長させる。p型コンタクト層105は、MgがドープされたGaNである。
【0093】
次に、成長が終了した基板90を取り出し、p側透明電極106、p側電極107、n側電極108を形成して、半導体発光素子110が作製される。
【0094】
上記の第1実施例の気相成長方法による半導体発光素子110、及び、以下の第1比較例の方法による半導体発光素子の特性について説明する。
第1比較例の方法においては、発光層103の障壁層の成長の際に、第3ガス導入部31から4L/分の流量で窒素ガスが導入され、第1ガス導入部11からTMGガスを含む窒素ガスが4L/分の流量で導入され、第2ガス導入部21から、21L/分の流量のNHガスと、1L/分の流量の窒素ガスと、が導入される。そして、発光層103の井戸層の成長の際には、第3ガス導入部31から4L/分の流量で窒素ガスが導入され、第1ガス導入部11からTMGガスとTMIガスとを含む窒素ガスが4L/分の流量で導入され、第2ガス導入部21から、21L/分の流量のNHガスと、1L/分の流量の窒素ガスと、が導入される。これ以外は、第1実施例と同じ条件が用いられる。
【0095】
第1実施例に係る半導体発光素子110、及び、第1比較例に係る半導体発光素子は、共に、青色LEDである。第1実施例の方法及び第1比較例の方法により2インチ基板面内に複数の半導体発光素子が形成される。このときの基板面内における発光出力の特性は以下である。
【0096】
第1比較例に係る半導体発光素子においては、基板90の中心に比べて基板90の外周部では発光出力は例えば85%以下になり、基板90の外周部では発光出力が低下する。これに対し、第1実施例に係る半導体発光素子110においては、発光出力のばらつきは、基板90の面内で例えば±5%以内の範囲内であり、基板90の面内で均一な発光が得られる。そして、基板90の面内における発光出力の平均値に関しては、第1実施例に係る半導体発光素子110においては、第1比較例に係る半導体発光素子よりも10%以上大きい値である。
【0097】
このように、本実施形態に係る気相成長方法及び気相成長装置210によれば、異なる組成の半導体層(例えば、第1半導体層であるp型電子ブロック層104、及び、第2半導体層である発光層103の井戸層)のそれぞれを、高面内均一性及び高再現性で形成でき、これにより製造された半導体発光素子110は、第1比較例よりも基板面内における発光出力のばらつきが小さく、また、発光出力の平均値が高い。このように、本実施形態によれば、高い特性を高い歩留まりで得ることが可能になる。
【0098】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る気相成長装置の構成を例示する模式図である。 図7は、本発明の第2の実施形態に係る気相成長方法を例示するフローチャート図である。
図6に表したように、本実施形態に係る気相成長装置211は、第1実施形態に係る気相成長装置210に対して、測定部60と、制御部70と、をさらに備える。
【0099】
本具体例では、測定部60は、反応室50の外において、サセプタ91の上方(基板90が載置される面の上方)に設けられている。
測定部60は、第2半導体層の成長中に基板90の表面(例えば第2半導体層)の光学特性を測定する。
制御部70は、測定部60によって測定された光学特性から導出された基板90の温度、第2半導体層の成長速度、及び、第2半導体層の組成の少なくともいずれかに基づいて、III族原料ガスとV族原料ガスとの混合比を制御する。
【0100】
なお、上記の測定部60は第1半導体層の成長中に第1半導体層の光学特性を測定し、制御部70は、測定部60によって測定された光学特性から導出された基板90の温度、第1半導体層の成長速度、及び、第1半導体層の組成の少なくともいずれかに基づいて、III族原料ガスの流量及びV族原料ガスの流量の少なくともいずれかをさらに制御しても良い。
【0101】
すなわち、測定部60は、基板90に成長される窒化物系半導体層の成長中に、基板90の光学特性を測定する。例えば、測定部60は、成膜しながら、基板90の表面(またはサセプタ91)から放射される光を測定し、基板90の温度を測定する。また、測定部60は、基板90の表面(成膜されている窒化物系半導体層)に光を照射し、照射した光の反射率の変化を測定し、成膜されている窒化物系半導体層の成長速度を測定する。また、測定部60は、照射した光の反射スペクトルに基づいて、成膜されている窒化物系半導体層における混晶の組成の測定を行う。
【0102】
測定部60による光学特性の測定の際の光学モニタ光路61は、反応室50の図示しない窓部を通過する。これにより、測定部60は、基板90における半導体層の成長状態を、成長させつつ、反応室50の外から同時に測定する。
【0103】
測定部60による光学特性の測定結果は、測定データ信号線62を介して制御部70に出力される。そして、制御部70から出力される混合制御信号が、混合制御信号線71を介して混合用ガスマスフローコントローラ43mに出力される。さらに、制御部70から出力される第1制御信号が、第1制御信号線72を介して第1マスフローコントローラ13mに出力される。そして、制御部70から出力されるヒータ制御信号が、ヒータ制御信号線73を介してヒータ制御部93に出力される。
【0104】
このように、気相成長装置211においては、基板90の上面に対向する側の反応室50の外部に、基板温度、半導体層の成長速度、及び、半導体層の混晶組成をその場測定する測定部60が設けられ、制御部70は、マスフローコントローラ(混合用ガスマスフローコントローラ43m及び第1マスフローコントローラ13m)とヒータ制御部93とを制御する。
【0105】
例えば、制御部70は、第2半導体層の成長中に、基板温度、成長速度及び混晶組成の少なくともいずれかの測定データに基づいて、例えば、第1ガス導入部11から導入されるIII族原料ガス及びV族原料ガスにおける混合比を変化させる。
【0106】
例えば、制御部70は、第2半導体層の成長中において測定された上記の特性に基づいて、第2半導体層におけるIn組成が目標とする組成よりも低い場合は、第1ガス導入部11から導入されるIII族原料ガスとV族原料ガスの混合ガスにおけるV族原料ガスの比率を相対的に増加させる制御を行う。
【0107】
このように、測定部60によって、半導体層の成長中に、半導体層の特性を光学的に測定し、III族原料ガスとV族原料ガスの混合比を変化させることで、基板90の近傍の反応生成物の影響を補正し、成長した膜における再現性をより向上できる。
【0108】
すなわち、図7に表したように、本実施形態に係る気相成長方法においては、第2半導体層を成長させる工程(ステップS120)は、第2半導体層(窒化物系半導体層)の成長中に第2半導体層の光学特性を測定する工程(ステップS121)と、光学特性の測定結果から導出された基板90の温度、第2半導体層の成長速度、及び、第2半導体層の組成の少なくともいずれかに基づいて、III族原料ガス及びV族原料ガスの混合比を制御する工程(ステップS122)と、を含むことができる。本実施形態に係る気相成長方法を用いることで、成長した半導体層における再現性をより向上できる。
【0109】
すなわち、反応室50内の基板90の近傍部分に付着した反応生成物の程度や履歴が、基板90の近傍部分の温度環境を変化させ、成長させる半導体層の再現性が低下することがあるが、本実施形態に係る気相成長方法及び気相成長装置211を用いることで、再現性の低下を抑制し、長期的に優れた再現性で半導体発光素子を製造することができる。
【0110】
(第2の実施例)
図8は、本発明の第2の実施形態の第2の実施例の気相成長方法を例示するフローチャート図である。
すなわち、同図は、気相成長装置211を用いて、Inを含む第2半導体層を成長させる工程(ステップS120)における測定部60を用いた制御の例である。
【0111】
第2半導体層の成長速度の測定値と規格値とを比較し(ステップS211)、第2半導体層の成長速度の測定値と規格との差が5%以内になるように、III族原料ガスの流量を制御する(ステップS212)。例えば、III族原料ガスの流量の設定は、「現在の設定流量」×「成長速度の規格値」/「成長速度の測定値」とされる。
【0112】
そして、第2半導体層における組成比(この場合はInの組成比)の測定値と規格値(設定値)とを比較する(ステップS221)。そして、さらに、第2半導体層における組成比の測定値が規格値よりも高いかどうかが判定され(ステップS222)、組成比の測定値が規格値よりも低い場合には、III族原料ガス及びV族原料ガスの混合におけるV族原料ガスの混合比を増大させる(ステップS224)。そして、組成比の測定値が規格値よりも高い場合には、III族原料ガス及びV族原料ガスの混合におけるV族原料ガスの混合比を減少させる(ステップS223)。なお、組成比の測定値が規格値に実質的に一致している場合には、混合比を変えない。
【0113】
例えば、第2半導体層の成長中に、In組成比を測定し(ステップS121)、測定値と規格値とを比較し、測定値が規格値よりも5%以上低い場合には、第1ガス導入部に導入されるNHガス(V族原料ガス)の流量を現在の設定値よりも例えば5%増大させ、V族原料ガスの混合比を増大させる。そして、In組成比の測定値が規格値よりも5%以上高い場合には、第1ガス導入部に導入されるNHガスの流量を現在の設定値よりも例えば5%減少させ、V族原料ガスの混合比を増大させる。そして、ステップS221〜ステップS224が繰り返し実施される。
【0114】
なお、本具体例では、測定した基板90の温度に基づいて、PID制御によりヒータ92を制御することで、基板90の温度を制御して(ステップS201)、第2半導体層の成長が行われる。
【0115】
これにより、成長させる半導体層の再現性の低下を抑制し、長期的に優れた再現性で半導体発光素子を製造することができる。
【0116】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る気相成長装置の構成を例示する模式図である。 図9に表したように、本実施形態に係る気相成長装置212は、第1ガス供給部10の第1ガス導入部11には、第1配管12と混合用配管42とが接続されている。そして、外部混合部45が設けられていない。これ以外の第2ガス供給部20、第3ガス供給部30及び反応室50、並びにその他の構成は、第2の実施形態に係る気相成長装置211と同様なので説明を省略する。
【0117】
第1配管12には、例えば、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれかが導入され、さらに、第1配管12には、第1バルブ13vと第1マスフローコントローラ13mとを介して、第1原料ガス配管13が接続されている。第1原料ガス配管13には、III族原料ガスとV族原料ガスのいずれか一方(例えばIII族原料ガスである第1原料ガス)が導入される。
【0118】
混合用配管42には、混合用ガスバルブ43vと混合用ガスマスフローコントローラ43mとを介して、混合用第2原料ガス配管43が接続されている。混合用第2原料ガス配管43には、III族原料ガスとV族原料ガスのいずれか他方(例えばV族原料ガスである第2原料ガス)が導入される。
【0119】
第1ガス導入部11に第1原料ガスと第2原料ガスの両方を導入すれば、第1仕切り板11aの端部11aeよりも上流側(基板90に向かう方向とは逆の方向)において、これらのガスが混合される。これにより、第2半導体層を成長させるステップS120を実施できる。すなわち、第1ガス導入部11が、III族原料ガスとV族原料ガスとを混合させる内部混合部11iとなる。
【0120】
そして、第1ガス導入部11に第1原料ガスのみを導入すれば、第2ガス導入部21から導入される第2原料ガスと分離した状態で第1原料ガスを導入でき、これにより、第1半導体層を成長させるステップS110が実施できる。
【0121】
このように、第1ガス供給部10は、反応室50に連通し、III族原料ガスとV族原料ガスのいずれか一方(例えばIII族原料ガスである第1原料ガス)を反応室50内に供給する第1供給管(第1配管12)と、反応室50に連通し、III族原料ガスとV族原料ガスのいずれか他方(例えばV族原料ガスである第2原料ガス)を反応室50内に供給する第2供給管(混合用配管42)と、を有する。混合部(内部混合部11i)は、反応室50の内部であって、第1供給管と第2供給管とが接続される部分である。そして、基板90の側の端部(例えば第1端部11ae)よりも第1供給管及び第2供給管の側である内部混合部11iにおいて、III族原料ガス及びV族原料ガスが互いに混合される。そして、混合されたIII族原料ガスとV族原料ガスとが、同じ出口(第1ガス導入部11)から基板90に向けて供給される。
【0122】
このような構成の気相成長装置212も、III族原料ガスとV族原料ガスとを互いに異なる出口から、反応室50内に配置された基板90に向けて供給して、III族中におけるAl組成比が10原子パーセント以上の窒化物系半導体を含む第1半導体層を成長させる動作と、III族原料ガスとV族原料ガスとを混合して同じ出口から、基板90に向けて供給して、III族中におけるAl組成比が10原子パーセント未満の窒化物系半導体を含む第2半導体層を成長させる動作と、が実施できる。
【0123】
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第4の実施形態に係る気相成長方法を例示する模式図である。
すなわち、図10(a)は、Al組成比が10原子パーセント以上の窒化物系半導体を含む第1半導体層を成長させる工程(ステップS110)に相当し、図10(b)は、Al組成比が10原子パーセント未満の窒化物系半導体を含む第2半導体層を成長させる工程(ステップS120)に相当する。
【0124】
図10(a)に表したように、第1半導体層の成長の際には、第1ガス導入部11から、第1原料ガスg1を基板90に向けて供給する。第1原料ガスg1には、例えば、III族原料ガスである例えばトリメチルアルミニウム(TMA)が用いられる。
【0125】
そして、第2ガス導入部21から、第2原料ガスg2を基板90に向けて供給する。第2原料ガスには、V族原料ガスであるアンモニア(NH)が用いられる。
【0126】
そして、第3ガス導入部31から第3原料ガスg3を基板90に向けて供給する。第3原料ガスには例えばNが用いられる。第3原料ガスg3は、ガスの流れを整えるサブフローとなって基板90に向けて流れる。
【0127】
この場合も、第1原料ガスg1と第2原料ガスg2とは、第1仕切り板11aの端部11aeまで互いに分離され、それぞれ第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21を出た後も、分離された状態をほぼ維持して、層流glとして基板90に到達する。これにより、基板90の上面以外の不要な部分には、反応生成物が付着し難く、成長させる第1半導体層において、Al組成の制御範囲が広く、任意のAl組成の半導体層を得易い。そして、基板90へは原料ガスが層流glとなって到達するため、第1半導体層における組成、及び、第1半導体層の膜厚の面内均一性は高い。そして、第1半導体層における組成、及び、第1半導体層の膜厚の再現性も良好である。
【0128】
そして、図10(b)に表したように、第2半導体層の成長の際には、第1ガス導入部11から、第2原料ガスg2として、V族原料ガスであるNHガスが供給される。
【0129】
そして、第2ガス導入部21から、第1原料ガスg1と第2原料ガスg2とを混合して基板90に向けて供給する。このときの第1原料ガスg1には、例えば、III族原料ガスである例えばトリメチルインジウム(TMI)及びTMGが用いられる。また、第2原料ガスg2には、V族原料ガスのNHが用いられる。すなわち、第2ガス導入部21から、III族原料ガスのTMIと、V族原料ガスのNHと、の混合ガスgmが基板90に向けて供給される。
【0130】
そして、第3ガス導入部31から第3原料ガスg3(例えばN)が用いられる。この場合も第3原料ガスg3は、ガスの流れを整えるサブフローとなって基板90に向けて流れる。
【0131】
このように、第1ガス導入部11からNHを供給しつつ、第2ガス導入部21からTMI及びTMGとNHとの混合ガスgmを供給できるため、NHの全体に対する割合を高めることが容易になる。すなわち、第1ガス導入部11から供給するNHの流量を、他のガス導入部と同じ程度に押さえ、乱流が発生しない流量とし、第2ガス導入部21からTMI及びTMGとNHとの混合ガスgmを供給することで、乱流の発生を抑制し、層流glを維持したまま、総流量に対するNHガスの流量比率を高めることができる。これにより、Al組成比が低い第2半導体層をNHガスの流量比率を高めて成長させ、第2半導体層における組成及び膜厚の面内均一性を高くし、第2半導体層における組成及び膜厚の再現性を高くすることができる。
【0132】
このように、本実施形態に係る気相成長方法も、III族原料ガスとV族原料ガスとを互いに異なる出口(第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21)から基板90に向けて供給して第1半導体層を成長させる工程(ステップS110)と、III族原料ガスとV族原料ガスとを混合して同じ出口(第2ガス導入部21)から前記基板に向けて供給して、第2半導体層を成長させる工程(ステップS120)と、を備える。そして、この場合においても、ステップS120は、上記の同じ出口とは異なる出口(第1ガス導入部11)から、III族原料ガスとV族原料ガスのいずれか一方(この場合は、V族原料ガス)を基板90に向けてさらに供給する。
本実施形態に係る気相成長方法によれば、異なる組成の半導体層のそれぞれを、高面内均一性及び高再現性で形成できる。
【0133】
このような気相成長方法は、例えば以下の気相成長装置を用いることで実施できる。
図11は、本発明の第4の実施形態に係る気相成長装置の構成を例示する模式図である。
図11に表したように、本実施形態に係る気相成長装置220においても、ガス導入部51は、仕切り板により3つに分割され、ガス導入部51として、第2ガス導入部21、第1ガス導入部11、及び、第3ガス導入部31、が設けられている。
【0134】
第1ガス供給部10と第2ガス供給部20とは、互いに仕切り板(第1仕切り板11a)で区分されている。また、第1ガス供給部10と第3ガス供給部30とは、互いに仕切り板(第2仕切り板11b)で区分されている。
【0135】
第2ガス導入部21には、第2配管22が接続されている。第2配管22には、例えば、図示しないバルブと図示しないマスフローコントローラとを介して、例えば、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれかが導入される。これにより、第2ガス導入部21には、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれかが、その流量が制御されて導入される。
【0136】
さらに、第2配管22には、第2バルブ23vと第2マスフローコントローラ23mとを介して、第2原料ガス配管23が接続されている。第2原料ガス配管23の第2マスフローコントローラ23mとは反対の側には、例えば、NHガスのボンベが接続される。すなわち、第2原料ガス配管23には、第2原料ガスであるV族原料ガスのNHガスが供給される。これにより、第2ガス導入部21には、第2原料ガス(この例ではV族原料ガス)であるNHガスが、流量が制御されて供給される。
【0137】
そして、第2配管22の反応室50に接続される側とは反対の側には、第2分配バルブ15v及び第1バルブ13vを介して、第1原料ガス配管13が接続されている。
そして、第2配管22の第2バルブ23vと反応室50との間に外部混合部45a(混合部)が設けられている。
【0138】
これにより、1つの動作状態では、第2ガス導入部21には、第2原料ガス配管23を経由して、第2原料ガスg2(例えばNHガス)が導入されることができる。そして、第2ガス導入部21から基板90に向けて第2原料ガスg2が供給される。
【0139】
さらに、別の動作状態の時には、混合部45aに、第1原料ガス配管13から第1原料ガスg1が導入され、それと同時に、混合部45aに、第2原料ガス配管23から第2原料ガスg2が導入され、混合された第1原料ガスg1及び第2原料ガスg2が、第2ガス導入部21に導入される。そして、第2ガス導入部21から基板90に向けて、混合された第1原料ガスg1及び第2原料ガスg2が供給される。
【0140】
一方、第1ガス導入部11には、第1配管12が接続されている。第1配管12には、例えば図示しないバルブと図示しないマスフローコントローラとを介して、例えば、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれかが導入される。これにより、第1ガス導入部11には、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれかが、その流量が制御されて導入される。
【0141】
さらに、第1配管12には、第1分配バルブ14vと第1バルブ13vと第1マスフローコントローラ13mとを介して、第1原料ガス配管13が接続されている。第1原料ガス配管13の第1マスフローコントローラ13mとは反対の側には、例えば、第1原料ガスであるIII族原料ガスの有機金属ガスを導入する配管が接続されている。すなわち、第1原料ガス配管13には、第1原料ガスであるIII族原料ガスの有機金属ガスが供給される。
【0142】
さらに、第1配管12には、切り替え用ガスバルブ44vと切り替え用ガスマスフローコントローラ44mとを介して、切り替え用第2原料ガス配管44が接続されている。なお、本具体例では、切り替え用第2原料ガス配管44が第1配管12に接続される位置は、第1原料ガス配管13が第1配管12に接続される位置よりも上流側である。
【0143】
これにより、1つの動作状態では、切り替え用第2原料ガス配管44から第2原料ガスg2を供給せず、第1ガス導入部11には、第1原料ガス配管13を経由して、第1原料ガスg1(例えばIII族原料ガス)が導入されることができる。そして、第1ガス導入部11から基板90に向けて第1原料ガスg1が供給される。
【0144】
さらに、別の動作状態の時には、第1原料ガス配管13からの第1原料ガスg1の供給を止め、第1ガス導入部11には、切り替え用第2原料ガス配管44を経由して、第2原料ガスg2(例えばNHガス)が導入されることができる。そして、第1ガス導入部11から基板90に向けて第2原料ガスg2(例えばNHガス)が供給される。
【0145】
すなわち、気相成長装置220においては、第1ガス供給部10及び第2ガス供給部20の少なくともいずれかのガス供給部(本具体例では第2ガス供給部20)、は、III族原料ガス及びV族原料ガスを混合させ、混合されたIII族原料ガス及びV族原料ガスを上記の少なくともいずれかのガス供給部(第2ガス供給部20)の反応室50の側に向けて供給する混合部(本具体例では外部混合部45)を有し、上記の少なくともいずれかのガス供給部(本具体例では第2ガス供給部20)は、混合部で混合されたIII族原料ガス及びV族原料ガスを反応室50内に配置された基板90に向けてさらに供給可能である。
【0146】
そして、本具体例では、混合部(外部混合部45a)は、第2ガス供給部20に設けられ、第2ガス供給部20は、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか他方(この場合はV族原料ガス)が導入される第2配管22をさらに有する。混合部(外部混合部45a)は、第2配管22と反応室50との間に設けられる。そして、混合部(外部混合部45a)の第2配管22の側に、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか一方(この場合はIII族原料ガス)が導入される配管(第1原料ガス配管13)が接続される。
【0147】
このような気相成長装置220においては、ステップS110として、第2ガス導入部21から基板90に向けて第2原料ガスg2が供給され、第1ガス導入部11から基板90に向けて第1原料ガスg1が供給される。
【0148】
そして、ステップS120として、第2ガス導入部21から基板90に向けて、混合された第1原料ガスg1及び第2原料ガスg2が供給され、第1ガス導入部11から基板90に向けて第2原料ガスg2が供給される。
このように、気相成長装置220によれば、図10に例示した気相成長方法が実現できる。
【0149】
図12は、本発明の第4の実施形態に係る別の気相成長装置の構成を例示する模式図である。
図12に表したように、本実施形態に係る気相成長装置221においては、図11に例示した気相成長装置220における第1ガス供給部10の第2ガス導入部21には、第2配管22及び混合用配管22aが接続されており、そして、外部混合部45aが設けられていない。これ以外の第1ガス供給部10、第3ガス供給部30及び反応室50、並びにその他の構成は、気相成長装置220と同様なので説明を省略する。
【0150】
第2配管22には、例えば、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれかが導入され、さらに、第2配管22には、第2バルブ23vと第2マスフローコントローラ23mとを介して、第2原料ガス配管23が接続されている。第2原料ガス配管23には、III族原料ガスとV族原料ガスのいずれか他方(例えばV族原料ガスである第2原料ガス)が導入される。
【0151】
混合用配管22aには、第2分配用バルブ15v、第1バルブ13v及び第1ガスマスフローコントローラ13mを介して、第1原料ガス配管13が接続されている。第1原料ガス配管13には、III族原料ガスとV族原料ガスのいずれか一方(例えばIII族原料ガスである第1原料ガス)が導入される。
【0152】
このような構成の気相成長装置221において、ステップS110では以下を行う。 第1ガス供給部10においては、切り替え用第2原料ガス配管44からの第2原料ガスg2の供給が止められ、第1ガス導入部11には、第1原料ガス配管13を経由して第1原料ガスg1(例えばIII族原料ガス)が導入され、第1ガス導入部11から基板90に向けて第1原料ガスg1が供給される。
そして、第2ガス供給部20においては、第2分配用バルブ15vが閉状態にされ、第2ガス導入部21には、第2原料ガス配管23を経由して第2原料ガスg2(例えばV族原料ガス)が導入され、第2ガス導入部21から基板90に向けて第2原料ガスg2が供給される。
これにより、III族原料ガスとV族原料ガスとを互いに異なる出口から基板90に向けて供給して、第1半導体層を成長させる。
【0153】
そして、ステップS120では以下を行う。
第1ガス供給部10においては、第1分配用バルブ14vが閉状態にされ、切り替え用第2原料ガス配管44から第1ガス導入部11に、第2原料ガスg2(例えばV族原料ガス)が導入され、第1ガス導入部11から基板90に向けて第2原料ガスg2が供給される。
そして、第2ガス供給部20においては、第2分配用バルブ15vが開状態にされ、第2ガス導入部21には、第1原料ガス配管13を経由して第1原料ガスg1(例えばIII族原料ガス)が導入されると同時に、第2原料ガス配管23を経由して第2原料ガスg2(例えばV族原料ガス)が導入される。そして、第2ガス導入部21の第1仕切り板11aの端部11aeよりも上流側(基板90に向かう方向とは逆の方向)において、これらのガスが混合される。これにより、第2ガス導入部21から、混合された第1原料ガスg1及び第2原料ガスg2が、基板90向けて供給される。すなわち、第2ガス導入部21が、III族原料ガスとV族原料ガスとを混合させる内部混合部21iとなる。
【0154】
気相成長装置221においては、第2ガス供給部20は、反応室50に連通し、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか一方(例えばIII族原料ガスである第1原料ガス)を反応室50内に供給する第3供給管(混合用配管22a)と、反応室50に連通し、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか他方(例えばV族原料ガスである第2原料ガス)を反応室50内に供給する第4供給管(第2配管22)と、を有する。混合部(内部混合部21i)は、反応室50の内部であって第3供給管と第4供給管とが接続される部分であり、混合部(内部混合部21i)の基板90の側の端部よりも第3供給管及び第4供給管の側において、III族原料ガス及びV族原料ガスが互いに混合される。そして、混合されたIII族原料ガスとV族原料ガスとが、同じ出口(第2ガス導入部21)から基板90に向けて供給される。
【0155】
このような構成を有する気相成長装置221によっても、図10に例示した気相成長方法が実現できる。
【0156】
(第5の実施形態)
図13は、本発明の第5の実施形態に係る気相成長方法を例示する模式図である。
すなわち、図13(a)は、Al組成比が10原子パーセント以上の窒化物系半導体を含む第1半導体層を成長させる工程(ステップS110)に相当し、図13(b)は、Al組成比が10原子パーセント未満の窒化物系半導体を含む第2半導体層を成長させる工程(ステップS120)に相当する。
【0157】
図13(a)に表したように、第1半導体層の成長の際には、第1ガス導入部11から、第1原料ガスg1を基板90に向けて供給する。第1原料ガスg1には、例えば、III族原料ガスである例えばトリメチルアルミニウム(TMA)及びTMGが用いられる。
【0158】
そして、第2ガス導入部21から、第2原料ガスg2を基板90に向けて供給する。第2原料ガスには、V族原料ガスであるアンモニア(NH)が用いられる。
【0159】
そして、第3ガス導入部31から第3原料ガスg3を基板90に向けて供給する。第3原料ガスには例えばNが用いられる。第3原料ガスg3は、ガスの流れを整えるサブフローとなって基板90に向けて流れる。
【0160】
この場合も、第1原料ガスg1と第2原料ガスg2とは、第1仕切り板11aの端部11aeまで互いに分離され、それぞれ第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21を出た後も、分離された状態をほぼ維持して、層流glとして基板90に到達する。これにより、基板90の上面以外の不要な部分には、反応生成物が付着し難く、成長させる第1半導体層において、Al組成の制御範囲が広く、任意のAl組成の半導体層を得易い。そして、基板90へは原料ガスが層流glとなって到達するため、第1半導体層における組成、及び、第1半導体層の膜厚の面内均一性は高い。そして、第1半導体層における組成、及び、第1半導体層の膜厚の再現性も良好である。
【0161】
そして、図13(b)に表したように、第2半導体層の成長の際には、第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21の両方から、第1原料ガスg1と第2原料ガスg2とを混合して基板90に向けて供給する。このときの第1原料ガスg1には、例えば、III族原料ガスである例えばトリメチルインジウム(TMI)及びTMGが用いられる。また、第2原料ガスg2には、V族原料ガスのNHが用いられる。すなわち、第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21から、III族原料ガスのTMIと、V族原料ガスのNHと、の混合ガスgmが基板90に向けて供給される。
【0162】
そして、第3ガス導入部31から第3原料ガスg3(例えばN)が用いられる。この場合も第3原料ガスg3は、ガスの流れを整えるサブフローとなって基板90に向けて流れる。
【0163】
このように、第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21の両方からTMIとNHとの混合ガスgmを供給できるため、NHの全体に対する割合を高めることが容易になる。すなわち、第1ガス導入部11及び第2ガス導入21の両方において、乱流が発生しない流量で、TMIとNHとの混合ガスgmを供給することで、乱流の発生を抑制し、層流glを維持したまま、総流量に対するNHガスの流量比率を高めることができる。これにより、Al組成比が低い第2半導体層をNHガスの流量比率を高めて成長させ、第2半導体層における組成及び膜厚の面内均一性を高くし、第2半導体層における組成及び膜厚の再現性を高くすることができる。
【0164】
このように、本実施形態に係る気相成長方法も、III族原料ガスとV族原料ガスとを互いに異なる出口(第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21)から基板90に向けて供給して第1半導体層を成長させる工程(ステップS110)と、III族原料ガスとV族原料ガスとを混合して同じ出口(例えば第1ガス導入部11)から前記基板に向けて供給して、第2半導体層を成長させる工程(ステップS120)と、を備える。そして、本実施形態においては、ステップS120は、上記の同じ出口とは異なる出口(第2ガス導入部21)から、III族原料ガスとV族原料ガスとを混合して基板90に向けてさらに供給する。
本実施形態に係る気相成長方法によっても、異なる組成の半導体層のそれぞれを、高面内均一性及び高再現性で形成できる。
【0165】
このような気相成長方法は、例えば以下の気相成長装置を用いることで実施できる。
図14は、本発明の第5の実施形態に係る気相成長装置の構成を例示する模式図である。
図14に表したように、本実施形態に係る気相成長装置230においては、図3に関して説明した外部混合部45、及び、図11に関して説明した外部混合部45aの両方が設けられている。
【0166】
すなわち、混合部(外部混合部45及び外部混合部45a)は、第1ガス供給部10及び第2ガス供給部20の両方に設けられる。
そして、第1ガス供給部10は、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか一方が導入される第1配管12をさらに有し、混合部(外部混合部45)は、第1配管12と反応室50との間に設けられ、混合部(外部混合部45)の第1配管12の側に、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか他方が導入される配管(混合用第2原料ガス配管43)が接続される。
【0167】
さらに、第2ガス供給部20は、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか他方が導入される第2配管22をさらに有し、混合部(外部混合部45a)は、第2配管22と反応室50との間に設けられ、混合部(外部混合部45a)の第2配管22の側に、III族原料ガス及びV族原料ガスのいずれか一方が導入される配管(第1原料ガス配管13)が接続される。
【0168】
これにより、図13に関して説明したステップS110及びステップS120を実施することができる。
【0169】
図15は、本発明の第5の実施形態に係る別の気相成長装置の構成を例示する模式図である。
図15に表したように、本実施形態に係る気相成長装置231においては、第1ガス供給部10には、図9に関して説明した第1配管12(第1供給管)及び混合用配管42(第2供給管)が設けられ、さらに、第2ガス供給部20に、図12に関して説明した混合用配管22a(第3供給管)及び第2配管22(第4供給管)が設けられている。
【0170】
第1ガス供給部10は、第1配管12(第1供給管)と、混合用配管42(第2供給管)と、を有し、混合部(内部混合部11i)は、反応室50の内部であって第1供給管と第2供給管とが接続される部分であり、混合部(内部混合部11i)の基板90の側の端部よりも第1供給管及び第2供給管の側において、III族原料ガス及びV族原料ガスが互いに混合される。
【0171】
そして、第2ガス供給部20は、混合用配管22a(第3供給管)と、第2配管22(第4供給管)と、を有し、混合部(内部混合部21i)は、反応室50の内部であって第3供給管と第4供給管とが接続される部分であり、混合部(内部混合部21i)の基板90の側の端部よりも第3供給管及び第4供給管の側において、III族原料ガス及びV族原料ガスが互いに混合される。
【0172】
これにより、図13に関して説明したステップS110及びステップS120を実施することができる。
【0173】
なお、上記の気相成長装置220、221、230及び231においても、測定部60と制御部70とをさらに設けても良い。
【0174】
ところで、本発明の実施形態に係る気相成長方法及び気相成長装置において、上記の気相成長装置210〜212、220、221、230及び231のように横型の反応室50を用いる場合、III族原料ガスとV族原料ガスとを異なる出口から供給する際には、基板90に近い側(下側)の出口からV族原料ガスを供給し、その出口よりも基板90から遠い側(上側)の出口からIII族原料ガスを供給することが望ましい。これにより、III族原料ガスとV原料ガスとが適度に分離された状態で基板90の近傍に層状で供給され、より均一な成膜ができる。
【0175】
(第6の実施の形態)
上記においては、横型反応室が用いられる例であるが、本実施形態においては、縦型反応室が用いられる。
図16は、本発明の第6の実施形態に係る気相成長装置の構成を例示する模式図である。
図16に表したように、本実施形態に係る気相成長装置310は、縦型反応室である反応室50を備える。そして、第1ガス供給部10の第1ガス導入部11、第2ガス供給部20の第2ガス導入部21、及び、第3ガス供給部30の第3ガス導入部31は、反応室50の壁部から、反応室50内部に設けられているサセプタ91の上方に延在している。そして、第1ガス供給部10、第2ガス供給部20及び第3ガス供給部30の反応室50の外側の部分は、気相成長装置210の構成と同じである。
【0176】
なお、本具体例では、サセプタ91に複数の基板90が載置されている。ただし、本実施形態はこれに限らず、サセプタ91には1つの基板90が載置されるように、設計されても良い。
【0177】
図16に表したように、サセプタ91の上方において、下から上に順番に、第2ガス導入部21、第1ガス導入部11及び第3ガス導入部31が、この順で配置されている。
【0178】
第2ガス導入部21は、サセプタ91の上方において水平方向(サセプタ91の主面に平行な方向)に延在する第2水平延在部421と、第2水平延在部421から下方向に延在する第2垂直延在部421aと、を有する。第2垂直延在部421aは複数設けられている。これにより、第2配管22を経て反応室50内に導入されたガスは、第2水平延在部421と第2垂直延在部421aとを経て、サセプタ91の上に載置された基板90の上に導入される。
【0179】
第1ガス導入部11は、サセプタ91の上方において水平方向に延在する第1水平延在部411と、第1水平延在部411から下方向に延在する第1垂直延在部411aと、を有する。第1垂直延在部411aは複数設けられている。これにより、第1配管12を経て反応室50内に導入されたガスは、第1水平延在部411と第1垂直延在部411aとを経て、サセプタ91の上に載置された基板90の上に導入される。
【0180】
このとき、第1水平延在部411は、第2水平延在部421と隔壁によって分離されている。また、第1垂直延在部411aは、第2水平延在部421を貫通して下方向に延在するが、第1垂直延在部411aは、第2水平延在部421とは隔壁によって分離されている。そして、第1垂直延在部411aの水平方向における位置は、第2垂直延在部421aの水平方向における位置とは異なっている。この構成により、第1水平延在部411及び第1垂直延在部411aを経て導入されたガスと、第2水平延在部421及び第2垂直延在部421aを経て導入されたガスと、は互いに別の経路を経て、互いに混合されずに、基板90の上方に供給される。
【0181】
また、第3ガス導入部31は、サセプタ91の上方において水平方向に延在する第3水平延在部431と、第3水平延在部431から下方向に延在する第3垂直延在部431aと、を有する。第3垂直延在部431aは複数設けられている。これにより、第3配管32を経て反応室50内に導入されたガスは、第3水平延在部431と第3垂直延在部431aとを経て、サセプタ91の上に載置された基板90の上に導入される。
【0182】
第3水平延在部431は、第1水平延在部411と隔壁によって分離されている。また、第3垂直延在部431aは、第1水平延在部411及び第2水平延在部421を貫通して下方向に延在するが、第3垂直延在部431aは、第1水平延在部411及び第2水平延在部421とは隔壁によって分離されている。そして、第3垂直延在部431aの水平方向における位置は、第1垂直延在部411a及び第2垂直延在部421aの水平方向における位置とは異なっている。この構成により、第1水平延在部411及び第1垂直延在部411aを経て導入されたガスと、第2水平延在部421及び第2垂直延在部421aを経て導入されたガスと、第3水平延在部431及び第3垂直延在部431aを経て導入されたガスと、は、互いに別の経路を経て、互いに混合されずに、基板90の上方に供給される。
【0183】
このように、本具体例においても、第1ガス供給部10、第2ガス供給部20及び第3ガス供給部30は、互いに分離されている。
【0184】
そして、既に説明した第1原料ガスg1、第2原料ガスg2及び第3原料ガスg3を、第1ガス供給部10、第2ガス供給部20及び第3ガス供給部30から基板90に向けて供給することで、第1半導体層の成長(ステップS110)及び第2半導体層の成長(ステップS120)が実施される。この場合にも、III族原料ガスとV族原料ガスとを互いに異なる出口(例えば、第1ガス導入部11及び第2ガス導入部21)から基板90に向けて供給して第1半導体層が成長される。そして、III族原料ガスとV族原料ガスとを混合して同じ出口(例えば第1ガス導入部11)から基板90に向けて供給して、第2半導体層が成長される。
【0185】
なお、第2半導体層を成長させる工程においては、上記の同じ出口(例えば第1ガス導入部11)とは異なる出口(例えば第2ガス導入部21)から、III族原料ガスとV族原料ガスのいずれか一方を基板に向けてさらに供給することができる。
【0186】
また、図13に関して説明したように、第2半導体層を成長させる工程においては、上記の同じ出口(例えば第1ガス導入部11)とは異なる出口(第2ガス導入部21)から、III族原料ガスとV族原料ガスとを混合して基板90に向けてさらに供給することができる。
【0187】
すなわち、本実施形態に係る気相成長装置310において、反応室50の外側の部分は、既に説明した気相成長装置212、220、221、230及び231における反応室50の外側の部分の構成を適用できる。これにより、図4、図10及び図13に関して説明した動作のいずれかを実施できる。
【0188】
また、気相成長装置310、並びに、気相成長装置310において気相成長装置212、220、221、230及び231における反応室50の外側の部分の構成を適用した気相成長装置において、測定部60と制御部70とをさらに設けることができる。
【0189】
上記においては、第1原料ガスがIII族原料ガスであり、第2原料ガスがV族原料ガスである場合が説明されたが、第1原料ガスがV族原料ガスであり、第2原料ガスがIII族原料ガスであっても良い。すなわち、III族原料ガスとV族原料ガスとが互いに異なる出口から基板90に向けて供給され、III族中におけるAl組成比が10原子パーセント以上の窒化物系半導体を含む第1半導体層を成長させ、また、III族原料ガスとV族原料ガスとが混合されて同じ出口から基板90に向けて供給され、III族中におけるAl組成比が10原子パーセント未満の窒化物系半導体を含む第2半導体層を成長させることができれば良い。
【0190】
なお、本明細書において「窒化物系半導体」とは、BInAlGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むものや、導電型などを制御するために添加される各種のドーパントのいずれかをさらに含むものも、「窒化物系半導体」に含まれるものとする。
【0191】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、気相成長装置を構成する各要素の具体的な構成の、形状、サイズ、材質、配置関係などに関して当業者が各種の変更を加えたものであっても、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0192】
その他、本発明の実施の形態として上述した気相成長方法及び気相成長装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての気相成長方法及び気相成長装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0193】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0194】
10…第1ガス供給部、 11…第1ガス導入部、 11a…第1仕切り板、 11ae…端部、 11ah…貫通孔、 11b…第2仕切り板、 11be…端部、 11i…内部混合部、 12…第1配管(第1供給管)、 13…第1原料ガス配管、 13m…第1マスフローコントローラ、 13v…第1バルブ、 14v…第1分配用バルブ、 15v…第2分配用バルブ、 20…第2ガス供給部、 21…第2ガス導入部、 21i…内部混合部、 21n…第2ガス導入壁、 22…第2配管(第4供給管)、 22a…混合用配管(第3供給管)、 23…第2原料ガス配管、 23m…第2マスフローコントローラ、 23v…第2バルブ、 30…第3ガス供給部、 31…第3ガス導入部、 31n…第3ガス導入壁、 32…第3配管、 33…第3原料ガス配管、 33m…第2マスフローコントローラ、 33v…第3バルブ、 40…混合ガス供給部、 41…混合ガス導入部、 41c…第1混合部仕切り板、 41d…第2混合部仕切り板、 42…混合用配管(第2供給管)、 43…混合用第2原料ガス配管、 43m…混合用ガスマスフローコントローラ、 43v…混合用ガスバルブ、 44…切り替え用第2原料ガス配管、 44m…切り替え用ガスマスフローコントローラ、 44v…切り替え用ガスバルブ、 45、45a…外部混合部、 50…反応室、 51…ガス導入部、 60…測定部、 61…光学モニタ光路、 62…測定データ信号線、 70…制御部、 71…混合制御信号線、 72…第1制御信号線、 73…ヒータ制御信号線、 80…ガス供給部、 90…基板、 91…サセプタ、 92…ヒータ、 93…ヒータ制御部、 101…バッファ層、 102…n型コンタクト層、 103…発光層、 104…p型電子ブロック層、 105…p型コンタクト層、 106…p側透明電極、 107…p側電極、 108…n側電極、 110…半導体発光素子、 210〜212、218、219、220、221、230、231、310 気相成長装置、 411…第1水平延在部、 411a…第1垂直延在部、 421…第2水平延在部、 421a…第2垂直延在部、 431…第3水平延在部、 431a…第3垂直延在部、 bp…反応生成物、 g1…第1原料ガス、 g2…第2原料ガス、 g3…第3原料ガス、 gl…層流、 gm…混合ガス、 gt…乱流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族原料ガスとV族原料ガスとを用いて基板上に窒化物系半導体層を気相成長させる気相成長装置であって、
前記基板が配置される反応室と、
前記反応室に連通し、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスのいずれか一方を前記基板に向けて供給する第1ガス供給部と、
前記反応室に連通し、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスのいずれか他方を前記基板に向けて供給する第2ガス供給部と、
を備え、
前記第1ガス供給部及び前記第2ガス供給部の少なくともいずれかのガス供給部は、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスを混合させ、前記混合された前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスを前記少なくともいずれかのガス供給部の前記反応室の側に向けて供給する混合部を有し、
前記少なくともいずれかのガス供給部は、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスのいずれか一方を前記基板に向けて供給して第1半導体層を成長させる第1動作と、前記混合部で混合された前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスを前記基板に向けて供給してIII族組成比が前記第1半導体層におけるIII組成比とは異なる第2半導体層を成長させる第2動作と、を切り替えて実施可能であることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記III族原料ガスは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムハイドライド、エチルジメチルアミンアラン、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルインジウム及びトリエチルインジウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記少なくともいずれかのガス供給部は、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスのいずれか一方を前記基板に向けて供給して第1のAl組成比の窒化物系半導体を含む第1半導体層を成長させる前記第1動作と、前記混合部で混合された前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスを前記基板に向けて供給して第1のAl組成比よりも低い第2のAl組成比の窒化物系半導体を含む第2半導体層を成長させる前記第2動作と、を切り替えて実施可能であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記第1半導体層におけるAl組成比は、10原子パーセント以上であり、
前記第2半導体層におけるAl組成比は、10原子パーセント未満であることを特徴とする請求項3記載の気相成長装置。
【請求項5】
前記混合部は、前記第1ガス供給部に設けられ、
前記第1ガス供給部は、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスの前記いずれか一方が導入される第1配管をさらに有し、
前記混合部は、前記第1配管と前記反応室との間に設けられ、
前記混合部の前記第1配管の側に、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスの前記いずれか他方が導入される配管が接続されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の気相成長装置。
【請求項6】
前記第1ガス供給部は、
前記反応室に連通し、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスの前記いずれか一方を前記反応室内に供給する第1供給管と、
前記反応室に連通し、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスの前記いずれか他方を前記反応室内に供給する第2供給管と、
を有し、
前記混合部は、前記反応室の内部であって前記第1供給管と前記第2供給管とが接続される部分であり、
前記混合部の前記基板の側の端部よりも前記第1供給管及び前記第2供給管の側において、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスが互いに混合されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の気相成長装置。
【請求項7】
前記混合部は、前記第2ガス供給部に設けられ、
前記第2ガス供給部は、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスの前記いずれか他方が導入される第2配管をさらに有し、
前記混合部は、前記第2配管と前記反応室との間に設けられ、
前記混合部の前記第2配管の側に、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスの前記いずれか一方が導入される配管が接続されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の気相成長装置。
【請求項8】
前記第2ガス供給部は、
前記反応室に連通し、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスの前記いずれか一方を前記反応室内に供給する第3供給管と、
前記反応室に連通し、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスの前記いずれか他方を前記反応室内に供給する第4供給管と、
を有し、
前記混合部は、前記反応室の内部であって前記第3供給管と前記第4供給管とが接続される部分であり、
前記混合部の前記基板の側の端部よりも前記第3供給管及び前記第4供給管の側において、前記III族原料ガス及び前記V族原料ガスが互いに混合されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の気相成長装置。
【請求項9】
前記第2半導体層の前記成長中に前記基板の表面の光学特性を測定する測定部と、
前記測定部によって測定された光学特性から導出された前記基板の温度、前記第2半導体層の成長速度、及び、前記第2半導体層の組成の少なくともいずれかに基づいて、前記III族原料ガスと前記V族原料ガスとの混合比を制御する制御部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−191236(P2012−191236A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−132290(P2012−132290)
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【分割の表示】特願2009−283352(P2009−283352)の分割
【原出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】