説明

燃料供給量制御装置及びハイブリッド車両

【課題】内燃機関駆動停止期間における内燃機関燃料系の燃料劣化状態を高精度に検出して、内燃機関燃焼室への燃料供給量を補正することにより内燃機関の適切な燃焼を可能にすること。
【解決手段】内燃機関駆動停止期間においてステップS104〜S120の処理にて算出される燃料劣化カウンタCwの値は、燃料タンクにおける燃料温度高低の程度とその時間経過に基づいて算出されている。すなわち単に経過時間のみで燃料劣化状態を推定しているのではなく、燃料成分間での蒸発性の違いに影響する温度をも反映した温度履歴として燃料劣化カウンタCwを算出している。この燃料劣化カウンタCwに基づいて始動時燃料噴射量算出処理では始動時燃料噴射量を補正しているため、始動時において内燃機関の適切な燃焼性を確保でき、円滑な機関始動が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関燃料系における燃料劣化状態に応じて燃料供給量を補正する燃料供給量制御装置、及びこの燃料供給量制御装置を搭載したハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃料タンクに貯留されている燃料は、その成分の内で易揮発性の軽質成分は他の重質成分よりも気化により蒸発する程度が高い。このことからハイブリッド車両などにおいて内燃機関が停止している際に軽質成分が重質成分よりも迅速に蒸発する。
【0003】
したがって長期間、燃料を使用していないと、重質成分の濃度が高まり、その後の内燃機関始動時や内燃機関始動後において燃料の燃焼性悪化を生じるおそれがある。すなわち燃料劣化を生じるおそれがある。
【0004】
このような燃料劣化問題を解決するために、給油した後の経過時間により劣化状態を推定して燃料噴射量に反映させる制御装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−255680号公報(第8−10頁、図3〜5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では内燃機関駆動・停止時を含めて経時による燃料劣化を問題としている。ところが燃料劣化は、経時のみでなく、その間の温度状態、すなわち温度履歴が関係している。特許文献1では、この温度履歴を考慮していない。
【0007】
内燃機関駆動時においては、温度履歴が燃料劣化に影響していても、空燃比フィードバック制御にて燃料噴射量を学習していることから燃料劣化は問題とはならない。
しかし長期間内燃機関が駆動されずに放置された後に内燃機関を始動する場合には、直前の内燃機関駆動停止期間では燃料噴射量の学習は不可能であることから、燃料劣化を学習値により補償した燃料噴射はできない。
【0008】
この内燃機関駆動停止期間に対して、特許文献1のごとく経過時間にて燃料劣化を推定しようとしても、上述したごとく内燃機関駆動停止期間において燃料の温度変化により生じた燃料成分の濃度変化を反映することができない。このように特許文献1の技術では、燃料劣化状態を正確に検出できない。
【0009】
本発明は、内燃機関駆動停止期間における内燃機関燃料系の燃料劣化状態を高精度に検出して内燃機関燃焼室への燃料供給量を補正することにより、内燃機関の適切な燃焼を可能とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の燃料供給量制御装置は、内燃機関駆動停止期間における内燃機関燃料系における燃料の温度履歴を検出する燃料温度履歴検出手段と、前記燃料温度履歴検出手段にて検出された前記温度履歴に基づいて内燃機関燃焼室への燃料供給量を補正する燃料供給量補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
燃料温度履歴検出手段が検出する温度履歴は、内燃機関燃料系における燃料温度の高低とその時間経過を表していることから、単に経過時間のみの燃料劣化状態を考慮しているのではなく、燃料温度を反映することで、温度による燃料成分間での蒸発性の違いに対応した燃料劣化状態を考慮していることになる。こうして温度履歴は、燃料劣化状態を高精度に反映した物理量として取り扱うことができる。
【0012】
そしてこの温度履歴に基づいて燃料供給量補正手段が燃料供給量を補正することで、内燃機関の適切な燃焼を可能にできる。
請求項2に記載の燃料供給量制御装置では、請求項1に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料供給量補正手段による補正は、内燃機関始動時及び内燃機関始動時以後の一方又は両方において行われることを特徴とする。
【0013】
このようにすることで、内燃機関始動時や内燃機関始動時以後において内燃機関の適切な燃焼を可能として、始動やそれ以後の内燃機関運転を安定したものにできる。
請求項3に記載の燃料供給量制御装置では、請求項2に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料温度履歴検出手段は、内燃機関駆動停止期間の長さと内燃機関燃料系での燃料温度とを計測して、この内燃機関駆動停止期間の長さと、この内燃機関駆動停止期間における内燃機関燃料系での燃料温度とに基づいて前記温度履歴を検出することを特徴とする。
【0014】
燃料温度履歴検出手段は、上述のごとく内燃機関駆動停止期間の長さと内燃機関燃料系での燃料温度とを計測して、これらに基づいて温度履歴を検出することで、燃料劣化状態を高精度に反映した温度履歴が得られる。
【0015】
請求項4に記載の燃料供給量制御装置では、請求項3に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料温度履歴検出手段は、内燃機関燃料系における燃料温度を複数の温度領域に分割して、各温度領域における内燃機関駆動停止時間を計測し、この温度領域毎の内燃機関駆動停止時間を、温度領域毎に寄与度を変更して全温度領域について総計した値を、前記温度履歴として検出することを特徴とする。
【0016】
内燃機関燃料系の燃料温度は変化し、かつ燃料温度の高低により燃料劣化進行速度が異なることから、上述したごとく複数の温度領域にてそれぞれ内燃機関駆動停止時間を計測して、温度領域毎に寄与度を変更して、これらの内燃機関駆動停止時間を総計する。このように求めた温度履歴は高精度に燃料劣化状態を反映したものとなる。
【0017】
請求項5に記載の燃料供給量制御装置では、請求項4に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料温度履歴検出手段は、内燃機関燃料系での燃料温度として、燃料タンク内での燃料温度を検出することを特徴とする。
【0018】
燃料タンク内では、内燃機関燃料系の他の部位に比較して、燃料の軽質成分が蒸発し易く、このことにより燃料タンク内にて燃料劣化が進行し易い。したがって特に燃料タンク内の燃料温度を検出して温度履歴を求めることで、燃料劣化状態を高精度に反映した温度履歴が得られる。
【0019】
請求項6に記載の燃料供給量制御装置では、請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料温度履歴検出手段は、給油がなされると前記温度履歴を初期値に戻すことを特徴とする。
【0020】
給油があれば、劣化していない燃料が内燃機関燃料系に供給されることになる。したがって、それまでの温度履歴にかかわらず、温度履歴を初期値に戻して、改めて温度履歴を検出するようにする。このことで燃料劣化状態を高精度に反映した温度履歴が得られる。
【0021】
請求項7に記載の燃料供給量制御装置では、請求項6に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料温度履歴検出手段は、給油後の全貯留燃料量内に存在する、給油時に内燃機関燃料系に残留していた燃料量の割合を、前記温度履歴の初期値に反映させることを特徴とする。
【0022】
給油により劣化していない燃料が内燃機関燃料系に供給されることになるが、この給油時に内燃機関燃料系に燃料が残留している場合には、既に劣化している燃料が劣化していない燃料に混合することになる。このため単に温度履歴を初期値に戻すのではなく、給油後の全貯留燃料量内において残留していた燃料量の割合に応じた初期値に戻すことが、より高精度な温度履歴とする上で重要である。
【0023】
したがって内燃機関燃料系に残留している燃料量の割合を、給油により設定される温度履歴の初期値に反映させることで、燃料劣化状態を高精度に反映した温度履歴が得られる。
【0024】
請求項8に記載の燃料供給量制御装置では、請求項1〜7のいずれか一項に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料供給量補正手段は、前記温度履歴に現れている燃料劣化が進行している程、燃料供給量を増量補正することを特徴とする。
【0025】
燃料の劣化が進行するほど、内燃機関燃焼室での燃焼状態が悪化して出力低下が生じやすくなる。このため温度履歴に現れている燃料劣化が進行している程、燃料供給量を増量補正することで、安定した内燃機関運転が可能となる。
【0026】
請求項9に記載のハイブリッド車両は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の燃料供給量制御装置を搭載したことを特徴とする。
ハイブリッド車両では、状況によって、内燃機関の駆動を停止して、電動モータにて車両を走行駆動することがある。このため内燃機関は車両停止時のみでなく、車両走行時にも駆動を停止した状態が継続する。したがってこのような走行中にて内燃機関を再始動する場合においても、高精度に燃料劣化状態を反映している温度履歴に基づいて内燃機関燃焼室への燃料供給量を補正することで、内燃機関の適切な燃焼を可能にでき、始動やそれ以後の内燃機関運転を安定したものにできる。
【0027】
請求項10に記載のハイブリッド車両では、請求項9に記載のハイブリッド車両において、車両外からの電力供給により内部電池の充電が可能であるプラグイン型として構成されていることを特徴とする。
【0028】
特にハイブリッド車両がプラグイン型である場合には、内燃機関が駆動されない状態が長期にわたることが多くなる。このため特に内燃機関始動時に大きく劣化が進行した燃料を使う頻度が増加する。
【0029】
しかし、高精度に燃料劣化状態を反映する温度履歴に基づいて内燃機関燃焼室への燃料供給量を補正することで、プラグイン型ハイブリッド車両においても、内燃機関の適切な燃焼を可能にでき、始動やそれ以後の内燃機関運転を安定なものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態1のプラグイン型ハイブリッド車両における駆動系のブロック図。
【図2】実施の形態1のECUが実行する燃料温度履歴検出処理のフローチャート。
【図3】同じく始動時燃料噴射量算出処理のフローチャート。
【図4】上記始動時燃料噴射量算出処理で用いられる始動時燃料補正係数マップMAPkfsの構成説明図。
【図5】実施の形態2のECUが実行する燃料温度履歴検出処理の一部を示すフローチャート。
【図6】他の実施の形態にてカウントアップ量Ciを燃料劣化カウンタCwの値に応じて変化させる例を示すグラフ。
【図7】他の実施の形態にて温度領域毎に積算値A〜Eを求めている状態を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[実施の形態1]
図1は、上述した発明が適用されたハイブリッド車両における駆動系のブロック図である。この駆動系は、内燃機関燃料系2及び内燃機関制御系4を有する内燃機関6と、電動モータ(後述するモータジェネレータMG2)と、を備えている。この内燃機関6はガソリンエンジンである。
【0032】
このハイブリッド車両はプラグイン型ハイブリッド車両である。したがって、外部電源8を利用して充電機構10を介してバッテリ12が充電可能とされている。このバッテリ12の電力が、電力制御ユニット14により、モータジェネレータMG2に供給されることにより、モータジェネレータMG2から回転駆動力が出力される。
【0033】
内燃機関6及びモータジェネレータMG2からの回転駆動力は減速機構16により減速されて、駆動輪18に伝達される。
内燃機関6と減速機構16との間には、動力分割機構20が配置されており、内燃機関6の回転駆動力を、減速機構16側と、発電機としてのモータジェネレータMG1とに分割して供給可能としている。
【0034】
尚、2つのモータジェネレータMG1,MG2は、それぞれ発電機としても電動モータとしても機能し、必要に応じてその間の機能を切り替えることができる。
内燃機関6の各気筒に対する吸気ポート22にはそれぞれ燃料噴射弁24が配置されている。これらの燃料噴射弁24には、燃料タンク26内に貯留されている燃料が、燃料ポンプモジュール28により、燃料経路28bを介して圧送されて来る。そして燃料噴射制御により、燃料噴射弁24からは所定のタイミングで吸気中に燃料が噴射され、各気筒に吸入されて燃焼される。このことにより内燃機関6が駆動する。
【0035】
更に燃料ポンプモジュール28に付属する形で燃料温度センサ28aが配置されている。この燃料温度センサ28aにより内燃機関燃料系2の燃料温度、ここでは特に燃料タンク26内の燃料温度Tfを検出している。
【0036】
燃料タンク26内には、フロート30aにより燃料タンク26内の燃料液面レベルSGLを検出するためのフューエルセンダーゲージ30が設けられている。
給油時における燃料タンク26内への燃料導入は、フューエルインレットパイプ32から行われる。燃料タンク26の上部空間26aは燃料蒸気排出通路34によりキャニスタ36に接続されている。キャニスタ36は内部に燃料を吸着する活性炭などの吸着材を備え、燃料蒸気排出通路34を介して燃料タンク26の上部空間26aから排出される燃料蒸気を吸着している。
【0037】
キャニスタ36にはフューエルインレットパイプ32に設けられたフューエルインレットボックス32aに連通する大気導入通路38が接続されている。この大気導入通路38には途中にエアフィルタ38aが設けられている。更に大気導入通路38には、エアフィルタ38aよりもキャニスタ36側の位置に、キーオフポンプとして機能するベーパーポンプ40が設けられている。給油時にキーオフされるとベーパーポンプ40が駆動されて、フューエルインレットボックス32a内の燃料蒸気をキャニスタ36内に吸引して吸着させる。
【0038】
更にキャニスタ36は、パージ通路42により、スロットルバルブ44よりも下流の位置で内燃機関6の吸気通路46に接続されている。パージ通路42の途中には開弁状態と閉弁状態とで切り替えられる電磁弁としてのパージ制御バルブ48が配置されている。
【0039】
このパージ制御バルブ48が開弁状態とされることで、キャニスタ36の吸着材から離脱した燃料蒸気がパージ通路42を介して吸気通路46を流れる吸気中に放出可能とされる。このことにより吸気通路46からサージタンク50内に流れ込んだパージ燃料を含む吸気は各気筒の吸気ポート22に分配され、燃料噴射弁24からの燃料と共に、内燃機関6における各気筒の燃焼室内にて燃焼されることになる。
【0040】
吸気通路46においては、エアフィルタ52とスロットルバルブ44との間にエアフロメータ54が設けられて、内燃機関6に供給される吸入空気量GA(g/sec)を検出している。
【0041】
この他、車両のドライバーが操作するアクセルペダルに設けられてアクセル開度ACCPを検出するアクセル開度センサ56、内燃機関6のクランク軸の回転数NEを検出する機関回転数センサ58、IGSW(イグニションスイッチ)60、その他のセンサ・スイッチ類が設けられて、それぞれ信号を出力している。他の信号としては、例えば冷却水温、吸気温、車速などが挙げられる。
【0042】
燃料温度センサ28a、フューエルセンダーゲージ30、エアフロメータ54、アクセル開度センサ56、機関回転数センサ58、IGSW60などの検出信号は、マイクロコンピュータを中心として構成されている電子制御ユニット(以下、ECUと称する)62に入力される。
【0043】
そして、このような信号データや予め記憶されているデータに基づいて、ECU62は演算処理を実行して、燃料噴射弁24、スロットルバルブ44などを制御する。更に後述する燃料温度履歴検出処理により燃料タンク26内の燃料の劣化状態を温度履歴として検出すると共に、始動時燃料噴射量算出処理によりその温度履歴を始動時の燃料噴射量に反映させる処理を実行している。
【0044】
ECU62が実行する燃料温度履歴検出処理を図2のフローチャートに示す。本処理は、内燃機関6の駆動停止期間において周期的になされる処理である。ここで内燃機関6の駆動停止期間とは、内燃機関6での燃料燃焼を停止させて2つのモータジェネレータMG1,MG2のいずれか一方あるいは両方のみで車両を走行させている期間と、IGSW60をオフしている期間(キーオフ期間)とが含まれる。この燃料温度履歴検出処理(図2)の実行周期としては、例えば分単位あるいは時単位で設定されている。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0045】
本処理が開始されると、まず給油完了直後か否かが判定される(S100)。この給油完了直後か否かの判定は、ここではIGSW60をオフした直後に、フューエルセンダーゲージ30の示す燃料残量が十分な増加を示した場合に給油がなされたとしている。そしてこの燃料温度履歴検出処理の実行タイミングが、給油がなされた後の最初の処理であれば、給油完了直後であると判定している。
【0046】
ここで、給油完了直後であるとすると(S100でYES)、次に燃料劣化カウンタCwがリセットされる(S102)。ここでのリセットは、燃料劣化カウンタCwの値を「0」にするものである。この燃料劣化カウンタCwの値は、内燃機関燃料系2の燃料劣化状態、特に燃料タンク26内での燃料劣化状態を、燃料の温度履歴にて表しているものであり、値が大きいほど燃料劣化状態が進行していることを示すものである。
【0047】
次に燃料温度センサ28aにて検出される燃料温度Tfが第1判定温度T1より高いか否かが判定される(S104)。ここで第1判定温度T1としては「0℃」が設定されているものとする。
【0048】
燃料温度Tfが第1判定温度T1以下であるとすると(S104でNO)、式1に示すごとく燃料劣化カウンタCwのカウントアップが行われる(S112)。
[式1] Cw ← Cw + Ci
カウントアップ量Ciは、燃料温度Tfの下で、燃料温度履歴検出処理の1周期中に生じた燃料劣化進行度を示す値であり、内燃機関6に用いられる燃料(ここではガソリン)の性状から予め決定されている値である。ここで燃料の性状とは、燃料に含まれる複数の燃料成分間での蒸発性の違いから生じる劣化の進行度合いを意味する。
【0049】
尚、ステップS112の処理は、燃料温度Tfが最低温度領域(Tf≦0℃)での処理であり、この温度領域では易揮発性の燃料成分についてもその蒸発が最も抑制された状態にある。このことから後述する他の式での燃料劣化カウンタCwの増加に比較して、前記式1での燃料劣化カウンタCwの増加は最低とされている。
【0050】
このステップS112の処理が終了すると、本処理を一旦出る。
次の実行周期となって燃料温度履歴検出処理(図2)が実行されると、給油完了直後ではないので(S100でNO)、次に「燃料温度Tf>第1判定温度T1」か否かが判定される(S104)。今回もTf≦T1であれば(S104でNO)、前記式1により燃料劣化カウンタCwのカウントアップが行われる(S112)。このことによりTf≦0℃の状態が継続する限り、燃料劣化カウンタCwは最低速度で増加することになる。
【0051】
内燃機関6の駆動停止期間において燃料温度Tfが第1判定温度T1より高くなった場合には(S104でYES)、次に「燃料温度Tf>第2判定温度T2」か否かが判定される(S106)。
【0052】
ここで第2判定温度T2としては「20℃」が設定されているものとする。
燃料温度Tfが第2判定温度T2以下であるとすると(S106でNO)、式2に示すごとく燃料劣化カウンタCwのカウントアップが行われる(S114)。
【0053】
[式2] Cw ← Cw + K1・Ci
第1カウントアップ補正係数K1は、第2判定温度T2≧燃料温度Tf>第1判定温度T1の下で、燃料温度履歴検出処理の1周期中に生じた燃料劣化進行度の増加速度を、カウントアップ量Ciに対する係数(>1.0)として示す値である。
【0054】
ステップS114の処理が終了すると、本処理を一旦出る。
次の実行周期となって燃料温度履歴検出処理(図2)が実行されると、給油完了直後ではないので(S100でNO)、今回もT2≧Tf>T1であれば、燃料温度Tf>T1か否かの判定(S104)で「YES」と判定され、燃料温度Tf>T2か否かの判定(S106)では「NO」と判定される。したがって前記式2により燃料劣化カウンタCwのカウントアップが行われる(S114)。このことにより20℃≧Tf>0℃の状態が継続する限り、燃料劣化カウンタCwは、前記式2によって第1カウントアップ補正係数K1に対応する速度で増加することになる。
【0055】
燃料温度Tfが第2判定温度T2より高くなった場合には(S106でYES)、次に「燃料温度Tf>第3判定温度T3」か否かが判定される(S108)。
ここで第3判定温度T3としては「40℃」が設定されているものとする。
【0056】
燃料温度Tfが第3判定温度T3以下であるとすると(S108でNO)、式3に示すごとく燃料劣化カウンタCwのカウントアップが行われる(S116)。
[式3] Cw ← Cw + K2・Ci
第2カウントアップ補正係数K2は、第3判定温度T3≧燃料温度Tf>第2判定温度T2の下で、燃料温度履歴検出処理の1周期中に生じた燃料劣化進行度の増加速度を、カウントアップ量Ciに対する係数(>K1)として示す値である。
【0057】
ステップS116の処理が終了すると、本処理を一旦出る。
次の実行周期となって燃料温度履歴検出処理(図2)が実行されると、給油完了直後ではないので(S100でNO)、今回もT3≧Tf>T2であれば、燃料温度Tf>T1か否かの判定(S104)、燃料温度Tf>T2か否かの判定(S106)でそれぞれ「YES」と判定される。そして燃料温度Tf>T3か否かの判定(S108)では「NO」と判定され、前記式3により燃料劣化カウンタCwのカウントアップが行われる(S116)。このことにより40℃≧Tf>20℃の状態が継続する限り、燃料劣化カウンタCwは、前記式3によって第2カウントアップ補正係数K2に対応する速度で増加することになる。
【0058】
燃料温度Tfが第3判定温度T3より高くなった場合には(S108でYES)、次に「燃料温度Tf>第4判定温度T4」か否かが判定される(S110)。
ここで第4判定温度T4としては「60℃」が設定されているものとする。
【0059】
燃料温度Tfが第4判定温度T4以下であるとすると(S110でNO)、式4に示すごとく燃料劣化カウンタCwのカウントアップが行われる(S118)。
[式4] Cw ← Cw + K3・Ci
第3カウントアップ補正係数K3は、第4判定温度T4≧燃料温度Tf>第3判定温度T3の下で、燃料温度履歴検出処理の1周期中に生じた燃料劣化進行度の増加速度を、カウントアップ量Ciに対する係数(>K2)として示す値である。
【0060】
ステップS118の処理が終了すると、本処理を一旦出る。
次の実行周期となって燃料温度履歴検出処理(図2)が実行されると、給油完了直後ではないので(S100でNO)、今回もT4≧Tf>T3であれば、燃料温度Tf>T1か否かの判定(S104)、燃料温度Tf>T2か否かの判定(S106)、燃料温度Tf>T3か否かの判定(S108)でそれぞれ「YES」と判定される。そして燃料温度Tf>T4か否かの判定(S110)では「NO」と判定され、前記式4により燃料劣化カウンタCwのカウントアップが行われる(S118)。このことにより60℃≧Tf>40℃の状態が継続する限り、燃料劣化カウンタCwは、前記式4によって第3カウントアップ補正係数K3に対応する速度で増加することになる。
【0061】
燃料温度Tfが第4判定温度T4より高くなった場合には(S110でYES)、式5に示すごとく燃料劣化カウンタCwのカウントアップが行われる(S120)。
[式5] Cw ← Cw + K4・Ci
第4カウントアップ補正係数K4は、燃料温度Tf>第4判定温度T4の下で、燃料温度履歴検出処理の1周期中に生じた燃料劣化進行度の増加速度を、カウントアップ量Ciに対する係数(>K3)として示す値である。
【0062】
ステップS120の処理が終了すると、本処理を一旦出る。
次の実行周期となって燃料温度履歴検出処理(図2)が実行されると、給油完了直後ではないので(S100でNO)、今回もTf>T4であれば、Tf>T1か否かの判定(S104)、Tf>T2か否かの判定(S106)、Tf>T3か否かの判定(S108)、Tf>T4か否かの判定(S110)でそれぞれ「YES」と判定される。したがって前記式5により燃料劣化カウンタCwのカウントアップが行われる(S120)。このことによりTf>60℃の状態が継続する限り、燃料劣化カウンタCwは、前記式5によって第4カウントアップ補正係数K4に対応する速度(最高速度)で増加することになる。
【0063】
このようにして内燃機関6の駆動停止期間においては、燃料タンク26内の温度履歴として算出される燃料劣化カウンタCwが更新されることになる。
このように温度履歴として算出される燃料劣化カウンタCwを、始動時の燃料噴射量に反映させる処理として、ECU62は、図3に示すごとくの始動時燃料噴射量算出処理を実行している。本処理は、IGSW60のオン操作後に、msec単位の短時間周期で繰り返し実行される処理である。
【0064】
本処理が開始されると、まず始動時か否かが判定される(S150)。ここで、始動時としては、IGSW60のオンのタイミングから、クランキングを経て内燃機関6が駆動し、その回転数NEが始動完了を示す回転数NEに上昇するまでの期間としている。
【0065】
始動時でなければ(S150でNO)、このまま本処理を出る。したがってIGSW60のオン操作前や始動後においては、始動時燃料噴射量算出処理(図3)では実質的な処理は行われない。
【0066】
始動時であれば(S150でYES)、次に始動時燃料補正係数マップMAPkfsにより、直前の内燃機関6の駆動停止期間にて前記燃料温度履歴検出処理(図2)にて算出されている燃料劣化カウンタCwの値に基づいて、始動時燃料補正係数Kfsが算出される(S152)。
【0067】
始動時燃料補正係数マップMAPkfsは図4に示すごとくの1次元マップであり、燃料劣化カウンタCwが大きくなるにしたがって、始動時燃料補正係数Kfsは1.0よりも大きくなるように設定される。
【0068】
これは、燃料劣化が進行して、燃料中での重質成分濃度が増加すると、内燃機関6の燃焼室内での燃焼性が低下するため、燃料劣化カウンタCwが増加するほど始動時燃料噴射量を増加させる必要があるためである。
【0069】
上述したカウントアップ量Ci、カウントアップ補正係数K1〜K4及び始動時燃料補正係数マップMAPkfsの設計は例えば次のように行っている。
すなわち、燃料タンク26を種々の温度にて種々の時間で保持することにより、燃料中の重質成分の濃度(あるいは軽質成分の濃度)を測定する。このような温度、時間及び燃料中の重質成分の濃度(あるいは軽質成分の濃度)との関係からカウントアップ量Ci及びカウントアップ補正係数K1〜K4を決定する。そして予め実験にて求められている燃料中の重質成分の濃度(あるいは軽質成分の濃度)と燃料の燃焼性との関係から、始動時燃料補正係数マップMAPkfsを設計する。
【0070】
尚、別の設計手法として次のようにしても良い。すなわち内燃機関6が駆動を停止している際に、燃料タンク26を所定温度にて所定時間保持し、その後に内燃機関6を駆動させる。この駆動時に内燃機関空燃比フィードバック制御にてフィードバック学習値が求められるが、この始動後のフィードバック学習値の変化に基づいて、例えばフィードバック学習値の極値や増加幅などに基づいてカウントアップ量Ci及びカウントアップ補正係数K1〜K4を、前記所定温度及び前記所定時間に対応させて決定する。そしてフィードバック学習値と燃料増量との関係から、始動時燃料補正係数マップMAPkfsを設計する。
【0071】
ステップS152にて始動時燃料補正係数Kfsが算出されると、次に式6に示すごとく、始動時燃料噴射量を設定する(S154)。
[式6] 始動時燃料噴射量 ← 基準燃料量・Kfs・Kfb
ここで基準燃料量は予め始動時燃料噴射量として設定されている燃料噴射量、補正係数Kfbは、燃料劣化以外の要因(機関駆動時に学習されている燃料噴射量の空燃比フィードバック学習値、始動時冷却水温など)で始動時燃料噴射量を補正するための係数である。
【0072】
このようにして前記燃料温度履歴検出処理(図2)にて検出した燃料劣化カウンタCwの値が始動時燃料噴射量に反映される。したがって燃料劣化カウンタCwが小さく、燃料の劣化が進行していない場合には、始動時燃料補正係数Kfsによる始動時燃料噴射量の増量分は無いか小さい。燃料劣化カウンタCwが大きく、燃料の劣化が進行している場合には、始動時燃料補正係数Kfsによる始動時燃料噴射量の増量分は大きくなる。
【0073】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU62が燃料温度履歴検出手段及び燃料供給量補正手段を備えた燃料供給量制御装置に相当し、燃料温度履歴検出処理(図2)が燃料温度履歴検出手段としての処理に、始動時燃料噴射量算出処理(図3)が燃料供給量補正手段としての処理に相当する。第1カウントアップ補正係数K1、第2カウントアップ補正係数K2、第3カウントアップ補正係数K3及び第4カウントアップ補正係数K4が、温度領域毎に変更される寄与度に相当する。燃料劣化カウンタCwの値が温度履歴に相当し、温度領域毎の内燃機関駆動停止時間を温度領域毎に寄与度を変更して全温度領域について総計した値に相当する。
【0074】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(1)燃料温度履歴検出処理(図2)が検出している燃料劣化カウンタCwの値は、内燃機関燃料系2(ここでは燃料タンク26)における燃料温度高低の程度とその時間経過を表している。このことから、単に経過時間のみで燃料劣化状態を推定しているのではなく、燃料成分間での蒸発性の違いに影響する温度をも反映した燃料劣化状態を推定していることになる。したがって温度履歴は燃料劣化状態を高精度に反映した物理量として取り扱うことができる。
【0075】
そしてこのように検出した温度履歴である燃料劣化カウンタCwに基づいて始動時燃料噴射量算出処理(図3)では始動時の燃料供給量に相当する始動時燃料噴射量を補正している。実際には、燃料の劣化が進行するほど、出力低下が生じやすくなる。このため燃料劣化カウンタCwが大きくなる程、始動時燃料噴射量を増量補正している。このことで、始動時において内燃機関6の適切な燃焼性を確保でき、円滑な機関始動が可能となる。
【0076】
(2)燃料温度履歴検出処理(図2)では、燃料劣化カウンタCwの計算に際して、燃料タンク26内の燃料温度Tfを複数の温度領域に分割している。ここでは5つの温度領域に分割している。
【0077】
そして、この各温度領域における内燃機関駆動停止時間を、前記式1〜5に示したごとく、燃料温度履歴検出処理(図2)の周期的実行により、燃料劣化カウンタCwに対するカウントアップ量Ciの加算回数として計測している。そして、このカウントアップ量Ciの加算において、カウントアップ量Ciとカウントアップ補正係数K1〜K4との積を計算すること、あるいはそのままカウントアップ量Ciを用いることにより、温度領域毎に寄与度を変更している。このことで燃料劣化カウンタCwは温度履歴として検出されている。
【0078】
燃料タンク26を含めて内燃機関燃料系2の燃料温度は種々変化し、かつ燃料温度により燃料劣化進行速度が異なることから、上述したごとく燃料劣化カウンタCwとして求めた温度履歴は高精度に燃料劣化状態を反映したものとなる。このため始動時燃料噴射量に対する補正を、より適切なものとすることができる。
【0079】
(3)本実施の形態では、燃料温度センサ28aは燃料タンク26内の燃料温度を検出している。燃料タンク26内では、上部空間26aから燃料蒸気がキャニスタ36へ吸着されることなどにより、内燃機関燃料系2の他の部位に比較して、燃料の軽質成分が先行して排出され易く、このことにより燃料タンク26内での燃料劣化が進行し易い。
【0080】
したがって特に燃料タンク26内の燃料温度を検出して燃料劣化カウンタCwの値を計算することで、燃料劣化状態を高精度に反映した燃料劣化カウンタCwとすることができる。
【0081】
(4)給油があれば、劣化していない燃料が燃料タンク26内に供給されることになる。したがって給油完了直後には(S100でYES)、それまでの燃料劣化カウンタCwの値にかかわらず燃料劣化カウンタCwを初期値に戻して(S102)、改めて燃料劣化カウンタCwを計算するようにしている。このことで燃料劣化状態を高精度に反映した燃料劣化カウンタCwの値が得られる。
【0082】
(5)特に本実施の形態では、内燃機関6及びその内燃機関燃料系2は、プラグイン型ハイブリッド車両に搭載されている。このようにプラグイン型ハイブリッド車両である場合は、外部電源8からバッテリ12に充電可能なことから、内燃機関6が運転されない状態が長期にわたることが多くなる。このため他の車両に比較して、内燃機関6の始動時に大きく劣化が進行した燃料を使う頻度が増加することになる。
【0083】
しかし、上述したごとく高精度な温度履歴検出に基づいて始動時燃料噴射量を補正しているので、プラグイン型ハイブリッド車両においても、始動時における内燃機関6の適切な燃焼を可能にでき、円滑な機関始動が可能となる。
【0084】
[実施の形態2]
本実施の形態では、前記図2に示した燃料温度履歴検出処理の代わりに、図5のフローチャートに一部を示す燃料温度履歴検出処理を実行する。他の構成は前記実施の形態1と同じであるので、前記実施の形態1の図も参照して説明する。
【0085】
燃料温度履歴検出処理(図5)について説明する。本処理は、前記図2とは異なり、内燃機関6の駆動停止期間か否かにかかわらず、分単位あるいは時単位で周期的になされる処理である。尚、図5のフローチャートは燃料温度履歴検出処理全体の一部を示し、他の部分は前記図2を参照する。
【0086】
本処理が開始されると、まず内燃機関6の駆動停止期間か否かが判定される(S200)。この内燃機関6の駆動停止期間とは、前記実施の形態1にて述べたごとくである。
駆動停止期間でなければ(S200でNO)、フューエルセンダーゲージ30が検出している燃料液面レベルSGLの値から燃料タンク26内の燃料残量Frが検出される(S202)。これは燃料液面レベルSGLと燃料残量Frとの対応マップを用いて、燃料液面レベルSGLから燃料残量Frを求める処理である。
【0087】
そしてこのまま一旦本処理を出る。内燃機関6が駆動停止とならない限り、ステップS202にて燃料残量Fr検出を繰り返す。したがって内燃機関6が燃料を消費しても、ECU62は常に最新の燃料残量Frを検出して記憶していることになる。
【0088】
そして内燃機関6の駆動が停止されて給油が実行された場合には、まずステップS200で「YES」と判定され、次に給油完了直後か否かが判定される(S204)。例えばフューエルセンダーゲージ30が検出している燃料液面レベルSGLの上昇が停止して一定秒数経過することにより、給油完了直後であると判定する。
【0089】
給油前や給油中である場合、あるいは給油後であっても給油直後でない場合は(S204でNO)、次に給油中か否かが判定される(S206)。ここで給油前あるいは給油後であれば(S206でNO)、前記図2にて説明したステップS104の処理に移って、前記実施の形態1にて説明したごとく、ステップS104〜S120の処理が実行される。このことにより燃料タンク26内の燃料について燃料劣化カウンタCwが算出されることになる。
【0090】
給油中の場合には(S206でYES)、燃料劣化カウンタCwの算出は実行せずに、このまま一旦処理を出る。
その後、給油が完了して、給油完了直後の状態となれば(S204でYES)、フューエルセンダーゲージ30が検出している燃料液面レベルSGLに基づいて、このタイミングでの全貯留燃料量Faが検出される(S208)。
【0091】
そして式7に示すごとく初期値Cwrが算出される(S210)。
[式7] Cwr ← Cw・Fr/Fa
この式7は、給油後の燃料タンク26に存在する全貯留燃料量Faにおいて、給油時に燃料タンク26に残留していた燃料量(燃料残量Fr)が混合している割合(Fr/Fa)を、初期値Cwrに反映させたものである。すなわち新しい燃料に、燃料劣化カウンタCw分の劣化を生じている燃料が混合することにより、全体として「Cw・Fr/Fa」で表される劣化状態となる。この値を初期値Cwrとして設定している。
【0092】
そして燃料劣化カウンタCwに初期値Cwrを設定することで燃料劣化カウンタCwのリセットを実行する(S212)。次に前記実施の形態1にて説明したごとく、ステップS104〜S120の処理が実行される。このことにより、初期値Cwrの状態から開始した燃料劣化カウンタCwが更新されることになる。
【0093】
上述した構成において、請求項との関係は、ECU62が燃料温度履歴検出手段及び燃料供給量補正手段を備えた燃料供給量制御装置に相当し、燃料温度履歴検出処理(図5)及び図2のステップS104〜S120が燃料温度履歴検出手段としての処理に、始動時燃料噴射量算出処理(図3)が燃料供給量補正手段としての処理に相当する。第1カウントアップ補正係数K1、第2カウントアップ補正係数K2、第3カウントアップ補正係数K3及び第4カウントアップ補正係数K4が、温度領域毎に変更される寄与度に相当する。燃料劣化カウンタCwの値が温度履歴に相当し、温度領域毎の内燃機関駆動停止時間を温度領域毎に寄与度を変更して全温度領域について総計した値に相当する。
【0094】
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(1)前記実施の形態1の(1)〜(3)及び(5)と同様な効果を生じる。これと共に、給油時に残留している燃料の劣化状態を考慮して、燃料劣化カウンタCwをリセットしている。このため、より高精度な燃料劣化カウンタCwの値が得られ、一層安定した内燃機関6の始動が可能となる。
【0095】
[その他の実施の形態]
・前記各実施の形態では、燃料劣化カウンタCwは、内燃機関始動時における燃料噴射量の補正に反映されたが、内燃機関始動時以後の燃料噴射量制御に反映させても良い。すなわち燃料劣化カウンタCwの値に応じて燃料噴射量制御の学習値(ここでは空燃比フィードバック学習値)を補正することにより、燃料劣化状態に対応させて燃料噴射量を増量補正でき、フィードバック制御やフィードバック制御時の学習が進行する前に、最初から適切な燃焼を実現して、十分に安定した内燃機関運転を可能とすることができる。
【0096】
・内燃機関燃料系2の温度としては、燃料温度センサ28aによる燃料タンク26内の燃料温度のみでなく、燃料経路28bの燃料温度、あるいは燃料タンク26の表面温度でも良い。特に燃料の蒸発は燃料タンク26内にて行われることから、前記各実施の形態のごとく、燃料タンク26内の燃料温度を検出することが、内燃機関燃料系2において燃料劣化に大きく影響する温度を高精度に検出できる。
【0097】
・内燃機関が駆動を停止している状態では、燃料タンク26などの内燃機関燃料系2の温度履歴は、外気温に大きく依存する。したがって内燃機関燃料系2の温度履歴は、外気温を検出できるセンサ、例えば図1に示した吸気通路46内に、大気側から吸入される外気の温度を吸気温として検出する吸気温センサを配置することにより測定できる。したがって吸気温センサが検出する吸気温を、燃料温度センサ28aにて検出される燃料タンク26内の燃料温度の代わりに用いて、内燃機関燃料系2の温度履歴(燃料劣化カウンタCwの値)を求めても良い。
【0098】
・前記各実施の形態ではカウントアップ量Ciは、燃料劣化カウンタCwの値にかかわらず一定であった。このように一定にする代わりに、燃料劣化カウンタCwの値に応じてカウントアップ量Ciの値を変化させても良い。重質成分の濃度が増加すると、すなわち軽質成分の濃度が減少すると、軽質成分の蒸発速度が低下することから、図6に示すごとく燃料劣化カウンタCwが増加するほどカウントアップ量Ciの値を低減させるようにしても良い。
【0099】
・前記各実施の形態では、各温度領域において積算されるカウントアップ量Ciは、最初からカウントアップ補正係数K1〜K4により補正されて、燃料劣化カウンタCwに積算されていた(ステップS114〜S120)。このようにするのではなく、単に各温度領域にて、カウントアップ量Ciを補正することなく図7に示すごとくそれぞれ積算値A〜Eとして積算しても良い。この場合には、始動時等にて燃料劣化状態を考慮することが必要な際に、これらの積算値A〜Eの内で、特に積算値B〜Eに対して、それぞれカウントアップ補正係数K1〜K4を掛け算することにより、各温度領域での燃料劣化状態を算出する。そして、これらを総計することにより燃料劣化カウンタCwの値を算出し、この値から、前記図4に示した始動時燃料補正係数マップMAPkfsにより、実際に燃料噴射量を補正するための始動時燃料補正係数Kfsを求めても良い。
【0100】
・前記各実施の形態はプラグイン型のハイブリッド車両の例を示したが、プラグイン型でないハイブリッド車両にも適用でき、更にハイブリッド車両ではなくても、内燃機関のみを駆動源とする車両においても適用できる。このようなプラグイン型以外の車両においても、長期間車両を使用せずに放置しておいた場合に同様に燃料が劣化するおそれがあり、前記各実施の形態を適用することで、内燃機関駆動時に適切な燃焼状態とすることができる。
【符号の説明】
【0101】
2…内燃機関燃料系、4…内燃機関制御系、6…内燃機関、8…外部電源、10…充電機構、12…バッテリ、14…電力制御ユニット、16…減速機構、18…駆動輪、20…動力分割機構、22…吸気ポート、24…燃料噴射弁、26…燃料タンク、26a…上部空間、28…燃料ポンプモジュール、28a…燃料温度センサ、28b…燃料経路、30…フューエルセンダーゲージ、30a…フロート、32…フューエルインレットパイプ、32a…フューエルインレットボックス、34…燃料蒸気排出通路、36…キャニスタ、38…大気導入通路、38a…エアフィルタ、40…ベーパーポンプ、42…パージ通路、44…スロットルバルブ、46…吸気通路、48…パージ制御バルブ、50…サージタンク、52…エアフィルタ、54…エアフロメータ、56…アクセル開度センサ、58…機関回転数センサ、60…IGSW(イグニションスイッチ)、62…ECU、MG1,MG2…モータジェネレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関駆動停止期間における内燃機関燃料系における燃料の温度履歴を検出する燃料温度履歴検出手段と、
前記燃料温度履歴検出手段にて検出された前記温度履歴に基づいて内燃機関燃焼室への燃料供給量を補正する燃料供給量補正手段と、
を備えたことを特徴とする燃料供給量制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料供給量補正手段による補正は、内燃機関始動時及び内燃機関始動時以後の一方又は両方において行われることを特徴とする燃料供給量制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料温度履歴検出手段は、内燃機関駆動停止期間の長さと内燃機関燃料系での燃料温度とを計測して、この内燃機関駆動停止期間の長さと、この内燃機関駆動停止期間における内燃機関燃料系での燃料温度とに基づいて前記温度履歴を検出することを特徴とする燃料供給量制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料温度履歴検出手段は、内燃機関燃料系における燃料温度を複数の温度領域に分割して、各温度領域における内燃機関駆動停止時間を計測し、この温度領域毎の内燃機関駆動停止時間を、温度領域毎に寄与度を変更して全温度領域について総計した値を、前記温度履歴として検出することを特徴とする燃料供給量制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料温度履歴検出手段は、内燃機関燃料系での燃料温度として、燃料タンク内での燃料温度を検出することを特徴とする燃料供給量制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料温度履歴検出手段は、給油がなされると前記温度履歴を初期値に戻すことを特徴とする燃料供給量制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料温度履歴検出手段は、給油後の全貯留燃料量内に存在する、給油時に内燃機関燃料系に残留していた燃料量の割合を、前記温度履歴の初期値に反映させることを特徴とする燃料供給量制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の燃料供給量制御装置において、前記燃料供給量補正手段は、前記温度履歴に現れている燃料劣化が進行している程、燃料供給量を増量補正することを特徴とする燃料供給量制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の燃料供給量制御装置を搭載したことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項10】
請求項9に記載のハイブリッド車両において、車両外からの電力供給により内部電池の充電が可能であるプラグイン型として構成されていることを特徴とするハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−92787(P2012−92787A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242506(P2010−242506)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】