説明

液処理装置

【課題】フットプリントを小さくすることができ、排気と排液との分離機構を特別に設ける必要のない液処理装置を提供すること。
【解決手段】ウエハWを水平に保持し、ウエハWとともに回転可能なウエハ保持部1と、ウエハ保持部1に保持されたウエハWを囲繞し、ウエハWとともに回転可能な回転カップ3と、回転カップ3およびウエハ保持部1を一体的に回転させるモータ2と、ウエハWの表面に処理液を供給する表面処理液供給ノズル4と、回転カップ3の排気および排液を行う排気・排液部6とを具備し、排気・排液部6は、主にウエハWから振り切られた処理液を取り入れて排液する環状をなす排液カップ41と、排液カップ41の外側を囲繞するように設けられ、回転カップ3およびその周囲からの主に気体成分を取り入れて排気する排気カップ42とを有し、排液カップ41からの排液と排気カップ42からの排気が独立して行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウエハ等の基板に対して所定の液処理を行う液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスやフラットパネルディスプレー(FPD)の製造プロセスにおいては、被処理基板である半導体ウエハやガラス基板に処理液を供給して液処理を行うプロセスが多用されている。このようなプロセスとしては、例えば、基板に付着したパーティクルやコンタミネーション等を除去する洗浄処理、フォトリソグラフィ工程におけるフォトレジスト液や現像液の塗布処理等を挙げることができる。
【0003】
このような液処理装置としては、半導体ウエハ等の基板をスピンチャックに保持し、基板を回転させた状態でウエハの表面または表裏面に処理液を供給してウエハの表面または表裏面に液膜を形成して処理を行うものが知られている。
【0004】
この種の装置では、通常、処理液はウエハの中心に供給され、基板を回転させることにより処理液を外方に広げて液膜を形成し、処理液を離脱させることが一般的に行われている。そして、基板の外方へ振り切られた処理液を下方へ導くようにウエハの外側を囲繞するカップ等の部材を設け、ウエハから振り切られた処理液を速やかに排出するようにしている。しかし、このようにカップ等を設ける場合には、処理液がミストとして飛び散り、基板まで達してウォーターマークやパーティクル等の欠陥となるおそれがある。
【0005】
このようなことを防止可能な技術として、特許文献1には、基板を水平支持した状態で回転させる回転支持手段と一体に回転するように、基板から外周方向に飛散した処理液を受ける処理液受け部材を設け、処理液を受け、処理液を外方へ導いて回収するようにした技術が開示されている。この特許文献1において、処理液受け部材は、基板側から順に、水平ひさし部、処理液を外側下方に案内する傾斜案内部、処理液を水平外方へ案内する水平案内部、および垂直に立設する壁部を有し、処理液を狭い範囲に追い込んでミストが基板へ再付着することを防止しつつ処理受け部材の隅部に設けられた排液口を介して水平外方に排出させ、さらに処理液受け部材の外側に配置されたスペーサの内部を外方に延びる溝を介して排液される。
【特許文献1】特開平8−1064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、基板とともに回転する処理液受け部材が処理液を基板外方の狭い範囲に追い込むようにしているため、基板の外側のスペーサ部分が大きいものとなり、装置のフットプリントが大きいものとなってしまう。また、排気は排液とともに行わざるを得ず、下流側に排気・排液を分離するための機構が必要となる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、フットプリントを小さくすることができ、排気と排液との分離機構を特別に設ける必要のない液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、基板を水平に保持し、基板とともに回転可能な基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板を囲繞し、基板とともに回転可能な回転カップと、前記回転カップおよび前記基板保持部を一体的に回転させる回転機構と、基板に処理液を供給する液供給機構と、前記回転カップの排気および排液を行う排気・排液部とを具備し、前記排気・排液部は、主に基板から振り切られた処理液を取り入れて排液する環状をなす排液カップと、前記排液カップの外側に前記排液カップを囲繞するように設けられ、前記回転カップおよびその周囲からの主に気体成分を取り入れて排気する排気カップとを有し、前記排液カップからの排液と前記排気カップからの排気がそれぞれ独立して行われることを特徴とする液処理装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、基板を水平に保持し、基板とともに回転可能な基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板を囲繞し、基板とともに回転可能な回転カップと、前記回転カップおよび前記基板保持部を一体的に回転させる回転機構と、基板の表面に処理液を供給する表面液供給機構と、基板の裏面に処理液を供給する裏面液供給機構と、前記回転カップの排気および排液を行う排気・排液部とを具備し、前記排気・排液部は、主に基板から振り切られた処理液を取り入れて排液する環状をなす排液カップと、前記排液カップの外側に前記排液カップを囲繞するように設けられ、前記回転カップおよびその周囲からの主に気体成分を取り入れて排気する排気カップとを有し、前記排液カップからの排液と前記排気カップからの排気がそれぞれ独立して行われることを特徴とする液処理装置を提供する。
【0010】
上記本発明において、前記保持部材上の基板の外側に、前記保持部材および前記回転カップとともに回転するように設けられ、基板から振り切られた処理液を基板の外方へ導く案内部材をさらに具備することが好ましい。
【0011】
また、前記回転カップは、基板から振り切られた処理液を水平方向に排出する処理液排出部を有しており、前記排液カップは、前記回転カップの外側を囲繞するように設けられ、水平方向に排出された排液を受け止めるように構成することができる。また、前記回転カップは、基板から振り切られた処理液を取り入れて下方へ案内する案内壁と、取り入れた処理液を下方へ排出する開口部とを有しており、前記排液カップは、前記開口部を囲繞するように設けられ、下方に排出された排液を受け止めるように構成することができる。
【0012】
さらに、前記排気カップは、前記回転カップの上方に円環状の導入口が形成されるように配置されてよく、また、壁部に周囲の雰囲気を取り込む取り込み口を有していてよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板の回転とともに回転する回転カップを設けたので、回転カップに遠心力が作用し、固定カップを設けたときのような処理液のミストのはね返りを防止することができる。また、回転カップの外側に排液カップを設けるが、上記回転カップの存在により排液カップからはね返ったミストが基板に到達するおそれが低いため回転カップと排液カップとを近接させることができて排液カップを小さくすることができる。そのため、排気カップが排液カップを囲繞するように設けられていても、装置のフットプリントを小さく維持することができる。そして、このように排液カップの外側に排液カップを囲繞するように排気カップを設けることにより、おおもと部分で排液・排気分離を行うことができ、しかも前記排液カップからの排液と前記排気カップからの排気がそれぞれ独立して行われるので、下流側に排気・排液を分離するための機構を設ける必要がない。また、排気カップが排液カップを囲繞するように設けられているので、処理液のミストが排液カップから漏出しても排気カップでトラップすることができ、装置外へ処理液のミストが飛散することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。ここでは、本発明を半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)の表裏面洗浄を行う液処理装置に適用した場合について示す。
【0015】
図1は本発明の第1の実施形態に係る液処理装置の概略構成を示す断面図、図2はその平面図、図3、4は排気・排液部を拡大して示す断面図である。この液処理装置100は、被処理基板であるウエハWを回転可能に保持するウエハ保持部1と、このウエハ保持部1を回転させる回転モータ2と、ウエハ保持部1に保持されたウエハWを囲繞するように設けられ、ウエハ保持部1とともに回転する回転カップ3と、ウエハWの表面に処理液を供給する表面処理液供給ノズル4と、ウエハWの裏面に処理液を供給する裏面処理液供給ノズル5と、回転カップ3の周縁部に設けられた排気・排液部6とを有している。また、排気・排液部6の周囲およびウエハWの上方を覆うようにケーシング8が設けられている。ケーシング8の上部にはファン・フィルター・ユニット(FFU)9が設けられており、ウエハ保持部1に保持されたウエハWに清浄空気のダウンフローが供給されるようになっている。
【0016】
ウエハ保持部1は、水平に設けられた円板状をなす回転プレート11と、その裏面の中心部に接続され、下方鉛直に延びる円筒状の回転軸12とを有している。回転プレート11の中心部には、回転軸12内の孔12aに連通する円形の孔11aが形成されている。そして、孔12aおよび孔11a内を裏面処理液供給ノズル5が昇降可能となっている。図2に示すように、回転プレート11には、ウエハWの外縁を保持する保持部材13が等間隔で3つ設けられている。この保持部材13は、ウエハWが回転プレート11から少し浮いた状態で水平にウエハWを保持するようになっている。そして、この保持部材13は、ウエハWを保持する保持位置と後方に回動して保持を解除する解除位置との間で移動可能となっている。回転プレート11の端部近傍には中心側部分よりも外側部分のほうが低くなるように周回して傾斜部11bが形成されている。したがって、回転プレート11の端部が他の部分よりも薄く形成されている。
【0017】
回転軸12の下端にはベルト14が巻き掛けられており、ベルト14はプーリー15にも巻き掛けられている。そして、プーリー15はモータ2により回転可能となっており、モータ2の回転によりプーリー15およびベルト14を介して回転軸12を回転するようになっている。
【0018】
表面処理液供給ノズル4は、ノズルアーム16の先端部に保持されており、図示しない液供給チューブから処理液が供給され、その内部に設けられたノズル孔を介して処理液を吐出するようになっている。吐出する処理液としては、洗浄用の薬液、純水等のリンス液、IPAのような乾燥溶媒等を挙げることができ、1種または2種以上の処理液を吐出可能となっている。ノズルアーム16は、図2に示すように軸17を中心として回動可能に設けられており、図示しない駆動機構により、ウエハW中心上の吐出位置とウエハWの外方の退避位置との間で移動可能となっている。なお、ノズルアーム16は上下動可能に設けられており、回動するときには上昇した状態となり、表面処理液供給ノズル4から処理液を吐出する際には、下降した状態となる。
【0019】
裏面処理液供給ノズル5には、内部にその長手方向に沿って延びるノズル孔5aが形成されている。そして、図示しない処理液チューブを介してノズル孔5aの下端から所定の処理液が供給され、その処理液がノズル孔5aを介してウエハWの裏面に吐出されるようになっている。吐出する処理液としては、上記表面処理液供給ノズル4と同様、洗浄用の薬液、純水等のリンス液、IPAのような乾燥溶媒等を挙げることができ、1種または2種以上の処理液を吐出可能となっている。裏面処理液供給ノズル5はウエハ昇降部材としての機能を兼備しており、その上端部にはウエハWを支持するウエハ支持台18を有している。ウエハ支持台18の上面には、ウエハWを支持するための3本のウエハ支持ピン19(2本のみ図示)を有している。そして、裏面処理液供給ノズル5の下端には接続部材20を介してシリンダ機構21が接続されており、このシリンダ機構21によって裏面処理液供給ノズル5を昇降させることによりウエハWを昇降させてウエハWのローディングおよびアンローディングが行われる。
【0020】
回転カップ3は、図3に示すように、回転プレート11の端部から上方に延びて垂直壁を形成するように設けられた円筒状の垂直壁部材31と、垂直壁部材31の上端から内方に延びる円環状の庇部材32とを有している。
【0021】
垂直壁部材31のウエハWとほぼ同じ高さの位置には、内端がウエハWの周縁近傍まで至る円環状かつ板状をなす案内部材35が設けられている。案内部材35は、その表裏面がウエハWの表裏面と略連続するように設けられている。垂直壁部材31には、案内部材35の上方位置および下方位置に、その内側から外側へ貫通する排出孔33および34がそれぞれ周方向に沿って複数設けられている。排出孔33はその下面が案内部材35の表面に接するように設けられ、排出孔34はその下面が回転プレート11の表面に接するように設けられている。そして、モータ2によりウエハ保持部材1および回転カップ3をウエハWとともに回転させて表面処理液供給ノズル4からウエハW表面の中心に処理液を供給した際には、処理液は遠心力でウエハWの表面を広がり、ウエハWの周縁から振り切られる。このウエハW表面から振り切られた処理液は、略連続して設けられた案内部材35の表面に案内されて垂直壁部材31に達し、遠心力により排出孔33を通って、回転カップ3の外側へ排出されるようになっている。また、同様にウエハ保持部材1および回転カップ3をウエハWとともに回転させて裏面処理液供給ノズル5からウエハWの裏面の中心に処理液を供給した際には、処理液は遠心力でウエハWの裏面を広がり、ウエハWの周縁から振り切られる。このウエハW裏面から振り切られた処理液は、ウエハWの裏面と略連続して設けられた案内部材35の裏面に案内されて垂直壁部材31に達し、遠心力により排出孔34を通って、回転カップ3の外側へ排出されるようになっている。このとき垂直壁部材31には遠心力が作用しているから処理液のミストが内側へ戻ることが阻止される。
【0022】
また、案内部材35はこのようにウエハW表面および裏面から振り切られた処理液を案内するので、ウエハWの周縁から脱離した処理液が乱流化し難く、処理液をミスト化させずに回転カップ外へ導くことができる。案内部材35のウエハWと隣接する部分の表裏面の高さはウエハWの表裏面の高さと同じであることが好ましい。なお、図2に示すように、案内部材35には、ウエハ保持部材13に対応する位置に、ウエハ保持部材13を避けるように切り欠き部36が設けられている。
【0023】
排気・排液部6は、主に回転プレート11と回転カップ3に囲繞された空間から排出される排気および排液を回収するためのものであり、図3、4の拡大図にも示すように、回転カップ3における垂直壁部材31の排出孔33、34から排出された排液を受ける環状をなす排液カップ41と、排液カップ41の外側に、排液カップ41を囲繞するように設けられた環状をなす排気カップ42とを備えている。
【0024】
図1および図3に示すように、排液カップ41の底部には、1箇所に排液口43が設けられており、排液口43には排液管44が接続されている。排液管44の下流側には図示しない吸引機構が設けられており、回転カップ3から排液カップ41に集められた排液が排液口43、排液管44を介して速やかに排出され、廃棄または回収される。なお、排液口43は複数箇所設けられていてもよい。
【0025】
また、排気カップ42は、排液カップ41の他、回転カップ3も囲繞し、その上壁42aは庇部材32の上方に位置している。そして、排気カップ42は、その上壁42aと庇部材32との間の環状をなす導入口42bから回転カップ3内およびその周囲の主にガス成分を取り込んで排気するようになっている。また、排気カップ42の下部には、図1および図4に示すように、排気口45が設けられており、排気口45には排気管46が接続されている。排気管46の下流側には図示しない吸引機構が設けられており、回転カップ3の周囲を排気することが可能となっている。排気口45は複数設けられており、処理液の種類に応じて切り替えて使用することが可能となっている。
【0026】
このように、処理液が回転カップを介して排液カップ41に導かれ、気体成分は導入口42bから排気カップ42に導かれ、かつ排液カップ41からの排液と排気カップ42からの排気が独立して行われるようになっているので、排液と排気を分離した状態で導くことが可能となる。
【0027】
排気カップ42には、その上壁に周方向に沿って複数の空気取入口47が設けられ、その内側壁には上下2段に周方向に沿って複数の空気取入口48が設けられている。空気取入口47は、排気カップ42の上方領域の雰囲気を吸引し、空気取入口48は回転プレート11の下方に存在する機構部の雰囲気を吸引し、滞留している処理液のガス化成分を除去することが可能となっている。また、排液カップ41の外側にそれを囲繞するように排気カップ42が設けられているので、排液カップ41から漏出したミストも確実に吸引することができ、処理液のミストが外部に拡散することが防止される。
【0028】
次に、以上のように構成される液処理装置100の動作について図5を参照して説明する。まず、図5の(a)に示すように、裏面処理液供給ノズル5を上昇させた状態で、図示しない搬送アームからウエハ支持台18の支持ピン上にウエハWを受け渡す。次いで、図5の(b)に示すように、裏面処理液供給ノズル5を、ウエハWを保持部材13により保持可能な位置まで下降させ、保持部材13によりウエハWをチャッキングする。そして、図5の(c)に示すように、表面処理液供給ノズル4を退避位置からウエハWの中心上の吐出位置に移動させる。
【0029】
この状態で、図5の(d)に示すように、モータ2により保持部材1を回転カップ3およびウエハWとともに回転させながら、表面処理液供給ノズル4および裏面処理液供給ノズル5から所定の処理液を供給して洗浄処理を行う。
【0030】
この洗浄処理においては、ウエハWの表面および裏面の中心に処理液が供給され、その洗浄液が遠心力によりウエハWの外側に広がり、ウエハWの周縁から振り切られる。この場合に、ウエハWの外側を囲繞するように設けられているカップがウエハWとともに回転する回転カップ3であるから、図6に示すように、ウエハWから振り切られた処理液が垂直壁部材31に当たった際に処理液に遠心力が作用し垂直壁部材31の排出孔33,34の周囲に液膜37を形成するから、固定カップの場合のような飛び散り(ミスト化)は発生し難い。そして、垂直壁部材31に達した処理液は遠心力により排出孔33,34から回転カップ3の外側に排出される。したがって、固定カップを設けた場合のようなカップに当たってミスト化した処理液がウエハWに戻ることが抑制される。処理液の供給が停止されると、液膜37として垂直壁部材31の排出孔33,34の周囲に溜まっていた処理液も排出孔33,34から排出され、回転カップ3内に処理液が存在しない状態とされる。
【0031】
また、このように回転カップ3の存在により、排液カップ41内でミストが発生してもミストがウエハWを汚染するおそれが実質的に存在しないため、排液カップ41は排液可能な程度の極小さいものでよく、その周囲を囲繞するように排気カップ42を設けても装置を小型なものにすることができ、装置のフットプリントを小さくすることができる。そして、このように排液カップ41の外側に排液カップ41を囲繞するように排気カップ42を設けるので、上述のように排液は回転カップ3の垂直壁部材31に設けられた排出孔33,34から排液カップ41に取り込まれるのに対し、回転カップ3内およびその周囲に存在する気体成分は環状の導入口42bから排気カップ42に取り込まれ、おおもと部分で排液・排気分離を行うことができ、しかも排液カップ41からの排液と排気カップ42からの排気が独立して行われるようになっているので、下流側に排気・排液を分離するための機構を設ける必要がない。また、排気カップ42が排液カップ41を囲繞するように設けられているので、処理液のミストが排液カップ41から漏出しても排気カップ42でトラップすることができ、装置外へ処理液のミストが飛散して悪影響を与えることを防止することができる。
【0032】
また、表裏面がウエハWの表裏面と略連続するように案内部材35が設けられているので、遠心力でウエハWの表裏面において周縁から振り切られた処理液は層流状態で案内部材35の表裏面を案内されて垂直壁部材31に至り、排出孔33,34から外部に排出される。したがって、処理液がウエハWから振り切られた時点での処理液のミスト化を極めて効果的に抑制することができる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態に係る液処理装置について説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る液処理装置の要部を拡大して示す断面図である。本実施形態では、案内部材、回転カップおよび排気・排液部の構造が第1の実施形態と異なっている。以下、これらの異なっている部分を主に説明するが、以下に説明する部分以外の他の部分は、第1の実施形態と同様に構成されている。
【0034】
本実施形態においては、第1の実施形態と異なり、回転カップ3の代わりに下方に排液を導く構造を有する回転カップ3′を用いている。また、案内部材35の代わりに裏面が内側から外側に向けて下方に傾斜する構造を有する案内部材35′を用いている。また、このような構造の相違から、排液カップ41と若干構造の異なる排液カップ41′を用いている。さらに、排気を排気管(図示せず)に導きやすくするために、排気カップ42と構造が異なる排気カップ42′を用いている。
【0035】
具体的には、回転カップ3′は、ウエハWから振り切られた処理液の飛散を防止するとともに処理液を下方に導く庇部材51と、庇部材51と案内部材35′との間、および案内部材35′と回転プレート11との間に、それぞれ処理液を通過する複数のスリット53および54を形成するための複数のスペーサ部材55および56とを有している。庇部材51、スペーサ部材55、案内部材35′、スペーサ部材56、回転プレート11は、ねじ止め等により一体的に固定され、これらは一体的に回転されるようになっている。スリット53および54は、周方向に沿って複数配列されており、これら複数のスリット53および54を形成するために、複数のスペーサ部材55および56が周方向に沿って配置されている。このようなスペーサ部材の代わりに第1の実施形態のように孔が形成されたプレートを用いてもよい。
【0036】
庇部材51は、その内側壁が内側から外側に向かって下方に湾曲しており、その下端は回転プレート11よりも下方まで延びている。その下端部と回転プレート11との間の部分、すなわち回転カップ3′の下端部分に下方に向けて円環状の開口部57が形成されており、排液を下方に排出するようになっている。そして、この開口部57を受けるように、すなわち開口部57を囲繞するように排液カップ41′が配置されている。このように庇部材51の下端を回転プレート11の下方まで延ばすことにより、回転カップ3′からの液の排出部をウエハから遠ざけることができ、ミストの戻りを少なくすることができる。このような観点から、庇部材51の下端の位置はできるだけ下方に延ばしてウエハWから極力遠ざけることが好ましい。排液カップ41′は排液カップ41と排液を受ける部分の構成が異なっているのみで、他の構成は排液カップ41とほぼ同じであり、排液口43が設けられそこに排液管44が接続されている点も同じである。
【0037】
庇部材51の外側の面は先端から外周側に向かって下側に傾斜しており、その傾斜に連続して、下側に向かう曲線が形成されている。また、排気カップ42′は、その上壁42a′が庇部材51の傾斜に対応して外周側に向かって下側に傾斜し、その傾斜部分と連続して下側に向かう曲線が形成されている。これにより、上壁42a′と庇部材51の間に形成された開口部42b′から吸引された気体を排気管(図示せず)に導きやすくなっている。
【0038】
このように構成される液処理装置においては、第1の実施形態と同様、モータ2により保持部材1を回転カップ3′およびウエハWとともに回転させながら、表面処理液供給ノズル4および裏面処理液供給ノズル5から所定の処理液を供給して洗浄処理を行う。この際に、ウエハWの表面および裏面において周縁から振り切られた処理液は、案内部材35′の表面および裏面を案内されて、それぞれスリット53および54を通った後、庇部材51の内壁に沿って下方に導かれ、回転カップ3′の下端部分に形成された円環状の開口部57から下方へ排出され、排液カップ41′に取り込まれる。この場合に、本実施形態では、回転カップ3′の下端から下方の排液カップ41′に処理液を導くので、排液カップ41′で処理液がミスト化しても、その位置がウエハWとは大きく離隔しており、高さ位置も異なっているのでウエハWへのミストの影響をより少なくすることができる。
また、したがって、第1の実施形態と同様、排液カップ41′を小さくすることができ、その周囲を囲繞するように排気カップ42′を設けても装置を小型なものにすることができ、装置のフットプリントを小さくすることができる。また、このように排液カップ41′を囲繞するように排気カップ42′を設けることにより、第1の実施形態と同様、おおもと部分で排液・排気分離を行うことができ、しかも排液カップ41′からの排液と排気カップ42′からの排気とを独立に行うことができるので、下流側に排気・排液を分離するための機構を設ける必要がなく、かつ処理液のミストが排液カップ41′から漏出しても排気カップ42′でトラップすることができ、装置外へ処理液のミストが飛散して悪影響を与えることを防止することができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、乱流化によるミスト発生を防止するために案内部材を設けたが、必ずしも設ける必要はない。また、上記実施形態では、ウエハの表裏面洗浄を行う液処理装置を例にとって示したが、本発明はこれに限らず、表面の洗浄処理を行う液処理装置であってもよく、また、液処理については洗浄処理に限らず、レジスト液塗布処理やその後の現像処理等、他の液処理であっても構わない。また、上記実施形態では被処理基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、液晶表示装置(LCD)用のガラス基板に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板等、他の基板に適用可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、半導体ウエハに付着したパーティクルやコンタミネーションを除去するための洗浄装置に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る液処理装置の概略構成を示す断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る液処理装置を一部切り欠いて示す概略平面図。
【図3】図1の液処理装置の排気・排液部を拡大して示す断面図。
【図4】図1の液処理装置の排気・排液部を拡大して示す断面図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る液処理装置の処理動作を説明するための図。
【図6】ウエハから振り切られた処理液の状態を説明するための図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る液処理装置の要部を拡大して示す断面図。
【符号の説明】
【0042】
1;ウエハ保持部
2;回転モータ
3,3′;回転カップ
4;表面処理液供給ノズル
5;裏面処理液供給ノズル
6;排気・排液部
8;ケーシング
9;FFU
11;回転プレート
12;回転軸
13;保持部材
31;垂直壁部材
32,51;庇部材
33,34;排出孔
35,35′;案内部材
41,41′;排液カップ
42,42′;排気カップ
42b;導入口
43;排液口
44;排液管
45;排気口
46;排気管
57;開口部
100;液処理装置
W;ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持し、基板とともに回転可能な基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板を囲繞し、基板とともに回転可能な回転カップと、
前記回転カップおよび前記基板保持部を一体的に回転させる回転機構と、
基板に処理液を供給する液供給機構と、
前記回転カップの排気および排液を行う排気・排液部と
を具備し、
前記排気・排液部は、主に基板から振り切られた処理液を取り入れて排液する環状をなす排液カップと、前記排液カップの外側に前記排液カップを囲繞するように設けられ、前記回転カップおよびその周囲からの主に気体成分を取り入れて排気する排気カップとを有し、前記排液カップからの排液と前記排気カップからの排気がそれぞれ独立して行われることを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
基板を水平に保持し、基板とともに回転可能な基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板を囲繞し、基板とともに回転可能な回転カップと、
前記回転カップおよび前記基板保持部を一体的に回転させる回転機構と、
基板の表面に処理液を供給する表面液供給機構と、
基板の裏面に処理液を供給する裏面液供給機構と、
前記回転カップの排気および排液を行う排気・排液部と
を具備し、
前記排気・排液部は、主に基板から振り切られた処理液を取り入れて排液する環状をなす排液カップと、前記排液カップの外側に前記排液カップを囲繞するように設けられ、前記回転カップおよびその周囲からの主に気体成分を取り入れて排気する排気カップとを有し、前記排液カップからの排液と前記排気カップからの排気がそれぞれ独立して行われることを特徴とする液処理装置。
【請求項3】
前記保持部材上の基板の外側に、前記保持部材および前記回転カップとともに回転するように設けられ、基板から振り切られた処理液を基板の外方へ導く案内部材をさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記回転カップは、基板から振り切られた処理液を水平方向に排出する処理液排出部を有しており、前記排液カップは、前記回転カップの外側を囲繞するように設けられ、水平方向に排出された排液を受け止めることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記回転カップは、基板から振り切られた処理液を取り入れて下方へ案内する案内壁と、取り入れた処理液を下方へ排出する開口部とを有しており、前記排液カップは、前記開口部を囲繞するように設けられ、下方に排出された排液を受け止めることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記排気カップは、前記回転カップの上方に円環状の導入口が形成されるように配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項7】
前記排気カップは、壁部に周囲の雰囲気を取り込む取り込み口を有していることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−311775(P2007−311775A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107725(P2007−107725)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】