説明

窒化ガリウム基板

【課題】量産に用い得る厚さと面積を確保しながら、容易な生産方法でかけやわれの発生を抑制してオリエンテーションフラットを形成することを目的とする。
【解決手段】窒化ガリウム結晶体27から、ファセット15を有する硬質の立体構造物14を陵線等に平行に除去することで、欠けや割れの発生を抑制した窒化ガリウム基板を提供できる。しかも、ファセット15を有する硬質の立体構造物14の陵線等は特有の結晶方位を有し、かつ、明瞭であるので、立体構造物14の陵線等に平行に切断加工した窒化ガリウム結晶体27の切断線21をデバイス加工の基準線となるオリエンテーションフラットに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質窒化ガリウム基板およびそれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)などのIII族元素窒化物化合物半導体(以下、III族元素窒化物半導体またはGaN系半導体という場合がある)は、青色光や紫外光を発する半導体素子の材料として注目されている。青色光を発するレーザダイオード(LD)は、高密度光ディスクやディスプレイに応用され、また青色光を発する発光ダイオード(LED)はディスプレイや照明などに応用される。また、紫外線LDはバイオテクノロジなどへの応用が期待され、紫外線LEDは蛍光灯の紫外線源として期待されている。さらに、近年は、ハイパワーデバイスへの応用に対しても検討されている。
【0003】
LDやLED用の窒化ガリウム基板は、通常、気相エピタキシャル成長(例えば、HVPE法:ハイドライド気相成長法)によって形成されている。HVPE法に使用する装置は、石英反応管と、石英反応管を加熱するための抵抗加熱ヒータを備える電気炉とを備える。石英反応管には、第1のガス導入ポートと、第2のガス導入ポートと、排気ポートとが接続されている。第1のガス導入ポートからは、塩化水素ガスと水素ガスとの混合ガスが導入される。第2のガス導入ポートからは、アンモニアガスと水素ガスとの混合ガスが導入される。反応チャンバー内には、Ga原料のソースポートが配置されている。塩化水素は、第1のガス導入ポートからGa原料のソースポートに導入され、塩化ガリウムを生成させる。この塩化ガリウムと、第2のガス導入ポートから導入されたアンモニアとが反応し、窒化ガリウムが結晶成長する。窒化ガリウムは、石英反応管内に配置され、抵抗加熱ヒータで加熱された基板上に成長する。
【0004】
基板には、通常、サファイア基板が用いられる。この方法で得られる結晶の転位密度は、通常、10cm−2〜10cm−2であり、転位密度の減少が重要な課題となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、気相エピタキシャル成長ではなく、液相で結晶成長を行う方法も検討されてきた。しかしながら、GaNなどのIII族元素窒化物結晶の融点における窒素の平衡蒸気圧は1万atm以上であるため、従来、GaNを液相で成長させるためには1600℃で10000atmの条件(高温高圧成長法)が必要とされてきた(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、高温高圧性長法では、加圧できる空間は極端に狭く、狭い空間では、デバイス作製に必要な2インチ以上の大面積の結晶を作ることは困難である。また、大面積基板を作る大型の高温高圧合成装置はコスト高になって現実的ではない。
【0006】
最近では、アンモニアを含む窒素ガス雰囲気下においてGaとNaとの混合物を800℃、50atmで溶融させ、この融液を用いて96時間の育成時間で、最大結晶サイズが1.2mm程度の単結晶が得られている(例えば、特許文献2参照)。アンモニアを含む窒素ガス雰囲気下においてGaとNaとの混合物を800℃、50atmで溶融させる「ナトリウムフラックス法」窒化ガリウム基板では、結晶の転位密度は、通常、10cm−2〜10cm−2の結晶が得られており、気相エピタキシャル成長に比べて転位密度の低い高品質な窒化ガリウム基板ができている(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】
さらに、独立窒化ガリウム基板をインゴットより作製するには、予め、結晶成長の種となる窒化ガリウム層が形成された土台基板上に、HVPE法やMOHVPE法(有機金属塩化物気相成長法)や、MOCVD法(有機金属気相成長法)などの気相成長法や、高温高圧成長法やナトリウムフラックス成長法などの液相成長など結晶成長法により窒化ガリウム結晶体を作製する。その後、結晶体を円筒研削により、周縁部の不要部分を除去する。次に、X線回折装置により、窒化ガリウム結晶体の結晶方位を調べ、所定の結晶方位を確認し、窒化ガリウム結晶体と加工機械装置の治具との位置合わせを行い、半導体素子構造の基準となるオリエンタルフラットを形成するために端面研削を行う。その後、インゴットをスライスする。次に、スライスした独立基板を両面ラップする。さらに、各基板端面の面取り(べべリング)を行い、さらに、独立基板を片面、もしくは、両面を鏡面になるまで、ポリシュ(鏡面研磨)を行う。そして、独立基板のデバイス作製側の鏡面研磨面の機械研磨変質層をエッチングして、半導体装置用基板が完成する。
【0008】
一般に、結晶は数十μm以上の膜厚のバルク成長をさせた際には、その結晶および成長条件によって決まる特有の形態をとる。
ナトリウムフラックス法によって成長された厚さ数100μm程度の窒化ガリウム結晶でも、M面ファセットで囲まれた六角柱状の形態をもつことが確認されている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
また、HVPE成長法では、ボイド形成剥離法によって、2.5インチのGaN単結晶基板を作製し、その外周部を観察したところ、土台基板の側面にファセットが形成されることを見出している。このファセットと、基板の表面である主面(0001)面との交線をデバイス・プロセスの基準方位となるオリエンテーションフラットとする手法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0010】
同じく、HVPE成長法で、窒化ガリウムとは異なる基板、GaAs基板上に窒化ガリウムを成長し、窒化ガリウム基板を作製する方法で、成長によって基板および窒化ガリウム結晶体の側面上に窒化物堆積物が形成されるために、窒化物堆積物を効率よく除去する方法が開示されている。具体的には、窒化ガリウム結晶体の側面上に窒化物の第1の内周部を残すように外周部を研削し、次に土台基板を除去した後に、前記残留した側面上の窒化堆積物を除去することで、欠けや割れを低減し歩留まりよく、窒化ガリウム基板を提供する製造方法も開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−12900号公報
【特許文献2】特開2002−293696号公報
【特許文献3】特開2002−201100号公報
【特許文献4】特開2006−290697号公報
【特許文献5】特開2006−97058号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Journal Crystalline Growth, Vol.178, (1997),page 174
【非特許文献2】Japanese Journal of Applied Physics Vol.45,(2006)pp.L1136
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
大電流大出力の照明用光源や青紫色半導体レーザなど家電用の半導体装置として実用化を促進するためには、転位密度が少ない高品質窒化ガリウム基板の低コスト化が重要な課題である。低コスト化にあたり、基板からの半導体装置の取り数を増大させるためには窒化ガリウム結晶体のインゴットの大面積化を図り、少なくとも1インチ以上の面積を有すること、また、成長速度を向上させ、インゴットの長尺化を図ること、さらに、成長後のインゴットから、基板を製造する「後工程」の低コスト化を図る必要がある。
【0014】
LEDやLDなど光学装置において注入電流による発光波長の変化を抑えるには、結晶方位の制御が極めて重要であり、所望の結晶方位に対して±0.05度以下の精度が必要である。また、パワートランジスタにおいても安定動作を行うには、光学装置と同様に、所望の結晶方位に制御する必要がある。
【0015】
液相成長窒化ガリウム基板は、現在量産レベルにあるHVPE法など気相成長法に比べて欠陥密度が1〜2桁低く高品質であることが知られているが、これまで、基板として必要な厚さ50μm以上で、かつ大面積のオリフラ制御された液相成長窒化ガリウム基板が得られていなかった。
【0016】
発明者らは、前記液相成長方法を用いて、基板として必要な厚さ数100μm以上で、直径1インチ以上の大面積基板の製造方法について詳細に検討した結果、液相成長窒化ガリウム結晶体では、HVPE法成長窒化ガリウム結晶体の主面に対して側面に平坦に形成されるファセットではなく、ファセットを有する立体構造物が形成されることを見出した。主面とファセットとの交線は微小ファセットが形成されているために、直線ではなく、特許文献5にあるような、結晶方位を±0.1度以内とするオリエンテーションフラットとしては採用できない。しかも、ファセットからなる立体構造物は、窒化ガリウム主面より硬い。したがって、主面の欠けが発生しないように、低速の研磨速度で徐々に研磨しなければならず、外周加工時間が長く生成性向上の課題がある。ファセットからなる立体構造物を除去後、窒化ガリウム基板の結晶方位をカット面検査装置(X線回折装置)で確認後、所定形状にオリエンテーションフラットを形成する必要がある。特許文献4にあるような機械加工では、基板の欠けや割れが多発し、生産性が著しく悪いという課題がある。
【0017】
以上のような問題点を解決するために、本発明窒化ガリウム基板は、量産に用い得る厚さと面積を確保しながら、容易な生産方法でかけやわれの発生を抑制してオリエンテーションフラットを形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の窒化ガリウム基板は、ファセットを有する立体構造物を周縁部に備える窒化ガリウム結晶体を形成し、前記立体構造物の2つの前記ファセットで形成される1または複数の稜線のいずれかに平行な線を切断線として前記立体構造物を機械加工して削除し、前記切断線のいずれかをオリエンテーションフラットとすることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の窒化ガリウム基板は、ファセットを有する立体構造物を周縁部に備える窒化ガリウム結晶体を形成し、前記窒化ガリウム結晶体の外周辺となる前記立体構造物の底辺のいずれかに平行な線を切断線として前記立体構造物を機械加工して削除し、前記切断線のいずれかをオリエンテーションフラットとすることを特徴とする。
【0020】
また、前記窒化ガリウム基板において、前記窒化ガリウム結晶体が、窒素含有ガス雰囲気中に設置されたアルカリ金属を含む融液中で、予め窒化ガリウム層が形成された土台基板上にガリウム金属と前記窒素とを反応させることにより結晶成長させて形成されても良い。
【0021】
また、前記窒化ガリウム基板において、素子形成面である窒化ガリウム基板主面が、(0001)面と等価な面であり、m,nを整数としたとき、前記ファセットの面指数が、(m、m、−2m、n)もしくは、(m、0、−m、n)で表されることが好ましい。
【0022】
また、前記窒化ガリウム基板において、前記切断線が<11−20>方向、もしくは、<10−10>方向であることが好ましい。
さらに、本発明の半導体装置は、前記窒化ガリウム基板から形成する半導体装置用基板に半導体素子を形成することを特徴とする。
【0023】
また、前記半導体装置において、前記半導体素子が、レーザダイオードまたは発光ダイオードであっても良い。
以上により、量産に用い得る厚さと面積を確保しながら、容易な生産方法でかけやわれの発生を抑制してオリエンテーションフラットを形成することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、窒化ガリウム結晶体から、ファセットを有する硬質の立体構造物を稜線等に平行に除去することで、欠けや割れの発生を抑制した窒化ガリウム基板を提供できる。しかも、ファセットを有する硬質の立体構造物の稜線等は特有の結晶方位を有し、かつ、明瞭であるので、立体構造物の稜線等に平行に切断加工した窒化ガリウム結晶体の切断線をデバイス加工の基準線となるオリエンテーションフラットに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態に係る窒化ガリウム基板の製造方法を示す工程断面図
【図2】実施形態に係る窒化ガリウム基板の窒化ガリウム結晶体の構造を示す模式図
【図3】実施形態に係る窒化ガリウム結晶体の構造を示す図
【図4】本発明の窒化ガリウム基板の製造方法に係る液相成長法に用いたナトリウムフラックス法を説明する図
【図5】実施形態に係る窒化ガリウム基板を用いた独立基板の構成を示す図
【図6】実施例4に係る半導体装置の構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明者らは、液相成長窒化ガリウム基板において、詳細な検討の結果、窒化ガリウム結晶体を厚さ数100μm以上に成長させると、窒化ガリウム結晶体の周縁部にファセットを有する立体構造物が形成され、前記立体構造物の稜線等にいずれか平行に立体構造物を機械加工することで、基板の欠けや割れ(クラック)の発生を抑制し、生産性を向上することができることを発見した。しかも、立体構造物を機械加工で除去した窒化ガリウム結晶体の切断線は、明瞭な結晶方位を有しており、デバイス加工の基準線となるオリエンテーションフラットとして使用できることを発見した。
【0027】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図を用いて説明する。
<実施形態>
図1,図2,図3,図4,図5を用いて、本発明の実施形態における窒化ガリウム基板について説明する。
【0028】
図1は実施形態に係る窒化ガリウム基板の製造方法を示す工程断面図、図2は実施形態に係る窒化ガリウム基板の窒化ガリウム結晶体の構造を示す模式図、図3は実施形態に係る窒化ガリウム結晶体の構造を示す図、図4は本発明の窒化ガリウム基板の製造方法に係る液相成長法に用いたナトリウムフラックス法を説明する図、図5は実施形態に係る窒化ガリウム基板を用いた独立基板の構成を示す図である。
【0029】
本実施形態における窒化ガリウム基板の製造方法は、まず、図1(a)に示す土台基板11である(0001)C面サファイア基板上に、MOCVD法で種結晶12として窒化ガリウム(GaN)薄膜を成長させて基板10を形成する(図1(b))。前記GaN薄膜上に、ナトリウムフラックス液相成長法で、GaN22を厚さ数100μm以上、好ましくは5mm以上成長させる(図1(c))。土台基板11のサイズとしては、デバイス生産性を考慮すると、直径1インチ以上のサファイア基板が好ましい。また、土台基板11の形状としては、概ね円形、または、六角形以上の多角形状が好ましく、これら、土台基板11上に種結晶12に配置した基板に、ファセットからなる立体構造物が発現しやすい傾向がある。さらに、サファイア基板等土台基板11に予め、オリエンテーションフラットを有してもよい。予めオリエンテーションフラットを有すると、ファセットからなる立体構造物がより明瞭に発現する。オリエンテーションフラットの方向としては、<11−20>方向、または、<10−10>方向が好ましい。ファセットを有する立体構造物が予めオリエンテーションフラットを有しない場合に比べてより明瞭になる。前記立体構造物形成の原因は、下記のように説明される。ファセットからなる立体構造物の形状は、表面エネルギの増加を極小化するように決定される。表面エネルギは、ファセットの形成および表面張力の2つの要因で決定される。基板周縁部では、表面張力が開放されるために、結晶は表面エネルギを極小化するように、ファセットが形成される。(0001)C面基板上に成長する安定なファセットとして、基板C面に対して62°傾いた、6個の{10−11}ファセットと、基板C面に垂直な、6個の{10−10}ファセットと、基板C面に垂直な3個の{11−20}ファセットがある。実験条件である窒素圧力、成長温度、Gaとアルカリ金属とのモル比による窒素溶解度により、各ファセットの成長速度が変化し、上記ファセットの1つのファセットかあるいは複数のファセットが出現すると考えられる。窒素圧力は、20atmを超え60atm以下(20×1.013×10Paを超え60×1.013×10Pa以下)の範囲であり、成長温度は、800℃〜950℃の範囲であり、Gaとアルカリ金属とのモル比は1:1から1:10の範囲が好ましく、前記条件で(0001)C面基板上に成長する安定なファセットが出現されやすい。
【0030】
図2に液相成長後の窒化ガリウム結晶体の模式図を示す。図2(a)は基板全体の模式図であり、図2(b)は図2(a)におけるA−A’の断面図である。
図2からわかるように、窒化ガリウム結晶体の周縁部は、ファセット15を有する立体構造物で囲まれ、窒化ガリウム結晶体は六角形状を呈する。前記立体構造物が形成されるのは、液相成長では平衡化学反応で結晶成長が進むので、比較的厚さが薄くても、HVPE等気相成長に比べて、結晶特有の構造であるファセット発現しやすいためである。一般に、ファセットは、成長する種結晶に依存しており、結晶方位によって結晶の成長速度が異なるため形成されると言われている。得られた窒化ガリウム結晶体のファセット(図2の15に相当)をX線回折装置で面指数を調べたところ面指数(10−11)を有するファセットであることを確認した。
【0031】
窒化ガリウム結晶体のファセット15からなる立体構造物の稜17および、窒化ガリウム結晶体の外周辺となるファセット15の底辺18は、結晶方位特有な向きに平行である。図3に、窒化ガリウム結晶体のファセット15からなる立体構造物の稜17およびファセット15の底辺18と結晶方位の関係を示す。図3に示すように、主面(0001)C面とファセット(図2の15,16)の面指数を考慮すると、窒化ガリウム結晶体のファセット15からなる立体構造物の稜17およびファセット15の底辺18は、方位<11−20>方向に平行である。なお、窒化ガリウム結晶体の六角形状は、結晶体の不純物や、欠陥により、微小ファセットが発現することがあり、ファセットの出現およびその稜や底辺の数にばらつきを呈する場合がある。しかしながら、加工機械および取付け治具の機械精度数μmを考慮すると、少なくとも1辺が、長さ5mm以上の辺が得られれば、オリエンテーションフラットの基準線として用いることができる。したがって種結晶のサイズを選定し、成長する結晶の厚さを数100μm以上とすることで、オリエンテーションフラットの基準線に適用できるファセットを有する立体構造物を周縁部に配置した窒化ガリウム結晶体を得ることができる。
【0032】
窒化ガリウム結晶特有のファセット15、ファセット16を有する立体構造物14が形成されるのは、GaN22の厚膜の成長中に、窒化ガリウムの成長速度が結晶方位により異なるからである。ファセット15、およびファセット16は、X線回折装置で面方位を調べたところ、ともに面指数(10−11)を有し、結晶学的には、ファセットはそれぞれ(m0−mn)面と表示されることがわかった。立体構造物14には、ファセット15とファセット16で構成される稜17が形成される。前記稜17は、基板裏面(000−1)―C面を基準とすると、GaN22の主面26(0001)C面に対して、高い位置に形成される。しかも稜17をX線回折装置で調べたところ、<11−20>方向と±0.01度以内の精度で一致することを確認した。また、基板裏面側(000−1)−C面側のファセット15の底辺も、稜17と同じく、<11−20>方向と±0.01度以内の精度で一致し、いずれも±0.05度以内の範囲に収まる。
【0033】
次に、図1(c)または、図2に示すように、ファセット15を有する立体構造物の少なくとも1つの立体構造物14の稜17に平行となるように、切断線20に沿って、立体構造物14を機械加工により切断除去する。なお、切断線は、図2の切断線21,20a,20b,20c,20d,20eのいずれか、または、複数の切断線を用いることができる。オリエンテーションフラットとしては、機械加工装置の精度を考慮すると、前記切断線21,20a,20b,20c,20d,20eのいずれか、または、複数の切断線で、長さ5mm以上の切断線が得られれば、オリエンテーションフラットとして用いることができる。機械加工としては、スライサ、もしくは、劈開、研削を用いることができる。好ましくは、スライサを用いる。立体構造物14が、GaN22の主面26に比べて硬度が硬く、従来の研削では主面に欠けや、割れを発生するからである。研削を用いる場合には、欠けや割れの発生に注意しながら、研削速度の条件を最適化して研削することができる。
【0034】
前記切断線(例えば図2の21)の少なくとも1つをオリエンテーションフラットとして残し、窒化ガリウム結晶体インゴットを所定の形状に外周研削したのち(図1(d))、スライサにより、所定の厚膜例えば500μmに窒化ガリウム基板を切り出し、所望の研磨を行う。最後に、土台基板25であるサファイア基板を研削することで、複数枚の、図5に示すようなオリエンテーションフラット2を有する窒化ガリウム独立基板1を得る(図1(e))。
【0035】
次に、スライスした窒化ガリウム独立基板を両面ラップする。さらに、各基板端面の面取り(べべリング)を行い、さらに、基板を片面、もしくは、両面を鏡面になるまで、ポリシュ(鏡面研磨)を行う。そして、基板のデバイス作製側の鏡面研磨面の機械研磨変質層をエッチングして、半導体装置用基板が完成する。
【0036】
本発明における土台基板としては、例えば、サファイア基板、III族元素窒化物基板、GaAs基板、Si基板、SiC基板、MgO基板、ZnO基板等があげられ、好ましくはサファイア基板、III族元素窒化物基板である。III族元素窒化物基板としては、組成式AlGaIn1−u−vN(ただし、0≦u≦1、0≦v≦1、u+v≦1である。)で表される材料等を使用することができる。また、III族元素窒化物基板にn型ドーパント、もしくは、p型ドーパントを含んでも構わない。前記n型ドーパントは、例えば、Si、S、Se、Te、Ge等があげられる。これらは、1種類で使用しても、2種類以上を併用してもよい。p型ドーパントとしては、Mg,C等があげられる。これらは、1種類で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
本発明において、液相成長法に用いたナトリウムフラックス法を図4によって説明する。同図に示すように、この液相成長装置は、圧力容器52、ガス貯蔵器50、流量調整容器51および圧力調整器56を主要構成要素とし、前記圧力容器52内には、結晶成長容器53が収納可能で、その側面には、加熱用ヒータ55が配置されている。前記圧力容器52には、流量調整器51および圧力調整器56がパイプを介してそれぞれ接続されており、前記流量調整器51の他端には、ガス貯蔵器50がパイプを介して接続されている。
【0038】
まず、窒素含有ガス雰囲気の結晶成長容器53内に、GaN種結晶12の形成された基板10と、ガリウム(Ga)およびフラックスとしてアルカリ金属であるナトリウム(Na)とを配置する。そして加熱用ヒータ55および圧力調整器56を用いて、圧力容器52内の雰囲気温度を900℃〜1050℃(結晶成長工程より、例えば、50℃〜200℃高い温度)、窒素含有ガス雰囲気圧力を40atm(40×1.013×10Pa)として、NaおよびGaを含む融液54中に窒素を急速に溶解させ、融液内の窒素濃度を所望の窒素濃度とする(原料調製工程)。圧力容器52内の窒素含有ガス供給量は、流量調整器51を用いて調整する。その後、圧力容器52内の雰囲気圧力を40atm(40×1.013×10Pa)に保持した状態で、雰囲気温度を850℃に降下させ、前記融液54中で窒化ガリウム結晶体を成長させる。窒化ガリウム結晶体の膜厚は、所望の膜厚に応じて、GaおよびNa量と、成長時間を設定することにより可変する。所定の成長後、結晶成長容器53に窒化ガリウム結晶体を含む反応生成物ができる。次に、結晶成長容器53を冷却し、室温まで戻し、結晶成長容器を取り出す。前記結晶成長容器に、2−プロパノール、またはエタノールなどアルコールを入れ、前記アルコールと、窒化ガリウム結晶体を含む反応生成物を覆うフラックスNaとを反応させ、さらに、前記反応生成物を純水で超音波洗浄することにより、窒化ガリウム結晶体27(図1参照)を得る。本窒化ガリウム結晶体27に含まれるフラックスNaの含有量を、SIMS(二次イオン質量分析装置)で測定したところ、1×1014/cm〜5X1015/cmであり、半導体装置に適用しても問題ない量であることを確認した。
【0039】
なお、加圧雰囲気ガスとして窒素(N)含有ガスは、例えば、窒素(N)ガス、アンモニア(NH)ガス等があげられ、いずれか一方のみを使用しても、混合して使用してもよい。その中でも、窒素(N)ガスとアンモニア(NH)ガスとを混合して使用することが好ましい。
【0040】
結晶成長容器53としては、坩堝が使用され、特に制限されず、例えば、アルミナ、窒化ホウ素(BN)、タングステン、タンタル、Y、CaO、MgOなどのIII族元素やアルカリ金属と反応しにくい材料製のものを用いることができる。なお、坩堝は、必須ではなく、前記反応容器に結晶原料を投入して、この中で結晶成長させてもよい。また、坩堝を用いる場合には、蒸発した結晶原料の拡散を抑制するために、前記坩堝にガス導入用の微小な孔の開いた蓋をかぶせてもよい。
【0041】
フラックスとしては、アルカリ金属が用いられ、前記アルカリ金属は、例えば、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)およびカリウム(K)等があげられ、好ましくはナトリウム(Na)である。これらは1種類で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の製造方法において、前記アルカリ金属を含む融液が、さらに、アルカリ土類金属を含むことが好ましい。これにより、窒素溶解度が増し、結晶の成長速度が促進される。また、結晶品質がより良好となる。前記アルカリ土類金属としては、例えば、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)があげられ、好ましくはカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)であり、より好ましくはカルシウム(Ca)である。これらは1種類で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
以上のように、窒化ガリウム結晶体から、ファセットを有する硬質の立体構造物を、立体構造の稜線等と平行に除去することで、欠けや割れの発生を抑制した安価で生産性の優れた窒化ガリウム独立基板を提供できる。しかも、ファセットを有する硬質の立体構造物の辺は特有の結晶方位を有し、かつ、明瞭であるので、立体構造物の稜線等に平行に切断加工した窒化ガリウム結晶体の切断線をデバイス加工の基準線となるオリエンテーションフラットに用いることができる。
(実施例1)
本実施例では、サファイア基板上に、MOCVD法によってGaN結晶(種結晶)を成膜し、液相エピタキシャル成長法によって窒化ガリウム結晶体を形成する場合について図1,図2,図3を用いて説明する。
【0044】
種結晶を形成する際には、土台基板11上に、種結晶12を形成する。本実施例では、前記土台基板11には、サファイア(結晶性Al)(0001)C面を使用した。また、種結晶12には、GaNを含むIII族元素窒化物を使用し、MOCVD法を用いて土台基板11上に形成した。まず、土台基板温度が約1020℃〜1100℃になるように加熱し、トリメチルガリウム(TMG)とNHとを前記土台基板11上に供給することによって、膜厚10μmのアンドープ窒化ガリウム層からなる種結晶12を形成する。図1(b)に、種結晶12が土台基板11上に配置された基板10の一例を示す。基板10は、土台基板11と種結晶12とを備える。
【0045】
このようにして得られた基板10を用いて、図1(c)に示すように、種結晶12上に窒化ガリウム結晶体27を成長させた。以下、窒化ガリウム結晶体27の成長方法について図4を用いて説明する。
【0046】
III族元素窒化物結晶を形成する際には、まず、Gaとフラックスとしてアルカリ金属であるNaとを規定量秤量して(Ga:Na(モル比)=2.7:7.3)、基板10とともに結晶成長容器53である坩堝内にセットする。次に、坩堝53を800℃に保持し、雰囲気ガスとして、アンモニア(40体積%)が混合された窒素ガスを5atm(5×1.013×10Pa)の圧力で供給する。
【0047】
なお、本実施例においては、雰囲気ガスにアンモニアを混合することによって、育成時の雰囲気圧力を低減したが、必ずしもアンモニアを混入する必要はない。アンモニアを混入しない窒素ガス雰囲気においても、50atm(50×1.013×10Pa)の圧力下で、温度と圧力とを一定に保持し、96時間LPE成長を行うことによって、窒化ガリウム結晶体27が得られる。
【0048】
本実施例では、Naのみのフラックスを用いたが、例えば、Li、Na、K等のアルカリ金属やCa等のアルカリ土類金属との混合フラックスを用いた場合においても、同様の効果が得られる。例えば、NaとCaとの混合フラックスでは、Caを10%程度混入することで、より低圧での結晶育成が可能である。
【0049】
所望の膜厚を成長後、坩堝を用いた結晶成長容器53を取り出し、坩堝を用いた結晶成長容器53をエタノール、続いて純水に浸漬し、Naを除去することで、窒化ガリウム結晶体27を得る。図2に得られた対角約2インチの窒化ガリウム結晶体27の模式図を示す。得られた窒化ガリウム結晶体27は、概ね六角形状をしており、窒化ガリウム結晶体27周縁部には、面指数(10−11)のファセット15とファセット16からなる立体構造物14が形成される。ファセット15は稜17を介してファセット16と接して形成されており、基板裏面(000−1)面からの稜17までの高さは、窒化ガリウム結晶体の成長膜厚とともに高くなる。立体構造物14は必ずしも六角形の各辺すべてに発現するわけではなく、成長条件、種結晶の形状、あるいは設置状態により、立体構造物14の数、サイズ、形状は変わるが、6つの辺の内、少なくとも一辺が、長さ5mm以上得られるならば、稜17や底辺18を基準に平行な切断線21をオリエンテーションフラットとして用いることができる。図3に窒化ガリウム結晶体27と結晶方位の関係を示す。図3によれば、理想的には六角形状の6辺に、<11−20>方向に平行な辺を有する立体構造物14が形成される。したがって、前記立体構造14の1辺、つまりいずれかの稜に平行な線を切断線の基準線に用いればよい。以上の条件で成長させた窒化ガリウム結晶体27において、ファセット15の結晶方位をX線回折装置で測定したところ、ファセット15は、(10−11)面であり、ファセット15とファセット16で形成される稜17は、<11−20>方向と±0.01度以内の精度で一致することを確認した。なお、ファセット15の基板裏面(000−1)−C面側の底辺18も、<11−20>方向と±0.01度以内の精度で一致する。なお、前記稜17および底辺18ともに、両長さは約24mmであった。
【0050】
窒化ガリウム結晶体27から窒化ガリウム基板を作製する場合には、図2における稜17を切断線の基準線として用い、切断線20a、20b、20c、20d、20e、21のいづれか1つをオリエンテーションフラットとする。主面26に対して裏面から高い立体構造物14をスライスして除去する。次に、前記オリエンテーションフラットを残すように外周研削を行い、さらに、半導体装置の仕様に応じて、ラップを行い、片面鏡面研磨、あるいは両面鏡面研磨することにより、従来にない高精度のオリフラを(長さ16mm)を有する直径50.8mm(2インチ)、厚さ400μmのGaN基板28を得る。半導体装置として反りや応力を低減するためには、土台基板25を除去することが好ましい。土台基板25を研磨除去、あるいは、化学エッチングにより除去することで、半導体装置用基板としてGaN独立基板29を得る。
(実施例2)
窒化ガリウム結晶体から窒化ガリウム基板を作製する場合には、材料であるGa、およびナトリウムフラックスNaの量を所望量に変え、成長時間を調整することで、長尺の窒化ガリウム結晶体を得ることができる。実施例1との違いは、ファセットを有する立体構造物の機械加工に、スライサではなく、研削装置を用いる点である。オリエンテーションフラットを残し、他の立体構造物を研削除去したのち、円筒研削することで窒化ガリウム結晶体インゴットを得る。しかる後に、スライサにより、膜厚500μmとなるように窒化ガリウム基板を加工する。さらに、半導体装置の仕様に応じて、ラップ、片面鏡面研磨、あるいは両面鏡面研磨することにより、従来にない高精度のオリフラ(例えば、長さ16mm)を有する例えば、直径50.8mm(2インチ)、厚さ400μmの半導体装置用基板であるGaN独立基板29(図1参照)を得る。
(実施例3)
実施例1および実施例2では、ノンドープGaN結晶体について説明したがn型ドーパント、およびp型ドーパントを含む窒化ガリウム結晶体についても前記方法と同様に成長させることにより、ファセットのサイズや、稜は異なったとしても、アンドープ窒化ガリウム結晶体と同様に、窒化ガリウム結晶体の周縁部にファセットを有する立体構造物が形成される。ドーパント以外の工程は実施例1および実施例2と同じである。なお、ドーパント量は、半導体装置の仕様のキャリア濃度に応じて調整する。例えば、ガス系ドーパントでは、ドーパントガス流量により、また、固体ドーパントでは、所望の重量をGa、Naに添加すればよい。
(実施例4)
実施例4では、上記実施例で得られる基板を用いて半導体レーザダイオードを作製する一例について図6を用いて説明する。図6は実施例4に係る半導体装置の構造を示す断面図であり、半導体装置の一例として半導体レーザダイオード90の構造を示す。
【0051】
図6における半導体レーザダイオード90を製造する際に、まず、前記実施例1および実施例2で得られたGaN独立基板91上に、キャリア濃度が5×1018cm−3以下(例えば、0.7×1018cm−3)になるようにドーパントとしてSiを添加したn形GaN層92を形成する。ここでは、キャリア濃度は、5×1018cm−3以下になるようにドーパントの量を制御する。
【0052】
次に、n形GaN層92上に、n形Al0.07Ga0.93Nからなるクラッド層93とn形GaNからなる光ガイド層94とを形成する。ついで、Ga0.8In0.2Nからなる井戸層(厚さ約3nm)とGaNからなるバリア層(厚さ6nm)とによって構成された多重量子井戸(MQW)を活性層95として形成する。そして、p形GaNからなる光ガイド層96とp形Al0.07Ga0.93Nからなるクラッド層97と、p形GaNからなるコンタクト層98とを形成する。これらの層は公知の方法(例えば、MOCVD法)で形成することができる。半導体レーザダイオード90はダブルへテロ接合型の半導体レーザであり、MQW活性層におけるインジウムを含む井戸層のエネルギーギャップが、アルミニウムを含むn形およびp形クラッド層のエネルギーギャップよりも小さい。一方、光の屈折率は、活性層95の井戸層が最も大きく、以下、光ガイド層、クラッド層の順に小さくなる。
【0053】
コンタクト層98の上部に、実施例1および実施例2のオリエンテーションフラットを基準とし、光共振器の長手方向が、<11−20>方向となるようにフォトリソ技術を用いてパターン形成して、幅が2μm程度の電流注入領域を構成する絶縁膜99を形成する。さらに、p形のクラッド層97の上部およびp形のコンタクト層98には、電流狭窄部となるリッジ部を形成する。
【0054】
次に、p形のコンタクト層98の上側には、コンタクト層98とオーミック接触するp側電極100を形成する。窒化ガリウム独立基板91には、n形の窒化ガリウム独立基板91とオーミック接触するn側電極101を形成する。最後に、実施例1および実施例2のオリエンテーションフラットを基準とし、面(11−20)で劈開させることにより半導体レーザダイオードを作製する。
【0055】
また、前記方法で製造した半導体レーザダイオードのデバイス評価結果を示す。得られた半導体レーザダイオードに対して、p側電極とn形電極との間に順方向の所定の電圧を印加すると、MQW活性層にp側電極から正孔、n側電極から電子が注入され、MQW活性層において再結合し光学利得を生じて、発振波長404nmでレーザ発振を起こした。
(実施例5)
実施例4では、図6に示すような本発明で製造された窒化ガリウム独立基板を用いた半導体レーザについて製造方法を示したが、実施例4において、n形Al0.07Ga0.93Nからなるクラッド層93とn形GaNからなる光ガイド層94を形成せず、かつ、p形GaNからなる光ガイド層96とp形Al0.07Ga0.93Nからなるクラッド層97を形成することなく、他の構成は同じ半導体装置を用いて発光ダイオードを作製し評価を行った。得られた半導体レーザダイオードに対して、p側電極100とn形電極101との間に順方向の所定の電圧を印加すると、MQW活性層95にp側電極100から正孔、n側電極101から電子が注入され、MQW活性層95において再結合し、中心波長410nmで発光した。窒化ガリウム独立基板91を用いた発光ダイオードの注入電流に対する発光出力は、サファイア基板を用いた発光ダイオードの注入電流に対する発光出力に比べて直線性に優れ、光出力は高出力であり、発光波長の電流依存性も少ないことが確認できた。
【0056】
なお、実施例5では、半導体装置の一例としてガリウムを用いたGaN単結晶基板を用いて半導体レーザダイオードを作成したが、基板上に作製する光デバイスの使用波長に対して吸収の少ない基板を供給することが望ましい。そのため、紫外線領域の半導体レーザや発光ダイオード用基板としては、Alが多く含まれ短波長域の光吸収が少ないAlGa1−xN(0≦x≦1)単結晶を形成することが好ましい。本発明では、Gaの一部を他のIII族元素に置き換えることによって、このようなIII族元素窒化物半導体単結晶を形成することも可能である。
【0057】
上記実施例では、C面を主面とする窒化ガリウム基板に<11−20>等価方向を示すオリエンテーションフラットについて示したが土台基板の面方位を変え、基板周縁部に特有のファセットを有する立体構造物を有する結晶体であれば、本発明の製造方法を適用して、容易にかつ高精度にオリエンテーションフラットを有する基板を提供できる。
【0058】
また、厚膜成長としてナトリウムフラックス法の他、MOVPE法、HVPE法、昇華法、高温高圧法、水熱法の成長方法にも適用できる。
さらに、本発明の基板を用いて半導体素子として、電界効果トランジスタを形成することにより、高温動作可能で、高出力、高速、高周波、低損失のパワートランジスタも提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、量産に用い得る厚さと面積を確保しながら、容易な生産方法でかけやわれの発生を抑制してオリエンテーションフラットを形成することができ、高品質窒化ガリウム基板およびそれを用いた半導体装置等に有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 独立基板
2 オリエンテーションフラット
10 基板
11、25 土台基板
12 種結晶
14 立体構造物
15、16 ファセット
17 稜
18 底辺
20、20a、20b、20c、20d、20e、21 切断線
22、23 GaN
24 切断面
26 主面
27 窒化ガリウム結晶体
28 GaN基板
29 GaN独立基板
50 ガス貯蔵器
51 流量調整器
52 圧力容器
53 結晶成長容器
54 融液
55 ヒータ
56 圧力調整器
90 半導体レーザダイオード
91 窒化ガリウム独立基板
92 GaN層
93、97 クラッド層
94、96 ガイド層
95 活性層
98 コンタクト層
99 絶縁膜
100、101 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファセットを有する立体構造物を周縁部に備える窒化ガリウム結晶体を形成し、前記立体構造物の2つの前記ファセットで形成される1または複数の稜線のいずれかに平行な線を切断線として前記立体構造物を機械加工して削除し、前記切断線のいずれかをオリエンテーションフラットとすることを特徴とする窒化ガリウム基板。
【請求項2】
ファセットを有する立体構造物を周縁部に備える窒化ガリウム結晶体を形成し、前記窒化ガリウム結晶体の外周辺となる前記立体構造物の底辺のいずれかに平行な線を切断線として前記立体構造物を機械加工して削除し、前記切断線のいずれかをオリエンテーションフラットとすることを特徴とする窒化ガリウム基板。
【請求項3】
前記窒化ガリウム結晶体が、
窒素含有ガス雰囲気中に設置されたアルカリ金属を含む融液中で、予め窒化ガリウム層が形成された土台基板上にガリウム金属と前記窒素とを反応させることにより結晶成長させて形成されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の窒化ガリウム基板。
【請求項4】
素子形成面である窒化ガリウム基板主面が、(0001)面と等価な面であり、m,nを整数としたとき、前記ファセットの面指数が、(m、m、−2m、n)もしくは、(m、0、−m、n)で表されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の窒化ガリウム基板。
【請求項5】
前記切断線が<11−20>方向、もしくは、<10−10>方向であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の窒化ガリウム基板。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の窒化ガリウム基板から形成する半導体装置用基板に半導体素子を形成することを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記半導体素子が、レーザダイオードまたは発光ダイオードであることを特徴とする請求項6記載の半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−188347(P2012−188347A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−96136(P2012−96136)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【分割の表示】特願2007−246392(P2007−246392)の分割
【原出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】