説明

第II相解毒及び抗酸化活性

第II相解毒酵素又は抗酸化酵素の転写のNrf2(SKN−1)活性化を増強する方法及び組成物(植物抽出物(例えばヤナギ抽出物)又はその活性画分を含む)と、それらの酵素のNrf2調節を増加するさらなる化合物を同定する方法とが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤナギ、茶及びそれらの抽出物の抗酸化及び解毒機能の増強作用に関する。
【0002】
[優先権主張]
本願は、2007年9月11日付けで出願された米国仮特許出願第60/993,325号明細書(その内容全体が参照により本明細書に援用される)の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
生体は常に、悪影響を引き起こし得る様々な物質に曝されている。かかる物質としては例えば、重金属、或る特定の食品添加物、紫外線及びタバコが挙げられる。これらの物質が生体に作用すると、フリーラジカルとして知られる活性酸素種が生じる。生体がさらに酸化的ストレスに曝されると、活性酸素種自体が或る特定の生理学的過程の副産物として活性酸素種を産生する。酸化的ストレスは、癌、一般的疾患及び老化症状等の多くの状態に対する危険因子の1つと考えられる。生体は、フリーラジカルを除去し、且つ毒性物質を解毒する機構(本明細書中で宿主防御機構と称される)を用いてかかる酸化的ストレスに対処する。例えば通常の老化過程の結果としてこの媒介/解毒機構が損われると、防御機構はこれらの化学物質を完全に媒介及び解毒することができなくなる。この過程が疾患の発症につながることもある。
【0004】
この課題を解決するために、抗酸化作用を有する物質(例えば、ビタミンC及び/又はビタミンEを包含する組成物)の摂取又は適用を含む、疾患の発症又は進行を予防する方法が試用されている。これらの方法は有効であるが、臨床的に有意な効果を得るためには、多量の抗酸化物質の摂取が必要となる場合が多い。
【0005】
一方で、上記で言及した宿主防御機構は、一度増強されれば、酸化的ストレスを効率的に取り除くことができ、したがって抗酸化物質を摂取するよりも有効であると期待される。核内転写因子である「Nrf2」は、宿主防御機構を調節する必須タンパク質として非常に注目が集まっている。細胞が酸化的ストレス又は毒性物質に曝されると、細胞の細胞質に存在するNrf2分子が核に取り込まれ、そこで抗酸化応答エレメントとして知られる遺伝子調節領域と結合し(例えばNguyen, et al., Ann. Rev. Pharm. Toxicol., 2003, 43:233-60を参照されたい)、第II相解毒酵素として知られる酸化的ストレス応答酵素の発現を誘導する。Nrf2は抗酸化応答エレメントとして知られる配列の下流に存在する。Nrf2遺伝子を欠失する動物は宿主防御機構が損われることが知られている。したがって、Nrf2は酸化的ストレス及び毒性物質に対する宿主防御機構において必須の役割を果たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、或る特定の植物抽出物における物質が、SKN−1/Nrf2を活性化し、第II相解毒酵素(P2D)遺伝子の発現を強く誘導し、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)のレベルを低減し、且つフォークヘッドボックスO1(FOXO1)遺伝子発現レベルを増加することを見出した。
【0007】
このため一態様において、本発明は、P2D及び抗酸化酵素の活性を増強するための方法及び組成物、例えば植物抽出物、例えばヤナギ、緑茶、ニンジン又はブロッコリーの抽出物、及び/又はそれらの活性画分を含む組成物を特徴とする。別の態様では、本発明は、SKN−1/Nrf2を活性化し、その結果P2D遺伝子発現を増強する物質を同定する方法を特徴とする。本明細書中で使用される場合、「活性画分」は、非分画抽出物に比べて重量当たりの活性が増加した抽出物の画分である。
【0008】
一態様において、本発明は、植物抽出物、例えばヤナギ、緑茶、ニンジン若しくはブロッコリーの抽出物、又はそれらの活性画分を含む組成物であって、細胞において第II相解毒酵素(P2D)遺伝子及び抗酸化酵素遺伝子の1つ又は両方の発現を増加させる、組成物を提供する。例えばこの組成物は、グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)及びグルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC)から成る群から選択されるP2D遺伝子、及び/又は抗酸化酵素遺伝子、例えばスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)の発現を増加させることができる。幾つかの実施の形態では、またこの組成物により、FOXO1の発現の増加、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)のレベルの低減、又はその両方が起こる。
【0009】
幾つかの実施の形態において、この組成物は、経口投与のために処方され、1つ又は複数の経口で許容される担体及び添加物を含むこともできる。幾つかの実施の形態では、この組成物は、局所投与のために処方され、1つ又は複数の局所で許容される担体及び添加物を含むこともできる。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、ヤナギ抽出物の第II相解毒酵素(P2D)及び/又は抗酸化遺伝子の増強活性を増加させる方法を提供する。本方法は、第1のレベルのP2D増強活性を有するヤナギ抽出物を準備すること、2つ以上の画分を得るように、抽出物を分画すること、Rf値が0.5以上の画分を選択すること、画分のP2D増強活性をアッセイすること、及び画分がP2D増強活性の第1のレベルより高いレベルのP2D増強活性を有する場合にこの画分を選択することを含む。
【0011】
幾つかの実施の形態において、抽出物を分画することが、カラムクロマトグラフィ、液液分画及び固液分画から成る群から選択される1つ又は複数の方法を使用することを含む。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、細胞において第II相解毒酵素(P2D)又は抗酸化遺伝子の発現を増加させる化合物を同定する方法を提供する。本方法は、(i)P2D若しくは抗酸化遺伝子又は(ii)P2D若しくは抗酸化遺伝子プロモータ、例えばP2D遺伝子プロモータのNrf2結合配列を含むレポータ構築物を発現する細胞を準備すること、植物抽出物の画分を準備すること、該細胞を該画分に接触させること、及びP2D若しくは抗酸化遺伝子又はレポータ構築物の発現に対する該画分の効果を検出することを含む。P2D若しくは抗酸化遺伝子又はレポータ構築物の発現を増加させる画分が、細胞において第II相解毒酵素(P2D)及び/又は抗酸化遺伝子の発現を増加させる化合物を含む。
【0013】
幾つかの実施の形態において、本方法は、P2D若しくは抗酸化遺伝子又はレポータ構築物の発現を増加させる画分を選択すると共に、2つ以上のサブ画分を生じるように該画分をさらに分割すること、P2D若しくは抗酸化遺伝子、又はP2D若しくは抗酸化遺伝子プロモータ、例えばP2D遺伝子プロモータのNrf2結合配列を含むレポータ構築物を発現する細胞を準備すること、該細胞を該サブ画分に接触させること、及びP2D若しくは抗酸化遺伝子又はレポータ構築物の発現に対する該サブ画分の効果を検出することも含む。P2D若しくは抗酸化遺伝子又はレポータ構築物の発現を増加させるサブ画分が、細胞において第II相解毒酵素(P2D)及び/又は抗酸化遺伝子の発現を増加させる化合物を含む。これらの工程を必要に応じて精製化合物が得られるまで繰り返してもよく、又は精製化合物を、標準的なスプリット・プール(split-pool)法を使用して同定及び取得することができる。
【0014】
幾つかの実施の形態において、本方法は、経口又は局所投与のために上記精製化合物を処方することも含む。
【0015】
幾つかの実施の形態において、これらの方法で使用される細胞は、培養細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、又はシノラブディティス・エレガンスにおける細胞(例えばASI細胞)である。
【0016】
幾つかの実施の形態において、植物抽出物はヤナギ抽出物である。
【0017】
幾つかの実施の形態において、P2D遺伝子がグルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)、グルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC)から成る群から選択される。これらの方法は、抗酸化遺伝子、例えばスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)を使用して行うこともできる。
【0018】
幾つかの実施の形態において、本方法は、P2D若しくは抗酸化遺伝子又はレポータ構築物の発現を増加させる画分を選択すると共に、2つ以上のサブ画分を生じるように該画分をさらに分割すること、FOXO1遺伝子、又はFOXO1遺伝子プロモータを含むレポータ構築物を発現する細胞を準備すること、該細胞を該サブ画分に接触させること、FOXO1遺伝子又はレポータ構築物の発現に対する該サブ画分の効果を検出すること、及びFOXO1遺伝子又はレポータ構築物の発現を増加させるサブ画分を選択することも含む。
【0019】
幾つかの実施の形態において、本方法は、P2D若しくは抗酸化遺伝子又はレポータ構築物の発現を増加させる画分を選択すると共に、2つ以上のサブ画分を生じるように該画分をさらに分割すること、細胞を該サブ画分に接触させること、細胞における8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)のレベルに対する該サブ画分の効果を検出すること、及び細胞において8−OHdGのレベルを低減するサブ画分を選択することも含む。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、細胞においてフォークヘッドボックスO1(FOXO1)遺伝子の発現を増加させる化合物を同定する方法を提供する。本方法は、(i)FOXO1遺伝子又は(ii)FOXO1遺伝子プロモータを含むレポータ構築物を発現する細胞を準備すること、植物抽出物の画分を準備すること、該細胞を該画分に接触させること、及びFOXO1遺伝子又はレポータ構築物の発現に対する該画分の効果を検出することを含む。FOXO1遺伝子又はレポータ構築物の発現を増加させる画分が、細胞においてFOXO1遺伝子の発現を増加させる化合物を含む。
【0021】
幾つかの実施の形態において、本方法は、FOXO1遺伝子又はレポータ構築物の発現を増加させる画分を選択すると共に、2つ以上のサブ画分を生じるように該画分をさらに分割すること、FOXO1遺伝子、又はFOXO1遺伝子プロモータを含むレポータ構築物を発現する細胞を準備すること、該細胞を該サブ画分に接触させること、及びFOXO1遺伝子又はレポータ構築物の発現に対する該サブ画分の効果を検出することをさらに含む。FOXO1遺伝子又はレポータ構築物の発現を増加させるサブ画分が、細胞においてFOXO1遺伝子の発現を増加させる化合物を含む。これらの工程を精製化合物が得られるまで繰り返してもよく、又は他の方法、例えばスプリット・プール法を、精製活性化合物を同定するのに使用することができる。
【0022】
幾つかの実施の形態において、本方法は、経口又は局所投与のために上記画分又は上記精製化合物を処方することをさらに含む。
【0023】
幾つかの実施の形態において、細胞は、培養細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、線維芽細胞、又はシノラブディティス・エレガンスにおける細胞、例えばASI細胞である。
【0024】
本明細書中で、細胞に有効量の植物抽出物、例えばヤナギ抽出物又はその活性画分を投与することによって、細胞において第II相解毒酵素(P2D)遺伝子及び抗酸化酵素遺伝子の増強活性を増加する方法も提供される。
【0025】
さらに本発明は、細胞に植物抽出物、例えばヤナギ抽出物又はその活性画分を含む有効量の組成物を投与することによって、細胞において第II相解毒酵素(P2D)遺伝子及び抗酸化酵素遺伝子の増強活性を増加する方法を提供する。
【0026】
幾つかの実施の形態において、抽出物又は活性画分が細胞への酸化的損傷を軽減又は予防する。
【0027】
幾つかの実施の形態において、細胞は生きている哺乳動物におけるものであり、且つ抽出物が哺乳動物の組織において酸化的損傷を低減する。幾つかの実施の形態では、細胞が皮膚細胞であり、且つ抽出物が哺乳動物の皮膚への酸化的損傷を軽減する。
【0028】
幾つかの実施の形態において、細胞が皮膚細胞であり、且つ抽出物が、紫外線照射への曝露によって起こる哺乳動物の皮膚の色素沈着を低減する。
【0029】
幾つかの実施の形態において、紫外線照射への曝露前に植物抽出物を哺乳動物の皮膚に適用する。
【0030】
幾つかの実施の形態において、本方法は、抽出物又は経口若しくは局所投与に関して本明細書中で記載の方法によって同定される精製化合物を処方することをさらに含む。化合物及び処方化合物も含まれる。
【0031】
他に規定のない限り、本明細書中で使用される技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において、方法及び材料は、本発明での使用に関して記載されているが、当該技術分野で既知の他の好適な方法及び材料も使用することができる。材料、方法及び実施例は、単に例示的なものであり、限定は意図されない。本明細書中で言及される刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ及び他の参考文献は全て、その全体が参照により援用される。コンフリクトのある場合には、定義を含む本明細書によりコントロールされる。
【0032】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】緑茶抽出物によって誘導されるGFP発現を示すグラフである。
【図2】ヤナギ抽出物によって誘導されるGFP発現を示すグラフである。
【図3】スルフォラファンによって誘導されるGFP発現を示すグラフである。
【図4】実施例4に記載されるように作製される9つの画分それぞれの分離を示す薄層クロマトグラフの複写図であり、表は画分の物理的特性及び活性を記載している。
【図5】実施例4に記載される分画実験の結果を示す9つ一組の写真である。
【図6】Nrf2下流遺伝子発現に対する異なる濃度(10μg/ml、50μg/ml又は100μg/ml)の分画ヤナギ抽出物の効果を示す棒グラフである。グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)の発現を検出するのに、SYBR(商標)GreenによるRT−PCRを使用した。
【図7】Nrf2下流遺伝子発現に対する異なる濃度(10μg/ml、50μg/ml又は100μg/ml)の分画ヤナギ抽出物の効果を示す棒グラフである。グルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC)の発現を検出するのに、SYBR(商標)GreenによるRT−PCRを使用した。
【図8】SOD1発現に対するヤナギ抽出物補充の効果を示す折れ線グラフである。
【図9】Nrf2発現に対するヤナギ抽出物補充の効果を示す折れ線グラフである。
【図10】GCLM発現に対するヤナギ抽出物補充の効果を示す折れ線グラフである。
【図11】カタラーゼ発現に対するヤナギ抽出物補充の効果を示す折れ線グラフである。
【図12】血清8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)推移に対するヤナギ抽出物補充の効果を示す折れ線グラフである。
【図13】血清GSH推移に対するヤナギ抽出物補充の効果を示す折れ線グラフである。
【図14】血清SOD推移に対するヤナギ抽出物補充の効果を示す折れ線グラフである。
【図15】フォークヘッドボックスO1(FOXO1)発現に対するヤナギ抽出物補充の効果を示す折れ線グラフである。
【図16】実施例4に記載されるように作製し、且つ実施例6に記載されるようにプールした5つの画分それぞれの分離を示す薄層クロマトグラフの複写図であり、表は画分の物理的特性及び活性を記載している。
【図17】分画ヤナギ抽出物による第II相応答(GCS−1::GFP発現)の誘導を示す棒グラフである。特定数の動物をヤナギ調製物の異なる画分に曝露した。画分Aを除いて(5μg/ml)、10mg/mlの各材料を使用してインキュベーションを行った。DMSOが対照であった画分Aを含有する試料を除く全ての試料でM9を対照として使用した。誤差バーは複数の個別実験間の標準偏差に対応している。
【図18】ヤナギ抽出物(10mg/ml)、緑茶抽出物(2μg/ml)又はヤナギ画分A(5μg/mL)による酸化的ストレスからのN2幼虫の保護を示す折れ線グラフである。プレート上で48時間の代表的実験を図示し、誤差バーは標準偏差を示す(明細書本文を参照されたい)。
【図19】ニンジン粉末及びブロッコリー粉末による第II相応答(GCS−1::GFP発現)の誘導を示す棒グラフである。右側に示した対照試料を除いて、特定数の動物をニンジン調製物又はブロッコリー調製物のいずれかに曝露した。代表的実験を図示する。
【図20A】発現がNrf1及びHO−1で調節される2つの遺伝子に対するヤナギ抽出物の効果を示す棒グラフである。
【図20B】発現がNrf1及びNQO1で調節される2つの遺伝子に対するヤナギ抽出物の効果を示す棒グラフである。
【図21】ヒトPBMCにおけるNRF2遺伝子の発現に対する10ug/ml及び100ug/mlのヤナギ抽出物の効果を示す棒グラフである。
【図22】ヒトPBMCにおけるNRF2タンパク質のレベルに対する10ug/ml及び100ug/mlのヤナギ抽出物の効果を示す棒グラフである。
【図23】抗酸化ストレスの発現レベルに対する1つのヤナギ抽出物の効果を示す棒グラフである。
【図24】ヒト被験者におけるTBARSに対するヤナギ抽出物の経口投与の効果を示す折れ線グラフである。
【図25】UVに曝された皮膚の平均濃淡値によって測定された、ヒトの皮膚における抗酸化応答に対する経口投与されたヤナギ抽出物と(versus)プラシーボとの効果を示す棒グラフである。
【図26】UVに曝された皮膚の平均濃淡値によって測定された、ヒトの皮膚における抗酸化応答に対する局所投与されたヤナギ抽出物とプラシーボとの効果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
Nrf2活性を増強し、それにより第II相解毒系を活性化し、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG、酸化的損傷を受けたDNAの標準的なマーカー)のレベルを低減し、且つ/又はフォークヘッドボックスO1(FOXO1)遺伝子発現レベルを増加するのに使用することができる方法及び組成物、並びに同様にNrf2を増強し、8−OHdGレベルを低減し、且つFOXO1遺伝子発現レベルを増加させる、ヤナギ及び茶に存在するさらなる化合物を同定する方法が本明細書中に記載される。
Nrf2
転写因子であるNrf2は、哺乳動物における酸化的ストレス応答の主因子である。Nrf2はKeap1、GSK−3及び他の機構によって抑制される。この抑制は、酸化的ストレスの存在下で取り除かれ、この時にNrf2が細胞質から核に移入され、そこで第II相解毒酵素(P2D)遺伝子の抗酸化応答領域に結合する。Nrf2の結合はP2D遺伝子の転写を活性化し、それによりP2D酵素の発現を誘導する。このため、NRF2の核移入(importation)及びNRF2とNrf2の遺伝子との結合が促進されると、P2D酵素の産生が増強され、in vivoで抗酸化力が高まる。Nrf2遺伝子ノックアウトマウスは、薬物トキシン(toxins)及び癌により極度に影響されやすく、また化学防御アプローチに使用される抗酸化物質には反応しない(Chan and Kan, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci., 96, 12731-12736; Chan et al., 2001, Proc. Natl. Acad. Sci., 98, 4611-4616; Fahey et al., 2002, Proc. Natl. Acad. Sci., 99, 7610-7615; Ramos-Gomez et al., 2001, Proc. Natl. Acad. Sci., 98, 3410-3415)。
【0035】
線虫の一種であるシノラブディティス・エレガンスは、哺乳動物の酸化的ストレス応答系と類似の酸化的ストレス応答系を有する。この系は、MAPKカスケードと呼ばれる。MAPKカスケードの標的であるSKN−1は転写因子である。Nrf2と同様に、SKN−1のGSK−3抑制は酸化的ストレスの存在下で緩和される。それから、SKN−1は、(例えば消化器系(腸)において)細胞質から核に移動し、P2D遺伝子の抗酸化応答領域と結合して、P2D遺伝子の転写を活性化することにより、P2D酵素の発現を誘導する。したがって、線虫のSKN−1は、哺乳動物におけるNrf2の機構と非常に類似した機構によってP2D酵素の産生を調節する。この場合、シノラブディティス・エレガンス(C. elegans)におけるSKN−1の核移入、及び第II相解毒酵素遺伝子と抗酸化応答領域との結合を促進し、それにより第II相解毒酵素の産生を増強する物質が、哺乳動物におけるNrf2による第II相解毒酵素の産生を増強すると期待され得る。さらに、癌及び様々な変性疾患の抑制も期待することができる。
【0036】
SKN−1によるP2D遺伝子の発現を検証するために、既知の方法により遺伝子が使用され、ここでγグルタミルシステイン合成酵素をコードするgcs−1遺伝子、シノラブディティス・エレガンスにおける既知のP2D遺伝子、及びSKN−1の結合標的を、レポータ、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子(GCS−1::GFP)と融合することができる(An and Blackwell, 2003, Genes & Dev., 17, 1882-1893; An et al., 2005, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 102, 16275-16280; Inoue et al., 2005, Genes Dev., 19, 2278-2283)。この方法では初めに、融合GCS−1::GFP遺伝子を、形質転換のために線虫に移動させる。酸化的ストレスが低い標準条件下で、シノラブディティス・エレガンスの咽頭及びASIにおける融合遺伝子の発現を、GFPの蛍光発光によって確認することができる。酸化的ストレス条件下では、この融合遺伝子はシノラブディティス・エレガンスの腸で発現する。本明細書中に記載のように、SKN−1活性化物質、例えばヤナギ抽出物及び茶抽出物により、GCS−1::GFP融合遺伝子の発現が強く引き起こされる。
FOXO1
FOXOタンパク質は、インスリン関連シグナル伝達によって阻害される転写因子群であり、幹細胞維持、脂肪分化、インスリン感受性、抗酸化酵素遺伝子の増強活性を増加することによる活性酸素種(ROS)に対する防御、アポトーシス、腫瘍抑制及び長寿命化(longevity)を含む多くの生物学的過程に関与する。それらの既知の標的遺伝子の多くはSODを含むストレス応答遺伝子である。例えばAntebi, PLOS genetics 3, 1565-1571 (2007); Tothova and Gilliland, Cell Stem Cell 1, 140-152 (2007)、及びAccili and Arden, Cell 117, 421-476 (2004)を参照されたい。
ヤナギ抽出物
本明細書中に記載の方法で使用されるヤナギは、ヤナギ科ヤナギ(Salix)属又はヤマナラシ属の植物である。ヤマナラシ属の植物の例としては、「ウラジロハコヤナギ」(別名、「ハクヨウ」、「ギンドロ」;ポルプス・アルバ(P. alba))、カナダポプラ(ポプルス・カナデンシス(P. x Canadensis))、コットンウッド(cottonwood)(ポルプス・デルトイデス(P. deltoides))(別名、「ヒロハハコヤナギ」)、「コトカケヤナギ」(ポルプス・ユーフラティカ(P. euphratica))、「オオバヤマナラシ」(ポルプス・トメントサ(P. tomentosa))、「チリメンドロ」(ポルプス・コリアナ(P. koreana))、「ドロノキ」(ポルプス・マキシモウィクシィ(P. maximowiczii))、「ヨーロッパクロヤマナラシ」(ポルプス・ニグラ(P. nigra))、「セイヨウハコヤナギ」(別名、「イタリアヤマナラシ」;ポルプス・ニグライタリカ変種(P. nigra var. italica))、「ヤマナラシ」(別名、「ハコヤナギ」、「ポプラ」;ポルプス・シーボルディ(P. sieboldii))、ヒロハハコヤナギ(ポルプス・タカマハカ(P. tacamahaca))、「シナヤマナラシ」、「チョウセンヤマナラシ」(ポルプス・ダビディアーナ(P. davidiana))、アメリカポプラ(ポルプス・トレムロイデス(P. tremuloides))及びポルプス・ユーラメリカナ(P. euramericana)が挙げられる。ヤナギ属の植物の例としては、セイヨウシロヤナギ(White Willow)(サリックス・アルバ(S. alba))、「サイコクキツネヤナギ」(サリックス・アロポクロア(S. alopochroa))、「ユスラバヤナギ」(サリックス・アウリタ(S. aurita))、「シダレヤナギ」(別名、「イトウヤナギ」、サリックス・バビロニカ(S. babylonica))、「ヤマネコヤナギ」(別名、「バッコヤナギ」、サリックス・バッコ(S. bakko))、「アカネヤナギ」(別名、「マルバヤナギ」、サリックス・ケノメロイデス(S. chaenomeloides))、「コガネシダレ」(サリックス・クリソコーマ(S. chrysochoma))、サリックス・ダフノイデス(S. daphnoides:セイヨウエゾヤナギ)、「サリックス・エレアグノス」(サリックス・エレアグノス「Scopoli」(S. elaeagaos 'Scopoli'))、「ポッキリヤナギ」(サリックス・フラギリス(S.fragilis))、「オオキツネヤナギ」(別名、「キンメヤナギ」、サリックス・フツラ(S. futura))、「カワヤナギ」(別名、「ナガバカワヤナギ」、サリックス・ギルギアナ(S. gilgiana))、「ネコヤナギ」(サリックス・グラシリスチラ(S. gracilistyla))、「クロヤナギ」(サリックス・グラシリスチラメラノスタキス変種(S. gracilistyla var. melanostachys))、「サウセ」(サリックス・フンボルディアナ(S. humboldtiana))、「イヌコリヤナギ」(サリックス・インテグラ(S. integra))、「シバヤナギ」(サリックス・ジャポニカ(S. japonica))、「シロヤナギ」(サリックス・ジェッソエンシス(S. jessoensis)、「キヌヤナギ」(サリックス・キヌヤナギ(S. kinuyanagi))、「コリヤナギ」(サリックス・コリヤナギ(S. koriyanagi))、「エゾヤナギ」(サリックス・ロリダ(S. rorida))、「フリソデヤナギ」(サリックス・レウコピテキア(S. leucopithecia))、「ウンリュウヤナギ」(サリックス・マツダナトルツオサ品種(S. matsudana f. tortuosa))、「タカネイワヤナギ」(別名、「レンゲイワヤナギ」)、「オオシダレヤナギ」(サリックス・オオシダレ(S. ohsidare))、「エゾマメヤナギ」(サリックス・ヌンムラリアパウシフローラ亜種(S. nummularia ssp. Pauciflora))、「エゾノキヌヤナギ」(サリックス・ペッスス(S. pet-susu))、サリックス・プルプレア(S. purpurea:セイヨウコリヤナギ)、「コウヒリュウ」、「ミヤマヤナギ」(別名、「ミネヤナギ」、サリックス・レイニィ(S. reinii))、「コマイワヤナギ」(サリックス・ルピフラガ(S. rupifraga))、「オノエヤナギ」(別名、「カラフトヤナギ」、サリックス・サッカリネンシス(S. sachalinensis))、「コゴメヤナギ」(サリックス・セリッセフォリア(S. serissaefolia))、「シライヤナギ」(サリックス・シライ(S. shiraii))、サリックス種、「タチヤナギ」(サリックス・サブフラギリス)、「ノヤナギ」(別名、「ヒメヤナギ」)、「セイヨウタチヤナギ」、「キツネヤナギ」(別名、「イワヤナギ」、サリックス・ブルピン(S. vulpine))及び「エゾノタカネヤナギ」(サリックス・エゾアルピナ(S. yezoalpina))が挙げられる。ヤナギの芽、葉、果実、枝、幹、樹皮及び/又は根を単独で又はそれらを任意に組み合わせて使用することができ、必要に応じて摂取に好適な形態に処理される。好ましいヤナギは、サリックス・ダフノイデス、ヤナギ属、サリックス・プルプレア、サリックス・フラギリスを含むセイヨウシロヤナギであり、サリックス・アルバが特に好ましい。幾つかの実施形態では、ヤナギは、サリックス・アルバ、サリックス・ダフノイデス、サリックス・プルプレア又はサリックス・フラギリスである。
【0037】
本発明のヤナギ抽出物は、上記のヤナギを必要に応じて抽出に適した処理、例えば細断(chopping)、乾燥及び/又は粉砕(crushing)にかけた後に抽出するのが好ましい。上述の処理ヤナギは通常、抽出剤を使用して、例えば独立して静置、振盪、超音波照射、加熱、及び/又は加圧によって、又は必要に応じてそれらの任意の組合せで抽出する。幾つかの実施形態では、好ましい手順は、ヤナギを抽出剤中に浸漬した後、振盪又は撹拌することである。幾つかの実施形態では、ヤナギ抽出物を本明細書中に記載のように分画し、活性が最も高い画分を本明細書中に記載の組成物に使用する。
【0038】
通常、水性溶媒及び有機溶媒を抽出剤として使用し、単独で又はそれらを組み合わせて使用することができる。有機溶媒の例としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル及び同様のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;並びにCO及び同様の超臨界流体が挙げられる。幾つかの実施形態では、好ましい抽出剤としては、水、エタノール及びそれらの混合物が挙げられる。幾つかの実施形態では、水を抽出剤として使用する。
【0039】
これらの操作を行う温度は変更することもできる。抽出温度は通常、3℃〜使用される抽出剤の沸点である。抽出時間は、例えば抽出剤の種類、抽出温度、及び/又はヤナギの形態によって様々であるが、典型的には1時間〜7日間、好ましくは2時間〜3日間である。必要に応じて、加圧することができる。幾つかの実施形態では、ヤナギ抽出物を沸騰水を使用して調製する。
【0040】
本明細書中に記載の組成物及び方法において変更することなく、抽出物を使用することができる。例えば濃縮、乾燥保存(desiccated)、無水化(exsiccated)及び/又は凍結乾燥した後;抽出物の効果を損わない限りにおいて、脱色、脱臭及び/又は脱塩等の精製処理にかけた後;及び/又は分画処理、例えば液液分配クロマトグラフィ及びカラムクロマトグラフィにかけた後、抽出物を例えば水又は有機溶媒中に溶解するものとして使用することもできる。代替的に、ヤナギ抽出物を好適な担体、例えばリポソーム又はマイクロカプセル中に含有させることができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、画分の保持因子(Rf)を求め、Rf値が0.5を超える、例えば0.6、0.7、0.75又は0.78を超える画分を選択する。幾つかの実施形態では、本方法で有用な画分は有意量のサリシンを含有しない。
茶抽出物
本明細書中に記載の方法及び組成物で使用される茶は、例えば緑茶、烏龍茶、紅茶又はプーアール茶を含み得る(それらの全てがカメリア・シネンシス(Camellia sinensis)由来である)。植物の任意の組織(part)、例えば花、葉及び/又は枝を単独で又はそれらを任意に組み合わせて使用することができ、必要に応じて摂取に好適な形態に処理される。幾つかの実施形態では、葉を単独で使用する。幾つかの実施形態では、好ましい茶は緑茶である。
【0042】
本明細書中に記載の茶抽出物は一般的に、茶を必要に応じて抽出に適した処理、例えば細断、乾燥及び/又は粉砕にかけた後で調製される。次いで、処理茶を通常、抽出剤に接触させ、例えば独立して静置、振盪、超音波照射、加熱、及び/又は加圧によって、又はそれらの任意の組合せで抽出する。幾つかの実施形態では、茶を抽出剤中に浸漬した後、振盪又は撹拌する。
【0043】
通常、水性溶媒及び有機溶媒を抽出剤として、単独で又はそれらを任意に組み合わせて使用する。有機溶媒の例としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール;並びにCO及び他の超臨界流体が挙げられるが、これらに限定されない。これらを単独で又は組み合わせて使用することができる。好ましい抽出剤としては、水及びエタノールである。幾つかの実施形態では、抽出剤は、約65%〜85%エタノール水溶液、例えば約70%〜80%エタノール水溶液である。
【0044】
抽出温度は通常、3℃〜使用される抽出剤の沸点である。抽出時間は、例えば抽出剤の種類、抽出温度、及び/又は茶の形態によって様々であるが、典型的には1時間〜7日間、例えば2時間〜3日間である。必要に応じて、さらに加圧することができる。さらには、必要に応じて、活性成分の安定抽出のために事前にアスコルビン酸等の抗酸化物質を抽出剤に添加することができる。
【0045】
幾つかの実施形態において、茶抽出物を本明細書中に記載のように分画し、活性が最も高い画分を本明細書中に記載の組成物に使用する。
【0046】
本明細書中に記載の組成物及び方法において変更することなく、抽出物を使用することができる。濃縮、乾燥保存、無水化又は凍結乾燥した後;抽出物の効果を損わない限りにおいて、脱色、脱臭又は脱塩等の精製処理にかけた後;及び/又は液液分配クロマトグラフィ及びカラムクロマトグラフィ等の分画処理にかけた後、抽出物を例えば水、有機溶媒中に溶解することもできる。代替的に、茶抽出物を好適な担体、例えばマイクロカプセル又はリポソーム中に含有されるものとして使用することができる。
ブロッコリー粉末
本明細書中に記載の方法で使用されるブロッコリーは、キャベツ科、アブラナ科(Brassicaceae)(前十字花科(Cruciferae))のブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea:ヤセイカンラン)属の植物である。ブロッコリーの花、芽、茎及び葉を単独で又はそれらを任意に組み合わせて使用することができ、必要に応じて内用又は外用に好適な形態に処理する。好ましくは、花芽及び茎の両方を使用する。上記のブロッコリーを必要に応じて抽出のために調製するのに適した処理、例えば細断、乾燥及び/又は粉砕にかけた後、ブロッコリー粉末を抽出するのが好ましい。次いで、上述の処理ブロッコリーは通常、抽出剤、例えば水、エタノール又はそれらの混合物を使用して、独立して静置、振盪、超音波照射、加熱、及び/又は加圧によって、又は必要に応じてそれらの任意の組合せで圧搾及び/又は抽出する。幾つかの実施形態では、好ましい手順は、ブロッコリーの花芽の集まり(flower heads)の大きな塊のピューレを圧搾することである。幾つかの実施形態では、ブロッコリー抽出物を本明細書中に記載のように分画し、活性が最も高い画分を本明細書中に記載の組成物に使用する。
【0047】
幾つかの実施形態において、本明細書中に記載の組成物及び方法において変更することなく、抽出物を使用することができる。例えば濃縮、乾燥保存、無水化及び/又は凍結乾燥した後;抽出物の効果を損わない限りにおいて、脱色、脱臭及び/又は脱塩等の精製処理にかけた後;及び/又は分画処理、例えば液液分配クロマトグラフィ及び/又はカラムクロマトグラフィにかけた後、抽出物を例えば水又は有機溶媒中に溶解するものとして使用することもできる。
ニンジン粉末
本明細書中に記載の方法で使用されるニンジンは、ダウカス・カロータ(Daucus carota:ニンジン)属の植物である。ニンジンの根、葉及び茎を単独で又はそれらを任意に組み合わせて使用することができ、必要に応じて内用又は外用に好適な形態に処理する。好ましくは、根を使用する。上記のニンジンを必要に応じて抽出のために調製するのに適した処理、例えば細断、乾燥及び/又は粉砕にかけた後、ニンジン粉末を抽出するのが好ましい。次いで、上述の処理ニンジンは通常、抽出剤、例えば水、エタノール又はそれらの混合物を使用して、例えば独立して静置、振盪、超音波照射、加熱、及び/又は加圧によって、又は必要に応じてそれらの任意の組合せで圧搾及び/又は抽出する。幾つかの実施形態では、好ましい手順は、ニンジンの根のピューレを圧搾することである。幾つかの実施形態では、ニンジン抽出物を本明細書中に記載のように分画し、活性が最も高い画分を本明細書中に記載の組成物に使用する。
【0048】
本明細書中に記載の組成物及び方法において変更することなく、抽出物を使用することができる。例えば濃縮、乾燥保存、無水化及び/又は凍結乾燥した後;抽出物の効果を損わない限りにおいて、脱色、脱臭及び/又は脱塩等の精製処理にかけた後;及び/又は分画処理、例えば液液分配クロマトグラフィ及びカラムクロマトグラフィにかけた後、抽出物を例えば水又は有機溶媒中に溶解するものとして使用することもできる。
組成物
本明細書中に記載の組成物は、1つ又は複数の植物抽出物、例えばニンジン、ブロッコリー、ヤナギ及び/又は茶の抽出物、及び/又はそれらに由来する活性画分又は作用物質を典型的に、約0.0001重量%〜95重量%、好ましくは0.001重量%〜70重量%、より好ましくは0.01重量%〜30重量%含むことができる。幾つかの実施形態では、有用な組成物は、以下の実施例4に記載のように調製されるヤナギ抽出物のより活性の高い画分の幾つか又は全て、例えば画分1+画分2又は画分1+画分2+画分3を含む。さらに、本明細書中に記載の組成物は、化合物の活性に有意に悪影響を与えなければ、例えば化粧品、医薬品又は食品の分野で有用な添加物を含有してもよい。
経口投与用の医薬品組成物
一態様において、本発明は、本明細書中に記載の抽出物及び活性画分を含む医薬品組成物を含む。1つ又は複数の植物抽出物、及び/又はそれらに由来する活性画分又は作用物質に加えて、本明細書中に記載の組成物は、経口で許容される担体、添加物等をさらに含有することができる。組成物は、様々な形態、例えば経口摂取に適した形態、例えば液体製剤;錠剤、顆粒、細粒、粉末等の固体製剤;該液体又は固体製剤を含有するカプセル;経口噴霧剤;及びトローチにおいて使用することができる。これらの形態の製剤を標準的な方法で作製することができる。製剤はピル(特に錠剤)、カプセル、小丸薬、粉末又は顆粒、より好ましくはピル又はカプセルの形態であるのが好ましい。また医薬品製剤分野で使用される経口で許容される添加物及び担体が組成物中に含まれ得る。例は以下で与えられるが、それらに限定されない。賦形剤としては、例えば糖アルコール(例えばマルチトール、キシリトール、ソルビトール又はエリスリトール)、ラクトース、白糖、塩化ナトリウム、グルコース、デンプン、炭酸塩(例えば炭酸カルシウム)、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、メチルセルロース、グリセロール、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、タルク、リン酸塩(例えば第二リン酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム又はリン酸二水素ナトリウム)、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム又はカカオバターが挙げられる。粘度調整剤としては、例えば単シロップ、グルコース液、デンプン液及びゼラチン溶液が挙げられる。結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、結晶セルロース、粉末セルロース、結晶セルロース−カルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、シェラック、メチルセルロース、エチルセルロース、リン酸カリウム、粉末アラビアゴム、プルラン、ペクチン、デキストリン、コーンスターチ、α−デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ゼラチン、キサンタンゴム、カラギーナン、トラガカント、粉末トラガカント及びマクロゴール(macrogoal)が挙げられる。崩壊剤としては、例えば乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、寒天粉末、ラミナラン粉末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン及びラクトースが挙げられる。崩壊阻害剤としては例えば、白糖、ステアリン酸、カカオバター、硬化油等;第四アンモニウム塩及びラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤が挙げられる。吸収剤としては例えば、デンプン、ラクトース、カオリン、ベントナイト及びコロイドケイ酸が挙げられる。滑剤としては例えば、強化タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸粉末及びポリエチレングリコールが挙げられる。乳化剤としては例えば、スクロース脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、酵素処理したレシチン、発酵レシチン及びサポニンが挙げられる。抗酸化剤としては例えば、アスコルビン酸及びトコフェロールが挙げられる。酸味料としては例えば、乳酸、クエン酸、グルコン酸及びグルタミン酸が挙げられる。強化剤としては例えば、ビタミン、アミノ酸、乳酸塩、クエン酸塩及びグルコン酸塩が挙げられる。可塑剤としては例えば、二酸化ケイ素が挙げられる。甘味料としては例えば、スクラロース、アセスルファームカリウム、アスパルテーム及びグルチルリチン(glycyrrhizin)が挙げられる。香料としては例えば、ペパーミント油、ユーカリ油、シナモン油、ウイキョウ油、チョウジ油、オレンジ油、レモン油、バラ油、果実フレバー、ミントフレバー、ペパーミント粉末、dl−メントール及びl−メントールが挙げられる。オリゴ糖としては例えば、ラクトース、ラフィノース及びラクトスクロースが挙げられる。調製溶媒としては例えば酢酸ナトリウムが挙げられる。
【0049】
さらに、例えば糖衣(sugar-coated)錠、ゼラチン膜コーティング錠剤、腸溶性(enteric-coated)錠剤、膜コーティング錠剤、二重層錠剤、又は多層錠剤を調製するのに必要であれば、錠剤等の固体製剤に、典型的なコーティングを被覆することができる。液体製剤は、水性又は油性の懸濁液、溶液、シロップ又はエリキシルの形態であってもよく、標準的な方法によって、例えば当該技術分野で知られるような、及び/又は本明細書中に記載のような典型的な担体及び/又は添加物を使用して調製することができる。
経口投与用の栄養補助組成物
例えば食用担体、食品成分又は食品添加物と組み合わせた、1つ又は複数の植物抽出物、及び/又はそれらに由来する活性画分又は作用物質を含む栄養補助組成物も本発明に含まれる。かかる組成物を当該技術分野で既知の方法で調製する。かかる栄養補助食品の例としては、飲料等の液体食品、及びバー(bars)、ケーキ、錠剤、顆粒、チュアブル錠等の固体食品が挙げられる。代替的にそれらは半固体、例えばヨーグルト又はヨーグルトのような硬さであり得る。かかる食品形態の具体例としては、ジュース、ソフトドリンク及び茶等の液体飲料;ジュース粉末又はスープ粉末等の粉末飲料;チョコレート、キャンディー、チューイングガム、アイスクリーム、ゼリー、クッキー、ビスケット、コーンフレーク、チュアブル錠、膜シート(film sheets)、ウエハース、グミ、煎餅及び餡子が詰まった団子等のスナック菓子;ドレッシング、ソース等の調味料;パン、パスタ、コンニャクマンナン、魚のすり身(例えばかまぼこ)、ふりかけ、経口噴霧剤並びにトローチが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
また栄養補助食品は、当該技術分野で既知の様々な添加物及び担体を含むことができる。例えば、乳酸菌、不活性化細菌、他のプロバイオティクス等の生きている微生物、ビタミン、薬用植物(botanical medicines)、ハーブ等の他の植物、及びそれらの抽出物を添加物として使用することができる。担体の例としては、糖アルコール、賦形剤、結合剤、乳化剤、抗酸化剤、酸性化剤、強化剤、アンチケーキング剤、滑剤、甘味料及び香味料が挙げられる。
【0051】
栄養補助組成物を、例えば健康食品、機能性食品、指定健康食品、栄養機能性食品又は、被験者における状態、例えば老化に伴う疾患又は症状の治療のための食品として使用することができる。
オーラルケア製品
本明細書中に記載の植物抽出物及びそれらの活性画分を練り歯磨き粉、歯磨き粉、液体歯磨剤、ゲル歯磨剤、歯科用予防ペースト、口腔スプレー及び口腔洗浄液等のオーラルケア用の組成物で使用することができる。かかる組成物、並びに好適な担体及び添加物を調製する方法が当該技術分野で既知である。
局所投与用の組成物
1つ又は複数の植物抽出物、及び/又はそれらに由来する活性画分又は作用物質に加えて、本明細書中に記載の組成物は、外用的に許容される担体、添加物等をさらに含有することができる。これらの組成物は、皮膚への適用に適した様々な形態、例えば水溶液、可溶化局所組成物、粉末分散体、水油2層組成物、水油粉末3層組成物、油/水エマルション、水/油エマルション、水/油/水エマルション、ゲル、エアロゾル、ミスト、カプセル、錠剤、顆粒及び粉末で使用することができる。これらの形態の製剤を標準的な方法で作製することができる。これらの製剤は、水溶液、油/水エマルション、水/油エマルション、水/油/水エマルション、ゲル、エアロゾル又はミストの形態であるのが好ましい。また医薬品又は化粧品の分野で使用される外用的に許容される添加物及び担体を組成物中に含むことができる。例は以下に挙げられるが、それらに限定されない。賦形剤としては、例えば陰イオン界面活性剤(例えばアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルアラニン酸塩、アルキルグルタミン酸塩、アルキルイセチオン酸塩、アルキルサルコシネート又はソープ)、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤(例えばアルキルベタイン、アミドプロピルベタイン又はイミダゾリウムベタイン)、非イオン性界面活性剤(例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ブロックコポリマー、脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、サポリン、糖エステル又はアルカノールアミド)、油性物質(例えば鉱油、スクアラン、ラノリン、ワセリン、植物油、動物油、セレシン、脂肪酸エステル又は高級アルコール)、多価アルコール(例えばプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール、ペンチレングリコール又はポリオキシエチレングリコール)、ポリマー(例えばポリシロキサン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、プルラン、ペクチン、デキストリン又はキサンタンゴム)、粉末(例えばカオリン、結晶セルロース、タルク又はベントナイト)、有機酸及び無機酸が挙げられる。化粧品、医薬部外品(quasi-drugs)、薬剤等に組み込むのに適した他の様々な成分(例えばシクロシロキサン、ポリビニルアルコール、タンパク質、加水分解タンパク質、ペプチド、アミノ酸、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤、湿潤剤、ビタミン、医学的有効成分、保存料、着色剤又は香料)を、それにより本発明の目的に重大な悪影響を及ぼさなければ、例えば活性成分の活性が有意に低減しなければ組み込むことができる。医薬部外品は身体に対して軽度の作用を有するが、疾患の診断、予防又は治療を対象とするものではなく、身体の構造又は機能に影響を与えるものでもない。
【0052】
製品は、例えば、ローション、乳液(milky emulsions)、クリーム及びパック等の顔用化粧品;ファンデーション、頬紅、口紅、アイシャドー、アイライナー及び日焼け止め剤等の化粧品;身体用化粧品、例えばローション及びクリーム;メイク落とし剤(make-up removers)、フェイスクレンザー及びボディシャンプー等のスキンクレンジング化粧品;浴剤;並びにシャンプー及びコンディショナ等のヘアーケア剤を含む、皮膚に対して外用に従来使用される任意の種類のものであってもよい。
有効用量
本明細書中に記載の組成物の有効用量を、例えばin vitro試験及び動物実験に基づき、当該技術分野で既知の方法を使用して決定することができる。幾つかの実施形態では、(例えば経口組成物として)内用される植物抽出物の用量は、成人1人当たり約50mg/日〜2000mg/日、例えば約100mg/日〜1000mg/日である。さらに、経口組成物は、1日1回から数回に分けて、食前(例えば5分以内)、食間、食後(例えば5分以内)又は食事と共に摂取することができる。幾つかの実施形態では、食事と共に又は食後に経口用量を摂取する。幾つかの実施形態では、(例えばクリーム又はローション等の局所製剤において)外用される植物抽出物の用量は、製剤の約0.0001重量%〜95重量%、好ましくは0.001重量%〜70重量%及びより好ましくは0.001重量%〜30重量%である。幾つかの実施形態では、局所製剤を1日1回又は複数回適用することができる。
使用
本明細書中に記載の、又は本明細書中に記載の方法によって発見された組成物は、第II相解毒活性の向上を必要とする被験者の治療に有用である。例えば、酸化的ストレスは、組織の細胞における進行性の形態変化及び正常な代謝活性の進行性喪失を一般的に特徴とする変性疾患の病因に重要な役割を果たし得ると考えられている。幾つかの実施形態では、変性疾患は、例えば病変細胞又は組織に存在する異常なレベルのグルタチオン又は任意の第II相酵素を特徴とし得る。これらの異常なレベルは、変性疾患の原因又は兆候のいずれかであり得る。本明細書中で使用される「変性疾患」という語句は、腫瘍成長又は急性毒性発作によるものではない罹患組織における正常細胞の破壊を特徴とする生理学的状態を表す。変性障害の例としては、糖尿病、慢性肝不全、慢性腎不全、ウィルソン病、鬱血性心不全、アテローム性動脈硬化症及び神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、癲癇、重症筋無力症、神経障害、運動失調、認知症、慢性軸索神経障害及び脳卒中が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に記載の治療を使用して、先在している変性状態を有する被験者を治療するか、又は変性障害に罹りやすい被験者における疾患の発症又は進行を予防又は遅延させることができる。
【0053】
さらに、これらの化合物は、例えば被験者の皮膚上での被験者における老化の影響の処置に有用である。したがって、本明細書中に記載の組成物を、例えばしわ、不要な色素沈着、皮膚の荒れ及び乾燥肌、又は皮膚のくすみを処置するのに使用することができる。
スクリーニング方法
茶抽出物及びヤナギ抽出物に存在する化合物がP2D遺伝子のNrf2/Skn−1活性化のエンハンサーであるという発見により、それらの抽出物において活性化合物を同定する方法に対する基盤が与えられる。多くのアッセイ(例えばシノラブディティス・エレガンスにおける天然又は改変Skn−1活性、及び任意の好適な細胞、例えばNrf2を発現する哺乳動物細胞におけるレポーター遺伝子構築物)をこれらの方法で使用することができる。抗酸化応答エレメントの活性因子に対する遺伝的スクリーニングは、Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 104(12):5205-5210 (2007)に記載されている。レポータ構築物には、任意の検出可能なレポーターエレメント、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)若しくはそれらの変異体、例えば赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)若しくは強化GFP(eGFP)等の蛍光タンパク質;ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)又はβ−ガラクトシダーゼと共に典型的な最小プロモータ配列と連結した抗酸化応答エレメントが含まれる。かかる構築物を設計、選択及び作製する方法が当該技術分野で既知であり、例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)を参照されたい。
抗酸化応答エレメント(ARE)
AREは、多くの第II相解毒酵素の5’隣接領域に見出されるシス作用調節エンハンサーエレメント(コアコンセンサス配列:5’−GTGACnnnGC−3’)である。AREは、活性酸素種及び他の求電子剤によって、並びにNrf2の結合によって活性化される。AREによって調節される遺伝子には、P2Dヘムオキシゲナーゼ−1、グルタチオン合成酵素、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、及びNAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ1(NQO1)、グルタミルシステイン合成酵素(例えばグルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)、グルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC))及びカタラーゼ、並びに抗酸化酵素スーパーオキシドジスムターゼ(例えばSOD1)が含まれる。
第II相解毒酵素
グルクロン酸化、硫酸化、メチル化、アセチル化、アミノ酸抱合及びグルタチオン抱合を含む6種類の第II相抱合反応がある。ロダネーゼ酵素によって触媒される反応(硫黄イオンをシアニドに移動させて、チオシアネートを生成する)も本明細書中において第II相反応であると考えられる。例えば米国特許第6,812,248号明細書(その全体が参照により本明細書中に援用される)を参照されたい。幾つかの実施形態では、本明細書中に記載のスクリーニング方法には、細胞においてこれらの抱合反応の1つ又は複数を検出すること、及び画分が抱合反応を増加させる化合物を含むかどうかを求めるために、かかる活性を定量することが含まれる。
分画試料
概して、本明細書中に記載の方法は、抽出物の画分、例えば抽出物に存在する全ての構成要素の一部の使用を含む。かかる画分は、当該技術分野で既知の方法のいずれかを使用して作製することができ、また任意の1つ又は複数の抽出物の構成要素の物理的特性、例えばサイズ、pH、pI、可溶性又は電荷に基づき調製することができる。本明細書中に記載の抽出物を分画する方法、例えば免疫除去(immunodepletion)(アフィニティ除去)、ゲル電気泳動、逆相クロマトグラフィ、ゲル若しくは他の濾過、イオン交換、例えばシリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィ、等電点電気泳動(isoelectric focusing)、例えば固定pH勾配等電点電気泳動(IPG IEF)を含む(が、これらに限定されない)タンパク質及びペプチド分画法の多くが当該技術分野で既知であり、溶液相のpIに基づく分画系はpIによってタンパク質又はペプチドを分画する。液液分画法又は固液分画法も使用することができる。
【0054】
特に例えば、Jin et al., Biotechnol J. 2006 Feb;1(2):209-13、Si et al.,中国緑茶抽出物における抗菌成分の、バイオアッセイによって誘導された精製及び同定(Bioassay-guided purification and identification of antimicrobial components in Chinese green tea extract). J Chromatogr A. 2006;1125(2):204-10、Paveto et al.,緑茶(カメリア・シネンシス)のカテキンの抗クルーズ・トリパノソーマ活性(Anti-Trypanosoma cruzi activity of green tea(Camellia sinensis) catechins). Antimicrob Agents Chemother. 2004;48(1):69-74、Kinjo et al.,ヒト胃癌細胞に対する抗増殖活性による緑茶抽出物の、活性によって誘導された分画(Activity-guided fractionation of green tea extract with antiproliferative activity against human stomach cancer cells). Biol Pharm Bull. 2002;25(9): 1238-40、Satoh et al.,紅茶抽出物であるテアルビギン画分がマウスにおける破傷風毒素の影響に対抗する(Black tea extract, thearubigin fraction, counteracts the effect of tetanus toxin in mice). Exp Biol Med (Maywood). 2001 ;226(6):577-80; Sagesake-Mitane et al.,緑茶の熱水抽出物における血小板凝固阻害因子(Platelet aggregation inhibitors in hot water extract of green tea). Chem Pharm Bull (Tokyo). 1990;38(3):790-3、Jassbi, Z Naturforsch [C]. 2003;58(7-8):573-9. ヤナギルリハムシに関するサリックス・インテグラの刺激因子及び摂食阻害剤としての二次代謝産物(Secondary metabolites as stimulants and antifeedants of Salix Integra for the leaf beetle Plagiodera versicolora)、並びにWildermuth and Fall,ヤナギの葉におけるイソプレン合成の間質及びチラコイド結合アイソフォームの生化学的特徴付け(Biochemical characterization of stromal and thylakoid-bound isoforms of isoprene synthase in willow leaves). Plant Physiol. 1998; 116(3): 1111-23を参照されたい。
【実施例】
【0055】
本発明は以下の実施例においてさらに説明されるが、実施例は特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1 − 抽出物の調製
緑茶、セイヨウシロヤナギ、松樹皮、及びブロッコリー(スルフォラファン)の抽出物を含む多数の抽出物を、本実験において使用するために調製した。
緑茶抽出物
緑茶抽出物(テア・シネンシス(Thaea Sinensis)、Emil Flachsmann AG/Frutarom,Haifa,Israel、製造番号85.942)は、0.0025%アスコルビン酸をエタノール(80%)に溶解した溶液に緑茶の葉を浸漬し、室温で4時間ゆっくりと攪拌した後、抽出物を濾過して茶葉を除去することにより調製した。次に、抽出剤を減圧濃縮器を用いて除去することにより緑色/褐色抽出物を調製し、これに賦形剤としてデキストリンを添加し、混合物を実験において使用するために粉末状にした。
【0056】
緑茶抽出物を含有する2mg/mLのDMSO溶液を調製した。DMSOは、高濃度でシノラブディティス・エレガンスにおいて酸化的ストレスを引き起こし得るため、緑茶抽出物を試験材料として使用するために、M9塩類培地(saline medium)(42mM NaHPO、22mM KHPO、86mM NaCl、1mM MgSO・7HO)に最終濃度が2μg/mLとなるように添加した。DMSOの最終濃度は0.1%であった。このように低い濃度のDMSOは、シノラブディティス・エレガンスにおいて酸化的ストレスを引き起こさなかった。
セイヨウシロヤナギ抽出物
セイヨウシロヤナギ抽出物(サリクス・コルテクス(Salicis Cortex)、Emil Flachsmann AG/Frutarom,Haifa,Israel、製造番号0085816)は、乾燥させた市販のセイヨウシロヤナギの樹皮及び芽を精製水に浸漬し、室温で4時間ゆっくりと攪拌した後、抽出物を濾過して固体物質を除去することにより調製した。次に、抽出剤を減圧濃縮器を用いて除去することにより褐色抽出物を調製し、これに賦形剤としてアラビアゴムを添加し、混合物を実験において使用するために粉末状にした。
【0057】
ヤナギ抽出物を10mg/mLの濃度でM9塩類培地に溶解したものを、試験材料として使用した。
松樹皮抽出物
松樹皮抽出物を実験において使用するために、乾燥松樹皮から熱水中で3時間〜4時間抽出することにより調製した。
【0058】
松樹皮抽出物を濃度が2mg/mLとなるようにDMSOに溶解し、試験材料として使用するために最終濃度が2μg/mLとなるようにM9塩類培地に添加した。
スルフォラファン
さらに、スルフォラファン(ブロッコリー芽の活性誘導体)を陽性対照として使用した。スルフォラファンをアセトニトリルに溶解した後、試験材料として使用するためにM9塩類培地で1mg/mLに希釈した。
実施例2 − gcs−1::GFP融合構築物の作製及び発現
第II相解毒酵素(P2D)である、gcs−1遺伝子によりコードされる酵素(CGS−1)が、in vivoでのグルタチオン合成の律速酵素であり、gcs−1遺伝子が、解毒及び抗酸化を調節するSKN−1の第二世代標的遺伝子であることはよく知られている。
【0059】
GCS−1プロモータをコードする核酸(An and Blackwell, 2003, Genes & Dev., 17, 1882-1893に記載される)を、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする配列と融合させて、標準的な分子生物学の技法を用いてレポータ構築物(gcs−1::GFP)を作製した。この融合構築物遺伝子をシノラブディティス・エレガンスに導入して(transfer)(An and Blackwell, 2003, Genes & Dev., 17, 1882-1893、Mello, et al., EMBO J., 1991. 10(12):3959-70)、得られた形質転換シノラブディティス・エレガンスを実験において使用した。酸化的ストレスの少ない標準条件下で、gcs−1::GFP構築物をシノラブディティス・エレガンスの咽頭領域及びASIにおいて発現させるが、ここでGFPの蛍光発光を測定することができる。
【0060】
比較として、gcs−1遺伝子プロモータにおけるSKN−1結合部位の変異株(gcs−1Δ2Mut3)(An and Blackwell, 2003, Genes & Dev., 17, 1882-1893を参照されたい)を、GFPをコードする配列と融合させて、遺伝子(gcs−1Δ2Mut3::GFP遺伝子)を作製し、これをgcs−1::GFP遺伝子と同じ方法で試験した。この変異株遺伝子はSKN−1と結合することができないため、SKN−1により調節されるGCS−1を発現させることは不可能であった。SKN−1のGCS−1発現の調節はしたがって、上記融合遺伝子においてGFPが発現されたが、変異株遺伝子においては発現されなかった場合に確認される。
実施例3 − ヤナギ抽出物及び茶抽出物はGCS−1::GFP発現を増強する
シノラブディティス・エレガンスにおけるGCS−1::GFPレポータ構築物(実施例2に記載される)の発現に対する、実施例1において調製した各種抽出物の影響を研究するために、An and Blackwell, 2003, Genes & Dev., 17, 1882-1893による方法に従って実験を行った。
【0061】
各実験の前に、GCS−1::GFPレポータ構築物トランス遺伝子を有するおよそ20匹のL4期幼虫を、OP50細菌(大腸菌株;シノラブディティス・エレガンスの餌)を含有するNGMプレート(寒天培地の一種、Brenner, Genetics, 1974 May;77(1):71-94を参照されたい)に取り、2日〜3日間成長させた。幼虫を試験材料で処理するために、NGMプレート表面を塩類培地(M9)で満たすことにより、幼虫を塩類培地(M9)と共に微小遠心管に移した。次に、微小遠心管を遠心分離にかけ、上清を除去した。同じ手順を再度繰り返して、幼虫を洗浄した。この洗浄により餌として与えた細菌が除去された。
【0062】
幼虫を洗浄した後、特定の試験材料において特定の濃度で以下の期間インキュベーションを行った。初めは、インキュベーション時間は30分間であり、後に60分間、90分間、及び120分間まで延長した。上記の所与の時間処理した後、幼虫をM9中で少なくとも2回洗浄し、細菌を含有するNGMプレートに戻し、約30分間回復させた。幼虫を次にスライド上に載せ、顕微鏡下でGFP発現レベルについてスコア付けした。各幼虫の腸におけるGFP発現レベルを3つのスコア(高度、中度、及び低度の発現)に基づいて評価した。高度というスコアは、腸全体にわたってGFP発現を有する幼虫に与えた。腸の途中までGFP発現を有する幼虫は、中度としてスコア付けした。低度というスコアは、腸においてGFPをほとんど又は全く発現しない幼虫に与えた。
【0063】
図1及び図2に示す結果により、緑茶抽出物又はヤナギ抽出物のいずれかによる処理は、gcs−1プロモータによって駆動されるGFP発現を、対照条件と比較して劇的に増加させたことが実証される。
【0064】
ヤナギ抽出物は、中度又は高度という発現のスコアを与えられる幼虫の数を有意に増加させた。これらの実験において、陰性対照であるM9塩類溶液は、腸においてGFP発現を誘導せず、全ての幼虫が低度とスコア付けされた。60分間の処理によって最大反応が認められた。しかしながら、スルフォラファンに関しては30分間、60分間又は90分間のインキュベーション後に、効果は全く認められなかった。この理由から、スルフォラファンによる処理には、より長いインキュベーション時間をかけたが、効果は6時間後に初めて認められた。図3に示すデータにより、茶抽出物及びヤナギ抽出物が、スルフォラファンと比較して明らかに短い時間でGCS−1::GFP発現を有意に誘導したことが明らかとなった。
【0065】
gcs−1Δ2::GFP遺伝子を導入した幼虫(GCS−1Δ2::GFP幼虫)を使用して、試験材料の効果がSKN−1に依存するか否かを試験した。このプロモータ変異株のトランス遺伝子は咽頭のgcs−1遺伝子発現を欠いているが、ASIニューロン及び腸においてSKN−1依存的発現を維持するものである。緑茶抽出物及びヤナギ抽出物の両方を用いた場合、GCS−1Δ2::GFP幼虫は、60分間のインキュベーション条件下でGCS−1::GFP幼虫と同じ発現レベルを示した。また、変異株トランス遺伝子CGS−1Δ2mut3::GFP幼虫を使用して、反応がSKN−1依存的であるか否かを決定した。gcs−1Δ2::GFP遺伝子の変異型であるこの遺伝子(gcs−1Δ2mut3::GFP遺伝子)は、そのプロモータ領域にSKN−1結合部位を欠いており、そのためGFPは標準条件及びストレス条件下で咽頭、ASIニューロン、又は腸において発現されない。これらの変異株(CGS−1Δ2mut3::GFP幼虫)を緑茶抽出物又はヤナギ抽出物のいずれかで処理した場合、GFP発現は観察されなかった。CGS−1::GFP幼虫、CGS−1Δ2::GFP幼虫、及びCGS−1Δ2mut3::GFP幼虫における試験材料による結果の比較によると、緑茶抽出物及びヤナギ抽出物を用いた場合、ASIニューロン及び腸においてはGCS−1::GFP発現が認められ、咽頭においてはGCS−1::GFP発現は実質的に認められなかったため、GCS−1::GFP発現がSKN−1結合により調節されることが明らかとなった。しかしながら、スルフォラファンを用いた場合、約半分のGCS−1::GFP発現が咽頭において認められ、GCS−1::GFP発現がSKN−1により部分的に調節されなかったことが比較によって示された。
【0066】
実施例4 − ヤナギ抽出物の分画
元のヤナギ抽出物から第II相活性化に対して最も大きな効果を有する画分を同定するために、カラムクロマトグラフィ法を使用した。例えば、シリカゲル充填カラムをヤナギ抽出物の分画に使用することができる。図4及び図5は、カラムクロマトグラフィを用いて行った分画実験の代表的な結果を示す。
【0067】
分離カラムを準備するために、400gのシリカゲル60(70〜230メッシュ(ASTM)、Merckから入手した)をメタノールに懸濁し、カラムに流し込んだ。その後、メタノールをクロロホルム:メタノール(10:1)溶液に置き換えた。元のヤナギ抽出物5gを水に再懸濁し、シリカゲル表面の上側に載せた。最初の溶出溶媒として、約1.5Lのクロロホルム:メタノール(10:1)を材料の溶出に使用した。溶出溶液を20mL毎に画分チューブ(fraction tube)に回収した。液相はクロロホルム:メタノール(10:1)溶液、続いて上層のクロロホルム:メタノール:水(7:3:1)、次にクロロホルム:メタノール:水(6:4:1)、クロロホルム:メタノール:水(5:5:1)、最後にメタノール洗浄液を使用した。次に、材料を薄層クロマトグラフィ(TLC)法によりアッセイした。溶出溶液をクロロホルム:メタノール:水(6:4:1)溶液を用いてTLCプレート(TLCプレートシリカゲル60 F254、Merckにより提供された)上で展開した。画分を検出するために、50%硫酸をTLCプレート上に塗布し、これを次に250℃で加熱した。
【0068】
より効果的な材料をTLC展開の保持因子(Rf)値によりさらに明らかにした。Rfとは、化合物が移動する距離を溶媒が移動する距離で除したものと定義される。画分1〜画分4に関するRf値を表1に示す。効果的な画分のRf値は0.5〜0.9であった。最も効果的な画分のRf値は0.6〜0.9であった。
【0069】
【表1】

【0070】
0.6〜0.9のRf値を有する画分は他の方法によっても単離することができる。例えば、逆相粒子(C2、C8、C18:Cは炭素を意味する)もシリカゲルの代わりに使用することができる。この場合、より効果的な画分は水:メタノール又は水:エタノール溶液を用いて溶出させることができ、そのRf値から画分を同定することができる。
【0071】
分子量により種を分離するゲルクロマトグラフィ法、及び分子の極性により分離を行うイオン吸光度ゲルクロマトグラフィ法も分画に使用することができる。また、液液分画法又は固液分画法をカラムクロマトグラフィの代わりに使用してもよい。
【0072】
カラムクロマトグラフィを行う前に、活性炭、例えば活性炭カラムを前処理として使用して、色を除去する(例えば、暗く変わった色の抽出物からクロロフィルを除去する)ことができる。
【0073】
図4及び図5は、カラムクロマトグラフィを用いた或る分画実験の結果を示す。カラムは、固相シリカゲル60(70〜230メッシュ(ASTM)、Merckから入手した)であった。液相はクロロホルム:メタノール(10:1)溶液、続いてクロロホルム:メタノール:水(7:3:1)、次にクロロホルム:メタノール:水(6:4:1)、クロロホルム:メタノール:水(5:5:1)、及び最後にメタノール洗浄液であった。図5に示す抽出物は以下のように調製した:抽出物1〜抽出物3をクロロホルム:メタノール(10:1)溶液を用いて抽出し、抽出物4をクロロホルム:メタノール:水(7:3:1)を用いて抽出し、抽出物5〜抽出物7をクロロホルム:メタノール:水(6:4:1)を用いて抽出し、抽出物8をクロロホルム:メタノール:水(5:5:1)を用いて抽出し、その後抽出物9をメタノールを用いて抽出した。次に、溶媒を標準的な蒸発器を用いて除去した。「様相」とは目視検査による画分の外観を表す。0.05gの材料を5mlの水に入れ、ボルテックスした。材料が室温において明らかに可溶である場合には、水溶性を測定した。図4において、白丸は材料が明らかに可溶であることを示し、「×」は明らかに可溶ではない(例えば、粒子状物質が存在していた)ことを示す。UVスポットをUV検出器を用いて観察し、UV吸光度を目視検査により測定した。また、図4において、白丸はUVスポットが観察されたことを示し、「×」はスポットが全く観察されなかったことを示す。図4に示す百分率は重量によるものである。GCLM及びGCLCの両方の遺伝子発現が対照と比較して有意に高く、且つ相対値が(100μg/mlで)4を超えていた場合、「高度」の遺伝子発現であると指定した。GCLM及びGCLCの両方の遺伝子発現が対照と比較して有意に高く、且つ相対値が(100μg/mlで)4未満であった場合、「中度(Mild)」と指定した。また、「低度」とはGCLM及びGCLCの両方の遺伝子発現が、対照と比較して有意に高くはなく、且つ相対値が(100μg/mlで)4未満であったことを意味していた。
【0074】
図6及び図7は、Nrf2下流遺伝子の発現に対する分画したヤナギ抽出物の効果を評価した結果を示す。ヒト線維芽細胞を、図4及び図5に示す9つの分画したヤナギ抽出物と、10μg/ml、50μg/ml、又は100μg/mlの濃度で接触させ、24時間インキュベートした。SYBR(商標)Greenを用いたRT−PCRを使用して、グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM、図6)及びグルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC、図7)の発現を検出した。内部対照遺伝子としてPPIAも評価した。結果により画分1、画分2、及び画分3が最大量のNRF2活性化活性を有していたことが実証された。
実施例5 − ヒト被験者へのヤナギ抽出物の投与
本実施例では、年齢約26歳〜45歳(平均年齢34.2歳)の健常ヒトボランティアにおいてヤナギ抽出物の抗酸化能を調べるために行った、小規模の試験について説明する。16人の被験者(男性7人及び女性9人)が登録されたが、3人が試験中に脱落した。
【0075】
被験者にAsk Intercity Co., Ltd.から入手したヤナギ抽出物を投与した。このヤナギ抽出物は、加熱しながら市販の乾燥させたヤナギの樹皮及び芽を精製水に浸漬することにより調製したが、このヤナギの樹皮及び若枝は、欧州薬局方及びコミッションEモノグラフに基づくと「セイヨウシロヤナギ樹皮」である。投与レジメンは、6カプセル/日(1日当たり合計800mgのヤナギ抽出物)で2週間の期間(続く2週間のウォッシュアウト期間)であった。次に、各被験者に以下を含む臨床検査を行った:
(i)ヘパリン化血から単離した末梢血単核細胞(PBMC)における、Ficoll−Conray(Ficcoll-Conray)密度勾配法を用いた抗酸化物質関連遺伝子発現の測定 − Nrf2、GCLM、フォークヘッドボックスO1(FOXO1)、SOD1、及びカタラーゼ。内部対照としてGAPDHを使用した(0週目、1週目、2週目、及び4週目にRT−PCRを用いて測定した)、
(ii)血清抗酸化指標 − 8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)、GSH、SOD、8−イソプロスタン、及びTRAPのレベル(0週目、1週目、2週目、及び4週目に測定した)、
(iii)血液生化学 − 総タンパク質、GOT、GPT、総コレステロール、HDL−C、LDL−C、トリグリセリド、ALP、アルブミン、A/G比、γ−GTP、アミラーゼ、尿素窒素、尿酸、クレアチニン、及びアテローム性動脈硬化指標(0週目、2週目、及び4週目に測定した)、
(iv)血液の血球数 − 血中グルコース、HbA1c、WBC、RBC、Hb、Ht、血小板、好塩基球、好酸球(acidphol)、好中球、白血球、単球、MCV、MCH、及びMCHC(0週目、2週目、及び4週目に測定した)、及び
(v)その他 − インスリン、アディポネクチン、IGF−1、及びサリチル酸(0週目、2週目、及び4週目に測定した)。
【0076】
被験者のプロファイルを表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
結果を図8〜図15に示す。最初に、図8及び表2に示すように、2週間のヤナギ抽出物補充によりPBMCにおいてSOD1遺伝子発現を誘導した。図9〜図11に示すように、PBMCにおけるNrf2の遺伝子発現は、摂取後1週間で有意に減少したが、下流遺伝子GCLM又はカタラーゼのいずれも補充期間中に有意に変化しなかった(カタラーゼ遺伝子発現は摂取期間の第1週にわずかに増加したが、摂取期間の第2週にベースラインに戻り、残りの期間は減少した)。図12に示すように、ヤナギ抽出物の補充により、血清8−OHdGレベルが2週間で有意に低下し、処置を終えた後もこの効果は持続した。しかしながら、図13及び図14に示すように、血清中のGSH及びSODの推移レベルは、試験期間にわたって変化しなかった。
【0079】
対照的に、図15に示すように、FOXO1のmRNAはヤナギ抽出物の2週間の補充の後、PBMCにおいて有意に増加した。FOXO1は、SOD1を含む解毒及び抗酸化遺伝子の発現を調節することが知られる転写因子である。
実施例6 − 疎水性ヤナギ抽出物はin vivoでGCS−1発現を増加させる
本実施例では、ヤナギ抽出物の或る特定の画分が、生シノラブディティス・エレガンスにおいてSKN−1/第II相解毒経路を誘導するか否かを調べるために行った実験を説明する。ヤナギ抽出物の分画生成物を上記に記載されるように調製し、表3に示すようにプールして、画分A〜画分E(Fr.A〜Fr.E)を形成した。
【0080】
【表3】

【0081】
上記のように、これらの実験は緑色蛍光タンパク質(GFP)と融合させたgcs−1トランス遺伝子(GCS−1::GFP)を用いて、シノラブディティス・エレガンスにおいて行った。gcs−1はグルタチオン合成を律速する酵素をコードし、第II相解毒の主調節因子SKN−1に関する特によく特徴付けられた診断標的遺伝子である(An and Blackwell, Genes Dev. (17):1882-93 (2003)、An et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. (102):16275-80 (2005)、Inoue et al., Genes Dev. (19):2278-83 (2005)、Tullet et al., Cell. 132:1025-38 (2008))。酸化的ストレス条件下では、SKN−1依存的gcs−1発現が腸細胞において誘導される。
【0082】
GCS−1::GFP幼虫を各種画分を用いて処理し、この動物の腸におけるGFP発現レベルを観察した。個々の実験においては、およそ20匹のL4期幼虫を、0P50細菌を含有する新鮮プレートに取った。2日〜3日後、動物を材料で処理した。幼虫を含有するプレートをM9(塩類培地)で満たし、それをピペットを用いて管に移すことにより、幼虫を微小遠心管に移した。高速回転の後、M9を除去して、動物を再度M9で洗浄した。この洗浄により残留する細菌が全て除去される。幼虫を洗浄した後、所与の調製物と共に30分又は60分のいずれかの間インキュベートした。インキュベーションの後、幼虫をさらに2回M9中で洗浄し、細菌を含有する新鮮NGMプレートに移し、約30分間回復させた。次に、幼虫をスライドに載せ、顕微鏡下でGFP発現に関してスコア付けした。(An and Blackwell, Genes Dev. (17):1882-93 (2003)、Tullet et al., Cell. 132:1025-38 (2008))に記載されるように、腸におけるGFP発現のレベルに基づいて、3つのスコア(高度、中度、又は低度の発現)のうち1つを与えた。高度というスコアは、腸全体にわたってGFP発現を有する動物に与えた。腸の途中でのGFP発現は、中度というスコアの一例である。低度というスコアは、腸においてGFPをほとんど又は全く発現しない幼虫に与えた。
【0083】
最初に、ヤナギ抽出物画分による処理後のgcs−1トランス遺伝子レポータの誘導を調べた(図17)。画分Aによる処理は、30分間の処理の後、腸におけるGFP発現において、対照と比較して最高の増加をもたらした(図17)。画分Aからの材料を、高濃度で酸化的ストレス反応を誘発し得るDMSOに溶解しているために低い濃度(5μg/mL)で投与した。画分A試料中で低い最終濃度のDMSO(0.006%DMSO)は、gcs−1幼虫においてストレス反応を誘発しなかった(対照、図17)。M9培地において10mg/mlで投与した画分B〜画分Eも、腸におけるGCS−1::GFP発現を誘導したが、連続する画分は各々、先の画分よりわずかに低い誘導レベルをもたらした(図17)。興味深いことに、画分Bは5μg/mLで投与した場合に比較的強い反応を誘発し(図示せず)、その効力が画分Aの効力に相当することが示唆される。
【0084】
要するに、全てのヤナギ画分がgcs−1誘導活性を特徴とするが、画分A及び画分Bが最も強力であり、他の画分が示す活性は次第に低下する。
実施例7 − 緑茶抽出物及びヤナギ抽出物の保護効果
本実施例では、先に分析した緑茶抽出物材料及びヤナギ抽出物材料での処理が、酸化的ストレス条件及び標準条件下でのシノラブディティス・エレガンスの生存を高めるか否かを調べるために行った実験を説明する。
【0085】
以下の材料を、動物を酸化的ストレスに対する曝露から保護するか否かについて試験した:
ヤナギ抽出物
緑茶抽出物
ヤナギ抽出物の分画生成物(Fr.A)
各実験において、幼虫は、脂溶性の過酸化ラジカル源であるtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液(t−BOOH)で処理することにより酸化的ストレスに曝露した(図18)。L4期幼虫を、試験を受ける材料又は対照を含有するプレートに取った。これらのプレートに、遠沈し、それぞれの材料5mlに再懸濁した細菌培養物を播種した。20℃で24時間又は48時間のインキュベーションの後、幼虫を少量の細菌と共に、15.4mM t−BOOHを含有するプレートに移した。次に、幼虫の運動及び咽頭のポンピングを、全ての幼虫が死滅するまで毎時間確認した。各分析は、プレート1枚当たりおよそ20匹の幼虫を用いて3連で行った。以下の対照を使用した:ヤナギ:LBに再懸濁したOP50細菌餌、緑茶:0.1%DMSOを含有するLBに再懸濁したOP50、ヤナギ画分A:0.006%DMSOを含有するLBに再懸濁したOP50。
【0086】
48時間後、3つ全ての材料が、適当な対照と比較して増加した生存により示されるように、酸化的ストレスに対する保護をもたらした。ヤナギ抽出物は10mg/mLの濃度でLBに可溶性であった。この群に対する陰性対照(OP50細菌単独)は、t−BOOHに対する保護を全くもたらさず、全ての幼虫は9時間以内に死滅した。対照的に、ヤナギ抽出物で処理した一部の幼虫は、12時間生存した(図18)。緑茶抽出物も、2ug/mLというその最終濃度にもかかわらず(DMSO(0.01%)にしか溶けなかったため)、保護をもたらした。最後に、ヤナギ抽出物画分Aによる処理も有意な保護をもたらした。
【0087】
対照的に、これらの同じ抽出物材料に24時間だけ曝露した場合は、t−BOOHストレスに対する保護は全く得られなかった。
【0088】
要するに、試験を受ける各調製物による処理は、続く酸化的ストレスチャレンジ(t−BOOHによる処理)からシノラブディティス・エレガンスを保護した。条件は寿命に対する効果の分析に合わせて確立した。
実施例8 − ニンジン抽出物及びブロッコリー抽出物の効果
上記実施例6に記載されるような実験を、ヤナギ抽出物又は茶抽出物の代わりに以下の材料を用いて行った:
ニンジン粉末
発酵ニンジン粉末
ブロッコリー粉末
発酵ブロッコリー粉末
幼虫をそれぞれの調製物10mg/mLで30分間処理した。ニンジン粉末による処理は、30分間の処理の後、腸におけるGFPレポータの発現において、他の材料と比較して最高の増加をもたらした(図19)。これらは各々、M9塩類培地に10mg/mLの濃度で可溶性であった。陰性M9対照は再び、腸においてGFPに対する効果を示さず、全ての幼虫が低度としてスコア付けされた。
【0089】
結論として、試験した全ての材料は、M9対照と比較して中度のgcs−1発現を誘導した。
実施例9 − Nrf2により調節される遺伝子(HO−1及びNQO1)の発現に対するヤナギ抽出物の効果
Nrf2により調節される遺伝子の発現に対するヤナギ抽出物の効果を調べるために、HUVECを三光純薬株式会社(日本)から購入し、I型コラーゲン被覆プレートにおいて、10%FBS、10ng/mLのFGF、及び100U/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシンを添加したMCDB131中、37℃及び5%COで培養した。4代目のHUVECを、12ウェルI型コラーゲン被覆プレートに播種した。細胞がコンフルエントに達した後、2%FBSを含有し、FGFを含有しない培地において、細胞を続く24時間飢餓状態にした。飢餓期間の後、培地を、所望の最終濃度(図20A及び図20Bを参照されたい)で溶解したヤナギ抽出物(Ask Intercity Co., Ltd.)を含有する新鮮培地と交換した。ヤナギ抽出物導入の6時間後、総RNAをTotal RNA Mini Kit(BIO-RAD,USA)を用いて細胞から抽出した。一本鎖cDNAを、PrimeScript RT試薬Kit(タカラバイオ株式会社、日本)を用いて0.5μgの総RNAから合成した。ヘムオキシゲナーゼ1(HO−1)及びNADPHデヒドロゲナーゼ(キノン)1(NQO1)のmRNAの定量分析を、ABI 7500 Fast Real−Time PCR System(アプライドバイオシステムズ、日本)を用いて、リアルタイムPCRにより行った。定量的リアルタイムPCR分析には、Premix Ex Taq(タカラバイオ株式会社、日本)及びAssay−on−Demand、Gene Expression Productsを使用した。全ての定量的データは、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の発現レベルにより正規化した。
【0090】
図20A及び図20Bに示す結果は、ヤナギ抽出物が、Nrf−2により調節される遺伝子であるHO−1及びNQO1の発現を用量依存的に増加させることを示す。
実施例10 − 単離PBMCにおけるNrf2発現に対するヤナギ抽出物の効果
健常ボランティアからの血液をヘパリン管に回収し、等量のPBS(−)を添加することにより希釈した。末梢血単核細胞(PBMC)を、希釈した血液からFicoll−Conray密度勾配法を用いて単離した。1.0×10個のPBMCを、10%FBS、100U/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシンを添加したRPMI1640中で、Ask Intercity Co., Ltd.から入手したヤナギ抽出物の存在又は非存在下、37℃及び5%COで培養した。インキュベーションの4時間後に、総RNAをTotal RNA Mini Kit(BIO-RAD,USA)を用いて細胞から抽出した。一本鎖cDNAを、PrimeScript RT試薬Kit(タカラバイオ株式会社、日本)を用いて総RNAから合成した。グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)及びNF−E2関連因子2(NRF2)のmRNAの定量分析を、ABI 7500 Fast Real−Time PCR System(アプライドバイオシステムズ、日本)を用いてリアルタイムPCRにより行った。定量的リアルタイムPCR分析には、Premix Ex Taq(タカラバイオ株式会社、日本)及びAssay−on−Demand、Gene Expression Productsを使用した。全ての定量的データは、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の発現レベルにより正規化した。
【0091】
図21に示す結果は、ヤナギ抽出物が、ヒトPBMCにおいてNrf−2の発現を用量依存的に増加させることを示す。
実施例11 − 細胞質から核へのNrf2転移の評価:皮膚線維芽細胞におけるNrf2活性化効果
本実施例に使用した皮膚線維芽細胞は、50歳の白人女性から得た腹部線維芽細胞(以下HDF50と略する)(Cell Applications, Inc.)であった。使用した培養培地は、50mLの標準ウシ胎仔血清(SIGMA)及び5.0mLのAntibiotic Antimycotic Solution(100×)(SIGMA)を、500mLのMEM−イーグル培地(SIGMA)に添加し、混合することにより調製したMEM(+)培地であった。
【0092】
HDF50を、37℃、5%COインキュベータにおいてMEM(+)培地中で培養した。HDF50がコンフルエントな状態に達した後、細胞を単離して、血球計算盤(ビルケルチュルク血球計算盤)を用いて細胞数を計数した。得られた細胞をMEM(+)培地で希釈して、1.9×10細胞/15mLとした。評価を受ける材料を希釈培地に添加した後、混合物を37℃、5%COインキュベータにおいてさらに24時間インキュベートした。その後、細胞を再度単離して、Nuclear/Cytosol Fractionation Kitを用いて細胞核抽出物を得た。細胞核抽出物中のタンパク質を、Protein Assay Rapid Kitを用いて定量し、タンパク質濃度を調節して、タンパク質量を全ての試料で等しくした。このようにして調製した試料を、5%2−メルカプトエタノールを含有する等量のLaemmliサンプルバッファーと混合し、煮沸した。煮沸した混合物から得た上清をゲル電気泳動にかけた。電気泳動が完了した直後に、ゲルをキットに付属するニトロセルロース膜にiBlotゲルトランスファー装置を用いて移し、AmershamのECL Plus Western Blotting Detection Systemを用いて、100Kda付近でNrf2のバンドを検出した。さらに、Re−Blot Western Blot Recycling Kitを用いて抗体を除去した後、対照としてラミンA/Cを同様の方法で検出した。Nrf2バンドに関しては、ゲル画像を走査して、Nrf2バンドの濃さをScion Image Software(米国立衛生研究所のWindows(登録商標)バージョン)を用いて定量化し、相対Nrf2タンパク質レベルを対照として算出した。
【0093】
図22に示す結果は、ヤナギ抽出物が、ヒト線維芽細胞においてNrf−2タンパク質のレベルを用量依存的に増加させることを示す。
実施例12 − 酸化的ストレスを予防する能力の評価
希釈した材料を有する培地中で24時間培養した後、HDF50を5mM Hを含有するダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(SIGMA)(以下D−PBSと略する)中で30分間インキュベートした。その後、培地をMEM(+)培地で置き換え、37℃で、5%COインキュベータにおいてさらに3時間培養を継続した。
【0094】
培養が完了した後、生細胞数(A)を血球計算盤(ビルケルチュルク血球計算盤)を用いて求め、細胞生存率を、以下の式に従ってH不添加条件の生細胞数(B)と比較して算出した:
細胞生存率(%)=[(A)/(B)]×100
図23に示す結果は、ヤナギ抽出物が酸化的ストレスの予防に対して陽性効果を有することを示す。
実施例13 − ヒト皮膚における抗酸化(経口摂取)
ヒト皮膚における抗酸化に対するヤナギ抽出物の促進作用を評価するために、ヤナギ抽出物(Ask Intercity Co., Ltd.)を、年齢32歳〜43歳の7人の健常男性に1日当たり800mgの用量で経口投与した。摂取期間は4週間であり、ウォッシュアウト期間は8週間であった。抗酸化活性を皮脂中の過酸化脂質の量により測定した。皮脂は、摂取開始の直前、摂取期間の完了後、ウォッシュアウト期間中(第4週)、及びウォッシュアウト期間の完了後の計4回採取した。
【0095】
皮脂は、アセトン/エーテル(1:1)溶液を、採取部位に密接して置かれた内径4cmのシリンダーに注入することにより採取した。各被験者の背部の3つの部位から採取した皮脂試料を合わせ、過酸化脂質をTBARS Assay Kit(OXITEK)を用いて定量した。過酸化脂質の定量における蛍光測定は、RF540分光蛍光光度計(株式会社島津製作所、日本)を用いて行い、過酸化脂質の量はMDA値(TBARSの含量(nmol/mL/g))として得た。
【0096】
図24に示す結果は、ヤナギ抽出物が4週間の経口投与後に、有意に且つ可逆的に抗酸化活性を増加させることを示す。
【0097】
ヒト皮膚における抗酸化に対する経口投与したヤナギ抽出物の促進作用をさらに評価するために、年齢24歳〜47歳の16人の健常男性を試験群(11人の男性)及びプラシーボ群(5人の男性)に分けた。試験群には、1日当たり6カプセル(1日当たり合計800mgのヤナギ抽出物(Ask Intercity Co., Ltd.)及び結晶セルロース)を経口投与した。プラシーボ群には、1日当たり6カプセル(結晶セルロースのみを含有する)を経口投与した。摂取期間は6週間であった。UV照射を、摂取開始の2週間前及び摂取開始の4週間後の2回行った。UVは、太陽光シミュレータを用いて各被験者の背部に30mJ/cmで照射した。UV照射部位の写真を各UV照射の2週間後に撮影した。UV照射及び撮影は、プラシーボ群においても試験群と同時に行った。写真画像データの自動色度補正をPhotoshop Element(Adobe)のカラーチャートを用いて行った後、Java(登録商標) Version 1.39(米国立衛生研究所)の画像処理及び分析を用いて色素量(平均濃淡値)を得た。
【0098】
図25に示す結果は、UV照射により産生される色素の量の有意な低下によって実証されるように、ヤナギ抽出物が経口投与後に抗酸化活性を増加させることを示す。
実施例14 − ヒト皮膚における抗酸化(局所適用)
本実施例では、ヒト皮膚における抗酸化に対する局所投与したヤナギ抽出物の促進作用の評価を説明する。外用期間は1週間であった。水性アルコールゲル(0.45%カルボマー及び4.75%エチルアルコールを含有する)中に、試験されるヤナギ抽出物(Ask Intercity Co., Ltd.)を1%含有する試験試料を使用した。プラシーボ試料には、0.45%カルボマー及び4.75%エチルアルコールを含有するものを使用した。水性アルコールゲルは、0.2g/5cmの用量で前腕に1日2回適用した。適用期間の完了後、適用部位を水で洗浄し、乾燥させた。次に、部位に30mJ/cm〜40mJ/cmのUV(パネルのUV感受性に応じて調節した)を、太陽光シミュレータを用いて照射した。UV照射後6日目に、照射部位の写真を撮影した。写真画像データの自動色度補正をPhotoshop Element(Adobe)のカラーチャートを用いて行った後、Java(登録商標) Version 1.39(米国立衛生研究所)の画像処理及び分析を用いて色素量(平均濃淡値)を得た。
【0099】
図26に示す結果は、UV照射により産生される色素の量の低下によって実証されるように、ヤナギ抽出物が局所適用後に抗酸化活性を増加させることを示す。
他の実施形態
本発明を発明の詳細な説明と関連して記載したが、前述の記載は説明を意図しており、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、及び変更形態も以下の特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セイヨウシロヤナギ抽出物又はその活性画分を含む組成物であって、細胞における第II相解毒酵素(P2D)遺伝子及び抗酸化酵素遺伝子の1つ又は両方の発現を増加させる、組成物。
【請求項2】
グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)及びグルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC)から成る群から選択されるP2D遺伝子、又はスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)を含む抗酸化酵素遺伝子の発現を増加させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
FOXO1の発現の増加、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)のレベルの低減、又はその両方ももたらす、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
経口投与のために処方される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1つ又は複数の経口で許容される担体及び添加物をさらに含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
局所投与のために処方される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
1つ又は複数の局所で許容される担体及び添加物をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ヤナギ抽出物の第II相解毒酵素(P2D)又は抗酸化酵素の増強活性を増加させる方法であって、
第1のレベルのP2D又は抗酸化酵素の増強活性を有するヤナギ抽出物を準備すること、
2つ以上の画分を得るように、前記抽出物を分画すること、
Rf値が0.5以上の画分を選択すること、
前記画分のP2D又は抗酸化酵素の増強活性をアッセイすること、及び
前記画分がP2D又は抗酸化酵素の増強活性の前記第1のレベルより高いレベルのP2D又は抗酸化酵素の増強活性を有する場合に該画分を選択すること、
を含む、方法。
【請求項9】
前記抽出物を分画することが、カラムクロマトグラフィ、液液分画及び固液分画から成る群から選択される1つ又は複数の方法を使用することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
細胞において第II相解毒酵素(P2D)又は抗酸化酵素遺伝子の発現を増加させる化合物を同定する方法であって、
(a)(i)P2D若しくは抗酸化酵素の遺伝子又は(ii)P2D若しくは抗酸化酵素遺伝子プロモータを含むレポータ構築物を発現する細胞を準備すること、
(b)植物抽出物の画分を準備すること、
(c)前記細胞を前記画分に接触させること、及び
(d)前記P2D若しくは前記抗酸化酵素の遺伝子又は前記レポータ構築物の発現に対する前記画分の効果を検出すること、
を含み、前記P2D若しくは前記抗酸化酵素の遺伝子又は前記レポータ構築物の発現を増加させる画分が、細胞において第II相解毒酵素(P2D)又は抗酸化酵素の遺伝子の発現を増加させる化合物を含む、方法。
【請求項11】
(e)前記P2D若しくは前記抗酸化酵素の遺伝子又は前記レポータ構築物の発現を増加させる画分を選択すると共に、2つ以上のサブ画分を生じるように該画分をさらに分割すること、
(f)P2D若しくは抗酸化酵素の遺伝子、又はP2D遺伝子プロモータを含むレポータ構築物を発現する細胞を準備すること、
(g)前記細胞を前記サブ画分に接触させること、及び
(h)前記P2D若しくは前記抗酸化酵素の遺伝子又は前記レポータ構築物の発現に対する前記サブ画分の効果を検出すること、
をさらに含み、前記P2D若しくは前記抗酸化酵素の遺伝子又は前記レポータ構築物の発現を増加させるサブ画分が、細胞において第II相解毒酵素(P2D)又は抗酸化酵素の遺伝子の発現を増加させる化合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
精製化合物が得られるまで工程(e)〜工程(h)を繰り返すことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
経口投与のために前記精製化合物を処方することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
局所投与のために前記精製化合物を処方することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が、培養細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、線維芽細胞、又はシノラブディティス・エレガンスにおける細胞である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記植物抽出物がヤナギ抽出物である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
シノラブディティス・エレガンスにおける前記細胞がASI細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記P2D遺伝子がグルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)、グルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC)から成る群から選択され、前記抗酸化酵素遺伝子がスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)である、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(e)前記P2D若しくは前記抗酸化酵素の遺伝子又は前記レポータ構築物の発現を増加させる画分を選択すると共に、2つ以上のサブ画分を生じるように該画分をさらに分割すること、
(f)FOXO1遺伝子、又はFOXO1遺伝子プロモータを含むレポータ構築物を発現する細胞を準備すること、
(g)前記細胞を前記サブ画分に接触させること、
(h)前記FOXO1遺伝子又は前記レポータ構築物の発現に対する前記サブ画分の効果を検出すること、及び
前記FOXO1遺伝子又は前記レポータ構築物の発現を増加させるサブ画分を選択すること、
をさらに含む、請求項8又は10に記載の方法。
【請求項20】
(e)前記P2D若しくは前記抗酸化酵素の遺伝子又は前記レポータ構築物の発現を増加させる画分を選択すると共に、2つ以上のサブ画分を生じるように該画分をさらに分割すること、
(f)前記細胞を前記サブ画分に接触させること、
(g)前記細胞における8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)のレベルに対する前記サブ画分の効果を検出すること、及び
前記細胞において8−OHdGのレベルを低減させるサブ画分を選択すること、
をさらに含む、請求項8又は10に記載の方法。
【請求項21】
細胞においてフォークヘッドボックスO1(FOXO1)遺伝子の発現を増加させる化合物を同定する方法であって、
(a)(i)FOXO1遺伝子又は(ii)FOXO1遺伝子プロモータを含むレポータ構築物を発現する細胞を準備すること、
(b)茶抽出物の画分とヤナギ抽出物の画分とを1つ又は複数準備すること、
(c)前記細胞を前記画分に接触させること、及び
(d)前記FOXO1遺伝子又は前記レポータ構築物の発現に対する前記画分の効果を検出すること、
を含み、前記FOXO1遺伝子又は前記レポータ構築物の発現を増加させる画分が、細胞においてFOXO1の発現を増加させる化合物を含む、方法。
【請求項22】
(e)前記FOXO1遺伝子又は前記レポータ構築物の発現を増加させる画分を選択すると共に、2つ以上のサブ画分を生じるように該画分をさらに分割すること、
(f)FOXO1遺伝子、又はFOXO1遺伝子プロモータを含むレポータ構築物を発現する細胞を準備すること、
(g)前記細胞を前記サブ画分に接触させること、及び
(h)前記FOXO1遺伝子又は前記レポータ構築物の発現に対する前記サブ画分の効果を検出すること、
をさらに含み、前記FOXO1遺伝子又は前記レポータ構築物の発現を増加させるサブ画分が、細胞においてFOXO1の発現を増加させる化合物を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
精製化合物が得られるまで工程(e)〜工程(h)を繰り返すことをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
経口投与のために前記精製化合物を処方することをさらに含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記細胞が、培養細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、線維芽細胞、又はシノラブディティス・エレガンスにおける細胞である、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
シノラブディティス・エレガンスにおける前記細胞がASI細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
細胞において第II相解毒酵素(P2D)又は抗酸化酵素の遺伝子の増強活性を増加する方法であって、該細胞に有効量の植物抽出物又はその活性画分を投与することを含む、方法。
【請求項28】
細胞において第II相解毒酵素(P2D)又は抗酸化酵素の遺伝子の増強活性を増加する方法であって、該細胞に植物抽出物又はその活性画分を含む有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項29】
前記植物抽出物がヤナギ抽出物である、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記抽出物が前記細胞への酸化的損傷を軽減する、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞が生きている哺乳動物におけるものであり、且つ前記抽出物が該哺乳動物の組織において酸化的損傷を低減する、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞が皮膚細胞であり、且つ前記抽出物が前記哺乳動物の皮膚への酸化的損傷を軽減する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞が皮膚細胞であり、且つ前記抽出物が、紫外線照射への曝露によって起こる前記哺乳動物の皮膚の色素沈着を低減する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
紫外線照射への曝露前に前記植物抽出物を前記哺乳動物の皮膚に適用する、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2010−539102(P2010−539102A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524262(P2010−524262)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/076064
【国際公開番号】WO2009/036204
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510063775)ジョスリン ダイアベティス センター インコーポレイテッド (1)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】