説明

表面を洗浄する方法

板状物品の表面を洗浄する方法が開示される。この方法は、液体が分配ノズルを通して表面上に連続的液体流状で分配されるようにして表面を自由流洗浄で処理し、そして液体が噴霧ノズルを通して表面に対して小滴の形態で向けられるようにして表面を噴霧洗浄で処理する段階を含んでなる。表面は自由流洗浄段階前に噴霧洗浄段階でそして自由流洗浄段階後に噴霧洗浄段階で処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は板状物品の表面を洗浄する方法に関する。
【0002】
そのような板状物品はディスク状物品、例えば半導体ウエファーまたはコンパクトディスク並びに多辺形物品、例えば平らなパネルディスプレイ、でありうる。そのような洗浄方法は典型的には半導体ウエファーの構造化された表面から粒子を除去するために使用される。
【背景技術】
【0003】
表面からの粒子除去のこれまでに解決されていないジレンマを以下に述べる。粒子は典型的には表面に付着しそして機械的エネルギーによってのみ除去されうる。表面に加えられる機械的エネルギーが高くなればなるほど、除去効率は良くなる。負の影響は、粒子除去方法で使用される機械的エネルギーが高くなればなるほど、より大きい応力が表面に適用され、それは他方では影響を受けなくなることである。従って、粒子除去効率は特定の除去技術に関してはより大きな損傷を表面に受けずには改良できないと考えられていた。
【0004】
しかしながら、半導体構造に関すると損傷は許容できない。従って粒子除去のための機械的撹拌は目下のところ問題であり、それは構造がより小さくなる時に増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故、本発明の目的は板状物品(特に構造化された半導体ウエファー)の表面を有意に損傷せずに粒子を効果的に除去しうる洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
液体が分配ノズルを通して表面上に連続的液体流状で分配されるようにして表面を自由流洗浄で処理し、液体が噴霧ノズルを通して表面に対して小滴の形態で向けられるようにして表面を噴霧洗浄で処理する段階を含んでなる板状物品の表面を洗浄する方法であって、表面が自由流洗浄段階前に噴霧洗浄段階でそして自由流洗浄段階後に噴霧洗浄段階で処理される方法を提供することにより、本発明は目的をかなえる。
【0007】
噴霧の小滴は0.001mm−0.1mm(1−100μm)の間の平均直径(D30)を有する。この使用については平均直径(D30)は容量分布に基づきそして以下の通りにして計算される:D30=(ΣD/ΣN(1/3)。
【0008】
1つの態様では、自由流洗浄段階およびその後の噴霧洗浄段階の系列が少なくとも2回行われる。
【0009】
有利には、自由流洗浄段階およびその後の噴霧洗浄段階の系列が少なくとも3回行われる。
【0010】
別の態様では、自由流洗浄段階の少なくとも1つはアルカリ性洗浄液体を使用しそして/または噴霧洗浄段階Bはオゾン、過酸化水素並びにオゾンおよび過酸化水素の混合物の群から選択される酸化剤を含んでなる。
【0011】
好ましくは、洗浄液体はアンモニアを含んでなる。有用な洗浄液体は例えば80〜99.8重量%の水含有量を有する過酸化水素およびアンモニアを含む水溶液である。
【0012】
別の態様では、噴霧洗浄段階の少なくとも1つは水、有機溶媒アルカリ性組成物、および酸性組成物を含んでなる群から選択される洗浄液体を使用する。
【0013】
自由流洗浄段階および噴霧洗浄段階が5秒より長くなく臨機に重複する時には、これは洗浄段階中に表面の湿潤性を保つことを助けるが撥ねを制限をすることも助ける。
【0014】
少なくとも1つの洗浄段階中に板状物品が回転される場合には、洗浄はウエファーを越えて均一に行われる。或いは、板状物品を不動状態に保ちながらノズル(噴霧ノズルおよび/または自由流ノズル)がウエファーを越えて走査することもできる。
【0015】
有利には、噴霧洗浄段階は無空気噴霧ノズル、内部混合のある二相ノズル、または外部混合のある二相ノズルの群から選択される噴霧ノズルを使用する。
【0016】
好ましくは、噴霧洗浄段階は外部混合のある二相ノズルを使用する。
【0017】
1つの態様では、噴霧ノズルのオリフィスは0.1cm〜10cm、好ましくは0.3cm〜5cm、の範囲にある板状物品の表面までの距離dのところに置かれる。
【0018】
別の態様では、噴霧洗浄段階の少なくとも2つは各噴霧洗浄段階に関して5秒〜45秒、好ましくは8秒〜30秒、の期間にわたり行われる。
【0019】
さらに別の態様では、自由流洗浄段階の少なくとも2つは各自由流洗浄段階に関して5秒〜45秒、好ましくは8秒〜30秒、の期間にわたり行われる。
【0020】
好ましくは、例えば板状物品を回転しながら、噴霧ノズルは板状物品を越えて横方向に走査する。
【0021】
ノズルが板状物品を越えて走査して板状物品の表面の各点が同一期間にわたり処理されるようにするために、速度、幅および幅に対する速度の誘導の如き横方向運動のパラメーターを調節しうる。
【0022】
有利には、板状物品は噴霧洗浄中に回転しそして噴霧ノズルは回転中心から板状物品の端部まで表面を越えて容易に移動する。
【0023】
発明された方法のさらなる詳細は好ましい態様の記述を読む時に明らかになる。
【0024】
構造化された300mm半導体ウエファーを回転処理器の回転チャック上に置く。或いは、洗浄工程前にウエファー上の層を(例えば濃硫酸および過酸化水素の混合物を用いて)エッチングまたは剥離することができる。
【0025】
第一段階(予備−すすぎ段階R):すすぎ液体(脱イオン水)を5l/分の流速でウエファーの中心上にそれを300rpmで回転させながら供給する。
【0026】
第二段階(自由流段階A):希釈したSC1(0.7容量%の32%過酸化水素、28.4容量%の35%アンモニア水、70.9容量%の水)を40℃において10l/分の流速でウエファー上にそれを600rpmで回転させながら分配する。
【0027】
第三段階(噴霧段階B):担持気体として窒素を有するDI−水の霧(連続相(cp)=窒素、分散相(dp)=DI−水)をウエファー上に25℃において1000rpmの
回転速度で噴霧する。窒素流速90sl/分(sl=標準リットル1013hPa、25℃)、DI−水流速70ml/分。噴霧中に、噴霧ノズルはウエファーを越えて中心から端部まで10mm/秒(0.01m/秒)の速度でゆっくり走査する。
【0028】
第四段階(最終的すすぎ段階R):すすぎ液体(脱イオン水)を5l/分の流速でウエファーの中心上にそれを300rpmで回転させながら供給する。
【0029】
第五段階(乾燥段階D):水をウエファー上に供給しながら2容量%の2−プロパノールを有する窒素−気体を用いてすすぎ液体(脱イオン水)を除去して、液体−気体境界層を中心から端部に走査させて、液体除去後にウエファーを完全に乾燥したままにする。
【0030】
この工程を工程段階の系列としてこの順序R−A−B−R−D(先行技術)でまとめることができ、ここで段階Aは60秒かかりそして段階Bは45秒かかる。
【0031】
本発明(実施例1)によると、第二および第三工程段階を1回繰り返して順序R−A−B−A−B−R−Dをもたらし、ここでそれぞれの段階Aは30秒かかりそして段階Bは22.5秒かかる。
【0032】
驚くべきことに、各段階の工程パラメーターを変えずに且つ全体的な工程時間を増加させずに粒子除去効率を有意に(20%より多く)増加させることができた。
【0033】
各工程段階は前の段階と重複することができ、それは表面が完全に乾燥する前にその湿潤性を洗浄中に保つのを助ける。そのような重複は0.5秒〜5秒の範囲内でありうる。
【0034】
或いは(実施例2)、第二および第三工程段階を2回繰り返して順序R−A−B−A−B−A−B−R−Dをもたらし、ここでそれぞれの段階Aは20秒かかりそして段階Bは15秒かかる。ここでも全体的な工程時間は増加しなかった。この工程順序は粒子除去効率のさらなる増加をもたらすが、それほど大きくない。
【0035】
表1は本発明の方法の2つの例(1および2)並びに1つの比較例(0=先行技術)を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表2は本発明の方法の2つの例(1および2)並びに引用された比較例の洗浄効率を示す。
【0038】
【表2】

【0039】
本発明のさらなる態様を以下にまとめる。ここで、略語は以下の通りにして使用される:
【0040】
A:液体が表面上に連続的自由流で注がれる自由流洗浄段階
【0041】
B:液体が表面上に噴霧ノズルで分配される、噴霧洗浄段階
【0042】
R:DI(脱イオン水)が自由流で供給される、すすぎ段階(DI−水中に例えばCOの如き気体を溶解させることができる)
【0043】
D:液体を表面から除去する、乾燥段階
【0044】
R−B−A−B−R−D:これはコア系列B−A−Bが予備−すすぎと共に進行しそしてすすぎおよび乾燥系列が続く本発明に従う基本工程である。
【0045】
R−B−A1−A2−B−R−D:この例は少なくとも2つの噴霧洗浄段階の間に、例えば2種の洗浄液体を用いる、2つもしくはそれ以上の自由流洗浄段階を行えることを示す。
【0046】
R−B−A−B−A−R−D:この系列は予備−すすぎ段階後に噴霧洗浄段階で開始できる。
【0047】
B−A−B−A−R−D:この系列は予備−すすぎ段階なしに噴霧洗浄段階で開始できる。
【0048】
B−A−B−R−D:この系列は予備−すすぎ段階なしに且つ最終的な自由流洗浄段階なしに噴霧洗浄段階で開始できる。
【0049】
B−A−B−D:この洗浄系列では最後の(第二の)噴霧段階B(AおよびDの間)をすすぎ段階と同時に行う。それ故、液体が使用されることが好ましく、それは蒸発して残渣を残さない。
【0050】
A−B−A−B−A−R−D
段階Aに関してはSC1(過酸化水素およびアンモニアの水溶液)が使用される。或いは、コリン(または他の第四級アミン類)の水溶液を使用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−液体が分配ノズルを通して表面上に連続的液体流状で分配されるようにして表面を自由流洗浄で処理し、
−液体が噴霧ノズルを通して表面に対して小滴の形態で向けられるようにして表面を噴霧洗浄で処理する
段階を含んでなる板状物品の表面を洗浄する方法であって、表面が自由流洗浄段階前に噴霧洗浄段階でそして自由流洗浄段階後に噴霧洗浄段階で処理される方法。
【請求項2】
自由流洗浄段階およびその後の噴霧洗浄段階の系列を少なくとも2回行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
自由流洗浄段階および/または噴霧洗浄段階の少なくとも1つがアルカリ性洗浄液体を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アルカリ性洗浄液体がオゾン、過酸化水素、並びにオゾンおよび過酸化水素の混合物の群から選択される酸化剤を含んでなる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
洗浄液体がアンモニアを含んでなる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
噴霧洗浄段階の少なくとも1つが水、有機溶媒アルカリ性組成物、および酸性組成物を含んでなる群から選択される洗浄液体を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
自由流洗浄段階および噴霧洗浄段階が5秒より長くなく臨機に重複する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの洗浄段階中に板状物品が回転される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
噴霧洗浄段階が無空気噴霧ノズル、内部混合のある二相ノズルまたは外部混合のある二相ノズルの群から選択される噴霧ノズルを使用する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
噴霧洗浄段階が外部混合のある二相ノズルを使用する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
噴霧ノズルのオリフィスが0.1cm〜10cm、好ましくは0.3cm〜5cm、の範囲にある板状物品の表面までの距離dのところに置かれる請求項9に記載の方法。
【請求項12】
噴霧洗浄段階の少なくとも2つが各々5秒〜45秒、好ましくは8秒〜30秒、にわたり行われる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
自由流洗浄段階の少なくとも2つが各々5秒〜45秒、好ましくは8秒〜30秒、にわたり行われる請求項2に記載の方法。
【請求項14】
噴霧ノズルが板状物品を越えて横方向に走査する請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2010−517255(P2010−517255A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545888(P2009−545888)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050180
【国際公開番号】WO2008/090019
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(507161226)ラム・リサーチ・アクチエンゲゼルシヤフト (18)
【氏名又は名称原語表記】Lam Research AG
【Fターム(参考)】