説明

自動車用内装部品並びにその製造方法

【課題】自動車用内装部品並びにその製造方法であって、軽量化及びコストダウンを図るとともに、外周端末部の端末処理作業を簡素化する。
【解決手段】ドアトリム本体20は、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材21と、その内面側に一体化される補強機能を有する樹脂リブ22と、発泡樹脂基材21の表面に積層される加飾材23とから構成する。そして、発泡樹脂基材21と加飾材23を接着するためのホットメルトシート24を加飾材23側に予めラミネートしておき、成形上下型41,42の型締めにより、加熱軟化処理した発泡樹脂シートSを絞り成形して発泡樹脂基材21を所要形状に成形するとともに、加飾材23と一体化する。その後、ドアトリム本体20を脱型して、加飾材23の巻込みシロ26裏面側のホットメルトシート24Aを加熱溶融させて巻込みシロ26を発泡樹脂基材21の裏面側に巻込み処理することにより、端末処理作業を簡素化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品並びにその製造方法に係り、特に、軽量でかつ低コストであり、製品外周に沿う端末処理が簡単かつ廉価に行なえる自動車用内装部品並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用内装部品の構成について、ドアトリムを例示して図19,図20を基に説明する。ドアトリム1は、保形性及び車体パネルへの取付剛性を備え、製品面のほぼ全面にゆきわたっている樹脂芯材2の表面に、表面外観に優れた表皮3を積層一体化して構成されている。上記樹脂芯材2としては、タルクを混入したポリプロピレン系樹脂を素材としており、また、表皮3は、それ自体保形性を備えておらず、塩ビシート等の合成樹脂シート裏面にポリエチレンフォーム等のクッション材が積層された積層シート材料が使用され、最近では、環境面やリサイクル面を考慮して、サーモプラスチックオレフィン(以下TPOという)シート等のエラストマーシートが多用される傾向にある。
【0003】
次に、上記ドアトリム1の成形方法における従来例について図21を基に説明する。まず、ドアトリム1を成形する成形金型4は、所定ストローク上下動可能な成形上型5と、成形上型5と対をなす固定側の成形下型6と、成形下型6と接続される射出機7とから大略構成されている。そして、成形上下型5,6を型締めした際、ドアトリム1の製品形状を形造るために成形上型5にはキャビティ部5aが形成され、成形下型6にはコア部6aが設けられている。更に、上記成形上型5を所定ストローク上下動作させるために、昇降シリンダ5bが連結され、成形下型6には射出機7からの溶融樹脂の通路となるマニホールド6b、ゲート6cが設けられている。また、上下動作する成形上型5は、適正姿勢を維持させるために、成形下型6の4隅部にガイドポスト6dが設けられ、このガイドポスト6dに対応して成形上型5にはガイドブッシュ5cが設けられている。
【0004】
従って、成形上下型5,6が型開き状態にある時、表皮3を金型内にセットし、その後、成形上下型5,6を型締めする直前か、又は型締めした後のいずれかのタイミングで両金型間の製品キャビティ内に射出機7からマニホールド6b、ゲート6cを通じて溶融樹脂Mを射出充填することにより、樹脂芯材2を所要の曲面形状に成形するとともに、樹脂芯材2の表面に表皮3を一体成形している(例えば、特許文献1参照。)。尚、図21では、説明の便宜上、コア部6aの型面にオープン状態で溶融樹脂Mが供給されているが、実際は、溶融樹脂Mは成形上下型5,6の型締め後にキャビティ内に射出充填されても良い。
【0005】
更に、ドアトリム1の製品外周端末の処理については、図22に示すように、芯材2の表面に表皮3を同時プレス成形した後、型内の型刃でカット処理されるか、あるいは成形後、別工程でピアスカット処理が行なわれている。また、図23に示すように、芯材2のプレス成形後、表皮3を別工程で真空圧着、プレス圧着等により一体化した後、表皮3の端末3aを芯材2の裏面側に巻込み処理することも従来から行なわれている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−138268号公報(第2頁、図3、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のドアトリム1においては、樹脂芯材2の投影面積が大きいため、材料コストが高く、かつ製品が重量化するという問題点が指摘されている。また、樹脂芯材2の投影面積が大きいことから、成形時における射出圧を高く設定せざるを得ず、高い射出圧に耐え得る金型構造が必要となり、金型の作製費用も嵩み、しかも、大量の溶融樹脂を冷却固化させるため、成形サイクルが長期化し、生産性を低下させる大きな要因となっている。
【0008】
更に、ドアトリム1の外周縁においては、図22に示すように、表皮同時プレス成形を行なった場合、外周の端末処理が困難で、積層シート材料仕様の表皮3におけるフォーム層の木口が外部に露出する等、見栄えが悪く、外観性能を低下させる欠点があるとともに、図23に示すように、別工程で表皮3を巻込み処理する方法では、工数が多く、コストアップが避けられない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軽量化を促進でき、高剛性でコストダウンを図れる自動車用内装部品を提供でき、特に、製品外周端末部の見栄えを高めることができるとともに、端末処理作業も簡単に行なえる自動車用内装部品並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究の結果、従来から表皮として使用していた発泡樹脂シートに保形性を付与することで、芯材としての機能をもたせ、より以上に剛性が必要な箇所、すなわち製品の周縁部分やパネル、相手部品との合わせ部で密接可能、又は一定クリアランスを確保する箇所、あるいは部品取付箇所、並びに荷重が加わる部分には、剛性に優れた樹脂リブを配置することで、従来の投影面積の広い樹脂芯材に比べ、製品の軽量化を図るとともに、製品の外周端末処理については、接着剤の塗布、乾燥工程を廃止することにより、端末処理を簡単かつ迅速に行なえることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る自動車用内装部品は、所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブと、上記発泡樹脂基材の表面に貼付される加飾材とからなる積層構造体を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品において、前記積層構造体の周縁端末部は、発泡樹脂基材がトリムカット除去されることにより、加飾材の巻込みシロが形成されており、上記巻込みシロの裏面、あるいはそれと接合する発泡樹脂基材の裏面のいずれかに設けた接着剤に加熱溶融処理を施すことにより、加飾材の巻込みシロが接着固定されていることを特徴とする。
【0012】
次いで、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法は、所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブと、上記発泡樹脂基材の表面に貼付される加飾材とからなる積層構造体を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品の製造方法において、前記積層構造体は、成形上下型の型開き時、加熱軟化処理した発泡樹脂シートと、発泡樹脂シート対向面側に接着剤を設けた加飾材を重ね合わせて成形上下型内にセットする素材のセット工程と、成形上下型を型締めして、成形金型のキャビティ形状に沿って発泡樹脂基材を所望の曲面形状にプレス成形するとともに、成形上下型の型締め直前、又は型締め後のいずれかのタイミングで成形下型の溝部内に溶融樹脂を射出充填することにより、発泡樹脂基材の裏面側に樹脂リブを一体化して積層構造体を成形する積層構造体の成形工程と、成形上下型を型開きした後、積層構造体を脱型し、次いで、発泡樹脂基材の周縁に延在する加飾材の巻込みシロの裏面に設けた接着剤を加熱溶融処理して、巻込みシロを発泡樹脂基材の裏面側に巻込み接着する加飾材の巻込み処理工程とからなる工程により製作されることを特徴とする。
【0013】
ここで、自動車用内装部品としては、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等に適用できる。そして、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材は、フラット形状に近い場合は、加熱軟化工程を省略して、成形金型により所望形状に成形するが、三次元形状の製品に適用する場合は、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型内で所要の曲面形状に成形することで、その形状を保持する。尚、ここでいう「保形性」とは、リブ等の補強材がなくても、成形後、脱型した時、その形状を保持する程度の剛性を備えていることである。また、製品形状が高展開率部分を含む場合には、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型に真空吸引機構を配設して成形金型の内面に沿って発泡樹脂シートに真空吸引力を作用させるようにしても良い。
【0014】
上記発泡樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した素材を使用する。尚、熱可塑性樹脂は、1種類の熱可塑性樹脂でも2種類以上の熱可塑性樹脂からなっても良い。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用できる。また、発泡剤としては、アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤の使用が可能である。上記発泡樹脂シートの加熱軟化処理後、所要形状に成形して得た発泡樹脂基材は、製品の重量と強度とのバランスを考慮した場合、2〜10倍の発泡倍率が好ましい。その時の発泡樹脂基材のセル径は、0.1μm〜2.0mmの範囲であることが好ましく、厚みは0.5〜30mm、好ましくは1〜10mmのものが良い。
【0015】
一方、樹脂リブとして使用する熱可塑性樹脂材料は、広範な熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。通常好ましく使用できるものとして、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用できる。また、これら熱可塑性樹脂中に各種充填材を混入しても良い。使用できる充填材としては、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子等がある。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、低収縮剤等の各種の添加剤が配合されても良い。
【0016】
更に、外観意匠性を高めるために、発泡樹脂基材の表面に加飾材が一体化されている。この加飾材としては、TPO、サーモプラスチックウレタン(TPU)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の熱可塑性樹脂シート、あるいは織布、不織布、編布等の布地シートが使用できる。また、これら熱可塑性樹脂シート、織布、不織布、編布等の布地シートの裏面にポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等の発泡シートをクッション層として積層一体化することもできる。尚、加飾材の材料として、TPOシート、ポリエチレンフォームを使用するとともに、発泡樹脂基材、樹脂リブの素材として、オレフィン系樹脂を使用すれば、全ての材料をオレフィン系樹脂に統一できることからリサイクル上好ましい。
【0017】
そして、本発明に係る自動車用内装部品は、保形性を有する発泡樹脂基材の表面側に加飾性を有する加飾材が積層され、かつ裏面側に剛性を強化する樹脂リブが積層一体化されるという構成であるため、従来の樹脂芯材を廃止することができる。よって、従来の投影面積の非常に広い樹脂芯材を廃止できることで製品の軽量化を図ることができる。更に、樹脂材料を節約できることから、材料コストの低減化も同時に達成できる。
【0018】
次いで、本発明に係る自動車用内装部品における積層構造体の製造方法としては、素材のセット工程と、積層構造体の成形工程と、加飾材の巻込み処理工程とからなる。まず、素材のセット工程としては、成形上下型が型開き状態にある時、成形上下型内に発泡樹脂基材、加飾材等のシート状の原反を投入する。発泡樹脂基材の素材である発泡樹脂シートは、ヒーター装置により加熱軟化処理した状態で投入する。また、加飾材における発泡樹脂シートの対向面側には接着剤が設けられている。接着剤としては、例えば、ホットメルトシート(ポリエチレンシート等の低融点樹脂シート)、ホットメルトウエブ等を使用する。そして、加熱軟化処理した発泡樹脂シートの一面に加飾材を重ね合わせた状態で成形上下型内にセットする。
【0019】
そして、成形上下型を型締めすることで発泡樹脂シートを成形金型のキャビティ形状に沿って所望の曲面形状に成形して発泡樹脂基材を得るとともに、発泡樹脂シートの一面側に重ね合わせた加飾材が接着剤の接着機能により発泡樹脂基材の表面側に一体化される。更に、加飾材の周縁部位に巻込みシロを形成するために製品外周縁に沿って余剰の発泡樹脂基材のトリムカット処理を行なう。成形下型のキャビティ部の外周に沿ってシャーブロック(ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂等の合成樹脂材料か、あるいはアルミ、亜鉛等の比較的軟らかい軽金属材料を素材としている)が配置され、そして、このシャーブロックと成形上型の内壁面との間のシャー作用により、余剰の発泡樹脂基材をトリムカット除去する。その際のクリアランスとしては、0.4〜0.5mmの基準値が設定されるが、この基準値の厚みは加飾材の厚みに左右される。そして、成形上下型の型締め直前、あるいは型締め後のいずれかのタイミングで溶融樹脂が成形下型の溝部内に射出充填されることで補強機能を有する樹脂リブが発泡樹脂基材の裏面に所定パターン形状に沿って一体化されることで、発泡樹脂基材、加飾材、樹脂リブを一体化した積層構造体が所要形状に成形される。
【0020】
更に、加飾材の巻込み処理工程としては、積層構造体の成形工程が完了すれば、成形上下型を型開きした後、積層構造体を成形金型から脱型し、発泡樹脂基材の周縁に沿って外方に向けて延在する加飾材の巻込みシロの裏面を加熱軟化処理すれば、この部位の接着剤が加熱溶融することで、巻込みシロを発泡樹脂基材の裏面側に巻込み処理すれば、接着剤を塗布、あるいは乾燥させることなく、強固に巻込みシロを接着固定することができる。
【0021】
尚、本発明方法に使用する成形金型は、成形上下型と成形下型に連接する射出機とから構成される。成形上型は所定ストローク上下動可能であるとともに、成形下型には、射出機から供給する溶融樹脂の通路となるマニホールド、ゲート等の樹脂通路が形成されており、成形下型の型面、詳しくは成形下型の型面上に穿設されている溝部内に溶融樹脂が供給される。また、成形下型のキャビティ外周には、上述したシャーブロックが配置されている。成形上型は、下死点まで下降し、成形上下型を型締めすることで発泡樹脂シートを所要形状に絞り成形して発泡樹脂基材が得られる。また、溶融樹脂を所定の射出圧で成形下型の型面に設けられた溝部に射出充填するが、溶融樹脂の射出のタイミングとして型締め前に行なうようにしても良い。
【0022】
従って、本発明方法によれば、従来の投影面積の広い樹脂芯材に比べ樹脂リブだけを成形すれば良いため、射出圧力を従来に比べて低く設定できることにより、成形金型の負荷が少なくて済むとともに、樹脂材料を節約でき、しかも従来の樹脂芯材に比べ冷却時間も短縮化できるため、製品の成形サイクルを短縮化できる。更に、積層構造体の製品外周に沿う端末部については、積層構造体を成形金型から脱型した後、加飾材の裏面に予め設けられている接着剤を加熱溶融させ、その後、発泡樹脂基材の裏面側に巻込み処理すれば良いため、巻込みシロに対する接着剤の塗布工程、乾燥工程を廃止できることから、簡単かつ廉価に加飾材の端末処理作業を行なうことができる。また、接着剤の溶剤を揮発除去する工程を不要としたため、作業環境を良好に保つことができるとともに、排気設備等も不要となり、トータルな設備費用も低減化することができる。更に、シャーブロックと成形上型の内壁面との間のシャー作用により、発泡樹脂シートのトリムカット処理を行なえ、発泡樹脂基材と加飾材のトリムカット処理を同一のプレス工程で行なうことができる。
【0023】
次に、本発明の好ましい実施の形態においては、所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブと、上記発泡樹脂基材の表面に貼付される加飾材とからなる積層構造体を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品の製造方法において、前記積層構造体は、成形上下型の型開き時、両面に接着剤を設けた発泡樹脂シートを加熱軟化処理した状態でその表面側に加飾材を重ね合わせて成形上下型内にセットする素材のセット工程と、成形上下型を型締めして、成形金型のキャビティ形状に沿って発泡樹脂基材を所望の曲面形状にプレス成形するとともに、成形上下型の型締め直前、又は型締め後のいずれかのタイミングで成形下型の溝部内に溶融樹脂を射出充填することにより、発泡樹脂基材の裏面側に樹脂リブを一体化して積層構造体を成形する積層構造体の成形工程と、成形上下型を型開きした後、積層構造体を脱型し、加飾材の巻込みシロに対応する発泡樹脂基材の対応箇所を加熱処理して、接着剤を加熱溶融させた後、加飾材の巻込みシロを発泡樹脂基材の裏面側に巻込み接着する加飾材の巻込み処理工程とからなる工程により製作されることを特徴とする。
【0024】
更に、積層構造体の成形後、成形上下型を型開きした後、積層構造体を成形金型から脱型した後、発泡樹脂基材の裏面側には接着剤が設けられているため、加飾材の巻込みシロが対応する箇所を加熱処理することでその部分の接着剤を溶融させれば、加飾材の巻込みシロを強固に接着固定することができる。
【0025】
従って、この実施の形態によれば、発泡樹脂シートに予め設けられている接着剤を加飾材の巻込みシロを固定する接着媒体として用いるため、巻込みシロに対する接着剤の塗布工程、乾燥工程を廃止することができ、大型の排気設備を不要とできることから、加飾材の端末処理作業を簡単かつ廉価に行なうことができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明した通り、本発明に係る自動車用内装部品は、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面で、かつ製品の外周縁等、剛性が要求される部位に積層一体化される樹脂リブと、発泡樹脂基材の表面に積層される加飾材とから構成されるため、従来の重量の嵩む樹脂芯材を廃止できることから、軽量で低コスト、しかも多孔質素材であるため、吸音性能に優れるという効果を有する。
【0027】
更に、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法によれば、成形金型のキャビティ形状に沿って、発泡樹脂基材を所要形状に成形すると同時に発泡樹脂基材の裏面側に樹脂リブを成形するという工程を採用しており、樹脂成形体である樹脂リブの投影面積が少ないため、従来の樹脂芯材に比べ、成形金型にかかる負荷も少なく、かつ冷却時間も短縮化でき、歩留まりを高めることができることから、作業能率を高めることができることに加え、大幅なコストダウンを招来できるという作用効果を有する。
【0028】
また、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法によれば、積層構造体における加飾材の端末処理方法は、加飾材、あるいは発泡樹脂基材のいずれかの裏面に設けられた接着剤を加熱処理して溶融させた後、発泡樹脂基材の裏面側に加飾材の巻込みシロを巻込み処理すれば良いため、従来必要とした巻込みシロに対する接着剤の塗布工程、乾燥工程を不要とでき、簡単かつ廉価に加飾材の端末処理を行なえるとともに、大型の排気設備も不要となり、設備費用も低減することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法における好適な実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例1】
【0030】
図1乃至図12は本発明の第1実施例を示すもので、図1は本発明を適用したドアトリムを示す正面図、図2は同ドアトリムの構成を示す断面図、図3は同ドアトリムにおける樹脂リブのパターン形状を示す説明図、図4は同ドアトリムにおける端末処理部の構成を示す断面図、図5,図6は同自動車用ドアトリムの製造方法に使用する成形金型を示すもので、図5は成形金型の全体図、図6は成形金型のキャビティ外周部を示す断面図、図7乃至図12は同自動車用ドアトリムの製造方法における各工程を示すもので、図7は発泡樹脂シートの予熱工程を示す説明図、図8は加飾材及び発泡樹脂シートの型内セット工程を示す説明図、図9,図10は発泡樹脂基材のプレス成形工程を示す説明図、図11は樹脂リブの成形工程を示す説明図、図12は同ドアトリムにおける加飾材の巻込み処理工程を示す説明図である。
【0031】
図1,図2において、自動車用ドアトリム10は、所望の曲面形状に成形されたドアトリム本体20に各種機能部品を取り付けて構成されている。具体的には、ドアトリム本体20の中接部分にインサイドハンドルエスカッション30が取り付けられており、ドアトリム本体20のほぼ中央部に、室内側に膨出する乗員が肘を掛けて休めるアームレスト31が膨出形成されており、このアームレスト31の上面にプルハンドルユニット32やパワーウインドウスイッチエスカッション33が取り付けられており、アームレスト31の下方には、備品を収容できるドアポケット34が設けられており、そのフロント側にドアトリム本体20と一体、あるいは別体にスピーカグリル35が取り付けられている。
【0032】
そして、ドアトリム本体20は、図2に示すように、所望の曲面形状に成形され、保形性を有する発泡樹脂基材21と、この発泡樹脂基材21の裏面側に一体化される樹脂リブ22と、発泡樹脂基材21の表面側に成形される加飾機能をもつ加飾材23とから大略構成されている。上記発泡樹脂基材21は、保形性を有するように発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に熱成形、例えば、所望の型面を有する成形金型でコールドプレス成形されるが、高展開率部分については、真空成形を併用して発泡樹脂基材21を賦形しても良い。
【0033】
上記発泡樹脂シートは、汎用の熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した構成であり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用でき、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤や重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤が使用できる。この実施例では、ポリプロピレン系樹脂に発泡剤として重炭酸ナトリウムを適宜添加した発泡樹脂シートを使用している。また、この発泡樹脂基材21の発泡倍率は、2〜10倍に設定され、厚みは0.5〜30mm、特に1〜10mmの範囲に設定されている。
【0034】
次いで、樹脂リブ22は、発泡樹脂基材21の裏面側に配設され、特に、図3に示すように、交差状に延びる所定パターンに設定されている。尚、このパターンは、縦横方向、斜め方向、あるいはその組み合わせ等、交差状であれば任意のパターン形状が選択されて良い。この樹脂リブ22は、汎用の合成樹脂成形体からなり、通常好ましく使用できる合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等から適宜選択されて良く、本実施例では、環境面、リサイクル面を考慮してポリプロピレン系樹脂が使用されている。また、この樹脂リブ22には、上記熱可塑性樹脂中に適宜フィラー、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維や、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子等の充填材が混入されていても良い。
【0035】
このように、図1乃至図3に示すドアトリム10におけるドアトリム本体20は、保形性を有する発泡樹脂基材21と、発泡樹脂基材21の裏面に一体化される樹脂リブ22と、加飾性を有する加飾材23とから構成されているため、従来のように製品の全面に亘り占有していた樹脂芯材を廃止でき、かつ軽量な発泡樹脂基材21を使用することに加えて、樹脂リブ22は骨状であり、荷重が加わる部位、例えば、クリップ座、ウエスト部上面、アームレスト部上面等を除いた部位は、肉抜き構造となっているので、製品の重量について、従来例に比し40%以上の軽量化を図ることができるとともに、樹脂材料も大幅に節約でき、コストダウンにも貢献できる。
【0036】
更に、発泡樹脂基材21が多孔質構造であるため、ドアトリム本体20は、吸音性能に優れ、車室内の騒音を低減することができる。また、発泡樹脂基材21の吸音性を維持するために、発泡樹脂基材21の表面に予めラミネートされるか、又は成形時に一体化されて積層される加飾材23は、織布、不織布、編布等の通気性を備えたシート材料が好ましい。尚、加飾材23は、織布、不織布、編布等の通気性シート以外にも塩ビシートやTPOシート等の合成樹脂シート、合成樹脂フィルム、発泡体、網状体、又は、布地シート、合成樹脂シートの裏面にポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム等のクッション層を裏打ちした積層シート材料を使用することもできる。この実施例では、加飾材23の構成として、TPO23aの裏面にポリエチレンフォーム23bを裏打ちした積層シート材料が使用されており、その裏面全面にポリエチレン樹脂等のホットメルトシート24がラミネート処理されている。このホットメルトシート24は、発泡樹脂基材21に対する接着性を確保するために必要であるが、ホットメルトウエブ等の接着媒体でも良い。そして、このホットメルトシート24に代表される接着媒体を加飾材23の端末処理を行なう際に有効に利用することが本発明の特徴である。
【0037】
次いで、ドアトリム10におけるドアトリム本体20の外周端末構造について図4を基に説明する。すなわち、ドアトリム本体20は、上述したように保形性を有する軽量な発泡樹脂基材21の裏面に剛性を強化する所定パターン形状の樹脂リブ22が一体化され、かつ発泡樹脂基材21の表面には、加飾性を有する加飾材23が積層一体化されている。更に、ドアトリム本体20の製品外周部に沿って製品に一体感を現出させるための縦壁部25が段付フランジ状に形成されるとともに、外周端末部分においては、加飾材23の巻込みシロ26が発泡樹脂基材21の裏面側に巻込み処理されている。この時、加飾材23の巻込みシロ26は、裏面に予めラミネートされているホットメルトシート24の接着性を有効に利用して、発泡樹脂基材21の裏面側に強固に接着固定することができる。よって、発泡樹脂基材21の切断木口が露出しないため、外観見栄えが良好に維持できる。また、後述するが、接着剤を別途必要とすることがないため、端末処理作業を簡単かつ廉価に行なうことができる。
【0038】
次に、ドアトリム本体20の外周端末部の端末処理工程を含めたドアトリム10の製造方法の概要について、まず、図5で成形金型40の全体構造について説明する。図5において、ドアトリム10の成形に使用する成形金型40は、所定ストローク上下動可能な成形上型41と、成形上型41と対をなす固定側の成形下型42と、成形下型42に接続される射出機43とから大略構成されている。
【0039】
更に詳しくは、成形上型41は、製品形状に合致したキャビティ部411が形成されており、成形上型41の上面に連結された昇降シリンダ412により所定ストローク上下駆動される。また、成形上型41の4隅部には、ガイド機構となるガイドブッシュ413が設けられている。一方、成形下型42には、成形上型41のキャビティ部411に対応するコア部421が設けられている。また、このコア部421の型面に溶融樹脂を供給するために、マニホールド422、ゲート423が設けられており、このマニホールド422、ゲート423を経て射出機43から供給される溶融樹脂Mがコア部421の上面に形成された溝部424内に供給される。また、成形下型42の4隅部には、ガイド機構となるガイドポスト425が突設され、このガイドポスト425は、成形上下型41,42が型締めされる際、ガイドブッシュ413内に案内されることで成形上型41のプレス姿勢を適正に維持できる。尚、成形下型42には、素材をセットするためのセット枠44が配置されており、このセット枠44は成形上型41の上下動作と連繋して昇降する。
【0040】
次に、図6は成形金型40におけるドアトリム本体20の外周端末部に相当する箇所を示すもので、成形下型42のコア部421の外周に沿ってシャーブロック50が配置されており、このシャーブロック50は、成形上型41の内壁面との間で適切なシャークリアランスを確保できるように設定されているとともに、特に、本発明においては、このシャーブロック50の材質として、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂等の樹脂材料か、あるいはアルミ、亜鉛等の軟らかな軽金属を素材としたことが特徴である。そして、この実施例においては、図6中符号dで示すシャークリアランスは0.4〜0.5mmを基準値として設定されており、本実施例では加飾材23としては、TPO23a、ポリエチレンフォーム23bからなり、厚みが3.5mmに設定された積層シート材料が使用されており、そのために、本実施例では、シャークリアランスdが上述した0.4〜0.5mmの範囲に設定されている。特に、シャーブロック50の素材として、樹脂素材や軽金属素材を使用したため、発泡樹脂シートのトリムカット時におけるシャークリアランスのバラツキを吸収することができる。尚、シャーブロック50は、ビス孔51内にビス52を挿入して成形下型42のビス孔内に締め付け固定することで、簡単に成形下型42にシャーブロック50を取付固定することができる。また、シャークリアランスdは、シャーブロック50のコーナー部53と成形上型41の内壁面との間で設定されている。
【0041】
そして、本実施例では、厚み3.5mm程度の加飾材23を使用したが、加飾材23の材質、厚みに応じて、シャークリアランスdの寸法を可変することができる。特に、本実施例のように、シャーブロック50に軟質素材を設定した場合には、基準値±0.2mm程度の比較的ラフな精度で対応することができる。
【0042】
次いで、図7乃至図12に基づいて、上記ドアトリム10の製造方法における各工程について説明する。まず、図7に示すように、ヒーター装置60により、発泡樹脂シートSを160〜220℃の高温状態に加熱軟化処理する。この発泡樹脂シートSとしては、ポリプロピレン製発泡シート(住化プラステック製、商品名:スミセラー発泡PPシート、発泡倍率=3倍、厚み3mm)が使用されている。続いて、図8に示すように、加飾材23と上述の加熱軟化処理した発泡樹脂シートSとを成形上下型41,42が型開き状態にある時、型内に投入する。具体的には、加飾材23は、成形上型41に図示しないセットピンか、あるいは成形上型41に付設されている真空吸引機構による真空吸引力により保持するのが好ましいが、発泡樹脂シートSの上面に載置しても良い。この時、加飾材23の裏面にラミネートされたホットメルトシート24が発泡樹脂シートSに対面している。一方、発泡樹脂シートSについては、コア部421の外周に一定間隔の距離をおいて周設されているセット枠44の上面に図示するように載置すれば良い。
【0043】
その後、成形上型41の昇降シリンダ412が動作して、成形上型41が所定ストローク下降して、図9に示すように、成形上下型41,42が型締めされて発泡樹脂シートSが所望の型面形状に沿って賦形され、発泡樹脂基材21が所要形状に成形される。この時、加飾材23の裏面には、ホットメルトシート24がラミネートされているため、発泡樹脂シートSの余熱により、ホットメルトシート24が加熱溶融状態となり、発泡樹脂基材21が所要形状にプレス成形される際、この加圧力により加飾材23がホットメルトシート24を接着媒体として作用するため、両者は強固に接着一体化される。
【0044】
そして、図10に示すように、ドアトリム本体20の外周端末部においては、シャーブロック50と成形上型41の内壁面とのシャー作用により、発泡樹脂シートSの端材Saがカット除去されるため、トリムカット処理がプレス成形と同一工程で行なわれる。更に、上述した通り、シャーブロック50については、樹脂素材かあるいは軽金属素材を使用しているため、シャーブロック50のコーナー部53と成形上型41の内壁面との間のシャークリアランスdは、基準値±0.2mm程度の誤差を吸収できるため、発泡樹脂シートSの端材Saを確実にカット除去できるとともに、加飾材23が誤ってカットされることがなく、精度の良いカット処理が行なわれる。尚、この実施例では、シャーブロック50と成形上型41の内壁面との間のシャー作用により、成形と同時に端材のカット処理を行ない、巻込みシロ26が同時に形成されるが、例えば、カット刃による押し切りのように、巻込みシロ26は別の手段で形成するようにしても良い。
【0045】
次いで、発泡樹脂基材21の成形後には、図11に示すように、射出機43からマニホールド422、ゲート423を通じて成形下型42の溝部424内に溶融樹脂Mを射出充填して、樹脂リブ22を発泡樹脂基材21の裏面所定箇所に一体化することにより、ドアトリム本体20の成形が完了する。尚、溶融樹脂Mとしては、住友ノーブレンBUE81E6(住友化学工業製ポリプロピレン、メルトインデックス=65g/10分)でタルク等のフィラーが適宜割合で混入された複合樹脂材料を使用している。
【0046】
その後、成形上型41を上昇操作して、型開きを行なった後、ドアトリム本体20を成形金型40から脱型し、まず、図12に示すように、発泡樹脂基材21の外周縁に外方に向けて延在する加飾材23の巻込みシロ26について、その裏面側にラミネートされているホットメルトシート24Aに対して熱風吹き付け等の加熱処理を施すことにより、所定温度に加熱溶融処理した後、巻込みシロ26を発泡樹脂基材21の裏面側に折曲操作して、ホットメルトシート24Aの接着力を有効に利用して、巻込みシロ26を円滑に巻込み処理することで端末処理を完了させる。従って、従来必要とした接着剤の塗布工程、乾燥工程を廃止できるため、接着剤を不要とでき、材料費の節約及び接着剤の塗布作業、乾燥作業等、面倒な工程を廃止でき、生産性が向上するとともに、接着剤の有機溶剤を外部に排出するための大掛かりな排気設備も不要となり、設備費用も低減化することができる。
【0047】
尚、この第1実施例では、発泡樹脂基材21の成形工程と樹脂リブ22の射出充填工程とを上述した成形上下型41,42を使用して行なったが、別個の成形金型でそれぞれ発泡樹脂基材21と樹脂リブ22とを成形した後、圧着金型で両者を圧着するようにしても良い。また、第1実施例においては、一体型のドアトリム10におけるドアトリム本体20に本発明方法を適用したが、上下二分割タイプのドアトリムにおけるドアトリムアッパーに本発明を適用することもできる。
【実施例2】
【0048】
図13乃至図18は本発明の第2実施例を示すもので、第1実施例と重複する部分の説明は省略する。第1実施例ではホットメルトシート24は加飾材23の裏面側に予めラミネート処理されていたが、第2実施例においてはホットメルトシート24は発泡樹脂基材21の素材である発泡樹脂シートSの両面に積層一体化されている。従って、図13に示すように、加飾材23の巻込みシロ26については、発泡樹脂基材21の裏面側に巻込み処理するが、接着性を付与するのは発泡樹脂基材21の裏面側に積層されたホットメルトシート24を利用する。すなわち、発泡樹脂基材21の表面側のホットメルトシート24aは、発泡樹脂基材21と加飾材23との接着性に貢献するとともに、発泡樹脂基材21の裏面側のホットメルトシート24bは、加飾材23の巻込みシロ26を接着させるために機能する。尚、ホットメルトシート24に替えて、ホットメルトウエブ等、慣用の接着媒体を使用できる。
【0049】
以下、第2実施例におけるドアトリム10の製造方法の各工程について、図14乃至図18に沿って詳細に説明する。図14に示すように、ヒーター装置60により発泡樹脂シートSを所定温度に加熱軟化処理するが、発泡樹脂シートSの表裏面には、それぞれポリエチレンシート等のホットメルトシート24a,24bがラミネートされている。次いで、図15に示すように、成形上下型41,42が型開き状態にある時、予熱工程で加熱軟化処理した発泡樹脂シートSを成形上下型41,42内に投入する。そして、発泡樹脂シートSの上面に加飾材23を載置しても、あるいは成形上型41の型面に加飾材23を保持するようにしても良く、所定位置に素材をセットする。
【0050】
更に、図16に示すように、成形上下型41,42を型締めすることで所定のプレス圧で発泡樹脂シートSを絞り成形することで所要形状に発泡樹脂基材21を成形するとともに、発泡樹脂基材21の一面にラミネートしたホットメルトシート24aを接着媒体として機能させて加飾材23を一体化させる。そして、図17に示すように、成形下型42のキャビティ部の外周にシャーブロック50が設けられているため、発泡樹脂基材21の成形時にはシャーブロック50のコーナー部53と、成形上型41の内壁面との間の型クリアランスを適正値に設定することで余剰の端材Saをトリムカット処理できる。従って、発泡樹脂基材21の端材Saを除去できるため、加飾材23の巻込みシロ26が成形時に同時に確保できる。
【0051】
そして、ドアトリム本体20の成形後、成形上下型41,42を型開きした後、ドアトリム本体20を脱型し、図18に示すように、加飾材23の巻込みシロ26を折返し操作する前に発泡樹脂基材21の裏面側にラミネートされているホットメルトシート24bを加熱溶融させて、その後、巻込みシロ26を巻き込んで、このホットメルトシート24bを接着媒体として機能させて強固に接着固定すれば、端末処理を簡単に行なうことができる。また、この第2実施例においても、従来の接着剤を廃止することができ、接着剤の塗布工程、乾燥工程が不要となるため、生産性を高めることができるとともに、有機溶剤の排気設備等、設備費も低減できるという作用効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明した実施例1、実施例2は、自動車用ドアトリム10におけるドアトリム本体20の製造方法に本発明を適用したが、上下二分割タイプのドアトリムにおけるドアトリムアッパーに本発明方法を適用することができるとともに、ドアトリム10以外の内装部品として、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等、自動車用内装部品全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明を適用した自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】図1に示す自動車用ドアトリムにおける発泡樹脂基材を省略した樹脂リブのパターン形状を示す正面図である。
【図4】図1中IV−IV線断面図である。
【図5】図1に示す自動車用ドアトリムの製造方法に使用する成形金型を示す全体図である。
【図6】図5に示す成形金型のキャビティ外周部を示す断面図である。
【図7】図1に示す自動車用ドアトリムの製造方法における発泡樹脂シートの予熱工程を示す説明図である。
【図8】図1に示す自動車用ドアトリムの製造方法における加飾材及び発泡樹脂シートの成形金型へのセット工程を示す説明図である。
【図9】図1に示す自動車用ドアトリムの製造方法における発泡樹脂基材の成形工程を示す説明図である。
【図10】図1に示す自動車用ドアトリムの製造方法における発泡樹脂基材のトリムカット工程を示す断面図である。
【図11】図1に示す自動車用ドアトリムの製造方法における発泡樹脂基材及び樹脂リブの成形工程を示す説明図である。
【図12】図1に示す自動車用ドアトリムの製造方法におけるドアトリム本体の端末処理工程を示す説明図である。
【図13】本発明の第2実施例における自動車用ドアトリムの端末部分の構成を示す断面図である。
【図14】図13に示す自動車用ドアトリムの製造方法における発泡樹脂シートの予熱工程を示す説明図である。
【図15】図13に示す自動車用ドアトリムの製造方法における加飾材及び発泡樹脂シートの成形金型内へのセット工程を示す説明図である。
【図16】図13に示す自動車用ドアトリムの製造方法における発泡樹脂基材の成形工程を示す説明図である。
【図17】図13に示す自動車用ドアトリムの製造方法における発泡樹脂基材のトリムカット工程を示す説明図である。
【図18】図13に示す自動車用ドアトリムの製造方法におけるドアトリム本体の端末処理工程を示す説明図である。
【図19】従来の自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図20】図19中XX−XX線断面図である。
【図21】従来のドアトリムを成形する成形金型を示す概要図である。
【図22】プレス成形による自動車用ドアトリムにおける端末部分の従来例を示す説明図である。
【図23】表皮巻込みタイプの自動車用ドアトリムにおける端末部分の従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10 自動車用ドアトリム
20 ドアトリム本体
21 発泡樹脂基材
22 樹脂リブ
23 加飾材
24 ホットメルトシート
25 縦壁部
26 巻込みシロ
40 成形金型
41 成形上型
42 成形下型
43 射出機
50 シャーブロック
60 ヒーター装置
S 発泡樹脂シート
M 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材(21)と、この発泡樹脂基材(21)の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブ(22)と、上記発泡樹脂基材(21)の表面に貼付される加飾材(23)とからなる積層構造体(20)を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品(10)において、
前記積層構造体(20)の周縁端末部は、発泡樹脂基材(21)がトリムカット除去されることにより、加飾材(23)の巻込みシロ(26)が形成されており、上記巻込みシロ(26)の裏面、あるいはそれと接合する発泡樹脂基材(21)の裏面のいずれかに設けた接着剤(24)に加熱溶融処理を施すことにより、加飾材(23)の巻込みシロ(26)が接着固定されていることを特徴とする自動車用内装部品。
【請求項2】
所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材(21)と、この発泡樹脂基材(21)の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブ(22)と、上記発泡樹脂基材(21)の表面に貼付される加飾材(23)とからなる積層構造体(20)を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品(10)の製造方法において、
前記積層構造体(20)は、成形上下型(41,42)の型開き時、加熱軟化処理した発泡樹脂シート(S)と、発泡樹脂シート(S)対向面側に接着剤(24)を設けた加飾材(23)を重ね合わせて成形上下型(41,42)内にセットする素材のセット工程と、
成形上下型(41,42)を型締めして、成形金型(40)のキャビティ形状に沿って発泡樹脂基材(21)を所望の曲面形状にプレス成形するとともに、成形上下型(41,42)の型締め直前、又は型締め後のいずれかのタイミングで成形下型(42)の溝部(424)内に溶融樹脂(M)を射出充填することにより、発泡樹脂基材(21)の裏面側に樹脂リブ(22)を一体化して積層構造体(20)を成形する積層構造体の成形工程と、
成形上下型(41,42)を型開きした後、積層構造体(20)を脱型し、次いで、発泡樹脂基材(21)の周縁に延在する加飾材(23)の巻込みシロ(26)の裏面に設けた接着剤(24A)を加熱溶融処理して、巻込みシロ(26)を発泡樹脂基材(21)の裏面側に巻込み接着する加飾材(23)の巻込み処理工程と、
からなる工程により製作されることを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。
【請求項3】
所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材(21)と、この発泡樹脂基材(21)の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブ(22)と、上記発泡樹脂基材(21)の表面に貼付される加飾材(23)とからなる積層構造体(20)を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品(10)の製造方法において、
前記積層構造体(20)は、成形上下型(41,42)の型開き時、両面に接着剤(24a,24b)を設けた発泡樹脂シート(S)を加熱軟化処理した状態でその表面側に加飾材(23)を重ね合わせて成形上下型(41,42)内にセットする素材のセット工程と、
成形上下型(41,42)を型締めして、成形金型(40)のキャビティ形状に沿って発泡樹脂基材(21)を所望の曲面形状にプレス成形するとともに、成形上下型(41,42)の型締め直前、又は型締め後のいずれかのタイミングで成形下型(42)の溝部(424)内に溶融樹脂(M)を射出充填することにより、発泡樹脂基材(21)の裏面側に樹脂リブ(22)を一体化して積層構造体(20)を成形する積層構造体の成形工程と、
成形上下型(41,42)を型開きした後、積層構造体(20)を脱型し、加飾材(23)の巻込みシロ(26)に対応する発泡樹脂基材(21)の対応箇所を加熱処理して、接着剤(24b)を加熱溶融させた後、加飾材(23)の巻込みシロ(26)を発泡樹脂基材(21)の裏面側に巻込み接着する加飾材(23)の巻込み処理工程と、
からなる工程により製作されることを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−83411(P2009−83411A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258802(P2007−258802)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】