説明

測定装置、露光装置及びデバイスの製造方法

【課題】物体の位置の測定に有利な技術を提供する。
【解決手段】第1ヘッド112a、112c又は第2ヘッド113aで第1物体に対する第2物体の相対的な位置を測定する第1測定部110と、第1物体に対する第2物体の相対的な位置を求める処理を行う処理部と、を有し、処理部は、第1ヘッド112a、112c及び第2ヘッド113aのうち一方のヘッドで以前に検出された回折格子111a、111b上の位置を他方のヘッドの視野の中心に位置決めした状態で一方のヘッドで以前に検出された回折格子上の位置とは別の位置を一方のヘッドで検出する処理を、一方のヘッドが回折格子の全面を検出するまで繰り返して回折格子の変形量を求める第1処理と、回折格子の変形量に基づいて、第1ヘッド112a、112c又は第2ヘッド113aで測定された第1物体に対する第2物体の相対的な位置を補正する第2処理と、を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、露光装置及びデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィー技術を用いて半導体デバイスを製造する際に、レチクル(マスク)のパターンを、投影光学系を介して、ウエハ等の基板に投影してパターンを転写する露光装置が使用されている。露光装置では、基板を保持したステージを移動させて基板上のショット領域を変えながらパターンの転写を繰り返している。従って、レチクルのパターンを基板上のショット領域に正確に転写するためには、基板を保持するステージの位置決めを高精度に行う必要がある。ステージの位置決めに関する技術については、従来から幾つか提案されている(特許文献1乃至3参照)。
【0003】
特許文献1には、回折格子の干渉原理を用いてステージの位置を測定する技術が提案されている。特許文献2には、光学式変位センサなどを用いてステージの2軸方向の変位を同時に測定する技術が提案されている。特許文献3には、回折格子の干渉原理及び干渉計を並列に用いてステージの位置を測定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−270122号公報
【特許文献2】特開平6−341861号公報
【特許文献3】特開2009−33165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、回折格子の指標を描画する際の描画誤差や回折格子を取り付けする際の取り付け誤差などに起因して、ステージの位置を測定する際に測定誤差が発生する問題がある。また、回折格子の温度分布変化や経時変化に伴う回折格子の歪みに起因して、ステージの位置を測定する際に測定誤差が発生する問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、物体の位置の測定に有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての測定装置は、第1物体に対する第2物体の相対的な位置を測定する測定装置であって、前記第1物体に設けられた回折格子と、前記第2物体に設けられた第1ヘッド及び第2ヘッドとを含み、前記第1ヘッド又は前記第2ヘッドで前記第1物体に対する前記第2物体の相対的な位置を測定する第1測定部と、前記第1物体に対する前記第2物体の相対的な位置を求める処理を行う処理部と、を有し、前記処理部は、前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドのうち一方のヘッドで以前に検出された前記回折格子上の位置を他方のヘッドの視野の中心に位置決めした状態で前記一方のヘッドで以前に検出された前記回折格子上の位置とは別の位置を前記一方のヘッドで検出する処理を、前記一方のヘッドが前記回折格子の全面を検出するまで繰り返して前記回折格子の変形量を求める第1処理と、前記回折格子の変形量に基づいて、前記第1ヘッド又は前記第2ヘッドで測定された前記第1物体に対する前記第2物体の相対的な位置を補正する第2処理と、を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、物体の位置の測定に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一側面としての露光装置の構成を示す概略図である。
【図2】基板ステージと、回折格子と、第1ヘッドと、第2ヘッドと、アライメント用プレートとの位置関係を示す図である。
【図3】基板ステージが所定の位置に位置している状態において、回折格子と、第1ヘッドと、第2ヘッドとの位置関係を示す図である。
【図4】アライメントスコープがアライメントマークを検出している状態において、回折格子と、第1ヘッドと、第2ヘッドとの位置関係を示す図である。
【図5】アライメントスコープがアライメントマークを検出している状態において、回折格子と、第1ヘッドと、第2ヘッドとの位置関係を示す図である。
【図6】回折格子の全面を検出する際において、回折格子と、第1ヘッドと、第2ヘッドとの位置関係を示す図である。
【図7】アライメント用プレートの構成の一例を示す図である。
【図8】第1ヘッドと第2ヘッドとの間の距離の設計距離からのずれ量に起因する誤差を低減する処理を説明するための図である。
【図9】干渉計を用いて、アライメントマークの理想位置からのずれ量を検出する場合を説明するための図である。
【図10】干渉計が基板ステージの位置を測定している状態において、回折格子と、第1ヘッドと、第2ヘッドとの位置関係を示す図である。
【図11】回折格子の全面を検出する際において、回折格子と、第1ヘッドと、第2ヘッドとの位置関係を示す図である。
【図12】回折格子の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一側面としての露光装置100の構成を示す概略図である。露光装置100は、レチクル(マスク)102を照明光学系101で照明し、投影光学系103を介して、基板ステージ104に保持された基板105を露光する投影露光装置である。
【0013】
投影光学系103は、レチクルステージ106に保持されたレチクル102のパターンを、ウエハや液晶基板などの基板105に投影する。装置基準を規定する基準フレーム107は、投影光学系103を支持する。マウント108は、基準フレーム107の制振機能及び床振動に対する除振機能を有する。基板ステージ104は、基板105を保持する。ステージ定盤109は、基板ステージ104を支持する。
【0014】
測定部(第1測定部)110は、回折格子の干渉原理を用いて、第1物体としての基準フレーム107に対する第2物体としての基板ステージ104の相対的な位置を測定する。測定部110は、本実施形態では、回折格子111a〜111dと、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dとを含む。回折格子111a〜111dは、基準フレーム107(の下面)に設けられ(固定され)、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dは、基板ステージ104に設けられる(固定される)。但し、回折格子111a〜111dを基板ステージ104に設け、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dを基準フレーム107に設けてもよい。回折格子111a〜111dには、指標(目盛)が等間隔で高精度に形成されている。第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dは、回折格子111a〜111dのそれぞれに対向して配置されている。
【0015】
アライメントスコープ(第2測定部)114は、測定部110とは別体で構成され、基板ステージ104に固定されたアライメント用プレート115に形成されたアライメントマークを検出することで基板ステージ104の位置を測定する。なお、本実施形態では、アライメント用プレート115に形成されるアライメントマークは、互いに直交する2つの方向の座標(位置)を同時に検出することができるマークを想定している。但し、アライメント用プレート115に形成されるアライメントマークは、1つの方向の座標(位置)のみを検出することができるマークであってもよい。
【0016】
制御部116は、CPUやメモリなどを含み、露光装置100の全体(動作)を制御する。例えば、制御部116は、測定部110の測定結果やアライメントスコープ114の測定結果などを用いて基板ステージ104の駆動を制御し、基板ステージ104の位置決めを行う位置決め機構として機能する。また、基板ステージ104の位置決めにおいて、制御部116は、後述するように、基準フレーム107に対する基板ステージ104の相対的な位置を求める処理を行う処理部として機能する。
【0017】
以下、露光装置100における基板ステージ104の位置決めに関連する処理について説明する。図2は、基板ステージ104と、回折格子111a〜111dと、第1ヘッド112a〜112dと、第2ヘッド113a〜113dと、アライメント用プレート115との位置関係の一例を示す図である。
【0018】
図2に示すように、第1ヘッド112aと第2ヘッド113aとの間の間隔(距離)、第1ヘッド112cと第2ヘッド113cとの間の間隔は、X軸方向にd、Y軸方向にゼロである。また、第1ヘッド112bと第2ヘッド113bとの間の間隔、第1ヘッド112dと第2ヘッド113dとの間の間隔は、X軸方向にゼロ、Y軸方向にdである。アライメント用プレート115には、アライメントスコープ114で検出可能な複数のアライメントマーク(指標の検出基準位置)115a〜115iがX軸方向及びY軸方向に等間隔で形成されている。
【0019】
アライメント用プレート115において、左端に形成されたアライメントマーク115aと右端に形成されたアライメントマーク115cとの間の間隔(距離)は、本実施形態ではdであるが、d以上であればよい。同様に、アライメント用プレート115において、上端に形成されたアライメントマーク115aと下端に形成されたアライメントマーク115gとの間の間隔は、本実施形態ではdであるが、d以上であればよい。
【0020】
第1ヘッド112a〜112d、第2ヘッド113a〜113d及びアライメント用プレート115は、ゼロデュア(登録商標)やインバーなどの低熱膨張部材で基板ステージ104に一体的に固定されている。第1ヘッド112a〜112d、第2ヘッド113a〜113d及びアライメント用プレート115のそれぞれの間の間隔は常に保証され、回折格子111a〜111dの変形量を求める際の基準となる。ここで、回折格子111a〜111dの変形量とは、回折格子111a〜111dに描画された指標の描画誤差、基準フレーム107に対する回折格子111a〜111dの取り付け誤差、回折格子111a〜111dの歪みなどに起因する相対誤差量である。
【0021】
回折格子111a〜111dの変形量を求める処理(第1処理)について説明する。本実施形態では、回折格子111a〜111dの仕様は、2次元型のインクリメンタル方式とする。但し、回折格子111a〜111dの仕様として、アブソリュート方式を採用してもよい。
【0022】
まず、回折格子111a〜111dの原点位置を第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dで検出するために、図3に示すように、基板ステージ104を所定の位置に駆動する。所定の位置は、例えば、突き当てによって規定される。回折格子111a〜111dには、原点位置を識別可能な識別子OPa〜OPdが形成されている。基板ステージ104が所定の位置に位置している状態において、第1ヘッド112a〜112dのそれぞれで対応する識別子OPa〜OPdを検出することによって、回折格子111a〜111dの原点位置を検出する。
【0023】
次いで、アライメント用プレート115がアライメントスコープ114の測定位置MPに位置するように基板ステージ104を駆動する。例えば、図4(a)に示すように、アライメント用プレート115に形成された複数のアライメントマーク115a〜115iのうちアライメントマーク115aがアライメントスコープ114の測定位置MPに位置するように基板ステージ104を駆動する。そして、アライメントスコープ114でアライメントマーク115aを検出する。この際、アライメントスコープ114で検出されるアライメントマーク115aの位置(即ち、基板ステージ104の位置)を基準位置として、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cのそれぞれで回折格子111cの座標(回折格子上の位置)を検出する。上述したように、アライメント用プレート115には、複数のアライメントマーク115a〜115iが形成されている。同様に、図4(b)乃至図4(d)に示すように、アライメントマーク115b〜115iのそれぞれをアライメントスコープ114で順次検出しながら、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cのそれぞれで回折格子111cの座標を検出する。例えば、図4(b)は、アライメントマーク115dをアライメントスコープ114で検出しながら、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cのそれぞれで回折格子111cの座標を検出している状態を示している。図4(c)は、アライメントマーク115gをアライメントスコープ114で検出しながら、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cのそれぞれで回折格子111cの座標を検出している状態を示している。図4(d)は、アライメントマーク115iをアライメントスコープ114で検出しながら、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cのそれぞれで回折格子111cの座標を検出している状態を示している。また、図4(a)乃至図4(d)では、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cで検出された回折格子111cの座標を黒丸(ドット)で示している。
【0024】
なお、図4(a)乃至図4(d)では、アライメントマーク115a〜115iのそれぞれをアライメントスコープ114で順次検出しながら、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cのそれぞれで回折格子111cの座標を検出すると説明した。但し、実際には、図5(a)及び図5(b)に示すように、第1ヘッド112a、112b及び112d、及び、第2ヘッド113a、113b及び113dのそれぞれでも対応する回折格子111a、111b及び111dの座標を検出する。即ち、アライメントマーク115a〜115iのそれぞれをアライメントスコープ114で順次検出しながら、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dで対応する回折格子111a乃至111dの座標を検出する。図5(a)は、アライメントマーク115aをアライメントスコープ114で検出しながら、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dで対応する回折格子111a乃至111dの座標を検出している状態を示している。図5(b)は、アライメントマーク115iをアライメントスコープ114で検出しながら、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dで対応する回折格子111a乃至111dの座標を検出している状態を示している。また、図5(a)及び図5(b)では、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dで検出された回折格子111a〜111dの座標を黒丸(ドット)で示している。
【0025】
次に、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cのうち一方のヘッドで検出された回折格子111cの座標を他方のヘッドで検出できるように基板ステージ104を駆動する。例えば、図6(a)に示すように、第2ヘッド113cで以前に検出された回折格子111cの座標を第1ヘッド112cの視野の中心に位置決めした状態で、第2ヘッド113cで回折格子111cの座標を検出する。この際、第2ヘッド113cで検出される座標は、第2ヘッド113cで以前に検出された回折格子111cの座標とは別の座標(位置)である。ここで、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cのみでは、図6(d)以降の回折格子111cの座標(Z方向)を検出することができない。但し、実際には、他の第1ヘッド112a、112b及び112d、他の第2ヘッド113a、113b及び113dも同時に回折格子の座標を検出している。例えば、第1ヘッド112b及び第2ヘッド113bで回折格子111bの座標を検出する際には、他の第1ヘッド及び第2ヘッドで回折格子111a、111c及び111dの座標も同時に検出している。これにより、図6(d)以降の回折格子111cの座標も検出することができる。
【0026】
このような処理を繰り返して、図6(b)乃至図6(e)に示すように、回折格子111cの全面(の座標)を検出する(即ち、回折格子111cの全面を検出するまで処理を繰り返す)。図6(b)乃至図6(e)では、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cで検出された回折格子111cの座標を黒丸(ドット)で示している。かかる検出結果から回折格子111cの変形量を求めることができる。なお、図6(a)乃至図6(e)では、回折格子111cの変形量を求めることについて説明した。但し、実際には、第1ヘッド112a、112b及び112d、及び、第2ヘッド113a、113b及び113dを用いて、回折格子111a、111b及び111dについても同様な処理を行う。これにより、回折格子111a、111b及び111dのそれぞれの変形量を求めることができる。
【0027】
基板ステージ104の位置決めの際には、まず、回折格子111a〜111dの変形量に基づいて、測定部110で測定された基準フレーム107に対する基板ステージ104の相対的な位置を補正する処理(第2処理)を行う。これにより、回折格子111a〜111dの変形に起因する測定部110の測定誤差を低減させることができ、基板ステージ104の位置決めを高精度に行うことが可能となる。
【0028】
アライメント用プレート115は、図7(a)乃至図7(c)に示すように、基板ステージ104における位置や寸法を変更することが可能である。上述した処理で回折格子111a〜111dの変形量を求める場合には、実際には、アライメント用プレート115に形成されたアライメントマーク115a〜115iやアライメントスコープ114に起因する誤差が含まれてしまう。従って、アライメントスコープ114で検出されたアライメントマーク115a〜115iの位置を基準位置とする計測を繰り返すと、誤差が累積(増大)してしまう。このような誤差を低減させるためには、例えば、図7(a)に示すように、アライメント用プレート115を配置すればよい。図7(a)では、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dで回折格子上の座標(位置)を検出する際の初期検出位置が回折格子上のX座標の中央付近となるようにアライメント用プレート115を配置している。そして、X座標の正方向又は負方向の回折格子上の座標を検出する際には、X座標の中央付近における初期検出位置を基準にする。これにより、初期検出位置からのX座標の正方向又は負方向への計測の繰り返し回数を減少することが可能となり、累積される誤差を低減することができる。また、図7(b)に示すように、アライメント用プレート115の寸法を拡大させたり、図7(c)に示すように、複数のアライメント用プレート115を用いたりしても、累積される誤差を低減することができる。
【0029】
また、第1ヘッド112a〜112dと第2ヘッド113a〜113dとの間の距離が設計距離からずれている場合もある。このような場合には、上述した処理で求められる回折格子111a〜111dの変形量に、第1ヘッド112a〜112dと第2ヘッド113a〜113dとの間の距離の設計距離からのずれ量に起因する誤差が含まれてしまう。かかる誤差を低減する処理を図8(a)乃至図8(c)を参照して説明する。なお、ここでは、第1ヘッド112a〜112dと第2ヘッド113a〜113dとの間の距離が1軸方向(X軸方向)のみにずれている場合を例に説明する。
【0030】
図8(a)に示すように、第1ヘッド112aと第2ヘッド113aとの間の距離はd、アライメント用プレート115に形成された隣接するアライメントマーク間の距離はd/N(Nは、任意の自然数)である。また、右端に形成されたアライメントマークと左端に形成されたアライメントマークとの間の距離は、L3(d以上)である。従って、アライメント用プレート115に形成されたアライメントマークは、第1ヘッド112aと第2ヘッド113aとの間の距離dと等しい距離で形成された第1アライメントマーク115mと第2アライメントマーク115nを含んでいる。
【0031】
まず、図8(a)に示すように、アライメントスコープ114が第1アライメントマーク115mを検出するように基板ステージ104を位置決めして第2ヘッド113aで回折格子111aの座標(位置)を検出する(第3処理)。
【0032】
次いで、図8(b)に示すように、第1アライメントマーク115mの左隣に形成されたアライメントマークをアライメントスコープ114で順次検出していく。そして、アライメントスコープ114が第2アライメントマーク115nを検出するように基板ステージ104を位置決めして第1ヘッド112aで回折格子111aの座標(位置)を検出する(第4処理)。なお、図8(b)では、実際には、水平方向のみに移動させる基板ステージ104の位置を、下方向にも移動させて図示している。
【0033】
次に、第1アライメントマーク115mの検出時に第2ヘッド113aで検出した回折格子111aの座標と第2アライメントマーク115nの検出時に第1ヘッド112aで検出した回折格子111aの座標との差分を求める。そして、かかる差分を第1ヘッド112aと第2ヘッド113aとの間の距離の設計距離からのずれ量とする(第5処理)。なお、第1ヘッド112b〜112dと第2ヘッド113b〜113dとの間の距離の設計距離からのずれ量も同様にして求めることができる。
【0034】
第1ヘッド112aと第2ヘッド113aとの間の距離は、理想的には、d(設計距離)であるが、実際には、設計距離からΔdずれている。通常、設計距離からのずれ量Δdは非常に小さい値であるため、回折格子111aが変形していたとしても、ずれ量Δdを検出する際の誤差量は極めて小さくなる。
【0035】
基板ステージ104の位置決めの際には、まず、回折格子111a〜111dの変形量、及び、ずれ量Δdに基づいて、測定部110で測定された基準フレーム107に対する基板ステージ104の相対的な位置を補正する。これにより、回折格子111a〜111dの変形や設計距離からのずれ量に起因する測定部110の測定誤差を低減させることができ、基板ステージ104の位置決めを高精度に行うことが可能となる。
【0036】
なお、図8(c)に示すように、回折格子上の異なる複数の座標(位置)の検出結果から2つのヘッド間の距離の設計距離からのずれ量を求めることで、回折格子の変形に起因する誤差が低減され、設計距離からのずれ量をより高精度に求めることができる。
【0037】
また、アライメント用プレート115に形成されたアライメントマーク115a〜115iが理想位置からずれている場合もある。このような場合には、図9に示すように、干渉計118a及び118bを用いて、アライメントマーク115a〜115iの理想位置からのずれ量を検出すればよい。
【0038】
干渉計118a及び118bは、基準フレーム107に設けられ(固定され)、測定軸を通過して基板ステージ104に設けられた干渉計ミラー119a及び119bで反射され、測定軸を戻ってくる光を検出して基板ステージ104の位置を検出する。但し、上述したように、干渉計118a及び118bは、アライメントマーク115a〜115iの理想位置からのずれ量を検出する検出部としても機能する。温度、気温、湿度が一定に維持(管理)された空間においては、干渉計118a及び118bのそれぞれの精度は、測定軸の光路長L1及びL2に比例する。従って、干渉計118a及び118bは、光路長L1及びL2が短ければ短いほど、アライメントマーク115a〜115iの理想位置からのずれ量を高精度に検出することができる。
【0039】
アライメントマーク115a〜115iの理想位置からのずれ量を検出する際には、まず、アライメントスコープ114でアライメントマークを検出できる位置に基板ステージ104を駆動する。かかる位置は、設計上のアライメントマークの位置(理想位置)に基づいて決定される。次いで、アライメントスコープ114でアライメント用プレート115に形成されたアライメントマーク115a〜115iのそれぞれを検出する。この際、アライメントマーク115a〜115iの理想位置からのずれ量を干渉計118a及び118bで検出する。そして、アライメントマーク115a〜115iの理想位置からのずれ量に基づいてアライメントスコープ114で検出したアライメントマーク115a〜115iの位置(即ち、基板ステージ104の位置)を補正した補正位置を基準位置とする。これにより、アライメント用プレート115に形成されたアライメントマーク間の相対位置が理想的な相対位置からずれている場合であっても、回折格子上の座標(位置)を高精度に検出することが可能となる。
【0040】
また、これまでは、アライメント用プレート115に形成されたアライメントマーク115a〜115iの位置を基準位置とする場合について説明したが、干渉計118a及び118bで測定された基板ステージ104の位置を基準位置とすることも可能である。換言すれば、アライメント用プレート115を用いることなく、光路長L1及びL2が十分に短くなる範囲で測定された基板ステージ104の位置を基準位置とすることができる。
【0041】
光路長L1及びL2が十分に短くなる位置に基板ステージ104が位置決めされている場合、干渉計118a及び118bの精度は、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dの精度と同等又はそれ以上となる。この場合、干渉計118a及び118bの測定範囲が第1ヘッド112a〜112dと第2ヘッド113a〜113dとの間の距離d以上であれば、上述した処理によって、回折格子111a〜111dの全面の座標(位置)を高精度に検出することができる。
【0042】
具体的には、まず、回折格子111a〜111dの原点位置を第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dで検出する。次いで、干渉計118a及び118bで基板ステージ104の位置を測定しながら、予め決められた規定位置に基板ステージ104を駆動する。かかる規定位置は、光路長L1及びL2が十分に短くなる基板ステージ104の位置である。この状態において、干渉計118a及び118bで測定される基板ステージ104の位置を基準位置として、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dで対応する回折格子111a〜111dの座標(位置)を検出する。そして、干渉計118a及び118bで基板ステージ104の位置を測定しながら基板ステージ104を順次駆動して、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dで対応する回折格子111a〜111dの座標を検出する。図10(a)乃至図10(c)は、干渉計118a及び118bで基板ステージ104の位置を測定しながら、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cのそれぞれで回折格子111cの座標を検出している状態を示している。図10(a)乃至図10(c)では、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cで検出された回折格子111cの座標を黒丸(ドット)で示している。
【0043】
次に、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cのうち一方のヘッドで検出された回折格子111cの座標を他方のヘッドで検出できるように基板ステージ104を駆動する。例えば、図11(a)に示すように、第2ヘッド113cで以前に検出された回折格子111cの座標を第1ヘッド112cの視野の中心に位置決めした状態で、第2ヘッド113cで回折格子111cの座標を検出する。この際、第2ヘッド113cで検出される座標は、第2ヘッド113cで以前に検出された回折格子111cの座標とは別の座標(位置)である。図11(a)乃至図11(c)に示すように、このような処理を繰り返すことで、回折格子111cの全面(の座標)を検出する(即ち、回折格子111cの全面を検出するまで処理を繰り返す)。図11(a)乃至図11(c)では、第1ヘッド112c及び第2ヘッド113cで検出された回折格子111cの座標を黒丸(ドット)で示している。かかる検出結果から回折格子111cの変形量を求めることができる。なお、図10(a)乃至図10(c)、及び、図11(a)乃至図11(c)では、回折格子111cの変形量を求めることについて説明した。但し、実際には、第1ヘッド112a、112b及び112d、及び、第2ヘッド113a、113b及び113dを用いて、回折格子111a、111b及び111dについても同様な処理を行う。これにより、回折格子111a、111b及び111dのそれぞれの変形量を求めることができる。
【0044】
また、回折格子111a〜111dは、図12に示すように、切り欠き部120a〜120dを有していてもよい。切り欠き部120a〜120dを有する回折格子111a〜111dであっても、上述した処理によって、回折格子111a〜111dのそれぞれの変形量を求めることができる。
【0045】
また、露光装置100は、基板ステージ104と基板ステージ104に設けられた第1ヘッド及び第2ヘッドに対応する回折格子111a〜111dとのセットを複数有する場合もある。例えば、露光装置100が基板ステージ104と基板ステージ104に設けられた第1ヘッド及び第2ヘッドに対応する回折格子111a〜111dとのセットを2つ有する構成、所謂、ツインステージの構成を有する場合について考える。
【0046】
ツインステージの構成では、一般的に、計測ステーションにてアライメント処理を行い、露光ステーションで露光処理を行うことが多く、2つの基板ステージは、各ステーション間をスワップ移動する。2つの基板ステージに設けられた第1ヘッドと、第2ヘッドと、アライメント用プレートとの位置関係、及び、2つの基板ステージに設けられたアライメント用プレートに形成されたアライメントマークの位置関係は、理想的には、同一である。但し、実際には、2つの基板ステージに設けられた第1ヘッドと、第2ヘッドと、アライメント用プレートとの位置関係、及び、2つの基板ステージに設けられたアライメント用プレートに形成されたアライメントマークの位置関係は異なっている。従って、上述した処理を計測ステーション及び露光ステーションのそれぞれで行うことが必要となる。例えば、計測ステーション及び露光ステーションのそれぞれに設けられた回折格子が図2に示すような構成を有する場合には、上述した処理を4回行う必要がある。従って、基板ステージの数がM、回折格子の検出領域の数がNである場合、上述した処理を行う回数はM×Nとなる。
【0047】
なお、本実施形態では、アライメント用プレートに形成されたアライメントマーク及び回折格子の座標(位置)を検出する際の検出回数について特に説明しなかったが、必要精度に応じて任意に設定することができる。
【0048】
また、上述した処理、即ち、回折格子の変形量を求めるタイミングは、一般的には、定期メンテナンスを行うタイミングと同じにすればよい。但し、露光装置の通常稼働中にも定期的に回折格子の変形量を求め、その変形量の変化が所定の基準値を超えた場合に、エラーを通知する、或いは、上述した処理を行うことも可能である。これにより、回折格子の温度分布変化や経時変化に伴う回折格子の歪み(変形)にも対応することが可能となり、基板ステージの位置決め精度を中長期的に安定させることができる。
【0049】
また、アライメント用プレートに形成されたアライメントマークの理想位置からのずれ量を求める方法としては、上述した干渉計118a及び118bを用いた方法の他に、例えば、以下の2つの方法がある。なお、上述した干渉計118a及び118bを用いた方法では、アライメントスコープ114を用いている。但し、レチクル102の位置(及びレチクル102と基板105との相対的な位置)を測定するアライメントスコープを用いてもアライメントマークの理想位置からのずれ量を求めることが可能である。
【0050】
第1の方法は、基準基板を用いる方法である。具体的には、まず、基板ステージ104に基準基板を配置する。次いで、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dで対応する回折格子111a〜111dの座標(位置)を検出しながら、アライメントスコープ114で基準基板上の基準マークを検出する。そして、基準基板上の基準マークの位置を基準として、アライメント用プレート115に形成されたアライメントマークの理想位置からのずれ量を求める。
【0051】
第2の方法は、検査用レチクル及び検査用基板を用いる方法である。まず、レチクルステージ106に検査用レチクルを載置し、基板ステージ104に検査用基板を載置する。次いで、アライメントスコープ114でアライメント用プレート115に形成されたアライメントマークを検出する。次に、アライメントマークの位置を基準として、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dで対応する回折格子111a〜111dの座標を検出しながら検査用基板を露光する。そして、検査用基板における露光結果を基準として、アライメント用プレート115に形成された形成されたアライメントマークの理想位置からのずれ量を求める。
【0052】
また、投影光学系の光軸位置を測定するセンサが基板ステージに配置されている場合には、かかるセンサをアライメントスコープ114の代わりに用いてもよい。即ち、投影光学系の光軸中心位置を基準として、上述した処理を行うことも可能である。
【0053】
このように、露光装置100は、回折格子111a〜111dの変形量に基づいて、第1ヘッド112a〜112d及び第2ヘッド113a〜113dで測定された基板ステージ104の位置を補正して基板ステージ104の位置決めを行う。従って、露光装置100は、基板ステージ104の位置決め精度を向上させて、高品位なデバイス(半導体素子、LCD素子、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッドなど)を提供することができる。かかるデバイスは、露光装置100を用いてフォトレジスト(感光剤)が塗布された基板(ウエハ、ガラスプレート等)を露光する工程と、露光された基板を現像する工程と、その他の周知の工程と、を経ることによって製造される。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1物体に対する第2物体の相対的な位置を測定する測定装置であって、
前記第1物体に設けられた回折格子と、前記第2物体に設けられた第1ヘッド及び第2ヘッドとを含み、前記第1ヘッド又は前記第2ヘッドで前記第1物体に対する前記第2物体の相対的な位置を測定する第1測定部と、
前記第1物体に対する前記第2物体の相対的な位置を求める処理を行う処理部と、を有し、
前記処理部は、
前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドのうち一方のヘッドで以前に検出された前記回折格子上の位置を他方のヘッドの視野の中心に位置決めした状態で前記一方のヘッドで以前に検出された前記回折格子上の位置とは別の位置を前記一方のヘッドで検出する処理を、前記一方のヘッドが前記回折格子の全面を検出するまで繰り返して前記回折格子の変形量を求める第1処理と、
前記回折格子の変形量に基づいて、前記第1ヘッド又は前記第2ヘッドで測定された前記第1物体に対する前記第2物体の相対的な位置を補正する第2処理と、
を行うことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記第1測定部とは別体で構成され、前記第2物体の位置を測定する第2測定部を更に有し、
前記処理部は、前記第2測定部で測定された前記第2物体の位置を基準位置として前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドのそれぞれで前記回折格子上の位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記第2測定部は、前記第2物体に設けられたアライメントマークを検出することで前記第2物体の位置を測定するアライメントスコープを含むことを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記アライメントマークの位置の理想位置からのずれ量を検出する検出部を更に有し、
前記処理部は、前記検出部で検出された前記理想位置からのずれ量に基づいて前記アライメントスコープで測定された前記第2物体の位置を補正した補正位置を前記基準位置とすることを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記アライメントマークは、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとの間の距離と等しい距離で前記第2物体に設けられた第1アライメントマークと第2アライメントマークとを含み、
前記処理部は、
前記アライメントスコープが前記第1アライメントマークを検出するように前記第2物体を位置決めして前記第2ヘッドで前記回折格子上の位置を検出する第3処理と、
前記アライメントスコープが前記第2アライメントマークを検出するように前記第2物体を位置決めして前記第1ヘッドで前記回折格子上の位置を検出する第4処理と、
前記第3処理で検出された前記回折格子上の位置と前記第4処理で検出された前記回折格子上の位置との差分を前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとの間の距離の設計距離からのずれ量として求める第5処理と、を行い、
前記第2処理では、前記回折格子の変形量、及び、前記設計距離からのずれ量に基づいて、前記第1ヘッド又は前記第2ヘッドで測定された前記第1物体に対する前記第2物体の相対的な位置を補正することを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項6】
前記第2測定部は、測定軸を通過して前記第2物体で反射され、前記測定軸を戻ってくる光を検出して前記第2物体の位置を測定する干渉計を含むことを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項7】
ステージに保持された基板を露光する露光装置であって、
装置基準を規定する基準フレームを第1物体、前記ステージを第2物体として、前記基準フレームに対する前記ステージの相対的な位置を測定する請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の測定装置と、
前記測定装置で測定された前記基準フレームに対する前記ステージの相対的な位置に基づいて、前記ステージを位置決めする位置決め機構と、
を有することを特徴とする露光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の露光装置を用いて基板を露光するステップと、
前記ステップで露光された前記基板を現像するステップと、
を有することを特徴とするデバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−225907(P2012−225907A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−48613(P2012−48613)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】