説明

自動車およびその制御方法

【課題】浄化触媒の暖機要求に応じた触媒暖機制御と車室の暖房要求に応じた内燃機関の自立運転とをより適正に且つ効率よく行なう。
【解決手段】触媒暖機が要求されたときに暖房要求があるときには、触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になるまでは第1点火時期tf1によるエンジンの均質燃焼によって比較的緩やかに触媒暖機を行ない(S130)、触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になってからは冷却水温Twが暖房必要温度Twref以上になるまでエンジンの自立運転を行なう(S210)。また、触媒暖機が要求されたときに暖房要求がないときには、触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になるまで第1点火時期tf1よりも遅い第2点火時期tf2によるエンジンの成層燃焼によって比較的速やかに触媒暖機を行なう(S140)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車およびその制御方法に関し、詳しくは、筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有し走行用の動力を出力可能な内燃機関を備える自動車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車が備える内燃機関としては、筒内に燃料を噴射する筒内噴射用インジェクタを有し、排気系に三元触媒コンバータが取り付けられた内燃機関であって、触媒暖機時には成層燃焼を行ない、触媒暖機時以外のときには均質燃焼を行なうよう制御されるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この内燃機関では、均質燃焼に比して、良好な燃焼状態を維持可能な範囲で点火時期の遅角量を大きくすることができる成層燃焼を行なうことによって、触媒の暖機を促進している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−291877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した内燃機関の制御が行なわれる自動車では、触媒暖機の要求に加え、乗員のスイッチ操作などにより、内燃機関の冷却水からの熱を用いて車室を暖房する暖房装置をオンする要求があるときには、排気系の触媒が必要以上に暖められることになり、いわゆる排気損失が大きくなる場合があった。冷間時のイグニッションオン直後などに、触媒暖機の要求に加えて車室の暖房も要求されているときには、まず、内燃機関の成層燃焼により比較的急速に触媒暖機が行なわれることになるため、触媒暖機が完了したときに内燃機関の冷却水は車室の暖房に必要な程度にまで暖まっておらず、その後、内燃機関の自立運転を行なうなどにより冷却水を暖める必要が生じる。したがって、触媒暖機が早期に完了しても、内燃機関の運転はしばらく継続され、排気系の触媒は暖機完了時から更に温度上昇することになり、結果的に、内燃機関における燃焼エネルギの一部が触媒の温度上昇に無駄に用いられることになってしまう。
【0005】
本発明の自動車およびその制御方法は、浄化触媒の暖機要求に応じた触媒暖機制御と車室の暖房要求に応じた内燃機関の自立運転とをより適正に且つ効率よく行なうことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動車およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の自動車は、
筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有し走行用の動力を出力可能な内燃機関を備える自動車であって、
前記内燃機関の排気系に取り付けられて排気を浄化する浄化触媒を有する浄化装置と、
前記内燃機関を冷却するための冷却液からの熱を用いて車室を暖房する暖房装置と、
前記浄化触媒の暖機が要求されたときに前記車室の暖房が要求されているときには、前記浄化触媒の温度が該浄化触媒の暖機を完了する温度として予め設定された所定触媒温度以上になるまでは前記内燃機関の圧縮上死点よりも遅い第1の点火タイミングによる前記内燃機関の爆発燃焼によって前記浄化触媒が暖機されるよう前記内燃機関を制御する第1の触媒暖機制御を実行すると共に、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になってからは前記内燃機関の冷却液の温度が前記車室の暖房に必要な温度として予め設定された所定冷却液温度以上になるまで前記第1の点火タイミングに比して早い又は等しい所定の点火タイミングによる前記内燃機関の自立運転が行なわれるよう前記内燃機関を制御する自立運転制御を実行し、前記浄化触媒の暖機が要求されたときに前記車室の暖房が要求されていないときには、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になるまで前記第1の点火タイミングよりも遅い第2の点火タイミングによる前記内燃機関の爆発燃焼によって前記第1の触媒暖機制御よりも速やかに前記浄化触媒が暖機されるよう前記内燃機関を制御する第2の触媒暖機制御を実行する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の自動車では、浄化触媒の暖機が要求されたときに車室の暖房が要求されているときには、浄化触媒の温度が浄化触媒の暖機を完了する温度として予め設定された所定触媒温度以上になるまでは内燃機関の圧縮上死点よりも遅い第1の点火タイミングによる内燃機関の爆発燃焼によって浄化触媒が暖機されるよう内燃機関を制御する第1の触媒暖機制御を実行すると共に、浄化触媒の温度が所定触媒温度以上になってからは内燃機関の冷却液の温度が車室の暖房に必要な温度として予め設定された所定冷却液温度以上になるまで第1の点火タイミングに比して早い又は等しい所定の点火タイミングによる内燃機関の自立運転が行なわれるよう内燃機関を制御する自立運転制御を実行する。したがって、第1の触媒暖機制御よりも速やかに浄化触媒の暖機を行なう第2の触媒暖機制御を実行するものに比して、内燃機関の冷却液の温度がより高い状態で浄化触媒の温度が所定触媒温度以上になって触媒暖機を完了するから、触媒暖機の完了から内燃機関の冷却液の温度が所定冷却液温度以上になるまで行なわれる内燃機関の自立運転の時間を短くすることができ、車室の暖房に必要な内燃機関の自立運転を行なうことにより浄化触媒の温度が所定触媒温度を超えて高くなる程度を抑えることができる。また、浄化触媒の暖機が要求されたときに車室の暖房が要求されていないときには、浄化触媒の温度が所定触媒温度以上になるまで第1の点火タイミングよりも遅い第2の点火タイミングによる内燃機関の爆発燃焼によって第1の触媒暖機制御よりも速やかに浄化触媒が暖機されるよう内燃機関を制御する第2の触媒暖機制御を実行する。したがって、第1の触媒暖機制御を実行するものに比して、内燃機関の冷却液の温度がより低い状態で浄化触媒の温度が所定触媒温度以上になって触媒暖機を完了するから、触媒暖機を開始してから完了するまでに内燃機関の冷却液の温度が高くなる程度を抑えることができる。これらの結果、浄化触媒の暖機要求に応じた触媒暖機制御と車室の暖房要求に応じた内燃機関の自立運転とをより適正に且つ効率よく行なうことができる。ここで、「所定の点火タイミング」としては、内燃機関の自立運転を効率よく行なう予め定められた点火タイミングなどを用いることができる。
【0009】
こうした本発明の自動車において、前記制御手段は、前記第1の触媒暖機制御として前記第1の点火タイミングによる前記内燃機関の均質燃焼によって前記浄化触媒が暖機されるよう前記内燃機関を制御し、前記第2の触媒暖機制御として前記第2の点火タイミングによる前記内燃機関の成層燃焼によって前記浄化触媒が暖機されるよう前記内燃機関を制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、浄化触媒の暖機をより確実に行なうことができる。
【0010】
また、本発明の自動車において、前記制御手段は、前記第1の触媒暖機制御を実行して前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になった以降に前記内燃機関の冷却液の温度が前記所定冷却液温度以上になったときに前記内燃機関の停止を許可し、前記第2の触媒暖機制御を実行して前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になったときに前記内燃機関の停止を許可する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の燃料消費を抑制することができる。この場合、燃費の優先を指示する燃費優先指示スイッチを備え、前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されている状態で前記浄化触媒の暖機が要求されたときには、前記車室の暖房が要求されているか否かにかかわらず、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になるまで前記第2の触媒暖機制御を実行すると共に前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になったときに前記内燃機関の停止を許可する手段である、ものとすることができる。こうすれば、車室の暖房要求に応じた内燃機関の自立運転が行なわれないから、スイッチ操作に応じて内燃機関の燃料消費を抑制することができる。
【0011】
さらに、本発明の自動車において、前記制御手段は、前記浄化触媒の暖機が要求されたときに前記車室の暖房が要求されていないときでも前記車室内の気温または外気温が前記車室の暖房が要求されると想定される予め設定された所定気温以下のときには、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になるまでは前記第1の触媒暖機制御を実行すると共に、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になってからは前記内燃機関の冷却液の温度が前記所定冷却液温度以上になるまで前記自立運転制御を実行する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、触媒暖機の最中に車室の暖房が要求された場合などにおける触媒暖機制御と内燃機関の自立運転とを効率よく行なうことができる。
【0012】
あるいは、本発明の自動車において、前記内燃機関は、吸気ポートに燃料を噴射するポート用燃料噴射弁を有する、ものとすることもできる。
【0013】
また、本発明の自動車において、走行用の動力を入出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える、ものとすることもできる。この場合、 前記蓄電手段と電力のやりとりが可能で動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、を備え、前記電動機は、前記駆動軸に接続されてなる、ものとすることもできる。
【0014】
本発明の自動車の制御方法は、
筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有し走行用の動力を出力可能な内燃機関と、前記内燃機関の排気系に取り付けられて排気を浄化する浄化触媒を有する浄化装置と、前記内燃機関を冷却するための冷却液からの熱を用いて車室を暖房する暖房装置と、を備える自動車の制御方法であって、
前記浄化触媒の暖機が要求されたときに前記車室の暖房が要求されているときには、前記浄化触媒の温度が該浄化触媒の暖機を完了する温度として予め設定された所定触媒温度以上になるまでは前記内燃機関の圧縮上死点よりも遅い第1の点火タイミングによる前記内燃機関の爆発燃焼によって前記浄化触媒が暖機されるよう前記内燃機関を制御する第1の触媒暖機制御を実行すると共に、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になってからは前記内燃機関の冷却液の温度が前記車室の暖房に必要な温度として予め設定された所定冷却液温度以上になるまで前記第1の点火タイミングに比して早い又は等しい所定の点火タイミングによる前記内燃機関の自立運転が行なわれるよう前記内燃機関を制御する自立運転制御を実行し、前記浄化触媒の暖機が要求されたときに前記車室の暖房が要求されていないときには、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になるまで前記第1の点火タイミングよりも遅い第2の点火タイミングによる前記内燃機関の爆発燃焼によって前記第1の触媒暖機制御よりも速やかに前記浄化触媒が暖機されるよう前記内燃機関を制御する第2の触媒暖機制御を実行する、
ことを特徴とする。
【0015】
この本発明の自動車の制御方法では、浄化触媒の暖機が要求されたときに車室の暖房が要求されているときには、浄化触媒の温度が浄化触媒の暖機を完了する温度として予め設定された所定触媒温度以上になるまでは内燃機関の圧縮上死点よりも遅い第1の点火タイミングによる内燃機関の爆発燃焼によって浄化触媒が暖機されるよう内燃機関を制御する第1の触媒暖機制御を実行すると共に、浄化触媒の温度が所定触媒温度以上になってからは内燃機関の冷却液の温度が車室の暖房に必要な温度として予め設定された所定冷却液温度以上になるまで第1の点火タイミングに比して早い又は等しい所定の点火タイミングによる内燃機関の自立運転が行なわれるよう内燃機関を制御する自立運転制御を実行する。したがって、第1の触媒暖機制御よりも速やかに浄化触媒の暖機を行なう第2の触媒暖機制御を実行するものに比して、内燃機関の冷却液の温度がより高い状態で浄化触媒の温度が所定触媒温度以上になって触媒暖機を完了するから、触媒暖機の完了から内燃機関の冷却液の温度が所定冷却液温度以上になるまで行なわれる内燃機関の自立運転の時間を短くすることができ、車室の暖房に必要な内燃機関の自立運転を行なうことにより浄化触媒の温度が所定触媒温度を超えて高くなる程度を抑えることができる。また、浄化触媒の暖機が要求されたときに車室の暖房が要求されていないときには、浄化触媒の温度が所定触媒温度以上になるまで第1の点火タイミングよりも遅い第2の点火タイミングによる内燃機関の爆発燃焼によって第1の触媒暖機制御よりも速やかに浄化触媒が暖機されるよう内燃機関を制御する第2の触媒暖機制御を実行する。したがって、第1の触媒暖機制御を実行するものに比して、内燃機関の冷却液の温度がより低い状態で浄化触媒の温度が所定触媒温度以上になって触媒暖機を完了するから、触媒暖機を開始してから完了するまでに内燃機関の冷却液の温度が高くなる程度を抑えることができる。これらの結果、浄化触媒の暖機要求に応じた触媒暖機制御と車室の暖房要求に応じた内燃機関の自立運転とをより適正に且つ効率よく行なうことができる。ここで、「所定の点火タイミング」としては、内燃機関の自立運転を効率よく行なう予め定められた点火タイミングなどを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される触媒暖機要求時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】暖房要求があるときのエンジン22の運転状態と触媒床温Tcと冷却水温Twとの時間変化の様子の一例を示す説明図である。
【図5】暖房要求があるときの触媒床温Tcと冷却水温Twとが時間変化する際の両者の関係の一例を説明する説明図である。
【図6】暖房要求がないときのエンジン22の運転状態と触媒床温Tcと冷却水温Twとの時間変化の様子の一例を示す説明図である。
【図7】暖房要求がないときの触媒床温Tcと冷却水温Twとが時間変化する際の両者の関係の一例を説明する説明図である。
【図8】暖房要求の有無と触媒暖機の形態との組み合わせに対応するハイブリッド自動車20における燃費の良否を概念的に説明する説明図である。
【図9】変形例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される触媒暖機要求時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図10】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図11】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【図12】変形例の自動車320の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸32にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸32に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)と、リチウムイオン電池などの二次電池として構成されたバッテリ50と、車室の暖房を行なう暖房装置60と、エンジンECU24やモータECU40と通信して車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。また、エンジン22には、外気との熱交換を行なうラジエータ28aや、ラジエータ28aにより冷却されたロングライフクーラント(LLC)としての冷却水を圧送するウォータポンプ28bにより構成された冷却システム28が設けられており、ウォータポンプ28bにより圧送された冷却水をエンジン22に循環させることによってエンジン22を冷却している。暖房装置60は、冷却システム28の冷却水からの熱を用いて空気を暖めるヒータコア62や、車室内外から空気を吸入してヒータコア62を通じて車室内に向けて空気の送風を行なうブロワ64により構成されており、ヒータコア62により暖められた空気の送風によって車室の暖房を行なっている。なお、モータECU40は、図示しない回転位置検出センサからの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2なども演算している。
【0019】
図2は、エンジン22の構成の概略を示す構成図である。エンジン22は、図示するように、筒内に直接ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料を噴射する筒内用燃料噴射バルブ125と、吸気ポートに燃料を噴射するポート用燃料噴射バルブ126とを備える内燃機関として構成されている。エンジン22は、こうした二種類の燃料噴射バルブを備えることにより、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共にポート用燃料噴射バルブ126から燃料を噴射して吸入された空気と燃料とを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられる頂面にキャビティを有するピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換するポート噴射駆動モードと、同様にして空気を燃焼室に吸入し、吸気行程の途中あるいは圧縮行程に至ってから筒内用燃料噴射バルブ125から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させてクランクシャフト26の回転運動を得る筒内噴射駆動モードと、空気を燃焼室に吸入する際にポート用燃料噴射バルブ126から燃料噴射すると共に吸気行程や圧縮行程で筒内用燃料噴射バルブ125から燃料噴射してクランクシャフト26の回転運動を得る共用噴射駆動モードとのいずれかの駆動モードにより運転制御される。これらの駆動モードは、エンジン22の運転状態やエンジン22に要求される運転状態などに基づいて切り替えられる。なお、エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)134aを有する浄化装置134を介して外気へ排出される。
【0020】
エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Tw,燃焼室内に取り付けられた圧力センサ143からの筒内圧力,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128のインテークカムシャフト129や排気バルブを開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられて吸入空気の質量流量を検出するエアフローメータ148からの吸入空気量,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,浄化装置134の浄化触媒134aの温度を検出する温度センサ134bからの触媒床温Tc,空燃比センサ135aからの空燃比AF,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、筒内用燃料噴射バルブ125への駆動信号や、ポート用燃料噴射バルブ126への駆動信号、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングVTを変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0021】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,車両前部に取り付けられて車外の空気の温度を検出する外気温センサ89からの外気温Tout,暖房装置60のオンオフを指示する暖房スイッチ90からの暖房スイッチ信号HSW,燃費の優先を指示するエコスイッチ92からのエコスイッチ信号ESW,バッテリ50を管理するための種々の信号などが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、暖房装置60のブロワ64への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、暖房スイッチ信号HSWがオンのときには、車室内に取り付けられた図示しない温度センサにより検出された車室内の気温や温度センサ89からの外気温Toutに基づいてブロワ64を駆動する。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、バッテリ50を管理するために図示しない電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と図示しない温度センサにより検出されたバッテリ50の温度とに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutも演算している。
【0022】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が駆動軸32に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力
がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸32に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであるから、以下、両者を合わせてエンジン運転モードとして考えることができる。
【0023】
また、実施例のエンジン22は、イグニッションオンされた直後など、温度センサ134bからの触媒床温Tcが浄化触媒134aが活性化して機能する所定温度Tcset未満のときには、浄化触媒134aを暖機する要求がなされたとものとして触媒暖機運転を開始する。エンジン22の触媒暖機運転は、実施例では、ポート用燃料噴射バルブ126による吸気行程の燃料噴射と筒内用燃料噴射バルブ125による圧縮行程の燃料噴射とにより燃焼室内に均質な混合気を形成し、圧縮上死点よりも遅い第1点火時期tf1(例えば、ATDC5°や6°など)の点火による均質燃焼によって燃焼エネルギの多くを浄化装置134に供給して浄化触媒134aを暖機する第1触媒暖機モードと、ポート用燃料噴射バルブ126による吸気行程の燃料噴射により燃焼室内の混合気の均質化をはかると共に筒内用燃料噴射バルブ125による圧縮行程の燃料噴射により点火プラグ130周辺の混合気を成層化し、第1点火時期tf1よりも更に遅い第2点火時期tf2(例えば、ATDC15°や16°など)の点火による成層燃焼によって燃焼エネルギのより多くを浄化装置134に供給して浄化触媒134aを第1触媒暖機モードに比して急速に暖機する第2触媒暖機モードとのいずれかのモードによって行なわれる。なお、こうした2つのモードによりエンジン22の触媒暖機運転を行なうのは、成層燃焼は均質燃焼に比して失火を生じさせることなく点火時期を遅くできることに基づく。
【0024】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に浄化触媒134aを暖機する際の動作について説明する。図3はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される触媒暖機要求時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、イグニッションオン直後の停車中などに温度センサ134bからの触媒床温Tcが前述の所定温度Tcset未満のときに浄化触媒134aを暖機する要求がなされたとものとして実行される。
【0025】
触媒暖機要求時制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、外気温センサ89からの外気温Toutや暖房スイッチ90からの暖房スイッチ信号HSWなど制御に必要なデータを入力し(ステップS100)、入力した暖房スイッチ信号HSWと外気温Toutとを調べる処理を実行する(ステップS110,S120)。暖房スイッチ信号HSWがオンのときには、車室の暖房が要求されていると判断し、また、暖房スイッチ信号HSWがオフのときでも、外気温Toutが暖房要求がなされると想定される程度に低い気温として予め実験などにより定められた所定気温Toref(例えば、10℃や12℃など)以下のときには、車室の暖房が要求される可能性が高いと判断し、前述の第1触媒暖機モードによるエンジン22の触媒暖機運転の開始を指示する指示信号をエンジンECU24に送信する(ステップS130)。この指示信号を受信したエンジンECU24は、第1触媒暖機モードで圧縮上死点よりも遅い第1点火時期tf1の点火による均質燃焼によって比較的緩やかに浄化触媒134aが暖機されるよう吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を開始する。なお、暖房要求があるときに第1触媒暖機モードで比較的緩やかに触媒暖機を行なう理由については、後述する。
【0026】
続いて、浄化装置134の触媒床温Tcを入力し(ステップS150)、入力した触媒床温Tcと前述の所定温度Tcsetより高い触媒暖機完了温度Tcrefとを比較し(ステップS160)、触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref未満のときには、ステップS150の処理に戻り、触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になるのを待つ。ここで、触媒暖機完了温度Tcrefは、実施例では、浄化触媒134aが活性化して十分に機能する温度としてエンジン22や浄化装置134の特性に基づいて予め実験などにより定められた温度(例えば、400℃や420℃など)を用いるものとした。
【0027】
触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になったときには、エンジン22の触媒暖機運転を完了すると判断し、外気温センサ89からの外気温Toutやエンジン22の冷却水温Tw,暖房スイッチ90からの暖房スイッチ信号HSWなどの各種データを入力し(ステップS170)、暖房スイッチ信号HSWと外気温Toutとを調べる(ステップS180,S190)。暖房スイッチ信号HSWがオンのときには車室の暖房が要求されていると判断し、また、暖房スイッチ信号HSWがオフのときでも外気温Toutが前述の所定気温Toref以下のときには、車室の暖房が要求される可能性が高いと判断し、エンジン22の冷却水温Twと車室の暖房に必要な暖房必要水温Twrefとを比較する(ステップS200)。ここで、エンジン22の冷却水温Twは、水温センサ142により検出されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、暖房必要水温Twrefは、実施例では、車室を十分に暖房するのに必要な水温としてエンジン22や暖房装置60の特性に基づいて予め実験などにより定められた水温(例えば、60℃や65℃など)を用いるものとした。なお、ステップS110,S120の処理において車室の暖房が要求されている又は要求される可能性が高いと判断されたときを考えると、この判断に応じて十数秒や数十秒などに亘って第1触媒暖機モードでエンジン22の触媒暖機運転を行なった後のステップS180,S190の処理においても、基本的には同様の判断(車室の暖房が必要との判断)がなされると考えられる。
【0028】
エンジン22の冷却水温Twが暖房必要温度Twref未満のときには、エンジン22の自立運転を指示する指示信号をエンジンECU24に送信する(ステップS210)。この指示信号を受信したエンジンECU24は、エンジン22の触媒暖機運転が行なわれているときには触媒暖機運転を停止し、エンジン22が所定回転数Neset(例えば、1200rpmや1300rpmなど)で且つ所定点火時期tfsetで自立運転されるよう吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。こうした制御により、エンジン22の冷却水を暖房要求に応じて暖めることができる。所定点火時期tfsetは、実施例では、エンジン22を所定回転数Nesetで効率よく自立運転することができるようエンジン22の特性に基づいて前述の第1点火時期tf1よりも早いタイミングとして予め実験などにより定められた点火時期を用いるものとした。
【0029】
続いて、ステップS170の処理に戻り、各種データを入力すると共に(ステップS170)、暖房スイッチ信号HSWがオンのときや暖房スイッチ信号HSWがオフでも外気温Toutが所定気温Toref以下のときには、エンジン22の冷却水温Twが暖房必要温度Twref以上になるまでエンジン22の自立運転を継続し(ステップS170〜S210)、冷却水温Twが暖房必要温度Twref以上になったときには、エンジン22の運転停止を許可する信号をエンジンECU24に送信して(ステップS220)、触媒暖機要求時制御ルーチンを終了する。この信号を受信したエンジンECU24は、エンジン22の自立運転などの運転が行なわれているときにはその運転を停止する。なお、こうして触媒暖機要求時制御ルーチンを実行している最中や触媒暖機要求時制御ルーチンを終了した後に、アクセル開度Accや車速Vが大きくなり現在選択されているモータ運転モードからエンジン運転モードに切り替えるときには、即ちハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される図示しない駆動制御ルーチンによってエンジン22の負荷運転が要求されたときには、エンジンECU24は、要求に応じてエンジン22の負荷運転が行なわれるようエンジン22における各種制御が行なわれる。
【0030】
ステップS180,S190で暖房スイッチ信号HSWがオフであり外気温Toutが所定気温Torefより高いときには、車室の暖房は必要ないと判断し、エンジン22の運転停止を許可する信号をエンジンECU24に送信して(ステップS220)、触媒暖機要求時制御ルーチンを終了する。
【0031】
ステップS110,S120で暖房スイッチ信号HSWがオフであり外気温Toutが所定気温Torefより高いときには、車室の暖房は必要ないと判断し、前述の第2触媒暖機モードによるエンジン22の触媒暖機運転の開始を指示する指示信号をエンジンECU24に送信する(ステップS140)。この指示信号を受信したエンジンECU24は、第2触媒暖機モードとして第1点火時期tf1よりも遅い第2点火時期tf2の点火による成層燃焼によって比較的速やかに浄化触媒134aが暖機されるよう吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を開始する。暖房要求がないときに第2触媒暖機モードで比較的速やかに触媒暖機を行なう理由については、後述する。
【0032】
続いて、浄化装置134の触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になるのを待ち(ステップS150,S160)、各種データを入力すると共に(ステップS170)、暖房スイッチ信号HSWがオフであり外気温Toutが所定気温Torefより高いときには、車室の暖房は必要ないと判断し、エンジン22の運転停止を許可する信号をエンジンECU24に送信して(ステップS220)、触媒暖機要求時制御ルーチンを終了する。第2触媒暖機モードによってエンジン22の触媒暖機運転が行なわれているときを考えると、この信号を受信したエンジンECU24は、エンジン22の触媒暖機運転を停止する。なお、ステップS110,S120の処理において車室の暖房は必要ないと判断したときを考えると、乗員の操作により暖房スイッチ信号HSWがオフからオンになる場合はあるが、この場合は外気温Toutが所定気温Toref未満で主に生じる場合であると考えられる。このため、ステップS110,S120の処理における車室の暖房は必要ないとの判断に応じて第2触媒暖機モードでエンジン22の触媒暖機運転を行なった後のステップS180,S190の処理においても、基本的には同様の判断(車室の暖房は必要ないとの判断)がなされると考えられる。
【0033】
ステップS180,S190で暖房スイッチ信号HSWがオンのときや暖房スイッチ信号HSWがオフでも外気温Toutが所定気温Toref以下のときには、エンジン22の冷却水温Twが暖房必要温度Twref以上になるまでエンジン22の自立運転を継続して(ステップS170〜S210)、エンジン22の運転停止を許可する信号をエンジンECU24に送信し(ステップS220)、触媒暖機要求時制御ルーチンを終了する。
【0034】
図4に、触媒暖機の要求に加えて暖房要求があるときのエンジン22の運転状態と触媒床温Tcと冷却水温Twとの時間変化の様子の一例を示し、図5に、同じく暖房要求があるときの触媒床温Tcと冷却水温Twとが時間変化する際の両者の関係の一例を示す。また、図6に、触媒暖機の要求はあるが暖房要求がないときのエンジン22の運転状態と触媒床温Tcと冷却水温Twとの時間変化の様子の一例を示し、図7に、同じく暖房要求がないときの触媒床温Tcと冷却水温Twとが時間変化する際の両者の関係の一例を示す。図4および図5中、実線は、第1触媒暖機モードで均質燃焼によってエンジン22の触媒暖機運転を行なったときの実施例の様子を示し、一点鎖線は、第2触媒暖機モードで成層燃焼によってエンジン22の触媒暖機運転を行なったときの比較例の様子を示す。また、図6および図7中、実線は、第2触媒暖機モードで成層燃焼によってエンジン22の触媒暖機運転を行なったときの実施例の様子を示し、一点鎖線は、第1触媒暖機モードで均質燃焼によってエンジン22の触媒暖機運転を行なったときの比較例の様子を示す。図4および図6では、エンジン22の冷却水温Twは、均質燃焼と成層燃焼とにおいて、共にエンジン22の運転を継続すると上昇を継続することから、こうして上昇を継続する傾向を分かりやすく示すため、同じ傾向に上昇するものとして実線でのみ図示した。また、図4および図6では、触媒床温Tcや冷却水温Twは、エンジン22の運転停止後に若干上昇したり低下したりするが、その程度はエンジン22の運転時の変化程度に比して十分に小さいため、エンジン22の運転停止後は略一定であるものとして図示した。
【0035】
まず、暖房要求があるときについて考える。図4および図5に示すように、比較例では、第2点火時期tf2の成層燃焼によって比較的速やかに触媒暖機運転を行なうと、時刻t11で触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になったときに冷却水温Twは第1水温Tw1になる。これに対し、実施例では、第1点火時期tf1の均質燃焼によって比較的緩やかに触媒暖機運転を行なうと、時刻t12で触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になったときに冷却水温Twは第1水温Tw1よりも高い第2水温Tw2になる。その後、暖房要求に応じてエンジン22の自立運転を行なうと、時刻t13で冷却水温Twが暖房必要温度Twref以上になったときに、比較例のように成層燃焼を行なった場合には触媒床温Tcは触媒暖機完了温度Tcrefを超えて第2温度Tc2になるのに対し、実施例のように均質燃焼を行なった場合には触媒床温Tcは触媒暖機完了温度Tcrefは超えても第2温度Tc2よりも低い第1温度Tc1にしかならない。したがって、触媒暖機の要求に加えて暖房要求があるときには、実施例のように均質燃焼による触媒暖機運転を行なうことにより、成層燃焼による触媒暖機運転を行なうものに比して、暖房要求に応じた自立運転の時間を短くすることができる。この結果、いわゆる排気損失を抑制することができ、エンジン22の燃料消費を抑制することができる。
【0036】
次に、暖房要求がないときについて考える。図6および図7に示すように、比較例では、第1点火時期tf1の均質燃焼によって比較的緩やかに触媒暖機運転を行なうと、時刻t22で触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になったときに冷却水温Twは第4水温Tw4になる。これに対し、実施例では、第2点火時期tf2の成層燃焼によって比較的速やか触媒暖機運転を行なうと、時刻t21で触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になったときに冷却水温Twは第4水温Tw4よりも低い第3水温Tw3にしかならない。したがって、触媒暖機の要求はあるが暖房要求がないときには、実施例のように成層燃焼による触媒暖機運転を行なうことにより、均質燃焼による触媒暖機運転を行なうものに比して、いわゆる冷却損失を抑制することができ、エンジン22の燃料消費を抑制することができる。
【0037】
図8に、暖房要求の有無と触媒暖機の形態との組み合わせに対応するハイブリッド自動車20における燃費の良否を概念的に示す。この図では、触媒暖機の要求に加えて暖房要求があるときには、均質燃焼を行なうことにより成層燃焼に比して燃費はよくなることを示す。また、触媒暖機の要求はあるが暖房要求がないときには、暖房要求があるときに比してエンジン22の負荷運転が要求されるまでの自立運転がないために燃費がよくなると共に、成層燃焼を行なうことにより均質燃焼に比して燃費はよくなることを示す。実施例のハイブリッド自動車20では、こうして暖房要求の有無に応じて触媒暖機運転を行なう2つのモードを切り替えるから、触媒暖機の要求に応じたエンジン22の触媒暖機運転と車室の暖房要求に応じたエンジン22の自立運転とをより適正に且つ効率よく行なうことができるのである。
【0038】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、触媒暖機が要求されたときに暖房要求があるときには、触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になるまではエンジン22の圧縮上死点よりも遅い第1点火時期tf1によるエンジン22の均質燃焼によって第1触媒暖機モードで触媒暖機を行ない、触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になってからは冷却水温Twが暖房必要温度Twref以上になるまで所定点火時期tfsetによるエンジン22の自立運転を行なってエンジン22の運転停止を許可するから、成層燃焼による触媒暖機運転を行なうものに比して、エンジン22の燃料消費を抑制することができる。また、触媒暖機が要求されたときに暖房要求がないときには、触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になるまで第1点火時期tf1よりも遅い第2点火時期tf2によるエンジン22の成層燃焼によって第1触媒暖機モードに比して速やかに第2触媒暖機モードで触媒暖機を行なってエンジン22の運転停止を許可するから、均質燃焼による触媒暖機運転を行なうものに比してエンジン22の燃料消費を抑制することができ、また、触媒暖機を中断して負荷運転を開始する場合を考えると負荷運転開始までの触媒暖機を速やかに即ち効率よく行なうことができる。これらの結果、触媒暖機の要求に応じたエンジン22の触媒暖機運転と車室の暖房要求に応じたエンジン22の自立運転とをより適正に且つ効率よく行なうことができる。しかも、暖房スイッチ信号HSWがオフのときでも外気温Toutが所定気温Toref以下のときには、暖房要求がなされる可能性が高いと判断して、第1触媒暖機モードで均質燃焼による触媒暖機運転を行なうから、例えば触媒暖機運転の最中に暖房スイッチ90がオンされた場合などに対処することができ、触媒暖機要求に応じたエンジン22の触媒暖機運転と暖房要求に応じたエンジン22の自立運転とを効率よく行なうことができる。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20では、触媒暖機が要求されたときに暖房スイッチ信号HSWがオフでも外気温Toutが所定気温Toref以下のときには第1触媒暖機モードでエンジン22の均質燃焼による触媒暖機運転を行なうものとしたが、触媒暖機が要求されたときに暖房スイッチ信号HSWがオフのときには、外気温Toutに拘わらず、第2触媒暖機モードでエンジン22の成層燃焼による触媒暖機運転を行なうものとしてもよい。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、触媒暖機が要求され暖房スイッチ信号HSWがオフのときにおいて、外気温Toutが所定気温Toref以下のときには第1触媒暖機モードでエンジン22の触媒暖機運転を行ない、外気温Toutが所定気温Torefより高いときには第2触媒暖機モードでエンジン22の触媒暖機運転を行なうものとしたが、外気温Toutに代えて車室内に取り付けられた図示しない温度センサにより検出された車室内の気温と所定気温Torefとを比較し、車室内の気温が所定気温Toref以下のときには第1触媒暖機モードでエンジン22の触媒暖機運転を行ない、車室内の気温が所定気温Torefより高いときには第2触媒暖機モードでエンジン22の触媒暖機運転を行なうものとしてもよい。
【0041】
実施例のハイブリッド自動車20では、触媒暖機が要求されたときに暖房スイッチ信号HSWと外気温Toutとに応じて第1触媒暖機モードと第2触媒暖機モードのいずれかを選択してエンジン22の触媒暖機運転を行なうものとしたが、燃費の優先を指示するエコスイッチ92からのエコスイッチ信号ESWを用いて、触媒暖機が要求されたときにエコスイッチ信号ESWがオンのときには、暖房スイッチ信号HSWと外気温Toutに拘わらず、第2触媒暖機モードを選択してエンジン22の触媒暖機運転を行なってエンジン22の運転停止を許可するものとしてもよい。この場合、図3の触媒暖機要求時制御ルーチンに代えて、図9の触媒暖機要求時制御ルーチンを実行すればよい。図9のルーチンでは、図3のルーチンのステップS100,S170の処理に代えてステップS300,S320の処理を行なう点と、ステップS310,S330の処理を追加して行なう点とを除いて、図3のルーチンと同一である。したがって、同一の処理については同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。図9のルーチンでは、外気温Toutや暖房スイッチ信号HSWに加えてエコスイッチ信号ESWを入力し(ステップS300)、エコスイッチ信号ESWがオフのときには、暖房スイッチ信号HSWと外気温Toutとに応じて第1触媒暖機運転モードまたは第2触媒暖機運転モードによって触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になるまでエンジン22の触媒暖機運転を行なう(ステップS110〜S160)。エコスイッチ信号ESWがオンのときには、暖房スイッチ信号HSWと外気温Toutに拘わらず、第2触媒暖機モードによって触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になるまでエンジン22の触媒暖機運転を行なう(ステップS140〜S160)。そして、触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になったときには、外気温Toutや冷却水温Tw,暖房スイッチ信号HSWに加えてエコスイッチ信号ESWを入力し(ステップS330)、エコスイッチ信号ESWがオフのときには、暖房スイッチ信号HSWと外気温Toutと冷却水温Twとに応じてエンジン22の自立運転を行なってエンジン22の運転停止を許可し(ステップS180〜S220)、本ルーチンを終了する。一方、エコスイッチ信号ESWがオンのときには、そのままエンジン22の運転停止を許可し(ステップS220)、本ルーチンを終了する。こうした制御により、触媒暖機が要求されたときにエコスイッチ信号ESWがオンのときには、比較的速やかに触媒暖機が完了すると共にエンジン22の自立運転が行なわれないから、実施例に比して、エンジン22の燃料消費を更に抑制することができる。なお、触媒暖機が要求されエコスイッチ信号ESWがオンのときに、暖房スイッチ信号HSWがオンの場合や外気温Toutが所定気温Toref以下の場合でもエンジン22の自立運転は行なわれないことになるが、走行時のエンジン22の負荷運転によってエンジン22の冷却水は暖めることができる。
【0042】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の自立運転を行なうときの所定点火時期tfsetは、エンジン22を所定回転数Nesetで効率よく自立運転することができるよう第1点火時期tf1よりも早いタイミングとして予め定められた点火時期を用いるものとしたが、エンジン22を所定回転数Nesetで自立運転することができる点火時期であれば、第1点火時期tf1と等しいタイミングを用いるものとしてもよい。
【0043】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22は、筒内用燃料噴射バルブ125とポート用燃料噴射バルブ126とを備えるものとしたが、筒内用燃料噴射バルブ125のみを備えるものとしてもよい。この場合、均質燃焼による第1触媒暖機モードと成層燃焼による第2触媒暖機モードとに代えて、例えば、吸気行程と圧縮行程との燃料噴射により成層混合気がややリッチな弱成層燃焼によって所定の点火時期で浄化触媒を暖機するモードと、圧縮行程の燃料噴射により成層混合気が弱成層燃焼よりも更にリッチな強成層燃焼によって所定の点火時期よりも遅い点火時期で浄化触媒を暖機するモードと、を用いて浄化触媒が暖機されるようエンジンを制御するなどとしてもよい。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、浄化触媒134aの触媒床温Tcは、温度センサ134bにより検出されたものを用いるものとしたが、これに代えて、イグニッションオン後の吸入空気量の積算値やエンジン22の冷却水温Twにより推定された浄化触媒134aの温度を用いるものとしてもよい。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を駆動軸32に出力するものとしたが、図10の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力を駆動軸32が接続された車軸(駆動輪39a,39bが接続された車軸)とは異なる車軸(図10における車輪39c,39dに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0046】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪39a,39bに接続された駆動軸32に出力すると共にモータMG2からの動力を駆動軸32に出力するものとしたが、図11の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、駆動輪39a,39bに接続された駆動軸に変速機230を介してモータMG2を取り付け、モータMG2の回転軸にクラッチ229を介してエンジン22を接続する構成とし、エンジン22からの動力をモータMG2の回転軸と変速機230とを介して駆動軸に出力すると共にモータMG2からの動力を変速機230を介して駆動軸に出力するものとしてもよい。
【0047】
実施例では、エンジン22からの動力とモータMG2からの動力とを用いて走行するハイブリッド自動車20に適用するものとしたが、図12の変形例の自動車320に例示するように、駆動輪39a,39bに接続された駆動軸に変速機330を介してエンジン22を取り付け、エンジン22からの動力のみを用いて走行する自動車に適用するものとしてもよい。この場合、触媒暖機要求や暖房要求に応じてエンジン22の触媒暖機運転や冷却水温Twが暖房必要温度Twref以上になるまでの自立運転を行なった後には、エンジン22の運転停止の許可に応じて走行を開始するまでエンジン22の運転を停止することもできる。
【0048】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、浄化装置134が「浄化装置」に相当し、暖房装置60が「暖房装置」に相当し、触媒暖機が要求されたときに暖房要求があるときには触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になるまで第1点火時期tf1の均質燃焼によって第1触媒暖機モードでエンジン22の触媒暖機運転を行なうと共に冷却水温Twが暖房必要温度Twref以上になるまでエンジン22の自立運転を行なうよう指示信号を送信し、触媒暖機が要求されたときに暖房要求がないときには触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になるまで第2点火時期tf2の成層燃焼によって第2触媒暖機モードでエンジン22の触媒暖機運転を行なうよう指示信号を送信する図3の触媒暖機要求時制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、指示信号に基づいてエンジン22の運転制御を行なうエンジンECU24とが「制御手段」に相当する。また、エコスイッチ92が「燃費優先指示スイッチ」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「遊星歯車機構」に相当する。
【0049】
ここで、「内燃機関」としては、筒内用燃料噴射バルブ125とポート用燃料噴射バルブ126とを有しガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、ポート用燃料噴射バルブ126を有しないものなど、筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有し走行用の動力を出力可能なものであれば如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「浄化装置」としては、浄化触媒134aを有する浄化装置134に限定されるものではなく、内燃機関の排気系に取り付けられて排気を浄化する浄化触媒を有するものであれば如何なるものとしても構わない。「暖房装置」としては、ヒータコア62やブロワ64を有する暖房装置60に限定されるものではなく、暖房と冷房とにより車室の空調を行なう空調装置など、内燃機関を冷却するための冷却液からの熱を用いて車室を暖房するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とを組み合わせたものに限定されるものでなく、単一の電子制御ユニットとしてもよい。また、「制御手段」としては、触媒暖機が要求されたときに暖房要求があるときには触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になるまで第1点火時期tf1の均質燃焼によって第1触媒暖機モードでエンジン22の触媒暖機運転を行なうと共に冷却水温Twが暖房必要温度Twref以上になるまでエンジン22の自立運転を行ない、触媒暖機が要求されたときに暖房要求がないときには触媒床温Tcが触媒暖機完了温度Tcref以上になるまで第2点火時期tf2の成層燃焼によって第2触媒暖機モードでエンジン22の触媒暖機運転を行なうものに限定されるものではなく、浄化触媒の暖機が要求されたときに車室の暖房が要求されているときには、浄化触媒の温度が浄化触媒の暖機を完了する温度として予め設定された所定触媒温度以上になるまでは内燃機関の圧縮上死点よりも遅い第1の点火タイミングによる内燃機関の爆発燃焼によって浄化触媒が暖機されるよう内燃機関を制御する第1の触媒暖機制御を実行すると共に、浄化触媒の温度が所定触媒温度以上になってからは内燃機関の冷却液の温度が車室の暖房に必要な温度として予め設定された所定冷却液温度以上になるまで第1の点火タイミングに比して早い又は等しい所定の点火タイミングによる内燃機関の自立運転が行なわれるよう内燃機関を制御する自立運転制御を実行し、浄化触媒の暖機が要求されたときに車室の暖房が要求されていないときには、浄化触媒の温度が所定触媒温度以上になるまで第1の点火タイミングよりも遅い第2の点火タイミングによる内燃機関の爆発燃焼によって第1の触媒暖機制御よりも速やかに浄化触媒が暖機されるよう内燃機関を制御する第2の触媒暖機制御を実行するものであれば如何なるものとしてもよい。また、「燃費優先指示スイッチ」としては、エコスイッチ92に限定されるものではなく、燃費の優先を指示するスイッチであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用の動力を入出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、電動機と電力のやりとりが可能なものであれば如何なるタイプの電動機としても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、蓄電手段と電力のやりとりが可能で動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「遊星歯車機構」としては、シングルピニオン式の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式など、車軸に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸と発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続されたものであれば如何なるタイプの遊星歯車機構としても構わない。
【0050】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0051】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 冷却システム、28a ラジエータ、28b ウォータポンプ、30 プラネタリギヤ、32 駆動軸、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、39c,39d 車輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、50 バッテリ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、60 暖房装置、62 ヒータコア、64 ブロワ、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 外気温センサ、90 暖房スイッチ、92 エコスイッチ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、125 筒内用燃料噴射バルブ、126 ポート用燃料噴射バルブ、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、134a 浄化触媒、134b 温度センサ、135a 空燃比センサ、135b 酸素センサ、136 スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、229 クラッチ、230,330 変速機、320 自動車、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有し走行用の動力を出力可能な内燃機関を備える自動車であって、
前記内燃機関の排気系に取り付けられて排気を浄化する浄化触媒を有する浄化装置と、
前記内燃機関を冷却するための冷却液からの熱を用いて車室を暖房する暖房装置と、
前記浄化触媒の暖機が要求されたときに前記車室の暖房が要求されているときには、前記浄化触媒の温度が該浄化触媒の暖機を完了する温度として予め設定された所定触媒温度以上になるまでは前記内燃機関の圧縮上死点よりも遅い第1の点火タイミングによる前記内燃機関の爆発燃焼によって前記浄化触媒が暖機されるよう前記内燃機関を制御する第1の触媒暖機制御を実行すると共に、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になってからは前記内燃機関の冷却液の温度が前記車室の暖房に必要な温度として予め設定された所定冷却液温度以上になるまで前記第1の点火タイミングに比して早い又は等しい所定の点火タイミングによる前記内燃機関の自立運転が行なわれるよう前記内燃機関を制御する自立運転制御を実行し、前記浄化触媒の暖機が要求されたときに前記車室の暖房が要求されていないときには、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になるまで前記第1の点火タイミングよりも遅い第2の点火タイミングによる前記内燃機関の爆発燃焼によって前記第1の触媒暖機制御よりも速やかに前記浄化触媒が暖機されるよう前記内燃機関を制御する第2の触媒暖機制御を実行する制御手段と、
を備える自動車。
【請求項2】
請求項1記載の自動車であって、
前記制御手段は、前記第1の触媒暖機制御として前記第1の点火タイミングによる前記内燃機関の均質燃焼によって前記浄化触媒が暖機されるよう前記内燃機関を制御し、前記第2の触媒暖機制御として前記第2の点火タイミングによる前記内燃機関の成層燃焼によって前記浄化触媒が暖機されるよう前記内燃機関を制御する手段である、
自動車。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動車であって、
前記制御手段は、前記第1の触媒暖機制御を実行して前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になった以降に前記内燃機関の冷却液の温度が前記所定冷却液温度以上になったときに前記内燃機関の停止を許可し、前記第2の触媒暖機制御を実行して前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になったときに前記内燃機関の停止を許可する手段である、
自動車。
【請求項4】
請求項3記載の自動車であって、
燃費の優先を指示する燃費優先指示スイッチを備え、
前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されている状態で前記浄化触媒の暖機が要求されたときには、前記車室の暖房が要求されているか否かにかかわらず、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になるまで前記第2の触媒暖機制御を実行すると共に前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になったときに前記内燃機関の停止を許可する手段である、
自動車。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の自動車であって、
前記制御手段は、前記浄化触媒の暖機が要求されたときに前記車室の暖房が要求されていないときでも前記車室内の気温または外気温が前記車室の暖房が要求されると想定される予め設定された所定気温以下のときには、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になるまでは前記第1の触媒暖機制御を実行すると共に、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になってからは前記内燃機関の冷却液の温度が前記所定冷却液温度以上になるまで前記自立運転制御を実行する手段である、
自動車。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つの請求項に記載の自動車であって、
前記内燃機関は、吸気ポートに燃料を噴射するポート用燃料噴射弁を有する、
自動車。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つの請求項に記載の自動車であって、
動力を入出力可能な電動機と、
前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
を備える自動車。
【請求項8】
請求項7記載の自動車であって、
前記蓄電手段と電力のやりとりが可能で走行用の動力を入出力可能な発電機と、
車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、
を備え、
前記電動機は、前記駆動軸に接続されてなる、
自動車。
【請求項9】
筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有し走行用の動力を出力可能な内燃機関と、前記内燃機関の排気系に取り付けられて排気を浄化する浄化触媒を有する浄化装置と、前記内燃機関を冷却するための冷却液からの熱を用いて車室を暖房する暖房装置と、を備える自動車の制御方法であって、
前記浄化触媒の暖機が要求されたときに前記車室の暖房が要求されているときには、前記浄化触媒の温度が該浄化触媒の暖機を完了する温度として予め設定された所定触媒温度以上になるまでは前記内燃機関の圧縮上死点よりも遅い第1の点火タイミングによる前記内燃機関の爆発燃焼によって前記浄化触媒が暖機されるよう前記内燃機関を制御する第1の触媒暖機制御を実行すると共に、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になってからは前記内燃機関の冷却液の温度が前記車室の暖房に必要な温度として予め設定された所定冷却液温度以上になるまで前記第1の点火タイミングに比して早い又は等しい所定の点火タイミングによる前記内燃機関の自立運転が行なわれるよう前記内燃機関を制御する自立運転制御を実行し、前記浄化触媒の暖機が要求されたときに前記車室の暖房が要求されていないときには、前記浄化触媒の温度が前記所定触媒温度以上になるまで前記第1の点火タイミングよりも遅い第2の点火タイミングによる前記内燃機関の爆発燃焼によって前記第1の触媒暖機制御よりも速やかに前記浄化触媒が暖機されるよう前記内燃機関を制御する第2の触媒暖機制御を実行する、
ことを特徴とする自動車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−220120(P2011−220120A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86840(P2010−86840)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】