説明

炭化シリコン膜の製造方法

【課題】良好な膜質であり所望の導電型や導電性に制御された炭化シリコン膜を低コストで効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明の炭化シリコン膜の製造方法は、不純物領域を有する炭化シリコン膜の製造方法である。表層にシリコン膜16aを有する基板11のシリコン膜16aを炭化処理して、炭化された膜を含んだ炭化シリコン膜13を形成する工程を有する。不純物領域になる部分のシリコン膜を炭化処理する前に、この部分に不純物を注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化シリコン膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、整流素子やインバータ等の高耐圧パワーデバイスのワイドバンドギャップ半導体材料として、炭化シリコンが注目されている。炭化シリコンは、絶縁破壊電界が高いのでデバイスを高耐圧にすることができる。炭化シリコンは、機械的強度、耐熱性、化学的安定性に優れるという特性を有しており、MEMSの構造体材料としても期待されている。
【0003】
炭化シリコンからなる単結晶基板の製造方法としては、炭化シリコン種結晶を用いた昇華再結晶法により得られるインゴッドをスライスする方法が知られている。この方法では、昇華再結晶法では、1700℃近辺の超高温処理が必要であるので、単結晶基板を低コストで効率よく製造することや、単結晶基板を大口径にすることが難しい。
【0004】
炭化シリコン膜の製造方法としては、基板上にCVD法等により炭化シリコンを結晶成長させる手法が知られている。この手法によれば、昇華再結晶法よりも処理温度を下げることや単結晶基板よりも大面積の炭化シリコン膜を製造することが可能になる。しかしながら、この手法では高真空処理が必要になるので、炭化シリコン膜を低コストで効率よく製造することが難しい。また、炭化シリコン膜の結晶構造が基板の表面状態に影響されるため、良好な膜質の炭化シリコン膜を製造することが難しい。例えば、シリコン基板の表面に炭化シリコンを結晶成長させると、炭化シリコンがシリコンと結晶整合しないので結晶欠陥を含んだ炭化シリコン膜が形成される。酸化シリコン膜をバッファ層として炭化シリコンを結晶成長させると、疎な膜質の炭化シリコン膜が形成されてしまう。このような炭化シリコン膜を用いてデバイスを製造すると、デバイスが所望の特性にならなくなる。
【0005】
このような問題点を解決する技術として、特許文献1〜3に開示されている技術が挙げられる。特許文献1、2では、SOI基板表層の単結晶シリコン層を炭化している。特許文献3では、表面に酸化シリコン膜を形成した支持基板上に、単結晶炭化シリコン膜を転写している。特許文献1〜3の技術によれば、酸化シリコン層上に炭化シリコン膜を有する基板を低コストで効率よく製造することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−363751号公報
【特許文献2】特開2003−224248号公報
【特許文献3】特開2005−537678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、実際に炭化シリコン膜を用いて半導体装置を製造したり、半導体装置をMEMSに混載したりするためには、炭化シリコン膜の導電型や導電性を制御する必要がある。導電型や導電性は、炭化シリコン膜に含まれる不純物の種類や濃度等により制御される。不純物を含んだ半導体膜を形成する方法としては、半導体膜を成膜する過程で原料ガスに不純物を混入する方法や、不純物を含まない半導体膜にイオンを注入する方法が知られている。これらの方法を炭化シリコン膜に適用しても、以下の理由により炭化シリコン膜を良好な半導体膜として機能させることが難しい。
【0008】
前者の方法は半導体膜をCVD法等で形成することを前提としており、CVD法を用いて炭化シリコン膜を製造することは、前記のようにコスト面や製造効率面で不利である。後者の方法では、イオン注入による結晶構造のダメージを回復させるためや、注入された不純物を活性化するために熱アニールが必要になる。炭化シリコンは結晶化温度が格段に高いため、超高温での熱アニールが必要となりコスト面や製造効率面で不利である。
【0009】
また、後者の方法を特許文献1〜3のような技術に適用すると、シリコンや酸化シリコンからなる部分が超高温で熱アニールされることにより、損傷したり熱応力により歪んだりする。熱アニールにおける処理温度を低く設定すると、ダメージを回復する効果や不純物を活性化する効果が弱くなり、炭化シリコン膜が所望の特性にならなくなる。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑み成されたものであって、良好な膜質であり所望の導電型や導電性に制御された炭化シリコン膜を低コストで効率よく製造する方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の炭化シリコン膜の製造方法は、不純物領域を有する炭化シリコン膜の製造方法であって、表層にシリコン膜を有する基板の前記シリコン膜を炭化処理して、炭化された膜を含んだ炭化シリコン膜を形成する工程を有し、前記不純物領域になる部分の前記シリコン膜を炭化処理する前に、該部分に不純物を注入することを特徴とする。
【0012】
シリコン膜を炭化処理すると、炭化処理における熱処理によりシリコン膜の結晶性が高くなるとともに、注入された不純物が活性化される。これにより、良好な膜質であり所望の導電型や導電性に制御された炭化シリコン膜を製造することができる。一般に、シリコンを結晶化させる処理温度やシリコンを炭化する処理温度は、炭化シリコンを結晶化させる処理温度よりも低くすることができる。したがって、本発明によれば、炭化シリコン膜に不純物を注入した後に不純物を活性化させる熱処理や結晶性を回復させる熱処理を行う方法と比べて処理温度を低くすることができ、炭化シリコン膜を低コストで効率よく製造することができる。
【0013】
また、前記不純物として第1の導電型の不純物を前記シリコン膜の面方向において部分的に注入するとともに、前記シリコン膜の面方向において前記第1の導電型の不純物が注入される領域と異なる領域に前記不純物として第2の導電型の不純物を注入することもできる。
【0014】
第1の導電型の不純物が注入された領域、第2の導電型の不純物が注入された領域は、それぞれ、炭化された膜において第1の導電型の不純物領域、第2の導電型の不純物領域になる。前記のようにすれば、第1の導電型の不純物領域と第2の導電型の不純物領域とが面方向に混載された炭化シリコン膜を製造することができ、このような炭化シリコン膜を用いると、様々な半導体装置を製造することが可能になる。
【0015】
また、前記シリコン膜上に第2のシリコン膜を形成する工程を有し、前記第2のシリコン膜を前記シリコン膜と一括して又は独立して炭化処理して、炭化された膜を含んだ炭化シリコン膜を製造することもできる。
このようにすれば、シリコン膜が炭化された膜と、第2のシリコン膜が炭化された膜とを含んだ炭化シリコン膜が得られるので、炭化シリコン膜を厚膜化することができる。
【0016】
また、前記シリコン膜は、前記不純物として第1の導電型の不純物が注入される領域を有し、該領域と重なる部分の前記第2のシリコン膜を炭化する前に、該部分に第2の導電型の不純物を注入することもできる。
このようにすれば、第1の導電型の不純物領域上に第2の導電型の不純物領域が配置された炭化シリコン膜が得られる。このような炭化シリコン膜を用いると、PN接合を有する半導体装置を製造することが可能になる。
【0017】
また、前記第2のシリコン膜上に第3のシリコン膜を形成する工程を有し、前記第3のシリコン膜を前記第2のシリコン膜と一括して又は独立して炭化処理して、炭化された膜を含んだ炭化シリコン膜を製造することもできる。
このようにすれば、シリコン膜が炭化された膜と、第2のシリコン膜が炭化された膜と、第3のシリコン膜が炭化された膜とを含んだ炭化シリコン膜が得られるので、炭化シリコン膜を厚膜化することができる。
【0018】
また、前記シリコン膜は、前記不純物として第1の導電型の不純物が注入される領域を有し、該領域と重なる部分の前記第2のシリコン膜に不純物を注入せずに該第2のシリコン膜を炭化し、該領域と重なる部分の前記第3のシリコン膜を炭化する前に、該部分に第2の導電型の不純物を注入することもできる。
【0019】
このようにすれば、シリコン膜が炭化された膜の第1の導電型の不純物領域上において、第2のシリコン膜が真性領域となり、第3のシリコン膜が第2の導電型の不純物領域になる。このような炭化シリコン膜を用いると、PIN接合を有する半導体装置を製造することが可能になる。
【0020】
また、前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部が、アモルファスシリコンとポリシリコンとの少なくとも一方を含むことが好ましい。
このようにすれば、アモルファスシリコンやポリシリコンは単結晶シリコンよりも結晶性が低いので、単結晶シリコンからなる膜に比べてシリコン膜中に炭素をいきわたらせることが容易になる。したがって、シリコン膜を良好に炭化することができ、部分的にシリコンが炭化されずに炭化シリコン膜中に残留することが格段に低減される。よって、残留したシリコンと炭化シリコンとが格子整合しないことによる結晶欠陥を生じることや炭化シリコン膜の特性が部分的にばらつくこと、熱膨張係数の違いによる残留応力が生じること等が格段に低減され、良好な特性の炭化シリコン膜が得られるようになる。
【0021】
また、前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部をCVD法を用いて形成することが好ましい。
CVD法によれば、成膜温度を低く設定することによりシリコン膜の結晶性を容易に低下させることができる。また、CVD法によれば、高精度な膜厚のシリコン膜を形成することができ、炭化された膜の膜厚も高精度になる。
【0022】
また、前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部に対して、該一部を炭化する前にパターニングすることもできる。
一般に、シリコン膜をパターニングすることは炭化シリコン膜をパターニングすることよりも格段に容易である。前記のようにすれば、パターニングされたシリコン膜が炭化されて、パターニングされた炭化シリコン膜が得られる。したがって、炭化シリコン膜をパターニングする必要性が少なくなり、所望のパターンの炭化シリコン膜が容易に得られようになる。
【0023】
前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部に対して、該一部を炭化する前に薄厚化することもできる。
このようにすれば、シリコン膜中に炭素を良好に行きわたらせることができ、シリコン膜を良好に炭化することができる。したがって、シリコンが炭化シリコン膜中に残留することが格段に低減され、良好な特性の炭化シリコン膜が得られるようになる。
【0024】
また、前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部を炭化する炭化処理において、炭化する部分の総厚を100nm以下にすることが好ましい。
このようにすれば、シリコン膜中にほぼ確実に炭素を行きわたらせることができ、良好な特性の炭化シリコン膜が得られるようになる。
【0025】
また、前記シリコン膜と前記基板との間に、前記シリコン膜と当接して酸化シリコン膜が配置されているとよい。
このようにすれば、酸化シリコン層をバッファ層として機能させることができ、炭化シリコン膜が基板の結晶構造の影響を受けにくくなる。したがって、炭化シリコン膜が基板と格子整合しないことにより結晶欠陥や残留応力を生じることが低減され、良好な特性の炭化シリコン膜が得られるようになる。また、炭化シリコン膜を用いて製造されるデバイスにおいて酸化シリコン膜を素子分離に用いることもでき、低消費電力のデバイスを製造可能な炭化シリコン膜が得られるようになる。
【0026】
また、前記シリコン膜と前記基板との間に、前記シリコン膜と当接して窒化シリコン膜が配置されていてもよい。
このようにすれば、窒化シリコン層をバッファ層として機能させることができ、炭化シリコン膜に結晶欠陥や残留応力を生じることが低減される。また、炭化シリコン膜を用いて製造されるデバイスにおいて窒化シリコン膜を素子分離に用いることもでき、低消費電力のデバイスを製造可能な炭化シリコン膜が得られるようになる。
【0027】
前記基板がシリコンからなり、前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部を炭化する炭化処理は、ランプアニールによる熱処理を用いて行うこともできる。
ランプアニールによれば、短時間で熱処理することができ、また炉アニールに比べて昇温レートを高くすることができる。したがって、基板に対する熱影響を低減しつつ、炭化する部分のシリコン膜を相対的に高温にすることができ、炭化シリコン膜の結晶性を良好に高めることができる。
【0028】
前記基板が石英からなり、前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部を炭化する炭化処理は、炉アニールによる熱処理を用いて行うこともできる。
炉アニールによれば、多数の基板を一括して熱処理することができる。したがって、多数の基板上に形成された多数のシリコン膜を一括して炭化処理することが可能になり、製造効率を高めることができる。
【0029】
また、前記炭化シリコン膜を形成する工程の後に、前記炭化シリコン膜上に化合物半導体膜を形成する工程を有していてもよい。
このようにすれば、炭化シリコン膜に格子整合させて化合物半導体膜を形成することができ、結晶性が良好な化合物半導体膜が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)〜(c)は、それぞれ本発明に係る半導体基板を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、それぞれ本発明に係る半導体基板を示す断面図である。
【図3】(a)〜(e)は、第1実施形態の製造方法を概略して示す工程図である。
【図4】(a)〜(e)は、第2実施形態の製造方法を概略して示す工程図である。
【図5】(a)〜(e)は、第3実施形態の製造方法を概略して示す工程図である。
【図6】(a)〜(d)は、図5(e)から続く工程図である。
【図7】(a)〜(e)は、第4実施形態の製造方法を概略して示す工程図である。
【図8】(a)〜(c)は、第5実施形態の製造方法を概略して示す工程図である。
【図9】第6実施形態の製造方法を概略して示す工程図である。
【図10】(a)〜(g)は第7実施形態の製造方法を概略して示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。説明に用いる図面において、特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造の寸法や縮尺を実際の構造と異ならせている場合がある。実施形態において同様の構成要素については、同じ符号を付して図示し、その詳細な説明を省略する場合がある。本発明の実施形態の説明に先立ち、まず、本発明により得られる炭化シリコン膜を有する半導体基板の構成について説明する。
【0032】
図1(a)〜(c)、図2(a)〜(c)は、それぞれ、炭化シリコン膜を有する半導体基板1A〜1Fの概略構成を示す側断面図である。図1(a)〜(c)、図2(a)〜(c)には、半導体基板1A〜1Fの要部を拡大して図示している。
【0033】
図1(a)に示すように、半導体基板1Aは単結晶シリコンからなるシリコン基板(基板)11を基体にして製造されている。シリコン基板11上には、酸化シリコン膜12が形成されている。酸化シリコン膜12上には、第1の導電型の炭化シリコン膜からなる第1不純物領域13が設けられている。第1不純物領域13の導電型としては、P型、N型のいずれを採用することもできるが、ここでは説明の便宜上、N型であるとする。半導体基板1Aにおいて第1不純物領域13は、シリコン基板11のほぼ全域を覆っている。
【0034】
図1(b)に示すように、半導体基板1Bにおいて酸化シリコン膜12上には、第1不純物領域13と、第2の導電型の炭化シリコン膜からなる第2不純物領域14とが設けられている。第2不純物領域14の導電型は、第1不純物領域13と異なっており、ここではP型であるとする。本例の第1不純物領域13、第2不純物領域14は、いずれも島状の領域であり、第1不純物領域13が第2不純物領域14と隣接している。第1不純物領域13と第2不純物領域14とにより、PN接合が構成されている。なお、半導体基板1B〜1Fには、図示されている構造が複数設けられている。
【0035】
図1(c)に示すように、半導体基板1Cにおいて酸化シリコン膜12上には、第1不純物領域13と、炭化シリコン膜からなる真性領域15と、第2不純物領域14とが設けられている。第1不純物領域13、真性領域15、第2不純物領域14はいずれも島状の領域である。本例では、第1不純物領域13が、シリコン基板11の面方向において第2不純物領域14から離れて配置されている。真性領域15は、第1不純物領域13と第2不純物領域14との間に配置されている。真性領域15は、第1不純物領域13と連続しており、かつ第2不純物領域14と連続している。第1不純物領域13、真性領域15、第2不純物領域14により、PIN接合が構成されている。
【0036】
図2(a)に示すように、半導体基板1Dにおいて酸化シリコン膜12上には、島状の第1不純物領域13が設けられている。第1不純物領域13上に、第1不純物領域13と当接して第2不純物領域14が設けられている。第1不純物領域13と第2不純物領域14とにより、PN接合が構成されている。
【0037】
図2(b)に示すように、半導体基板1Eにおいて酸化シリコン膜12上には、島状の第1不純物領域13が設けられている。第1不純物領域13上に、第1不純物領域13と当接して真性領域15が設けられている。真性領域15上に、真性領域15と当接して第2不純物領域14が設けられている。第1不純物領域13、真性領域15、第2不純物領域14により、PIN接合が構成されている。
【0038】
図2(c)に示すように、半導体基板1Fにおいて酸化シリコン膜12上には、島状の2種類の積層体が設けられている。一方の積層体は、酸化シリコン膜12側から第1不純物領域13、真性領域15、第2不純物領域14がこの順に配置された構造になっている。他方の積層体は、酸化シリコン膜12側から第2不純物領域14、真性領域15、第1不純物領域13がこの順に配置された構造になっている。2種類の積層体は、いずれもPIN接合を構成している。
なお、第1不純物領域をP型の不純物領域とするとともに第2不純物領域をN型の不純物領域にしてもよく、以下の実施形態についても同様である。
【0039】
[第1実施形態]
次に、本発明に係る炭化シリコン膜の製造方法の第1実施形態を、半導体基板1Aの構成に基づいて説明する。
【0040】
図3(a)〜(e)は、第1実施形態を示す断面工程図である。
炭化シリコン膜を製造するには、図3(a)に示すようにシリコン基板11を用意する。シリコン基板11は、例えばシリコンウェハー等である。
次いで、図3(b)に示すように、シリコン基板11の表層を熱酸化法等により酸化すること等により、酸化シリコン膜12を形成する。酸化シリコン膜12の膜厚としては、例えば100nm程度にする。
【0041】
次いで、図3(c)に示すように、酸化シリコン膜12上のほぼ全域にわたってシリコン膜16aを形成する。本実施形態では、酸化シリコン膜12上にシリコンをCVD法により成膜してシリコン膜16aを形成する。成膜時の基板温度を低くするほど、シリコン膜16aの結晶性を低くすることができる。ここでは、成膜温度を適宜設定することにより、主としてアモルファスシリコンからなるシリコン膜16aを形成する。なお、成膜時の基板温度を調整することや、シリコン膜16aを熱アニールやレーザーアニール等により結晶化させることにより、ポリシリコンを含んだシリコン膜を形成してもよい。また、スパッタ法等によりシリコン膜を形成してもよい。シリコン膜16aの膜厚としては、後述する炭化処理を良好に行う観点から100nm以下にするにするとよい。本実施形態では、シリコン膜16aの膜厚を30nm程度にする。
【0042】
次いで、図3(d)に示すように、シリコン膜16aに不純物を注入して不純物を含有するシリコン膜17を形成する。本実施形態では、不純物としてN型の不純物である窒素を注入する。N型の不純物としては、周期律表第V族の元素を用いればよく、具体的には窒素、リン、ヒ素、アンチモン等が挙げられる。なお、導電型がP型の不純物領域を形成する場合には、不純物としてP型の不純物を注入するとよい。P型の不純物としては、周期律表第III族の元素を用いればよく、具体的には、ボロン、アルミニウム、ガリウム等が挙げられる。
【0043】
次いで、図3(e)に示すように、不純物を含有するシリコン膜17を炭化処理して、炭化シリコン膜13を形成する。炭化処理は、例えばプロパンガス(C)等の炭化水素ガスと水素ガスとからなる混合ガスの雰囲気において、シリコン膜17を熱処理することにより行うとよい。熱処理としては、赤外線加熱方式のランプアニール装置を用いたランプアニール、抵抗加熱方式の電気炉等のファーネスを用いた炉アニール、レーザー光照射装置を用いたレーザーアニール等が挙げられる。熱処理は、基板温度を800〜1400℃程度に設定して行うとよく、本実施形態ではランプアニール装置を用いるとともに、基板裏面から基板温度をモニタリングして、熱処理を基板温度1160℃、処理時間60秒の条件で行う。
【0044】
炭化処理においてシリコン膜17を加熱すると、シリコン膜17の表面側から炭素がシリコン膜17の膜中に拡散する。シリコン膜17が主としてアモルファスシリコンからなっているので、単結晶からなるシリコン膜に比べて、膜中に炭素を良好に行きわたらせることができる。なお、シリコン膜がポリシリコンを含んだ膜である場合にも、炭素が結晶粒界をつたって膜中に広がるので、膜中に炭素を良好に行きわたらせることができる。
【0045】
本願発明者は、シリコン膜を均一に炭化しうる条件について調査・検討している。その結果、アモルファスシリコンやポリシリコンからなるシリコン膜については、膜厚を100nm以下にすれば良好に炭化可能であること、特に膜厚を30nm以下にすれば炭化されずにシリコンが残留することがほぼ確実に防止されること、単結晶シリコンからなるシリコン膜については、膜厚を10nm以下にすれば良好に炭化可能であり、特に5nm以下にすればシリコンの残留をほぼ確実に防止できること、を見出している。本実施形態では、シリコン膜17の膜厚を30nm程度にしているので、シリコン膜17の膜中に炭素を極めて良好にいきわたらせることができる。
【0046】
シリコン膜17の膜中に拡散した炭素原子や、シリコン膜17に含まれるシリコン原子、不純物の原子が熱処理により再配列する。これにより、炭化シリコン膜が形成されるとともに不純物が活性化される。以上のようにして、図1(a)に示した半導体基板1Aが得られる。
【0047】
通常、半導体膜として機能する炭化シリコン膜を製造するには、エピタキシャル結晶成長法等により炭化シリコン膜を成膜するとともに膜中に不純物を混入する方法や、イオン注入法等により炭化シリコン膜に不純物を注入する方法等が用いられる。前者の方法では成膜時に炭化シリコンを配列させる必要があり、後者の方法ではイオン注入後にダメージを回復させるためや不純物を活性化させるために炭化シリコンを再配列させる必要がある。炭化シリコンを配列させるためには、シリコンを配列させる場合と比べて格段に高温での熱処理が必要になり、製造コストが高騰してしまう。熱処理における処理温度を低く設定すると、処理時間が長くなることや所望の特性の炭化シリコン膜が得られなくなること等の不都合を生じてしまう。
【0048】
第1実施形態の製造方法によれば、シリコンが炭化される過程においてシリコンが配列して、活性化された不純物を含んだ良好な結晶構造の炭化シリコン膜が得られる。したがって、炭化シリコンを配列させる場合に比べて格段にプロセス温度を低くすることができ、良好な膜質の炭化シリコン膜を低コストで効率よく製造することができる。
【0049】
また、アモルファスシリコン等からなり結晶性が低い膜質のシリコン膜を炭化するので、単結晶シリコンからなるシリコン膜を炭化する場合に比べて、膜厚が厚いシリコン膜であっても良好に炭化することができる。したがって、シリコン膜の膜厚を容易に増すことができ、炭化シリコン膜の膜厚を容易に増すことが可能になる。また、シリコン膜の膜厚を増すことにより、膜厚の相対的な誤差を小さくすることができる。例えば、単結晶シリコンからなるシリコン膜を採用するとともに、良好に炭化処理を行う観点でシリコン膜の膜厚を5nm程度にすると仮定する。膜厚の誤差が仮に1nm程度であると、膜厚の相対誤差は20%程度になる。一方、結晶性が低い膜質のシリコン膜を採用すると、膜厚が30nm程度であっても良好に炭化処理を行うことができ、しかも膜厚の誤差が仮に1nm程度であっても相対誤差を3.3%程度まで低くなる。このように、シリコン膜の膜厚を高精度にすることができ、高精度な膜厚の炭化シリコン膜を製造することができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る炭化シリコン膜の製造方法の第2実施形態を、図1(c)に示した半導体基板1Cの構成に基づいて説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、シリコン膜の面方向の異なる領域に導電型が互いに異なる不純物領域を形成する点、島状の炭化シリコン膜を形成する点である。
【0051】
図4(a)〜(e)は、第2実施形態の製造方法を概略して示す工程図である。第2実施形態では、第1実施形態と同様にして(図3(a)、(b)参照)、図4(a)に示すように酸化シリコン膜12上にシリコン膜16aが形成されたシリコン基板11を用意する。
【0052】
次いで、図4(b)に示すように、第1不純物領域の形成領域を開口したマスクパターンM1をシリコン膜16a上に形成する。そして、マスクパターンM1をマスクとしてN型の不純物を注入することにより、マスクパターンM1の開口と重なる領域にN型の不純物を含有するシリコン膜17を形成する。そして、マスクパターンM1を除去する。
【0053】
次いで、図4(c)に示すように、第2不純物領域の形成領域を開口したマスクパターンM2をシリコン膜16a上に形成する。ここでは、第2不純物領域として、第1不純物領域の形成領域からシリコン膜16aの面方向において離れた領域であって、第1不純物領域の形成領域に近接する領域を選択する。マスクパターンM2をマスクとしてP型の不純物を注入することにより、マスクパターンM2の開口と重なる領域にP型の不純物を含有するシリコン膜18を形成する。そして、マスクパターンM2を除去する。
【0054】
次いで、図4(d)に示すように、シリコン膜17の一部又は全部と、シリコン膜18の一部又は全部と、シリコン膜17、18間のシリコン膜16aとを残して、シリコン膜16a、17、18をパターニングする。ここでは通常同様の方法、例えばフォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いることにより、シリコン膜16a、17、18をパターニングする。酸化シリコン膜12をエッチングのストッパー膜として機能させることができ、良好にエッチングすることができる。
【0055】
次いで、図4(e)に示すように、本実施形態では第1実施形態と同様の炭化処理により、シリコン膜16a、17、18を一括して炭化する。これにより、シリコン膜16aが真性領域(炭化シリコン膜)15、シリコン膜17が第1不純物領域13、シリコン膜(炭化シリコン膜)18が第2不純物領域14になる。以上のようにして、図1(a)に示した半導体基板1Cが得られる。
【0056】
第2実施形態の製造方法によれば、第1実施形態と同様の理由により、良好な膜質の炭化シリコン膜を低コストで効率よく製造することができる。第1不純物領域13、真性領域15、第2不純物領域14によりPIN接合が構成されているので、半導体基板1Cを用いると多様なデバイスを効率よく製造することができる。
【0057】
ところで、炭化シリコン膜は、シリコンよりも化学的に安定でありエッチングすることが格段に難しいことが知られている。炭化シリコン膜をエッチングする方法としては、温度が数百℃程度の溶融水酸化カリウム(KOH)をエッチャントに用いたウエットエッチングが挙げられる。この方法では、安全管理のコストが高騰しまい、またハンドリング性が悪いことにより製造効率が低下してしまう。ドライエッチングにより炭化シリコン膜をエッチングすることも考えられるが、この手法によるとウエットエッチングよりも製造効率が低下してしまう。また、ドライエッチングでは、炭化シリコン膜とその下地とで選択比を確保することが難しいので、プロセス耐性が極めて低くなってしまう。
【0058】
一方、第2実施形態では、シリコン膜16a、17、18をパターングした後に炭化しているので、炭化シリコン膜をパターニングする必要が少なくなり、端的には炭化シリコン膜のパターニングを省くことができる。したがって、パターニングされた炭化シリコン膜を容易に形成することができ、炭化シリコン膜を低コストで効率よく製造することができる。
【0059】
なお、マスクパターンM1、M2の開口位置を設定することにより、第1不純物領域を第2不純物領域と連続させて形成することができる。これにより、図1(b)に示した半導体基板1Bを製造することができ、PN接合を含んだ炭化シリコン膜を製造することができる。また、同様の手法により、連続する2つの領域に同じ導電型の不純物を注入するとともに、2つの領域で不純物濃度を異ならせることも可能である。これにより、高濃度領域と低濃度領域とが連続した不純物領域を形成することができる。なお、第2実施形態の製造方法では、炭化処理においてシリコン膜17、18からシリコン膜16aに不純物を拡散させることもでき、第1不純物領域13と真性領域15と境界部付近に低濃度不純物領域を形成することも可能である。
【0060】
また、第1不純物領域13、真性領域15、第2不純物領域14のうちの1以上を他と別工程で形成してもよい。例えば、図4(d)に示したパターニング工程で、シリコン膜17、18間のシリコン膜16aを除去してパターニングする。そして、シリコン膜17、18を炭化処理した後、第1不純物領域13と第2不純物領域14との間に、シリコン膜を埋設する。そして、第1不純物領域13と第2不純物領域14との間のシリコン膜を炭化して真性領域を形成する。これにより、図1(c)に示した炭化シリコン膜が得られる。このようにすれば、孤立した島状の領域内で不純物を活性化させるので、不純物が拡散する領域を管理することができ、形成された炭化シリコン膜における不純物濃度分布を高精度に管理することができる。
また、シリコン膜16a、17、18をパターニングした後に不純物を注入してもよいし、シリコン膜16a、17、18をパターニングせずに炭化してもよい。
【0061】
[第3実施形態]
次に、本発明に係る炭化シリコン膜の製造方法の第3実施形態を、図2(b)に示した半導体基板1Eの構成に基づいて説明する。第3実施形態が第2実施形態と異なる点は、シリコン膜の厚み方向の異なる領域に導電型が互いに異なる不純物領域を形成する点である。
【0062】
図5(a)〜(e)、図6(a)〜(d)は、第3実施形態の製造方法を概略して示す工程図である。第3実施形態では、第1実施形態と同様にして(図3(a)、(b)参照)、図5(a)に示すように酸化シリコン膜12上にシリコン膜16aが形成されたシリコン基板11を用意する。
【0063】
次いで、図5(b)に示すように、第1不純物領域の形成領域を開口したマスクパターンM3をシリコン膜16a上に形成する。そして、マスクパターンM3をマスクとしてN型の不純物を注入することにより、マスクパターンM3の開口と重なる領域にN型の不純物を含有するシリコン膜17を形成する。そして、マスクパターンM3を除去する。
【0064】
次いで、図5(c)に示すように、シリコン膜17の一部又は全部を残してシリコン膜16a、17をパターニングする。ここでは、シリコン膜17のみを残して、シリコン膜16aを除去する。
次いで、図5(d)に示すように、第1実施形態と同様の炭化処理によりシリコン膜17を炭化して、炭化されたシリコン膜17からなる第1不純物領域13を形成する。
次いで、図5(e)に示すように、第1不純物領域13と酸化シリコン膜12上とにわたってアモルファスシリコンをCVD法により成膜し、この膜をパターニングすることにより、第1不純物領域13上にシリコン膜(第2のシリコン膜)16bを積層する。
【0065】
次いで、図6(a)に示すように、シリコン膜16bを炭化することにより、炭化されたシリコン膜16bからなる真性領域15を形成する。
次いで、図6(b)に示すように、真性領域15と酸化シリコン膜12上とにわたってアモルファスシリコンをCVD法により成膜し、この膜をパターニングすることにより、真性領域15上にシリコン膜(第3のシリコン膜)16cを積層する。
次いで、図6(c)に示すように、シリコン膜16cにP型の不純物を注入することにより、P型の不純物を含有するシリコン膜18を形成する。
次いで、図6(d)に示すように、シリコン膜18を炭化することにより、炭化されたシリコン膜18からなる第2不純物領域14を形成する。
以上のようにして、図2(b)に示した半導体基板1Eが得られる。
【0066】
第3実施形態の製造方法によれば、第1実施形態と同様の理由により、良好な膜質の炭化シリコン膜を低コストで効率よく製造することができる。第2実施形態と同様に、第1不純物領域13、真性領域15、第2不純物領域14によりPIN接合が構成されており、半導体基板1Eを用いると多様なデバイスを効率よく製造することができる。
また、第1不純物領域13、真性領域15、第2不純物領域14がシリコン基板11の厚み方向に積層された構造になっているので、第2実施形態に比べてPIN接合を高集積化することができる。
【0067】
また、シリコン膜16a、16b、16cを膜ごとに炭化して積層しているので、シリコン膜の膜厚を厚くすることが容易になる。したがって、第1実施形態で説明したように炭化シリコン膜の膜厚を増すことが容易になるとともに、炭化シリコン膜の膜厚を高精度にすることができる。
【0068】
なお、シリコン膜16a、16b、16cの厚みに応じて、2以上のシリコン膜を一括して炭化することも可能である。例えば、シリコン膜16a、16bの総厚が前記した良好に炭化しうる膜厚以下であれば、シリコン膜16aに不純物を注入した後に、シリコン膜16aを炭化せずにシリコン膜16bを形成し、次いでシリコン膜16a、16bを一括して炭化してもよい。同様に、シリコン膜16a、16b、16cを一括して炭化してもよい。
【0069】
また、第3実施形態と同様の手法により、図3(b)に示した半導体基板1Dを製造することも可能である。例えば、シリコン膜16bにP型の不純物を注入し、P型の不純物を含んだシリコン膜16bを炭化することにより、半導体基板1Dが得られる。また、シリコン膜16bにN型の不純物を注入し、N型の不純物を含んだシリコン膜16bを炭化することにより、第1不純物領域を厚膜化することもできる。
【0070】
また、シリコン膜16a、16b、16cの面方向の大きさを互いに異ならせてもよい。例えば、シリコン膜16aをシリコン膜16b、16cよりも大面積化してもよい。これにより、第1不純物領域13が、真性領域15、第2不純物領域14よりも面方向に張り出した構造が得られる。これにより、張り出した部分の第1不純物領域13にコンタクトプラグ等を接続することが容易になり、第1不純物領域13と電気的な接続をとることが容易になる。
【0071】
[第4実施形態]
次に、本発明に係る炭化シリコン膜の製造方法の第4実施形態を説明する。第4実施形態が第1実施形態と異なる点は、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて炭化シリコン膜を製造する点である。
【0072】
図7(a)〜(e)は、第4実施形態の製造方法を概略して示す工程図である。第4実施形態では、図7(a)に示すようなSOI基板を用意する。SOI基板は、SIMOX法や貼合せ法等により製造されている。SOI基板は、単結晶シリコンからなるベース基板(基板)21上に設けられた酸化シリコン膜22と、酸化シリコン膜22上に設けられたシリコン膜26とを含んでいる。酸化シリコン膜22は、埋め込み酸化膜等により構成されており、シリコン膜は単結晶シリコン層等により構成されている。
【0073】
次いで、図7(b)に示すように、シリコン膜26の表層29を熱酸化法等により酸化する。シリコン膜26において酸化シリコン膜22と当接する部分は、酸化せずにシリコン膜26aのままに保持しておく。シリコン膜26aの厚みとしては、例えば5nm程度にする。
次いで、図7(c)に示すように、例えばフッ酸をエッチャントに用いたウエットエッチングによりシリコン膜26aを残して表層29を除去する。これにより、シリコン膜26を薄厚化するこができる。
【0074】
次いで、図7(d)に示すように、シリコン膜26aに不純物を注入して不純物を含有するシリコン膜27を形成する。
次いで、図7(e)に示すように、第1実施形態と同様の炭化処理によりシリコン膜27を炭化して、炭化されたシリコン膜27からなる第1不純物領域13を形成する。
以上のようにして、炭化シリコン膜を有する半導体基板が得られる。
【0075】
第4実施形態の製造方法によれば、第1実施形態と同様の理由により、良好な膜質の炭化シリコン膜を低コストで効率よく製造することができる。また、シリコン膜26を薄厚化しているので、薄厚化されたシリコン膜27の膜中に炭化処理において炭素を良好にいきわたらせることができ、シリコン膜27を良好に炭化することができる。
【0076】
なお、第2、第3実施形態と同様にシリコン膜をパターニングしてもよい。シリコン膜の面方向に第2不純物領域を設けることも可能であり、第1不純物領域上に真性領域や第2不純物領域を積層することも可能である。
【0077】
[第5実施形態]
次に、本発明に係る炭化シリコン膜の製造方法の第5実施形態を説明する。第5実施形態が第4実施形態と異なる点は、炭化されたシリコン膜を厚膜化して炭化シリコン膜を製造する点である。
【0078】
図8(a)〜(c)は、第5実施形態の製造方法を概略して示す工程図である。第5実施形態では、例えば第4実施形態と同様にして、酸化シリコン膜22上に第1不純物領域13を有するベース基板21(図7(e)参照)を用意する。そして、図8(a)に示すように、第1不純物領域13上に、アモルファスシリコンをCVD法により成膜してシリコン膜(第2のシリコン膜)16bを形成する。
【0079】
次いで、図8(b)に示すように、シリコン膜16bにN型の不純物を注入して、N型の不純物を含有するシリコン膜17を形成する。
次いで、図8(c)に示すように、N型の不純物を含有するシリコン膜17を炭化処理することにより、炭化された膜と第1不純物領域13とが一体となった第1不純物領域13bが得られる。以上のようにして、第4実施形態よりも炭化シリコン膜が厚膜化された半導体基板が得られる。
【0080】
第5実施形態の製造方法によれば、第1実施形態と同様の理由により、良好な膜質の炭化シリコン膜を低コストで効率よく製造することができる。また、炭化シリコン膜を容易に厚膜化することができ、炭化シリコン膜を用いてデバイスを製造する際のプロセス耐性が高められる。パワーデバイス等に用いられるトランジスタとしては、膜厚方向に電流が流れるものが知られている。このようなデバイスの製造に前記の炭化シリコン膜を用いれば、炭化シリコン膜の厚膜化が容易になっているので、格段に高耐圧なデバイスを製造可能になる。なお、第1〜第3実施形態に第5実施形態を適用することも可能であり、炭化シリコン膜を容易に厚膜化することができる。
【0081】
[第6実施形態]
次に、本発明に係る炭化シリコン膜の製造方法の第6実施形態を説明する。第6実施形態が第4実施形態と異なる点は、炭化されたシリコン膜上に、化合物半導体膜を形成する点である。
【0082】
図9は、第6実施形態の製造方法を概略して示す工程図である。第6実施形態では、例えば第4実施形態と同様にして、酸化シリコン膜22上に第1不純物領域13を有するベース基板21(図7(e)参照)を用意する。そして、第1不純物領域13をシード層として、第1不純物領域13上に化合物半導体膜30をエピタキシャル成長させる。化合物半導体膜30の形成材料としては、化合物半導体膜の形成材料としては、例えば窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ホウ素(BN)、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)等の各種化合物半導体材料のうち、炭化シリコン膜と格子整合するものから選択される。化合物半導体材料が炭化シリコン膜と格子整合することにより、良好な膜質の化合物半導体膜30が得られる。
【0083】
[第7実施形態]
次に、本発明に係る炭化シリコン膜の製造方法の第7実施形態を説明する。第7実施形態が第1実施形態と異なる点は、石英からなる基板を用いる点、炉アニールによる熱処理を用いて炭化処理を行う点、パターニングされた炭化シリコン膜を形成する点、酸化シリコン膜をパターニングする点である。
【0084】
図10(a)〜(g)は、第7実施形態の製造方法を概略して示す工程図である。第7実施形態では、図10(a)に示すように、石英基板41を用意する。
次いで、図10(b)に示すように、石英基板41上に酸化シリコン膜42を形成する。酸化シリコン膜42の形成方法としては、スパッタ法やCVD法等を用いればよい。
次いで、図10(c)に示すように、酸化シリコン膜42上にアモルファスシリコンをCVD法により成膜して、シリコン膜16aを形成する。
【0085】
次いで、図10(d)に示すように、シリコン膜16aにN型の不純物を注入して、N型の不純物を含有するシリコン膜17を形成する。
次いで、図10(e)に示すように、シリコン膜17をパターニングする。
次いで、図10(f)に示すように、シリコン膜17を炭化することにより、第1不純物領域13を形成する。本実施形態では、シリコン膜17が形成された石英基板41を複数用意しておき、炉アニールを用いた熱処理により複数の石英基板41を一括して炭化処理する。これにより、効率よく炭化処理を行うことができる。
次いで、図10(f)に示すように、第1不純物領域13をマスクとして酸化シリコン膜42をエッチングすることにより、第1不純物領域と重ならない領域の石英基板41を露出させる。以上のようにして、炭化シリコン膜を有する半導体基板を形成することができる。
【0086】
第7実施形態の製造方法によれば、第1実施形態と同様の理由により、良好な膜質の炭化シリコン膜を低コストで効率よく製造することができる。また、シリコン膜17が設けられた複数の石英基板41を一括して炉アニールを用いて一括して熱処理して炭化処理を行っているので、効率よく炭化シリコン膜を製造することができる。また、炭化シリコン膜が形成されていない領域の石英基板41を露出させており、この領域を光学領域として用いることが可能になっている。また、炭化シリコン膜をマスクにしているので、セルフアライメントを行うことができ、石英基板41が露出した領域を高精度かつ容易に形成することができる。
なお、酸化シリコン膜42を設けずに、石英基板41自体を下地として炭化シリコン膜を製造することも可能である。
【符号の説明】
【0087】
1A〜1F・・・半導体基板、11・・・シリコン基板(基板)、21・・・ベース基板(基板)、12、22、42・・・酸化シリコン膜、13・・・第1不純物領域(炭化シリコン膜)、14・・・第2不純物領域(炭化シリコン膜)、15・・・真性領域(炭化シリコン膜)、16a、26、26a・・・シリコン膜、16b・・・第2のシリコン膜、16c・・・第3のシリコン膜、30・・・化合物半導体膜、41・・・石英基板(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物領域を有する炭化シリコン膜の製造方法であって、
表層にシリコン膜を有する基板の前記シリコン膜を炭化処理して、炭化された膜を含んだ炭化シリコン膜を形成する工程を有し、
前記不純物領域になる部分の前記シリコン膜を炭化処理する前に、該部分に不純物を注入することを特徴とする炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項2】
前記不純物として第1の導電型の不純物を前記シリコン膜の面方向において部分的に注入するとともに、前記シリコン膜の面方向において前記第1の導電型の不純物が注入される領域と異なる領域に前記不純物として第2の導電型の不純物を注入することを特徴とする請求項1に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン膜上に第2のシリコン膜を形成する工程を有し、前記第2のシリコン膜を前記シリコン膜と一括して又は独立して炭化処理して、炭化された膜を含んだ炭化シリコン膜を製造することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項4】
前記シリコン膜は、前記不純物として第1の導電型の不純物が注入される領域を有し、該領域と重なる部分の前記第2のシリコン膜を炭化する前に、該部分に第2の導電型の不純物を注入することを特徴とする請求項3に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項5】
前記第2のシリコン膜上に第3のシリコン膜を形成する工程を有し、前記第3のシリコン膜を前記第2のシリコン膜と一括して又は独立して炭化処理して、炭化された膜を含んだ炭化シリコン膜を製造することを特徴とする請求項3に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項6】
前記シリコン膜は、前記不純物として第1の導電型の不純物が注入される領域を有し、該領域と重なる部分の前記第2のシリコン膜に不純物を注入せずに該第2のシリコン膜を炭化し、該領域と重なる部分の前記第3のシリコン膜を炭化する前に、該部分に第2の導電型の不純物を注入することを特徴とする請求項5に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項7】
前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部が、アモルファスシリコンとポリシリコンとの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項8】
前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部をCVD法を用いて形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項9】
前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部に対して、該一部を炭化する前にパターニングすることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項10】
前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部に対して、該一部を炭化する前に薄厚化することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項11】
前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部を炭化する炭化処理において、炭化する部分の総厚を100nm以下にすることを特徴とする請求項7に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項12】
前記シリコン膜と前記基板との間に、前記シリコン膜と当接して酸化シリコン膜が配置されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項13】
前記シリコン膜と前記基板との間に、前記シリコン膜と当接して窒化シリコン膜が配置されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項14】
前記基板がシリコンからなり、前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部を炭化する炭化処理は、ランプアニールによる熱処理を用いて行うことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項15】
前記基板が石英からなり、前記炭化シリコン膜になるシリコン膜の少なくとも一部を炭化する炭化処理は、炉アニールによる熱処理を用いて行うことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の炭化シリコン膜の製造方法。
【請求項16】
前記炭化シリコン膜を形成する工程の後に、前記炭化シリコン膜上に化合物半導体膜を形成する工程を有すること特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の炭化シリコン膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−278216(P2010−278216A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129043(P2009−129043)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】