説明

表示装置の製造方法

【課題】発光効率が低下しない表示装置を提供する。
【解決手段】発光部15が位置する凹部13が充填膜27で充填されてから無機膜28が形成されるので、無機膜28に亀裂が生じない。無機膜28はダイヤモンドライクカーボンやAlNのように、気密性と熱伝導性が高い材料で構成されているので、発光部15に水や酸素が進入し難いだけでなく、発光部15の熱は無機膜28に伝達され、発光部15が高温にならない。更に、第一パネル10、第二のパネル20の間の隙間は樹脂膜29で充填されているので、外部から大気が進入しない。発光部15は水や酸素や熱によってダメージを受けないので、表示装置1は寿命が長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機EL(Electro-Luminescence)を用いた表示装置が広く用いられている。
しかし、有機ELに用いられる有機材料は一般に水や酸素と接触すると化学的に変化しやすく、表示装置内部に大気中から水や酸素が進入すると有機材料が変性して、発光不良が起こる。
【0003】
特に、有機膜が設けられた側とは反対側のパネルに放出された光を外部に取り出すトップエミッション型の表示装置は封止が難しく、発光効率の低下、阻止性能の経時劣化等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−176655号公報
【特許文献2】特開2006−286211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、外部からの水や酸素の進入を防止し、寿命の長い表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、第一、第二のパネルと、保護膜とを有し、前記第一、第二のパネルは表面を互いに対向して配置され、前記第一のパネルの表面には、凹部を有する積層膜が配置され、前記積層膜の前記凹部が位置する部分には、下部電極と有機膜と上部電極とが積層された発光部が位置し、前記保護膜は前記積層膜表面に形成された表示装置であって、前記保護膜は、前記凹部を充填する充填膜と、前記充填膜表面の上に形成された無機膜と、前記無機膜の上に形成された樹脂膜と、を有し、前記第一のパネルの前記凹部が形成された面は、前記充填膜を充填する前よりも、前記充填膜を充填した後の方が平坦にされ、前記無機膜はダイヤモンドライクカーボンと、AlNのいずれか一方を主成分とする表示装置である。
また、本発明は、前記各発光部は、前記第一のパネルの縁よりも内側の発光領域に位置し、前記充填膜の縁は前記発光領域よりも外側で前記第一のパネルの表面に密着し、前記無機膜の縁は前記充填膜の縁よりも外側で前記第一のパネルの表面に密着し、前記樹脂膜の縁は前記無機膜の縁よりも外側で前記第一のパネルの表面に密着する表示装置である。
本発明は、第一、第二、第三の成膜室と、前記第一、第二、第三の成膜室にそれぞれ接続された排気系と、前記第一の成膜室内部に配置された充填膜形成装置と、前記第二の成膜室内部に配置された無機膜成膜装置と、前記第三の成膜室内部に配置された樹脂膜形成装置と、を有し、前記充填膜形成装置は、インクジェット法により充填剤を吐出する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドに充填剤を供給する充填剤供給系と、前記印刷ヘッドに接続された制御系と、を有し、前記印刷ヘッドは、前記充填剤供給系から供給された前記充填剤を、前記制御系内の位置情報に従った位置に吐出し、前記位置情報は処理対象物の凹部の位置を示す情報を含み、前記第一、第二、第三の成膜室は、それぞれ減圧雰囲気にされ、前記第一、第二、第三の成膜室の間は、前記処理対象物を大気に曝さずに搬送可能にされた、表示装置用の製造装置である。
また、本発明は、前記無機膜成膜装置は、前記第二の成膜室内部に配置された第一、第二の電極を有し、前記第二の成膜室には、前記第二の成膜室の内部に炭化水素ガスを供給するガス導入系が接続され、前記第一、第二の電極間には高周波電圧が印加されるように構成された表示装置用の製造装置である。
また、本発明は、前記無機膜成膜装置は、前記第二の成膜室内部に配置された無機材料のターゲットを有し、前記第二の成膜室には、前記第二の成膜室の内部にスパッタガスを供給するスパッタガス導入系が接続された表示装置用の製造装置である。
また、本発明は、前記第三の成膜室には、スクリーンと、前記スクリーン上に樹脂を供給する樹脂液供給手段と、前記スクリーン上の樹脂をスクリーンを通過するように押圧する押圧手段を有している表示装置用の製造装置である。
本発明は、第一、第二のパネルと、保護膜とを有し、前記第一、第二のパネルは表面を互いに対向して配置され、前記第一のパネルの表面には、凹部を有する積層膜が配置され、前記積層膜の前記凹部が位置する部分には、下部電極と有機膜と上部電極とが積層された発光部が位置し、前記保護膜は充填膜と無機膜と樹脂膜を有し、前記保護膜は前記積層膜表面に形成された表示装置を製造する表示装置の製造方法であって、前記積層膜が形成された状態の前記第一のパネルを第一の成膜室の内部に搬入し、前記第一の成膜室の内部に大気圧よりも圧力の低い印刷雰囲気を形成した状態で、インクジェット法により前記凹部に充填剤を着弾させて充填膜を形成し、前記第一のパネルの前記凹部が形成された面を、前記充填膜が形成される前よりも平坦にする充填膜形成工程と、前記充填膜が形成された状態の前記第一のパネルを第二の成膜室の内部に搬入し、前記第二の成膜室の内部に大気圧よりも圧力の低い成膜雰囲気を形成した状態で、前記充填膜表面に前記無機膜を形成する無機膜形成工程と、前記無機膜が形成された状態の前記第一のパネルを第三の成膜室の内部に搬入し、前記第三の成膜室の内部に大気圧よりも圧力の低い印刷雰囲気を形成した状態で、前記無機膜上にスクリーン印刷法により前記樹脂膜を形成する樹脂膜形成工程と、を含む、表示装置の製造方法である。
また、本発明は、前記無機膜形成工程は、前記充填膜が形成された前記第一のパネルを、第二の成膜室の内部に搬入し、前記第二の成膜室の内部の第一、第二の電極間に配置し、前記第二の成膜室の内部に、炭化水素ガスを含有し、圧力が大気圧よりも低く、かつ、前記印刷雰囲気と同じかそれよりも高い反応雰囲気を形成した状態で、前記第一、第二の電極間に電圧を印加し、前記充填膜の表面にダイヤモンドライクカーボンを含有する前記無機膜を形成する表示装置の製造方法である。
また、本発明は、前記無機膜形成工程は、前記充填膜が形成された前記第一のパネルを、第二の成膜室の内部に搬入し、前記第二の成膜室の内部に、スパッタガスを含有し、圧力が前記印刷雰囲気よりも低いスパッタ雰囲気を形成した状態で、前記第二の成膜室の内部に配置されたターゲットをスパッタリングして、前記充填膜の表面に前記無機膜を形成する表示装置の製造方法である。
また、本発明は、前記ターゲットとしてAlを含有するものを用い、化学構造中に窒素を含有する窒化ガスを、前記スパッタ雰囲気に含有させてスパッタリングし、AlNを含有する前記無機膜を形成する表示装置の製造方法である。
また、本発明は、前記第一の成膜室の内部の酸素と水の含有量をそれぞれ1ppm以下にして前記充填膜を形成し、前記第二の成膜室の内部の酸素と水の含有量をそれぞれ1ppm以下にして前記無機膜を形成する表示装置の製造方法である。
また、本発明は、前記樹脂膜形成工程の後、前記第二のパネルの表面と、前記第一のパネルの前記樹脂膜が形成された面と対面させ、前記第二のパネルを前記樹脂膜に密着させた状態で、前記樹脂膜の周囲を取り囲むリング状の封止部材によって、前記第一のパネルと貼り合わせる表示装置の製造方法である。
本発明は、第一、第二のパネルと、保護膜とを有し、前記第一、第二のパネルは表面を互いに対向して配置され、前記第一のパネルの表面には、凹部を有する積層膜が配置され、前記積層膜の前記凹部が位置する部分には、下部電極と有機膜と上部電極とが積層された発光部が位置し、前記保護膜は前記積層膜表面に形成された表示装置であって、前記保護膜は、前記凹部を充填する充填膜と、少なくとも前記充填膜表面の前記凹部に位置する部分に形成された無機膜とを有し、前記第一のパネルの前記凹部が形成された面は、前記充填膜を充填する前よりも、前記充填膜を充填した後の方が平坦にされた表示装置である。
本発明は前記表示装置であって、前記無機膜はダイヤモンドライクカーボンと、AlNのいずれか一方を主成分とする前記表示装置である。
本発明は前記表示装置であって、前記保護膜は、前記無機膜表面に形成された樹脂膜を有し、前記第二のパネルの表面と、前記第一のパネルの前記無機膜が形成された面は、前記樹脂膜に密着する前記表示装置である。
本発明は前記表示装置であって、前記各発光部は、前記第一のパネルの縁よりも内側の発光領域に位置し、前記充填膜の縁は前記発光領域よりも外側で前記第一のパネルの表面に密着し、前記無機膜の縁は前記充填膜の縁よりも外側で前記第一のパネルの表面に密着し、前記樹脂膜の縁は前記無機膜の縁よりも外側で前記第一のパネルの表面に密着する前記表示装置である。
本発明は、表示装置用の製造装置であって、第一、第二の成膜室と、前記第一、第二の成膜室にそれぞれ接続された排気系と、前記第一の成膜室内部に配置された印刷ヘッドと、充填剤が配置され、前記印刷ヘッドに接続された充填剤供給系と、前記印刷ヘッドに接続された制御系と、前記第二の成膜室内部に配置された無機膜成膜装置とを有し、前記印刷ヘッドは、前記充填剤供給系から供給された前記充填剤を、前記制御系内の位置情報に従った位置に吐出するようにされ、前記第一、第二の成膜室の間は、前記第一の成膜室内から処理対象物を大気に曝さずに前記第二の成膜室内に搬送可能にされた表示装置用の製造装置である。
本発明は前記表示装置用の前記製造装置であって、前記無機膜成膜装置は、前記第二の成膜室内部に配置された第一、第二の電極を有し、前記第二の成膜室には、前記第二の成膜室の内部に炭化水素ガスを供給するガス導入系が接続され、前記第一、第二の電極間には高周波電圧が印加されるように構成された前記表示装置用の前記製造装置である。
本発明は、前記表示装置用の前記製造装置であって、前記無機膜成膜装置は、前記第二の成膜室内部に配置された無機材料のターゲットを有し、前記第二の成膜室には、前記第二の成膜室の内部にスパッタガスを供給するスパッタガス導入系が接続された前記表示装置用の前記製造装置である。
本発明は、第一、第二のパネルと、保護膜とを有し、前記第一、第二のパネルは表面を互いに対向して配置され、前記第一のパネルの表面には、凹部を有する積層膜が配置され、前記積層膜の前記凹部が位置する部分には、下部電極と有機膜と上部電極とが積層された発光部が位置し、前記保護膜は前記積層膜表面に形成された表示装置を製造する表示装置の製造方法であって、前記積層膜が形成された状態の前記第一のパネルを第一の成膜室内部に搬入し、前記第一の成膜室の内部に大気圧よりも圧力の低い印刷雰囲気を形成した状態で、前記凹部に充填剤を着弾させて充填膜を形成し、前記第一のパネルの前記凹部が形成された面を、前記充填膜が形成される前よりも平坦にした後、前記充填膜表面に無機膜を形成し、前記充填膜と前記無機膜とを有する保護膜を形成する表示装置の製造方法である。
本発明は前記表示装置の製造方法であって、前記充填膜が形成された前記第一のパネルを、第二の成膜室の内部に搬入し、前記第二の成膜室内部の第一、第二の電極間に配置し、前記第二の成膜室の内部に、炭化水素ガスを含有し、圧力が大気圧よりも低く、かつ、前記印刷雰囲気と同じかそれよりも高い反応雰囲気を形成した状態で、前記第一、第二の電極間に電圧を印加し、前記充填膜表面にダイヤモンドライクカーボンを含有する前記無機膜を形成する前記表示装置の製造方法である。
本発明は、前記表示装置の製造方法であって、前記充填膜が形成された前記第一のパネルを、第二の成膜室の内部に搬入し、前記第二の成膜室の内部に、スパッタガスを含有し、圧力が前記印刷雰囲気よりも低いスパッタ雰囲気を形成した状態で、前記第二の成膜室内部に配置されたターゲットをスパッタリングして、前記充填膜表面に前記無機膜を形成する前記表示装置の製造方法である。
本発明は、前記表示装置の製造方法であって、前記ターゲットとしてAlを含有するものを用い、化学構造中に窒素を含有する窒化ガスを、前記スパッタ雰囲気に含有させてスパッタリングし、AlNを含有する前記無機膜を形成する前記表示装置の製造方法である。
本発明は前記表示装置の製造方法であって、インクジェット法により、前記凹部に前記充填剤を着弾させる前記表示装置の製造方法である。
本発明は前記表示装置の製造方法であって、前記第一の成膜室内部の酸素と水の含有量をそれぞれ1ppm以下にして前記充填膜を形成し、前記第二の成膜室内部の酸素と水の含有量をそれぞれ1ppm以下にして前記無機膜を形成する前記表示装置の製造方法である。
本発明は、前記無機膜が形成された状態の前記第一のパネルの表面に、樹脂膜を形成した後、前記第二のパネルの表面と、前記第一のパネルの前記樹脂膜が形成された面と対面させ、前記第二のパネルを前記樹脂膜に密着させた状態で、前記樹脂膜の周囲を取り囲むリング状の封止部材によって、前記第一のパネルと貼り合わせる前記表示装置の製造方法。
本発明は、前記表示装置の製造方法であって、前記無機膜が形成された前記第一のパネルを第三の成膜室内部に配置し、前記第三の成膜室内部に、前記反応雰囲気と同じか、それよりも圧力の低い塗布雰囲気を形成した状態で、前記無機膜の表面上に樹脂液を塗布し、前記樹脂膜を形成する前記表示装置の製造方法である。
本発明は、前記表示装置の製造方法であって、前記無機膜が形成された状態の前記第一のパネルの表面に、樹脂膜を形成した後、前記第二のパネルの表面と、前記第一のパネルの前記樹脂膜が形成された面と対面させ、前記第二のパネルを前記樹脂膜に密着させた状態で、前記樹脂膜の周囲を取り囲むリング状の封止部材によって、前記第一のパネルと貼り合わせる前記表示装置の製造方法である。
本発明は前記表示装置の製造方法であって、前記無機膜が形成された前記第一のパネルを第三の成膜室内部に配置し、前記第三の成膜室内部に、大気圧よりも低く、かつ、前記スパッタ雰囲気よりも圧力の高い塗布雰囲気を形成した状態で、前記無機膜の表面上に樹脂液を塗布し、前記樹脂膜を形成する前記表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
第一、第二のパネル間の隙間は樹脂膜で充填されるので、表示装置内部に水や酸素が進入しにくい。各発光部は無機膜で覆われているので、表示装置内部に水や酸素が進入したとしても発光部には進入しない。無機膜はダイヤモンドカーボンと、AlN(窒化アルミニウム)のいずれかを主成分とする無機膜は熱伝導性が高いので、発光部が高温にならず、熱損傷を受けない。ダイヤモンドライクカーボン薄膜と、AlN薄膜は、いずれも光透過性に優れているので、トップエミッション型の表示装置に用いても、光の取り出し効率が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の表示装置の一例を説明する断面図
【図2】本発明の製造装置の第一例を説明する断面図
【図3】(a)〜(d):本発明の表示装置の製造工程を説明する断面図
【図4】本発明の製造装置の第二例を説明する断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1の符号1は本発明の表示装置の一例を示している。
この表示装置1は、第一、第二のパネル10、20を有しており、第一、第二のパネル10、20は、表面が互いに対向した状態で、リング状の封止部材22によって互いに貼り合わされている。
【0010】
第一のパネル10は第一の基板11を有している。第一の基板11の表面のうち、封止部材22のリングの内側には、複数の画素電極(下部電極)12が行列状に配置されており、ここでは、各画素電極12を覆うように有機膜14と、注入層17と、透明電極膜(上部電極)18とが積層され、画素電極12と、有機膜14と、注入層17と、透明電極膜18とを有する積層膜19が形成されている。
【0011】
ここでは、透明電極膜18は各画素電極12を覆うように形成され、その少なくとも一部は、封止部材22のリング外側に導出され、第一のパネル10表面に配置された不図示のランドに接続されている。ランドは外部回路の端子に接続可能に構成され、ランドを介して透明電極膜18に外部回路からの電圧が印加されるようになっている。
【0012】
各画素電極12は、例えば、後述するトランジスタ40(例えばTFT、薄膜トランジスタ)にそれぞれ接続されており、画素電極12を選択し、該画素電極12に接続されたトランジスタ40を導通させ、該画素電極12と透明電極膜18の間に電圧を印加すると、有機膜14のうち、該画素電極12上に位置する部分が発光する。
【0013】
注入層17はAg/Mg合金等の透明な金属膜で構成され、透明電極膜18はITO(インジウム錫酸化物)や、InZnOや、AZO(Al−ZnO)等の透明導電膜で構成されており、有機膜14から放出された光は注入層17と透明電極膜18とを通過する。
【0014】
積層膜19の表面には保護膜25が形成されており、保護膜25は、後述するように透明な膜(充填膜27、無機膜28、樹脂膜29等)で構成され、透明電極膜18を通過した光は保護膜25を通過して第二のパネル20に入射する。
【0015】
第二のパネル20は、ガラスやプラスチック等で構成された透明基板(第二の基板21)を有しており、積層膜19の画素電極12が位置する部分を発光部15とすると、第二の基板21表面の発光部15と対向する位置には、赤色、緑色、又は青色のカラーフィルター23が設けられており、第二のパネル20に入射した光はカラーフィルター23を通過し、赤色、緑色、又は青色の有色光に変換された後、外部に放出される。
【0016】
このように、表示装置1は有機膜14を発光させて光を放出するが、有機膜14に使用される有機材料(発光材料、電荷移動材料、電荷移送材料等)は水分や酸素によって化学的に変性しやすく、これら有機材料が変性すると、発光量が低下し、極端な場合は発光が起こらなくなる。
【0017】
本発明の表示装置1では、積層膜19の表面に保護膜25が形成されており、保護膜25は充填膜27と、無機膜28と、樹脂膜29とを有している。
積層膜19には、積層膜19を構成する薄膜の種類や膜厚によって厚さにばらつきがあり、発光部15が位置する部分は、トランジスタ40等が位置する部分に比べて薄く、凹部13が形成されている。充填膜27は少なくとも各発光部15上に凹部13を充填するように形成されている。
【0018】
例えば、充填膜27が発光部15上だけに形成される場合、凹部13は充填膜27で充填される前よりも後の方が浅くなり、充填膜27が発光部15とその周囲の凸部に亘って形成される場合、発光部15上の充填膜27表面から凸部上の充填膜27表面までの高さは、凹部13底面から凸部表面までの高さよりも小さくなり、いずれの場合も積層膜19表面の段差が小さくなっている。
【0019】
無機膜28は、充填膜27が凹部13を充填することで、段差が小さくなった後の積層膜19表面に、少なくとも発光部15を覆うように形成されている。
無機膜28はダイヤモンドライクカーボンを主成分とするダイヤモンドライクカーボン薄膜、又は、AlNを主成分とするAlN薄膜である。尚、本発明で主成分とは、主成分とする物質を50重量%以上含有することである。
ダイヤモンドライクカーボン薄膜とAlN薄膜は、いずれも透明性が高いだけでなく、樹脂膜等に比べて気密性が高いので、水や酸素が無機膜28を通過せず、発光部15には上方から水や酸素が進入しない。
【0020】
ここでは、無機膜28は各発光部15を覆うように連続して形成され、その縁部分が、各発光部15が配置された領域と、封止部材22のリング内周の内側で、第一のパネル10の表面に密着している。従って、発光部15には側方からも水や酸素が進入しない。
【0021】
しかも、ダイヤモンドライクカーボンとAlNはいずれも熱伝導性があるから、発光時に発光部15が発熱しても、無機膜28に伝熱されることで発光部15が高温にはならず、熱ダメージを受けない。
無機膜28は段差の大きいところに形成されると亀裂が生じやすいが、上述したように充填膜27で凹部13が充填された後に形成されるので、各発光部15は無機膜28で覆われた状態が維持される。
【0022】
また、凹部13を小さくする、もしくは無くすことで、無機膜28をカバレッジのよくないスパッタ法で形成できる。従って、スパッタ法により緻密な無機膜28が形成可能である。
【0023】
樹脂膜29は、封止部材22と第一、第二のパネル10、20で囲まれた内部空間を隙間無く充填し、封止部材22の内周面と、第二のパネル20表面と、無機膜28表面と、第一のパネル10の無機膜28から露出する部分に密着している。その内部空間に隙間が無いから、外部から大気が進入し難い。
【0024】
ここでは、充填膜27は各発光部15が位置する領域(発光領域)を全て覆い、無機膜28は充填膜27表面を全て覆い、樹脂膜29が無機膜28表面を全て覆うように形成され、充填膜27の縁は発光領域よりも外側で第一のパネル10に密着し、無機膜28の縁は充填膜27よりも外側で第一のパネル10に密着し、樹脂膜29の縁は無機膜28のよりも外側で第一のパネル10に密着している。従って、発光領域は表面及び側面が、充填膜27と、無機膜28と、樹脂膜29とで三重に覆われており、水や酸素がより進入し難い。
【0025】
次に、上述した表示装置の製造に用いられる本発明の製造装置と、本発明の表示装置1の製造方法について説明する。
<製造装置の第一例>
図2の符号5は本発明の製造装置の第一例を示しており、この製造装置5は第一〜第三の成膜室51〜53を有している。
【0026】
第一〜第三の成膜室51〜53には、それぞれ排気系69が接続されており、第一〜第三の成膜室51〜53内を排気系69で排気すると、第一〜第三の成膜室51〜53内部に大気圧(1.01325×105Pa=760Torr)よりも圧力の低い減圧雰囲気が形成されるようになっている。
【0027】
第一〜第三の成膜室51〜53は、直接、又は他の真空槽(バッファ室や搬送室等)を介して互いに接続されており、この製造装置5で処理される処理対象物は、不図示の搬送装置によって、大気に晒されることなく、第一〜第三の成膜室51〜53の間を搬送されるようになっている。
【0028】
第一の成膜室51の内部には、処理対象物が配置される印刷台55が配置されており、第一の成膜室51内部の印刷台55上方位置には印刷ヘッド56が配置されている。
【0029】
第一の成膜室51内部には不図示の搬送機構が配置されており、印刷台55に配置された処理対象物と、印刷ヘッド56は、不図示の搬送機構によって、いずれか一方又は両方が移動するように構成されている。従って、印刷ヘッド56と、処理対象物は相対的に移動する。
【0030】
第一の成膜室51の外部には充填剤供給系58と、制御系57とがそれぞれ配置されている。充填剤供給系58と制御系57は印刷ヘッド56にそれぞれ接続されており、充填剤供給系58は印刷ヘッド56に液状の充填剤を供給し、制御系57は印刷ヘッド56と処理対象物の位置関係を検出し、印刷ヘッド56のノズルが処理対象物の所望位置上に位置した時に、ノズルから充填剤を吐出させるように構成されている(インクジェット法)。
【0031】
第一の成膜室51の内部には不図示の加熱手段が設けられており、処理対象物に着弾した充填剤は加熱手段で加熱され、充填剤中の溶剤が蒸発除去される。
第二の成膜室52の内部には、無機膜成膜装置60が配置されている。第一例の製造装置5では、無機膜成膜装置60は第一、第二の電極61、62を有しており、第一、第二の電極61、62は第二の成膜室52内に配置されている。
ここでは、第一、第二の電極61、62は平板電極であり、第二の成膜室52内部に互いに平行にされた状態で水平配置され、処理対象物は第二の電極62の第一の電極61と対向する表面に配置される。
尚、処理対象物が第二の電極62上に保持されるのであれば、第一、第二の電極61、62はそれぞれ水平面から傾いていてもよい。
【0032】
第二の成膜室52の外部には、電源65と、原料ガス供給系64が配置されている。第一、第二の電極61、62はそれぞれ電源65に接続されており、原料ガス供給系64から原料ガスを供給しながら、第二の成膜室52を接地電位に接続した状態で、第一、第二の電極61、62の間に高周波電圧を印加すると、原料ガスのプラズマが発生し、処理対象物表面に原料ガスの重合物が生成される。
【0033】
尚、第一、第二の電極61、62には、一方の電極が接地電位に置かれる時に、他方の電極が接地電位に対して負又は正電圧となる高周波電圧を印加してもよいし、一方の電極が接地電位に対して負電圧に置かれる時に、他方の電極が接地電位に対して正電圧となる高周波電圧を印加してもよい。また、一方の電極を接地電位に接続した状態で、他方の電極に高周波電圧を印加してもよい。
【0034】
第三の成膜室53の内部には載置台72とスクリーン74とが配置されており、第三の成膜室53内部に搬入された処理対象物は載置台72上に配置され、スクリーン74は、スペーサー73によって、処理対象物の上方で、処理対象物と所定距離離間して配置される。
【0035】
スクリーン74の上方には、ノズル77と、押圧手段78とがそれぞれ配置されている。ノズル77は樹脂液供給系76に接続されており、樹脂液供給系76から供給される樹脂液はノズル77からスクリーン74表面に吐出される。
【0036】
押圧手段78は押圧ロールやスクイージーであって、スクリーン74上で水平方向に往復移動可能になっている。スクリーン74には不図示の貫通孔が複数形成されており、押圧手段78を往動させると、樹脂液がスクリーン74表面に広げられると共に貫通孔に入り込み、復動させると樹脂液が更に貫通孔に入り込んで、貫通孔から樹脂液が押し出され、処理対象物に向かって落下するようになっている。
【0037】
<製造方法の第一例>
次に、第一例の製造装置5を用いて本発明の表示装置を製造する工程について説明する。
先ず、第一、第三の成膜室51、53内部を予め真空排気する。ここでは、第一〜第三の成膜室51〜53にはそれぞれガス供給系68が接続されている。第一、第三の成膜室51、53の真空排気を続けながら、水と酸素の含有量がそれぞれ1ppm以下の不活性ガス(例えば乾燥N2ガス)をガス供給系68から第一、第三の成膜室51、53内部に供給し、水と酸素の含有量がそれぞれ1ppm以下であって、圧力が大気圧よりも低い減圧雰囲気(印刷雰囲気、塗布雰囲気)をそれぞれ形成する(前処理工程)。
【0038】
次に、充填膜形成工程について説明する。
図3(a)は充填膜27が形成される前の第一のパネル10を示しており、この状態では各発光部15が露出している。第一の成膜室51内の印刷雰囲気を維持しながら、図3(a)に示す状態の第一のパネル10を、第一の成膜室51内部に搬入し、印刷台55上に配置する。
【0039】
充填剤供給系58のタンクに透明樹脂が溶剤に溶解された充填剤を予め充填しておく。
制御系57に予め発光部15の位置情報を入力しておき、印刷雰囲気を維持したまま、制御系57は第一のパネル10と印刷ヘッド56を相対的に移動させ、制御系57内の位置情報に従い、各発光部15に充填剤を着弾させ、凹部13を充填剤で充填した後、加熱手段で充填剤を乾燥させて、凹部13を充填する充填膜27を形成する。
尚、制御系57には直接位置情報を入力してもよいし、既に位置情報が記憶された他の装置を接続することで、制御系57に位置情報を入力してもよい。
【0040】
尚、充填膜形成工程では、樹脂液(充填剤)が凹部13から溢れないように着弾させ、凹部13周囲の凸部が充填膜27から露出するようにしてもよい。また、充填膜形成工程では、図3(b)に示したように、樹脂液が凹部13から溢れるように着弾させ、充填膜27で凹部13周囲の凸部も覆い、各発光部15が位置する領域が連続した1枚の充填膜27で覆われるようにしてもよい。
【0041】
次に、無機膜形成工程について説明する。
ここでは、原料ガス供給系64は、CH4、C66、C22とからなる炭化水素群より選択される少なくとも1種類の原料ガスが配置された原料ガスタンクと、Arガス等不活性ガスが配置された希釈ガスタンクとを有している。
【0042】
第二の成膜室52内部を真空排気し、一旦内部を高真空にしてから、前のパネルの処理時に生成された副生成物等を排出した後、ガス供給系68から不活性ガスと希釈ガスとを導入すると共に、原料ガス供給系64から原料ガスを導入し、圧力が大気圧よりも低く、かつ、水と酸素の含有量がそれぞれ1ppm以下の反応雰囲気を形成しておく。
【0043】
反応雰囲気を維持しながら、充填膜27が形成された状態の第一のパネル10を第二の成膜室52の内部に搬入し、第二の電極62表面に配置する。
第一のパネル10上に不図示のマスクを配置し、第一のパネル10の縁部分をマスクで覆い、少なくとも発光部15が配置された領域をマスクの貫通孔内に露出させて、第一、第二の電極61、62間に高周波電圧を印加すると、各発光部15上の樹脂膜27表面には炭化水素の重合物(ダイヤモンドライクカーボン)からなる無機膜28が成長する(図3(c))。
【0044】
第一例の製造方法と、後述する第二例の製造方法の無機膜形成工程では、マスクの貫通孔内に、充填膜27全部と、充填膜27の周囲を露出させ、充填膜27の表面全部と、第一のパネル10表面の充填膜27周囲の部分を覆う無機膜28を形成した。
【0045】
上述したように、発光部15が位置する凹部13は充填膜27で充填され、周囲の凸部との段差が小さくなっているので、発光部15上に成長する無機膜28と、その周囲に成長する無機膜28とが分断せず、各発光部15は連続した一枚の無機膜28で覆われる。無機膜28の厚さが所定膜厚に達したところで、第一、第二の電極61、62の電圧印加を停止する。
【0046】
次に、樹脂膜形成工程について説明する。
上述したように、第三の成膜室53の内部には、予め大気圧よりも低圧の塗布雰囲気が形成されおり、塗布雰囲気を維持しながら、無機膜28が形成された状態の第一のパネル10を、第三の成膜室53内部に搬入し、載置台72上に水平配置し、第一のパネル10の表面上にスクリーン74を水平配置する。
【0047】
塗布雰囲気の圧力は大気圧よりも低いから、塗布雰囲気を維持しながら押圧手段78を往動させると、樹脂液がスクリーン74上で広がる時に脱泡され、樹脂液中に残留する空気が除去される。
【0048】
従って、スクリーン74の貫通孔には空気が除去された後の樹脂液が入り込み、押圧手段78を復動させる時に、その樹脂液が貫通孔から第一のパネル10表面に落下する。
【0049】
スクリーン74は金属板等柔軟性の低い材質で構成されており、その膜厚は押圧手段78で押圧されても曲がらないようにされている。従って、スクリーン74の第一の基板11表面からの高さは、予め決められた高さに維持される。
【0050】
スクリーン74の貫通孔から落下する樹脂液は、第一のパネル10とスクリーン74の間の隙間に充填されるから、第一のパネル10の表面に段差があっても、その段差は樹脂液で埋められ、第一の基板11から表面までの高さが均一な塗布層が形成される。
【0051】
ここでは樹脂液はアクリレート等の光重合性樹脂を含有しており、塗布層に紫外線を照射すると光重合性樹脂が重合して塗布層が硬化し、第一の基板11から表面までの高さが均一な樹脂膜29が形成される(図3(d))。
【0052】
上述したように、第一〜第三の成膜室51〜53間で処理対象物(第一のパネル)を搬入する間、第一のパネル10は大気に晒されず、しかも、印刷雰囲気と、反応雰囲気と、塗布雰囲気はそれぞれ酸素と水が1ppm以下しか含有されていないので、充填膜27と、無機膜28と、樹脂膜29とからなる保護膜25には、酸素や水が混入しない。
【0053】
次に、封止工程について説明する。
保護膜25が形成された状態の第一のパネル10を、第三の成膜室53から取り出し、製造装置5外部に搬出する。
樹脂膜29が形成された状態の第一のパネル10の表面に、樹脂膜29の外周に沿って、樹脂膜29の側面と密着するように、リング状の封止部材を配置する。
【0054】
封止部材のリングの厚みを、第一の基板11表面から樹脂膜29表面までの高さと同じか、それよりも厚くしておき、第二のパネル20を第一のパネル10上に配置し、カラーフィルタ23が所定の発光部15と対面するよう位置合わせした後、下降させると、第二のパネル20が封止部材に接触する。
【0055】
封止部材はガラスや樹脂等の接着材料で構成されており、第二のパネル20を押圧しながら封止部材を加熱すると、封止部材が軟化して第一、第二のパネル10、20の両方に密着する。更に、加熱押圧を続けると、押圧によって軟化した封止部材が押しつぶされ、第二のパネル20が樹脂膜29に密着し、第一、第二のパネル10、20と、封止部材とで取り囲まれた空間が、樹脂膜29で隙間無く充填される。次いで封止部材を冷却し、固化させると、第一、第二のパネル10、20は、封止部材によって貼り合わされ、図1に示したような表示装置1が得られる。
【0056】
第一例の製造方法と、後述する第二例の製造方法では、印刷雰囲気の圧力は、大気圧以下であれば特に限定されないが、インクジェット法で樹脂液を塗布する場合には、例えば400Torr(Paに換算すると、533.3×102Pa)程度の減圧雰囲気が望ましい。尚、本願明細書でTorrの値と、その換算値Paとが併記されている場合、Torrの値を優先する。
【0057】
無機膜28の成膜方法は特に限定されない。しかし、インクジェット法は高真空では行えないので(例えば200Torr以上)、スパッタ法のように高真空(例えば5×10-3Torr)を要求する成膜方法では、第一、第二の成膜室51、52間の圧力差が大きくなりすぎ、処理対象物を第一の成膜室51から第二の成膜室52へ直接搬入するときに発塵し、保護膜25に塵が混入する原因となる。第一、第二の成膜室51、52の間に圧力調整用のバッファ室を設ければ、この問題は回避されるが、製造装置5の構造が複雑になる。
【0058】
上述したように、第一例の製造方法では、原料ガスをプラズマ化して無機膜を形成するする。この無機膜成膜方法では、例えば、400Torr(Paに換算すると533.3×102Pa)で成膜可能なので、スパッタ法に比べて第一、第二の成膜室51、52間の圧力差が小さくなり、バッファ室を設けず、第一、第二の成膜室51、52を直接接続しても発塵が起こらない。
【0059】
塗布雰囲気の圧力も大気圧以下であれば特に限定されないが、樹脂液の脱泡を効率良く行うためには、250Torr以上760Torr以下、Paに換算すると、333.3×102Pa以上1013.2×102Pa以下である。
【0060】
原料ガスをプラズマ化させる無機膜成膜方法であれば、第二、第三の成膜室52、53間の圧力差が小さくなるので、第二、第三の成膜室52、53を直接接続しても保護膜25に塵が混入しない。
次に、本発明の第二例の製造装置と、第二例の製造方法について説明する。
【0061】
<第二例の製造装置>
図4の符号6は第二例の製造装置を示している。第二例の製造装置6は、無機膜形成装置90と、第二の成膜室52に接続されたガス供給系94が異なる以外は、上記第一例の製造装置5と同じ構成を有しており、第一例の製造装置5と同じ部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
第二例の製造装置6の無機膜形成装置90はターゲット91を有しており、該ターゲット91は第二の成膜室52の内部に配置されている。
【0062】
第二の成膜室52の外部には、電源95と、ガス供給系94が配置されており、ターゲット91は電源95に接続されている。第二例の製造装置6では、このガス供給系94は、内部にスパッタガスが配置されたスパッタガス供給系である。
排気系69によって第二の成膜室52内部を真空排気し、スパッタガス供給系94から第二の成膜室52内部にスパッタガスを供給しながら、第二の成膜室52を接地電位に置いた状態で、電源95からターゲット91に電圧を印加すると、ターゲット91がスパッタリングされるように構成されている。
【0063】
第二例の製造装置6では、第二の成膜室52は不図示の真空槽(バッファ室)を介して第一、第三の成膜室51、53にそれぞれ接続されている。
第二の成膜室52と、第一、第三の成膜室51、53の間の圧力差が大きくても、第二の成膜室52の内部雰囲気が、第一、第三の成膜室51、53に直接接続されないから、発塵が起こらない。
次に、上記第二例の製造装置6を用いた第二例の製造方法について説明する。
【0064】
<第二例の製造方法>
第二例の製造方法は、第一例の製造方法と、前処理工程と、充填膜形成工程が同じであり、上述した工程で、第一のパネル10の表面上に充填膜27を形成する。
次に、第二例の製造方法の無機膜形成工程を説明する。
【0065】
ここでは、スパッタガス供給系94は、ArガスやNeガスのようなスパッタガスが配置されたスパッタガスタンクと、反応ガス(ここではN2からなる窒化ガス)が配置された反応ガスタンクとを有している。
【0066】
第二の成膜室52内部を排気系69で真空排気して真空雰囲気を形成し、該真空雰囲気を維持しながら、充填膜27が形成された状態の第一のパネル10を第二の成膜室52内部に搬入する。
ここでは、第二の成膜室52内部に基板ホルダ92が配置されており、第二の成膜室52内部に搬入した第一のパネル10を基板ホルダ92上に配置し、第一のパネル10の充填膜27が形成された側の面をターゲット91と対面させる。
【0067】
第二の成膜室52内の真空排気を続けながら、スパッタガス供給系94からスパッタガスと反応ガスを供給し、印刷雰囲気よりも圧力の低いスパッタ雰囲気を形成する。例えば、印刷雰囲気の圧力は400Torr(Paに換算すると533.3×102Pa)、スパッタ雰囲気の圧力は、5×10-3Torr(Paに換算すると6.67×10-1Pa)である。尚、本願明細書でTorrの値と、その換算値Paとが併記されている場合はTorrの値を優先する。
【0068】
第一のパネル10上に不図示のマスクを配置し、第一のパネル10の縁部分をマスクで覆い、少なくとも発光部15が配置された領域をマスクの貫通孔内に露出させた状態で、スパッタ雰囲気を維持しながら、ターゲット91をスパッタリングする。
【0069】
ターゲット91はAlを主成分とするAlターゲットであり、反応ガスは化学構造中に窒素原子を含む窒化ガス(例えばN2)であるので、各発光部15上の充填膜27表面には窒化アルミニウム(AlN)からなる無機膜28が成長する(図3(c))。
【0070】
ここでは、マスクの貫通孔内に、充填膜27全部と、充填膜27の周囲を露出させてスパッタリングを行い、充填膜27の表面全部と、第一のパネル10表面の充填膜27周囲の部分を覆う無機膜28を形成した。
【0071】
スパッタリングは、CVDや蒸着等他の成膜方法に比べて、成膜対象物に段差があると、形成される膜が分断しやすい。
上述したように、発光部15が位置する凹部13は充填膜27で充填され、周囲の凸部との段差が小さくなっているので、発光部15上に成長する無機膜28と、その周囲に成長する無機膜28とが分断せず、各発光部15は連続した一枚の無機膜28で覆われる。無機膜28の厚さが所定膜厚に達したところで、ターゲット91の電圧印加を停止する。
【0072】
次に、上記第一例の製造方法と同じ条件で、樹脂膜形成工程を行い、樹脂膜を形成する。
尚、スパッタ雰囲気は高真空であり、樹脂膜を形成する際の塗布雰囲気をスパッタ雰囲気と同程度の高真空にすると、樹脂液供給系76内部の圧力調整が困難になるから、塗布雰囲気はスパッタ雰囲気の圧力よりは高く、かつ、大気圧よりも低くする。
樹脂膜を形成後、第一例の製造方法の封止工程と同じ方法で第一、第二のパネルを封止すれば、表示装置1が得られる。
【0073】
上述したように、第二例の製造方法ではスパッタ雰囲気は、5×10-3Torr程度の高真空である。これに対し、印刷雰囲気の圧力は200Torr以上大気圧以下(例えば400Torr程度)であり、塗布雰囲気の圧力は、250Torr以上760Torr以下(Paに換算すると、333.3×102Pa以上1013.2×102Pa以下)である。
【0074】
言い換えれば、第二の成膜室52の内部圧力は、第一、第三の成膜室51、53の内部圧力に比べて非常に低く、第二の成膜室52を、第一、第三の成膜室51、53に直接接続すると、圧力差で発塵する虞がある。
第二の成膜室52を第一、第三の成膜室51、53に接続する前に、第二の成膜室52の内部圧力を上げるか、第一、第三の成膜室51、53の内部圧力を下げて、圧力差を小さくすれば、発塵は抑えられるが、圧力調整に時間がかかり、製造に要する時間が長くなる。
【0075】
発塵を抑え、かつ、製造時間を短縮するためには、第一、第二の成膜室51、52の間と、第二、第三の成膜室52、53の間にそれぞれ他の真空槽(バッファ室)を配置する。
処理対象物(第一のパネル)を第一の成膜室51から第二の成膜室52へ搬送する際は、第一、第二の成膜室51、52間のバッファ室を、第二の成膜室52から遮断した状態で、該バッファ室内に、第一の成膜室51の内部圧力と略等しい圧力の内部雰囲気を形成し、第一のパネル10を第一の成膜室51からバッファ室に搬入する。
【0076】
第一の成膜室51をバッファ室から遮断し、バッファ室を真空排気して、その内部圧力を第二の成膜室52の内部圧力と略等しい圧力まで低下させたら、バッファ室を第二の成膜室52に接続し、第一のパネル10をバッファ室から第二の成膜室52へ搬入する。
【0077】
第一のパネル10を第二の成膜室52から第三の成膜室53へ搬送する際には、第二、第三の成膜室52、53間のバッファ室を、第三の成膜室53から遮断した状態で、該バッファ室内に、第二の成膜室52の内部圧力と略等しい圧力の内部雰囲気を形成し、第一のパネル10を第二の成膜室52からバッファ室に搬入する。
【0078】
第二の成膜室52をバッファ室から遮断し、乾燥不活性ガス(酸素と水の含有量がそれぞれ1ppm以下)の導入等により、バッファ室内の圧力を上げ、第三の成膜室53の内部圧力と略等し圧力にしてから、バッファ室を第三の成膜室53に接続し、第一のパネル10をバッファ室から第三の成膜室53へ搬入する。
このように、第一、第二の成膜室51、52間の搬送と、第二、第三の成膜室52、53間の搬送を、バッファ室を介して行えば、発塵が抑えられ、第一のパネル10が汚染されない。
【0079】
尚、第二例の製造方法で、無機膜28の成膜方法は特に限定されないが、無機膜28として窒化アルミニウム薄膜を成膜する場合にはスパッタ法が望ましい。また、スパッタ雰囲気に反応ガスを供給せずに、AlNターゲットをスパッタリングして無機膜28を成膜することもできる。
【0080】
また、第二例の製造方法では、無機膜28の構成材料はAlNに限定されない。Alと、AlNと、AlN以外の金属化合物(酸化物、窒化物を含む)と、金属とからなる群より選択されるいずれか1種類以上の無機材料を含むターゲット91をスパッタリングし、Alと、AlNと、AlN以外の金属化合物と、金属とからなる群より選択されるいずれか1種類以上の無機材料を含有する無機膜28を形成することができる。
【0081】
AlNを成膜する際の反応ガスは、N2に限定されず、化学構造中に窒素を含有する窒化ガスを広く用いることができる。N2以外の窒化ガスとしては、例えばアンモニアがある。
<その他の実施例>
【0082】
第一、第二例の製造方法において、充填膜27を形成する際の、充填剤の塗布方法は特に限定されないが、各発光部15に充填剤を正確に塗布するためには、インクジェット法が最も望ましい。インクジェット法で充填剤を塗布する場合には、樹脂液の粘度が高すぎるとノズル詰まりが起こるので、その粘度は10cP(センチポアズ)以下が望ましい。
【0083】
第一、第二例の製造方法で、充填剤に含有させる樹脂は特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光重合性樹脂等種々のものを用いることができる。充填剤に熱硬化性樹脂を含有させる場合には、着弾した充填剤を、熱硬化性樹脂が重合するように加熱すれば、熱硬化性樹脂の重合物を含有する充填膜27が形成される。また、光重合性樹脂を含有する場合には、充填剤を着弾させ、溶剤を蒸発除去した後、光を照射すれば、光重合性樹脂の重合物を含有する充填膜27が得られる。
【0084】
また、第一、第二の製造方法には、無機材料を含有する充填剤を用いることもできる。そのような無機材料として、捕水性のある捕水剤を用いれば、充填膜27は段差を小さくするだけでなく、表示装置1に進入する水分を捕獲するので、有機膜14がよりダメージを受け難くなる。捕水剤としては、例えば、下記化学式(1)に示すアルミニウム金属錯体がある。
【0085】
【化1】

【0086】
このアルミニウム金属錯体は、水を化学的に吸着し、6員環を開環して、3(R−O−Al(OH)2)を生成することで捕水する。このアルミニウム金属錯体は捕水性に優れているだけでなく、膜化したときの透明性に優れているのでトップエミッション型の表示装置1に特に適している。
【0087】
上記捕水剤を含有する充填剤としては、上記アルミニウム金属錯体を炭化水素系有機溶剤に溶解させた、双葉電子工業(株)社製の商品名「OleDry」がある。
また、第一、第二例の製造方法の充填剤として、上述したような樹脂と、無機材料の捕水剤の両方を含有するものを用い、樹脂と捕水剤の両方を含有する充填膜27を形成することもできる。
【0088】
第一、第二例の製造方法では、樹脂膜形成工程の樹脂液の塗布方法も特に限定されないが、第一、第二のパネル10、20間の隙間を充填する程多量の樹脂液を塗布するためには、インクジェット法よりも上述したスクリーンを用いたスクリーン印刷法が望ましい。スクリーン印刷法に適した樹脂液の粘度は、インクジェット法よりも高く、一例を述べると、100,000cpである。
【0089】
第一、第二例の製造方法の樹脂液に含有させる樹脂は特に限定されず、充填剤と同様に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂も用いることができる。樹脂液が熱硬化性樹脂を含有する場合には、熱硬化性樹脂が重合するように塗布層を加熱すれば、熱硬化性樹脂の重合物を含有する樹脂膜29が形成される。
【0090】
第一、第二例の製造方法で、塗布層を固化する工程は、樹脂液を塗布後、封止部材22を配置するまでに行ってもよいし、第一、第二のパネル10、20を封止部材22で貼り合わせる際に同時に行ってもよい。塗布層を固化する工程を、第一、第二のパネル10、20を封止部材22で貼り合わせた後に行っても良いが、封止部材22で貼り合わせた後に固化させると、塗布層から蒸発した溶剤が第一、第二のパネル10、20間に封止され、有機膜14が溶剤でダメージを受ける。従って、塗布層を固化する工程は、第一、第二のパネル10、20を貼りあわせる前に行うことが望ましい。
【0091】
以上は、有機膜14から第二のパネル20側に放出された光を外部に放出させるトップエミッション型の表示装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、本願の表示装置は、第一の基板11をガラス基板やプラスチック基板等の透明基板で構成し、画素電極12をITOやAZO等の透明電極で構成し、有機膜14から第一の基板11側に放出された光を、画素電極12と第一の基板11とを透過させて外部に放出させるボトムエミッション型の表示装置であってもよい。ボトムエミッション型の表示装置の場合には、充填膜27と、無機膜28と、樹脂膜29は不透明材料で構成してもよい。
【0092】
この場合、カラーフィルターは第一の基板11に設けてもよい。また、カラーフィルターを設けず、各発光部15の有機膜に着色剤を添加して、有機膜で着色された光を放出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1……表示装置 5、6……製造装置 10……第一のパネル 12……下部電極(画素電極) 13……凹部 14……有機膜 15……発光部 18……上部電極 20……第二のパネル 25……保護膜 27……充填膜 28……無機膜 29……樹脂膜 51〜53……第一〜第三の成膜室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一、第二のパネルと、保護膜とを有し、
前記第一、第二のパネルは表面を互いに対向して配置され、
前記第一のパネルの表面には、凹部を有する積層膜が配置され、
前記積層膜の前記凹部が位置する部分には、下部電極と有機膜と上部電極とが積層された発光部が位置し、
前記保護膜は前記積層膜表面に形成された表示装置であって、
前記保護膜は、前記凹部を充填する充填膜と、前記充填膜表面の上に形成された無機膜と、前記無機膜の上に形成された樹脂膜と、を有し、
前記第一のパネルの前記凹部が形成された面は、前記充填膜を充填する前よりも、前記充填膜を充填した後の方が平坦にされ、
前記無機膜はダイヤモンドライクカーボンと、AlNのいずれか一方を主成分とする
表示装置。
【請求項2】
前記各発光部は、前記第一のパネルの縁よりも内側の発光領域に位置し、
前記充填膜の縁は前記発光領域よりも外側で前記第一のパネルの表面に密着し、
前記無機膜の縁は前記充填膜の縁よりも外側で前記第一のパネルの表面に密着し、
前記樹脂膜の縁は前記無機膜の縁よりも外側で前記第一のパネルの表面に密着する請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
第一、第二、第三の成膜室と、
前記第一、第二、第三の成膜室にそれぞれ接続された排気系と、
前記第一の成膜室内部に配置された充填膜形成装置と、
前記第二の成膜室内部に配置された無機膜成膜装置と、
前記第三の成膜室内部に配置された樹脂膜形成装置と、を有し、
前記充填膜形成装置は、インクジェット法により充填剤を吐出する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドに充填剤を供給する充填剤供給系と、前記印刷ヘッドに接続された制御系と、を有し、
前記印刷ヘッドは、前記充填剤供給系から供給された前記充填剤を、前記制御系内の位置情報に従った位置に吐出し、前記位置情報は処理対象物の凹部の位置を示す情報を含み、
前記第一、第二、第三の成膜室は、それぞれ減圧雰囲気にされ、前記第一、第二、第三の成膜室の間は、前記処理対象物を大気に曝さずに搬送可能にされた、
表示装置用の製造装置。
【請求項4】
前記無機膜成膜装置は、前記第二の成膜室内部に配置された第一、第二の電極を有し、
前記第二の成膜室には、前記第二の成膜室の内部に炭化水素ガスを供給するガス導入系が接続され、
前記第一、第二の電極間には高周波電圧が印加されるように構成された請求項3記載の表示装置用の製造装置。
【請求項5】
前記無機膜成膜装置は、前記第二の成膜室内部に配置された無機材料のターゲットを有し、
前記第二の成膜室には、前記第二の成膜室の内部にスパッタガスを供給するスパッタガス導入系が接続された請求項3記載の表示装置用の製造装置。
【請求項6】
前記第三の成膜室には、スクリーンと、前記スクリーン上に樹脂を供給する樹脂液供給手段と、前記スクリーン上の樹脂をスクリーンを通過するように押圧する押圧手段を有している請求項3記載の表示装置用の製造装置。
【請求項7】
第一、第二のパネルと、保護膜とを有し、
前記第一、第二のパネルは表面を互いに対向して配置され、
前記第一のパネルの表面には、凹部を有する積層膜が配置され、
前記積層膜の前記凹部が位置する部分には、下部電極と有機膜と上部電極とが積層された発光部が位置し、
前記保護膜は充填膜と無機膜と樹脂膜を有し、前記保護膜は前記積層膜表面に形成された表示装置を製造する表示装置の製造方法であって、
前記積層膜が形成された状態の前記第一のパネルを第一の成膜室の内部に搬入し、前記第一の成膜室の内部に大気圧よりも圧力の低い印刷雰囲気を形成した状態で、インクジェット法により前記凹部に充填剤を着弾させて充填膜を形成し、前記第一のパネルの前記凹部が形成された面を、前記充填膜が形成される前よりも平坦にする充填膜形成工程と、
前記充填膜が形成された状態の前記第一のパネルを第二の成膜室の内部に搬入し、前記第二の成膜室の内部に大気圧よりも圧力の低い成膜雰囲気を形成した状態で、前記充填膜表面に前記無機膜を形成する無機膜形成工程と、
前記無機膜が形成された状態の前記第一のパネルを第三の成膜室の内部に搬入し、前記第三の成膜室の内部に大気圧よりも圧力の低い印刷雰囲気を形成した状態で、前記無機膜上にスクリーン印刷法により前記樹脂膜を形成する樹脂膜形成工程と、を含む、
表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記無機膜形成工程は、
前記充填膜が形成された前記第一のパネルを、第二の成膜室の内部に搬入し、前記第二の成膜室の内部の第一、第二の電極間に配置し、
前記第二の成膜室の内部に、炭化水素ガスを含有し、圧力が大気圧よりも低く、かつ、前記印刷雰囲気と同じかそれよりも高い反応雰囲気を形成した状態で、前記第一、第二の電極間に電圧を印加し、前記充填膜の表面にダイヤモンドライクカーボンを含有する前記無機膜を形成する請求項7記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記無機膜形成工程は、
前記充填膜が形成された前記第一のパネルを、第二の成膜室の内部に搬入し、
前記第二の成膜室の内部に、スパッタガスを含有し、圧力が前記印刷雰囲気よりも低いスパッタ雰囲気を形成した状態で、前記第二の成膜室の内部に配置されたターゲットをスパッタリングして、前記充填膜の表面に前記無機膜を形成する請求項7記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記ターゲットとしてAlを含有するものを用い、化学構造中に窒素を含有する窒化ガスを、前記スパッタ雰囲気に含有させてスパッタリングし、AlNを含有する前記無機膜を形成する請求項9記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記第一の成膜室の内部の酸素と水の含有量をそれぞれ1ppm以下にして前記充填膜を形成し、
前記第二の成膜室の内部の酸素と水の含有量をそれぞれ1ppm以下にして前記無機膜を形成する請求項7記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記樹脂膜形成工程の後、
前記第二のパネルの表面と、前記第一のパネルの前記樹脂膜が形成された面と対面させ、
前記第二のパネルを前記樹脂膜に密着させた状態で、前記樹脂膜の周囲を取り囲むリング状の封止部材によって、前記第一のパネルと貼り合わせる請求項7乃至請求項11のいずれか1項記載の表示装置の製造方法。
【請求項13】
第一、第二のパネルと、保護膜とを有し、
前記第一、第二のパネルは表面を互いに対向して配置され、
前記第一のパネルの表面には、凹部を有する積層膜が配置され、
前記積層膜の前記凹部が位置する部分には、下部電極と有機膜と上部電極とが積層された発光部が位置し、
前記保護膜は前記積層膜表面に形成された表示装置であって、
前記保護膜は、前記凹部を充填する充填膜と、少なくとも前記充填膜表面の前記凹部に位置する部分に形成された無機膜とを有し、
前記第一のパネルの前記凹部が形成された面は、前記充填膜を充填する前よりも、前記充填膜を充填した後の方が平坦にされた表示装置。
【請求項14】
前記無機膜はダイヤモンドライクカーボンと、AlNのいずれか一方を主成分とする請求項13記載の表示装置。
【請求項15】
前記保護膜は、前記無機膜表面に形成された樹脂膜を有し、
前記第二のパネルの表面と、前記第一のパネルの前記無機膜が形成された面は、前記樹脂膜に密着する請求項13記載の表示装置。
【請求項16】
前記各発光部は、前記第一のパネルの縁よりも内側の発光領域に位置し、
前記充填膜の縁は前記発光領域よりも外側で前記第一のパネルの表面に密着し、
前記無機膜の縁は前記充填膜の縁よりも外側で前記第一のパネルの表面に密着し、
前記樹脂膜の縁は前記無機膜の縁よりも外側で前記第一のパネルの表面に密着する請求項13乃至請求項15のいずれか1項記載の表示装置。
【請求項17】
第一、第二の成膜室と、
前記第一、第二の成膜室にそれぞれ接続された排気系と、
前記第一の成膜室内部に配置された印刷ヘッドと、
充填剤が配置され、前記印刷ヘッドに接続された充填剤供給系と、
前記印刷ヘッドに接続された制御系と、
前記第二の成膜室内部に配置された無機膜成膜装置とを有し、
前記印刷ヘッドは、前記充填剤供給系から供給された前記充填剤を、前記制御系内の位置情報に従った位置に吐出するようにされ、
前記第一、第二の成膜室の間は、前記第一の成膜室内から処理対象物を大気に曝さずに前記第二の成膜室内に搬送可能にされた表示装置用の製造装置。
【請求項18】
前記無機膜成膜装置は、前記第二の成膜室内部に配置された第一、第二の電極を有し、
前記第二の成膜室には、前記第二の成膜室の内部に炭化水素ガスを供給するガス導入系が接続され、
前記第一、第二の電極間には高周波電圧が印加されるように構成された請求項17記載の表示装置用の製造装置。
【請求項19】
前記無機膜成膜装置は、前記第二の成膜室内部に配置された無機材料のターゲットを有し、
前記第二の成膜室には、前記第二の成膜室の内部にスパッタガスを供給するスパッタガス導入系が接続された請求項17記載の表示装置用の製造装置。
【請求項20】
第一、第二のパネルと、保護膜とを有し、
前記第一、第二のパネルは表面を互いに対向して配置され、
前記第一のパネルの表面には、凹部を有する積層膜が配置され、
前記積層膜の前記凹部が位置する部分には、下部電極と有機膜と上部電極とが積層された発光部が位置し、
前記保護膜は前記積層膜表面に形成された表示装置を製造する表示装置の製造方法であって、
前記積層膜が形成された状態の前記第一のパネルを第一の成膜室内部に搬入し、前記第一の成膜室の内部に大気圧よりも圧力の低い印刷雰囲気を形成した状態で、前記凹部に充填剤を着弾させて充填膜を形成し、前記第一のパネルの前記凹部が形成された面を、前記充填膜が形成される前よりも平坦にした後、
前記充填膜表面に無機膜を形成し、前記充填膜と前記無機膜とを有する保護膜を形成する表示装置の製造方法。
【請求項21】
前記充填膜が形成された前記第一のパネルを、第二の成膜室の内部に搬入し、前記第二の成膜室内部の第一、第二の電極間に配置し、
前記第二の成膜室の内部に、炭化水素ガスを含有し、圧力が大気圧よりも低く、かつ、前記印刷雰囲気と同じかそれよりも高い反応雰囲気を形成した状態で、前記第一、第二の電極間に電圧を印加し、前記充填膜表面にダイヤモンドライクカーボンを含有する前記無機膜を形成する請求項20記載の表示装置の製造方法。
【請求項22】
前記充填膜が形成された前記第一のパネルを、第二の成膜室の内部に搬入し、
前記第二の成膜室の内部に、スパッタガスを含有し、圧力が前記印刷雰囲気よりも低いスパッタ雰囲気を形成した状態で、前記第二の成膜室内部に配置されたターゲットをスパッタリングして、前記充填膜表面に前記無機膜を形成する請求項20記載の表示装置の製造方法。
【請求項23】
前記ターゲットとしてAlを含有するものを用い、化学構造中に窒素を含有する窒化ガスを、前記スパッタ雰囲気に含有させてスパッタリングし、AlNを含有する前記無機膜を形成する請求項22記載の表示装置の製造方法。
【請求項24】
インクジェット法により、前記凹部に前記充填剤を着弾させる請求項20記載の表示装置の製造方法。
【請求項25】
前記第一の成膜室内部の酸素と水の含有量をそれぞれ1ppm以下にして前記充填膜を形成し、
前記第二の成膜室内部の酸素と水の含有量をそれぞれ1ppm以下にして前記無機膜を形成する請求項20記載の表示装置の製造方法。
【請求項26】
前記無機膜が形成された状態の前記第一のパネルの表面に、樹脂膜を形成した後、
前記第二のパネルの表面と、前記第一のパネルの前記樹脂膜が形成された面と対面させ、
前記第二のパネルを前記樹脂膜に密着させた状態で、前記樹脂膜の周囲を取り囲むリング状の封止部材によって、前記第一のパネルと貼り合わせる請求項21記載の表示装置の製造方法。
【請求項27】
前記無機膜が形成された前記第一のパネルを第三の成膜室内部に配置し、
前記第三の成膜室内部に、前記反応雰囲気と同じか、それよりも圧力の低い塗布雰囲気を形成した状態で、
前記無機膜の表面上に樹脂液を塗布し、前記樹脂膜を形成する請求項26記載の表示装置の製造方法。
【請求項28】
前記無機膜が形成された状態の前記第一のパネルの表面に、樹脂膜を形成した後、
前記第二のパネルの表面と、前記第一のパネルの前記樹脂膜が形成された面と対面させ、
前記第二のパネルを前記樹脂膜に密着させた状態で、前記樹脂膜の周囲を取り囲むリング状の封止部材によって、前記第一のパネルと貼り合わせる請求項22記載の表示装置の製造方法。
【請求項29】
前記無機膜が形成された前記第一のパネルを第三の成膜室内部に配置し、
前記第三の成膜室内部に、大気圧よりも低く、かつ、前記スパッタ雰囲気よりも圧力の高い塗布雰囲気を形成した状態で、
前記無機膜の表面上に樹脂液を塗布し、前記樹脂膜を形成する請求項28記載の表示装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−109248(P2012−109248A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−265038(P2011−265038)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【分割の表示】特願2009−500158(P2009−500158)の分割
【原出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】