説明

移動装置、移動方法およびプログラム

【課題】周辺に存在する対象物の状態に応じた合図でロボットの行動を認識させる。
【解決手段】移動装置100は、移動方向を示す方向指示部106と、周辺に存在する対象物の状態を認識する認識部102と、認識部102により認識された対象物の状態に応じて、方向指示部106により示される方向を制御する制御部104と、を備え、認識部は102、対象物と移動装置100との距離または対象物の移動速度を認識し、認識部102により認識された対象物と移動装置100との距離が短いほど、制御部104は、移動装置100のより詳細な移動経路を示すように方向指示部106を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動装置、移動方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気的あるいは磁気的な作用を用いて人間の代わりに作業を行ったり、人間の作業を補助したりするロボットが開発されている。特に、人間の作業を補助するために動作するロボットは、安全性を確保するために、人間との接触を考慮して移動したり動作したりする必要がある。そこで、ロボットから視覚または聴覚を通じて認識することができるような合図を発して、ロボットの移動方向を周囲の人間に知らせることが行われている。
【0003】
しかし、ロボットが発する合図の意味するところが周囲の人間に認識されていなければ、ロボットの行動を予測したり推測したりしてロボットとの衝突を回避した安全な行動をとることができない。そこで、人間にロボットの挙動変化をより明確に認識させることにより、人間との接触を回避して移動することが可能な移動装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−254134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、高齢者や子供、成人など動きの異なる人々に同様な合図でロボットの行動を認識させているため、人によってロボットの行動の予測や推測が異なり、安全性を確保した行動をとれない場合があるという問題があった。例えば、高齢者は移動速度が遅かったり、瞬時の判断がし難かったりすることが多く、子供は不意を突く行動をとることが多いため、それぞれの人物の行動状況に対応するような合図でロボットの行動を認識させる必要があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、周辺に存在する対象物の状態に応じた合図によりロボットの行動を認識させることが可能な、新規かつ改良された移動装置、移動方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、移動方向を示す方向指示部と、周辺に存在する対象物の状態を認識する認識部と、前記認識部により認識された前記対象物の状態に応じて、前記方向指示部により示される方向を制御する制御部と、を備える、移動装置が提供される。
【0007】
また、移動速度を調整する速度調整部を備え、前記制御部は、前記認識部により認識された前記対象物の状態に応じて、前記速度調整部により調整される移動装置の移動速度を制御してもよい。
【0008】
また、前記認識部は、前記対象物と前記移動装置との距離または前記対象物の移動速度を認識してもよい。
【0009】
また、前記認識部により認識された前記対象物と前記移動装置との距離が短いほど、前記制御部は、前記移動装置のより詳細な移動経路を示すように前記方向指示部を制御してもよい。
【0010】
また、前記認識部により認識された前記対象物と前記移動装置との距離が長いほど、前記制御部は、前記移動装置のよりおおまかな移動経路を示すように前記方向指示部を制御してもよい。
【0011】
また、前記認識部により前記対象物の移動速度が所定の速度より速いと認識された場合に、前記制御部は、前記移動装置の移動速度を制限するように前記速度調整部を制御してもよい。
【0012】
また、前記移動装置が、顔の形状および胴体の形状を有するロボットである場合に、前記方向指示部は、前記顔の向きにより移動方向を示してもよい。
【0013】
また、前記方向指示部は、前記制御部による制御に応じて、前記移動装置が進行方向に移動する前に前記顔の向きを移動方向に向けてもよい。
【0014】
また、前記方向指示部は、前記制御部により前記詳細な移動経路を示すことを指示された場合に、前記移動装置の移動経路上の所定範囲内における移動方向に前記顔の向きを向けてもよい。
【0015】
また、前記方向指示部は、前記制御部により前記おおまかな移動経路を示すことを指示された場合に、前記移動装置の移動経路上の所定範囲外における移動方向に前記顔の向きを向けてもよい。
【0016】
また、前記方向指示部は、プロジェクタからの投影イメージにより移動方向を指示する場合に、前記方向指示部は、前記制御部による制御に応じて、移動方向を示す投影イメージを前記プロジェクタから照射してもよい。
【0017】
前記制御部は、前記認識部により認識された前記対象物の状態に応じて、前記プロジェクタにより照射する前記投影イメージを変更してもよい。
【0018】
前記方向指示部は、前記制御部により前記詳細な移動経路を示すことを指示された場合に、前記移動装置の移動経路を示す投影イメージを前記プロジェクタから照射し、前記制御部により前記おおまかな移動経路を示すことを指示された場合に、前記移動装置の移動方向を示す矢印の投影イメージを前記プロジェクタから照射してもよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、移動装置の周辺に存在する対象物を認識して、前記移動装置との距離または前記対象物の移動速度を認識するステップと、前記認識された対象物と前記移動装置との距離が短いほど、また、前記対象物の移動速度が所定の速度より速いほど、前記移動装置の移動方向を示す移動方向指示部により、前記移動装置のより詳細な移動経路を示し、前記移動装置の移動速度を制限するように制御するステップと、を含む、移動制御方法が提供される。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、移動方向を示す方向指示部と、周辺に存在する対象物の状態を認識する認識部と、前記認識部により認識された前記対象物の状態に応じて、前記方向指示部により示される方向を制御する制御部と、を備える、移動装置として機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、周辺に存在する対象物の状態に応じた合図でロボットの行動を認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の本実施形態にかかる移動装置の外観を説明する説明図である。
【図2】同実施形態にかかる移動装置に備えられたコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態にかかる移動装置の制御部の機能構成を示すブロック図である。
【図4】同実施形態にかかる移動方向指示方法について説明する説明図である。
【図5】同実施形態にかかる移動方向指示方法について説明する説明図である。
【図6】同実施形態にかかる移動方向指示方法について説明する説明図である。
【図7】同実施形態にかかる移動装置の動作の概要を説明する説明図である。
【図8】同実施形態にかかる移動装置の動作の概要を説明する説明図である。
【図9】同実施形態にかかる移動装置の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図10】同実施形態にかかる移動装置の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図11】同実施形態にかかる移動装置の動作の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
また、以下に示す順序に従って、当該「発明を実施するための形態」を説明する。
1.本実施形態の目的
2.移動装置のハードウェア構成
3.移動装置の機能構成
4.移動装置の動作の詳細
【0025】
<1.本実施形態の目的>
まず、本実施形態の目的について説明する。近年、電気的あるいは磁気的な作用を用いて人間の代わりに作業を行ったり、人間の作業を補助したりするロボットが開発されている。特に、人間の作業を補助するために動作するロボットは、安全性を確保するために、人間との接触を考慮して移動したり動作したりする必要がある。そこで、ロボットから視覚または聴覚を通じて認識することができるような合図を発して、ロボットの移動方向を周囲の人間に知らせることが行われている。
【0026】
しかし、ロボットが発する合図の意味するところが周囲の人間に認識されていなければ、ロボットの行動を予測したり推測したりしてロボットとの衝突を回避した安全な行動をとることができない。そこで、人間にロボットの挙動変化をより明確に認識させることにより、人間との接触を回避して移動することが可能な移動装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0027】
しかし、特許文献1では、高齢者や子供、成人など動きの異なる人々に同様な合図でロボットの行動を認識させているため、人によってロボットの行動の予測や推測が異なり、安全性を確保した行動をとれない場合があるという問題があった。例えば、高齢者は移動速度が遅かったり、瞬時の判断がし難かったりすることが多く、子供は不意を突く行動をとることが多いため、それぞれの人物の行動状況に対応するような合図でロボットの行動を認識させる必要があった。
【0028】
そこで、上記のような事情を一着眼点として、本実施形態にかかる移動装置100が創作されるに至った。移動装置100によれば、周辺に存在する対象物の状態に応じた合図によりロボット(以降、移動体と称する。)の行動を認識させることが可能となる。
【0029】
<2.移動装置のハードウェア構成>
次に、図1および図2を参照して、本実施形態にかかる移動装置100のハードウェア構成について説明する。図1は、移動装置100の外観を説明する説明図である。図1に示したように、移動装置100は、本体(胴体)50と、頭部51などを有している。本体50の下部には、移動装置100が移動可能なように、複数の回転可能な車輪が備えられている。本体50は、移動装置100に備えられたコンピュータの制御のもと、車輪を動作させて自立的に移動したり、移動速度を変更したりすることができる。
【0030】
また、頭部51は、本体50の上部に設けられ、顔の正面方向が認識できる形状を有している。例えば、頭部51の顔の正面方向に顔や目が描かれていたり、顔の正面方向が突出した形状になっていたりしてもよい。本実施形態では、顔の正面方向を「顔の向き」と称して説明する。また、頭部51は、360度回転可能に備えられ、コンピュータの制御のもと、アクチュエータ(図示せず)から伝達される力によって自立的に回転させることができる。
【0031】
また、移動装置100の頭部51に撮像装置(CCDカメラなど)を搭載してもよいし、移動装置100の本体50に撮像装置を搭載してもよい。また、移動装置100に、本体50の加速度に応じた信号を出力するジャイロセンサを搭載したり、頭部51の回転角度や傾きなどを検出するモーションセンサを搭載したりしてもよい。
【0032】
次に、図2を参照して、移動装置100に備えられたコンピュータのハードウェア装置について説明する。図2は、移動装置100に備えられたコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示したように、移動装置100は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、ホストバス14と、ブリッジ15と、外部バス16と、インタフェース17と、入力装置18と、出力装置19と、ストレージ装置(HDD)20と、ドライブ21と、接続ポート22と、通信装置23とを備える。
【0033】
CPU11は、演算処理装置および移動装置として機能し、各種プログラムに従って移動装置100内の動作全般を制御する。また、CPU11は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM12は、CPU11が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM13は、CPU11の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバス14により相互に接続されている。
【0034】
ホストバス14は、ブリッジ15を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス16に接続されている。なお、必ずしもホストバス14、ブリッジ15および外部バス16を分離構成する必要はなく、一のバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0035】
入力装置18は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイク、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU11に出力する入力制御回路などから構成されている。移動装置100のユーザは、該入力装置18を操作することにより、移動装置100に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0036】
出力装置19は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Display)装置およびランプなどの表示装置と、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置で構成される。出力装置19は、例えば、再生されたコンテンツを出力する。具体的には、表示装置は再生された映像データ等の各種情報をテキストまたはイメージで表示する。一方、音声出力装置は、再生された音声データ等を音声に変換して出力する。
【0037】
ストレージ装置20は、本実施形態にかかる移動装置100の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置であり、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含むことができる。ストレージ装置20は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)で構成される。このストレージ装置20は、ハードディスクを駆動し、CPU201が実行するプログラムや各種データを格納する。
【0038】
ドライブ21は、記憶媒体用リーダライタであり、移動装置100に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ21は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体に記録されている情報を読み出して、RAM13に出力する。
【0039】
接続ポート22は、外部機器と接続されるインタフェースであって、例えばUSB(Universal Serial Bus)などによりデータ伝送可能な外部機器との接続口である。
【0040】
通信装置23は、例えば、通信網5に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。また、通信装置23は、無線LAN(Local Area Network)対応通信装置であっても、ワイヤレスUSB対応通信装置であっても、有線による通信を行うワイヤー通信装置であってもよい。以上、移動装置100に備えられたコンピュータのハードウェア構成について説明した。
【0041】
<3.移動装置の機能構成>
次に、図3を参照して、移動装置100の制御部(CPU11)の機能構成について説明する。図3は、移動装置100の制御部の機能構成を示すブロック図である。なお、移動装置100の制御部の機能構成を説明するにあたり、図4〜図8を適宜参照する。図3に示したように、移動装置100は、認識部102、制御部104、方向指示部106、速度調整部108などを備える。
【0042】
認識部102は、移動装置100の周辺に存在する対象物の状態を認識する機能を有する。周辺に存在する対象物とは、例えば、人物や物体などである。対象物の状態とは、例えば、対象物と移動装置100との相対的な距離や、対象物の移動速度、対象物の移動方向などを例示できる。認識部102は、赤外線や超音波カメラセンサなどを用いて対象物を認識して、対象物と移動装置100との位置関係や相対的な距離、移動速度、移動方向などを認識してもよい。
【0043】
例えば、移動装置100に周辺の画像を取得する一対のCCDカメラが搭載されている場合には、認識部102は、CCDカメラ取得した画像を画像処理することによって周辺に存在する対象物を認識する。また、認識部102は、CCDで取得した画像からエッジ抽出やパターン認識処理などによって周辺の人物や物体などを抽出して認識する。また、左右のCCDカメラにおける対象物の位置の違いを基にして、三角測量方式により対象物との距離や横変位を求め、前フレームで求めた距離に対する変化量から相対速度を求めてもよい。
【0044】
また、対象物が人物である場合には、対象物の状態は、人物の年齢や、人物が手荷物を持っているか、人物が杖をついているか、車椅子に乗っているか、ベビーカーを押しているかなどの状態を例示できる。例えば、移動装置100に備えられたCCDカメラ等の撮像装置(図示せず)により人物の顔を撮像して、顔認識により人物の年齢を認識するようにしてもよい。また、予め特定の人物の顔の特徴情報を記憶しておき、記憶している人物の顔の特徴情報と、撮像装置により撮像された顔の特徴情報とを比較することによりどの人物かを特定してもよい。また、人物の移動速度から、人物が「老人」、「成人」、「子供」の何れに該当するかを推測してもよい。また、対象物の高さや大きさを検出することにより、人物が立っているか座っているか、車椅子で移動しているかなどを検出してもよい。
【0045】
認識部102は、認識結果を制御部104に提供する。認識部102により認識結果を提供された制御部104は、認識された対象物の状態に応じて、方向指示部106により示される方向を制御する機能を有する。また、制御部104は、認識された対象物の状態に応じて、速度調整部108により調整される移動装置100の移動速度を制御する。
【0046】
例えば、認識部102より対象物と移動装置100との距離が短いほど、制御部104は、移動装置100のより詳細な移動経路を示すように方向指示部106を制御する。例えば、移動装置100と対象物とが1メートルから3メートル程度の近い距離に位置している場合には、移動装置100の1メートルから3メートル先の移動方向を示す。
【0047】
これにより、移動装置100との距離が短い場合に移動装置100の詳細な行き先を示すことができるため、対象物が正確に危険回避行動を行うことが可能となる。また、制御部104は、移動装置100と対象物との距離が短い場合に、移動装置100の移動速度を制限してもよい。これにより、対象物が行動計画の急な変更が困難な高齢者などであった場合でも、移動装置100の速度を減速して、さらに、詳しい行き先を示すことにより、誤差の少ない情報を提供することができ、人物等の対象物が余裕をもって移動装置100を回避することが可能となる。また、制御部104は、方向指示部106による方向指示の動きを大きくすることにより、さらに移動装置100を回避しやすくさせることが可能となる。
【0048】
また、認識部102より対象物と移動装置100との距離が長いほど、制御部104は、移動装置100のよりおおまかな移動経路を示すように方向指示部106を制御する。例えば、移動装置100と対象物とが10メートル以上離れている場合には、1メートル先や3メートル先の方向ではなく、遠方(目的地)の方向を示すようにする。
【0049】
これにより、移動装置100と対象物との距離が長い場合には、移動装置100の大まかな行き先を示して、移動装置100とすれ違う可能性のある人物等の対象物が余裕を持って移動装置100を回避することが可能となる。また、移動装置100と対象物との距離が長い場合でも対象物の移動速度が速い場合には、詳細な移動経路を示すようにしてもよい。
【0050】
方向指示部106は、移動装置100の移動方向を示す機能を有する。方向指示部106は、例えば、移動装置100の頭部51の顔の向きにより移動方向を示す。方向指示部106は、顔の向きにより移動方向を示す場合には、制御部104による制御に応じて、顔の正面を進行方向に向ける。これにより、対象物は、移動装置100の移動方向を視覚的に認識することが可能となる。
【0051】
また、方向指示部106は、移動装置100が進行方向に移動する前に、顔の向きを進行方向に向ける。これにより、対象物は、移動装置100が進行方向に移動する前に、移動装置100が進行する方向を容易に認識することができるため、移動装置100を安全に回避することが可能となる。
【0052】
上記では、図1に示したように移動装置100の頭部51の顔の向きにより移動方向を示す場合について説明したが、かかる例に限定されず、例えば、プロジェクタからの投影イメージにより移動方向を指示したり、LEDランプやディスプレイの表示により移動方向を指示したりしてもよい。ここで、図4〜6を参照して、顔の向きによる移動方向指示以外の移動方向指示方法について説明する。
【0053】
図4は、プロジェクタからの投影イメージにより移動方向を指示する場合について説明する説明図である。図4に示したように、移動装置100にプロジェクタが搭載され、プロジェクタから投影イメージが照射されている。投影イメージは、例えば、移動装置100の移動経路や、移動装置100が移動する際に占有する領域などが含まれる。例えば、移動装置100と対象物との距離が短い場合には、詳細な移動経路を照射してもよい。また、移動装置100と対象物との距離が長い場合には、おおまかな移動経路を照射したり、目的地の方向を照射したりしてもよい。
【0054】
例えば、移動装置100の頭部51に撮像装置が備えられており、移動方向ではない方向に顔の正面を向ける必要がある場合に、プロジェクタによる投影によって移動装置100の行き先を示すようにしてもよい。また、認識部102により認識された対象物の状態に応じてプロジェクタによる投影内容を変更してもよい。例えば、認識部102により対象物が老人であると認識された場合には、プロジェクタにより投影する文字サイズを大きくしたり、通常より長い時間投影したりするようにしてもよい。また、認識部102により対象物が子供であると認識された場合には、プロジェクタにより投影する文字を平仮名にしてもよい。また、認識された人物の身長や移動速度に応じて、プロジェクタによる投影位置を変更してもよい。例えば、人物の身長に合わせて、見やすい位置に矢印等を投影する。
【0055】
また、図5に示したように、移動装置100の本体に複数のLEDランプ70を搭載して、進行方向のLEDランプ点灯することにより移動装置100の行き先を示すようにしてもよい。例えば、進行方向のLEDランプ71に光が集まるようなアニメーションを用いて、より明確に移動装置100の行き先を認識させるようにしてもよい。LEDランプ70を用いてにより行き先を示す場合も、認識部102により認識された対象物の状態に応じて表示方法を変更してもよい。例えば、人物の年齢に応じてアニメーションの速度を変更してもよい。
【0056】
また、図6に示したように、移動装置100の本体にディスプレイを搭載して、矢印などの方向を示す表示をすることにより移動装置100の行き先を示すようにしてもよい。ディスプレイを用いて行き先を示す場合も、認識部102により認識された対象物の状態に応じて表示方法を変更してもよい。例えば、人物の年齢に応じて矢印等の表示の大きさを変更したり、より詳細な行き先を表示したりするようにしてもよい。また、図5に示した複数のLEDランプと図6に示したディスプレイとを搭載して、LEDランプの点灯と矢印表示を同時に行ってもよい。これにより、より明確に移動装置100の行き先を認識させることが可能となる。
【0057】
次に、図7および図8を参照して、対象物との距離や速度に応じた移動装置100の動作の概要について説明する。図7および図8は、移動装置100の動作の概要を説明する説明図である。図7に示したように、移動装置100と対象物80との距離が、例えば10メートル以上離れているとする。移動装置100は移動経路53に沿って目的地55まで移動すると想定する。
【0058】
移動装置100と対象物80との距離が離れている場合には、大まかな移動経路を示すことにより、人物等の対象物は移動装置100の動きを予想し易くなる。したがって、移動装置100の頭部51の顔の向きは、移動経路53の方向ではなく、目的地の方向54、すなわち、目的地と移動装置100とを結ぶ直線に沿った方向を向くようにする。
【0059】
また、図8に示したように、移動装置100と対象物80との距離が短い場合には、詳細な移動経路を示すことにより、人物等の対象物は移動装置100の動きを予想し易くなる。したがって、移動装置100の頭部51の顔の向きは、目的地の方向54ではなく、3メートル先くらいの通過予定位置の方向56を向くようにする。
【0060】
このように、移動装置100と対象物80との距離に応じて、最終的な目的地となる方向に顔を向けるか、少し先の通過予定位置の方向に顔を向けるかを制御している。また、さらに、移動装置100と対象物80との距離に応じて、移動装置100の移動速度を制御してもよい。すなわち、移動装置100と対象物80との距離が近い場合には、少し先の通過予定位置の方向に顔を向けつつ、移動速度を遅くする。これにより、対象物80が移動装置100の動きを容易に予測して、余裕を持って移動装置100を回避することが可能となる。
【0061】
図3に戻り、移動装置100の制御部の機能構成の説明を続ける。速度調整部108は、移動装置100の移動速度を調整する機能を有する。速度調整部108は、制御部104による制御のもと、移動装置100の移動速度を減速したり、移動を停止させたりする。制御部104は、上記したように、認識部102により認識された対象物との距離や対象物の移動速度に応じて移動装置100の動きを制御する。
【0062】
例えば、認識部102により対象物の移動速度が所定の速度より速いと認識された場合には、移動速度を遅くする。所定の速度とは、例えば、1m/sを例示できる。また、対象物の角速度を認識して、角速度が所定の速度より速いと認識された場合に、角速度を遅くする。所定の角速度とは、例えば、1rad/sを例示できる。
【0063】
<4.移動装置の動作の詳細>
以上、移動装置100の機能構成について説明する。次に、図9〜図11を参照して、移動装置100の動作の詳細について説明する。図9〜図11は、移動装置100の動作の詳細を示すフローチャートである。図9に示したように、まず、移動装置100の目的地が設定される(S102)。
【0064】
そして、移動装置100と目的地までの距離が3メートル以上か否かを判定する(S104)。ステップS104において、移動装置100と目的地までの距離が3メートル以上であった場合には、処理Aを実行する(S106)。また、ステップS104において、移動装置100と目的地までの距離が3メートル未満であった場合には、処理Bを実行する(S108)。ここで、図10を参照して、処理Aについて説明した後、図11を参照して処理Bについて説明する。図10は、処理Aを説明するフローチャート、図11は、処理Bを説明するフローチャートである。
【0065】
図10に示したように、まず、認識部102は、周辺を探索し、回避対象を認識する(S202)。ステップS202においては、回避対象の外形や顔、体型、姿勢などを認識する。ステップS202では、予め、回避対象となる対象物の外形や、顔、体系、姿勢などを識別する特徴情報を登録して、登録されている特徴情報と認識した対象物の特徴情報とが一致するか否かを判定してもよい。
【0066】
そして、回避対象が無いか判定する(S204)。以下では、回避する必要のある対象物を回避対象と称して説明する。ステップS204において、回避対象が無いと判定された場合には、ステップS220の処理を実行する。また、ステップS204において、回避対象があると判定された場合には、回避対象との距離が10メートル以上か否かを判定する(S206)。
【0067】
ステップS206において、回避対象との距離が10メートル以上であった場合には、ステップS220の処理を実行する。また、ステップS206において、回避対象との距離が10メートル未満であった場合には、回避対象が認識不能物体か否か、または、移動物体か否かを判定する(S208)。認識不能物体とは、認識された物体の形状や顔が、予め登録された特徴情報と一致せずに何れの物体か、何れの人物かを認識できない物体などである。
【0068】
ステップS208において、回避対象が認識不能物体か、または、移動物体であると判定された場合には、処理Bを実行する(S108)。ステップS208において、回避対象が認識可能な物体であり、移動物体でもない場合には、回避対象に車いすかベビーカーが含まれているか否かを判定する(S210)。ステップS210において、回避対象に車いすかベビーカーが含まれていると判定された場合には、処理Bを実行する(S108)。処理Bについては後で詳細に説明する。
【0069】
ステップS210において、回避対象に車いすもベビーカーも含まれていないと判定された場合には、回避対象に杖または手荷物が含まれているか否かを判定する(S212)。ステップS212において、回避対象に杖または手荷物が含まれていると判定された場合には、処理Bを実行する(S108)。処理Bについては後で詳細に説明する。
【0070】
ステップS212において、回避対象に杖または手荷物が含まれていないと判定された場合には、回避対象の移動速度が1m/s以上または角速度が1rad/s以上か否かを判定する(S214)。ステップS214において、回避対象の移動速度が1m/s以上または角速度が1rad/s以上であると判定された場合には、処理Bを実行する(S108)。処理Bについては後で詳細に説明する。
【0071】
ステップS214において、回避対象の移動速度が1m/s以上または角速度が1rad/s以上でないと判定された場合には、回避対象の推定年齢が65歳以上か5歳以下かを判定する(S216)。ステップS216において、回避対象の推定年齢が65歳以上か5歳以下であると判定された場合には、処理Bを実行する(S108)。処理Bについては後で詳細に説明する。
【0072】
ステップS216において、回避対象の推定年齢が65歳以上か5歳以下でないと判定された場合には、回避対象との距離が3m以下か否かを判定する(S218)。ステップS218において、回避対象との距離が3m以下であると判定された場合には、処理Bを実行する(S108)。処理Bについては後で詳細に説明する。
【0073】
ステップS218において、回避対象との距離が3m以下ではないと判定された場合には、方向指示器(例えば、頭部の顔の向き)を目的地の方向に設定する(S220)。ステップS220は、図7に示したように、移動装置100と対象物80との距離が離れている場合で、移動装置100の移動経路53ではなく、目的地の方向に顔の向きを設定する場合である。そして、速度制限を解除する(S222)。
【0074】
ステップS220およびステップS222は、ステップS204において回避対象がなかったり、ステップS206において回避対象との距離が10m以上と離れていたりする場合に実行される。回避対象との距離が10m以上と離れている場合には、顔の向きを目的地の方向に設定して、移動装置100の大まかな行き先を示している。これにより、移動装置100とすれ違う可能性のある人物等は、移動装置100の大まかな移動方向を把握して、余裕を持って移動装置100を回避することが可能となる。
【0075】
次に、図11を参照して、処理Bについて説明する。図11に示したように、頭部の顔の向きなどの方向指示器を移動経路上の3m先の方向に設定する(S302)。そして、移動装置100の移動速度を0.5m/s以下にしたり、角速度を0.5rad/s以下に制限する(S304)。
【0076】
ステップS302は、図8に示したように、移動装置100と対象物80との距離が近い場合で、移動装置100の移動経路53の3m先の方向に顔の向きを設定する場合である。また、ステップS208〜ステップS218に示したように、対象物が車いすやベビーカーであったり、対象物が杖や手荷物を持っていたり、対象物の移動速度が速かったり、回避対象となる人物が高齢者だったり子供だったりする場合に、処理Bを実行する。
【0077】
ステップS302およびステップS304の処理により、回避対象となる人物が高齢者だったり子供だったりする場合には、少し先の通過予定位置の方向に移動装置100の顔を向けつつ、移動速度を遅くすることができる。これにより、高齢者や子供でも、移動装置100の動きを容易に予測して、余裕を持って移動装置100を回避することが可能となる。以上、移動装置100の動作について説明した。
【0078】
上記のとおり、本実施形態によれば、認識部102により認識された対象物の状態に応じて顔の向き等の方向指示部により示される方向を制御することにより、対象物に対して危険回避行動を促すことが可能となる。例えば、対象物が高齢者が子供である場合に、移動速度を制限したり、移動方向をより明確にしたりすることにより、移動装置100の行動を認識させて余裕を持った行動をすることが可能となる。
【0079】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0080】
例えば、本明細書の移動装置100の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。すなわち、移動装置100の処理における各ステップは、異なる処理であっても並列的に実行されてもよい。
【0081】
また、移動装置100などに内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した移動装置100の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0082】
100 移動装置
102 認識部
104 制御部
106 方向指示部
108 速度調整部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動方向を示す方向指示部と、
周辺に存在する対象物の状態を認識する認識部と、
前記認識部により認識された前記対象物の状態に応じて、前記方向指示部により示される方向を制御する制御部と、
を備える、移動装置。
【請求項2】
移動速度を調整する速度調整部を備え、
前記制御部は、前記認識部により認識された前記対象物の状態に応じて、前記速度調整部により調整される移動装置の移動速度を制御する、請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
前記認識部は、前記対象物と前記移動装置との距離または前記対象物の移動速度を認識する、請求項1に記載の移動装置。
【請求項4】
前記認識部により認識された前記対象物と前記移動装置との距離が短いほど、前記制御部は、前記移動装置のより詳細な移動経路を示すように前記方向指示部を制御する、請求項3に記載の移動装置。
【請求項5】
前記認識部により認識された前記対象物と前記移動装置との距離が長いほど、前記制御部は、前記移動装置のよりおおまかな移動経路を示すように前記方向指示部を制御する、請求項3に記載の移動装置。
【請求項6】
前記認識部により前記対象物の移動速度が所定の速度より速いと認識された場合に、前記制御部は、前記移動装置の移動速度を制限するように前記速度調整部を制御する、請求項3に記載の移動装置。
【請求項7】
前記移動装置が、顔の形状および胴体の形状を有するロボットである場合に、
前記方向指示部は、前記顔の向きにより移動方向を示す、請求項1に記載の移動装置。
【請求項8】
前記方向指示部は、前記制御部による制御に応じて、前記移動装置が進行方向に移動する前に前記顔の向きを移動方向に向ける、請求項7に記載の移動装置。
【請求項9】
前記方向指示部は、前記制御部により前記詳細な移動経路を示すことを指示された場合に、前記移動装置の移動経路上の所定範囲内における移動方向に前記顔の向きを向ける、請求項7に記載の移動装置。
【請求項10】
前記方向指示部は、前記制御部により前記おおまかな移動経路を示すことを指示された場合に、前記移動装置の移動経路上の所定範囲外における移動方向に前記顔の向きを向ける、請求項7に記載の移動装置。
【請求項11】
前記方向指示部は、プロジェクタからの投影イメージにより移動方向を指示する場合に、
前記方向指示部は、前記制御部による制御に応じて、移動方向を示す投影イメージを前記プロジェクタから照射する、請求項1に記載の移動装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記認識部により認識された前記対象物の状態に応じて、前記プロジェクタにより照射する前記投影イメージを変更する、請求項11に記載の移動装置。
【請求項13】
(旧請求項12+13)
前記方向指示部は、
前記制御部により前記詳細な移動経路を示すことを指示された場合に、前記移動装置の移動経路を示す投影イメージを前記プロジェクタから照射し、
前記制御部により前記おおまかな移動経路を示すことを指示された場合に、前記移動装置の移動方向を示す矢印の投影イメージを前記プロジェクタから照射する、請求項11に記載の移動装置。
【請求項14】
移動装置の周辺に存在する対象物を認識して、前記移動装置との距離または前記対象物の移動速度を認識するステップと、
前記認識された対象物と前記移動装置との距離が短いほど、また、前記対象物の移動速度が所定の速度より速いほど、前記移動装置の移動方向を示す移動方向指示部により、前記移動装置のより詳細な移動経路を示し、前記移動装置の移動速度を制限するように制御するステップと、
を含む、移動制御方法。
【請求項15】
コンピュータを、
移動方向を示す方向指示部と、
周辺に存在する対象物の状態を認識する認識部と、
前記認識部により認識された前記対象物の状態に応じて、前記方向指示部により示される方向を制御する制御部と、
を備える、移動装置として機能させるプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−204145(P2011−204145A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73034(P2010−73034)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】