説明

発光装置および画像記録装置

【課題】 全体の構造を簡便化することが可能であり、信頼性にも優れた、光励起による転送スイッチ素子を集積した発光装置を提供する。
【解決手段】 しきい電圧またはしきい電流を外部から光を照射することによって制御可能な多数個の3端子発光スイッチ素子15を備え、各3端子発光スイッチ素子15に対応する3端子発光素子14をゲート端子間を電気的に接続して制御する発光装置であって、3端子発光スイッチ素子15は、上面視の形状が、隣接する素子間で一方が他方側に張り出しているとともに他方がその張出し部に沿うようになっている発光装置である。3端子発光スイッチ素子15の形状が一方で他方側に張り出しているとともに他方がその張出し部に沿うようになっていることより、受光部および発光部の面積を大きくとることができ隣接する素子間における光伝達効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光サイリスタを具備した、光励起による転送スイッチ素子を集積した自己走査型の発光装置に関し、さらにこの発光装置を用いた画像記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置のうち電子写真プリンタの露光装置の一つである光プリンタヘッドとして用いられている発光装置として、pnpn構造を持つ負性抵抗素子である発光サイリスタを発光素子に使用し、これを発光素子列として配置して発光状態の転送が実現できる発光装置とするものが提案されており、これを光プリンタヘッドに用いることで、実装上簡便となること、発光素子アレイをコンパクトに作製できること等が示されている(例えば、特許文献1,2を参照。)。
【0003】
図5に、このような発光状態の転送機能(自己走査機能)を有する従来の第1の発光装置の基本構造の概略回路構成を示す等価回路図ならびに各クロックパルスおよび発光強度の波形を示す線図を示す。発光サイリスタT0〜Tnは略直線状に配列され、各発光サイリスタの発光が順次隣接する発光サイリスタに入射するように構成されている。なお、この発光サイリスタT0〜Tnは、上面視の形状が矩形状となっている。このような発光サイリスタT0〜Tnはそれぞれ光照射を受けることによってそのしきい電圧もしくはしきい電流が低下する特性を持つため、発光している発光サイリスタに隣接している発光サイリスタのしきい電圧もしくはしきい電流が下がることとなる。また、各発光サイリスタのアノード端子に対して3本のクロックラインφ1,φ2,φ3がそれぞれ発光サイリスタ2個おきに繰返し接続されており、各クロックラインφ1,φ2,φ3にはそれぞれ電流源I,I,Iが接続されており、その電流量を発光信号φIが制御するように構成されている(例えば、特許文献2,3を参照。)。
【0004】
図5を用いて、従来の第1の発光装置における発光状態の転送機能の動作について説明する。まず、スタートパルスラインφSがローレベルからハイレベルに変化し、これによって、最初の発光サイリスタT0がオフ状態からオン状態へ変化して発光する。発光サイリスタT0からの発光は隣接する発光サイリスタT1に入射し、光励起によりその発光のしきい電圧を下げる。このとき、発光サイリスタT2以降は発光サイリスタT1よりも発光サイリスタT0から離れているため、それらへの入射光は弱く、発光のしきい電圧の低下は小さい。すなわち、発光サイリスタT0からの距離が大きいほど入射光は弱まり、その発光サイリスタにおけるしきい電圧の変化も小さくなる。この状態で、次にクロックラインφ1がローレベルからハイレベルに変化すると、発光サイリスタT1の発光のしきい電圧が発光サイリスタT0からの光照射により低下しているため、クロックラインφ1のハイレベルをそのしきい電圧に合わせたレベルとすることにより、発光サイリスタT1がオフ状態からオン状態へ変化して発光する。このとき、同じクロックラインφ1が接続されている発光サイリスタT4は、発光サイリスタT0から十分離れているためその発光のしきい電圧の低下はほとんどないので、発光サイリスタT1を発光させるレベルのクロックラインφ1のハイレベルでは発光せず、よって発光サイリスタT1のみがオン状態となって発光する。次に、スタートパルスφSをローレベルとすることで、発光サイリスタT0はオン状態からオフ状態へ変化して発光が終了する。これによりオン状態がT0からT1へ転送される。
【0005】
以下同様に、各クロックパルスφ1〜φ3の波形を図5に示す線図のように変化させることにより、次に発光サイリスタT1から発光サイリスタT2へ、その次に発光サイリスタT2から発光サイリスタT3へと時間とともにオン状態(発光状態)が転送される。
【0006】
例えば、クロックラインφ3のみがハイレベルにあり、発光サイリスタT3がオン状態にあるとき、発光サイリスタT3からの発光は隣接する発光サイリスタT2,T4に最も強く入射してこれらの発光のしきい電圧を低下させる。このとき、発光サイリスタT1,T5はそれぞれ発光サイリスタT2,T4に比べて発光サイリスタT3から遠方にあるためこれらに発光サイリスタT3から入射する光は弱く、これらの発光のしきい電圧はあまり低下しない。この状態でクロックラインφ1がローレベルからハイレベルに変化すると、発光サイリスタT4のしきい電圧VTH(T4)は発光サイリスタT1のしきい電圧VTH(T1)に比べてより低下しているため、クロックパルスφ1のハイレベル電圧VをVTH(T4)<V<VTH(T1)と設定することで発光サイリスタT4のみがオン状態となって発光し、発光サイリスタT1はオフ状態のままとなる。そして次にクロックラインφ3をハイレベルからローレベルにすることで発光サイリスタT3はオフ状態になり、オン状態(発光状態)は発光サイリスタT3から発光サイリスタT4へ転送される。
【0007】
このようにクロックラインφ1,φ2,φ3のクロックパルスのハイレベルを互いに少しずつ重なるように設定することで、発光サイリスタT0〜Tnのオン状態(発光状態)は順次転送されていく。
【0008】
また、図5の線図に示すように、発光サイリスタT3のみを強く発光させる場合には、発光サイリスタT3が発光するタイミングに合わせて発光信号φIをハイレベルにする。これにより、その時のオン状態の発光素子である発光サイリスタT3のみが印加される電流量が増加し、発光強度L(T3)も大きくなる。
【0009】
従来の第1の発光装置は、この発光サイリスタT3の発光を外部へ照射する光として利用するものである。
【0010】
しかしながら、この従来の第1の発光装置では、図5に示す発光強度L(T0)〜L(T5)の線図からも分かるように、光プリンタヘッド等に適用する場合には、外部へ照射させる光を発光させる時以外でもスイッチング信号を転送するためのオン状態(発光状態)にある各発光サイリスタからある程度の発光(バイアス光)を生じる。これはオン状態を維持するための電流により各発光サイリスタから弱い発光が生じるためであるが、この従来の第1の発光装置を画像記録装置の光プリンタヘッド等に適用する場合は、このバイアス光も感光体に照射されてしまって本来の画像記録のための照射光に対してノイズとして作用するため、画像品質を悪化させる原因となるという問題点がある。
【0011】
そこで、このような問題点を解消するため、スイッチング信号の転送のための素子を分離してそれらの素子を電気的に制御する構造のものが提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【0012】
図6にそのような自己走査機能を有する従来の第2の発光装置の基本構造の概略回路構成を等価回路図で示す。この従来の第2の発光装置における発光サイリスタアレイは、信号転送のためのスイッチ用のスイッチ用サイリスタ(T1〜Tn)が略直線状に配列された部分と、外部へ照射する光の発光用の発光用サイリスタ(L1〜Ln)が略直線状に配列された部分とを有している。なお、このスイッチ用サイリスタ(T1〜Tn)および発光用サイリスタ(L1〜Ln)は、上面視の形状が矩形状となっている。このようなスイッチ用サイリスタと発光用サイリスタとはそれぞれの対応したゲート端子同士が電気的に接続されており(例えば、n番目のスイッチ用サイリスタTnとn番目の発光用サイリスタLnとのゲート端子同士が接続される。)、1番目のスイッチ用サイリスタT1のゲート端子はスタートパルスラインφSに接続される。また、スイッチ用サイリスタT1〜Tnの各々のゲート端子は負荷抵抗Rを介して制御用電源VGKに接続され、アノード端子には2本のクロックラインφ1,φ2がそれぞれ1つおきに接続される。
【0013】
また、2番目のスイッチ用サイリスタT2のゲート端子には1番目のスイッチ用サイリスタT1のゲート端子が転送方向指定ダイオードDを介して電気的に接続され、以後、同様の接続の繰り返しで各ゲート端子が電気的に接続されている。
【0014】
このような従来の第2の発光装置における、従来の電気制御によるスイッチ素子を用いた発光状態の転送および発光について説明する。
【0015】
発光状態の転送はスタートパルスラインφSがハイレベルからローレベルに変化することにより始まる。これにより、電気的に1番目のスイッチ用サイリスタT1の発光のしきい電圧が低下する。このときクロックラインφ2をローレベルからハイレベルにすることで、1番目のスイッチ用サイリスタT1がオン状態になり発光する。2番目のスイッチ用サイリスタT2以降は、転送方向指定ダイオードDにより、1番目のスイッチ用サイリスタT1から離れるほど転送方向指定ダイオードDの順方向電圧降下分に応じてスイッチ用サイリスタT2,T3・・のゲート端子にかかる電圧が上昇する。そのため、同じクロックラインφ2が接続されている3番目のスイッチ用サイリスタT3では発光のしきい電圧が転送方向指定ダイオードD2つ分の順方向電圧降下分だけ上昇することとなるので、クロックパルスφ2のハイレベルがこの3番目のスイッチ用サイリスタT3の発光のしきい電圧以下となるようなスタートパルスを用いることで、1番目のスイッチ用サイリスタT1のみがオン状態になり発光することとなる。
【0016】
この状態で発光用サイリスタL1〜Ln用の電源ラインφIをローレベルからハイレベルにすると、1番目の発光用サイリスタL1においては発光のオン条件がゲート端子同士が電気的に接続されている1番目のスイッチ用サイリスタT1のオン条件と同じになるため、1番目の発光用サイリスタL1がオン状態になって発光し、1番目の発光部が発光して点灯することになる。次に、電源ラインφIをローレベルに戻すことにより、1番目の発光用サイリスタL1はオフ状態になり発光が終了する。
【0017】
次に、1番目のスイッチ用サイリスタT1から2番目のスイッチ用サイリスタT2への発光状態の転送(オン条件の転送)について説明する。1番目の発光用サイリスタL1がオフ状態になってもクロックラインφ2がハイレベルのままなので、1番目のスイッチ用サイリスタT1はオン状態(発光状態)を保持する。このとき、2番目のスイッチ用サイリスタT2では1番目のスイッチ用サイリスタT1に比べて転送方向指定ダイオードD1つ分の順方向電圧降下分だけゲート端子にかかる電圧が高くなり、同じクロックラインφ1が接続されている4番目のスイッチ用サイリスタT4はそれよりさらに転送方向指定ダイオードD2つ分の順方向電圧降下分だけゲート端子にかかる電圧が高くなる。この状態でクロックラインφ1をローレベルからハイレベルにしたとき、2番目のスイッチ用サイリスタT2の発光のしきい電圧と2番目のスイッチ用サイリスタT4の発光のしきい電圧との間の電圧となるようにクロックパルスφ1のハイレベルを選べば、2番目のスイッチ用サイリスタT2のみがオン状態になり発光する。
【0018】
こうして2番目のスイッチ用サイリスタT2がオン状態(発光状態)となった後、クロックラインφ2をハイレベルからローレベルにすることにより、1番目のスイッチ用サイリスタT1は1番目の発光用サイリスタL1がオフ状態となったのと同様にオフ状態になり発光か終了する。このとき、スタートパルスラインφSがローレベルからハイレベルに変化しているため、転送方向指定ダイオードDにより1番目のスイッチ用サイリスタT1のゲート端子にかかる電圧はほぼ制御用電源VGKの電圧に等しくなり、発光のしきい電圧が最も低いスイッチ用サイリスタは2番目のスイッチ用サイリスタT2となる。こうして、スイッチ用サイリスタのオン状態(発光状態)は1番目のスイッチ用サイリスタT1から2番目のスイッチ用サイリスタT2に転送される。そして、このとき電源ラインφIをローレベルからハイレベルにすると、2番目の発光用サイリスタL2のみがオン状態となり発光する。
【0019】
以上の操作を順次繰り返すことにより、スイッチ用サイリスタT0〜Tnの発光状態が順次転送され、それに対応させて発光用サイリスタL1〜Lnの発光状態の制御を行なうことができる。
【特許文献1】特開昭49−124992号公報
【特許文献2】特許第2577034号公報
【特許文献3】特許第3020177号公報
【特許文献4】特許第2577089号公報
【特許文献5】特開2001−077421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記の従来の第1の発光装置では、発光サイリスタが発光する光を受光して隣接する発光サイリスタが光励起する構成のため、発光サイリスタ同士の光の伝達効率が高いことが要求される。しかしながら、スイッチング信号を転送するために発光サイリスタから放射される光のうちには隣接する発光サイリスタに照射されず発光サイリスタを保持する基板に吸収されたり、外部に照射されたりする光があるため、隣接する発光サイリスタで受光できる光量が少なくなるという問題点がある。また、スイッチング信号を転送するためのバイアス光の発生により、光プリンタヘッド等へ適用した場合に画像品質が悪化するという問題点がある。
【0021】
また、上記の従来の第2の発光装置では、スイッチ用サイリスタでの信号転送に発光サイリスタの光励起を利用しない構成のため、スイッチ用サイリスタ間での光の伝達効率が高いことは重要ではない。しかしながら、スイッチング信号の転送のために電気的に駆動するスイッチ素子としてスイッチ用サイリスタを用い、その電気的制御により発光素子としての発光用サイリスタの発光状態の転送を実現しているため、転送方向指定のための転送方向指定ダイオードDやスイッチ用サイリスタのゲート端子にかかる電圧を制御するための負荷抵抗R等を必要としており、これらをサイリスタ(pnpn)構造の一部を使用して形成している。そのためスイッチ用サイリスタ部の構造が複雑となり、製造に際しても工程数が多くなってしまい生産性に劣るという問題点がある。
【0022】
本発明は以上のような従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、全体構造を簡素化することが可能であり、信頼性にも優れた、光励起による転送スイッチ素子を集積した構成の発光装置において、スイッチ用サイリスタ間における発光の伝達効率を高めることができる発光装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、本発明の発光装置を用いた、画像品質の良好な記録画像を得られる画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明における発光装置は、発光のしきい電圧またはしきい電流を外部から光を照射することによって制御可能な、アノード端子とカソード端子とゲート端子とを有する3端子発光スイッチ素子を多数個、1つの前記3端子発光スイッチ素子からの発光が隣接する前記3端子発光スイッチ素子に入射するように基板上に直線状に配列するとともに、前記3端子発光スイッチ素子の各々の前記アノード端子または前記カソード端子にクロックラインを接続した3端子発光スイッチ素子アレイと、
発光のしきい電圧またはしきい電流を外部からゲート端子を介して電気的に制御可能な、アノード端子とカソード端子と前記ゲート端子とを有する3端子発光素子を多数個、前記3端子発光スイッチ素子に対応させて前記基板上に配列するとともに、前記3端子発光素子の前記ゲート端子をそれぞれ対応する前記3端子発光スイッチ素子の前記ゲート端子と電気的に接続し、前記3端子発光素子の前記アノード端子または前記カソード端子を発光のための電圧または電流を供給するラインに接続した3端子発光素子アレイとを具備しており、
前記3端子発光スイッチ素子および前記3端子発光素子は、それぞれ一方導電型半導体基板の上に、第1の一方導電型半導体層と第1の他方導電型半導体層と第2の一方導電型半導体層と第2の他方導電型半導体層とが順次積層されているとともに、前記第2の他方導電型半導体層に前記アノード端子または前記カソード端子を、前記一方導電型半導体基板または前記第1の一方導電型半導体層に前記カソード端子または前記アノード端子を、前記第2の一方導電型半導体層に前記ゲート端子をそれぞれ電気的に接続した発光サイリスタであり、
前記3端子発光スイッチ素子は、上面視の形状が、隣接する素子間で一方が他方側に張り出しているとともに他方がその張出し部に沿うようになっていることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の発光装置は、上記構成において、前記3端子発光スイッチ素子アレイと前記3端子発光素子アレイとが前記基板上に並列に配設されているとともに、前記3端子発光スイッチ素子からの発光のうち前記基板の表面に垂直方向の発光と前記3端子発光素子方向の発光と前記3端子発光素子の反対方向の発光とを遮光する遮光層が設けられていることを特徴とするものである。
【0025】
本発明の画像記録装置は、上記各構成のいずれかの本発明の発光装置を感光体への露光装置に使用していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の発光装置によれば、発光のしきい電圧またはしきい電流を外部から光を照射することによって制御可能な、アノード端子とカソード端子とゲート端子とを有する3端子発光スイッチ素子を多数個、1つの3端子発光スイッチ素子からの発光が隣接する3端子発光スイッチ素子に入射するように基板上に直線状に配列するとともに、3端子発光スイッチ素子の各々のアノード端子またはカソード端子にクロックラインを接続した3端子発光スイッチ素子アレイと、発光のしきい電圧またはしきい電流を外部からゲート端子を介して電気的に制御可能な、アノード端子とカソード端子とゲート端子とを有する3端子発光素子を多数個、3端子発光スイッチ素子に対応させて基板上に配列するとともに、3端子発光素子のゲート端子をそれぞれ対応する3端子発光スイッチ素子のゲート端子と電気的に接続し、3端子発光素子のアノード端子またはカソード端子を発光のための電圧または電流を供給するラインに接続した3端子発光素子アレイとを具備しており、3端子発光スイッチ素子および3端子発光素子は、それぞれ一方導電型半導体基板の上に、第1の一方導電型半導体層と第1の他方導電型半導体層と第2の一方導電型半導体層と第2の他方導電型半導体層とが順次積層されているとともに、第2の他方導電型半導体層にアノード端子またはカソード端子を、一方導電型半導体基板または第1の一方導電型半導体層にカソード端子またはアノード端子を、第2の一方導電型半導体層にゲート端子をそれぞれ電気的に接続した発光サイリスタであり、3端子発光スイッチ素子は、上面視の形状が、隣接する素子間で一方が他方側に張り出しているとともに他方がその張出し部に沿うようになっていることから、三端子発光スイッチ素子による信号転送を発光サイリスタの光励起により行なう構成としたことで、三端子発光スイッチ素子アレイ部に転送方向指定ダイオードやゲート電圧制御のための負荷抵抗等を必要とせず、従来の発光装置に比べて簡素化したアレイ構造で三端子発光スイッチ素子アレイ部を構成することができ、製造に際しても工程数を削減することができる。また、3端子発光スイッチ素子と3端子発光素子とを個別に設けているため、従来の第1の発光装置におけるような発光スイッチ素子と発光素子とを兼ねることによるバイアス光の問題もないので、本発明の発光装置を電子写真式の画像記録装置に用いると、優れた画像品質の記録画像を得ることができる。さらに、3端子発光スイッチ素子の上面視の形状が、隣接する素子間で一方が他方側に張り出しているとともに他方がその張出し部に沿うようになっていることから、3端子発光スイッチ素子の発光部および受光部の面積が増え、3端子発光スイッチ素子の光取り出し効率および受光感度を高めることができるため発光の伝達効率の高いものとなる。なお、この発光サイリスタにおいて、発光部は第1の他方導電型半導体層と第2の一方導電型半導体層とから成り、受光部は第1の一方導電型半導体層と第1の他方導電型半導体層と第2の一方導電型半導体層とから成るものとする。
【0027】
また、本発明の発光装置によれば、上記構成において、3端子発光スイッチ素子アレイと3端子発光素子アレイとが基板上に並列に配設されているとともに、3端子発光スイッチ素子からの発光のうち基板の表面に垂直方向の発光と3端子発光素子方向の発光と3端子発光素子の反対方向の発光とを遮光する遮光層が設けられているときには、3端子発光スイッチ素子アレイからの漏れ光のうち基板の表面に垂直方向の発光と3端子発光素子方向の発光と3端子発光素子の反対方向の発光とはこの遮光層によって十分に遮光されるので、3端子発光スイッチ素子アレイにおいて発光状態を転送すべき隣接した3端子発光スイッチ素子方向への発光のみを効率良く利用することができ、漏れ光の影響を抑制することができるとともに、3端子発光素子アレイからの出力光のみを外部に効率良く取り出すことができるものとなる。
【0028】
そして、本発明の画像記録装置によれば、電子写真方式の画像記録装置であって、本発明の発光装置を感光体への露光装置に使用していることから、露光装置としての発光装置において感光体への画像露光を行なうための発光素子と信号転送のためのスイッチ素子とを一体的に集積化したものとすることができるので、発光装置を実装して露光装置を構成する回路基板を小型化することができ、またこの回路基板とのワイヤボンディングの数や回路基板に搭載すべき駆動ICの数を低減することができるので、小型化が可能で、かつ低コストの露光装置を備えた画像記録装置を提供することができるものとなる。また、従来の発光装置におけるようなバイアス光の問題もないので、電子写真方式の画像記録によって優れた画像品質の画像を得ることができるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の発光装置の実施の形態の例について説明する。
【0030】
図1は本発明の発光装置の実施の形態の一例を示す平面図であり、図2は図1におけるA−A’線断面図である。
【0031】
図1および図2に示すように、本発明の発光装置は、発光のしきい電圧またはしきい電流を外部から光を照射することによって制御可能な、アノード端子とカソード端子とゲート端子とを有する3端子発光スイッチ素子15を多数個、1つの3端子発光スイッチ素子15からの発光が隣接する3端子発光スイッチ素子15に入射するように基板1上に直線状に配列するとともに、3端子発光スイッチ素子15の各々のアノード端子またはカソード端子にクロックライン(φ1,φ2,φ3)11を接続した3端子発光スイッチ素子アレイと、発光のしきい電圧またはしきい電流を外部からゲート端子を介して電気的に制御可能な、アノード端子とカソード端子とゲート端子とを有する3端子発光素子14を多数個、3端子発光スイッチ素子15に対応させて基板1上に配列するとともに、3端子発光素子14のゲート端子をそれぞれ対応する3端子発光スイッチ素子15のゲート端子とゲート間配線10によって電気的に接続し、3端子発光素子14のアノード端子またはカソード端子を発光のための電圧または電流を供給するライン(φI)9に接続した3端子発光素子アレイとを具備しており、3端子発光スイッチ素子15および3端子発光素子14は、それぞれ一方導電型半導体基板1の上に、第1の一方導電型半導体層2と第1の他方導電型半導体層3と第2の一方導電型半導体層4と第2の他方導電型半導体層5とが順次積層されているとともに、第2の他方導電型半導体層5にアノード端子またはカソード端子を、一方導電型半導体基板1または第1の一方導電型半導体層2に、(この例ではカソード端子またはアノード端子を一方導電型半導体基板1に、ゲート端子を第2の一方導電型半導体層4に)それぞれ電気的に接続した発光サイリスタであり、3端子発光スイッチ素子15は、上面視の形状が、隣接する素子間で一方が他方側に張り出しているとともに他方がその張出し部に沿うようになっているものである。
【0032】
この例において、発光サイリスタを発光素子として用いた素子アレイは、信号転送のためのスイッチ用の発光サイリスタである3端子発光スイッチ素子15が直線状に配列された3端子発光スイッチ素子アレイに、これと同様の発光サイリスタからなるスタート用スイッチサイリスタ16が接続された部分と、発光用の発光サイリスタである3端子発光素子14が直線状に配列された3端子発光スイッチ素子アレイの部分とからなり、それぞれの素子アレイに対応した3端子発光スイッチ素子15のゲート端子と、3端子発光素子14のゲート端子とが、ゲート端子同士を共通化した配線であるゲート間配線10により電気的に接続されている。また、スタート用スイッチサイリスタ16のゲート端子は、スタートパルスラインφSに接続されており、3端子発光スイッチ素子アレイの各3端子発光スイッチ素子15のアノード端子には、3本のクロックライン(φ1,φ2,φ3)11がそれぞれ順々に順次2個おきに1本ずつ接続されている。
【0033】
そして、3端子発光スイッチ素子アレイと3端子発光素子アレイとが基板1上に並列に配設されることにより、電子写真方式の画像記録装置用の光プリンタヘッド等のラインヘッドとしての発光装置に用いられる。
【0034】
また、本発明に用いる発光サイリスタを構成する各半導体層のエネルギーギャップおよびキャリア密度は、発光サイリスタの受光感度,外部への光取り出し効率および発光効率を高めるように設計することが好ましい。具体的には、第1の他方導電型半導体層3および第2の一方導電型半導体層4のエネルギーギャップに比べ、第1の一方導電型半導体層2および第2の他方導電型半導体層5のエネルギーギャップを大きくすればよい。
【0035】
このようなエネルギーギャップとすることで、第1の他方導電型半導体層3と第2の一方導電型半導体層4とからなる発光部で発生した光が、第1の一方導電型半導体層2および第2の他方導電型半導体層5に吸収されることなく隣接する発光サイリスタに照射されるため、光取り出し効率の高い発光サイリスタとなる。なお、このような発光サイリスタにおいて受光部は、第1の一方導電型半導体層2と第1の他方導電型半導体層3と第2の一方導電型半導体層4とからなる。
【0036】
このような発光サイリスタにおいて、一方導電型をn型,他方導電型をp型とした発光サイリスタは、クロックライン10(φ1),11(φ2),12(φ3)およびライン8(φI)がアノード端子に接続される構成となり、カソード電圧を0Vとすると、発光サイリスタに電圧または電流を印加する電源に正電源を用いることができるため好ましい。また、一方導電型をp型,他方導電型をn型としても、バイアス電圧の極を反対とすることにより一方導電型をn型,他方導電型をp型とした発光サイリスタと同様の動作を得ることができる。このため、発光部の光取り出し効率および発光効率や受光部の受光感度が最適となるように発光サイリスタを構成する各半導体層の組み合わせを選択し、これらの各半導体層を作製するための製造上の観点から導電型を決定してもよい。
【0037】
以下、一方導電型をn型,他方導電型をp型として説明する。これにより、本発明の発光装置は第2の他方導電型半導体層5にアノード端子が接続され、このアノード端子に3本のクロックライン(φ1,φ2,φ3)11が順々に接続され、一方導電型半導体基板1にカソード端子が接続され、3端子発光素子14のアノード端子に発光のための電圧または電流を供給するライン9(φI)が接続された構成となる。
【0038】
一方導電型(n型)半導体基板1は、III/V族半導体層やII/VI族半導体層が成長可能なものであり、例えば、GaAs,InP,GaP,Si,Ge等からなる。
【0039】
第1の一方導電型(n型)半導体層2は、キャリア密度は1×1018cm−3程度のものが望ましく、例えば、GaAs,AlGaAs,InGaP等からなる。
【0040】
第1の他方導電型(p型)半導体層3は、エネルギーギャップが第1の一方導電型(n型)半導体層2より小さく、キャリア密度は1×1018cm−3程度のものが望ましく、例えば、AlGaAs,GaAs等からなる。特に、この層の厚みを50〜1000Åとすると、受光部のフォトトランジスタとして機能する部分(npn部)の電流増幅率が大きくなるので、効率良く外部からの光を受光できるものとなる。
【0041】
第2の一方導電型(n型)半導体層4は、エネルギーギャップが第1の一方導電型(n型)半導体層2より小さく、キャリア密度は全層の中で最も小さく1×1016cm−3〜1×1017cm−3程度のものであることが望ましく、例えば、GaAs,AlGaAs等からなる。
【0042】
第2の他方導電型(p型)半導体層5は、エネルギーギャップが第1の他方導電型(p型)半導体層3および第2の一方導電型(n型)半導体層4よりも大きいものが望ましく、例えば、AlGaAs,InAlGaP等からなるものとすると、高い内部量子効率を得ることができる。
【0043】
なお、図2において一方導電型(n型)半導体基板1と、第1の一方導電型(n型)半導体層2との間には、一方導電型(n型)バッファ層を介在させてもよい。また、第2の他方導電型(p型)半導体層5とアノード端子との間には、他方導電型(p型)オーミックコンタクト層6を介在させてもよい。
【0044】
7は、オーミックコンタクト層6上にオーミック接合をして設けられ、アノード端子として機能する金属層であり、例えば、Au,AuGe,AuZn等からなる。ここで、図2に示すように、金属層7を、オーミックコンタクト層6のほぼ全面を覆うように形成することにより、発光サイリスタの各半導体層への電界を均一化でき、これによって放射される光の発光強度を増すことができる。
【0045】
8はクロックライン(φ1,φ2,φ3)11あるいは発光のための電圧または電流を供給するライン(φI)9と、発光サイリスタの各半導体層との電気的絶縁を確保するための絶縁層であり、ポリイミド等の透光性があり、かつ平坦性のある絶縁性膜が用いられる。
【0046】
ライン(φI)9は、3端子発光素子アレイの各発光サイリスタのオーミックコンタクト層7に接続され、その一部にスタート用スイッチサイリスタ16のゲート端子としての機能を持たせたものであり、例えば、Au,AuGe,Ni,Al等からなる。なお、ライン(φI)9とオーミックコンタクト層6との間に、ライン(φI)とともにアノード端子として機能する金属層7を介在させてもよい。
【0047】
ゲート間配線10は、第2の一方導電型(n型)半導体層4とオーミック接合をして発光サイリスタにおけるゲート端子として機能するものであり、例えば、Au,AuGe,Ni等からなる。
【0048】
クロックライン(φ1,φ2,φ3)11は、例えば、Au,AuGe,Ni,Al等からなる。
【0049】
13は、一方導電型(n型)半導体基板1とオーミック接合をして、カソード端子として機能する裏面電極であり、例えば、Au,AuGe,Ni等からなる。
【0050】
ここで、3端子発光スイッチ素子15は、上面視の形状が、隣接する素子間で一方が他方側に張り出しているとともに他方がその張出し部に沿うようになっている。図1に示す例では、3端子発光スイッチ素子15の上面視の形状は、一方の3端子発光スイッチ素子15の3端子発光素子14側の端部に隣接する他方の3端子発光スイッチ素子15に向けて伸びる第1の凸部を設け、他方の3端子発光スイッチ素子15の3端子発光素子14と反対側の端部に一方の3端子発光スイッチ素子15に向けて伸びる第2の凸部を設けた形状として、隣接する3端子発光スイッチ素子15間で一方の3端子発光スイッチ素子15の第1の凸部と他方の3端子発光スイッチ素子15の第2の凸部とが対向するように配置することで、一方の3端子発光スイッチ素子15が第1の凸部により他方の3端子発光スイッチ素子15側に張り出しているとともに、他方の3端子発光スイッチ素子15が第2の凸部により一方の3端子発光スイッチ素子15の張出し部(第1の凸部)に沿うようになるものとしている。また、図3(a)〜(c)にそれぞれ本発明の発光装置における3端子発光スイッチ素子15の上面視の形状の例の模式的な要部平面図を示す。図3において、隣接する3端子発光スイッチ素子15間で、一方が他方側に張り出している張出し部を15aとし、この張出し部15aに沿うようになっている部位を15bとして説明する。3端子発光スイッチ素子15の上面視の形状は、図3(a)に示すように、平行四辺形状としてもよいし、図3(b)に示すように、隣接する素子の一方に凸部(張出し部15a)を設け、他方にその凸部(張出し部15a)を囲うように、つまり、張出し部15aに沿うように凹部15bを設けた形状としてもよいし、図3(c)に示すように、多数の凹凸を有する形状として、隣接する3端子発光スイッチ素子15間でこれらの凹凸形状が噛み合う様に配列することで、隣接する素子間で一方が他方側に張り出しているとともに他方がその張出し部15aに沿うような部位15bを有する形状としたものとしてもよい。また、図1および図3(b),(c)の凸部および凹部の角部が丸みを帯びた形状としてもよい。なお、図3(a)〜(c)において破線で示した15cは、クロックライン(φ1,φ2,φ3)11が接続される部位を示している。
【0051】
このような形状の3端子発光スイッチ素子15は、上面視の形状が矩形である従来の3端子発光スイッチ素子15に比べて、隣接する素子側の側面の受光部面積および発光部面積が大きくなるため、受光感度および光取り出し効率が向上し、発光装置に用いたときには素子間の光伝達効率の高いものとすることができる。また、3端子発光スイッチ素子15の上面視の形状が隣接する素子間で一方が他方側に張り出しているとともに他方がその張出し部に沿うようになっていることから、隣接する素子間で一方の素子の受光部と他方の素子の発光部との距離を素子の各部位においてばらつくことなくほぼ一定とすることができ、隣接する素子を密に配置することができるので、3端子発光スイッチ素子アレイを大型化することなく光伝達効率を高めることができる。さらに、製造に際しても、3端子発光スイッチ素子15を構成する発光サイリスタの各半導体層のパターニング形状を変えるだけでよいため、工程数を増やすことなく製造できるものとなる。
【0052】
また、発光サイリスタの発光部から照射される光(光線)が隣接する発光サイリスタの受光部に到達する際の受光部における光量を算出する光線追跡シミュレーションにより、発光サイリスタの受光部における光量分布を受光部の形状を変えて計算すると、発光サイリスタの受光部形状が凸状となる部分で受光する光の光量が多くなることが分かった。従って、3端子発光スイッチ素子15は、上面視の形状を、図1および図3に示す形状のように一箇所以上の凸部または凹部を設けるようにして隣接する3端子発光スイッチ素子15間で一方が他方側に張り出しているとともに他方がその張出し部に沿うようにすることで、従来の矩形状の場合に比べて素子間の光伝達効率を向上できる。
【0053】
中でも、図3(b)に示す形状において、3端子発光スイッチ素子15の凸部を設けた側をスイッチング信号の受信側、すなわち隣接する3端子発光スイッチ素子15からの発光が入射する側とし、隣接する3端子発光スイッチ素子15の凸部を囲うように凹部を設けた側をスイッチング信号の発信側、すなわち隣接する3端子発光スイッチ素子15へ光を出射する側とすることで、隣接する3端子発光スイッチ素子15から照射される光が、3端子発光スイッチ素子15の凸部で集中して受光できるため、さらに隣接する素子間の光伝達効率を高くすることができる。
【0054】
ここで、隣接する3端子発光スイッチ素子15間で一方の素子の凸部と他方の素子の凹部とが近接していることが好ましい。また、受光効率を高めるために凸部は大きい程が好ましいが、一定の大きさの基板1に一定個数の3端子発光スイッチ素子15が配列されている場合に凸部の形状が大き過ぎると、製造の際に、3端子発光スイッチ素子15のパターニングが困難となり生産性が低くなるため、受光効率と生産性とを考慮して凸部の大きさを決定すればよい。
【0055】
例えば、600dpiの密度で3端子発光スイッチ素子15が配列している3端子発光スイッチ素子アレイにおいて、横方向(配列方向)の長さが30μm,縦方向の長さが40μmの矩形状の3端子発光スイッチ素子15を用いた場合に比べ、縦方向の長さが同じく40μmで、横方向に10μmの第1および第2の凸部を設けた、図1に示す3端子発光スイッチ素子15を用いた場合には、受光する光量が約40%向上する。
【0056】
また、12は遮光層であり、特に3端子発光スイッチ素子アレイと3端子発光素子アレイとが基板1上に並列に配設されているときに、3端子発光スイッチ素子15からの発光のうち基板1の表面に垂直方向の発光と3端子発光素子14方向の発光とを遮光するものとして設けられる。このような遮光層12を設けることにより、3端子発光スイッチ素子アレイからの漏れ光のうち基板1の表面に垂直方向の発光と3端子発光素子14方向の発光と3端子発光素子14の反対方向の発光とはこの遮光層12によって十分に遮光されるので、本発明の発光装置を電子写真方式の画像記録装置に露光装置として用いた場合に、そのような漏れ光による画像の劣化が発生せず優れた画像品質を得ることができるものとなる。このような遮光層12は、3端子発光スイッチ素子15からの発光を2〜3μm程度の厚みでほぼ完全に吸収するようなものであれば種々の材料が使用可能であり、例えば、ポリイミド等をスピンコーティングし、フォトエッチングで所定のパターンに加工して形成すればよい。また、この遮光層12によって3端子発光スイッチ素子15からの発光を反射して隣接する3端子発光スイッチ素子15の受光部に効率よく入射させるには、遮光層12は、3端子発光スイッチ素子15の発光波長(600〜800nm)をほぼ完全に吸収し、あるいは発光波長に対して反射率が高く、絶縁層8より屈折率が低いポリイミド等の絶縁材料から成るものを用いるのが好ましい。このように遮光層12に、漏れ光を遮光する機能に加えて、3端子発光スイッチ素子15からの発光を反射する機能を持たせることで、3端子発光スイッチ素子15の受光部へ入射される光量がより多くなるので、受光効率の極めて高い発光装置とすることができる。
【0057】
なお、以上の構成の本発明の発光装置において、一方導電型をp型,他方導電型をn型としてもよく、これにより、本発明の発光装置は第2の他方導電型半導体層5にカソード端子が接続され、このカソード端子にクロックライン(φ1,φ2,φ3)11が順々に接続され、一方導電型半導体基板1にアノード端子が接続され、3端子発光素子14のカソード端子に発光のための電圧または電流を供給するライン9(φI)が接続された構成となる。この場合、一方導電型(p型)半導体基板1としては、例えばGaAs,InP,GaP,Si,Ge等を用いればよい。
【0058】
図4は本発明の発光装置の実施の形態の例における基本構造の概略回路構成を示す等価回路図である。3端子発光スイッチ素子アレイを構成する3端子発光スイッチ素子15としての発光サイリスタT0〜Tnと、3端子発光素子アレイを構成する3端子発光素子14としての発光サイリスタL1〜Lnとが、それぞれ直線状に配列されて並列に配設されており、それぞれの素子アレイの対応した発光サイリスタT1〜Tnのゲート端子と発光サイリスタL1〜Lnのゲート端子とが電気的に接続されており(例えば、3端子発光スイッチ素子アレイのi番目(i<n)の発光サイリスタTiのゲート端子と、3端子発光素子アレイのi番目の発光サイリスタLiのゲート端子とが接続される。)、スタート用のスイッチサイリスタT0のゲート端子にはスタートパルスラインφSが接続されて信号入力部とされている。このスタート用のスイッチサイリスタT0を含めて、3端子発光スイッチ素子アレイの発光サイリスタのアノード端子には、3本のクロックライン(φ1〜φ3)がそれぞれ順々に2個おきに1本ずつ接続されている。
【0059】
このように構成された例を基に、本発明の発光装置におけるスイッチング信号の転送および発光の動作について説明する。
【0060】
スイッチング信号の転送のスタートは、スタート用のスイッチサイリスタT0のアノード端子に接続されたクロックラインφ3がハイレベルになり、スタートパルスラインφSがハイレベルからローレベル(発光サイリスタT0の発光条件を満たすゲート電圧以下の電圧)に変化することにより始まる。これによりスタート用のスイッチサイリスタT0がオン状態になり、発光する。このスタート用のスイッチサイリスタT0からの発光は、その一部が近傍の次の発光サイリスタT1に最も強く入射するよう構成されており、この光照射により発光サイリスタT1の発光のしきい電圧が低下する。
【0061】
次に、発光サイリスタT0から発光サイリスタT1へのオン条件の転送について説明する。発光サイリスタT0からの発光による光照射により、発光サイリスタT1の発光のしきい電圧が低下し、この状態で発光サイリスタT1のアノード端子に接続されているクロックラインφ1をローレベルからハイレベルに変化させる。このとき、同じクロックラインφ1がアノード端子に接続されている発光サイリスタT4は、スタート用のスイッチサイリスタT0から十分離れているため、スタート用のスイッチサイリスタT0の発光の光照射による発光のしきい電圧の低下はほとんどない。そこで、クロックラインφ1のハイレベルV(φ1)を、発光サイリスタT4の発光のしきい電圧VTH(T4)と発光サイリスタT1の発光のしきい電圧VTH(T1)との間の電圧となるように設定すれば(すなわち、V(φ1)をVTH(T1)<V(φ1)<VTH(T4)と設定すれば)、発光サイリスタT1のみがオン状態になり発光する。
【0062】
発光サイリスタT1がオン状態となって発光した後、クロックラインφ3をハイレベルからローレベルに変化させることにより、発光サイリスタT0はオフ状態になり発光が終了する。こうして3端子発光スイッチ素子アレイを構成する発光サイリスタのオン状態はスタート用のスイッチサイリスタT0から次の発光サイリスタT1に転送される。このとき、スタートパルスラインφSをローレベルからハイレベルに変化させることにより、再度クロックラインφ3をハイレベルに変化させても、スタート用のスイッチサイリスタT0はオフ状態を保つ。ここで、発光のための電圧または電流を供給するラインφIをローレベルからハイレベルにする。3端子発光素子アレイの1番目の発光サイリスタL1は対応する3端子発光スイッチ素子アレイの発光サイリスタT1がオン状態のため、そのゲート端子にかかる電圧はほぼ0Vとなるが、3端子発光素子アレイの2番目の発光サイリスタL2は3端子発光スイッチ素子アレイの対応する発光サイリスタT2がオフ(光励起)状態であり、3端子発光素子アレイの1,2番目の発光サイリスタL1,L2の発光のしきい電圧をそれぞれVTH(L1),VTH(L2)とすると、前述したようにクロックラインφ1のハイレベルV(φI)をVTH(L1)<V(φI)<VTH(L2)となるように設定すれば、発光サイリスタL1のみオン状態となり、発光する。そして、発光のための電圧または電流を供給するラインφIをハイレベルからローレベルにすると、3端子発光素子アレイの1番目の発光サイリスタL1はオフになり発光は終了する。
【0063】
以上のようにして3端子発光スイッチ素子アレイによるスイッチング信号の転送とそれに対応させた3端子発光素子アレイによる発光の動作とを順次繰り返すことにより、スタート用のスイッチサイリスタT0のオン状態(発光状態)がスイッチング信号として発光サイリスタT1,T2,T3・・・へと順次転送され、それに対応して発光サイリスタL1,L2,L3・・・の発光動作の制御が行なわれる。
【0064】
なお、3端子発光スイッチ素子アレイの動作のためにクロックパルスを供給するクロックラインとしてφ1,φ2,φ3の3本が必要な理由は、3端子発光スイッチ素子アレイにおいてスイッチング信号が転送されて発光状態にある例えば発光サイリスタT2に対しては、その発光による光が両隣の発光サイリスタT1およびT3に照射されてこれらが共に発光のしきい電圧またはしきい電流が低下した状態にあるため、クロックラインが2本では発光サイリスタT2の次にT1およびT3の両方が発光状態になってしまい、T1からT2へ、T2からT3へと順次転送していくことができないためである。
【0065】
そして、本発明の画像形成装置は、電子写真方式の画像形成装置であって、本発明の発光装置を感光体への露光装置に使用しているものである。その構成例は、例えば、感光体と帯電装置と露光装置と現像装置と転写装置と定着装置とを有しており、その感光体への露光装置を、本発明の発光サイリスタによる3端子発光スイッチ素子15および3端子発光素子14を集積化したアレイを、回路基板上に直線状に配置してそれぞれ3端子発光スイッチ素子アレイおよび3端子発光素子アレイを有する発光装置とし、これを用いて同じ回路基板に駆動用ドライバーIC等を搭載して構成する。
【0066】
このような構成の本発明の画像形成装置によれば、本発明の発光装置を感光体への露光装置に使用していることから、本発明の発光サイリスタによる3端子発光スイッチ素子15および3端子発光素子14を集積化したアレイを用いて露光装置を安価に製造することができ、また、露光装置からバイアス光や漏れ光も発生しないので、安価で高画質の画像が形成できる露光装置を備えた画像形成装置を提供できるものとなる。
【0067】
なお、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の発光装置の実施の形態の一例を示す要部平面図である。
【図2】図1におけるA−A’線断面図である。
【図3】(a)〜(c)はそれぞれ本発明の発光装置における3端子発光スイッチ素子15の上面視の形状の例を示す模式的な平面図である。
【図4】本発明の発光装置の実施の形態の一例における基本構造の概略回路構成を示す等価回路図である。
【図5】従来の第1の発光装置の基本構造の概略回路構成を示す等価回路図ならびに各クロックパルスおよび発光強度の波形を示す線図である。
【図6】従来の第2の発光装置の基本構造の概略回路構成を示す等価回路図である。
【符号の説明】
【0069】
1・・・基板
2・・・第1の一方導電型半導体層
3・・・第1の他方導電型半導体層
4・・・第2の一方導電型半導体層
5・・・第2の他方導電型半導体層
6・・・オーミックコンタクト層
7・・・金属層
8・・・絶縁層
9・・・ライン(φI)
10・・・ゲート間配線
11・・・クロックライン(φ1、φ2、φ3)
12・・・遮光層
13・・・裏面電極
14・・・3端子発光素子
15・・・3端子発光スイッチ素子
T0,T1,T2,T3〜Tn・・・発光サイリスタ(3端子発光スイッチ素子15)
L1,L2,L3〜Ln・・・発光サイリスタ(3端子発光素子14)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光のしきい電圧またはしきい電流を外部から光を照射することによって制御可能な、アノード端子とカソード端子とゲート端子とを有する3端子発光スイッチ素子を多数個、1つの前記3端子発光スイッチ素子からの発光が隣接する前記3端子発光スイッチ素子に入射するように基板上に直線状に配列するとともに、前記3端子発光スイッチ素子の各々の前記アノード端子または前記カソード端子にクロックラインを接続した3端子発光スイッチ素子アレイと、
発光のしきい電圧またはしきい電流を外部からゲート端子を介して電気的に制御可能な、アノード端子とカソード端子と前記ゲート端子とを有する3端子発光素子を多数個、前記3端子発光スイッチ素子に対応させて前記基板上に配列するとともに、前記3端子発光素子の前記ゲート端子をそれぞれ対応する前記3端子発光スイッチ素子の前記ゲート端子と電気的に接続し、前記3端子発光素子の前記アノード端子または前記カソード端子を発光のための電圧または電流を供給するラインに接続した3端子発光素子アレイとを具備しており、
前記3端子発光スイッチ素子および前記3端子発光素子は、それぞれ一方導電型半導体基板の上に、第1の一方導電型半導体層と第1の他方導電型半導体層と第2の一方導電型半導体層と第2の他方導電型半導体層とが順次積層されているとともに、前記第2の他方導電型半導体層に前記アノード端子または前記カソード端子を、前記一方導電型半導体基板または前記第1の一方導電型半導体層に前記カソード端子または前記アノード端子を、前記第2の一方導電型半導体層に前記ゲート端子をそれぞれ電気的に接続した発光サイリスタであり、
前記3端子発光スイッチ素子は、上面視の形状が、隣接する素子間で一方が他方側に張り出しているとともに他方がその張出し部に沿うようになっていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記3端子発光スイッチ素子アレイと前記3端子発光素子アレイとが前記基板上に並列に配設されているとともに、前記3端子発光スイッチ素子からの発光のうち前記基板の表面に垂直方向の発光と前記3端子発光素子方向の発光と前記3端子発光素子の反対方向の発光とを遮光する遮光層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の発光装置を感光体への露光装置に使用していることを特徴とする画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−100438(P2006−100438A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282786(P2004−282786)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】