説明

表示制御システム

【課題】 操作ボタンの配置形態にかかわらず、いずれの方向から画面を見ている操作者が操作したのかを的確に判別可能とし、その画面に当該方向からの操作入力に応じた適正な画像を表示させることができる「表示制御システム」を提供すること。
【解決手段】 異なる方向から見たときに違う画像を同じ画面上に表示可能なディスプレイ11と、その画面上に配置されたタッチパネル12と、ディスプレイ11に対する表示制御を行う制御手段15,20を備えたシステム10において、前記異なる方向をそれぞれ固有に特定する識別信号S1 ,S2 を発生(31a,31b)し、該識別信号を当該操作者30a,30bに電気的に印加(33a,33b)し、当該操作者の体を通して伝達された識別信号の成分を検出(14)することにより、タッチパネル12に対していずれの方向から操作入力があったかを識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示制御システムに係り、より詳細には、同じ画面を右方向から見た場合と左方向から見た場合とでそれぞれ違う画像を表示させることができるLCD(以下、「デュアル表示タイプのLCD」ともいう。)にタッチパネルを搭載して構成された表示ユニット(例えば、車載用の表示装置)の画面に左右各方向に応じた適正な画像を表示させるのに有用な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の表示装置としては典型的にLCD(液晶ディスプレイ)が用いられているが、かかる車載用LCDは、通常、運転席からも助手席からも画面を見ることができるように車室内のセンターコンソールのほぼ中間位置に設置されている。従来の車載用LCDにおいては、1台のLCDでナビゲーション画面とオーディオ/ビデオ(A/V)画面とを共用しているので、ナビゲーション画面を見ている時はA/V画面を見ることができず、A/V画面を見ている時はナビゲーション画面を見ることができないようになっている。また、車両が走行している時は、安全性を確保する観点からナビゲーション画面等の静止画面を見ることはできるが、TV画面やDVD画面等の動画面を見ることはできないようになっている。かかる構成では、車両の走行中はTV画面等を見ることができないため、助手席に搭乗している者にとっては不便である。この場合、運転席用と助手席用とにそれぞれ専用のLCDを設置することが考えられるが、一部の高級大型車両を除けば、一般的な車両の車室内ではスペース的に制約があるため、LCDを2台も設置する余裕はない。
【0003】
また、LCDにナビゲーション画面が表示されているにせよ、あるいは表示されていないにせよ、助手席の搭乗者がTV画面等を見ようとすれば、LCD画面上に配置されたタッチパネル、あるいはフロント席の近傍(センターコンソール上)に設置された操作パネルを介して所要の操作(ソースの選択、設定、画面切り替えなど)を行わなければならない。この場合、いったん設定したTV画面等を継続して見ることができればよいが、車両の走行中は運転者がナビゲーション画面を見たいため、助手席の搭乗者がLCDを専有することは実質上無理がある。よって、このような場合には再度TV画面等を見るための所要の操作を行う必要があり、搭乗者にとっては、その操作は非常に面倒である。
【0004】
そこで、LCDの様々なバリエーションの一つとして、同じ画面を右方向から見た場合と左方向から見た場合とでそれぞれ違う画像を表示させることができる「デュアル表示タイプのLCD」の開発が進んでいる。かかるデュアル表示タイプのLCDを車載用LCDに適用した場合、助手席の搭乗者は、運転者が見ている画像(ナビゲーション画面)とは違う画像(TV画面等の動画面)を自由に見ることができる。
【0005】
しかしながら、このデュアル表示タイプのLCDに現状のタッチパネル(画面上に表示された操作ボタンやアイコン等に触れることで入力操作が可能なインタフェース)を搭載して使用した場合に、以下に記述するような不都合が生じる。すなわち、デュアル表示タイプのLCDでは右方向と左方向の各操作者に向けてそれぞれ違う画像(例えば、操作に係る各種メニューや操作指示等の情報)を表示しているが、タッチパネルについては当該LCDの画面上に配置され、右方向と左方向の各操作者に共用させる形で設けられているため、右方向から見える画像の操作ボタンの位置と左方向から見える画像の操作ボタンの位置が重なり合うことがある。図1はその一例を示したものである。
【0006】
図1の例では、(a)に示すようにデュアル表示タイプのLCD1から右方向の操作者に対してはナビゲーションの操作画面2Rにおける地図スクロールのための方向指示ボタン(画像)D1〜D8が表示され、左方向の操作者に対してはDVDの操作画面2Lにおける各種メニューボタン(画像)M1〜M3が表示されている。そして、このLCD1の表示画面上に配置されたタッチパネル3上では、(b)に示すように右方向から見える画像の方向指示ボタンD7の位置と、左方向から見える画像のメニューボタンM2の位置が互いに重なり合っている。
【0007】
このように右方向から見える画像の操作ボタンD7の位置と左方向から見える画像の操作ボタンM2の位置が重なった場合、タッチパネル3からはどちらの操作ボタンが押されたのか、すなわち、右方向から見ている操作者(この場合、運転者)が操作したのか、あるいは左方向から見ている操作者(助手席の搭乗者)が操作したのかを的確に判別することができない。また、左右どちらの方向から操作されたのかを特定できないと、タッチパネル3につながっているマイクロコンピュータ等(図示せず)では、LCD1に対してその表示画面に左右各方向からの操作入力に応じた適正な画像(例えば、ナビゲーションの操作画面2Rに対する操作であれば地図スクロールに係る画像)を表示させることができない。
【0008】
かかる不都合に対処するには、LCDの表示画面に映し出す各ソース毎にそれぞれ(図1の例では、ナビゲーション装置とDVDプレーヤに対応して)操作ボタンの配置を振り分ける必要がある。つまり、各ソース毎にそれぞれタッチパネル上で使用可能な範囲を割り当てる必要がある。図2は各ソース毎に操作ボタンの配置(タッチパネル上の使用可能範囲)を割り当てたときの配置レイアウトの一例を示したものである。図示のようにナビゲーション装置、オーディオ機器(ラジオ受信機、CDプレーヤ等)、DVDプレーヤ、TV受信機の各ソース毎にそれぞれタッチパネル3上の使用可能範囲R1〜R4を割り当てることにより、異なるソースに対する各操作ボタンの配置が互いに重ならないようにすることができる。
【0009】
上記の従来技術に関連する技術としては、例えば、1台の車載用LCDで2画面を同時に表示可能であって、運転席と助手席からそれぞれ異なる画面を見ることができるようにしたものがある(特許文献1参照)。また、車載ナビゲーション装置において、車両の走行中は運転者の操作できる範囲を限定するなど、操作者が運転者であるか同乗者であるかを識別することで、当該操作者に応じた操作範囲を設定できるようにしたものもある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−186526号公報
【特許文献2】特開平7−103778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように従来の技術では、タッチパネルを搭載したデュアル表示タイプのLCDにおいて起こり得る不都合(図1(b)参照)を解消するために、LCDの表示画面に映し出す各ソース毎にそれぞれ操作ボタンの配置(図2のタッチパネル使用可能範囲R1〜R4)が互いに重ならないようにレイアウトを行う必要があった。
【0011】
しかしながら、このような配置形態(レイアウト)は、タッチパネルの大きさにも制限があることを考慮すると、対象とするソース(LCD画面に映し出すべきソース)の数が少なければさほど問題とはならないが、ソースの数が多くなってくると、レイアウトの自由度が制限されるため、画面のデザインに制約ができ、また外観を損ねることにもなり、不都合である。つまり、操作ボタンのレイアウトを注意して行わなければ、図1(b)に例示したような不都合が生じるといった課題があった。
【0012】
本発明は、かかる従来技術における課題に鑑み創作されたもので、操作ボタンの配置形態にかかわらず、いずれの方向から画面を見ている操作者が操作したのかを的確に判別可能とし、ひいてはその画面に当該方向からの操作入力に応じた適正な画像を表示させることができる表示制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の従来技術の課題を解決するため、本発明によれば、異なる方向から見たときにそれぞれ違う画像を同じ画面上に表示可能な表示手段と、該表示手段の画面上に配置されたタッチ式操作入力手段と、該タッチ式操作入力手段に対して前記異なる方向のいずれの方向から操作入力があったかを識別する操作入力方向識別手段と、該操作入力方向識別手段により識別された方向からの操作入力を検出する操作入力検出手段と、該操作入力検出手段の出力に基づいて前記表示手段の画面に当該方向からの操作入力に応じた画像を表示させる制御手段とを具備することを特徴とする表示制御システムが提供される。
【0014】
本発明に係る表示制御システムによれば、操作入力方向識別手段により、表示手段の画面をいずれの方向から見ている人が当該画面上にタッチしたか(つまり、操作入力を行ったか)を判別できるようにしているので、操作ボタンの配置形態(レイアウト)を気にすることなく、画面のデザインを行うことができる。言い換えると、操作ボタンの配置形態にかかわらず(レイアウトの自由度の向上)、制御手段では操作入力方向識別手段と協働して、その操作ボタンがいずれの方向から操作されたのかを的確に判別することができ、その結果に基づき、表示手段に対してその画面に当該方向からの操作入力に応じた適正な画像を表示させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0016】
図3は、本発明に係る表示制御システムを車載用に適用した場合の一実施形態に係るシステムの構成をブロック図の形態で模式的に示したものである。
【0017】
本実施形態に係る車載用表示制御システム10は、デュアル表示タイプのLCD(液晶パネル/ディスプレイ)11と、このLCD11の画面上に配置されたタッチパネル12と、タッチ位置検出部13と、識別信号検出部14と、本システム全体の制御を行う制御部15と、メモリ部16と、各種ソース(図示の例では、テレビ受信機17、ナビゲーション装置18及びDVDプレーヤ19)と、LCDドライバ20と、それぞれ互いに異なる周波数f1 ,f2 の信号(識別信号)S1 ,S2 を発生する発信器31a,31bと、各発信器31a,31bから発生された識別信号S1 ,S2 がそれぞれ印加される導電性部材(電極)33a,33bとを備えて構成されている。LCD11は、図1に示したLCD1と同様に、同じ画面を右方向から見た場合と左方向から見た場合(図3の例では、それぞれ運転席32bから見た場合と助手席32aから見た場合)とでそれぞれ違う画像を表示することができる機能(デュアル表示機能)を有している。このデュアル表示機能については後で説明する。また、タッチパネル12は、LCD11の表示面に載置された透明電極からなり、その形態としては、抵抗感圧方式、静電容量結合方式など現状のものが用いられる。このタッチパネル12を搭載したLCD11は、車室内の運転席32bと助手席32aの中間のセンターコンソール(図示せず)上に配置されており、運転席32bに着座した運転者30b(図中、破線で表示)と助手席32aに着座した同乗者30a(図中、破線で表示)がいずれもLCD11の表示画面を視認でき、かつ、タッチパネル12に対して操作を行えるようになっている。
【0018】
各発信器31a,31bからそれぞれ発生される周波数f1 ,f2 の信号(識別信号)S1 ,S2 は、LCD11が各操作者30a,30bに向けてそれぞれ個別的に画像を表示している方向、すなわち、各操作者30a,30bが着座する座席32a,32b(つまり、操作入力方向)を識別するためのものである。各発信器31a,31bから発生された識別信号S1 ,S2 は、それぞれ対応する電極33a,33bを介して、当該座席32a,32bに着座している操作者30a,30bに電気的に印加され、さらに当該操作者の体を通して識別信号検出部14に伝達される。このため、各電極33a,33bは、それぞれ対応する座席32a,32bの近傍に配置されている。この識別信号印加用の電極33a,33bの配置形態については後で説明する。
【0019】
また、タッチ位置検出部13は、タッチパネル12上で各操作者30a,30bの指が触れた位置(操作位置)を検出し、その結果を制御部15に出力する。同様に識別信号検出部14は、タッチパネル12に対して操作が行われたときに、当該操作を行った操作者30b又は30aの体を通して伝達されてきた識別信号(周波数f1 の識別信号S1 又は周波数f2 の識別信号S2 )を検出し、その結果を制御部15に出力する。また、制御部15は、マイクロコンピュータ(マイコン)等により構成され、後述するように各操作者30a,30b(操作入力方向)の識別及びそれに基づくLCD11の表示制御を行うものである。また、メモリ部16には、タッチパネル12に対して操作入力を行う各操作者30a,30bが着座する座席(助手席32a及び運転席32b)と、各座席32a,32bを固有に特定する情報、すなわち、各発信器31a,31bから発生される識別信号S1 ,S2 の周波数f1 ,f2 との関係を規定した情報が格納されている。
【0020】
また、各ソース(テレビ受信機17、ナビゲーション装置18、DVDプレーヤ19)は、基本的な動作として、制御部15から与えられる操作指示に係るデータを受信し、受信したデータに基づいて自己ソースの動作状態を変更し、その変更した結果(操作入力に係る動作状態)を指示するデータをLCDドライバ20に出力する。LCDドライバ20は、制御部15からの制御に基づいてLCD11を駆動するものであり、図示のように、各ソース17〜19から出力されたデータを左方向(助手席32aの方向)用の画像と右方向(運転席32bの方向)用の画像とに振り分けて選択出力する画像選択部21と、この画像選択部21から出力された各画像データに基づいてLCD11に対し、それぞれ助手席32a(同乗者30a)及び運転席32b(運転者30b)に対応させてLCD画面上に表示させるべき画像の表示制御を行う左方向表示制御部22a及び右方向表示制御部22bとを有している。
【0021】
次に、LCD11が行うデュアル表示機能について図4を参照しながら説明する。
【0022】
LCD11の画面(液晶面40)には多数の画素がマトリクス状に配列され、これらの画素は2つのグループに分割されている。一方のグループに属する画素(図示の例では、A1 〜A3 )で構成される画面には、LCDドライバ20の左方向表示制御部22aから出力される画像データが表示され、他方のグループに属する画素(図示の例では、B1 〜B3 )で構成される画面には、右方向表示制御部22bから出力される画像データが表示されるようになっている。また、液晶面40に配置された画素A1 〜A3 で構成される画素列の表面には、それぞれ四分円柱形状のレンズ41a,43a及び45aが配設されており、同様に画素B1 〜B3 で構成される画素列の表面にも、それぞれ四分円柱形状のレンズ41b,43b及び45bが配設されている。さらに、レンズ41aとレンズ41bとは遮光板42を介して、レンズ43aとレンズ43bとは遮光板44を介して、レンズ45aとレンズ45bとは遮光板46を介して、それぞれ密着されている。
【0023】
このようにLCD11を構成することにより、一方のグループに属する画素A1 〜A3 から発せられた光は、各レンズ41a,43a,45aの円周部表面で左斜め方向(助手席の方向)に屈折し、他方のグループに属する画素B1 〜B3 から発せられた光は、各レンズ41b,43b,45bの円周部表面で右斜め方向(運転席の方向)に屈折する。従って、同じ1台のLCD11で2つの異なった画面を同時に見ることができる(デュアル表示機能)。例えば、LCDドライバ20の左方向表示制御部22aからDVD画像のデータを入力し、右方向表示制御部22bからナビゲーション画像のデータを入力した場合には、LCD11の同じ画面上で、運転席32bの運転者30bはナビゲーション画面を見ることができ、その一方で、助手席32aの同乗者30aはDVD画面を見ることができる。
【0024】
次に、識別信号(S1 ,S2 )印加用の電極33a,33bの配置形態について図5を参照しながら説明する。
【0025】
図5(a)に示すように、各発信器31a,31bから発生された識別信号S1 ,S2 を各操作者30a,30bにそれぞれ印加するための各電極33a,33bは、各操作者30a,30bが着座する座席(助手席32a、運転席32b)にそれぞれ埋設されている。各電極33a,33bは、操作者30a,30bが着座したときに座席32a,32bに力が加わる関係上、導電性ゴム等の可撓性の導電性材料からなっている。しかし、電極33a,33bを構成する材料がこれに限定されないことはもちろんである。かかる配置形態とすることにより、発信器31a(31b)から発生された識別信号S1 (S2 )は、電極33a(33b)を介して当該操作者30a(30b)に電気的に印加され、図中破線で示すように当該操作者の体を通してタッチパネル12に伝達され、識別信号検出部14(図3参照)を通して検出される。
【0026】
各電極33a,33bは、図5(a)に示す例では各座席32a,32bに埋設されているが、その役割から明らかなように、当該操作者30a,30bに近接して配置されていれば十分であり、必ずしも座席に埋め込む必要はない。図5(b)はその場合の配置形態を示したものである。図5(b)に示す例では、運転席側において、発信器31bに対応する電極33bがステアリングホイール50の内部に埋設されている。この場合、発信器31bはダッシュボード51の内部に配設されている。
【0027】
以上のように構成された車載用表示制御システム10において、デュアル表示タイプのLCD(液晶パネル/ディスプレイ)11は「表示手段」に、タッチパネル12は「タッチ式操作入力手段」に、タッチ位置検出部13は「操作入力検出手段」に、メモリ部16は「メモリ手段」に、制御部15及びLCDドライバ20は「制御手段」にそれぞれ対応している。また、発信器31a,31bは「識別信号発生手段」に、電極33a,33bは「識別信号印加手段」に、識別信号検出部14は「識別信号成分検出手段」にそれぞれ対応し、各発信器31a,31b及びそれに対応する各電極33a,33bと識別信号検出部14とにより「操作入力方向識別手段」が構成されている。
【0028】
以下、本実施形態に係る車載用表示制御システム10において制御部15が行う各操作者30a,30b(操作入力方向)の識別及びそれに基づくLCD11の表示制御に係る処理について、その処理フローの一例を示す図6を参照しながら説明する。
【0029】
先ず最初のステップS1では、タッチ位置検出部13を介して制御部15により、タッチパネル12上に同乗者30a又は運転者30bの指が触れたか否か、すなわち、タッチパネル12に対する操作があった(YES)か否(NO)かを判定する。そして、判定結果がYESの場合には次のステップS2に進み、判定結果がNOの場合には本処理フローは「終了」となる。
【0030】
次のステップS2では、識別信号検出部14において、当該操作を行った同乗者30a又は運転者30bの体を通して伝達されてきた識別信号(周波数f1 の識別信号S1 又は周波数f2 の識別信号S2 )の成分を検出し、さらに制御部15において、メモリ部16に格納されている情報を参照して、当該識別信号の周波数を特定し、当該操作者の居る方向(助手席32a又は運転席32b)を判別する。つまり、タッチパネル12に対して左右いずれの方向から操作入力があったのかを判別する。
【0031】
次のステップS3では、制御部15からの制御に基づいてLCDドライバ20(左右各方向の表示制御部22a,22b)により、当該方向(助手席32a又は運転席32b)からの操作入力に対応させて当該方向に向けた画面表示(LCD画面上に表示させるべき画像の表示)を制御する。
【0032】
次のステップS4では、制御部15からの制御に基づきLCDドライバ20を介してLCD11の画面上に、判別した操作入力方向(助手席32a又は運転席32b)から操作された内容に応じた画像を表示する。この後、ステップS1に戻って上記の処理を繰り返す。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る車載用表示制御システム10によれば、各座席32a,32bの近傍に配置された発信器31a,31bから発生された識別信号S1 ,S2 をそれぞれ電極33a,33bを介して当該座席の操作者30a,30bに印加し、当該操作者の体を通して伝達されてきた当該識別信号を識別信号検出部14で検出しているので、制御部15では、その識別信号とメモリ部16に格納されている情報とに基づいて、どの座席に座っている人が操作したかを判別することができる。
【0034】
このように、LCD11の画面を左右いずれの方向から見ている人(同乗者30a又は運転者30b)がタッチパネル12上の操作ボタンを操作したかを判別できるようにしているので、操作ボタンのレイアウトを気にすることなく、画面のデザインを自由に行うことができる。つまり、操作ボタンをパネル上のどの場所に配置しても、制御部15では、その操作ボタンが左右いずれの方向から操作されたのかを的確に判別することができるので、LCD11に対してその表示画面に当該方向からの操作入力に応じた適正な画像を表示させることができる。例えば、当該操作者の方向に向けて表示されている画面上の操作メニューを判断し、その操作指示に対応したメニューの機能を実行させることが可能となる。
【0035】
上述した実施形態では、タッチパネル12に対して左右いずれの方向から操作入力があったかを識別するための手段(操作入力方向識別手段)として、各発信器31a,31b及びそれに対応する各電極33a,33bと識別信号検出部14を設けた場合を例にとって説明したが、操作入力方向識別手段の構成形態はこれに限定されないことはもちろんであり、他にも種々の形態が考えられる。
【0036】
例えば、図7に例示するように、タッチパネル12を搭載したLCD11を支持している枠体(支持体)FRの左端部及び右端部の近傍にそれぞれ赤外線センサ(発光部及び受光部を含む)35a,35bを設け、各発光部からそれぞれ助手席及び運転席の各操作者が居る方向に向けて赤外線IRa,IRbを放射し(図7(a)参照)、各座席の操作者の手又は指がタッチパネル12の操作面まで所定の距離(当該赤外線の放射エリア)に近づいたときに(図7(b)参照)、当該操作者の手又は指で反射された赤外線IRa,IRbを各赤外線センサ35a,35bの受光部で検出し、その検出結果から制御部15aにおいて、左右いずれの方向から操作入力があったかを識別するようにしてもよい。
【0037】
あるいは、図8に例示するように、タッチパネル12を搭載したLCD11をその撮像範囲に含むように車室内の適当な場所(例えば、車室内の後方の天井部)にカメラ36を配置し(図8(a)参照)、助手席及び運転席の各操作者30a,30bの手又は指がタッチパネル12の操作面に接近したときにその様子をカメラ36で撮像し(図8(b)参照)、その撮像結果を制御部15bにおいて画像処理し、その処理結果に基づき、左右いずれの方向から操作入力があったかを識別するようにしてもよい。
【0038】
また、特に図示はしないが更なる他の構成形態として、タッチパネル12上の左右の適当な場所に、助手席及び運転席の各操作者専用にそれぞれスイッチを設けておき、各操作者がタッチパネル12に対して操作入力を行う際に自分専用のスイッチを押してから当該操作を行ったり、あるいは、自分専用のスイッチを押しながらタッチパネル12に対する操作を行うようにしてもよい。この場合、制御部15では、当該スイッチが操作されたか否かの検出結果とタッチ位置検出部13からの検出結果とに基づいて、左右いずれの方向から操作入力があったかを識別する。また、自分専用のスイッチを押してから操作入力を行う形態の場合、制御部15では、当該スイッチが操作されてからタッチパネル12の操作が行われるまでに要した時間をカウントしておき、そのカウント時間が所定の時間よりも短いときは、当該方向から操作入力があったものと判別し、そのカウント時間が所定の時間を超えているときは、当該方向からの操作入力は無かったものと判別する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】デュアル表示タイプのLCDにタッチパネルを搭載して使用した場合の問題点を説明するための図である。
【図2】各ソース毎にタッチパネル上で操作ボタンの配置(使用可能範囲)を割り当てたときの配置レイアウトの一例を示す図である。
【図3】本発明に係る表示制御システムを車載用に適用した場合の一実施形態に係るシステムの構成を示すブロック図である。
【図4】図3のシステムにおけるLCD(液晶パネル/ディスプレイ)のデュアル表示を説明するための図である。
【図5】図3のシステムにおける識別信号印加用の電極の配置形態を示す図である。
【図6】図3のシステムにおいて制御部が行う操作者(操作入力方向)の識別及びそれに基づくLCDの表示制御に係る処理の一例を示すフロー図である。
【図7】操作入力方向識別手段の他の構成形態を説明するための図である。
【図8】操作入力方向識別手段の更に他の構成形態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0040】
10…車載用表示制御システム、
11…デュアル表示タイプのLCD〔液晶パネル/ディスプレイ〕(表示手段)、
12…タッチパネル(タッチ式操作入力手段)、
13…タッチ位置検出部(操作入力検出手段)、
14…識別信号検出部(識別信号成分検出手段/操作入力方向識別手段)、
15,15a,15b…制御部(制御手段)、
16…メモリ部(メモリ手段)、
17〜19…ソース、
20…LCDドライバ(制御手段)、
21…画像選択部、
22a,22b…表示制御部、
30a,30b…操作者、
31a,31b…発信器(識別信号発生手段/操作入力方向識別手段)、
32a,32b…操作者が着座する座席、
33a,33b…電極(識別信号印加手段/操作入力方向識別手段)、
35a,35b…赤外線センサ(操作入力方向識別手段)、
36…カメラ(操作入力方向識別手段)、
40…LCDの液晶面(画素列)、
41a,41b,43a,43b,45a,45b…レンズ、
42,44,46…遮光板、
50…ステアリングホイール、
1 〜A3 ,B1 〜B3 …画素、
D1〜D8,M1〜M3…画像の操作ボタン、
FR…タッチパネル付LCDを支持している枠体、
IRa,IRb…赤外線、
R1〜R4…操作ボタンの配置(タッチパネル上の使用可能範囲)、
1 ,S2 …発信信号(識別信号)、
1 ,f2 …発信信号の周波数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる方向から見たときにそれぞれ違う画像を同じ画面上に表示可能な表示手段と、
該表示手段の画面上に配置されたタッチ式操作入力手段と、
該タッチ式操作入力手段に対して前記異なる方向のいずれの方向から操作入力があったかを識別する操作入力方向識別手段と、
該操作入力方向識別手段により識別された方向からの操作入力を検出する操作入力検出手段と、
該操作入力検出手段の出力に基づいて前記表示手段の画面に当該方向からの操作入力に応じた画像を表示させる制御手段とを具備することを特徴とする表示制御システム。
【請求項2】
前記操作入力方向識別手段は、
前記異なる方向の各方向をそれぞれ固有に特定する識別信号を発生する手段と、
発生された識別信号を当該方向に居る操作者に電気的に印加する手段と、
当該操作者の体を通して伝達された前記識別信号の成分を検出する手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示制御システム。
【請求項3】
前記操作入力方向識別手段は、前記異なる方向の各方向において前記タッチ式操作入力手段から見て操作者が居る側に赤外線を放射し、操作者の手又は指で反射された当該赤外線を検出する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示制御システム。
【請求項4】
前記操作入力方向識別手段は、前記異なる方向の各方向において前記タッチ式操作入力手段から見て操作者が居る側を撮像する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示制御システム。
【請求項5】
前記操作入力方向識別手段は、前記異なる方向の各方向に居る各操作者専用のスイッチを備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示制御システム。
【請求項6】
車両に搭載されていることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の表示制御システム。
【請求項7】
前記表示手段は、車室内の運転席及び助手席の各方向に向けてそれぞれ違う画像を表示可能な液晶ディスプレイであり、前記タッチ式操作入力手段は、前記液晶ディスプレイの画面上に配置されたタッチパネルであることを特徴とする請求項6に記載の表示制御システム。
【請求項8】
前記識別信号を発生する手段は、前記運転席及び助手席に対応してそれぞれ設けられ、かつ互いに異なる周波数の信号を発生する発信器であることを特徴とする請求項7に記載の表示制御システム。
【請求項9】
前記識別信号を当該操作者に電気的に印加する手段は、前記運転席及び助手席の各座席にそれぞれ埋設された導電性部材であることを特徴とする請求項7に記載の表示制御システム。
【請求項10】
前記運転席に埋設された導電性部材に代えて、ステアリングホイールの内部に埋設された導電性部材を備えていることを特徴とする請求項9に記載の表示制御システム。
【請求項11】
前記運転席及び助手席の各座席と、各座席毎に設けられた前記発信器からそれぞれ発生される信号の周波数との関係を規定した情報を格納したメモリ手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記メモリ手段に格納されている情報を参照して、前記液晶ディスプレイに対する表示制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の表示制御システム。
【請求項12】
前記操作入力検出手段は、前記タッチパネル上で操作者の指が触れた位置を検出するタッチ位置検出部であることを特徴とする請求項11に記載の表示制御システム。
【請求項13】
前記制御手段は、前記タッチパネルに対する操作があったときに、前記メモリ手段に格納されている情報から当該操作者が着座している座席を判別し、前記タッチ位置検出部の出力に基づいて前記液晶ディスプレイに対し当該座席の方向に向けた画面表示を制御する表示制御部を備えたことを特徴とする請求項12に記載の表示制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−47534(P2006−47534A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226392(P2004−226392)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】