説明

画像認識装置および画像認識方法

【課題】夜間などの走行時であっても、車両と歩行者との相対距離を正確に計測することができる画像認識装置および画像認識方法を提供することを目的とする。
【解決手段】車両の走行時に前方に存在する歩行者に向けて光を照射するヘッドライト12と、歩行者により反射された反射光に基づいて、歩行者の画像の輝度(画像濃度)を取得する画像濃度取得部70と、画像濃度取得部70により取得された画像濃度に基づいて、車両から歩行者までの相対距離を算出する歩行者距離算出部80とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載カメラが撮影した入力画像から特定の物体の存在を画像認識する画像認識装置に関し、特に、夜間などの走行時であっても、画像認識した物体と自車両との相対距離を正確に計測することができる画像認識装置および画像認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行中においては、特に歩行者との衝突回避が重要である。このため、従来から、車両に撮影用のカメラなどを搭載し、この車載カメラから取得した画像によって歩行者の動向を認識することで運転を支援し、衝突事故(人身事故)などを防止する技術の実現が重要な課題となっている。そこで、近年では、画像認識装置やレーダ検知装置を用いて自車両周辺の歩行者を画像認識する技術が考案されている。
【0003】
この種の画像認識に関する従来例として、例えば、特許文献1は、特定の場所に固定した定点カメラが撮影した画像から、歩行者や車両を認識する技術について開示されてる。また、例えば、特許文献2には、赤外画像とレーダとを用いて歩行者の検知と歩行者までの距離の測定を行なう技術について開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献3には、単眼カメラにより撮影された画像内の物体までの距離を推定する際に、この物体の近傍にある道路近傍の構造体に着目し、この構造体が自車両に接近する時の画像サイズの変化に基づいて、構造体までの距離を推定するとともに、その構造体の位置をもとにして、物体までの距離を推定する技術について開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−190012号公報
【特許文献2】特開平11−16099号公報
【特許文献3】特開2003−247824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述した画像認識に関する従来例の場合には、以下に示すような問題がある。すなわち、車両に搭載する撮影カメラには主に単眼カメラが使用されるが、この単眼カメラによる距離測定は、複数カメラを用いた測定に比べて検出精度が低下するという問題がある。
【0007】
また、車両の走行時の振動や車両の周囲の街灯などによる環境光(外乱光)による影響を受け易いため、画像自体の検出精度が悪いという問題点があった。さらに、夜間などでは、昼間のように明瞭な画像を取得することができないため、歩行者に対する画像認識も低下するため、車両と歩行者との距離の計測も困難になるという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した従来技術における問題点を解消し、課題を解決するためになされたものであり、歩行者の撮影画像の明暗を画像輝度の変化値として取得することで、夜間などの走行時であっても、車両と歩行者までの距離を正確に推測することができる画像認識装置および認識対象者認識方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、請求項1の発明に係る画像認識装置は、車両に搭載された車載カメラが撮影した入力画像から特定の物体との相対距離を画像認識する画像認識装置であって、特定の物体に向けて光を照射する投光手段により、前記特定の物体により反射された反射光に基づいて、当該特定の物体による反射強度である画像の輝度を取得する画像輝度取得手段と、前記画像輝度取得手段により最初に取得された前記特定の物体による第一の画像輝度と車両が所定時間後に進んだ際に取得された特定の物体の第二の画像輝度との比率に基づいて、前記車両から前記特定の物体までの相対距離を算出する距離算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この請求項1に記載の発明によれば、画像認識装置は、特定の物体により反射された反射光に基づいて、当該特定の物体による反射強度である画像の輝度を取得する画像輝度取得手段と、画像輝度取得手段により最初に取得された特定の物体による第一の画像輝度と車両が所定時間後に進んだ際に取得された特定の物体の第二の画像輝度との比率に基づいて、前記車両から前記特定の物体までの相対距離を算出する距離算出手段とを備える。
【0011】
また、請求項2の発明に係る画像認識装置は、請求項1に記載の発明において、前記投光手段は、前記特定の物体に対して単体の光を照射する第一の投光手段と、複合する光を照射する第二の投光手段とを有するとともに、前記画像輝度取得手段は、前記単体光の照射に応じた反射光に基づいて、第一の画像輝度を取得し、前記複合光の照射に応じた反射光に基づいて、第二の画像輝度を取得し、当該第一の画像輝度と第二の画像輝度とによる画像輝度値の差分により、前記特定の物体の反射光に基づいた正規の画像輝度を取得する画像差分化取得手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
この請求項2の発明によれば、画像認識装置の画像輝度取得手段は、第一の投光手段による単体光の照射に応じた反射光に基づいて、第一の画像輝度を取得し、第一の投光手段による複合光の照射に応じた反射光に基づいて、第二の画像輝度を取得し、画像差分化取得手段により、第一の画像輝度と第二の画像輝度とによる画像輝度値の差分処理を行ない、特定の物体の反射光に基づいた正規の画像輝度を取得する。
【0013】
また、請求項3の発明に係る画像認識装置は、請求項1または2に記載の発明において、移動前の歩行者の画像サイズと移動後の歩行者の画像サイズとを任意の画像サイズに調整する画像正規化手段をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
この請求項3の発明によれば、画像認識装置は、画像正規化手段により、移動前の歩行者の画像サイズと移動後の歩行者の画像サイズとを任意の画像サイズに調整する。
【0015】
また、請求項4の発明に係る画像認識装置は、請求項1または2に記載の発明において、移動前の歩行者の画像サイズに対応する画像輝度と移動後の歩行者の画像サイズに対応する画像輝度とにより平均画像輝度を算出する平均画像輝度算出手段をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
この請求項4の発明によれば、画像認識装置は、移動前の歩行者の画像サイズに対応する画像輝度と移動後の歩行者の画像サイズに対応する画像輝度とにより平均画像輝度を算出する平均画像輝度算出手段をさらに備える。
【0017】
また、請求項5の発明に係る画像認識装置は、請求項1〜4の何れか一つに記載の発明において、前記車両の走行速度を検出する車両速度検出手段をさらに備えるとともに、当該車両速度検出手段により検出された車両の走行速度と、前記特定の物体に対する画像の取得周期とに基づいて、所定の時刻毎での特定の物体に対する車両の接近距離を推定により算出する推定距離算出手段を備えることを特徴とする。
【0018】
この請求項5の発明によれば、画像認識装置は、推定距離算出手段により、車両速度検出手段により検出された車両の走行速度と、前記特定の物体に対する画像の取得周期とに基づいて、所定の時刻毎での特定の物体に対する車両の接近距離を推定により算出する。
【0019】
また、請求項6の発明に係る画像認識装置は、請求項1〜5の何れか一つに記載の発明において、前記投光手段は、前記車両に設けられる一対のヘッドライトであることを特徴とする。
【0020】
この請求項6の発明によれば、画像認識装置は、車両に設けられる一対のヘッドライトを投光手段として使用し、一対のヘッドライトの片側或いは両方の点灯により、特定の物体に対して照射する光量を2段階に調整する。
【0021】
また、請求項7の発明に係る画像認識方法は、車両に搭載された車載カメラが撮影した入力画像から特定の物体との相対距離を画像認識する画像認識方法であって、前記車両が走行時に前方に存在する特定の物体に向けて光を照射する投光工程と、前記投光工程により、前記特定の物体により反射された反射光に基づいて、当該特定の物体による反射強度である画像の輝度を取得する画像輝度取得工程と、画像輝度取得工程により最初に取得された前記特定の物体による第一の画像輝度と車両が所定時間後に進んだ際に取得された特定の物体の第二の画像輝度との比率に基づいて、前記車両から前記特定の物体までの相対距離を算出する距離算出工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
この請求項7の発明によれば、画像認識方法は、投光工程により車両の走行時に前方に存在する特定の物体に向けて光を照射し、画像輝度取得工程により最初に取得された特定の物体による第一の画像輝度と車両が所定時間後に進んだ際に取得された特定の物体の第二の画像輝度とを取得し、距離算出工程により第一の画像輝度と第二の画像輝度との比率に基づいて、車両から特定の物体までの相対距離を算出する。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば画像認識装置は、投光手段により、特定の物体により反射された反射光に基づいて、当該特定の物体の画像輝度を取得する画像輝度取得手段と、画像輝度取得手段により取得された画像輝度の明暗に基づいて、車両から特定の物体までの相対距離を算出する距離算出手段とを備える構成としているので、自車両の周囲の歩行者を高精度かつ確実に認識できるとともに、衝突など危険度の高い歩行者との距離を早期に算出することで、警告や車両制御の実行タイミングを早期化し、安全性を向上できるという効果を奏する。
【0024】
また、車両との接触や衝突事故による危険度の高い歩行者との距離を効率よく正確に算出することで警告や車両制御の実行タイミングを早期化する画像認識装置を提供することができる。また、夜間などでは、不明瞭な画像に対してもある程度の精度を保持した距離測定を行なうことができるという効果を奏する。
【0025】
また、請求項2の発明によれば、画像認識装置の画像輝度取得手段は、第一の投光手段による単体光の照射に応じた反射光に基づいて、第一の画像輝度を取得し、第一の投光手段による複合光の照射に応じた反射光に基づいて、第二の画像輝度を取得し、画像差分化取得手段により、第一の画像輝度と第二の画像輝度とによる画像輝度値の差分処理を行ない、特定の物体の反射光に基づいた正規の画像輝度を取得する構成としているので、車両の投光器以外に周囲に複数の光源や環境光が存在する場合であっても、車両の投光手段による明るさ(光量)を変化させた画像の差分を取得することで、街灯などの環境光(外乱光)の影響を低減させた正規の画像輝度を取得できるという効果を奏する。
【0026】
また、請求項3の発明によれば画像認識装置は、画像正規化手段により、移動前の歩行者の画像サイズと移動後の歩行者の画像サイズとを任意の画像サイズに調整する構成としているので、時々刻々と変化する対象物の位置をトラッキングにより補正することができ、誤差の少ない計測を行なえるとともに、画像のサイズ(大きさ)を正規化とすることで、距離による大きさの相違を抑制し、同じ部位による濃度比較を行なうことができるという効果を奏する。
【0027】
また、請求項4の発明によれば画像認識装置は、移動前の歩行者の画像サイズに対応する画像輝度と移動後の歩行者の画像サイズに対応する画像輝度とにより平均画像輝度を算出する平均画像輝度算出手段をさらに備える構成としているので、画像輝度の平均値に応じて距離による大きさの相違を抑制するとともに、同じ部位による濃度比較を行なうことができるという効果を奏する。
【0028】
また、請求項5の発明によれば画像認識装置は、推定距離算出手段により、車両速度検出手段により検出された車両の走行速度と、前記特定の物体に対する画像の取得周期とに基づいて、所定の時刻毎での特定の物体に対する車両の接近距離を推定により算出する構成としているので、距離の計測処理が終了するまでの数フレーム間での車両と特定の物体までの距離を推定により算出することができるという効果を奏する。
【0029】
また、請求項6の発明によれば画像認識装置は、車両に設けられる一対のヘッドライトを投光手段として使用し、一対のヘッドライトの片側或いは両方の点灯により、特定の物体に対して照射する光量を2段階に調整する構成としているので、一対のヘッドライトの片側或いは両方の点灯により、光量を2段階に調整することができることから、別途、他の投光手段を備える必要がないという効果を奏する。
【0030】
また、請求項7の発明によれば画像認識方法は、投光工程により車両の走行時に前方に存在する特定の物体に向けて光を照射し、画像輝度取得工程により最初に取得された特定の物体による第一の画像輝度と車両が所定時間後に進んだ際に取得された特定の物体の第二の画像輝度とを取得し、距離算出工程により第一の画像輝度と第二の画像輝度との比率に基づいて、車両から特定の物体までの相対距離を算出するので、自車両の周囲の歩行者を高精度かつ確実に認識できるとともに、衝突など危険度の高い歩行者との距離を早期に算出することで、警告や車両制御の実行タイミングを早期化し、安全性を向上できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る画像認識装置および画像認識方法の好適な実施例について詳細に説明する。本実施例では、車両に設けられる画像認識装置による画像の認識対象を歩行者として説明する。なお、以下に示す実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
(画像認識装置10の概要および特徴)
先ず、図1および図2−1、2を参照して、本実施例による画像認識装置10の概要および特徴について説明する。図1は、車両に搭載した投光器11(ヘッドライト12)による投光(光照射)および歩行者からの反射光に基づく画像濃度について、車両と歩行者との離間距離が遠い状態と、車両が歩行者に近づいた状態とをそれぞれ示す説明図である。また、図2−1は、車両と歩行者との位置関係および画像濃度の変化を時間の推移で示す説明図である。また、図2−2は、車両と歩行者との位置関係を時間の推移で示す説明図である。また、図3は、画像認識装置10の概要を示す概要構成図である。
【0033】
図1、図2−1、2および図3に示すように、画像認識装置10は、車両の走行中に前方に向けて光を照射する投光器11(ヘッドライト12)と投光器11により光が照射された歩行者を対象とする反射光による画像の明暗を取得する撮影カメラ13とを備えて構成されている。
【0034】
図1に示すように、車両に搭載した投光器11(ヘッドライト12)から照射された光が歩行者から反射された場合を考えると、車両から遠い位置に存在する歩行者による反射光の照度(光量)は少なくなるため、撮影カメラ13により取得される画像は暗いものとなる。一方、車両から近い位置に存在する歩行者による反射光の照度(光量)は多くなるため、撮影カメラ13により取得される画像は明るいものとなる。
【0035】
すなわち、画像認識装置10の特徴は、車両に設けた投光器11(ヘッドライト12)の投光に対する反射光に基づいて、歩行者を対象とする画像認識を行ない、この画像認識により取得された画像の明暗(画像濃度変化)を用いて、車両から歩行者までの距離を、時間の推移(時刻t0〜時刻t1時)により取得した画像濃度I0と画像濃度I1に基づいて推定(算出)することにある。
【0036】
ここで、画像(画像濃度)の明るさと歩行者との距離D0(遠い距離)と距離D1(近い距離)とは、相関関係があることがわかる。車両の走行時において、時刻t0時に取得される歩行者の画像濃度をI0とし、時刻t1時の歩行者の画像濃度をI1とすると、画像の明るさは距離の2乗に反比例する。すなわち、投光器11(ヘッドライト12)から照射された光を反射した歩行者の明るさ(画像濃度)が取得できれば、車両と歩行者との相対的な距離を算出することができる。
【0037】
具体的に説明すると、図2−1に示すように、車両の走行において、時刻t0時にヘッドライト12を点灯させて、歩行者から反射された反射光に基づいて、歩行者の初期の画像濃度I0を取得し、次いで、時刻t1時(車両が歩行者に接近した際)に、同様に、ヘッドライト12の点灯による反射光に基づいて、歩行者の画像濃度I1とを、撮影カメラ13により取得し、これら取得した画像濃度I0と画像像濃度I1とにより、車両と歩行者との距離を算出する構成としている。
【0038】
以下、図2−2を参照して、本実施例に係る画像認識装置および画像認識方法についての原理的な説明を述べる。図2−2は、車両と歩行者との相対的な位置関係を示す説明図である。すなわち、単純に光の反射強度(画像濃度)のレベルのみで歩行者までの距離を求めようとすると、歩行者などの対象物は、歩行者が身に付けている衣服の色などにより反射強度にばらつきがあるため、反射強度のレベルだけでは正確な距離を算出することはできない。
【0039】
したがって、図2−2に示すように、本実施例では時刻t0から時刻t1までの間に車速度V(m/s)の車両が進んだ距離(VΔt)と、距離D0及び距離D1の比率(すなわち、光の反射強度である画像濃度I0と画像濃度I1との比率)から距離D1を求めるようにしている。
【0040】
ここで、車両が進んだ距離(VΔt)は車両の車速度から求めることができるので、距離D0及び距離D1の比率がわかれば、距離D1を求めることができる(距離D1=距離D0−車両が進んだ距離VΔt)。また、距離D0及び距離D1の比率は、光の反射強度である画像の輝度(画像濃度)の変化率(画像濃度I0/画像濃度I1)で判るので、この画像濃度の変化率を予め求めておけばよい。
【0041】
これによれば、車両が実際に進んだ距離と、その距離が実際にどの程度歩行者に接近したかを反射強度の変化率(画像濃度の変化率)を見ることによって、現在の歩行者までの距離を算出するので、反射強度のばらつきに影響されることなく正確に、車両と歩行者との距離D1を算出ことができる。
【0042】
ここで、時刻t0〜時刻t1までの時間は、画像の1フレーム間処理であれば、数ミリ秒単位となるため、極めて短い時間であるため、この時間であれば歩行者自体の状態(衣服の状態など)は、ほとんど変化しないとみなすことができるためである。尚、車両の車速度が0で、且つ、投光していない場合は、画像濃度の変化率が判らないため、距離の算出にあたっては、上述したアルゴリズムは採用しないように除外しておく。尚、本実施例における距離の算出方法についての詳細については、後述する。
【0043】
(画像認識装置10の概要構成)
次に、図3を参照して、画像認識装置10の概要構成を説明する。同図に示すように、車両Pは、以下のような構成を有する。車両Pは、画像認識装置10を有し、この画像認識装置10は、投光器11と、撮影カメラ13と、ナビゲーション装置14と、プリクラッシュECU20とを接続している。プリクラッシュECU20は、ブレーキ21と、エンジン制御装置(EFI)22と、ディスプレイ23と、スピーカ24とを接続している。
【0044】
投光器11は、車両に搭載されている一対のヘッドライト12であり、夜間などに車両の周囲(特に、車両の走行方向前方)に向けて光を照射する。この場合、図4−1に示すように、ヘッドライト12を1個点灯させた場合に、照度の弱い光(光量小)を前方に向けて照射させることができる。
【0045】
また、図4−2に示すように、ヘッドライト12を2個点灯させた場合に、照度の強い光(光量大)を前方に向けて照射させることができる。以上のように、一対のヘッドライト12により、2段階で光量の小さい光と光量が多い光とを車両の走行方向の前方に向けて照射できるものとしている。
【0046】
ここで、本実施例の構成では、光量の小さい光と光量の多い光とを交互に投光するために、車両のヘッドライト12を利用しているが、投光器11としてはヘッドライト12ではなく、このヘッドライト12とは別に、2段階の光量に設定できる投光器を設け、この投光器により通常の光量(図5−1)と、通常よりも光量が大である光(図5−2)とを適時、照射する構成としてもよい。
【0047】
また、この投光器11としては、これ以外に歩行者を夜間でも認識できるように近赤外線を照射するものを採用してもよい(例えば、近赤外ランプ)。これによれば、もともと歩行者を認識するために用いられる近赤外ランプを距離検出に兼用することができ、特別にランプを設ける必要性をなくすことができる。
【0048】
撮影カメラ13は、車両の走行中に車両周辺(特に、車両の走行方向前方)に存在する歩行者の撮影を行ない、撮影結果を画像認識装置10に入力する。具体的には、ヘッドライト12からの投光(光照射)により歩行者から反射された明るさを表す画像(画像濃度)を撮影によって取得する。
【0049】
ナビゲーション装置14は、GPS(Global Positioning System)人工衛星と通信して特定した自車両の位置と、記憶する地図データ15とを利用して走行経路の設定および誘導を行なう車載装置である。また、このナビゲーション装置14は、画像認識装置10に対して自車両の位置情報や周辺の地図情報、道路に関する情報などを提供する。
【0050】
プリクラッシュECU20は、衝突判定部90が自車両の衝突を予測した場合に、ディスプレイ23やスピーカ24による乗員への通知や、ブレーキ21、エンジン制御装置(EFI)22による車両の動作制御を実行する電子制御装置である。
【0051】
(画像認識装置10の内部構成)
また、画像認識装置10は、内部に前処理部30と、車両認識部40と、白線認識部50と、歩行者認識部60と、画像濃度取得部70と、歩行者距離算出部80と、衝突判定部90とを有する。歩行者距離算出部80には車両の走行速度Vを検出する車速センサ85が接続されている。車両認識部40と、白線認識部50と、歩行者認識部60と、画像濃度取得部70と、歩行者距離算出部80と、衝突判定部90とはCPU10a(マイコン)により構成されている。
【0052】
前処理部30は、撮影カメラ13が撮影した画像に対してフィルタリングやエッジ検出、輪郭抽出などの処理を施した後、画像の処理結果を車両認識部40、白線認識部50、歩行者認識部60に出力する。
【0053】
車両認識部40は、前処理部30が出力した画像に対してパターンマッチングなどを施して車両を認識し、認識結果を衝突判定部90に出力する。また、白線認識部50も同様に、前処理部30が出力した画像に対してパターンマッチングなどを施して白線を認識し、認識結果を歩行者距離算出部80および衝突判定部90に出力する。
【0054】
歩行者認識部60は、前処理部30が出力した画像から歩行者が存在する可能性のある領域を歩行者候補領域として検出し、さらに歩行者候補領域に対してパターンマッチングなどを施して歩行者を認識し、白線認識部50と同様に認識結果を、衝突判定部90および歩行者距離算出部80に出力する。
【0055】
画像濃度取得部70は、歩行者からの反射光による明るさの明暗度(光の反射強度)を画像濃度として画像処理する機能を備えており、その内部に画像差分化処理部71と、正規化処理部72とを有する。このうち、画像差分化処理部71は、環境光(外乱光)の影響のない歩行者の正規の画像濃度を取得する処理を行なう。
【0056】
以下、図6を参照して、この画像差分化処理部71による画像濃度の差分化処理について説明する。図6は、画像差分化処理部71による画像差分化の処理形態を示す説明図である。具体的には、環境光の影響により取得された画像濃度および画像差分化処理により算出された画像濃度を説明する説明図である。
【0057】
すなわち、本実施例による画像認識装置10では、ヘッドライト12による歩行者からの反射光に基づいて、歩行者を撮影した際の画像の明暗を画像濃度の変化値として取得し、画像濃度と距離との相関関係に基づいて、車両と歩行者との距離を算出するため、車両から照射した光の反射光だけを対象として画像濃度を取得する必要がある。ところが、この場合、必ずしも車両のヘッドライト12から照射された光だけが歩行者に対して照射しているとは限らない。
【0058】
すなわち、夜間の道路を走行する車両の周辺には、街灯の照明や店舗などの照明(環境光や外乱光)が存在するため、歩行者の周囲には、ヘッドライト12による光だけではなく、複数の環境光が存在すると考えられる。
【0059】
このことから、ヘッドライト12の反射光により取得される歩行者の画像濃度には、環境光などの影響により不必要な光による画像濃度(図6に示す環境光の影響による明るさ)も含まれるため、正確に車両からの光のみを対象とする画像濃度を取得することができないと考えられる。このため、画像差分化処理部71により画像濃度の差分化を行なうことにより環境光の影響を低減させる構成としている。
【0060】
具体的に説明すると、図6に示すように、ヘッドライト12による光の照射は2段階に分けて行ない、先ず、片側のヘッドライト12の投光(図4−1)により、画像濃度を取得し、次いで、一対のヘッドライト12の両側をともに点灯させる投光(図4−2)により、画像濃度を取得し、この2段階の投光により取得された画像濃度に基づいて、差分化された画像濃度を実際の車両からの投光を対象とする画像濃度としている(図6に示す実際の投光による画像の明るさを評価値として算出)。
【0061】
このため、実際には、時刻t0(図2参照)時に、ヘッドライト12を片側(1個)および両方(2個)点灯させた際の画像濃度を取得(2回)し、時刻t1時に、ヘッドライト12を片側(1個)および両方(2個)点灯させた際の画像濃度の取得(2回)とを含めた合計4回、歩行者の正規の画像濃度を取得する画像濃度取得処理を行なうこととなる。
【0062】
なお、車両の周囲の明るさは、例えば昼と夜とで区別でき、さらに昼であれば日射量、夜であれば街灯などの照明の量であり、照度センサの出力や、タイマが出力する時刻情報に基づいて判定することができるため、このような照明の量を判定し、照明の量が極端に少ない場合などには、画像差分化処理を行なわないようにしてもよい。
【0063】
図3に戻り、正規化処理部72は、トラッキング(追跡)処理により歩行者の移動時のサイズ(大きさ)を正規化する処理を行なう。以下、図7を参照して、この正規化処理部72による正規化処理について説明する。図7は、正規化処理部72により行なわれる正規化処理の概要を説明する説明図である。
【0064】
すなわち、前述したように車両の移動速度と比較すると歩行者の移動速度は極めて小さいものとなるが、この歩行者も任意の位置(例えば、横方向)に移動することがあり、車両自体も横方向に動くことがある。このため移動前の最初に画像濃度を取得した歩行者と、移動後の歩行者とが同一の歩行者であるかをトラッキングする必要がある。
【0065】
つまり、移動前(t0時)の歩行者と移動後(t1時)の歩行者とが同一の歩行者であっても画像サイズが大きいと明るさが異なるため、画像濃度も異なるため画像濃度の比較ができなくなる。具体的に説明すると、図7に示すように、移動前の歩行者の画像サイズ(画像サイズ=w1×h1)と移動後の歩行者の画像サイズ(画像サイズ=w2×h2)とは異なるため、同じ部位での比較ができなくなる。
【0066】
すなわち、正規化処理部72では、移動前のサイズと移動後のサイズとの大きさを任意のサイズに調整することで、移動後であっても画像濃度が変化することを防止することとしている。
【0067】
具体的には、正規化処理部72により、移動前の歩行者の画像サイズと移動後の歩行者の画像サイズとを任意の画像サイズに調整するようにしている。なお、上述では、正規化処理部72により画像サイズを調整することとしているが、この正規化処理部72により、移動前の歩行者の画像サイズに対応する画像濃度と移動後の歩行者の画像サイズに対応する画像濃度とにより平均画像濃度を算出し、この平均画像濃度により正規な画像濃度としてもよい。
【0068】
図3に戻り、歩行者距離算出部80は、歩行者認識部60が認識した歩行者と車両との相対距離を算出し、衝突判定部90に出力する。
【0069】
歩行者距離算出部80は、その内部に推定距離算出部81と、距離算出処理部82とを有する。このうち、推定距離算出部81は、歩行者に対する自車両の接近距離を適宜、算出する機能を備えている。以下、図8−1および図8−2を参照して、この推定距離算出部81による歩行者に対する接近距離の算出について説明する。
【0070】
図8−1は、時間の推移に応じて変化する車両と歩行者との接近距離(推定距離D11〜D13)との相関図を示している。また、図8−2は、車両の走行速度Vnに応じて計測される車両と歩行者との接近距離(推定距離D11〜D13)を説明する説明図を示している。
【0071】
すなわち、本実施例によると、時刻t0時(図2参照)にヘッドライト12を1個および2個、同時に点灯させた際の歩行者の画像濃度I0と、時刻t1時に、同様に、ヘッドライト12を2個同時に点灯させた際点灯させた際の歩行者の画像濃度I1とを、撮影カメラ13により取得する必要がある。
【0072】
すなわち、図8−1に示すように、撮影カメラ13による合計4回の画像濃度の取得(計測結果)により車両と歩行者との距離D1を算出することとなる。ここで、歩行者に対する画像認識装置10による画像の取得間隔(周期T)は、一定であるため、車両が時間経過にともない走行速度Vnで移動した分だけ歩行者に接近していることとなる。
【0073】
具体的には、時刻t0+Tに車両の移動距離は、V1Tとなり、時刻t0+2Tに車両の移動距離は、V2Tとなり、時刻t0+3Tに車両の移動距離は、V3Tとなる。なお、次回以降の推定距離(距離D2による推定距離D21〜)は同様の方法により推測する。
【0074】
以上のことから算出された距離D1をもとに、車両の走行速度Vと画像の取得周期Tにより、所定の時刻毎での歩行者に対する車両との接近距離(D11、D12、D13)をそれぞれ推定接近距離として算出することができる。すなわち、画像の取得周期Tは、予め所定の周期として既知であるため、計測結果が算出されるまでの所定の時間毎の接近距離を車両の走行速度Vnにより算出することができる。
【0075】
具体的には、図8−2に示すように、推定接近距離D11は、D1−V1T(D11=D1−V1T)となり、D12は、D1−V2T(D12=D1−V2T) となりD13は、D1−V3T(D13=D1−V3T) となる。以上のように、推定距離算出部81により3回分の接近距離は周期Tと車両の走行速度Vnにより推定することができる。
【0076】
図3に戻り、距離算出処理部82は、画像濃度取得部70により取得された歩行者の画像濃度に基づいて、車両と歩行者との相対距離を所定の算出手順により算出する。以下、この距離算出処理部82による車両と歩行者との相対距離の算出手順を、前述した図2を参照して、説明する。
【0077】
具体的に説明すると、投光器11(ヘッドライト12)による明るさは距離の2乗に反比例するので、時刻t0と時刻t1とにおける画像の明るさと距離との関係は、以下の(数1)の関係式により表すことができる。
【0078】
(数1)
0:I1=(1/D02):(1/D12
【0079】
ここで、Δt経過後の時刻t1を基準とすると、時刻t0における歩行者の画像濃度αと距離比βとの関係は、α=I0/I1となりβ=1/√αとなる。さらに、時刻Δt=時刻t1−時刻t0における車両の移動距離ΔDは、Vを車両の走行速度とすると、この移動距離ΔDは、ΔD=V・Δtから算出することができる。
【0080】
ここで、認識対象者の移動速度vは、車両の走行速度Vに比べて極めて小さいため(v≒0)、距離比βは、β>1となる。以上、説明した関係式により、時刻t1における車両と認識対象者(歩行者)との距離D1(相対距離)は、以下の数2の式により求めることができる。
【0081】
(数2)
1=(VΔt)/(β−1)
【0082】
図3に戻り、衝突判定部90は、車両認識部40、白線認識部50、歩行者認識部60による認識結果および歩行者距離算出部80が算出した歩行者との距離、ナビゲーション装置14が出力する位置情報を用いて、自車両と歩行者との衝突危険度を判定する。
【0083】
(画像認識装置10による歩行者認識処理手順)
次に、本発明の画像認識装置10による歩行者に対する認識処理手順の詳細を、図9のフローチャートを参照して説明する。図9は、歩行者の認識処理手順を示すフローチャートである。なお、この図9に示す処理フローは、画像認識装置10が画像認識を実行中である場合に、繰り返し実行される処理である。
【0084】
[時刻t0時の処理:ヘッドライト12を1個点灯]
同図のフローチャートに示すように、先ず、車両に設けた2個のヘッドライト12のうちの一方(1個)のみを使用して(図4−1)、車両の周囲(前方)に向けて、光を照射する第一の投光処理を行なう(ステップS101)。次いで、ヘッドライト12が歩行者に照射された際に、この歩行者により反射された反射光に基づいて、撮影カメラ13より歩行者の画像(画像濃度A0)を取得する(ステップS102)。この画像濃度A0は、画像濃度取得部70(図3)により取得される。
【0085】
具体的に説明すると、車両は片側のヘッドライト12を点灯させた状態で走行(車両の走行速度V)しており、歩行者が車両のライト前方に現れた際に、この歩行者から反射される反射光による画像の明るさ(明暗)を、画像情報として撮影カメラ13で撮影し、歩行者の画像濃度A0を取得することとなる。
【0086】
次いで、歩行者認識部60(図3)により歩行者に対する認識処理(ステップS103)と、ステップS102で取得した画像濃度A0を対象とする画像の正規化処理を正規化処理部72(図3)により行なう(ステップS104)。
【0087】
以上のステップS101〜ステップS104の処理により、道路上を走行中(移動速度V)の車両が歩行者を最初に認識した際(時刻t0時)に、片側のヘッドライト12の投光による弱い光量を照射した時の画像濃度A0を取得することができる。
【0088】
[時刻t0時の処理:ヘッドライト12を2個点灯]
次に、車両に設けた2個のヘッドライト12の両方を使用して(図4−2)、車両の周囲(前方)に向けて、2個のライトを照射する第二の投光処理を行なう(ステップS105)。次いで、両方のヘッドライト12が歩行者に照射された際に、この歩行者から反射される反射光による画像の明るさ(明暗)を、画像情報として撮影カメラ13で撮影し、歩行者の画像濃度B0を取得する(ステップS106)。
【0089】
具体的に説明すると、ヘッドライト12を2個点灯させた時の歩行者から反射される反射光を、撮影カメラ13で撮影し、画像濃度B0として取得することとなる。以下、同様に歩行者認識部60(図3)により歩行者に対する認識処理(ステップS107)と、ステップS106により取得した歩行者の画像濃度B0に対する画像の正規化処理とを順次行なう(ステップS108)。
【0090】
以上のステップS105〜ステップS108までの処理により、時刻t0時に、車両から、この車両に設けた両方のヘッドライト12の投光による強い光量を歩行者に対して照射した時の画像濃度B0を取得することができる。このように、光量の異なる投光により交互に画像濃度A0および画像濃度B0を取得するのは、画像差分化処理により環境光の影響を排除した正確な歩行者の明るさ(明暗)である画像濃度を取得するためである。
【0091】
すなわち、ステップS101〜ステップS104により取得した画像濃度A0とステップS105〜ステップS108により取得した画像濃度B0とに基づいて、画像差分化処理を行なう(ステップS109)。前述したように、画像差分化処理により実際の評価の対象となる時刻t0時の歩行者の画像濃度I0を取得することができる。
【0092】
次いで、ステップS109の画像差分化処理により画像濃度I0が算出されたかの判定を行ない(ステップS110)、時刻t0時の歩行者の画像濃度I0が算出されたと判定された場合には(ステップS110肯定)、次のステップS111による車両が走行により所定の時間Δtが経過(図2に示すΔt、距離VΔt)したかの判定を行なう(ステップS111)。
【0093】
そして、時間Δtが経過し、所定の距離分(VΔt)移動したと判定された場合には(ステップS111肯定)、次の時刻t1を対象とする第三の投光処理に移行する(ステップS112)。
【0094】
[時刻t1時の処理:ヘッドライト12を1個点灯]
この時刻t1を対象とする第三の投光処理では、第一の投光処理と同様に、車両に設けた2個のヘッドライト12のうちの一方(1個)のみを使用して、車両の周囲(前方)に向けて、光を照射する投光処理を行なう(ステップS112)。次いで、ヘッドライト12が歩行者に照射された際に、この歩行者により反射された反射光に基づいて、撮影カメラ13より時刻t1時の歩行者の画像(画像濃度A1)を取得する(ステップS113)。
【0095】
以下、前述したと同様に歩行者認識部60(図3)により歩行者に対する認識処理(ステップS114)と、ステップS113により取得した歩行者の画像濃度A1に対する画像の正規化処理とを順次行なう(ステップS115)。
【0096】
以上のステップS112〜ステップS115までの処理により、走行中(移動速度V)の車両が歩行者を最初に認識した際(時刻t0時)からΔt経過後(時刻t1時)の歩行者の反射光に基づいて、光量が小である投光を行なった時の画像濃度A1を取得することができる。
【0097】
[時刻t1時の処理:ヘッドライト12を2個点灯]
次に、時刻t1を対象とする第四の投光処理を行なう(ステップS116)。この時刻t1を対象とする第四の投光処理では、第二の投光処理と同様に、車両に設けた2個のヘッドライト12の両者(2個)を使用して、車両の周囲(前方)に向けてライトを照射する投光処理が行なわれる。次いで、両方のヘッドライト12が歩行者に照射された際に、この歩行者により反射された反射光に基づいて、撮影カメラ13より歩行者の画像濃度B1を取得する(ステップS117)。
【0098】
以下、前述したと同様に、歩行者認識部60(図3)により歩行者に対する認識処理(ステップS118)と、ステップS117により取得した歩行者の画像濃度B1に対する画像の正規化処理とを順次行なう(ステップS119)。
【0099】
以上のステップS116〜ステップS119までの処理により、走行中(移動速度V)の車両が歩行者を最初に認識した際(時刻t0時)からΔt経過後(時刻t1時)の歩行者の反射光に基づいて、光量が大である投光を行なった時の画像濃度B1を取得することができる。
【0100】
次いで、ステップS115により算出された画像濃度A1とステップS119により算出された画像濃度B1とに基づいて、画像差分化処理を行ない(ステップS120)、歩行者の正規の画像濃度I1を算出する(ステップS121)。
【0101】
以下、ステップS110により算出された画像濃度I0とステップS121により算出された画像濃度I1とに基づいて、歩行者と車両との相対距離を算出する(ステップS122)。なお、このステップS121により行なう車両と歩行者との相対距離の算出は、前述した距離算出処理部82(図3)による所定の算出手順で行なう。ここで、衝突判定部90(図3)は、歩行者の新式結果と歩行者までの距離をプリクラッシュ20へ出力する。プリクラッシュ20は、その情報を基にして、車両Pの制御を行なう。
【0102】
上述してきたように、本実施例にかかる画像認識装置10は、車両に設けたヘッドライト12による歩行者からの反射光に基づいて、歩行者を撮影した際の画像の明暗を画像濃度の変化値として取得し、環境光の影響を排除する画像差分化処理を行ない、歩行者による正規の画像濃度と距離との相関関係に基づいて、車両と歩行者との距離を算出する構成としているので、環境光などによる計測誤差の影響を防止するとともに、正確に車両から歩行者までの距離を計測することができる。
【0103】
なお、本発明の画像認識装置は、上述した実施例に示した構成に限定されること無く、任意の構成によって実施することができるものである。また、本実施例では車両と歩行者との距離を算出する場合を例に説明したが、本発明は、画像認識装置による認識対象を歩行者に限定することなく、例えば、道路上を走行する他の車両や道路上に存在する物体など他の物体との離間距離を算出する場合についても、好ましく適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上のように、本発明にかかる画像認識装置および画像認識方法は、歩行者を対象とする画像認識に有用であり、特に、車両と歩行者との相対距離を正確に計測する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施例にかかる車両と歩行者との離間距離が遠い状態と、車両が歩行者に近づいた状態とによる画像濃度の相違をそれぞれ示す説明図である。
【図2−1】車両と歩行者との位置関係および画像濃度の変化を時間の推移で示す説明図である。
【図2−2】車両と歩行者との位置関係を時間の推移で示す説明図である。
【図3】本発明の実施例にかかる車両および画像認識装置の概要構成を示す概要構成図である。
【図4−1】片側のヘッドライトによる投光状態を示す説明図である。
【図4−2】両方のヘッドライトによる投光状態を示す説明図である。
【図5−1】光量の弱い投光器による投光状態を示す説明図である。
【図5−2】光量の強い投光器による投光状態を示す説明図である。
【図6】環境光の影響により取得された画像濃度および画像差分化処理により取得された画像濃度を説明する説明図である。
【図7】正規化処理の処理形態を示す説明図である。
【図8−1】車両と歩行者との接近距離に対応する時間推移との相関関係を説明する説明図である。
【図8−2】車両と歩行者との接近距離に対応する時間推移を示す相関図である。
【図9】画像認識装置による歩行者の認識処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0106】
P 車両
10 画像認識装置
10a CPU(マイコン)
11 投光器
12 ヘッドライト
13 撮影カメラ
14 ナビゲーション装置
15 地図データ
20 プリクラッシュECU
21 ブレーキ
22 EFI
23 ディスプレイ
24 スピーカ
30 前処理部
40 車両認識部
50 白線認識部
60 歩行者認識部
70 画像濃度取得部
71 画像差分化処理部
72 正規化処理部
80 歩行者距離算出部
81 推定距離算出部
82 距離算出処理部
85 車速センサ
90 衝突判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載カメラが撮影した入力画像から特定の物体との相対距離を画像認識する画像認識装置であって、
特定の物体に向けて光を照射する投光手段により、前記特定の物体により反射された反射光に基づいて、当該特定の物体による反射強度である画像の輝度を取得する画像輝度取得手段と、
前記画像輝度取得手段により最初に取得された前記特定の物体による第一の画像輝度と車両が所定時間後に進んだ際に取得された特定の物体の第二の画像輝度との比率に基づいて、前記車両から前記特定の物体までの相対距離を算出する距離算出手段と、
を備えたことを特徴とする画像認識装置。
【請求項2】
前記投光手段は、前記特定の物体に対して単体の光を照射する第一の投光手段と、複合する光を照射する第二の投光手段とを有するとともに、前記画像輝度取得手段は、前記単体光の照射に応じた反射光に基づいて、第一の画像輝度を取得し、前記複合光の照射に応じた反射光に基づいて、第二の画像輝度を取得し、当該第一の画像輝度と第二の画像輝度とによる画像輝度値の差分により、前記特定の物体の反射光に基づいた特定の物体の画像輝度を取得する画像差分化取得手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の画像認識装置。
【請求項3】
移動前の歩行者の画像サイズと移動後の歩行者の画像サイズとを任意の画像サイズに補正する画像正規化手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の画像認識装置。
【請求項4】
移動前の歩行者の画像サイズに対応する画像輝度と移動後の歩行者の画像サイズに対応する画像輝度とにより平均画像輝度を算出する平均画像輝度算出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の画像認識装置。
【請求項5】
前記車両の走行速度を検出する車両速度検出手段をさらに備えるとともに、当該車両速度検出手段により検出された車両の走行速度と、前記特定の物体に対する画像の取得周期とに基づいて、所定の時刻毎での特定の物体に対する車両の接近距離を推定により算出する推定距離算出手段を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の画像認識装置。
【請求項6】
前記投光手段は、前記車両に設けられる一対のヘッドライトであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の画像認識装置。
【請求項7】
車両に搭載された車載カメラが撮影した入力画像から特定の物体との相対距離を画像認識する画像認識方法であって、
前記車両が走行時に前方に存在する特定の物体に向けて光を照射する投光工程と、
前記投光工程により、前記特定の物体により反射された反射光に基づいて、当該特定の物体による反射強度である画像の輝度を取得する画像輝度取得工程と、
前記画像輝度取得工程により最初に取得された前記特定の物体による第一の画像輝度と車両が所定時間後に進んだ際に取得された特定の物体の第二の画像輝度との比率に基づいて、前記車両から前記特定の物体までの相対距離を算出する距離算出工程と、
を含むことを特徴とする画像認識方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−240387(P2007−240387A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64748(P2006−64748)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】