説明

空冷式内燃エンジンを備えた手で操縦される作業機

【課題】手で操縦される作業機において、好ましくない作動環境条件のもとでも空冷式内燃エンジンの十分な冷却を保証する。
【解決手段】内燃エンジン(10)の少なくとも1つの構成要素の温度を間接または直接に検出するための温度センサ(35,45,55)が設けられている。前記温度センサ(35,45,55)の温度信号はパワー制御部(40)に供給される。パワー制御部(40)は、所定の温度値に達したときに、内燃エンジン(10)のパワーが変化するように内燃エンジン(10)の作動パラメータを変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の手で操縦される作業機、特にパワーチェーンソー、研磨切断機、剪定ばさみ、刈払い機、送風機等の作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の手で操縦される可搬式作業機はたとえばパワーチェーンソーとして多方面で使用され、ケーシング内に配置されて冷却ファンを介して空冷される燃料混合潤滑型内燃エンジン、主に2サイクルエンジンを含んでいる。
【0003】
冷却ファンはエンジンのクランク軸に直接フランジ付けされ、その結果空気搬送量は内燃エンジンの回転数に比例している。
【0004】
冷却空気はケーシングの空気吸込格子を介して冷却空気ファンの中へ流入し、ケーシングを貫通するようにシリンダを介して案内される。シリンダは適当な冷却フィンを備えている。冷却ファンの空気格子への空気の供給が阻止されると、または、空気格子が木の葉等によって塞がれると、冷却空気搬送率が低下する。
【0005】
このため、内燃エンジン内部の温度(たとえばシリンダの温度)が望ましくない値になり、内燃エンジンの寿命を阻害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、手で操縦される作業機において、好ましくない作動環境条件のもとでも空冷式内燃エンジンの十分な冷却を保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴ある構成によって解決される。
【0008】
本発明によれば、内燃エンジンの構成要素の温度が間接的にまたは直接温度センサを介して検出され、温度センサの出力信号はパワー制御部に供給される。パワー制御部は、所定の温度値に達したときに、内燃エンジンのパワーが変化し、特に低下し、それによって内燃エンジンの温度が低下するように内燃エンジンの作動パラメータを変化させる。
【0009】
有利には、監視される前記構成要素は内燃エンジンのシリンダである。該構成要素の温度を検出するため、シリンダに直接温度センサが配置されていてよい。
【0010】
クランクケース内に温度センサを配置すると有利である。温度センサは、クランクケース内にあるガス(たとえば混合気)の温度を検出するため、クランクケース内の混合気吸込口のガス流内にあってよい。このガス温度測定により、内燃エンジンまたはその構成要素の温度の間接的な測定が可能である。
【0011】
また、温度センサを、エンジンブロックに固定されている、または、内燃エンジンのシリンダに直接固定されている点火ユニット内に配置してもよい。点火ユニット内の温度センサは、エンジンブロックまたはシリンダの直接の温度に比例する間接的な温度を表示する。間接的な温度信号に基づき、パワー制御部は内燃エンジンの作動パラメータへの介入を行う。
【0012】
本発明によれば、温度センサは点火制御部の電子回路基板またはパワー制御部の回路基板に配置され、その結果外部のセンサ導線は必要ない。
【0013】
温度の変更、特に温度の低下は、燃料空気混合気を濃厚にすることによって簡単に行われる。蒸発する補助的な燃料のエンタルピーは内燃エンジンのシリンダから熱を奪い、その結果シリンダの温度は、よって内燃エンジンの構成要素の温度も低下する。冷却空気流の不具合または減少の際にも、予め設定可能な最大温度値を越えないように保証されている。
【0014】
燃料空気混合気の濃厚化は、燃料供給量を増大させることによって簡単に達成することができる。燃料供給量の変更は、燃料供給の時間的経過を適当に変化させることによっても得られる。これとは択一的に、または、これと同時に、空気供給量を減少させてもよく、このことは、燃料量が同じである場合、同様に燃料空気混合気を濃厚化させることになる。
【0015】
内燃エンジンの温度制御を行うための他の処置として、パワー制御部がエンジンを回転数の点で制限することも有利である。このため、好ましくは点火時点を変更し、特にクランク軸の1回転または複数回転に対し点火を休止し、或いは、点火列のみを変更してもよく、すなわち以後の点火に対し特徴的な点火列を予め設定する。点火の休止は規則的に行われ、たとえばクランク軸の2回転ごとまたは3回転ごとに行うことができ、或いは、不規則に行ってもよい。パワー制御部はエンジンを完全に切ることができる。対抗処置の導入にも関わらず最大温度限界値を越えると、パワー制御部は、エンジンを完全に切るように設計されている。
【0016】
有利な構成では、点火の休止は、該休止が利用者によって音で知覚可能であるように実施される。これにより、たとえば内燃エンジンの構成要素の温度が異常に高くなったことが音で示される。
【0017】
利用者に対する光学的および/または音響的表示により、利用者は臨界温度値に関する情報を受けることができる。
【0018】
他の安全機能として、特定の温度値に達したときにパワー制御部がタイマーをスタートさせ、このタイマーの作動が終了した後に、受信した温度信号がまだ前記温度値の範囲にある場合、或いは、これを越えている場合に、パワー制御部はエンジンを切る。
【0019】
本発明の他の構成では、温度を低下させるため、パワー制御部は回転数を変化させ、特にアイドリング回転数を変化させ、特に上昇させる。これによりアイドリング時のより強力な内燃エンジンの冷却が与えられている。内燃エンジンの定格回転数および/または最大回転数がパワー制御部により変化すると、特に低下すると、可能なヒートインプットが低下し、その結果内燃エンジンの温度はそれ以上上昇せず、或いは、低下する。
【0020】
パワー制御部が点火に介入して、たとえば点火時点または点火エネルギーを、有利には点火エネルギーのエネルギー経過を変化させると、同様に内燃エンジンの温度への介入を行うことができる。これは、パワー制御部が内燃エンジンの吸気口および/または排気口の制御時間を変化させても、或いは、排ガス消音器の排ガス背圧を変化させても有利に達成される。
【0021】
特に、パワー制御部は、パワーに介入するため、よって内燃エンジンの温度に介入するため、クランクケース圧を、好ましくはクランクケース圧の圧力経過を変化させ、或いは、内燃エンジンの圧縮を変化させる。
【0022】
本発明の他の構成では、エンジンのパワーに作用するため、供給される燃料の温度を変化させ、或いは、燃料の装入部位を変化させる。
【0023】
特に補助的な冷却材供給を制御することによって燃料供給量を変化させることにより、内燃エンジンの温度に直接影響を与えることができる。
【0024】
本発明の他の構成は他の請求項、以下の説明、図面から明らかである。図面には、以下に詳細に説明する本発明の実施形態が図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】パワーチェーンソーを例にした手で操縦される作業機の斜視図である。
【図2】図1の作業機の駆動エンジンの図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、一般的に言って、手で操縦される作業機1に関わる。作業機1は図1にパワーチェーンソーとして例示されている。手で操縦される作業機1は研磨切断機、剪定ばさみ、刈払い機、送風機等の可搬式作業機としても実施されていてよい。
【0027】
図示した手で操縦される可搬式作業機1、すなわちパワーチェーンソーは、実質的に、作業工具3の駆動手段としての内燃エンジン10が設けられているケーシング2から成っている。図示したパワーチェーンソーの場合、作業工具はソーチェーン3であり、ガイドレール4上を周回する。
【0028】
パワーチェーンソーのケーシング2には、作業機1の長手方向に延在し、操作要素6を備えた後部グリップ5が設けられている。前部グリップ7はケーシング2から突出して、ケーシング2から間隔をもって位置しており、その結果、湾曲グリップとして実施されている前部グリップ7は上部部分にも側部部分にも係合することができる。前部グリップ7の前方には手保護部材8が支持され、手保護部材8は矢印方向9に可動で、周回するソーチェーン3のための安全制動装置の起動またはレリーズのために用いる。
【0029】
作業機1のケーシング内に設けられている内燃エンジン10は燃料混合潤滑型エンジンであり、特に空冷式燃料混合潤滑型エンジンである。合目的には、作業工具3の駆動手段として2サイクルエンジンが設けられており、特に単気筒2サイクルエンジンが設けられている。空冷式燃料混合潤滑型エンジン、潤滑が別個に行われる4サイクルエンジン、或いはロータリーピストンエンジンの択一的な使用も有利である。
【0030】
図2が示すように、エンジン10はシリンダ11を有し、シリンダ11はピストン12によって画成されている燃焼室13を有している。ピストン12は連接棒14を介してクランク軸15を駆動し、クランク軸15は合目的には一端で遠心クラッチ(図示せず)を介して駆動工具3を駆動する。
【0031】
クランク軸の他端16には冷却ファン20のファンホイール17が取り付けられ、その結果ファンホイール17はクランク軸15の回転数で回転する。冷却ファン20のファンホイール17とクランクケース18との間には発電機19が配置され、発電機19は気化器加熱部、グリップ加熱部、サーボモータ、電磁弁等の内燃エンジン10の電気消費装置の作動のために使用する。発電機19はエンジン制御部の電子ユニットおよび点火制御部用の供給電圧も提供することができる。
【0032】
図示した実施形態では、冷却ファン20のファンホイール17は電磁クラッチ53を介して駆動される。電磁クラッチ53は制御線52を介してパワー制御部40によって制御される。パワー制御部40はクラッチのスリップを0(クラッチオン)と1(クラッチオフ)の間で変化させることができ、これによりファンホイール17の回転数は可変であり、冷却空気流を必要に応じて調整することができる。従って、一方では、内燃エンジン10の作動温度への急速な加熱をわずかな冷却空気流(大きなスリップ)によって達成され、他方たとえば完全負荷でエンジン10を冷却するために冷却空気の供給量の増量(小さなスリップ)が調整可能である。
【0033】
ファンホイール17がクランク軸15と相対回転不能に結合されていれば、ファンホイール17とともに磁極51が回転する。磁極51は、点火ユニット21のヨークに点火火花用のエネルギーを発生させるとともに、クランク軸15の位置信号を発し、この位置信号は点火制御部30に送られる。点火制御部30は、高電圧線22を介して、内燃エンジン10のシリンダ11内にねじ込まれてその電極でもって燃焼室13内へ突出している点火プラグ23と結合されている。クランク軸15の回転数と角度位置とに依存して点火制御部30は点火プラグ23に点火火花を発生させ、燃焼室13内にある燃料空気混合気を着火させる。
【0034】
ファンホイール17がクラッチ53を介してクランク軸15と結合されていれば、クランク軸15の磁極51は固定的に割り当てられる。これにより磁極51は、ファンホイール17の回転数および回転位置に関係なく、クランク軸15とともに角度正確に回転する。
【0035】
燃料混合潤滑型内燃エンジンのクランクケース18には吸気通路37が開口し、該吸気通路の吸気口24は本実施形態ではピストン12のピストンスカートによって制御されている。ダイヤフラム式吸気口または弁制御式吸気口を実施してもよい。吸気通路37には制御機構としてスロットルバルブ25が配置され、該スロットルバルブによって吸気通路37の流動横断面積を調整可能である。
【0036】
なお、スロットルバルブ25の位置は有利には電磁式調整部材26(たとえばステッピングモータ)のようなアクチュエータによって調整することができる。
【0037】
内燃エンジンの図示実施形態では、吸気通路37を介してクランクケース18に供給される燃焼空気は掃気通路27と28を介して燃焼室13に供給される。従って、クランクケース18は掃気通路27と28を介して燃焼室13と連通し、この場合燃焼室13への掃気通路27と28の開口部はピストン12によって制御される。
【0038】
同様にピストン12により、燃焼室13から排ガスを排出するための排気口29も制御される。
【0039】
本実施形態では、排気口29の上方に、排気口29の上部制御エッジを変化させる調整装置50が設けられている。これによって燃焼後の排気口29の開口時点を変更させることができる。
【0040】
内燃エンジン10の作動に必要な燃料量は、本実施形態では、電磁燃料弁31によって供給される。電磁燃料弁31は、燃料管32を介して、予圧状態にある燃料システムと連通している。燃料弁31は制御接続線33を介して点火制御部30によって作動し、この場合内燃エンジン10の負荷状態と回転数とに整合した燃料量が供給される。これをデジタル弁を介して行うのが合目的であり、すなわち燃料弁31を形成し、パルス幅を変調制御される弁を介して行うのが合目的である。燃料弁31は燃料を排気口から遠い側の掃気通路28へ搬送する。燃料装入部位として吸気通路37を選定するのが合目的である。
【0041】
燃料弁31とは択一的に、または、燃料弁31に加えて、本実施形態では、他の燃料噴射部位が設けられている。すなわち、燃料を直接燃焼室3に噴射する点線で示した噴射弁38がシリンダ11に設けられている。内燃エンジン10の1つの構成要素の検出温度に依存して燃料供給部位を選定するため、噴射弁38も点火制御部30および/またはパワー制御部40によって制御される。
【0042】
図2が示すように、燃料供給管32には燃料のための加熱装置90が設けられ、燃料を好ましい温度にもたらすようになっている。この種の加熱装置を燃料弁31に一体に設けてもよい、或いは、気化器の噴射ノズルに取り付けてもよい。パワー制御部40は、内燃エンジン10のエンジンパワーまたは作動温度の所望の制御応じて加熱装置90を制御する。
【0043】
内燃エンジン10の作動時に、ピストン12が加工すると、クランクケース18に吸い込まれた量の燃焼空気が掃気通路27と28を介して燃焼室13へ搬送され、その際同時に搬送通路28の流動に燃料弁31を介して燃料が付加される。ピストン12が上昇すると、燃焼室13内にある燃料空気混合物が圧縮され、点火制御部30によって制御されて所定のクランク軸位置で点火される。ピストン12が上昇する際、吸気通路37を介して新気がクランクケース18に吸い込まれる。燃焼室13内の混合物の点火後、ピストン12が下降し、クランク軸15が回転し、その際排気部29が開いて、排ガスを排ガス消音器61を介して排出する。
【0044】
燃料弁31介しての燃料の付加は、混合気が掃気通路28を介してクランクケース18内へ達し、その結果完全な燃料混合潤滑が保証されるように、行われる。
【0045】
シリンダ11は空冷式シリンダであり、その外周に適当な冷却フィン34を担持している。冷却ファン20のファンホイール17によって発生した空気流は、シリンダ11を介して案内されたケーシング2を貫通し、適当な個所でケーシング2から出る。冷却空気の搬送量はファンホイール17の可変回転数に依存しており、すなわち電磁クラッチ53の設定スリップと駆動するクランク軸15の回転数とに依存している。
【0046】
シリンダの温度を監視するため、シリンダ11内に温度センサ35が設けられ、その出力信号は信号線39を介してパワー制御部40に送られる。パワー制御部40ではシリンダ11の温度が監視され、温度信号が所定の温度値に達するかこれを越えると、たとえばシリンダ11の温度が高すぎると、パワー制御部40がたとえば点火制御部30に介入して、内燃エンジン10の作動温度を、そのパワーが変化するように、特にパワーが低下するように変更する。その結果シリンダ11の温度が下がる。内燃エンジン10のパワーの変更は燃料空気混合気を濃厚にすることによって簡単に行うことができる。これは、第1実施形態では、空気供給量を不変にした状態でより多くの燃料を供給するために燃料弁31を制御線33を介してより長い時間開口させることによって行うことができる。混合気が濃厚になることによって内燃エンジンのパワーが低下する。より多くの量の蒸発性燃料がシリンダ11から熱を奪い、一部が燃焼して排ガス排気口29を介して排出される。
【0047】
作動温度を低下させる目的で内燃エンジン10のパワーを変化させるには、燃料供給量の時間的経過、すなわち燃料の流量を変化させても十分可能である。このため、パワー制御部40が適宜電磁燃料弁31の制御に介入する。
【0048】
これとは択一的に、制御線36と調整部材26とを介してスロットルバルブ25の位置を変更させてもよく、たとえば吸気通路37の流動横断面が狭くなるようにスロットルバルブ25を変化させてもよい。これによってより少量の燃焼空気がクランクケース内へ到達し、掃気通路27と28を介して燃焼室13内へ達し、その結果、燃料の量が不変だと仮定すると、同様に混合気が濃厚になる。内燃エンジン10のパワーが低下し、温度が復帰する。
【0049】
燃料を増量して燃焼空気供給量を減らすため、合目的には、燃料供給の増量と吸気通路37の流動横断面の狭隘化の双方を行う。
【0050】
本発明の他の構成では、点火回路部30が1回または複数回の点火を休止させるようにすることができる。これが意味するのは、たとえば第1の温度値に達したときに、たとえばクランク軸15の2回転ごとに点火火花を発生させるようにパワー制御部40が点火制御部30に介入するということである。従って2回転ごとに燃焼が行われず、これはシリンダ温度を直接に低下させることになる。なお、クランク軸の3回転ごとまたは4回転ごとに点火を休止させ、或いは、クランク軸の複数回転ごとに順次点火を休止させるのも合目的である。特に、不規則な点火休止系列または特定の点火系列も合目的である。
【0051】
本発明の他の構成では、不点火を利用者がはっきり認識できるように点火休止を設定することもできる。このようにして、所定の温度値を越えたことを音で知らせることが可能である。
【0052】
内燃エンジンのパワーを低下させるため、点火制御部30を介して点火角または点火時点を調整すること、たとえば「遅」に調整することも合目的である。これによってもパワーの低下、よってシリンダ温度の低下が可能である。
【0053】
このように、パワー制御部40を介して、検出した温度に依存して定格回転数の動的制御も置換することができる。測定した作動温度が所定の温度値よりも上であれば、内燃エンジン10の達成可能な定格回転数を低下させる。
【0054】
同様にして、温度を低下させるために、パワー制御部がアイドリング回転数を変化させること、特に上げることが可能である。これによってアイドリングの内燃エンジンのより強力な冷却が可能である。
【0055】
また、パワー制御部によって内燃エンジンの最大回転数を変化させてもよく、特に低下させてもよい。これによって可能なヒートインプットが低下する。内燃エンジンの温度はこれ以上上昇せず、或いは、低下する。
【0056】
点火制御部の範囲内で、点火火花に対し点火エネルギーが減少して供給されるようにパワー制御部が点火制御部30に介入するようにしてもよい。点火火花が弱ければ、火炎面の形成が変化し、よってシリンダ11内へのヒートインプットが変化する。このように、火炎面の形成を制御するため、エネルギーの時間的経過を変化させてもよい。
【0057】
本発明の他の構成では、作業機1のケーシング2に、たとえばLEDとして形成される光学表示器41が設けられる。光学表示器41はパワー制御部40によって直接制御するのが合目的であり、この場合温度の超過程度を利用者に表示することのできる多色LEDが使用される。
【0058】
たとえば、標準作動で緑色に発光しているLEDが、第1の温度閾値を越えたときにLEDの色が制御変更により黄色に変化し、次の第2の温度閾値を越えたときにLEDの色が赤に制御変更されるようにLEDを制御することが可能である。第3の温度閾値を越えたときにはLEDを赤色で点滅制御するようにしてよい。
【0059】
外部の温度センサ35を設けずに済むようにするため、温度センサ45を、内燃エンジン10のエンジンブロックに固定されている点火ユニット21内に設けることが合目的である。点火ユニット21は内燃エンジン10と直接結合されているため、或いは、同じ空間にあるので、温度センサ45を点火ユニット21内に配置すれば、温度センサ45はシリンダ温度に比例する温度を(場合によっては遅延して)直接報知する。温度値を適当に選定することにより、温度センサ45の出力信号に依存して前述のようにパワー制御部40の作動が可能である。
【0060】
本発明の有利な構成では、点火制御部30またはパワー制御部40のプリント回路板に直接温度センサ55が設けられている。このようにすればセンサ導線を設ける必要がない。点火制御部30またはパワー制御部40は同様に内燃エンジン10のケーシング2内部に配置されているので、電子装置のプリント回路板に配置されている温度センサ55は、シリンダ温度に対する比例信号を(場合によっては遅延して)与えることができる。温度値を適宜適合させることにより、電子回路板に配置されているセンサ55を用いて、シリンダ11の温度を低下させることを目的としたパワー制御も可能である。
【0061】
クランクケース18を管理有するガス体積流の温度を測定する温度センサ65をクランクケース18内に設けることも合目的である。エンジン10の構成部材からクランクケース18内に封じ込まれているガス体積流に直接熱伝達が行われるので、ガス温度を検出することはエンジン10の作動温度を直接測定することである。温度センサ65は信号線39’を介してパワー制御部40に接続されていてよい。
【0062】
本発明の他の構成では、パワー制御部40は、温度限界値を越えたときにスタートするタイマー42を含んでいる。
【0063】
温度限界値が越えたままであると、温度弊害を回避するため、所定時間が経過した後にパワー制御部40によってエンジン10が切られる。
【0064】
パワー制御部40は有利には点火制御部30のケーシング内に配置され、このことで点火制御部30への直接の介入が容易になる。合目的には、点火制御部30とパワー制御部40と温度センサ55とは1つの共通のプリント回路板に配置されている。
【0065】
点火時の介入の可能性以外に、さらにこれとは択一的に、或いはこれに加えて、たとえば内燃エンジンの作動温度を能動的に制御するためには、内燃エンジン10のパワーを変化させる手段が適している。適宜介入することにより、温度を低下させることができ、必要な場合には上昇させることができる。たとえば、内燃エンジン10の吸気口24および/または排気口29の制御時間が変化するようにパワー制御部40が介入すると、これはパワーに対し直接作用し、従ってエンジン10の温度に直接作用する。たとえば排気口29の場合に介入するために調整装置50が制御され、これによって排気口29の上部制御エッジが延長されて制御時間が変化する。
【0066】
排気口29に接続されている排ガス消音器61に介入することにより、同様にパワーを制御することができる。たとえば排ガス消音器61の流動経路内に調整可能なスロットル60を使用すると、排ガス背圧を変化させることができる。パワー制御部40は、検出した温度値に依存して内燃エンジン10の排ガス消音器61内のスロットル60を制御する。
【0067】
パワー制御は、クランクケース圧の制御によっても行うことができる。このため、クランクケース18の適当な個所に、パワー制御部40によって電磁式に制御される弁70が設けられ、この弁70を介して圧力を逃がし、或いは補助的に圧力を発生させる。クランクケース18内の圧力経過の変化により燃焼室13の充填が影響し、これは直接内燃エンジン10のパワーおよびその作動温度に作用する。
【0068】
同様にして、パワー制御部40は圧縮をも変化させることができる。このため、シリンダ11には、燃焼室13を周囲または大気圧と連通させる圧力弁80が設けられる。パワー制御部はパワーへの所望の介入に応じてこの圧力弁を制御する。
【0069】
本発明の他の構成では、パワー制御部40を介して補助潤滑剤を供給することも合目的である。図示した実施形態では、燃料システムと結合されている潤滑剤タンク77が設けられている。図示の実施形態では、潤滑剤タンク77は流量弁78を介して燃料管32と連通している。流量弁78は制御管79を介してパワー制御部40と連通し、パワー制御部40は検出した温度値に依存して潤滑剤を配量して内燃エンジン10のパワーを変化させる。
【0070】
内燃エンジン10と熱伝達結合させて蓄熱器99を設けるのが合目的である。本実施形態では、蓄熱器99はクランクケース18に結合されている。蓄熱器99と内燃エンジン10との間での熱伝達はパワー制御部40を介して制御することができ、その結果作動温度が低い段階で内燃エンジン10に熱が供給され、作動温度が高い段階で内燃エンジン10から熱が逃がされる。
【0071】
本発明の他の構成では、所定の温度値に達したときに、内燃エンジンに供給される燃焼空気の温度を、内燃エンジンのパワーが影響を受けるように、特に低下するように変化させることができる。その結果、内燃エンジンの温度が低下する。供給される燃焼空気または吸込空気の温度を低下させる以外に、他のパラメータとして、供給される燃焼空気または吸込空気の圧力を制御することもでき、これには内燃エンジンの温度を低下させる作用が伴う。
【0072】
内燃エンジンのパワーを変化させるための上記処置は個々に使用しても、また組み合わせてもよい。異なる処置の組み合わせは、特に迅速な介入のための組み合わせは、作動温度に迅速に作用するので有利である。
【符号の説明】
【0073】
1 作業機
2 ケーシング
3 作業工具
5,7 グリップ
10 内燃エンジン
11 シリンダ
12 ピストン
13 燃焼室
15 クランク軸
18 クランクケース
20 冷却ファン
23 点火プラグ
25 スロットルバルブ
30 点火制御部
31 電磁燃料弁(燃料配量装置)
35,45,55,65 温度センサ
37 吸気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手で操縦される作業機(1)を操縦するためのグリップ(5,7)と、ケーシング(2)内に配置される、作業工具(3)のための駆動手段としての空冷式燃料混合潤滑型内燃エンジン(10)と、吸気通路(37)と、冷却ファン(20)とを備え、前記内燃エンジン(10)がピストン(12)によって画成される燃焼室(13)を備えたシリンダ(11)を含み、前記ピストン(12)が、クランクケース(18)内に支持されて前記作業工具(3)と駆動結合されているクランク軸(15)を駆動し、前記燃焼室(13)に、該燃焼室(13)内へ突出している点火プラグ(23)によって点火される燃料空気混合気が供給され、前記点火プラグ(23)が、前記クランク軸(15)の回転数および角度位置に依存して点火火花を発生させるために点火制御部(30)によって制御され、前記吸気通路(37)の流動横断面積がスロットルバルブ(25)の位置に依存して調整可能であり、該スロットルバルブ(25)の位置が燃料配量装置(31)によって供給される燃料量と整合しており、前記冷却ファン(20)が前記シリンダ(11)を冷却するための冷却空気流を発生させるために設けられている作業機において、
前記内燃エンジン(10)の少なくとも1つの構成要素の温度を間接または直接に検出するための温度センサ(35,45,55)が設けられていること、
前記温度センサ(35,45,55)の温度信号がパワー制御部(40)に供給され、該パワー制御部(40)は、所定の温度値に達したときに、前記内燃エンジン(10)のパワーが変化するように前記内燃エンジン(10)の作動パラメータを変化させること、
を特徴とする作業機。
【請求項2】
前記内燃エンジン(10)のパワーを低下させることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記温度センサ(35,65)がシリンダ(11)にまたはクランクケース(18)内に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項4】
前記温度センサ(65)が混合気吸込部のガス流内に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記温度センサ(65)が前記クランクケース(18)のガス流内に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の作業機。
【請求項6】
前記温度センサ(45,55)が点火ユニット(21)の前記点火制御部(30)または前記パワー制御部(40)の回路基板に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の作業機。
【請求項7】
前記パワー制御部(40)が燃料空気混合気を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項8】
前記パワー制御部(40)が燃料空気混合気を濃厚化させることを特徴とする、請求項7に記載の作業機。
【請求項9】
前記パワー制御部(40)が、燃料供給量を増大させ、および/または空気供給量を減少させることを特徴とする、請求項7に記載の作業機。
【請求項10】
前記パワー制御部(40)が燃料供給の時間的経過を変化させることを特徴とする、請求項9に記載の作業機。
【請求項11】
前記パワー制御部(40)が前記クランク軸の1回転または複数の回転に対し点火を休止させ、または、点火列を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項12】
前記パワー制御部(40)が点火時点または点火を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項13】
前記パワー制御部(4)が光学的および音響的利用者用表示部(41)を制御することを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項14】
前記パワー制御部(40)が、温度値達成後に且つ所定時間経過後に前記内燃エンジンに作用する、特に該内燃エンジン(10)を切るタイマー(42)を制御することを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項15】
前記パワー制御部(40)が、アイドリング回転数を変化させ、および/または、前記内燃エンジン(10)の定格回転数および/または最大回転数を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項16】
前記パワー制御部(40)が点火エネルギーまたは該点火エネルギーのエネルギー経過を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項17】
前記パワー制御部(40)が前記内燃エンジン(10)の吸気口(24)および/または排気口(29)の制御時間を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項18】
前記パワー制御部(40)が前記内燃エンジン(10)の排ガス消音器(61)の排ガス圧を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項19】
前記パワー制御部(40)がクランクケース圧またはクランクケース圧の圧力経過を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項20】
前記パワー制御部(40)が前記内燃エンジン(10)の圧縮を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項21】
前記パワー制御部(40)が供給される燃料および/または供給される燃焼空気の温度を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項22】
前記パワー制御部(40)が燃料の装入部位を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項23】
前記パワー制御部(40)が冷却空気量を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の作業機。
【請求項24】
前記パワー制御部(40)が補助的な冷媒供給を制御することを特徴とする、請求項23に記載の作業機。
【請求項25】
前記パワー制御部(40)が補助潤滑剤を供給することを特徴とする、請求項1に記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−99446(P2011−99446A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249628(P2010−249628)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(598052609)アンドレアス シュティール アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (95)
【Fターム(参考)】