説明

薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびに電子機器

【課題】高性能化および製造容易化を実現可能な薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】支持基体1の上にゲート電極2を形成したのち、そのゲート電極2の上にゲート絶縁層3を形成する。続いて、ゲート絶縁層3の上に有機半導体層を形成したのち、レーザアブレーション法により有機半導体層をパターニングして有機半導体パターン4を形成する。最後に、有機半導体パターン4の上にソース電極5およびドレイン電極6を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体パターンを備えた薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびに薄膜トランジスタを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、チャネル層の形成材料として有機半導体材料を用いた薄膜トランジスタ(TFT)が注目されており、有機TFTと呼ばれている。有機TFTでは、チャネル層を含む全ての層を塗布形成または印刷形成できるため、低コスト化を図ることができる。また、蒸着法などよりも低い温度でチャネル層を形成できるため、低耐熱性でフレキシブルなプラスチックフィルムなどに有機TFTを実装できる。
【0003】
有機TFTは、チャネル層の形成材料として無機半導体材料を用いた従来の無機TFTと同様に、表示装置などの電子機器にスイッチング用の素子などとして用いることが検討されている。この有機TFTは、チャネル層である有機半導体パターンと共に、その有機半導体パターンに接続されたソース電極およびドレイン電極を備えている。
【0004】
有機TFTを製造する場合には、オフ電流を低減させるために、有機半導体層を形成したのち、その有機半導体層を選択的に除去(パターニング)して有機半導体パターンを形成する工程が必要である。この工程は、一般に、素子分離と呼ばれている。ところが、有機TFTの製造工程では、無機TFTの製造工程とは異なり、有機溶剤を用いたフォトリソグラフィ法により素子分離を行うことが問題になる可能性がある。有機半導体パターンは有機溶剤により溶解されやすいからである。
【0005】
そこで、素子分離の方法については、いくつかの方法が提案されている。具体的には、有機半導体層の一部にYAGレーザなどを照射して、不要な部分を昇華させている(例えば、特許文献1参照。)。ソース電極およびドレイン電極のそれぞれの上にパターン化絶縁膜(窒化ケイ素など)を形成したのち、有機半導体層を形成している(例えば、特許文献2参照。)。この場合には、パターン化絶縁膜の形成領域と非形成領域とにおける高低差(段差)を利用して有機半導体層が分離される。有機半導体層の上にパターン化膜(ポリビニルアルコールなど)を形成したのち、そのパターン化膜をマスクとして有機半導体層をエッチングしている(例えば、特許文献3参照。)。ソース電極およびドレイン電極の上に有機半導体層およびゲート絶縁層をこの順に形成したのち、レーザアブレーション法によりゲート絶縁層および有機半導体層を一括してパターニングしている(例えば、特許文献4参照。)。ソース電極およびドレイン電極の上に有機半導体層および保護層(酸化ケイ素など)をこの順に形成したのち、レーザアブレーション法により保護層および有機半導体層を一括してパターニングしている(例えば、特許文献5参照。)。ソース電極およびドレイン電極の上に有機半導体層を形成したのち、両電極の形成領域以外の領域にレーザを照射して有機半導体層をパターニングしている(例えば、特許文献6参照。)。ソース電極およびドレイン電極の上に保護層(酸化インジウムスズ(ITO)など)および有機半導体層をこの順に形成したのち、保護層の形成領域にレーザを照射して有機半導体層パターニングしている(例えば、特許文献7参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−079225号公報
【特許文献2】特開2000−269504号公報
【特許文献3】特開2006−261312号公報
【特許文献4】特許第4137915号明細書
【特許文献5】特開2006−332661号公報
【特許文献6】特表2008−524839号公報
【特許文献7】特開2007−165834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有機TFTは、無機TFTと同様に、有機半導体パターンとソース電極およびドレイン電極との位置関係に応じて、トップコンタクト型またはボトムコンタクト型に分類される。中でも、ソース電極およびドレイン電極が有機半導体パターンの上側に重なるように接続されるトップコンタクト型が有望視されている。有機半導体パターンとソース電極およびドレイン電極との接触抵抗が低下すると共に、耐熱性などが向上するからである。
【0008】
しかしながら、トップコンタクト型の有機TFTの実用的な製造方法については、未だ具体的な提案がなされていないため、その製造方法の確立が望まれている。この場合には、有機TFTを搭載する電子機器の性能および生産性を確保するために、単にトップコンタクト型の有機TFTを製造できるだけでなく、高性能な有機TFTを容易に製造できることが条件とされる。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高性能化および製造容易化を実現可能な薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、支持基体の上にゲート電極を形成する工程と、ゲート電極の上にゲート絶縁層を形成する工程と、ゲート絶縁層の上に有機半導体層を形成する工程と、レーザアブレーション法により有機半導体層を選択的に除去して有機半導体パターンを形成する工程と、有機半導体パターンの上にソース電極およびドレイン電極を形成する工程とを含むようにしたものである。
【0011】
本発明の薄膜トランジスタは、支持基体と、支持基体の上に形成されたゲート電極と、ゲート電極の上に形成されたゲート絶縁層と、ゲート絶縁層の上にレーザアブレーション法により形成された有機半導体パターンと、有機半導体パターンの上に形成されたソース電極およびドレイン電極とを備えたものである。また、本発明の電子機器は、上記した本発明の薄膜トランジスタを含むものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の薄膜トランジスタまたはその製造方法、あるいは電子機器によれば、レーザアブレーション法により有機半導体層を選択的に除去して有機半導体パターンを形成したのち、その有機半導体パターンの上にソース電極およびドレイン電極を形成している。よって、低抵抗であるトップコンタクト型の薄膜トランジスタが容易かつ安定に製造されるため、その薄膜トランジスタの高性能化および製造容易化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の薄膜トランジスタの構成を表す断面図である。
【図2】薄膜トランジスタの製造方法に用いられるレーザ加工装置の構成を表すブロック図である。
【図3】薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図4】図3に続く工程を説明するための断面図である。
【図5】図4に続く工程を説明するための断面図である。
【図6】薄膜トランジスタの製造方法を補足説明するための断面図である。
【図7】図6に続く工程を説明するための断面図である。
【図8】図6に続く他の工程を説明するための断面図である。
【図9】薄膜トランジスタの製造方法に関する変形例を説明するための断面図である。
【図10】図9に示した工程により製造される薄膜トランジスタの構成を表す断面図である。
【図11】薄膜トランジスタの適用例である液晶表示装置の主要部の構成を表す断面図である。
【図12】図11に示した液晶表示装置の回路構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.薄膜トランジスタ
1−1.薄膜トランジスタの構成
1−2.薄膜トランジスタの製造方法
2.薄膜トランジスタの適用例(電子機器)
【0015】
<1.薄膜トランジスタ>
<1−1.薄膜トランジスタの構成>
図1は、一実施形態の薄膜トランジスタである有機TFTの断面構成を表している。
【0016】
この有機TFTは、支持基体1の上に、ゲート電極2と、ゲート絶縁層3と、有機半導体パターン4と、ソース電極5よびドレイン電極6とがこの順に形成されたものである。ここで説明する有機TFTは、ゲート電極2が有機半導体パターン4の下側に位置すると共にソース電極5およびドレイン電極6が有機半導体パターン4の上側に重なっているボトムゲート・トップコンタクト型である。なお、「下側」は支持基体1に近い側、「上側」は支持基体1から遠い側をそれぞれ意味する。
【0017】
支持基体1は、例えば、プラスチック材料、金属材料または無機材料などのいずれか1種類または2種類以上により形成されている。
【0018】
プラスチック材料は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチルエーテルケトン(PEEK)、ポリアクリレート(PAR)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)またはトリアセチルセルロース(TAC)などである。金属材料は、例えば、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)またはステンレスなどである。無機材料は、例えば、ケイ素(Si)、酸化ケイ素(SiOx )、窒化ケイ素(SiNx )、酸化アルミニウム(AlOx )または他の金属酸化物などである。ただし、酸化ケイ素には、ガラス、石英またはスピンオングラス(SOG)なども含まれる。
【0019】
この支持基体1は、ウェハなどの剛性を有する基板でもよいし、可撓性を有するフィルムまたは箔などでもよい。また、支持基体1の表面には、所定の機能を有する被覆層が設けられていてもよい。この被覆層は、例えば、密着性を確保するためのバッファ層またはガス放出を防止するためのガスバリア層などである。
【0020】
なお、支持基体1は、単層でも多層でもよい。多層の場合には、上記した各種材料の層が2層以上積層されていてもよい。これらのことは、ゲート電極2、ゲート絶縁層3、有機半導体パターン4、ソース電極5およびドレイン電極6についても同様である。
【0021】
ゲート電極2は、例えば、金属材料、無機導電性材料、有機導電性材料または炭素材料などのいずれか1種類または2種類以上により形成されている。
【0022】
金属材料は、例えば、アルミニウム、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル、パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、タングステン(W)、タンタル(Ta)またはそれらを含む合金などである。無機導電性材料は、例えば、酸化インジウム(In2 3 )、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)または酸化亜鉛(ZnO)などである。有機導電性材料は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)またはポリアニリン(PANI)などである。炭素材料は、例えば、グラファイトなどである。なお、ゲート電極2は、例えば、PEDOT/PSSなどの多層でもよい。
【0023】
ゲート絶縁層3は、例えば、無機絶縁性材料または有機絶縁性材料などのいずれか1種類または2種類以上により形成されている。無機絶縁性材料は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン(TiO2 )、酸化ハフニウム(HfOx )またはチタン酸バリウム(BaTiO3 )などである。有機絶縁性材料は、例えば、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸アクリレート、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン(BCB)、フッ素樹脂、感光性ポリイミド、感光性ノボラック樹脂またはポリパラキシリレンなどである。
【0024】
なお、有機TFTを低電圧で駆動させるためには、ゲート絶縁層3の厚さは1μm以下であると共に、その表面はできるだけ平坦であることが好ましい。
【0025】
有機半導体パターン4は、例えば、以下の有機半導体材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。
【0026】
(1)ポリピロール、(2)ポリチオフェン、(3)ポリイソチアナフテンなどのイソチアナフテン、(4)ポリチェニレンビニレンなどのチェニレンビニレン、(5)ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)、(6)ポリアニリン、(7)ポリアセチレン、(8)ポリジアセチレン、(9)ポリアズレン、または(10)ポリピレンである。
【0027】
(11)ポリカルバゾール、(12)ポリセレノフェン、(13)ポリフラン、(14)ポリ(p−フェニレン)、(15)ポリインドール、(16)ポリピリダジン、(17)ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレンまたはサーカムアントラセンなどのアセン、(18)アセン類のうちの炭素の一部が窒素(N)、硫黄(S)または酸素(O)などの原子、あるいはカルボニル基などの官能基により置換された誘導体、例えば、トリフェノジオキサジン、トリフェノジチアジンまたはヘキサセン−6,15−キノンなど、(19)ポリビニルカルバゾール、ポリフエニレンスルフィドまたはポリビニレンスルフィドなどの高分子材料および多環縮合体、または(20)上記した高分子材料と同じ繰り返し単位を有するオリゴマーである。
【0028】
(21)銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン、(22)テトラチアフルバレン、(23)テトラチアペンタレン、(24)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドと共に、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)またはN,N’−ジオクチルナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド誘導体、(25)ナフタレン2,3,6,7テトラカルボン酸ジイミドなどのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、(26)アントラセン2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類に代表される縮合環テトラカルボン酸ジイミド、(27)C60、C70、C76、C78またはC84などのフラーレン、(28)単層ナノチューブ(SWNT)などのカーボンナノチューブ、(29)メロシアニン色素またはヘミシアニン色素などの色素、または(30)2,9−ジナフチル−ペリ−キサンテノキサンテンなどのペリ−キサンテノキサンテン化合物である。
【0029】
なお、有機半導体材料は、上記した一連の材料の誘導体でもよい。誘導体とは、上記した材料に1または2以上の置換基が導入された材料であり、その置換基の種類および導入位置などは、任意である。
【0030】
特に、有機半導体パターン4は、レーザアブレーション法により形成されている。より具体的には、有機半導体パターン4は、以下で詳細に説明するように、ゲート絶縁層3の上に形成された有機半導体層7(図3参照)がレーザアブレーション法によりパターニングされたものである。
【0031】
完成後の有機TFTにおいて、有機半導体パターン4がレーザアブレーション法により形成されたものであることは、以下のようにして確認される。サブトラクティブ法により有機半導体層をパターニングする方法としては、レーザアブレーション法の他にドライエッチング法が挙げられる。ドライエッチング法を用いる場合には、酸素(O2 )、アルゴン(Ar)、窒素(N2 )または水素(H2 )などのガス雰囲気中で有機半導体層がパターニングされるため、その有機半導体層の表面に副産物である反応生成物が堆積(付着)する。この反応生成物は、有機溶剤を用いた洗浄処理により除去可能であるが、その有機溶剤は、多くの有機半導体層を簡単に溶解する。これにより、有機半導体層をパターニングするためにドライエッチング法を用いた場合には、有機溶剤を用いた洗浄処理を行うことができず、または、洗浄処理を行うことができたとしても反応生成物が完全に除去されるまで洗浄処理を続けることができないため、有機半導体層の表面に反応生成物が残存してしまう。これに対して、レーザアブレーション法を用いる場合には、上記した反応生成物が生じないため、有機半導体層の表面に反応生成物が堆積しない。よって、有機半導体パターン4がレーザアブレーション法により形成されたものであることを確認するためには、その有機半導体パターン4の表面に反応生成物が堆積していないことを調べればよい。
【0032】
ソース電極5およびドレイン電極6は、例えば、ゲート電極2と同様の材料により形成されており、有機半導体パターン4にオーミック接触していることが好ましい。なお、ソース電極5およびドレイン電極6の形成範囲は、一端部が有機半導体パターン4の上側に重なっていれば特に限定されないが、中でも、他端部がゲート絶縁層3の上まで延在していることが好ましい。ソース電極5およびドレイン電極6が有機半導体パターン4の上面および側面に接触するため、それらの接触面積が大きくなるからである。
【0033】
<1−2.薄膜トランジスタの製造方法>
次に、上記した有機TFTの製造方法について説明する。図2は、有機TFTを製造するために用いられるレーザ加工装置の構成を表している。図3〜図8は、有機TFTの製造方法を説明するためのものであり、いずれも図1に対応する断面構成を示している。なお、有機TFTの構成要素の形成材料については既に説明したので、以下では、その形成材料に関する説明を随時省略する。
【0034】
以下では、レーザ加工装置の構成について説明したのち、有機TFTの製造方法について説明する。なお、有機TFTを製造する場合には、有機TFTを単独で製造してもよいし、2つ以上(複数)の有機TFTを一括して(並列的に)製造してもよい。
【0035】
[レーザ加工装置の構成]
レーザ加工装置は、レーザアブレーション法による加工(パターニング)に用いられるものである。このレーザ加工装置は、例えば、図2に示したように、光源11と、その光源11から出射されるレーザ光Lを所定のパターン形状として光学的に投影する光学系12と、デブリ回収機構13と、ステージ14とを備えている。なお、デブリ回収機構13には、レーザ光Lの入射側に透過窓19が設けられていると共に、排気ポンプ20およびガス導入手段21,22が接続されている。
【0036】
光源11の種類は、特に限定されないが、例えば、エキシマレーザである。エキシマレーザの媒体(発振波長)としては複数種類が知られており、その代表例は、XeF(351nm)、XeCl(308nm)、KrF(248nm)、ArF(193nm)およびF2 (157nm)である。ただし、光源11の種類は、固体レーザ(第2〜4高調波)などでもよい。
【0037】
光学系12は、レーザ光Lの光路に沿って順に配置されたビーム整形器15、マスク(または可変アパーチャ)16、投影レンズ17およびミラー18を含んでいる。
【0038】
ビーム整形器15は、レーザ光Lを整形して、その強度を均一化するものである。マスク16は、レーザ光Lの照射形状に対応した形状の開口部を有している。このマスク16は、例えば、金属材料により形成された穴あきマスク、ガラスまたは金属薄膜などにより形成されたフォトマスク、あるいは誘電体材料により形成された誘電体マスクなどである。投影レンズ17は、レーザ光Lを所定の倍率でステージ14の表面に投影させるものである。ミラー18は、レーザ光Lを反射させて、その照射方向を調整するものである。
【0039】
ステージ14は、加工対象物を支持するものであり、投影レンズ17により投影されたレーザ光Lが加工対象物の表面(加工面)に合焦されるように位置合わせされている。このステージ14は、レーザ光Lにより加工対象物の表面を走査可能にするために、そのレーザ光Lの光軸と垂直な面内で移動可能になっている。
【0040】
なお、レーザ加工装置は、必要に応じて、圧力を調整可能なチャンバなどに収納されていてもよい。レーザ加工時の圧力は、特に限定されないが、例えば、10-2Pa〜10Paである。
【0041】
[薄膜トランジスタの製造工程]
有機TFTを製造する場合には、最初に、図3に示したように、支持基体1を準備したのち、その支持基体1の上にゲート電極2をパターン形成する。
【0042】
このゲート電極2を形成する場合には、例えば、支持基体1の表面を覆うように金属材料層を形成したのち、その金属材料層をパターニングする。金属材料層の形成方法は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、めっき法、またはナノ粒子によるコーティング法などである。金属材料層のパターニング方法は、例えば、フォトリソグラフィ法およびエッチング法である。この場合には、例えば、フォトリソグラフィ法により金属材料層の上にレジストパターン(図示せず)を形成したのち、そのレジストパターンをマスクとして金属材料層をエッチングする。このエッチング法は、例えば、ウェットエッチング法またはドライエッチング法である。この際、エッチング条件などを調整して、ゲート電極2の幅が支持基体1に近づくにしたがって次第に広がるようにしてもよい。ゲート電極2を形成したのち、例えば、ウェット処理による熔解洗浄除去法、またはアッシング法などにより、レジストパターンを除去する。
【0043】
なお、レジストパターンの形成方法は、例えば、印刷法またはレーザ描画法などでもよい。印刷法は、例えば、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法またはオフセット印刷などである。この他、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法またはオフセット印刷法などにより金属ナノインクを直接パターニングしてもよい。
【0044】
ゲート電極2を形成する場合には、後工程で形成される有機半導体パターン4をゲート電極2から十分に絶縁する必要がある。そこで、良好な絶縁性を得るためには、ゲート電極2の厚さはできるだけ薄いことが好ましく、具体的には200nm以下であることが好ましい。ゲート電極2の厚さに起因する段差が小さくなるため、後工程でゲート絶縁層3を平坦に形成しやすくなるからである。
【0045】
続いて、ゲート電極2およびその周辺の支持基体1を覆うようにゲート絶縁層3を形成する。
【0046】
このゲート絶縁層3を形成する場合には、例えば、有機溶剤などの溶媒に有機絶縁性材料を溶解させて溶液を調製したのち、塗布法などにより溶液を塗布してから乾燥させる。こののち、必要に応じて加熱してもよい。塗布法は、例えば、グラビアコート法、ロールコート法、キスコート法、ナイフコート法、ダイコート法、スリットコート法、ブレードコート法、スピンコート法またはインクジェット法などである。
【0047】
この他、ゲート絶縁層3を形成する場合には、スパッタリング法または化学気相成長(CVD)法などにより無機絶縁性材料を堆積させてもよい。
【0048】
続いて、ゲート絶縁層3の上に有機半導体層7を形成する。この有機半導体層7は、有機半導体パターン4を形成するための準備層であり、その有機半導体層7の形成材料は、有機半導体パターン4の形成材料と同様である。
【0049】
この有機半導体層7を形成する場合には、例えば、真空蒸着法などにより有機半導体材料を堆積させる。なお、有機半導体材料の種類によっては、抵抗加熱蒸着法またはスパッタリング法などにより有機半導体材料を堆積させてもよいし、スピンコート法などの塗布法により、有機半導体材料が熔解された溶液を塗布してもよい。塗布法は、例えば、グラビアコート法、ロールコート法、キスコート法、ナイフコート法、ダイコート法、スリットコート法、ブレードコート法、スピンコート法またはインクジェット法などである。
【0050】
続いて、図2に示したレーザ加工装置を用いて、レーザアブレーション法により有機半導体層7をパターニングする。
【0051】
この有機半導体層7をパターニングする場合には、有機半導体層7が形成された支持基体1をステージ14に固定したのち、光源11から出射されたレーザ光Lを有機半導体層7に照射する。この際、ステージ14を移動させて、レーザ光Lにより有機半導体層7を走査する。なお、光源11の種類(発振波長)およびレーザLによる加工条件などは、任意である。この加工条件とは、例えば、レーザ光Lの強度(エネルギー密度)および整形条件などである。
【0052】
このレーザ加工により、レーザ光Lの照射(走査)範囲で有機半導体層7が分解除去されるため、図4に示したように、有機半導体パターン4が形成される。これにより、素子分離が完了する。
【0053】
この場合には、例えば、レーザ光Lの照射条件(強度など)を調整して、ゲート絶縁層3から遠い側よりも近い側で有機半導体パターン4の幅を広くすることが好ましい。後工程でソース電極4およびドレイン電極5を形成する場合に、ソース電極4およびドレイン電極5が有機半導体パターン4に接触しやすくなるからである。これにより、有機半導体パターン4とソース電極4およびドレイン電極5との間に隙間(非接触箇所)が生じにくくなるため、両者の電気的導通性が確保される。
【0054】
なお、有機半導体パターン4の幅は、ゲート絶縁層3に近づくにしたがって、段階的に広がってもよいし、次第に広がってもよいし、一定ののちに広がってもよいが、中でも、次第に広がることが好ましい。有機半導体パターン4の側面が傾斜するため、ソース電極4およびドレイン電極5が有機半導体パターン4の側面により接触しやすくなるからである。
【0055】
なお、レーザアブレーション法により有機半導体層7をパターニングする場合には、必要に応じて、有機半導体層7の上に保護層(図示せず)を形成しておき、その保護層を有機半導体層7と一緒にパターニングしてもよい。この保護層は、例えば、レーザ光Lの照射範囲以外の領域で意図せずに有機半導体層7が損傷する(レーザ光Lによるダメージを受ける)ことを防止するためのものである。保護層の形成材料は、例えば、樹脂材料、金属材料または無機絶縁性材料などである。一例を挙げると、樹脂材料はレジストなどであり、金属材料は金、銅またはアルミニウムなどであり、無機絶縁性材料は酸化ケイ素、窒化ケイ素または酸化アルミニウムなどである。ただし、有機半導体パターン4の形成後には、その有機半導体パターン4にダメージを与えないような方法により保護層を除去することが好ましい。
【0056】
ここで、レーザアブレーション法を用いた有機半導体パターン4の形成工程について、補足説明しておく。複数の有機TFTを一括して製造するために、レーザアブレーション法による有機半導体層7のパターニング工程を複数回に分けて行う場合には、2通りの方法が考えられる。
【0057】
具体的には、図6に示したように、複数のゲート電極2を配列させることを除き、図3を参照して説明した手順により有機半導体層7まで形成する。続いて、図7および図8に示した照射範囲R1,R2にレーザ光Lを照射して、複数の有機半導体パターン4を形成する。なお、図7および図8では、図示内容を簡略化するために、隣り合うゲート電極2間の間隔を狭くしている。
【0058】
この場合には、例えば、図7に示したように、照射範囲R1,R2が部分的に重なるようにしてもよい。照射範囲R1,R2が重なる領域R3では、レーザ光Lが二重に照射されるため、有機半導体層7が除去されたのちにゲート絶縁層3が掘り下げられる。これにより、ゲート絶縁層3に窪み3Kが形成されることになる。このため、完成後の有機TFTでゲート絶縁層3に窪み3Kが形成されていることは、有機半導体パターン4を形成するためにレーザアブレーション法によるパターニングが行われたことを表す証拠となる。なお、窪み3Kの幅WKは、特に限定されないが、支持基体1の表面の有効使用面積を大きくするためには、できるだけ狭いことが好ましい。一例を挙げると、幅WKは、20μm以下、さらに5μm以下であることが好ましい。
【0059】
または、例えば、図8に示したように、照射範囲R1,R2が重ならないようにしてもよい。照射範囲R1,R2の間に位置する領域R4では、レーザ光Lが照射されないため、有機半導体層7が分解除去されずに残存する。これにより、ゲート絶縁層3の上に、有機半導体パターン4と同様の材料からなる余剰パターン4Pが形成される。このため、完成後の有機TFTで有機半導体パターン4の他に余剰パターン4Pが形成されていることは、有機半導体パターン4を形成するためにレーザアブレーション法によるパターニングが行われたことを表す証拠となる。この余剰パターン4Pは、ゲート絶縁層3を介してゲート電極2に対向していないと共に、ソース電極5およびドレイン電極6と接続されていないため、有機半導体パターン4とは明確に区別される。なお、余剰パターン4Pの幅WPは、特に限定されないが、例えば、図7に示した窪み3Kの幅WKと同様である。
【0060】
なお、照射範囲R1,R2が部分的に重なる領域R3が複数あれば、窪み3Kも複数形成されるはずである。このことは、余剰パターン4Pの数についても同様である。以上により、レーザアブレーション法を用いた有機半導体パターン4の形成工程に関する補足説明を終了する。
【0061】
有機半導体パターン4を形成したのち、図5に示したように、有機半導体パターン4およびその周辺のゲート絶縁層3を覆うように電極層8を形成する。この電極層8は、ソース電極5およびドレイン電極6を形成するための準備層であり、その電極層8の形成材料は、ソース電極5およびドレイン電極6の形成材料と同様である。
【0062】
電極層8の形成方法は、例えば、ゲート電極2の形成方法と同様である。ただし、有機半導体パターン4にダメージを与えない方法が好ましく、具体的にはスパッタリング法などが好ましい。
【0063】
最後に、電極層8をパターニングして、図1に示したように、ソース電極5およびドレイン電極6を形成する。
【0064】
電極層8のパターニング方法は、有機半導体パターン4にダメージを与えない方法が好ましく、例えば、ウェットエッチング法などである。この場合には、例えば、フォトリソグラフィ法により電極層8の上にレジストパターン(図示せず)を形成したのち、そのレジストパターンをマスクとして電極層8をウェットエッチングする。レジストパターンの形成方法および除去方法は、例えば、ゲート電極2を形成した場合と同様である。
【0065】
ウェットエッチング法に用いるエッチング溶液の種類は、特に限定されないが、例えば、酸、塩またはそれらの混合液などである。酸は、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、酢酸、シュウ酸、フッ酸または過酸化水素などであり、塩は、例えば、フッ化アンモニウム、ヨウ化カリウム、過マンガン酸塩または重クロム酸塩などである。酸を用いる場合には、有機半導体パターン4にダメージを与えることを抑制するために、エッチング溶液中における酸の濃度は、20%以下であることが好ましい。なお、安定したエッチングレートを確保するために、エッチング溶液中に有機窒素化合物などの添加物を含有させてもよい。
【0066】
これにより、有機半導体パターン4にソース電極5およびドレイン電極6が接続されるため、有機TFTが完成する。
【0067】
[薄膜トランジスタおよびその製造方法の作用および効果]
上記した有機TFTおよびその製造方法では、レーザアブレーション法により有機半導体層7をパターニングして有機半導体パターン4を形成したのち、その有機半導体パターン4の上にソース電極5およびドレイン電極6を形成している。すなわち、レーザアブレーション法を用いて、トップコンタクト型の有機TFTを製造している。この場合には、以下の利点が得られる。
【0068】
第1に、有機半導体層7のパターニング方法としてレーザアブレーション法を用いているため、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いる場合と比較して、有機半導体層7が短時間で高精度にパターニングされると共に、パターニング用のマスク(レジストパターンなど)を別途形成する必要がない。
【0069】
第2に、有機半導体パターン4を形成したのちにソース電極5およびドレイン電極6を形成しているため、レーザアブレーション法によりソース電極5およびドレイン電極6がダメージを受けない。ソース電極5およびドレイン電極6を形成したのちに有機半導体パターン4を形成する場合(ボトムコンタクト型)には、レーザアブレーション法によりソース電極5およびドレイン電極6が意図せずに分解除去される可能性があるが、トップコンタクト型では、そのような意図しない分解除去が生じないからである。
【0070】
第3に、ソース電極5およびドレイン電極6と有機半導体パターン4との位置関係がトップコンタクト型であるため、ボトムコンタクト型と比較して、有機半導体パターン4とソース電極5およびドレイン電極6との接触抵抗が低下すると共に、耐熱性などが向上する。
【0071】
よって、低抵抗であるトップコンタクト型の有機TFTが容易かつ安定に製造されるため、その有機TFTの高性能化および製造容易化を実現できる。
【0072】
特に、有機TFTがボトムゲート型であれば、その有機TFTを搭載した電子機器(例えば反射型ディスプレイなど)のバックプレーンを作製する場合において、高い開口率を実現できる。有機TFTのドレイン電極6と画素電極とが層間絶縁層を介して接続されたフィールドシールデッドピクセル構造が形成されるからである。この他、有機半導体パターン4の形成材料の自由度を広げることもできる。トップゲート型では、有機半導体パターン4に優れた表面平坦性が要求されるため、その形成材料が限定されてしまうからである。
【0073】
また、有機半導体パターン4を形成する場合において、ゲート絶縁層3に近づくにしたがって有機半導体パターン4の幅を次第に広くすれば、ソース電極5およびドレイン電極6と有機半導体パターン4との電気的導通性を確保できる。
【0074】
また、電極層8のパターニング方法としてウェットエッチング法を用いれば、ドライエッチング法を用いる場合とは異なり、有機半導体パターン4がエッチングによるダメージを受けることを抑制できる。
【0075】
[変形例]
なお、レーザアブレーション法により有機半導体層7をパターニングする場合(図3)には、例えば、図9に示したように、レーザアブレーション法により有機半導体パターン4をマスクとしてゲート絶縁層3を選択的に途中まで掘り下げてもよい。こののち、ソース電極5およびドレイン電極6を形成すれば、図10に示した有機TFTが製造される。この場合においても、有機TFTの高性能化および製造容易化を実現できる。また、有機半導体パターン4の側面にソース電極4およびドレイン電極5がより接触しやすくなるため、両者の電気的導通性より向上させることができる。ただし、ゲート絶縁層3が補助容量における絶縁層としての役割を兼ねている場合には、リーク電流を抑制するために、ゲート絶縁層3の厚さ(ゲート電極2が形成されていない領域におけるゲート絶縁層3の厚さ)を200nm以上にすることが好ましい。
【0076】
<2.薄膜トランジスタの適用例(電子機器)>
次に、上記した有機TFTの適用例について説明する。有機TFTは、さまざまな電子機器に適用可能であり、その電子機器の種類は特に限定されないが、例えば、表示装置である液晶表示装置に適用される。
【0077】
図11および図12は、それぞれ液晶表示装置の主要部の断面構成および回路構成を表している。なお、以下で説明する装置構成および回路構成はあくまで一例であり、それらの構成は適宜変更可能である。
【0078】
[電子機器の構成]
ここで説明する液晶表示装置は、例えば、有機TFTを用いたアクティブマトリクス型駆動方式の透過型液晶ディスプレイであり、その有機TFTは、スイッチング(画素選択)用の素子として用いられる。この液晶表示装置は、図11に示したように、駆動基板30と対向基板40との間に液晶層51が封入されたものである。なお、液晶表示装置は、透過型でも反射型でもよい。
【0079】
駆動基板30は、例えば、支持基板31の一面に有機TFT32、平坦化絶縁層33および画素電極34がこの順に形成されると共に、有機TFT32および画素電極34がマトリクス状に配置されたものである。
【0080】
支持基板31は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの光透過性材料により形成されており、有機TFT32は、上記した有機TFTと同様の構成を有している。プラスチック材料の種類は、例えば、有機TFTについて説明した場合と同様である。平坦化絶縁層33は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料により形成されており、画素電極34は、例えば、ITOなどの透過性導電性材料により形成されている。なお、画素電極34は、例えば、平坦化絶縁層33に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT32に接続されている。
【0081】
対向基板40は、例えば、支持基板41の一面に対向電極42が全面形成されたものである。支持基板41は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの光透過性材料により形成されており、対向電極42は、例えば、ITOなどの導電性材料により形成されている。プラスチック材料の種類は、例えば、有機TFTについて説明した場合と同様である。
【0082】
駆動基板30および対向基板40は、液晶層51を挟んで画素電極34と対向電極42とが対向配置されるように、シール材50により貼り合わされている。液晶層51に含まれる液晶分子の種類は、任意である。
【0083】
この他、液晶表示装置は、例えば、位相差板、偏光板、配向膜およびバックライトユニットなどの他の構成要素(いずれも図示せず)を備えていてもよい。
【0084】
液晶表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図12に示したように、有機TFT32および液晶表示素子54(画素電極34、対向電極42および液晶層51)と共に、キャパシタ55を含んでいる。この回路では、行方向に複数の信号線52が配列されていると共に列方向に複数の走査線53が配列されており、それらが交差する位置に有機TFT32、液晶表示素子54およびキャパシタ55が配置されている。信号線52および走査線53は、それぞれ図示しない信号線駆動回路(データドライバ)および走査線駆動回路(走査ドライバ)に接続されている。ただし、有機TFT32におけるソース電極、ゲート電極およびドレイン電極の接続先は、図12に示した場合に限られない。
【0085】
[電子機器の動作]
この液晶表示装置では、有機TFT32により画素電極34が選択され、その画素電極34と対向電極42との間に電界が印加されると、その電界強度に応じて液晶層51(液晶分子)の配向状態が変化する。これにより、液晶分子の配向状態に応じて光の透過量(透過率)が制御されるため、階調画像が表示される。
【0086】
[電子機器に関する作用および効果]
この液晶表示装置によれば、有機TFT32が上記した有機TFTと同様の構成を有しているので、低抵抗であるトップコンタクト型の有機TFT32が容易かつ安定に製造される。よって、電子機器の高性能化および製造容易化を実現できる。
【0087】
特に、有機TFT32の支持基体としてプラスチック材料などの可撓性材料を用いれば、フレキシブル(折り曲げ可能)な液晶表示装置を実現できる。
【実施例】
【0088】
次に、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0089】
(実験例1)
以下の手順により、ボトムゲート・トップコンタクト型の有機TFTを作製した。
【0090】
最初に、真空蒸着法により支持基体(PES基板)の上に金属材料層(金)を形成したのち、ウェットエッチング法により金属材料層をエッチングしてゲート電極を形成した。続いて、無機絶縁性材料(PVP)および架橋剤(ポリ(メラミン−コ−ホルムアルデヒド))をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて溶液を調製したのち、その溶液を塗布してから加熱(180℃×1時間)してゲート絶縁層を形成した。続いて、真空蒸着法により有機半導体層(ペンタセン)を厚さ50nmとなるように形成したのち、素子分離するために、図2に示したレーザ加工装置を用いてレーザアブレーション法により有機半導体層をパターニングした。これにより、ゲート絶縁層の上に有機半導体パターンが形成された。この場合には、光源(エキシマレーザ)としてKrF(発振波長248nm)を用いると共に、試料表面におけるレーザ光の強度(エネルギー密度)を100mJ/cm2 〜1000mJ/cm2 、ビーム整形条件を25×25mmの略矩形とした。最後に、真空蒸着法により金属材料層(金)を形成したのち、ウェットエッチング法(エッチング溶液=ヨウ化カリウム溶液)により金属材料層をエッチングしてソース電極およびドレイン電極を形成した。
【0091】
(実験例2)
素子分離の方法としてフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いたことを除き、実験例1と同様の手順により有機TFTを作製した。
【0092】
(実験例3)
素子分離を行わなかったことを除き、実験例1と同様の手順により有機TFTを作製した。この場合には、有機半導体パターンを形成せずに、有機半導体層の上にソース電極およびドレイン電極を形成した。
【0093】
常温環境中(23℃)で有機TFTの性能(移動度、オンオフ比および閾値電圧)を調べたところ、表1に示した結果が得られた。なお、閾値電圧とは、電圧Vg(V)と電流Id(A)との相関を調べた際の立ち上がり電圧である。
【0094】
【表1】

【0095】
作製した有機TFT(実験例1〜3)では、素子分離の有無にかかわらず、同等の移動度および閾値電圧が得られた。しかしながら、素子分離した場合(実験例1,2)には、素子分離しなかった場合(実験例3)よりもオンオフ比が高くなった。なお、素子分離の方法としてレーザアブレーション法を用いた場合(実験例1)には、ドライエッチングを用いた場合(実験例2)と同等のオンオフ比が得られた。
【0096】
この結果は、以下のことを表している。素子分離の方法としてレーザアブレーション法を用いると、単に素子分離できるだけでなく、従来のドライエッチングを用いた場合と同等のオンオフ比が確保される。その一方で、レーザアブレーション法を用いると、有機半導体層のパターニングが短時間で高精度に行われると共に、別途パターニング用のマスクを形成する必要がないという特有の利点も得られる。よって、レーザアブレーション法を用いることは、有機TFTの性能および生産性の双方において、ドライエッチング法を用いた場合よりも有利である。
【0097】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施形態で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、薄膜トランジスタの各構成要素の形成材料および寸法などは、適宜変更可能である。
【0098】
また、本発明が適用される電子機器は、液晶表示装置以外の他の表示装置でもよい。このような他の表示装置としては、例えば、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置または電子ペーパー表示装置などが挙げられる。また、本発明は、表示装置以外の他の電子機器に適用されてもよい。このような他の電子機器としては、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話機、ビデオカメラ、IDタグまたはセンサなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0099】
1…支持基体、2…ゲート電極、3…ゲート絶縁層、4…有機半導体パターン、5…ソース電極、6…ドレイン電極、7…有機半導体層、8…電極層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基体の上に、ゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極の上に、ゲート絶縁層を形成する工程と、
前記ゲート絶縁層の上に、有機半導体層を形成する工程と、
レーザアブレーション法により前記有機半導体層を選択的に除去して有機半導体パターンを形成する工程と、
前記有機半導体パターンの上に、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程と
を含む、薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記有機半導体パターンを形成する工程において、前記ゲート絶縁層に近づくにしたがって前記有機半導体パターンの幅を次第に広くする、請求項1記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記有機半導体パターンを形成する工程において、レーザアブレーション法により前記有機半導体パターンをマスクとして前記ゲート絶縁層を選択的に途中まで掘り下げる、請求項1記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記ソース電極および前記ドレイン電極を形成する工程において、前記有機半導体パターンの上に電極層を形成したのち、ウェットエッチング法により前記電極層を選択的に除去する、請求項1記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項5】
支持基体と、
前記支持基体の上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の上に形成されたゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層の上にレーザアブレーション法により形成された有機半導体パターンと、
前記有機半導体パターンの上に形成されたソース電極およびドレイン電極と
を備えた、薄膜トランジスタ。
【請求項6】
支持基体と、前記支持基体の上に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極の上に形成されたゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層の上に形成された有機半導体パターンと、前記有機半導体パターンの上に形成されたソース電極およびドレイン電極とを備えた薄膜トランジスタを含み、
前記有機半導体パターンはレーザアブレーション法により形成されている、
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−249498(P2011−249498A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120176(P2010−120176)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】