説明

磁気減衰自由層を備えたスピントルク発振器(STO)

【課題】本発明は、磁気減衰自由層を備えたスピントルク発振器(STO)を提供する。
【解決手段】スピントルク発振器(STO)は、発振自由強磁性層の磁気減衰を増加させる。ギルバート磁気減衰パラメータ(α)は、少なくとも0.05、好ましくは0.05より大きい。自由層は、任意のタイプの従来の強磁性材料であってもよいが、ドーパントとして1つまたは複数の減衰元素を含む。減衰元素は、Pt、Pdおよび15のランタニド元素からなる群から選択される。自由層減衰は、自由層に隣接する減衰層によって増加させてもよい。減衰層の一タイプは、Mn合金のような反強磁性材料であってもよい。反強磁性減衰層に対する変更例として、二重層減衰層を、反強磁性減衰層と、自由層および反強磁性層間の非磁性金属導電分離層とで形成してもよい。別のタイプの減衰層は、Pt、Pdおよびランタニドから選択された元素の1つまたは複数で形成された層であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にスピントルク発振器(STO)に関し、特に磁界センサ、およびSTOセンサを用いる検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録ディスクドライブにおける読み取りヘッドとして用いられる従来の磁気抵抗(MR)センサの一タイプが、巨大磁気抵抗(GMR)効果に基づいた「スピンバルブ」センサである。GMRスピンバルブセンサは、典型的には銅(Cu)である非磁性導電スペーサ層によって分離された2つの強磁性層を含む層スタックを有する。スペーサ層に隣接する1つの強磁性層は、隣接する反強磁性層との交換結合によってピン止めされることなどによって、自身の磁化方向を固定させるものであり、基準層と呼ばれている。スペーサ層に隣接するもう一方の強磁性層は、外部磁界が存在する状態で、自身の磁化方向を自由に回転できるものであり、自由層と呼ばれている。センス電流がセンサに印加されると、ディスク上の記録された磁気ビットなどからの外部磁界の存在ゆえに、基準層磁化に対する自由層磁化の回転は、電気抵抗における変化として検出可能である。センス電流が、センサスタックにおける層の平面を垂直に通って導かれた場合、センサは、面直電流(CPP)センサと呼ばれる。
【0003】
CPP−GMR読み取りヘッドに加えて、別のタイプのCPPセンサは、トンネルMRまたはTMRセンサとも呼ばれる磁気トンネル接合センサであり、このセンサにおいて、非磁性スペーサ層は、非常に薄い非磁性トンネル障壁層である。CPP−TMRセンサにおいて、層を垂直に通るトンネル電流は、2つの強磁性層における磁化の相対配向に依存する。CPP−GMR読み取りヘッドにおいて、非磁性スペーサ層は、導電材料、典型的にはCuまたはAgなどの金属で形成される。CPP−TMR読み取りヘッドにおいて、非磁性スペーサ層は、TiO、MgOまたはAlなどの電気絶縁材料で形成される。
【0004】
CPP MRセンサにおいて、信号および信号対ノイズ比(SNR)を最大限にするために、高バイアスまたはセンス電流密度でセンサを動作させることが望ましい。しかしながら、CPP MRセンサが、電流によって誘起されたノイズおよび不安定性に弱いことが周知である。スピン偏極バイアス電流は、強磁性層を垂直に通って流れ、局所磁化に対してスピントルク(ST)効果を生じさせる。これは、磁化の変動が生じて、センス電流が大きい場合にはかなりの低周波磁気ノイズに帰着する可能性がある。
【0005】
スピントルク発振器(STO)センサと呼ばれる、CPP−GMRまたはCPP−TMRセンサ構造のいずれかに基づいた代替センサは、ST効果が磁化の永続的な歳差運動を生成するように設計される。臨界電流(I)より高い固定直流電流がSTOセンサを通して導かれる場合、自由層の磁化は、ST効果によって歳差運動または発振する。適切に設計された構造において、この歳差運動の周波数(発振周波数)は、外部磁界の印加と共にシフトし、これらの周波数シフトは、外部磁界における変化を検出するために用いることができる。したがって、STOセンサは、例えば、本出願と同一の譲受人に譲渡された特許文献1および特許文献2に説明されているように、従来のCPP−GMRおよびCPP−TMR読み取りヘッドに取って代わるために、磁気記録ディスクドライブにおける読み取りヘッドとして使用するように提案されている。CPP−GMRセンサに基づいたSTOセンサは、基準層と自由層との間の、その非磁性導電スペーサ層ゆえに、CPP−TMRセンサに基づいたSTOセンサより高い電流密度で動作することができる。しかしながら、CPP−TMRセンサに基づいたSTOセンサは、CPP−GMRセンサに基づいたSTOセンサより著しく高い磁気抵抗(ΔR/R)を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第20100328799 A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20090201614 A1号明細書
【特許文献3】米国特許出願第12/636,108号明細書
【特許文献4】米国特許第7,633,699号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第20080241597 A1号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“Injection Locking and Pulling in Oscillators”, B Razavi, et al., IEEE J of Solid State Circuits 39, 1415 (2004)
【非特許文献2】Tserkovnyak et al., “Enhanced Gilbert Damping in Thin Ferromagnetic Films”, Phys Rev Lett, Vol. 88, No. 11, 18 March 2002, 117601
【非特許文献3】N. Smith et al., Phys. Rev. B 81, 184431 (2010)
【非特許文献4】S. Maat et al., Appl. Phys. Lett 93 (2008) 103506
【非特許文献5】“STO frequency vs. magnetic field angle: The prospect of operation beyond 65 GHz”, by Bonetti et al, APL 94 102507 (2009)
【非特許文献6】“Microwave Assisted Magnetic Recording”, by J. G. Zhu et al., IEEE Transactions on Magnetics, Vol. 44, No. 1, January 2008, pp. 125−131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高い信号対ノイズ比(SNR)を備えたSTOセンサが望ましい。したがって、STOセンサは、バックグラウンドを超える高いSTO出力電力、および低い発振器位相ノイズの両方を有するべきであり、この低い発振器位相ノイズは、発振器の周波数応答における狭いスペクトル線幅によって特徴付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、発振自由層の磁気減衰の増加を伴い、それによって臨界電流を増加させる、STO磁界センサなどのスピントルク発振器(STO)に関する。ランダウ−リフシッツ−ギルバート−スロンチェスキー方程式(Landau-Lifshitz-Gilbert-Slonczewski equation)からのギルバート磁気減衰パラメータ(α)は、少なくとも0.05、好ましくは0.05を超えるべきである。一実施形態において、自由層は、従来のCPPセンサ用に用いられる材料のような任意のタイプの強磁性材料であるが、その磁気減衰を増加させるためのドーパントまたは不純物として1つまたは複数の減衰元素を含む。減衰元素は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)および15のランタニド元素からなる群から選択される。別の実施形態において、自由層減衰は、非磁性スペーサ層に隣接する自由層側と反対の自由層側に隣接する減衰層によって増加される。減衰層の一タイプは、PtMn、NiMn、FeMn、IrMn、PdMn、PtPdMnおよびRhMnから選択されたMn合金のような反強磁性材料で形成してもよい。反強磁性減衰層に対する変更点として、二重層減衰層を、反強磁性層と、自由層および反強磁性層間の、CuまたはAgなどの非磁性金属導電分離層とで形成してもよい。別のタイプの減衰層は、Pt、Pdおよびランタニドから選択された元素の1つまたは複数で形成した層であってもよい。
【0010】
自由層減衰が増加したSTOは、自由強磁性層と基準強磁性層との間に非磁性スペーサ層を備えたGMRまたはTMRに基づいた前述のタイプであってもよい。STOはまた、2009年12月11日に出願され本出願と同一の譲受人に譲渡された係属中の出願(特許文献3)で説明されているSTOのように、基準層を用いないが、しかし非磁性導電逆平行結合層(nonmagnetic electrically conductive antiparallel coupling layer)によって分離された2つの逆平行結合自由強磁性層(antiparallel-coupled free ferromagnetic layer)を有するSTOであってもよい。このタイプのSTOにおいて、自由層の一方または両方は、上記の技術のいずれかによって磁気的に減衰してもよい。
【0011】
本発明の性質および利点のより完全な理解のために、添付の図面と共に以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】カバーを除去された従来の磁気記録ハードディスクドライブの上面概略図である。
【図2】図1の方向2−2に沿ったスライダの拡大端面図およびディスクの断面図である。
【図3】図2の方向3−3における図であり、かつ読み取り/書き込みへッドの端部を備えたスライダの空気ベアリング面(ABS)を示す。
【図4】先行技術による磁気シールド層間に位置する層スタックを示す、面直電流磁気抵抗(CPP MR)読み取りヘッドにおけるABSの断面概略図である。
【図5】ドープされた自由強磁性層を備えた、本発明の第1の実施形態による磁界スピントルク発振器(STO)検出システムの概略図である。
【図6】自由強磁性層に隣接する減衰層を備えた、本発明の第2の実施形態による磁界STO検出システムの概略図である。
【図7】基準層がなく2つの逆平行結合された自由強磁性層を備えたSTOセンサを用いる磁界STO検出システムの概略図である。
【図8】マクロスピンシミュレーションを用いて計算された2つのギルバート減衰パラメータ値用の温度の関数としての、自由層歳差運動角度のモデル化された半値全幅(FWHM)分布のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による3端子STOは、磁界センサとして以外の用途を有するが、しかし磁気記録ディスクドライブ読み取りヘッドとして以下で詳細に説明する。
【0014】
図1〜4は、従来のCPP磁気抵抗(MR)磁界検出センサおよびシステムを示す。図1は、従来の磁気記録ハードディスクドライブのブロック図である。ディスクドライブは、ディスクドライブハウジングまたはベース16上に支持された磁気記録ディスク12および回転ボイスコイルモータ(VCM)アクチュエータ14を含む。ディスク12は、回転中心13を有し、かつベース16に取り付けられたスピンドルモータ(図示せず)によって、方向15に回転される。アクチュエータ14は、軸17を中心に旋回し、剛性アクチュエータアーム18を含む。略可撓性サスペンション20は、曲げ要素23を含み、アーム18の端部に装着される。ヘッドキャリアまたは空気ベアリングスライダ22が、曲げ部23に装着される。磁気記録読み取り/書き込みへッド24が、スライダ22の後面(trailing surface)25上に形成される。曲げ部23およびサスペンション20によって、スライダは、回転するディスク12によって生成される空気ベアリング上で「ピッチ(前後方向での傾斜)」および「ロール(左右方向での傾斜)」することが可能になる。典型的には、スピンドルモータによって回転されるハブ上には複数のディスクが積み重ねられ、別個のスライダおよび読み取り/書き込みへッドが、各ディスク表面に関連付けられる。
【0015】
図2は、図1の方向2−2に沿ったスライダ22の拡大端面図およびディスク12の断面図である。スライダ22は、曲げ部23に装着され、かつディスク12に面する空気ベアリング面(ABS)27、およびABSに略垂直な後面25を有する。ABS27は、回転するディスク12からの空気流を、ディスク12の表面に非常に接近しているかまたはほぼ接触しているスライダ22を支持する空気ベアリングにする。読み取り/書き込みへッド24は、後面25上に形成される。また、読み取り/書き込みへッド24は、後面25上の端子パッド29との電気的接続によって、ディスクドライブ読み取り/書き込み電子機器に接続される。図2の断面図に示すように、ディスク12は、離散データトラック50がクロストラック方向において間隔をおいて配置されたパターンを有するパターン化媒体ディスクであり、トラック50の1つが、読み取り/書き込みへッド24と位置合わせされて示されている。離散データトラック50は、クロストラック方向にトラック幅TWを有し、かつ円周方向において連続的な磁化可能材料で形成してもよく、この場合に、パターン化媒体ディスク12は、離散トラック媒体(DTM)ディスクと呼ばれる。代替として、データトラック50には、トラックに沿って間隔をおいて配置された離散データアイランドを含んでもよく、この場合に、パターン化媒体ディスク12は、ビットパターン化媒体(BPM)ディスクと呼ばれる。また、ディスク12は、記録層がパターン化されていないが、記録材料の連続した層からなる従来の連続媒体(CM)ディスクであってもよい。CMディスクにおいて、トラック幅TWを備えた同心データトラックは、書き込みヘッドが連続記録層に書き込む場合に作成される。
【0016】
図3は、図2における方向3−3の図であり、ディスク12から見たような読み取り/書き込みヘッド24の端部を示す。読み取り/書き込みへッド24は、スライダ22の後面25に堆積され、リソグラフでパターン化された一連の薄膜である。書き込みヘッドは、垂直書き込み磁極(WP)を含んでもよい。また、書き込みヘッドは、後部シールドおよび側部シールド(図示せず)の両方またはいずれか一方を含んでもよい。CPP MRセンサまたは読み取りヘッド100は、2つの磁気シールドS1およびS2間に位置する。磁気シールドS1、S2は、透磁性材料、典型的にはNiFe合金で形成され、また導電性であってもよく、その結果、それらは、読み取りヘッド100への導線として機能することができる。磁気シールドは、読み取られているデータビットに隣接する記録されたデータビットから読み取りヘッド100をシールドするように機能する。また、別個の導線を用いてもよく、その場合には、読み取りヘッド100は、磁気シールドS1、S2と接触している、タンタル、金、ルテニウム、ロジウムまたは銅などの導電性リード材料の層に接触して形成される。図3は、非常に小さな寸法を示のが難しいため、正確な縮尺で示されていない。典型的には、各磁気シールドS1、S2は、トラックに沿った方向における読み取りヘッド100の全体的厚さ(約15〜40nmの範囲になり得る)と比較して、トラックに沿った方向に数マイクロメートルの厚さである。
【0017】
図4は、ディスクから見たABSの図であって、CPP MRセンサ構造を構成する層を示す図である。センサ100は、2つの磁気シールド層S1、S2間に形成された層スタックを含むCPP MR読み取りヘッドである。センサ100は、ABSにおける前端と、トラック幅(TW)を画定する離間された側端102、104とを有する。磁気シールドS1、S2は、導電材料で形成され、したがって、センサスタックにおける層を略垂直に通って導かれるバイアスまたはセンス電流I用の導線として機能し得る。代替として、別個の導線層を、磁気シールドS1、S2とセンサスタックとの間に形成してもよい。下部の磁気シールドS1は、典型的には化学機械研磨(CMP)によって研磨されて、センサスタックの成長用の平滑な基板を提供する。薄いRu/NiFe二重層などのシード層101が、典型的にはスパッタリングによって磁気シールドS2の下に堆積され、比較的厚い磁気シールドS2の電気めっきを容易にする。
【0018】
センサ100の層は、固定磁気モーメントまたは磁化方向121を横に(ページの中へと)配向した基準強磁性層120と、ディスク12からの横の外部磁界に応じて層110の平面において回転できる磁気モーメントまたは磁化方向111を有する自由強磁性層110と、基準層120と自由層110との間の非磁性スペーサ層130とを含む。CPP MRセンサ100は、CPP GMRセンサであってもよく、その場合には、非磁性スペーサ層130は、導電材料、典型的にはCu、AuまたはAgのような金属で形成され得る。代替として、CPP MRセンサ100は、CPPトンネルMR(CPP−TMR)センサであってもよく、その場合には、非磁性スペーサ層130は、TiO、MgOまたはAlのような電気絶縁材料で形成されたトンネルバリア(トンネル障壁)となるだろう。
【0019】
CPP MRセンサにおけるピン止め(pinned)強磁性層は、単一のピン止め層または図4に示す構造のような逆平行(AP)ピン止め構造であってもよい。APピン止め構造は、非磁性逆平行結合(APC)層123によって分離された第1の(AP1)122および第2の(AP2)120強磁性層を有し、2つのAPピン止め強磁性層の磁化方向は、ほぼ逆平行に配向されている。AP2層120は、片側で非磁性APC層120に接触し、反対側でセンサの電気的非磁性スペーサ層130に接触し、典型的には基準層と呼ばれる。AP1層122は、典型的には片側で反強磁性層124または硬質磁石ピニング層(hard magnet pinning layer)に接触し、反対側で非磁性APC層123に接触しており、典型的にはピン止め層と呼ばれる。APピン止め構造は、基準/ピン止め層とCPP MR自由強磁性層との間の正味の静磁結合を最小化する。APピン止め構造はまた、「積層」ピン止め層または合成反強磁性体(SAF)と呼ばれることもある。
【0020】
図4のCPP GMRセンサにおけるピン止め層は、AP結合(APC)層123をはさんで反強磁性的に結合された基準強磁性層120(AP2)およびより低い強磁性層122(AP1)を備えた周知のAPピン止め構造である。APC層123は、典型的にはRu、Ir、Rh、Crまたはそれらの合金である。AP1およびAP2層は、自由強磁性層110と同様に、典型的には、結晶CoFeまたはNiFe合金など、Co、FeおよびNiの1つもしくは複数の強磁性合金、またはCoFe/NiFe二重層など、これらの材料の多層で形成される。AP1およびAP2強磁性層は、それらのそれぞれの磁化方向127、121が逆平行に配向されている。AP1層122は、その磁化方向を、図4に示すような反強磁性(AF)層124に交換結合されることによってピン止めされてもよい。AF層124は、典型的にはMn合金、例えばPtMn、NiMn、FeMn、IrMn、PdMn、PtPdMn、RhMnである。代替として、APピン止め構造は、「自己ピン止め」であってもよい。「自己ピン止め」センサにおいて、AP1およびAP2層の磁化方向127、121は、典型的には、製造されたセンサ内に存在する磁気歪みおよび残留応力によってディスク表面に略垂直に設定される。AP1およびAP2層が、同様のモーメントを有することが望ましい。これによって、次のことが保証される。すなわち、自由層110への静磁結合が最小化され、かつAPピン止め構造の正味の磁気モーメントにほぼ反比例する、AF層124の有効ピニング磁界が高いままで維持されるように、APピン止め構造の正味の磁気モーメントが小さいことが保証される。
【0021】
シード層125は、下部のシールド層S1とAPピン止め構造との間に位置してもよい。AF層124が用いられる場合に、シード層125は、AF層124の成長を向上させる。シード層125は、典型的には、NiFeCr、NiFe、Ta、CuまたはRuの1つの層であるか、またはこれらの材料からなる複数の層である。キャッピング層112は、自由強磁性層110と上部のシールド層S2との間に位置する。キャッピング層112は、腐食を防止し、Ru、Ta、Ti、またはRu/Ta/Ru、Ru/Ti/Ru、もしくはCu/Ru/Taの3層など、単一層または異なる材料からなる多層であってもよい。
【0022】
また、CoPtまたはCoCrPt硬質磁性バイアス層などの強磁性バイアス層115が、典型的には、センサ100の側端102、104の近くでセンサスタックの外側に形成される。バイアス層115は、絶縁層116によって、センサ100の側端102、104から電気的に絶縁される。CrMoまたはCrTiのようなCr合金などのオプションのシード層114を、絶縁層116上に堆積して、特にバイアス層がCoPtまたはCoPtCr層である場合にバイアス層115の成長を促進するようにしてもよい。Cr層またはTa/Cr多層などのキャッピング層118は、バイアス層115上に堆積される。また、キャッピング層118の上部層、例えばCrは、センサの製造中に、化学機械研磨(CMP)停止層としての役目を果たす。バイアス層115は、ABSに略平行な磁化117を有し、したがって自由層110の磁化111に長手方向にバイアスをかける。したがって、外部磁界がない状態で、バイアス層115の磁化117は、自由層110の磁化111と平行である。強磁性バイアス層115は、反強磁性層に交換結合される硬質磁性バイアス層または強磁性層であってもよい。シールド層S2用の、NiFe層などのシード層101は、センサ100およびキャッピング層118の上に位置してもよい。
【0023】
対象の範囲となる外部磁界、すなわちディスク上の記録されたデータからの磁界が存在する状態において、自由層110の磁化方向111は回転し、一方で基準層120の磁化方向121は、固定されたままで回転しない。したがって、センス電流Iが、上部の磁気シールドS2からセンサスタックを垂直に通って底部の磁気シールドS1に(またはS1からS2に)印加された場合に、ディスク上の記録されたデータからの磁界は、基準層磁化121に対して自由層磁化111の回転を引き起こし、それは、電気抵抗における変化として検出可能である。
【0024】
しかしながら、センス電流Iが、ある臨界電流(I)より大きい場合に、スピントルク(ST)効果は、自由層磁化の旋回または変動が生じて、センサの信号対ノイズ比(SNR)を望ましくないレベルまで低減する、かなりの低周波磁気ノイズが生じる可能性がある。
【0025】
スピントルク発振器(STO)センサと呼ばれる、CPP−GMRまたはCPP−TMRセンサに基づいた代替センサは、Iより大きい電流で動作し、故意にST効果を誘起し、したがって自由層に作用する、STによって誘起された力を利用する。Iより高い電流が、このタイプのSTOセンサを通して導かれる場合に、自由層の磁化は、ST効果によって歳差運動または発振する。この歳差運動の周波数(発振周波数)は、外部磁界の印加でシフトし、これらの周波数シフトは、外部磁界における変化を検出するために用いることができる。したがって、STOセンサは、例えば本出願と同一の譲受人に譲渡された特許文献1、および特許文献2に説明されているように従来のCPP−GMRおよびCPP−TMR読み取りヘッドに取って代わるために、磁気記録ディスクドライブにおける読み取りヘッドとして使用するように提案されている。
【0026】
高SNR信号復調は、バックグラウンドを超える高いSTO出力電力および低い発振器位相ノイズの両方を必要とし、この低い発振器位相ノイズは、発振器の周波数応答における狭いスペクトル線幅によって特徴付けられる。本発明において、発振自由層の固有の磁気減衰が増加される。周知のランダウ−リフシッツ−ギルバート−スロンチェスキー方程式は、有効磁界Heff、および電流Iを用いて励起される減衰を備えた固体における磁化Mの歳差運動を説明している。
【数1】

パラメータαは、ギルバート減衰定数またはパラメータで、無次元係数であり、固体に依存するものである。γは、電子の磁気回転比であり、eは、電子電荷であり、hは、換算プランク定数であり、MおよびVは、それぞれ、発振磁石の飽和磁化および体積であり、Mfixedは、基準層の磁化方向であり、g(θ)は、自由層および基準層モーメント間の角度に対するスピントルクの依存を説明する関数である。
【0027】
本発明では、発振自由層の磁気減衰の増加によって、STOにおける発振を励起するために必要な臨界電流Iが増加し、したがって、磁界検出および高周波RF電子機器の両方における用途に重要である出力信号強度を改善する。より重要なことに、シミュレーションは、次のことを示している。すなわち、従来の強磁性共振に反して、STにより生成された大きい歳差運動角度の発振に関して、減衰の増加は、発振器の歳差運動角度の熱的に駆動された変動によって誘起される位相ノイズ、つまり発振器のスペクトル応答の線幅を拡大する主要なメカニズムである位相ノイズを低減することができる。これらの結果を達成するために、本発明によるSTOは、好ましくは0.05より大きい、比較的高いギルバート減衰パラメータを備えた自由層を有する。
【0028】
図5は、本発明の第1の実施形態によるSTOセンサ200を用いる磁界検出システムの概略図である。システムは、STOセンサ200を備えた磁気記録ディスクドライブとして示され、そのABSは、ディスク250に面している。センサ200は、CPPセンサ100に関して前に説明したようにCPP−GMRまたはCPP−TMRセンサの個別層のスタックを含む。ディスク250は、基板252と、ABSの方へかまたはABSから離れるように向けられた矢印によって示された磁化領域を備えた磁気記録媒体として働く記録層254とを有する。ディスクが回転するにつれて、磁化領域は、センサ200を過ぎて矢印215の方向に移動する。記録層254は、記録層254の平面に垂直に磁化された領域を備えた垂直磁気記録媒体として示されているが、しかし代替として、それは、記録層254の平面に磁化された領域を備えた長手磁気記録媒体であってもよい。STOセンサ200は、層セットの堆積用の基板として働き得る第1のシールド層S1と、第2のシールド層S2と、外部磁界が存在する状態で自由に発振して検出される実質的な面内磁化211を有する単一の自由強磁性層210とを有する。自由層210は、GMR構造の一部を形成し、非磁性導電スペーサ層230と、固定された面内磁化221を有する基準層220とを備える。基準層220は、APピン止め構造の単一のピン止め層またはAP2層であってもよい。非強磁性導電金属「遮断」層225が、S1と第1の基準層220との間に位置して、S1と基準層220またはセンサスタックにおける他の強磁性層との間のどんな磁気交換相互作用も遮断する一方で、電気伝導を可能にする。同様に、非強磁性導電金属「遮断」層265が、S2と自由層210との間に位置する。層225、265用の典型的な材料は、Cu、Ag、TaおよびRuである。スタックにおけるセンサ層の順序は、図5に示すものから逆にすることができ、自由層210が、S1上の層265上に最初に堆積され、導電スペーサ層230、基準層220および層225が続き、S2が層225上に位置する。また、STOセンサ200は、GMRセンサではなくTMRセンサに基づいたセンサであってもよく、その場合に非磁性導電スペーサ層230は、絶縁トンネル障壁層によって取って代わられることになろう。
【0029】
STOセンサ200は、励起電流I源310を含む電気回路への接続のための電気接点または端子301、302を有する。図5では図解を楽にするために、端子301、302は、それらのそれぞれの層に直接接続されているように示されているが、端子301、302は、図2に示すように、スライダ22の後面25における端子パッド29によって、スライダの後面に位置することになるだろう。センサは、ABSから奥まった位置になる後部領域に、層を互いに電気的に絶縁するための絶縁材料290を含む。
【0030】
STOセンサ200に接続された電気回路は、層スタックを通して端子301、302間に直流(DC)励起電流Iを供給する定電流源310と、検出器350とを含む。励起電流は、GMR構造用の臨界電流Iより大きく、かつ外部磁界がない状態において固定されたベース周波数で自由層210の磁化211を発振させるための十分な電流密度を提供するように十分に高い。検出器350は、前記電気回路に結合され、かつ記録層254の磁化領域からの外部磁界に応じて、自由層磁化211の発振周波数における、ベース周波数からのシフトを検出する。電流源310は、代わりに、交流(AC)励起電流またはDCバイアスを備えたAC励起電流を印加してもよい。これによって、文献、例えば、非特許文献1および特許文献4で周知のように、位相検出による磁界の関連する引き込み(pulling)および検出と共に、固定駆動周波数への発振器の周波数ロッキングが可能になる。
【0031】
本発明の第1の実施形態において、自由層210は、従来のCPPセンサ用に用いられる材料のような任意のタイプの強磁性体であるが、しかしその磁気減衰を増加させるためのドーパントまたは不純物として、1つまたは複数の減衰元素を含む。減衰元素は、15のランタニド元素ならびに白金(Pt)およびパラジウム(Pd)からなる群から選択される。ランタニドは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)である。PtおよびPdは、非特許文献2によって説明されているように、強いスピン軌道結合を備えた重元素である。不純物の量は、自由層組成の約1〜5原子パーセントの範囲であるのが好ましい。例えば、自由層210は、組成(Co50Fe50100−yを有してもよく、ここでyは、約1〜5であり、Xは、選択された元素の1つまたは複数を表す。磁気減衰パラメータは、少なくとも0.05、好ましくは0.05を超えるべきである。例えば、CoFe強磁性材料は、0.01〜0.03の固有磁気減衰パラメータを有してもよいが、しかし約1〜5原子パーセントの量でDyの追加を伴ってもよく、磁気減衰パラメータは、0.05〜0.15のどこかに増加される。
【0032】
図6は、本発明の第2の実施形態によるSTOセンサ200を用いる磁界検出システムの概略図である。図6の実施形態は、自由層210がドープされないが、しかし減衰層212によって磁気的に減衰される点を除いて、図5の実施形態と同様である。減衰層212は、スペーサ層230に隣接する自由層210の側と反対側の自由層210の側に接触している。図6における減衰層212は、PtMn、NiMn、FeMn、IrMn、IrMnCr、PdMn、PtPdMnおよびRhMn合金などのMn合金のような反強磁性材料で形成してもよい。例えば、自由層210が、約0.015の固有磁気減衰パラメータを備えたCoFe強磁性材料である場合に、IrMnで形成された6〜8nm厚の反強磁性減衰層212の追加によって、磁気減衰パラメータは、約0.1に増加される(非特許文献3を参照されたい)。反強磁性減衰層212に対する変更点として、二重層減衰層を、自由層210と反強磁性減衰層212との間で、反強磁性層およびCuまたはAgなどの非磁性金属導電分離層で形成してもよい。分離層は、約0.1〜3nmの厚さを有してもよい。
【0033】
特許文献5は、図5および図6について上述したような、自由層を減衰するための手段を備えたSTOを記載している。しかしながら、この参考文献は、過度の値の電流密度(約10A/cm以上)を回避するために、自由層の比較的穏やかな減衰(0.01〜0.05のギルバート減衰パラメータ)を対象としている。対照的に、本発明において、少なくとも2つの理由で、この範囲の減衰を超えることが望ましい。第1に、STOの信号電力は、励起電流の平方にほぼ比例するので、発振を励起するために、はるかに高い電流密度(>10A/cm)使用できるように、減衰を増加させることには著しい利点がある。第2に、0.05のギルバートパラメータを超えて減衰を増加させることによって、自由層モーメントの歳差運動軌道への摂動がより少なくなることが発見された。これにより、より少ない位相ノイズとなるとともに、STOのスペクトル純度における改善がなされる。すなわち、信号が、周波数空間において測定される場合に、より狭い線幅を備えたスパイクが得られる。
【0034】
図6に示す本発明の第2の実施形態に関して、反強磁性減衰層の代替は、Pt、Pdおよび、上述した複数のランタニドから選択された元素の1つまたは複数で形成された減衰層212である。例えば、自由層210が、0.015の固有磁気減衰パラメータを備えたCoFe強磁性材料である場合に、Dyで形成された1nm厚の減衰層212の追加によって、磁気減衰パラメータは約0.05に増加される(非特許文献4を参照されたい)。
【0035】
図7は、磁界検出システムの概略図であり、ここで、磁界検出システムは、STOセンサ200(図5および6)と異なるSTOセンサ400を用いるが、STOセンサ200に関連して上記したような自由層を減衰するための手段を備えるものである。STOセンサは、基準層を用いないが、しかし非磁性導電逆平行結合(APC)層460によって分離された2つの逆平行結合自由強磁性層450、454を有する。図7に示すセンサのようなSTOセンサが、2009年12月11日出願で、本出願と同一の譲受人に譲渡された特許文献3に説明されている。自由強磁性層450、454は、実質的な面内磁化451、455をそれぞれ有するが、しかし磁化451、455は、励起電流がない状態でほぼ逆平行に配向される。磁化451、455は、外部磁界が存在する状態で自由に発振して検出される。APC層460は、薄くて典型的には約0.2〜3nmであり、2つの自由層450、454を強く逆平行結合する。APC層460は、Ru、Cu、Irなどの材料または逆平行結合を提供できる他の適切な非磁性導電材料で形成してもよく、かつ偏極の(スピン軌道散乱から生じ得るような)十分に低いスピン散乱を有するべきである。自由層450、454は、CoFe、Co、NiFeなどの磁性材料もしくはこれらの材料の組み合わせ、または当該技術分野において周知の、GMRおよびTMR磁気抵抗センサ用に用いられる任意の他の適切な自由層材料で形成してもよい。この反強磁性的に結合されたシステムを達成するために、自由層の1つは、もう一方の自由層より大きい磁気モーメントを有することが望ましい。磁気モーメントは、磁気層の物理的厚さに、層を構成する材料の飽和磁化を掛けた積として定義することができる。例として、自由層450、454は、同一または同様の磁性材料で形成することができ、一方の層450は、約4nmの物理的厚さを有し、もう一方の層454は、約2nmの物理的厚さを有することができる。
【0036】
電流源310から層スタックを通る励起電流は、ST効果の結果として、磁化451、454に発振させる。STによって誘起された発振は、前述のように磁界に応じて変化する周波数で、歳差運動または円錐式に移動し、検出器350によって検出される。磁化451、455が、逆平行結合された場合に、それらは、APC層460と平行な平面上にもたらされる両層のモーメントが、互いに対してはさみ状(scissor like motion)の運動を維持するような方式で発振する。したがって、この発振中に、磁化451、455は、互いに逆平行に、および逆平行でないように運動する。これは、外部磁界に応じる周波数を有するセンサスタック全体にわたって抵抗の変化を引き起こす。両方の自由層の磁化が移動する上記のはさみ状運動は、自由層磁化運動が大きく、かつピン止め層磁化がほぼ静止している図5のセンサのような前述のSTOセンサの運動とは異なる。
【0037】
本発明において、図7のSTOセンサには、図5および6の実施形態に関連して上記した技術のいずれか1つを用いて、一方または両方の自由層450、454の磁気減衰を増加させるための手段が含まれる。したがって、自由層450、454の一方または両方は、Pt、Pdおよび上述した複数のランタニドから選択された1つまたは複数の元素でドープしてもよい。自由層450、454の一方または両方は、反強磁性減衰層、または反強磁性層および分離層の二重層によって磁気的に減衰してもよく、反強磁性減衰層または二重層は、APC層460に隣接する側とは反対の自由層側に位置している。自由層450、454の一方または両方は、Pt、Pdおよびランタニドから選択された元素の1つまたは複数によって形成された減衰層によって磁気的に減衰もよく、減衰層は、APC層460に隣接する側とは反対の自由層側に位置している。
【0038】
図5のセンサのように、図7の磁気的に減衰されたSTOセンサにおいて、2つの自由層の発振を励起するために高電流密度(>10A/cm)を使用できることを保証するために、自由層の少なくとも1つにおけるギルバート減衰パラメータが、0.05より大きいことが好ましい。しかしながら、図7のSTOセンサにおいて、両方の自由層のギルバート減衰パラメータが、0.05未満であり、かつそれでも高い信号出力電力を供給するのに十分な高電流を結果としてもたらすことが可能である。
【0039】
前述のように、本発明は、減衰の増加が、発振器の歳差運動角度の熱的に駆動された変動によって誘起される位相ノイズ、すなわち発振器のスペクトル応答の線幅を拡大する主要なメカニズムである位相ノイズを低減できるという発見に部分的に基づいている。線幅拡大に寄与する位相ノイズの2つの発生源があり、それらの両方とも熱変動から生じる。これらは、スピンの運動に沿った、およびスピンの運動に垂直な変動、すなわち「速度ノイズ」および「角度ノイズ」である。速度ノイズの値は、比較的低く計算されてきたため、角度ノイズが、位相ノイズを支配すると予想される。熱変動によって引き起こされる自由層の歳差運動角度θの半値全幅(FWHM)分布は、Δθである。Δθに対する温度および減衰の効果が、シミュレーションモデリングから計算され、図8に示されている。図8の結果は、自由層減衰の増加が、歳差運動角度における熱的に駆動された変動を低減する点で効果を有し、それによって発振器の位相ノイズを減少させ得ることを示している。
【0040】
前述のように、磁界センサ、特に磁気記録ディスクドライブ読み取りヘッドとしての用途を用いて、本発明によるSTOを詳細に説明したが、本発明は他の用途を有する。STOの他の用途には、それらの全てが、自由層発振の周波数または位相検出するために高信号出力から利益を得られるであろうが、ミキサ、ラジオ、携帯電話およびレーダ(車両レーダを含む)が含まれる。例えば、非特許文献5を参照されたい。
【0041】
さらに別の用途は、磁気記録ディスクドライブなど、磁気記録における高周波数アシスト書き込み用である。マイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)とも呼ばれるこの技術において、STOは、高周波発振磁界を、従来の書き込みヘッドからの書き込み磁界への補助磁界として、記録層の磁気粒子に印加する。補助磁界は、記録層における磁気粒子の共振周波数に近い周波数を有して、他の場合で、アシストされた記録なしで可能であると考えられるよりも低い従来の書き込みヘッドからの書き込み磁界で、粒子の磁化の切り替えを容易にし得る。MAMRシステムの一タイプにおいて、GMRまたはTMRのいずれかに基づいたSTOは、層の平面に垂直に配向された基準層の磁化、および励起電流がない状態で層の平面に垂直に配向された自由層の磁化で動作する。例えば、非特許文献6を参照されたい。したがって、図5に示すSTOように、本発明によるSTOが、MAMR用のSTOとして用いられる場合に、基準層220の磁化は、層の平面に垂直に配向され、自由層210の磁化211もまた、励起電流Iがない状態で、層の平面に垂直に配向されることになろう。
【0042】
好ましい実施形態に関連して本発明を特に図示し説明したが、形態および詳細における様々な変更が、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに行い得ることを当業者は理解されよう。したがって、開示した発明は、単に実例であり、添付の特許請求の範囲において規定される範囲でのみ限定されると考えるべきである。
【符号の説明】
【0043】
12 磁気記録ディスク
13 回転中心
14 アクチュエータ
15 方向
16 ハウジングまたはベース
17 軸
18 アクチュエータアーム
20 サスペンション
22 スライダ
23 曲げ部
24 読み取り/書き込みヘッド
25 後面
27 空気ベアリング面(ABS)
29 端子パッド
50 データトラック
100 センサまたは読み取りヘッド
101 シード層
102 側端
104 側端
110 自由強磁性層
111 磁化方向
112 キャッピング層
114 シード層
115 強磁性バイアス層
116 絶縁層
117 磁化
118 キャッピング層
120 基準層
121 磁化方向
122 より低い強磁性層
123 非磁性逆平行結合(APC)層
124 反強磁性層
125 シード層
127 磁化方向
130 非磁性スペーサ層
200 STOセンサ
210 自由強磁性層
211 面内磁化
212 反強磁性減衰層
215 矢印
220 基準層
221 固定面内磁化
225 非強磁性導電金属遮断層
230 非磁性導電スペーサ層
250 ディスク
252 基板
254 記録層
265 非強磁性導電金属遮断層
290 絶縁材料
301 端子
302 端子
310 励起電流源
350 検出器
400 STOセンサ
450 逆平行結合自由強磁性層
451 面内磁化
454 逆平行結合自由強磁性層
455 面内磁化
460 非磁性導電逆平行結合(APC)層
S1 磁気シールド層
S2 磁気シールド層
TW トラック幅
WP 書き込み磁極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上の層セットと、
を備え、
前記層セットが、
0.05より大きい減衰パラメータを有する減衰自由強磁性層であって、当該減衰自由強磁性層の平面を垂直に通る励起電流が存在する状態で発振する磁化を有する減衰自由強磁性層と、
固定磁化を有する強磁性基準層と、
前記減衰自由強磁性層と前記強磁性基準層との間でそれらに接触する非磁性スペーサ層と、
を含む、スピントルク発振器(STO)。
【請求項2】
前記減衰自由強磁性層が、強磁性合金、ならびにPt、Pd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Th、YbおよびLuからなる群から選択されるドーパント元素を含む、請求項1に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項3】
前記減衰自由強磁性層が、強磁性合金層および反強磁性減衰層を含み、前記強磁性合金層が、前記非磁性スペーサ層と前記反強磁性減衰層との間に位置し、前記反強磁性減衰層がMn合金を含む、請求項1に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項4】
前記強磁性合金層と前記反強磁性減衰層との間に金属導電分離層をさらに含む、請求項3に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項5】
前記減衰自由強磁性層が、強磁性合金層と、前記強磁性合金層と接触しかつPt、Pd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Th、YbおよびLuからなる群から選択される少なくとも1つの元素から実質的になる減衰層とを含み、前記強磁性合金層が、前記非磁性スペーサ層と前記減衰層との間に位置する、請求項1に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項6】
前記強磁性基準層の磁化が、前記層の平面にほぼ垂直に配向される、請求項1に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項7】
前記強磁性基準層の磁化が、前記層の平面にほぼ配向される、請求項1に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項8】
前記減衰自由強磁性層の磁化方向が、励起電流がない状態で、前記強磁性基準層の磁化方向にほぼ逆平行である、請求項1に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項9】
前記非磁性スペーサ層が、導電スペーサ層である、請求項1に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項10】
前記非磁性スペーサ層が、絶縁トンネル障壁層である、請求項1に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項11】
前記層セットに接続され、前記非磁性スペーサ層を通して励起電流を供給するための電気回路をさらに含み、
前記励起電流が、直流電流(DC)および交流電流(AC)から選択され、かつ前記減衰自由強磁性層の磁化を発振させるために十分な電流密度を有する、請求項1に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項12】
前記電気回路が、10A/cm2より大きい励起電流密度を供給する、請求項1に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項13】
基板と、
前記基板上の層セットと、
を備え、
前記層セットが、
自由強磁性層であって、当該自由強磁性層の平面を垂直に通る励起電流が存在する状態で発振する磁化を有する自由強磁性層と、
固定磁化を有する強磁性基準層と、
前記自由強磁性層と前記強磁性基準層との間でそれらに接触する非磁性スペーサ層と、
前記自由強磁性層の磁気減衰を増加させるための減衰層であって、前記非磁性スペーサ層と接触する側と反対の前記自由強磁性層の側で前記自由強磁性層に接触する減衰層と、
を含み、
前記減衰層が、
(a)Pt、Pd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Th、YbおよびLuからなる群から選択される少なくとも1つの元素から実質的になる層、ならびに
(b)前記自由強磁性層と接触する金属導電層、および前記金属導電層と接触する反強磁性層の二重層
の1つから選択され、
前記反強磁性層がMn合金を含む、スピントルク発振器(STO)。
【請求項14】
前記自由強磁性層が、0.05より大きい減衰パラメータを有する、請求項13に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項15】
基板と、
前記基板上の層セットと、
を備え、
前記層セットが、
第1の自由強磁性層であって、当該第1の自由強磁性層の平面を垂直に通る励起電流が存在する状態で発振する磁化を有する第1の自由強磁性層と、
第2の自由強磁性層であって、当該第2の自由強磁性層の平面を垂直に通る励起電流が存在する状態で発振する磁化を有する第2の自由強磁性層と、
前記第1および第2の自由強磁性層間の非磁性導電逆平行結合層であって、前記第1および第2の自由強磁性層が、励起電流がない状態で、ほぼ逆平行の磁化方向を有する非磁性導電逆平行結合層と、
前記第1および第2の自由強磁性層のうちの少なくとも1つの自由強磁性層の磁気減衰を増加させるための手段と、
を含む、スピントルク発振器(STO)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの自由強磁性層の前記磁気減衰を増加させるための前記手段が、前記第1および第2の自由強磁性層の少なくとも1つの自由層にドーパントを含み、
前記ドーパントが、Pt、Pd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Th、YbおよびLuからなる群から選択される、請求項15に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項17】
前記少なくとも1つの自由強磁性層の前記磁気減衰を増加させるための前記手段が、前記非磁性導電逆平行結合層に面する側と反対の前記少なくとも1つの自由強磁性層の側で前記少なくとも1つの自由強磁性層と接触する減衰層を含む、請求項15に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項18】
前記減衰層が、Pt、Pd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Th、YbおよびLuからなる群から選択される少なくとも1つの元素から実質的になる層を含む、請求項17に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項19】
前記減衰層が、Mn合金を含む反強磁性層を備える、請求項17に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項20】
前記減衰層が、前記自由層と接触する金属導電層および前記金属導電層と接触する反強磁性層の二重層を備え、前記反強磁性層が、Mn合金を含む、請求項17に記載のスピントルク発振器(STO)。
【請求項21】
前記第1および第2の自由強磁性層の少なくとも1つが、0.05より大きい減衰パラメータを有する、請求項15に記載のスピントルク発振器(STO)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−16809(P2013−16809A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150203(P2012−150203)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(503116280)エイチジーエスティーネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】