説明

移動体を表示するための表示システム、車載装置、画像送信装置及び表示方法

【課題】 自車両のドライバが移動体との相対関係を容易に把握できる移動体の表示システムを提供する。
【解決手段】 本発明は、移動体7を車両6内の画面に表示するための移動体7の表示システム1であって、移動体7を含む道路4の交通状況を撮像するカメラ10と、カメラ10で撮像された画像とカメラ10の位置及び向きを含む送信情報を送信する画像送信装置11と、車両6に搭載された車載装置12とを備えている。この車載装置12は、撮像画像とカメラの位置及び向きを受信する受信部29と、この受信部29で受信した画像とカメラの位置及び向きを当該車両6内の画面に同時に表示する表示部30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点などの見通しの悪い場所に設置したカメラや他車両の車載カメラで移動体(車両、二輪車、人等)を含む道路の交通状況を撮像し、これから得た画像を路車間通信又は車々間通信を通じて、交差点などに別の道路から進入する自車両で受信し、当該自車両から死角となる移動体の画像を、ドライバが理解しやすいように提供する移動体の表示システム、車載装置、画像送信装置及び表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の出合い頭衝突の防止のための表示装置として、優先道路に車両感知器を設置し、当該優先道路の交差点に警告表示板を設置し、車両感知器で優先道路を走行する車両を検知したときに、前記警告表示板に警報を表示する装置がある(特許文献1参照)。これにより、交差点における出合い頭事故の可能性をドライバに予告することができる。
また、交差点にカメラを設置し、このカメラにより、自車両から死角となる直角道路から交差点に接近してくる他車両の画像を撮像し、この画像を自車両で受信する装置がある(特許文献2参照)。この装置によれば、カメラから見た実際の他車両の画像を自車両内で観察することができる。
【特許文献1】特開平5−28400号公報
【特許文献2】特開2003−109199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1の技術では、交差点に近づいた自車両は、優先道路から何らかの車両が近づいてくることは認識できるものの、その車両が今どの位置にいて、どのような速度で近づいてくるのか、などの詳しい情報はわからない。したがって、警告表示板の警報を軽視して、一旦停止をしないで進んでしまう可能性もあり、事故の防止に万全とはいえない。
【0004】
前記特許文献2の技術では、交差点に近づいた自車両は、優先道路から近づいてくる他車両を画面上で認識することはできる。しかし、この技術は、あくまでもカメラから見た画像だけを画面上に表示するものであるから、自車両と他車両の相対位置や相対速度が分かり難く、また、表示された画像がどこの画像か、何が危険なのかをドライバが瞬時に判断しにくい。したがって、誤認識、錯覚の原因となる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、自車両から死角となる移動体の画像をドライバに提供する場合に、自車両のドライバがその移動体との相対関係を容易に把握できる移動体の表示システム、車載装置、画像送信装置及び表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の移動体の表示システムは、移動体を車両内の画面に表示するための移動体の表示システムであって、前記移動体を含む道路の交通状況を撮像するカメラと、前記カメラで撮像された画像と、前記カメラの位置及び向きを含む送信情報を送信する画像送信装置と、前記車両に搭載された車載装置とを備え、
前記車載装置が、前記画像と前記カメラの位置及び向きを受信する受信部と、この受信部で受信した前記画像と前記カメラの位置及び向きを当該車両内の前記画面に同時に表示する表示部とを有するものである(請求項1)。
【0007】
この表示システムでは、車載装置の表示部が、カメラで撮像された移動体を含む道路の交通状況の画像だけでなく、ドライバが理解可能な表示形式でそのカメラの位置及び向きを車両内の画面に表示するので、画面に表示された画像がどこの画像であるかや、画像に写っている交通状況の中で何が危険なのかを、車両内のドライバが判断し易くなる。
従って、画像に移動体が写っている場合に、自車両のドライバがその移動体との相対関係を容易に把握することができ、ドライバに対する安全運転の支援をより確実に行うことができる。
【0008】
なお、本発明において、カメラの向きとは、そのカメラが何処を撮像しているかをドライバが実質的に理解できる程度の方向性のことを意味し、例えば、カメラの撮像方向(レンズの光軸方向)やカメラの撮像領域(画角範囲内の領域)を車両内の画面に表示することでカメラの向きを表現することができる。また、カメラの向きは、そのカメラの撮像対象となるエリアを地図上に直接的に提示することによって表現することもできる。
【0009】
本発明の表示システムにおいて、前記画像送信装置が送信する送信情報には、前記車両から見て前記道路の交通状況から想定される事故原因となり得る危険性の種類を特定した警告情報を含ませることができ、前記車載装置が、前記受信部で受信した前記警告情報を前記車両のドライバに認知可能に出力する出力手段を備えているものを採用することが好ましい(請求項2)。
上記警告情報は、カメラの設置位置等によって異なる、交通状況の撮像目的と対応して特定されるものであり、例えば、右直事故注意、出会い頭注意、カーブ死角注意、飛び出し死角注意、道路進入時死角注意などの情報よりなる。
【0010】
この場合、車載装置の出力手段が上記警告情報をドライバに認知可能に出力するので、カメラの位置及び撮像方向が表示部の画面に表示されることと相まって、画面に表示される画像の危険性をドライバがより確実に察知することができ、ドライバに対する安全運転の支援が更に確実になる。
なお、上記出力手段による出力は、ヘッドアップディスプレイ等の表示部を用いた文字による警告情報の表示や、スピーカ等の音声手段によって警告情報を音声で報知することによって行うことができる。
【0011】
本発明の表示システムにおいて、前記画像送信装置は、前記移動体の認識手段を有し、この認識手段が当該移動体を認識したときに前記画像と前記送信情報を送信するものであることが好ましい(請求項3)。
この場合、移動体が認識された場合にだけ画像と送信情報が送信され、事故原因となり得る移動体がない場合にはそれらの情報が送信されない。このため、危険でないのに車載装置に画像等を送信し続けることに伴う、ドライバの混乱を未然に防止することができる。
【0012】
また、本発明の表示システムにおいて、前記移動体又は前記車載装置を搭載した前記車両若しくはこれらの双方が前記カメラに接近していることを検出する接近感知器を更に備えていることが好ましい(請求項4)。
この場合、前記画像送信装置が、前記接近感知器が前記移動体又は前記車両若しくはこれらの双方を検出したときに前記画像と前記送信情報を送信するようにすれば(請求項4)、移動体や車両が検出された場合にだけ画像と送信情報が送信され、事故原因となり得る移動体がない場合にはそれらの情報が送信されない。このため、危険でないのに車載装置に画像等を送信し続けることに伴う、ドライバの混乱を未然に防止することができる。
【0013】
更に、本発明の表示システムにおいて、前記画像送信装置として、前記車載装置からの送信要求を受信した場合に前記画像と前記送信情報を送信するものを採用することもできる(請求項5)。
この場合、車載装置からの送信要求に基づいて画像送信装置が画像と送信情報を送信するので、その送信要求の有無に関係なく交通状況の撮像画像を常時送信し続ける場合に比べて、路車間通信や車々間通信におけるデータ送信量を低減することができる。
【0014】
また、本発明の表示システムにおいて、前記車載装置が、前記カメラの位置及び向きに基づいて道路地図上で見た場合の位置及び向きデータを演算する演算部を有する場合には、前記表示部は、前記演算された位置及び向きデータを前記道路地図の道路図形に重ねて表示する車載ディスプレイより構成することができる(請求項6)。
この場合、車両内のドライバは、道路地図の道路図形に重ねて表示されたカメラの位置及び向きデータにより、実際のカメラの位置及び向きを把握することができる。
【0015】
更に、本発明の表示システムにおいて、前記車載装置が、前記カメラの位置及び向きに基づいて前記車両に搭乗しているドライバから見た場合の位置及び向きデータを演算する演算部を有する場合には、前記表示部は、前記演算された位置及び向きデータを前記車両のフロントガラス面に表示するヘッドアップディスプレイより構成することができる(請求項7)。
この場合、車両内のドライバは、フロントガラス面に表示されたカメラの位置及び向きデータにより、実際のカメラの位置及び向きを把握することができる。
【0016】
本発明の車載装置は、移動体を車両内の画面に表示するための車載装置であって、前記移動体を含む道路の交通状況を撮像して得られた画像と、前記カメラの位置及び向きを含む送信情報を受信する受信部と、この受信部で受信した前記画像と前記カメラの位置及び
向きを当該車両内の前記画面に同時に表示する表示部とを有するものである(請求項8)。
この車載装置を使えば、当該車載装置の表示部が、カメラで撮像された移動体を含む道路の交通状況の画像だけでなく、ドライバが理解可能な表示形式でそのカメラの位置及び向きを車両内の画面に表示するので、画面に表示された画像がどこの画像であるかや、画像に写っている交通状況の中で何が危険なのかを、車両内のドライバが判断し易くなる。
【0017】
本発明の移動体の表示方法は、前記移動体を含む道路の交通状況をカメラで撮像し、前記カメラで撮像された画像と、前記カメラの位置及び向きを含む送信情報を前記車両の車載装置に送信し、前記車載装置が受信した前記画像と前記カメラの位置及び向きを当該車両内の前記画面に同時に表示する方法である(請求項9)。
この方法によって、カメラで撮像された移動体を含む道路の交通状況の画像だけでなく、そのカメラの位置及び向きを車両内の画面に表示することができる。このため、画面に表示された画像がどこの画像であるかや、画像に写っている交通状況の中で何が危険なのかを、車両内のドライバが判断し易くなる。従って、出合い頭衝突等の事故をより確実に防止することができる。
【0018】
本発明は、移動体を含む道路の交通状況の画像と、カメラの位置及び向きを車両内の画面に同時に表示するものであるから、前記画像送信装置としては、交通状況の画像を取り込んで送信する機能と、演算又は記憶されたカメラの位置及び向きを含む送信情報を送信する機能を備えていれば足りる。
しかるに、この画像送信装置において、カメラの位置及び向きに基づいて道路地図上で見た場合の位置及び向きデータを演算するとともに、その演算された位置及び向きデータを道路地図の道路図形に重ねた合成図形を作成してから、交通状況の画像と合成画像を含む送信情報を車載装置に送信するシステム構成とすることもできる。
この場合には、上記データの演算と合成図形の作成を車載装置で行う必要がなくなるので、車載装置の演算負荷が小さくなって当該装置をより廉価にできるという利点がある。
【発明の効果】
【0019】
以上の通り、本発明によれば、自車両から死角となる移動体の画像だけでなく、その画像を撮像したカメラの位置と向きが表示されるので、ドライバは違和感や錯覚なく移動体を認知することが可能となる。この結果、出合い頭衝突(交差側車両との衝突)や右直(右折時の死角となる直進バイク等との衝突)の事故などがより確実に防止ないし抑制され、安全運転の支援がより確実になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜図4は、移動体の画像を自車両のディスプレイに表示する本発明の実施形態に係る表示システムの全体構成を示している。
〔システムの概略構成〕
図1〜図4に示すシステム1のうち、図1に示す表示システム1は、いわゆる右直事故防止用のものであり、自車線2と対向車線3を有する対向二車線の道路4の交差点5を右折しようとする自車両6のドライバに、対向車線3を走行する移動体7(特に、右直事故の原因となる直進バイク等の二輪車7B)を表示するものである。
【0021】
従って、この表示システム1は、対向車線3における交差点5の手前を走行する移動体7を撮像すべく交差点5の近傍に設置されたカメラ10と、このカメラ10による撮像画像(静止画及び動画のいずれでもよい。)を路車間通信にて送信する画像送信装置11と、この画像送信装置11からの送信データを受けて自車両6のドライバに撮像画像を表示する車載装置12とから構成されている。
なお、図1では、自車線2と対向車線3とを有する対向二車線の道路4を例示しているが、対向一車線や対向三車線以上の道路4であってもよい。
【0022】
図1の例では、カメラ10は、交差点5の対向車線3の歩道部分に立設した電柱13の上部に設置されている。なお、このカメラ10の設置場所は、電柱13の他に、陸橋、歩道橋及びビル等の地上設備上の任意の場所でよい。また、カメラ10をワイヤに吊り下げ状に設けて真上から撮像するようにしてもよい。
このカメラ10の設置位置は、対向車線3を交差点5に向かって走行する対向車両7A,7Bの前面や左側面部分を撮像できる位置である。従って、図1に示す電柱13だけでなく、この電柱13の交差道路14側に位置する地上設備15に設置することもできる。
【0023】
図2に示す表示システム1は、交差点5での出合い頭事故防止用のものであり、自車線2を交差点5に向かって走行する自車両6のドライバに、交差道路14を交差点5に向かって走行する移動体7(特に、トラックや乗用車等の車両7A)を表示するものである。
従って、この表示システム1は、交差道路14を走行する移動体7を撮像すべく交差点5の近傍に設置されたカメラ10と、このカメラ10による撮像画像(静止画及び動画のいずれでもよい。)を路車間通信にて送信する画像送信装置11と、この画像送信装置11からの送信データを受けて自車両6のドライバに撮像画像を表示する車載装置12とから構成されている。
【0024】
上記カメラ10の設置位置は、交差道路14を交差点5に向かって走行する車両7Aを前方から撮像できる位置である。
従って、図2の表示システム1においても、カメラ10を、電柱13だけでなく、交差点5に近接するその他の地上設備に設置することもできる。例えば、電柱13の他に、陸橋、歩道橋及びビル等の地上設備上の任意の場所でよい。また、カメラ10をワイヤに吊り下げ状に設けて真上から撮像するようにしてもよい。
【0025】
図3に示す表示システム1は、カーブ事故防止用のものであり、自車線2のカーブ部分8に向かって走行する自車両6のドライバに、そのカーブ部分8に向かって対向車線3を走行する移動体7(特に、トラックや乗用車等の車両7A)を表示するものである。
従って、この表示システム1は、カーブ部分8に向かって対向車線3を走行する移動体7を撮像すべく当該カーブ部分8に設置されたカメラ10と、このカメラ10による撮像画像(静止画及び動画のいずれでもよい。)を路車間通信にて送信する画像送信装置11と、この画像送信装置11からの送信データを受けて自車両6のドライバに撮像画像を表示する車載装置12とから構成されている。
【0026】
上記カメラ10の設置位置は、道路4のカーブ部分8に向かって走行する車両7Aを前方から撮像できる位置である。
従って、図3の表示システム1においても、カメラ10を、電柱13だけでなく、カーブ部分8に近接するその他の地上設備に設置することもできる。例えば、電柱13の他に、陸橋、歩道橋及びビル等の地上設備上の任意の場所でよい。また、カメラ10をワイヤに吊り下げ状に設けて真上から撮像するようにしてもよい。
【0027】
図4に示す表示システム1は、飛び出し事故防止用のものであり、自車線2を走行する自車両6のドライバに、自車両6の前方を走行又は停止している前方車両9によって死角となる移動体7(特に、前方車両9に隠れた歩行者7Cや自転車7D)を表示するものである。
従って、この表示システム1は、前方車両9に搭載されたカメラ10と、このカメラ10による撮像画像(静止画及び動画のいずれでもよい。)を車々間通信にて送信する画像送信装置11と、この画像送信装置11からの送信データを受けて自車両6のドライバに撮像画像を表示する車載装置12とから構成されている。
【0028】
図5は、本実施形態の表示システム1の機能ブロック図である。
〔カメラ〕
本実施形態の表示システム1を構成する各装置10,11,12のうち、前記カメラ10は、移動体7を含む道路の交通状況を撮像するものであり、その交通状況の静止画像を繰り返し撮像するデジタルカメラや、その交通状況の映像(動画)を撮像するデジタルビデオカメラよりなる。なお、このカメラ10は、単眼カメラ、ステレオカメラの何れを用いてもよい。
【0029】
〔画像送信装置〕
画像送信装置11は、カメラ10で撮像された画像と、そのカメラ10の位置及び撮像方向を車載装置12に送信するものであり、カメラ10と同じ筐体に収納されており、カメラ10とともに電柱13等の地上設備や前方車両9に設置されている。もっとも、路車間通信の場合(図1〜図3)、画像送信装置11は、カメラ10とは別体でかつ他の場所に設置してもよく、この場合にはカメラ10と通信回線で結ばれる。
この画像送信装置11は、カメラ10からの画像から移動体7の認識処理等を行う処理コンピュータ17と、この処理コンピュータ17からの指令に基づいて路車間通信又は車々間通信を行う通信装置18とを備えている。以下、この画像送信装置11の処理コンピュータ17が行う処理内容を説明する。
【0030】
〔処理コンピュータの処理内容〕
(1) 画像の取り込み及び送信
処理コンピュータ17は、記憶領域にフレームバッファを備えており、カメラ10で撮像された交通状況の画像を常時このバッファに取り込んでいる。
処理コンピュータ17は、後述する移動体の認識処理を行い、この認識処理において所望の移動体7の存在を認識した場合には、フレームバッファに取り込まれた画像データをリアルタイムで通信装置18に送信させる。
【0031】
(2) カメラの位置及び撮像方向
また、処理コンピュータ17は、カメラ10の位置及び撮像方向を常時把握している。図1〜図3に示す路車間通信による表示システム1の場合には、カメラ10の位置及び撮像方向は処理コンピュータ17の記憶領域に予め記憶させてある。このカメラ10の位置は、予め装置に定数設定しておくか、GPS等の位置検出機能によって得ることができ、カメラ10の経緯度の絶対位置データから構成される。また、カメラの撮像方向は、予め装置に定数設定しておくか、画像認識で道路等を認識し、道路地図等と比較して自動的に求めることができ、カメラ10の撮像方向のベクトルデータから構成される。
他方、図4に示す車々間通信の場合には、カメラ10は前方車両9に搭載されているので、処理コンピュータ17は、時々刻々と変化する当該カメラ10の位置及び撮像方向を前方車両9のGPS機能等によって取得し、通信装置18に送信させる。
【0032】
なお、カメラ10の撮像方向は、通常、カメラレンズの光軸方向によって定義されるが、所望の交通状況の画像が得られる限りにおいて、その光軸方向と厳密に一致している必要はない。
以上のようにカメラ10の位置(座標)とその撮像方向(ベクトル)が特定できれば、自車両6の位置検出機能等によって当該自車両6の位置を特定することにより、自車両6から見たカメラ10の相対位置と撮像の相対方向を算出でき、自車両6の車載装置12のディスプレイ(表示部)に移動体7を表示することができる。
【0033】
(3) 特徴点による移動体の認識
図8は、特徴点及び特徴線による移動体の認識処理の方法を示す図である。
ここで、カメラ10としてステレオカメラが使用されているとすると、左右の画像の車両の特徴点や特徴線を対応付けし、その3次元位置を算出することができる。この場合、例えば、図8(a)に示すような移動体Cの実画像から、図8(b)に示すような特徴点と特徴線とからなる認識データが得られる。
このため、上記認識データと別途用意された車種のテンプレートとを比較すること等により、抽出された車両が乗用車やトラック等であるか、自転車やバイク等の二輪車であるか、或いは歩行者であるかを判定することができる。
【0034】
図8に示す例では、特徴点a〜iは、移動体Cの各角部に対応付けられた特徴点であり、線分ae、線分cg、線分di及び線分eh等は、移動体Cの外形線に対応付けられた特徴線であり、これにより、当該移動体Cの3次元位置を特定することができる。なお、この特徴点は、移動体Cを代表する点であり、その位置座標としては、道路4の進行方向、これと垂直に交差する水平方向である横断方向及び高さ方向の3次元であるが、道路4の進行方向だけでもよいし、道路の進行方向と横断方向だけであってもよい。
【0035】
なお、移動体Cの特徴点は使用せず、車両の画像上の大きさから車種を求める簡単な方法や、或いは、これとテンプレートマッチングの結果から移動体Cの車種を求める方法も考えられる。
これらの場合には、例えば、移動体Cの画像の地面に近い下方の切り出し部分の適当な左端点と右端点(図8(b)における点a及び点h)を特徴点として、道路4の進行方向と横断方向の位置座標を求めればよい。
【0036】
(4) 撮像画像及び送信情報の送信
上記の認識処理により、交通状況の画像中に車両7A等よりなる移動体7の存在が判明すると、処理コンピュータ17は、前記カメラ10で得られた撮像画像と、そのカメラ10の位置及び撮像方向とを、路車間通信又は車々間通信によって通信装置18に送信させる。
また、処理コンピュータ17は、自車両6から見て道路4の交通状況から想定される、事故原因となり得る危険性の種類を特定した警告情報を記憶しており、この警告情報を前記送信情報に含めて通信装置18に送信させる。
【0037】
処理コンピュータ17が記憶している警告情報は、カメラ10の設置位置や撮像方向によって異なる、カメラ10による交通状況の撮像目的と対応して特定されるものであり、図1に示す右直事故防止用の表示システム1の場合には、例えば「右直事故注意」という文字情報で構成される。
また、上記警告情報は、図2に示す出合い頭事故防止用の表示システム1の場合には、例えば「出会い頭注意」や「道路進入時死角注意」という文字情報で構成され、図3に示すカーブ事故防止用の表示システム1の場合には、例えば「カーブ死角注意」という文字情報で構成され、図4に示す飛び出し事故防止用の表示システム1の場合には、例えば「飛び出し死角注意」という文字情報で構成される。
【0038】
〔情報通信方式〕
図9は、画像送信装置11による路車間通信の場合の通信方式を示す概念図である。
図9(a)に示す通信方式は、交差点5の近辺を感知エリアとする無線LAN等の中域の無線通信方式を示しており、この場合には、画像送信装置11の通信装置18から、交差点5を含む一定のエリアに通信電波19が送信される。
もっとも、かかる無線通信方式を採用する場合には、自車線2から交差点5に進入する自車両6が受信した送信情報が、どの画像送信装置11から送信されたものであるかを識別する機能を車載装置12が有している必要がある。
【0039】
他方、図9(b)に示す通信方式は、DSRC等の狭域無線や、光ビーコン等のスポット通信方式といった狭域無線通信方式を示している。
この場合、DSRC等の狭域通信装置20は、自車線2における交差点5の手前に走行方向に沿って複数台並設されており、これら複数の狭域通信装置20を介して、移動体7の画像を含む送信情報が送信される。
なお、この場合には、画像送信装置11と狭域通信装置20とを例えば有線によって通信可能に接続する必要がある。
【0040】
〔車載装置〕
図5に戻り、車載装置12は、画像送信装置11の通信装置18から受信した移動体7の画像をドライバに表示するとともに、送信情報に含まれるカメラ10の位置と撮像方向を視認可能に架空に表示することにより、当該車載装置12が搭載された自車両6のドライバに対して移動体7の存在を報知するものである。
この車載装置12は、画像処理機能やマンマシン機能を持った車載コンピュータ26と、このコンピュータ26によって駆動制御される時計装置27、位置方位検出装置28、通信装置29、ディスプレイ30及びスピーカ31等から構成されている。
【0041】
上記通信装置29は、画像送信装置11ら送信されたデータ(送信情報)を受信するものであり、復調方式や復号化方式は画像送信装置11の通信装置18と対応している。時計装置27は、例えば現在時刻が正確に得られる電波時計からなるが、これに限られない。
画像送信装置11から時刻データが送られてくるのであれば、この時刻データを参照してもよいし、この他GPS、放送媒体、公衆通信媒体などから時刻が分かるのであれば、これを参照してもよい。
【0042】
位置方位検出装置28は、当該車両の位置と方位を検出するための装置である。なお、車載装置12の位置検出は、例えばGPSを利用することができる。GPSを利用する以外にも、車両が道路上を走行することを前提としたマップマッチング、車載搭載センサ等、車載ナビゲーションで使用される諸技術を利用してもよい。
また、直前で交信した路側装置、例えば光ビーコンから絶対位置を取得し、これと自車両の距離計を利用して、現在位置を検出してもよい。なお位置の表現は、経緯度による絶対的表現と、交差点5からの距離のような相対的表現があり、どちらを利用してもよい。
【0043】
更に、位置方位検出装置28は、車両の位置とともに車両の方位を検出する。この車両の方位は、地磁気方位センサ、ジャイロセンサなど車載ナビゲーションで使用される技術を利用可能である。また、現在の位置と直近に検出した位置との差分をとることで方位を検出してもよい。
ディスプレイ30は、車載のナビゲーション装置やテレビジョン装置の画像表示部を構成する車載ディスプレイ30A、或いは、自車両6のフロントガラス面に図形を架空表示するフロントディスプレイ(或いは、ヘッドアップディスプレイ)30Bよりなる。このディスプレイ30は、移動体7の画像とその撮像位置及び撮像方向をドライバに視認可能に表示する表示手段であり、この表示によって移動体7の存在をドライバに報知する報知手段として機能する。
【0044】
なお、上記ヘッドアップディスプレイ30Bは画像投影装置を用いて、運転席の近くのガラスに図形等の画像を表示するものである。車両のフロントガラスに図形等の画像を表示する技術は公知である(例えば、特開平8-108773号公報参照)。
スピーカ31は、画像送信装置11に含まれる警告情報を音声にてドライバにアナウンスするためのものである。
車載コンピュータ26は、画像送信装置11から送信されてくる警告情報に基づいて、必要に応じて移動体7の存在をドライバに気付かせるために、その警告情報のディスプレイ30による画面表示用データと、スピーカ31による音声出力用のデータを作成する。
【0045】
以下、この車載装置12の車載コンピュータ26が行う処理内容を説明する。
〔車載コンピュータの処理内容〕
(1) 自車両の位置評定と移動体の表示開始タイミング
カメラ10の位置をディスプレイ30に表示する場合、自車両6の位置との相対位置が判明している必要がある。
そこで、車載コンピュータ26は、画像送信装置11から送信されるカメラ10の位置が経緯度等の絶対位置である場合には、自車両6の位置を表示時点において評定している。すなわち、自車両6の車載コンピュータ26は、前記位置方位検出装置28により、常時、絶対位置の評定を別途正確に行っている。
【0046】
一方、車載コンピュータ26は、無線LANのような中域無線通信の場合には、交差点5の直前や右折位置等の、予め定められた位置に到着したときに、ディスプレイ30による移動体7の画像表示を開始させる。スポット通信による場合は、データを受信したときに移動体7の表示を開始してもよいし、予め定められた位置に到着したときにその表示を開始してもよい。
なお、位置方位検出装置28による自車両6の位置検出の精度が悪い場合でも、前記スポット通信による場合には、二輪車7Bの位置としてスポット通信位置からの相対位置で得ることができれば、その時点で表示を開始すればよい。
【0047】
(2) カメラの位置及び撮像方向の表示用データの作成
また、自車両6の車載コンピュータ26は、自車両6の位置と、通信装置29で受信したカメラ10の位置及び撮像方向とに基づいて、その位置と方向をディスプレイ30に表示する場合の位置及び方向データを演算する。
例えば、ディスプレイ30がヘッドアップディスプレイ30Bである場合には、車載コンピュータ26は、図10(c)に示すように、フロントガラス面32におけるカメラ10の表示位置(w’,h’)と、カメラ10の撮像方向の表示ベクトルα’を以下の通り算出する。
【0048】
ここで、図10(a)に示すように、ドライバの目の地上からの高さをh、フロントガラス面(表示面)までの距離をx、前方の二輪車までの距離をyとすると、カメラ10の表示面の高さ(縦方向の位置)h’は、h’=(y−x)・h/y となる。y≫xであるため、h’=hとしてもよい。なお、hは、ドライバにより変わるため、システムとしては平均的な数値を入れておき、使用時にマンマシンで容易に変更できるようにしておけばよい。
また、自車両6が道路方向に進行している場合には、図10(b)に示すように、その自車両6の位置とカメラ10の位置及び道路方位から、カメラ10の当該車両位置からの横方向の位置wと、フロントガラス面での横方向の位置w’を計算することができる。車両に搭載されたセンサ等で車両の進行方位が検出できる場合には、これを用いてもよい。
【0049】
更に、車載コンピュータ26は、撮像方向のベクトルαの始端点の座標(x,y)と同様に、当該ベクトルαの終端点に関しても上記した座標変換の演算を行い、その始端点と終端点の表示位置の座標から、カメラ10の撮像方向をフロントガラス面32に表示する場合の表示ベクトルα’を演算する。
他方、ディスプレイ30が車載ディスプレイ30Aである場合には、車載コンピュータ26は、画像送信装置11から受信したカメラ10の位置及び撮像方向を、ディスプレイ30Aに表示される道路地図の座標系に変換し、その位置及び方向データを演算する。
【0050】
〔ディスプレイによる表示例〕
(1) ヘッドアップディスプレイを利用する場合
図11は、右直事故防止用の表示システム(図1)の場合のヘッドアップディスプレイを利用した表示例を示している。
この場合、車載コンピュータ26は、カメラ10で得られた撮像画像34を車載ディスプレイ30Aに表示するとともに、パターン化されたカメラ位置表示35と撮像方向表示36を、ヘッドアップディスプレイ30Bを構成するフロントガラス面32の所定の表示位置に表示する。
【0051】
このように、自車両6に搭乗しているドライバは、カメラ10の位置と撮像方向をフロントガラス面32に表示された仮想表示35,36によって把握できるので、カメラ10の撮像画像34がどこの画像であるかや、撮像画像34に写っている交通状況の中で何が危険なのかを判断し易くなり、右直事故の防止がより確実となる。
また、図11の表示例では、車載コンピュータ26により、カメラ10に関する仮想表示35,36だけでなく、ドライバに対する警告情報(この場合は、「右直事故注意」よりなる注意喚起表示37)がフロントガラス面32に表示される。更に、車載コンピュータ26は、同時に、上記注意喚起文をスピーカ31から音声出力させる。なお、図11に仮想線で示すように、カメラ10の撮像画像34についても、フロントガラス面32の任意位置に表示させるようにしてもよい。
【0052】
図12は、出合い頭事故防止用の表示システム(図2)の場合のヘッドアップディスプレイを利用した表示例を示し、図13は、カーブ事故防止用の表示システム(図3)の場合のヘッドアップディスプレイを利用した表示例を示し、図14は、飛び出し事故防止用の表示システム(図4)の場合のヘッドアップディスプレイを利用した表示例を示している。
これら図12〜図14に示す表示例は、図11の表示例と撮像目的が異なるだけで、構成及び機能は図11の表示例と同様である。従って、図12〜図14に同じ符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0053】
(2) 車載ディスプレイを利用する場合
図15は、右直事故防止用の表示システム(図1)の場合の車載ディスプレイを利用した表示例を示している。
この場合、車載コンピュータ26は、カメラ10で得られた撮像画像34を車載ディスプレイ30Aの左側部分に表示するとともに、パターン化されたカメラ位置表示35と撮像方向表示36を、車載ディスプレイ30Aの道路地図上に表示する。
【0054】
この場合も、自車両6に搭乗しているドライバは、カメラ10の位置と撮像方向を撮像画像34の隣の仮想表示35,36によって把握できるので、カメラ10の撮像画像34がどこの画像であるかや、撮像画像34に写っている交通状況の中で何が危険なのかを判断し易くなり、右直事故の防止がより確実となる。
なお、図15に示す表示例では、自車両6をパターン化した車両表示38も併せて道路地図上に表示されており、これによって自車両6とカメラ10の相対位置をドライバが把握し易くなっている。
【0055】
図16は、出合い頭事故防止用の表示システム(図2)の場合の車載ディスプレイを利用した表示例を示し、図17は、カーブ事故防止用の表示システム(図3)の場合の車載ディスプレイを利用した表示例を示し、図18は、飛び出し事故防止用の表示システム(図4)の場合の車載ディスプレイを利用した表示例を示している。
これら図16〜図18に示す表示例は、図15の表示例と撮像目的が異なるだけで、構成及び機能は図12の表示例と同様である。従って、図16〜図18に同じ符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0056】
次に、図6及び図7を参照しつつ、画像送信装置11の処理コンピュータ17と、車載装置12の車載コンピュータ26とで行われる周期的な処理フローについて説明する。
〔処理コンピュータの周期的フロー〕
画像送信装置11の処理コンピュータ17は、図6に示す処理フローを所定の処理周期で行う。
図6に示すように、まず、処理コンピュータ17は、カメラ10で撮像された交通状況の画像を取り込み(図6のS1)、そこに写っている被写体について前記した特徴点処理によって車両等の移動体7を認識する(図6のS2)。
【0057】
次に、処理コンピュータ17は、移動体7を認識すると(図6のS2でYes)、カメラ10による撮像画像と、カメラの位置及び撮像方向と、撮像目的に対応した警告情報を通信装置18を介して送信する(図6のS3)。なお、処理コンピュータ17は、移動体7を認識しない場合には、それらの情報を送信せずに処理を終了する(図3のS2でNo)。
【0058】
〔車載コンピュータの周期的フロー〕
一方、車載装置12の車載コンピュータ26は、図7に示す処理フローを所定の処理周期で行う。
図7に示すように、まず、車載コンピュータ26は、画像送信装置11からの送信データに撮像画像があるかどうかをチェックし(図7のS1)、その画像がある場合には(図4のS2でYes)、自車両6の位置と、前記送信情報に含まれているカメラの位置及び撮像方向とから、自車両6から見たカメラ10の相対的な位置及び方向(前記表示位置(w’,h’)及び表示ベクトルα’)を演算し(図7のS3)、交通状況の撮像画像34とともにその相対的な位置及び方向をディスプレイ30に表示させる(図7のS4)。
【0059】
また、車載コンピュータ26は、撮像目的に対応する警告情報が画像送信装置11からの送信情報に含まれているか否かを判定し(図7のS5)、含まれている場合には、その警告情報をディスプレイ30又はスピーカ31若しくはこれらの双方を用いて、自車両6のドライバに認知可能に報知する(図7のS6)。
以上の通り、本実施形態に係る表示システム1によれば、カメラ10で撮像された移動体7を含む道路4の交通状況の画像だけでなく、そのカメラ10の位置及び撮像方向を自車両6内の画面に表示するので、自車両6のドライバがその移動体7との相対関係を容易に把握することができ、ドライバに対する安全運転の支援をより確実に行うことができる。
【0060】
また、本実施形態の表示システム1では、カメラ10での撮像目的に対応する警告情報が車載装置12のディスプレイ30やスピーカ31を通じてドライバに認知可能に出力されるので、カメラ10の位置及び撮像方向がディスプレイ30の画面に表示されることと相まって、画面に表示される画像の危険性をドライバがより確実に察知することができ、ドライバに対する安全運転の支援が更に確実になる。
【0061】
更に、本発明の表示システム1では、画像送信装置11が移動体7を認識したときに、カメラ10による撮像画像と送信情報を送信するので、事故原因となり得る移動体7がない場合にはそれらの情報が送信されない。このため、危険でないのに車載装置に画像等を送信し続けることに伴う、ドライバの混乱を未然に防止することができる。
また、この場合、交通状況の撮像画像を常時送信し続ける場合に比べて、路車間通信や車々間通信におけるデータ送信量を低減することができるという利点もある。
【0062】
図19は、本発明の他の実施形態に係る表示システム1を示している。
本実施形態の表示システム1は、カメラ10、画像送信装置11及び車載装置12に加えて、移動体7がカメラ10に接近していることを検出する第一接近感知器40と、車載装置12を搭載した自車両5がカメラ10に接近していることを検出する第二接近感知器41とを備えている。
これらの感知器40,41はいずれも画像送信装置11の処理コンピュータ17と有線によって通信可能に接続されており、その処理コンピュータ17は、これらの感知器40,41の双方又はいずれか一方が移動体7や自車両6を検出したときに、撮像画像及び送信情報を送信するようになっている。
【0063】
従って、移動体7や自車両6が検出された場合にだけ、画像送信装置11から画像と送信情報が送信され、事故原因となり得る移動体7がない場合にはそれらの情報が送信されない。このため、危険でないのに車載装置12に画像等を送信し続けることに伴う、ドライバの混乱を未然に防止することができる。また、本実施形態においても、交通状況の撮像画像を常時送信し続ける場合に比べて、路車間通信や車々間通信におけるデータ送信量を低減することができるという利点もある。
なお、図19の例では、移動体7検出用と自車両6検出用の二種類の接近感知器40,41を道路に設置しているが、これらのいずれか一つだけを設けることにしてもよい。
【0064】
以上説明した実施形態では、カメラ10の向きをドライバに理解させるためにカメラ10の撮像方向をディスプレイ30に表示しているが、カメラ10の向きはその他の表現形式でもドライバに提示することができる。図20〜図22は、カメラ20の向きの他の表現形式をそれぞれ示している。
このうち、図20は、車載ディスプレイ30Aにカメラ10の撮像領域を表示させる場合の表示例を示しており、この場合の撮像領域表示43は、カメラ位置表示35からカメラ10の画角に相当する開き角度で広がる扇形形状となっている。
【0065】
また、図21は、ヘッドアップディスプレイ30Bにカメラ10の撮像領域を表示させる場合の表示例を示しており、この場合の撮像領域表示43は、カメラ位置表示35からカメラ10の画角に相当する開き角度で広がる円錐形状となっている。
更に、カメラ10の向きは、そのカメラ10の撮像対象であるエリアを地図上に直接的に提示することによって表現することもできる。
例えば、図22は、VICSを利用した簡易型の道路図形44に対して、カメラ10の撮像対象をそのまま表示した表示例を示している。
【0066】
図22において、道路図形44に含まれている各道路のうち、カメラ10の撮像対象となっている道路部分には着色や網掛け等によって表現された撮像対象表示45が施されており、この撮像対象表示45をカメラ位置表示35とともに道路図形44に描くことにより、カメラ10の向きをドライバに提示するようにしている。
【0067】
本発明は上記した各実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記各実施形態において、画像送信装置11は、必ずしも1台ではなく複数存在してもよい。また、同じ道路にカメラ10を複数台設置し、複数の撮像データを利用することにより、移動体7の認識精度を高めてもよい。
また、本発明の表示システム1を適用できるその他の見通しの悪い場所としては、駐車場から幹線道路にでる場所は、逆に幹線道路から駐車場に入る場所などがある。
【0068】
更に、画像送信装置11としては、車載装置12からの送信要求を受信した場合に画像と送信情報を送信するものを採用することにしてもよい。この場合には、送信要求の有無に関係なく交通状況の撮像画像を常時送信し続ける場合に比べて、路車間通信や車々間通信におけるデータ送信量を低減できるという利点がある。
また、上記した各実施形態では、カメラ10の位置及び向きデータの演算や道路図形への合成はすべて車載装置12において行っているが、これを画像送信装置11に行わせるシステム構成とすることもできる。
【0069】
すなわち、このシステム構成の画像送信装置11は、カメラ10の位置及び向きに基づいて道路地図上で見た場合の位置及び向きデータを演算するとともに、その演算された位置及び向きデータを道路地図の道路図形に重ねた合成図形を作成してから、交通状況の画像と合成画像を含む送信情報を車載装置12に送信することになる。
従って、この場合には、上記データの演算と合成図形の作成を車載装置12で行う必要がなくなるので、車載装置12の演算負荷が小さくなって当該装置をより廉価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】右直事故防止用の表示システムの全体構成を示す斜視図である。
【図2】出合い頭事故防止用の表示システムの全体構成を示す斜視図である。
【図3】カーブ事故防止用の表示システムの全体構成を示す斜視図である。
【図4】飛び出し事故防止用の表示システムの全体構成を示す斜視図である。
【図5】上記表示システムの機能ブロック図である。
【図6】画像送信装置の処理フローを示すフローチャートである。
【図7】車載装置の処理フローを示すフローチャートである。
【図8】特徴点及び特徴線による移動体の認識方法を示す図である。
【図9】路車間通信の通信方法を示す概念図である
【図10】(a)はフロントガラス面でのカメラの高さ位置を示す図であり、(b)はフロントガラス面でのカメラの横方向位置を示す図であり、(c)はカメラが表示されたフロントガラス面の正面図である。
【図11】右直事故防止用の表示システムの場合の、フロントガラス面に対する表示例を示す図である。
【図12】出合い頭事故防止用の表示システムの場合の、フロントガラス面に対する表示例を示す図である。
【図13】カーブ事故防止用の表示システムの場合の、フロントガラス面に対する表示例を示す図である。
【図14】飛び出し事故防止用の表示システムの場合の、フロントガラス面に対する表示例を示す図である。
【図15】右直事故防止用の表示システムの場合の、車載ディスプレイに対する表示例を示す図である。
【図16】出合い頭事故防止用の表示システムの場合の、車載ディスプレイに対する表示例を示す図である。
【図17】カーブ事故防止用の表示システムの場合の、車載ディスプレイに対する表示例を示す図である。
【図18】飛び出し事故防止用の表示システムの場合の、車載ディスプレイに対する表示例を示す図である。
【図19】他の実施形態に係る表示システムの全体構成を示す斜視図である。
【図20】カメラの撮像領域を表示させる場合の、車載ディスプレイに対する表示例を示す図である。
【図21】カメラの撮像領域を表示させる場合の、ヘッドアップディスプレイに対する表示例を示す図である。
【図22】カメラの撮像対象を表示させる場合の、車載ディスプレイに対する表示例を示す図である。
【0071】
1 表示システム
2 自車線
3 対向車線
4 道路
5 交差点
6 自車両
7 移動体
8 カーブ部分
9 前方車両
10 カメラ
11 画像送信装置
12 車載装置
17 処理コンピュータ(認識手段)
18 通信装置(送信手段)
26 車載コンピュータ(演算部)
28 位置方位検出装置
29 通信装置(受信部)
30 ディスプレイ(表示部、出力手段)
30A 車載ディスプレイ
30B ヘッドアップディスプレイ
31 スピーカ(出力手段)
32 フロントガラス面
40 第一接近感知器
41 第二接近感知器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を車両内の画面に表示するための移動体の表示システムであって、
前記移動体を含む道路の交通状況を撮像するカメラと、
前記カメラで撮像された画像と、前記カメラの位置及び向きを含む送信情報を送信する画像送信装置と、
前記車両に搭載された車載装置とを備え、
前記車載装置は、前記画像と前記カメラの位置及び向きを受信する受信部と、この受信部で受信した前記画像と前記カメラの位置及び向きを当該車両内の前記画面に同時に表示する表示部とを有すること特徴とする移動体の表示システム。
【請求項2】
前記画像送信装置が送信する送信情報には、前記車両から見て前記道路の交通状況から想定される事故原因となり得る危険性の種類を特定した警告情報が含まれており、
前記車載装置は、前記受信部で受信した前記警告情報を前記車両のドライバに認知可能に警告する出力手段を備えている請求項1に記載の移動体の表示システム。
【請求項3】
前記画像送信装置は、前記移動体の認識手段を有し、この認識手段が当該移動体を認識したときに前記画像と前記送信情報を送信する請求項1又は2に記載の移動体の表示システム。
【請求項4】
前記移動体又は前記車載装置を搭載した前記車両若しくはこれらの双方が前記カメラに接近していることを検出する接近感知器を更に備えており、
前記画像送信装置は、前記接近感知器が前記移動体又は前記車両若しくはこれらの双方を検出したときに前記画像と前記送信情報を送信する請求項1又は2に記載の移動体の表示システム。
【請求項5】
前記画像送信装置は、前記車載装置からの送信要求を受信した場合に前記画像と前記送信情報を送信する請求項1又は2に記載の移動体の表示システム。
【請求項6】
前記車載装置は、前記カメラの位置及び向きに基づいて道路地図上で見た場合の位置及び向きデータを演算する演算部を有し、
前記表示部は、前記演算された位置及び向きデータを前記道路地図の道路図形に重ねて表示する車載ディスプレイよりなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の移動体の表示システム。
【請求項7】
前記車載装置は、前記カメラの位置及び向きに基づいて前記車両に搭乗しているドライバから見た場合の位置及び向きデータを演算する演算部を有し、
前記表示部は、前記演算された位置及び向きデータを前記車両のフロントガラス面に表示するヘッドアップディスプレイよりなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の移動体の表示システム。
【請求項8】
移動体を車両内の画面に表示するための車載装置であって、
前記移動体を含む道路の交通状況を撮像して得られた画像と、前記カメラの位置及び向きを含む送信情報を受信する受信部と、
この受信部で受信した前記画像と前記カメラの位置及び向きを当該車両内の前記画面に同時に表示する表示部と
を有することを特徴とする車載装置。
【請求項9】
移動体を車両内の画面に表示するための移動体の表示方法であって、
前記移動体を含む道路の交通状況をカメラで撮像し、
前記カメラで撮像された画像と、前記カメラの位置及び向きを含む送信情報を前記車両の車載装置に送信し、
前記車載装置が受信した前記画像と前記カメラの位置及び向きを当該車両内の前記画面に同時に表示することを特徴とする移動体の表示方法。
【請求項10】
移動体を車両内の画面に表示させるために、前記移動体を含む画像を当該車両内に搭載された車載装置に送信する画像送信装置であって、
移動体を含む道路の交通状況を撮像するカメラで撮像された画像を取得する手段と、
前記カメラの位置及び向きに基づいて道路地図上で見た場合の位置及び向きデータを演算する演算手段と、
前記演算された位置及び向きデータを前記道路地図の道路図形に重ねた合成図形を作成する手段と、
前記画像と前記合成画像を含む送信情報を前記車載装置に送信する手段と
を有することを特徴とする画像送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−70955(P2008−70955A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246808(P2006−246808)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】