説明

積層成形体の成形方法並びに成形装置

【課題】積層成形体の成形方法並びに成形装置であって、表皮の搬送工程、セット工程を自動化することで、作業性を高め、かつ精度の良い形状出しを可能にするとともに、絞転写性を高め成形サイクルを短縮化する。
【解決手段】表皮投入位置Aから成形待機位置Bまで表皮30を搬送する搬送用コンベア80を両側の搬送ベルト83で構成し、内部にアシストモデル70の上下動を許容するスペースを設定する。そして、搬送用コンベア80の成形待機位置Bに位置決めされた表皮30に対してアシストモデル70を上昇操作することで自動的にアシストモデル70の表皮ホルダ用プレート75で表皮30を保持し、成形上下型50,60内にアシストモデル70を投入して、表皮30をセットすることにより、表皮30のセット作業を自動化でき、かつ表皮30の加熱後、迅速に成形を可能とすることで、絞模様の転写を良好に行ないシャープな形状出しを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージサイドトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品に好適な積層成形体の成形方法並びに成形装置に係り、特に、表皮のセット作業を簡素化でき、かつ成形サイクルを短縮化できるとともに、表皮の成形性並びに絞模様の転写性を高めた積層成形体の成形方法並びに成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドアトリム、ラゲージサイドトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品としては、車体パネルへの取付剛性並びに形状保持性を備えた樹脂芯材の表面に、表面風合い、並びにソフト感が良好な表皮を貼着した積層成形体が使用されることが多い。例えば、図18,図19を基にドアトリム1を例示して説明する。ドアトリム1は、樹脂芯材2の表面に表皮3を貼着して構成されている。この樹脂芯材2としては、コスト、成形性等を考慮して、ポリプロピレン樹脂にフィラーを適宜混入した複合ポリプロピレン系樹脂材料が使用されている。また、表皮3としては、製品表面側からクロス3a、ポリウレタンフォーム3bからなる二層の積層シート材料が使用されている。この表皮3については、クロス3aにより良好な表面風合いを確保し、ポリウレタンフォーム3bのクッション性により良好なソフト感が期待できる。尚、図中符号1aはアームレストを示す。
【0003】
次に、ドアトリム1の成形方法に使用する従来の成形装置4の構成について、図20を基に説明する。この成形装置4は、可動側である成形上型5と、その下方に位置する固定側の成形下型6と、成形上下型5,6の型開き時に内部に投入され、成形上型5と協働して表皮3を精度良く成形するアシストモデル7と、表皮3を加熱炉並びに成形上下型5,6内に搬送するために使用する表皮セット枠8とから大略構成されている。
【0004】
更に詳しくは、成形上型5は、プレス機5aに連結し、所定ストローク上下動作を行ない、成形下型6に対して型締め、型開きが行なわれる。また、表皮3を真空成形して、成形上型5に保持するために、真空吸引孔5bが複数箇所に開設されているとともに、表皮セット枠8の周縁部分をクランプ保持するクランプ5cが成形上型5の下面周縁に設けられている。一方、成形下型6には、射出機6aが連結されており、この射出機6aから樹脂芯材2の素材である溶融樹脂Mが樹脂通路6bを通じて成形下型6の型面所定位置に供給される。
【0005】
また、成形上下型5,6が型開き状態にある時、型内に投入されるアシストモデル7は、投入機7aに支持されており、この投入機7aのスライド動作により、成形上下型5,6内に入り込むとともに、成形上下型5,6の型締め時には、外部に退避する。更に、表皮セット枠8には、表皮3を保持するための固定用ピン8aが設けられており、この固定用ピン8aに表皮3の周縁部分を突き刺し保持した状態で加熱炉(図示せず)に搬送し、表皮3を所定温度に加熱処理した後、成形上型5のクランプ5cに表皮セット枠8の周縁部分をクランプ保持する。
【0006】
次いで、図21乃至図25を基に上述した構成の成形装置4を使用して、ドアトリム1を成形する工程について説明する。まず、図21に示すように、固定用ピン8aに表皮3の周縁部分を突き刺して表皮セット枠8に表皮3をセットする。この時、図示しない加熱炉内に表皮3を表皮セット枠8ごと加熱処理した後、成形上型5のクランプ5cに表皮セット枠8をセットする。このセット作業については、通常2名の作業者で行なっている。更に、この表皮3のセット作業とほぼ同時に、アシストモデル7の投入機7aを駆動させて、図21中矢印方向にアシストモデル7を投入する。
【0007】
そして、成形上型5に表皮セット枠8のセットが完了すれば、図22に示すように、成形上型5に付設する真空吸引機構を動作させ、真空吸引孔5bを通じて、成形上型5の型面に真空吸引力を作用させて、表皮3を製品形状に追従させる。この時、アシストモデル7は、エアシリンダ7bの伸長動作により、図示するように上昇し、成形上型5とアシストモデル7との間で表皮3を精度良く予備成形する。そして、この予備成形と同時に成形上型5の外周部の真空吸引力を作用させて、表皮3を保持する。その後、図23に示すように、アシストモデル7は、エアシリンダ7bが収縮して下降した後、投入機7aの往復動作により型外に退避する。
【0008】
次いで、図24に示すように、成形上型5は、プレス機5aの駆動により、下死点まで下降して、成形上下型5,6が型締めされるが、型締め直前に射出機6aから樹脂通路6bを通じて成形下型6の型面上に溶融樹脂Mが供給されているため、成形上下型5,6の型締めにより、樹脂芯材2が所要形状にモールドプレス成形されるとともに、樹脂芯材2の表面に表皮3が一体成形される。その後、図25に示すように、表皮セット枠8をクランプ5cから外し、成形上型5が上昇すれば、成形が完了したドアトリム1を成形下型6から取り出せば良い。従来のアシストモデル7を使用した積層成形体の成形方法並びに成形装置については、特許文献1に詳細に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−223218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、従来のドアトリム1の成形方法では、表皮3をセットした表皮セット枠8を成形上型5のクランプ5cにセットした後、アシストモデル7を型内に搬送して、成形上型5とアシストモデル7との間で表皮3を真空・プレス成形するというものであるから、成形サイクルが長期化し、加えて、加熱後における時間の経過が長いため表皮3が冷えてしまい、コーナー部の忠実な形状出しが難しいとともに、絞転写性が低下するという欠点が指摘されている。
【0011】
更に、表皮セット枠8を成形上型5にセットする際、2名の作業者が型内に入ってセットするため、セット作業が面倒であるとともに、セット時間も長くかかり、このことも成形サイクルを長期化する要因となっている。
【0012】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、表皮と樹脂芯材とを一体化してなる積層成形体の成形方法並びに成形装置であって、表皮のセット作業が簡単かつ短時間に行なえ、しかも、表皮の加熱処理後、素早く表皮の真空・プレス成形が行なわれるため、成形性及び絞模様の転写性が良好になり、外観性能を良好に維持でき、かつ成形サイクルを短縮化できることから、コストダウンを招来できる積層成形体の成形方法並びに成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、表皮を保持したアシストモデルを成形上下型内に投入し、成形上型とアシストモデルとの間で表皮を所要形状に成形するとともに、アシストモデルを型外に退避させ、成形上下型を型締めして形成されるキャビティ内に溶融樹脂を供給することで樹脂芯材を所要形状に成形するとともに、樹脂芯材の表面に表皮を一体化してなる積層成形体の成形方法において、表皮供給枠の動作により、搬送用コンベアの表皮投入位置に表皮を供給し、搬送用コンベアの駆動により、表皮を搬送するとともに、ヒーター装置により所定温度まで表皮を加熱軟化処理して、表皮を搬送用コンベアの成形待機位置に搬送する表皮の加熱・搬送工程と、搬送用コンベアの成形待機位置に位置決めした表皮に対して下方からアシストモデルを上昇させて、アシストモデルの表皮ホルダ用プレートで表皮を保持して、搬送用コンベアから表皮を離脱させて上方に持ち上げ、続いて、アシストモデルを降下させた後、型開き状態にある成形上下型内に表皮を保持したアシストモデルを投入し、このアシストモデルのシリンダ駆動により、モデル型と表皮ホルダ用プレートに保持した表皮とを上昇させて、成形上型とモデル型との間で表皮をプレス圧着するとともに、成形上型の真空吸引機構を動作させることで、成形上型の型面に沿って表皮を薄肉状に真空・プレス成形する表皮の成形工程と、前記成形工程で成形した表皮を成形上型の真空吸引力により成形上型に保持する一方、アシストモデルのシリンダ駆動により、モデル型並びに表皮ホルダ用プレートを下降操作し、更に、アシストモデルを成形上下型の外部に退避させた後、表皮を保持した成形上型を所定ストローク下降操作し、成形上型が下死点に到達する直前、あるいは到達した後のいずれかのタイミングでキャビティ内に溶融樹脂を供給し、樹脂芯材を所望の曲面形状に成形するとともに、樹脂芯材の表面に表皮を積層一体化する樹脂芯材と表皮との一体化工程とからなることを特徴とする。
【0014】
ここで、積層成形体は、樹脂芯材と表皮とから構成されており、樹脂芯材の素材として、熱可塑性樹脂が使用されているが、1種類の熱可塑性樹脂、あるいは2種類以上の熱可塑性樹脂からなっても良い。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用できる。また、熱可塑性樹脂中に充填材を混入しても良く、充填材としては、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子がある。更に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、低収縮剤等の各種添加剤が配合されても良い。
【0015】
一方、表皮としては、成形金型から絞模様を転写するために、熱可塑性樹脂シートの単一シート材料か、あるいは熱可塑性樹脂シートをトップ層として、その裏面にポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等の発泡樹脂成形体からなるクッション層を裏打ちした積層シート材料を使用することができる。尚、所望ならば、裏面にバッキングシートやメリヤス布等をラミネートしても良い。
【0016】
更に、積層成形体の用途としては、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージサイドトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品に適用できる他に、鉄道車両等の内装パネルや家屋の内装パネル等に適用することもできる。
【0017】
次いで、本発明方法を実施する際に使用する成形装置は、樹脂芯材の表面に表皮を一体化してなる積層成形体を所要形状に成形してなる積層成形体の成形装置において、前記成形装置は、所定ストローク上下動する可動側の成形上型と、成形上型の下方に位置する固定側の成形下型と、成形上下型内に投入され、成形上型と協働して、表皮にプレス圧を加えるアシストモデルと、表皮投入位置から成形上下型手前の成形待機位置まで表皮を搬送する搬送用コンベアと、搬送用コンベアで搬送される表皮を加熱処理するヒーター装置とから構成され、上記アシストモデルは成形待機位置と成形位置との間で往復動作される一方、上記搬送用コンベアは、ローラーにより循環駆動される左右一対の搬送ベルトから構成され、左右の搬送ベルト間の間隔を大きく確保して、アシストモデルの上下動を許容するとともに、アシストモデルは、シリンダ駆動により、搬送用コンベア上の表皮をアシストモデルの表皮ホルダ用プレートで突き上げ保持するようにしたことを特徴とする。
【0018】
ここで、成形上型は、プレス機に連結され、所定ストローク上下動可能であるとともに、表皮を真空成形する一方、溶融樹脂の射出充填時、成形上型に表皮を保持する関係で真空吸引機構が備わっている。一方、成形下型は、射出機から供給される溶融樹脂の樹脂通路としてのホットランナ、ゲートが設けられている。また、表皮を精度良く成形するために、成形上下型内にアシストモデルが投入される。このアシストモデルは、成形上型との間で表皮を挟み付けて薄肉状に成形するために成形下型のコア部の型面形状にほぼ合致するモデル型を備えており、成形上下型の型外から型内にアシストモデルを搬送するための搬送機構と、モデル型を成形上型側に押し上げ、成形上型との間で表皮をプレス圧着する昇降機構を備えるとともに、加熱軟化処理した表皮のホルダ機構として、表皮ホルダ用プレートが設けられている。更に、このアシストモデルは、表皮投入位置から成形待機位置まで搬送用コンベアにより搬送された表皮に対して、アシストモデルのモデル型が上昇することで、加熱軟化処理した表皮を自動的に保持することができる。次いで、アシストモデルを下降操作した状態で成形金型の型内まで表皮を搬送処理して成形位置まで位置決めできるように、上記アシストモデルの搬送機構は、搬送用コンベアの終端位置(成形待機位置)と成形金型(成形位置)との間で往復動作可能に設定されている。
【0019】
更に、表皮の加熱・搬送工程に使用する搬送用コンベアは、表皮を表皮投入位置から成形待機位置まで搬送する。また、この搬送用コンベアの途中にヒーター装置が設定されており、搬送用コンベア上にセットされた表皮が搬送される途中でその上下側から最適温度に加熱軟化処理される。そして、搬送用コンベアに投入するための表皮供給機構としては、真空吸引力を有する吸盤等で台車上に複数枚積層されている表皮の原反シートの最上位のものを吸着保持し、搬送用コンベアのセット位置に投入することで、表皮を搬送用コンベアにセットすることができる。
【0020】
ところで、本発明方法は、表皮の加熱・搬送工程と、表皮の成形工程と、表皮と樹脂芯材との一体化工程に大別される。まず、台車上に積層されている表皮の最上位のものを表皮供給枠の吸盤で吸着保持し、搬送用コンベアの先端位置(表皮投入位置)にセットする。そして、搬送用コンベアを循環駆動させて、搬送用コンベアの途中に設定されたヒーター装置で表皮の上下側から加熱処理が行なわれ、適切な温度に加熱軟化処理されて、搬送用コンベアの終端位置である成形待機位置まで搬送される。以上が表皮の加熱・搬送工程である。
【0021】
そして、成形待機位置における搬送用コンベアの下方にはアシストモデルが位置決めされており、アシストモデルの昇降機構が動作して、モデル型及び表皮ホルダ用プレートが上昇すれば、表皮ホルダ用プレートの上端に加熱軟化処理された表皮が保持される。次いで、昇降機構が収縮動作することで、搬送用コンベアと干渉しない位置までモデル型及び表皮ホルダ用プレートが下降する。その後、アシストモデルの搬送機構が動作して、成形金型内にアシストモデルが位置決めされる。更に、昇降機構によりモデル型と表皮ホルダ用プレートが上昇することで成形上型とアシストモデルとの間で表皮をプレス圧着するとともに、成形上型の真空吸引機構を動作させることで、表皮は迅速に真空・プレス成形される。この時、製品外周部についても、真空吸引力を作用させることで、表皮の絞転写補助、シャープな形状出しと表皮の冷却を迅速に行なうことができる。以上が表皮の成形工程である。
【0022】
次いで、表皮の成形が完了すれば、アシストモデルの昇降機構が動作し、モデル型及び表皮ホルダ用プレートが下降する。この時、表皮は成形上型の型面に保持されている。更に、アシストモデルの搬送機構が動作して、アシストモデルは型内より型外に退避する。その後、成形上型が下降し、射出機からホットランナ、ゲートを通じて樹脂芯材の素材である溶融樹脂が成形下型の型面に供給されて成形上下型の型締めにより樹脂芯材が所要形状にモールドプレス成形され、表皮と一体化される。
【0023】
このように、本発明方法によれば、搬送用コンベアにより成形待機位置まで搬送された表皮をアシストモデルの駆動により自動的にアシストモデルで保持した状態で成形金型内に供給するというものであるから、2名の作業者で成形金型内に表皮をセットするという従来から行なっていた面倒な作業を廃止でき、表皮のセット作業性が向上するとともに、表皮のセット作業に費やす時間も短縮化でき、表皮が冷めないうちに成形できることから、絞模様等を忠実に転写でき、絞転写性能が向上するとともに、コーナー部等の形状出しについてもシャープな形状出しが可能となり、成形性能が向上する。また、成形サイクルも短縮化できるため、コストダウンも期待できる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した通り、本発明に係る積層成形体の成形方法並びに成形装置は、搬送用コンベアの搬送途中で加熱処理された表皮が成形待機位置にある時、搬送用コンベア上に位置する表皮をアシストモデルの表皮ホルダ用プレートで自動的に保持し、表皮を保持した状態で成形金型内に供給し、アシストモデルの上昇動作により成形上型に自動的にセットされ、その後、表皮の予備成形が行なわれるというものであるから、2名の作業者で成形上型に表皮セット枠をクランプ保持させるという面倒な作業を廃止でき、セット作業性を向上させることができるとともに、成形サイクルを短縮化できるという効果を有する。
【0025】
また、アシストモデルで保持した表皮をアシストモデルの駆動により成形上型とプレス圧着するため、表皮を加熱処理してから成形するまでの間の待ち時間が短くなり、生産性を高めることに加えて、シャープな形状出しが可能になるとともに、均一な絞模様を忠実に転写することができる等、成形性並びに意匠性を良好に維持することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明方法を適用して製作した自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】本発明方法に使用する成形装置の概要を示す説明図である。
【図4】本発明方法に使用する成形装置における成形金型とアシストモデルとの関係を示す説明図である。
【図5】本発明方法に使用する成形装置における搬送用コンベアの構成を示す側面図である。
【図6】本発明方法に使用する成形装置における搬送用コンベアの構成を示す平面図である。
【図7】本発明方法における搬送用コンベアへの表皮のセット工程を示す説明図である。
【図8】本発明方法における表皮の加熱工程を示す説明図である。
【図9】本発明方法における表皮の成形待機位置への位置決め工程を示す説明図である。
【図10】本発明方法におけるアシストモデルによる表皮のホルダ工程を示す説明図である。
【図11】本発明方法におけるアシストモデルによる表皮のホルダ工程を示す説明図である。
【図12】本発明方法におけるアシストモデルの成形金型内への投入工程を示す説明図である。
【図13】本発明方法における表皮の成形工程を示す説明図である。
【図14】本発明方法における表皮の成形後のアシストモデルの下降時の状態を示す説明図である。
【図15】本発明方法におけるアシストモデルの型外への退避状態を示す説明図である。
【図16】本発明方法における溶融樹脂の供給工程を示す説明図である。
【図17】本発明方法における樹脂芯材と表皮との一体化工程を示す説明図である。
【図18】従来のドアトリムを示す正面図である。
【図19】図18中XIX −XIX 線断面図である。
【図20】従来のドアトリムの成形装置の構成を示す概要図である。
【図21】従来のドアトリムの成形方法における表皮セット枠及びアシストモデルの型内供給時の状態を示す説明図である。
【図22】従来のドアトリムの成形方法における表皮の成形工程を示す説明図である。
【図23】従来のドアトリムの成形方法における表皮の成形工程後のアシストモデルの型外退避時の状態を示す説明図である。
【図24】従来のドアトリムの成形方法における溶融樹脂の供給工程を示す説明図である。
【図25】従来のドアトリムの成形方法における型開き時の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る積層成形体の成形方法並びに成形装置の実施例について、ドアトリムの成形方法並びに成形装置を例示して詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0028】
図1乃至図17は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明方法により成形したドアトリムを示す正面図、図2は同ドアトリムの構成を示す断面図、図3は本発明方法に使用する成形装置の全体構成を示す概略図、図4は本発明に係る積層成形体の成形装置における成形金型とアシストモデルとの構成を示す説明図、図5,図6は本発明に係る積層成形体の成形装置における搬送用コンベアの構成を示す側面図並びに平面図である。更に、図7乃至図17は本発明に係るドアトリムの成形方法の各工程を示す説明図である。
【0029】
まず、図1,図2において、ドアトリム10は、所望の曲面形状に成形され、図示しないドアパネルへの取付剛性並びに形状保持性を有する樹脂芯材20の表面に表面外観並びに表面感触に優れた表皮30を積層一体化して構成されている。尚、ドアトリム10には、各種付属部品が装着されている。例えば、中接部には、インサイドハンドルエスカッション11が取り付けられており、中接部の下方に位置するアームレスト12は、室内側に膨出する形状に成形され、アームレスト12の上面にプルハンドルユニット13、パワーウインドウスイッチエスカッション14が取り付けられている。また、アームレスト12の下方には、備品を収容できるドアポケット15が配備され、そのフロント側には、ドアトリム10と一体、あるいは別体にスピーカグリル16が取り付けられている。
【0030】
そして、上記ドアトリム10における樹脂芯材20としては、熱可塑性樹脂の材料を使用し、後述するモールドプレス成形工法の他に射出成形工法等の各種成形工法を採用することができる。使用する熱可塑性樹脂材料としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等がある。一方、表皮30としては、本実施例ではトップ層31、クッション層32の二層積層体からなるシート材料が使用されており、トップ層31としては、TPO(サーモプラスチックオレフィン)樹脂、PVC樹脂、PP樹脂等の熱可塑性樹脂シートが使用され、クッション層32としては、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等の発泡樹脂シートが使用されている。
【0031】
ところで、本発明方法により形成されたドアトリム10は、従来のモールドプレス成形工法、真空成形工法に比べ、製品のソフト感並びに製品の外観形状(シャープ形状)が改善されている。すなわち、優れたクッション性能を備えているとともに、成形金型のRとほぼ等しいRを備えている。更に、ドアトリム10における表皮30の外観は、成形金型から絞模様が転写され、絞模様の現出が非常に良好であり、意匠性においても優れたものとなっている。
【0032】
次いで、上記ドアトリム10を成形するための成形装置40の構成を図3乃至図6に基づいて説明する。成形装置40は、樹脂芯材20と表皮30とを一体にモールドプレス成形することができる相互に型締め、型開き可能な成形上下型50,60と、成形上型50と協働して表皮30を成形できるように、成形待機位置と成形位置との間を往復動作可能で、成形上下型50,60内に投入されるアシストモデル70と、表皮投入位置からアシストモデル70の待機位置、すなわち、成形待機位置まで表皮30を搬送する搬送用コンベア80と、搬送用コンベア80で表皮30を搬送する途中で表皮30を所定温度まで加熱軟化させるヒーター装置90と、搬送用コンベア80に表皮30を供給する表皮供給枠100とから大略構成されている。
【0033】
図3では、上述した成形上下型50,60、アシストモデル70、搬送用コンベア80、ヒーター装置90、表皮供給枠100との関係が示されている。そして、表皮供給枠100により、搬送用コンベア80の始端側の表皮投入位置Aに表皮30が供給された後、搬送用コンベア80の駆動により、搬送用コンベア80の終端側の成形待機位置Bに表皮30が搬送され、成形待機位置Bから成形位置Cまで表皮30をアシストモデル70により保持して搬送し、成形上下型50,60で表皮30が予備成形される。
【0034】
次に、図4に基づいて、成形上下型50,60とアシストモデル70の構成について詳細に説明する。成形上型50は、連結するプレス機51の駆動により、所定ストローク上下動可能に構成されており、ドアトリム10の製品面を形作るドアトリム10の製品面形状に一致する型面52が形成され、この型面には、絞模様が刻設されている。また、成形上型50には、真空吸引機構Vcが設けられている。すなわち、成形上型50の型面52には、多数の真空吸引孔53が開設され、真空吸引孔53と連通する空気室54と、真空ポンプ55との間に真空吸引管56が配設され、この真空吸引管56には開閉バルブ57が設けられ、開閉バルブ57を図示しないスイッチ機構により開閉操作し、成形上型50に真空吸引力を選択的に付与することができる。また、この実施例では、上記真空吸引孔53に加えて、もっぱら表皮30を保持する機能をもつ外周真空吸引孔53aが設けられている。この外周真空吸引孔53aは図示はしないが、上記真空吸引機構Vcと別系統の真空吸引機構を採用しても良く、また、上記真空吸引機構Vcと切替弁を介して接続しても良い。一方、成形上型50の下方に位置する成形下型60は、射出機61から供給される溶融樹脂Mの樹脂通路となるホットランナ62、ゲート63が設けられており、これらホットランナ62、ゲート63を通じて溶融樹脂Mは成形下型60の型面上に分配供給される。
【0035】
ところで、本発明方法に使用する成形装置40は、成形上型50と、アシストモデル70との間で表皮30を精度良くかつ短時間に成形できるようにしたことが特徴であり、そのためにアシストモデル70は、表皮30を直接セットできる表皮30のホルダ機能を備えている。すなわち、アシストモデル70は、外部の成形待機位置Bと成形上下型50,60内部の成形位置Cとの間で往復動作できるように、搬送機構としての搬送テーブル71が設けられている。この搬送テーブル71は、シリンダやコンベア等の図示しない駆動機構に連結されており、この搬送テーブル71の上面には4箇所等、複数個所にシリンダ72が取り付けられ、このシリンダ72に支持台座73が上下動可能に支持されている。更に、この支持台座73の上面ほぼ中央に、成形下型60のコア部の型面形状と一致するモデル型74がアルミダイキャスト品等から形成されて取り付けられており、このモデル型74と成形上型50の型面52との間で表皮30を薄肉状に成形できる機能を備えている。
【0036】
そして、本発明では、上記アシストモデル70において、モデル型74の外周における対向する2辺に表皮ホルダ用プレート75が形成されている。すなわち、表皮ホルダ用プレート75は、表皮30を載置固定するために、表皮ホルダ用プレート75の上面751に固定用ピン752が設けられており、表皮ホルダ用プレート75から下方に延びるガイドバー753は支持台座73の貫通孔731内に貫通支持されており、付勢バネ754により常時上方にバネ付勢されている。尚、成形上型50の型面52には、表皮30の圧着時、固定用ピン752を逃げるためのピン逃げ孔(図示せず)が固定用ピン752に対応して設けられている。このように、本発明における成形装置40の特徴は、アシストモデル70に表皮ホルダ機能を付与することで、成形上型50に表皮30をセットする従来の作業に比べ表皮30のセット作業を簡単かつ迅速に行なえる。
【0037】
次いで、図5,図6を基にアシストモデル70、搬送用コンベア80、ヒーター装置90、表皮供給枠100の関係について説明する。搬送用コンベア80は、表皮30の投入位置Aから成形待機位置Bの間で表皮30を搬送できるように、表皮投入位置Aに駆動ローラー81、成形待機位置Bに従動ローラー82が設けられ、これら駆動ローラー81、従動ローラー82間の左右両端に一対の搬送ベルト83が懸架されており、左右の搬送ベルト83の表面には、所定ピッチ間隔で表皮30を突き刺して保持するための表皮保持用ニードル84が設けられている。
【0038】
そして、表皮30は、搬送ベルト83の表皮保持用ニードル84で保持された状態で図5,図6中矢印方向に搬送されるが、その途中でヒーター装置90により所定温度に加熱軟化処理される。尚、ヒーター装置90は、搬送用コンベア80の上下側にそれぞれ設けられている。更に、搬送用コンベア80に表皮30を投入する表皮供給枠100には、搬送プレート101の下面4箇所に吸盤102が取り付けられており、この吸盤102は、真空吸引力が作用するように図示しない真空吸引機構を備えており、搬送プレート101は、これも図示しないシリンダ等の駆動機構により図5中X矢印方向に昇降可能であるとともに、Y矢印方向にスライド可能に構成されている。従って、表皮30が複数枚積層状態でストックされている台車110の上方位置にある表皮供給枠100は、下降して、吸盤102により最上位の表皮30を保持した状態で上昇し、搬送機構によりY矢印方向に搬送されて表皮投入位置Aに到達すれば、再び下降動作して、搬送用コンベア80上に表皮30を供給する。
【0039】
次いで、搬送用コンベア80とアシストモデル70との関係について説明する。アシストモデル70は、搬送機構の動作により成形待機位置Bと成形位置Cとの間を搬送可能であり、図5に示すように、アシストモデル70のシリンダ72を伸長動作させて搬送用コンベア80上に保持されている表皮30をアシストモデル70側に保持することができる。すなわち、シリンダ72が伸長すれば、モデル型74の外周の対向する2辺に沿って設けられている表皮ホルダ用プレート75の固定用ピン752に表皮30が突き刺さることで、アシストモデル70に表皮30が自動的に保持され、図5中点線位置までアシストモデル70が上昇することで、搬送用コンベア80からアシストモデル70側に表皮30を移行させることができる。従って、図6に示すように、アシストモデル70における表皮ホルダ用プレート75の長さL1は、搬送用コンベア80における搬送ベルト83の間隔L2より短く設定されている。そして、アシストモデル70の固定用ピン752で表皮30を保持して、アシストモデル70は、図5中実線位置まで下降して、その後、搬送機構によりアシストモデル70は成形上下型50,60内の成形位置Cまで搬送される。
【0040】
次に、図7乃至図17に基づいて、上記成形装置40を使用してドアトリム10を成形する各工程について説明する。まず、図7に示すように、台車110に表皮30が複数枚積層状態にストックされており、台車110上方に表皮供給枠100が位置決めされ、表皮供給枠100が下降して、最上位の表皮30を吸盤102により吸着保持する。次いで、表皮供給枠100が上昇し、搬送機構により表皮供給枠100は表皮投入位置Aまで搬送され、その後、表皮供給枠100は下降して、搬送用コンベア80上に表皮30をセットする。この時、表皮30は、搬送用コンベア80における両側の搬送ベルト83の表皮保持用ニードル84により保持される。
【0041】
次いで、図8に示すように、表皮30が表皮投入位置Aにセットされれば、搬送用コンベア80は駆動ローラー81が駆動して図8中矢印方向に表皮30が搬送され、その途中でヒーター装置90により表皮30は表裏面側から加熱軟化処理される。その後、図9に示すように、ヒーター装置90により所定温度まで昇温した表皮30は、成形待機位置Bまで搬送され、この成形待機位置Bでアシストモデル70に表皮30が保持される。すなわち、この成形待機位置Bにおいてアシストモデル70は、シリンダ72の伸長動作により図9中矢印方向に上昇し、図10に示すように、アシストモデル70の表皮ホルダ用プレート75の固定用ピン752が表皮30の対向する2辺を保持して更に上昇することで表皮30をアシストモデル70で保持する。
【0042】
その後、アシストモデル70はシリンダ72の収縮動作により、図11中実線位置まで下降するが、このアシストモデル70の上下動作においては、搬送用コンベア80の搬送ベルト83の間隔L2が適正に設定されているため、両者が干渉することがない。従って、表皮30が台車110から表皮供給枠100により吸着保持され、搬送用コンベア80にセットされた後、搬送用コンベア80の循環動作並びにアシストモデル70の上下動作により表皮30はヒーター装置90により所定温度に加熱軟化処理された後、即座にアシストモデル70に保持されることになる。
【0043】
そして、アシストモデル70に表皮30が保持された状態で図12に示すように、アシストモデル70は成形位置Cまで表皮30を搬送する。すなわち、成形上下型50,60が型開き状態にある時、アシストモデル70が表皮30を保持した状態で成形上下型50,60の型内に投入される。その後、図13に示すように、アシストモデル70を上昇駆動させる。具体的には、搬送テーブル71上に取り付けられているシリンダ72が伸長動作することで、支持台座73が所定ストローク上昇し、これにより、モデル型74が支持台座73のストロークと同一ストローク上昇するとともに、表皮ホルダ用プレート75についても、一体的に上昇する。そして、このアシストモデル70の上昇動作と同期して、成形上型50の真空吸引機構Vcが稼動する。この時、表皮ホルダ用プレート75が表皮30を介して成形上型50に当接した時点で成形上型50の内面の真空吸引機構Vcが稼動して真空吸引孔53を通じて表皮30が成形上型50の型面に沿って真空成形され、アシストモデル70が完全に上昇した時点で成形上型50の外周の真空吸引機構が稼動し、外周真空吸引孔53aを通じて真空吸引力が作用し、表皮30を成形上型50の型面に確実に保持することができる。
【0044】
従って、図示するように、成形上型50の型面52に沿って真空成形されるとともに、成形上型50の型面52と、アシストモデル70におけるモデル型74との間で表皮30がプレス圧着加工されることで、表皮30が薄肉状に成形される。この時、成形上型50における型面52に刻設されている絞模様が精度良く表皮30の表面に転写されるとともに、コーナー部等、シャープな形状出しが可能となる。このように、表皮30は、成形上型50における真空成形と、成形上型50とアシストモデル70との間のプレス圧着成形により、ほぼ均一な厚みの薄肉状に成形されるとともに、表皮30を加熱軟化処理してすぐに成形が行なわれるため、待ち時間が少なく、シャープな形状出しが可能になるとともに、絞模様を精度良く転写することができる。
【0045】
その後、成形された表皮30を真空吸引力により成形上型50に保持した状態でアシストモデル70におけるシリンダ72が収縮動作することで、図14に示すように、モデル型74と表皮ホルダ用プレート75が下降する。この時、表皮30は、真空吸引力により成形上型50に吸着保持されているため、表皮30は表皮ホルダ用プレート75に対して簡単に剥離する。その後、図15に示すように、アシストモデル70は、搬送テーブル71が図示しない搬送機構の動作により図15中矢印方向に沿って後退し、成形上下型50,60外に退避する。
【0046】
次いで、図16に示すように、プレス機51の駆動により、成形上型50は所定ストローク下降するが、成形上型50の型面52は、表皮30が薄肉状で、かつ真空成形された状態で保持されており、成形上下型50,60の型クリアランスが所定位置に到達した時、射出機61からホットランナ62、ゲート63を通じて溶融樹脂Mを成形下型60の型面に供給する。この溶融樹脂Mの素材としては、上述した汎用の熱可塑性樹脂材料が使用できる。本実施例では、住友ノーブレンBUE81E6(住友化学(株)製ポリプロピレン、メルトインデックス=65g/10分)が使用されており、タルクが適宜割合で混入されていても良い。
【0047】
このように、本発明方法においては、上述したように、アシストモデル70により表皮30が自動的に保持されることで、表皮30のセット作業が簡単に行なえ、かつ加熱後、迅速に行なわれるため、表皮30の成形性を高めることができる。更に、成形上型50の型面に沿って薄肉状に成形された表皮30が保持された状態で溶融樹脂Mが供給されるため、表皮30のクッション層32の裏面と成形下型60の型面とのクリアランスがほぼ一定に確保されており、溶融樹脂Mの流動性を良好に維持できるとともに、表皮30がテント張り状態にならないため、クッション層32に溶融樹脂Mからの熱的ダメージがおよぶことが少なく、クッション層32のクッション性能を良好に維持でき、製品のソフト感を強調できる。
【0048】
そして、図17に示すように、プレス機51の駆動により、成形上型50を下死点まで下降操作すれば、溶融樹脂Mがキャビティの隅々にまでいきわたり、樹脂芯材20が所望の曲面形状に成形されるとともに、この樹脂芯材20の表面側に表皮30が一体化されてドアトリム10の成形が完了する。次いで、成形完了後は、プレス機51の駆動により成形上型50が上昇し、型開きが行なわれた後、所要形状に成形された積層成形体であるドアトリム10を取り出せば良い。
【0049】
以上のように、本発明方法によれば、ドアトリム10における表皮30は、表皮供給枠100により搬送用コンベア80上に投入されれば、搬送用コンベア80並びにアシストモデル70の動作により、自動的に成形上型50の型面にセットされて、真空・プレス成形されるため、従来のように、2名の作業者で成形上型50に手作業によりセットする必要がなく、作業性を向上させることができるとともに、作業時間も短縮化でき、大幅なコストダウンを招来することができる。
【0050】
更に、本発明方法においては、表皮30を表皮供給枠100により搬送用コンベア80に投入すれば、ヒーター装置90により所定温度に加熱軟化処理され、成形待機位置Bで自動的にアシストモデル70に保持されて、成形位置Cまで搬送され、素早く真空・プレス成形されるため、表皮30を加熱処理した後、成形を開始するまでの待ち時間が少なく、表皮30を適正温度に維持できることから、ドアトリム10におけるアームレスト12等のコーナー部のハイライト線等、シャープな外観形状を精度良く現出することができるとともに、絞模様等も忠実に転写でき、絞転写性も良好に維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明した実施例では、樹脂芯材20の表面に表皮30を同時に成形してなる一体型のドアトリム10の成形方法に本発明方法を適用したが、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージサイドトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品全般の成形方法に本発明方法を適用することができる。また、鉄道車両等の内装パネルや家屋の内装パネル等の成形方法について本発明を適用することもできる。更に、成形上下型50,60の型締め直前に溶融樹脂Mを供給するモールドプレス成形工法を使用したが、成形上下型50,60を型締めした後、溶融樹脂Mを射出充填する射出成形工法に流用することもできる。
【符号の説明】
【0052】
10 ドアトリム
20 樹脂芯材
30 表皮
40 成形装置
50 成形上型
51 プレス機
52 型面
53 真空吸引孔
53a 外周真空吸引孔
54 空気室
55 真空ポンプ
56 真空吸引管
57 開閉バルブ
60 成形下型
61 射出機
62 ホットランナ
63 ゲート
70 アシストモデル
71 搬送テーブル
72 シリンダ
73 支持台座
74 モデル型
75 表皮ホルダ用プレート
80 搬送用コンベア
81 駆動ローラー
82 従動ローラー
83 搬送ベルト
84 表皮保持用ニードル
90 ヒーター装置
100 表皮供給枠
101 搬送プレート
102 吸盤
110 台車
M 溶融樹脂
Vc 真空吸引機構
A 表皮投入位置
B 成形待機位置
C 成形位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮(30)を保持したアシストモデル(70)を成形上下型(50,60)内に投入し、成形上型(50)とアシストモデル(70)との間で表皮(30)を所要形状に成形するとともに、アシストモデル(70)を型外に退避させ、成形上下型(50,60)を型締めして形成されるキャビティ内に溶融樹脂(M)を供給することで樹脂芯材(20)を所要形状に成形するとともに、樹脂芯材(20)の表面に表皮(30)を一体化してなる積層成形体(10)の成形方法において、
表皮供給枠(100)の動作により、搬送用コンベア(80)の表皮投入位置(A)に表皮(30)を供給し、搬送用コンベア(80)の駆動により、表皮(30)を搬送するとともに、ヒーター装置(90)により所定温度まで表皮(30)を加熱軟化処理して、表皮(30)を搬送用コンベア(80)の成形待機位置(B)に搬送する表皮(30)の加熱・搬送工程と、
搬送用コンベア(80)の成形待機位置(B)に位置決めした表皮(30)に対して下方からアシストモデル(70)を上昇させて、アシストモデル(70)の表皮ホルダ用プレート(75)で表皮(30)を保持して、搬送用コンベア(80)から表皮(30)を離脱させて上方に持ち上げ、続いて、アシストモデル(70)を降下させた後、型開き状態にある成形上下型(50,60)内に表皮(30)を保持したアシストモデル(70)を投入し、このアシストモデル(70)のシリンダ(72)駆動により、モデル型(74)と表皮ホルダ用プレート(75)に保持した表皮(30)とを上昇させて、成形上型(50)とモデル型(74)との間で表皮(30)をプレス圧着するとともに、成形上型(50)の真空吸引機構(Vc)を動作させることで、成形上型(50)の型面に沿って表皮(30)を薄肉状に真空・プレス成形する表皮(30)の成形工程と、
前記成形工程で成形した表皮(30)を成形上型(50)の真空吸引力により成形上型(50)に保持する一方、アシストモデル(70)のシリンダ(72)駆動により、モデル型(74)並びに表皮ホルダ用プレート(75)を下降操作し、更に、アシストモデル(70)を成形上下型(50,60)の外部に退避させた後、表皮(30)を保持した成形上型(50)を所定ストローク下降操作し、成形上型(50)が下死点に到達する直前、あるいは到達した後のいずれかのタイミングでキャビティ内に溶融樹脂(M)を供給し、樹脂芯材(20)を所望の曲面形状に成形するとともに、樹脂芯材(20)の表面に表皮(30)を積層一体化する樹脂芯材(20)と表皮(30)との一体化工程と、
からなることを特徴とする積層成形体の成形方法。
【請求項2】
樹脂芯材(20)の表面に表皮(30)を一体化してなる積層成形体(10)を所要形状に成形してなる積層成形体(10)の成形装置(40)において、
前記成形装置(40)は、所定ストローク上下動する可動側の成形上型(50)と、成形上型(50)の下方に位置する固定側の成形下型(60)と、成形上下型(50,60)内に投入され、成形上型(50)と協働して、表皮(30)にプレス圧を加えるアシストモデル(70)と、表皮投入位置(A)から成形上下型(50,60)手前の成形待機位置(B)まで表皮(30)を搬送する搬送用コンベア(80)と、搬送用コンベア(80)で搬送される表皮(30)を加熱処理するヒーター装置(90)とから構成され、上記アシストモデル(70)は成形待機位置(B)と成形位置(C)との間で往復動作される一方、上記搬送用コンベア(80)は、ローラー(81,82)により循環駆動される左右一対の搬送ベルト(83)から構成され、左右の搬送ベルト(83)間の間隔(L2)を大きく確保して、アシストモデル(70)の上下動を許容するとともに、アシストモデル(70)は、シリンダ(72)駆動により、搬送用コンベア(80)上の表皮(30)をアシストモデル(70)の表皮ホルダ用プレート(75)で突き上げ保持するようにしたことを特徴とする積層成形体の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−234689(P2010−234689A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86106(P2009−86106)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】