説明

表面処理装置

【課題】被処理物の端部付近の処理量が外部からの流入ガス等によって低下するのを抑制し、表面処理の均一性を向上させる。
【解決手段】被処理物Wの配置部10上に第1方向へ相対移動可能なノズル部20を配置する。ノズル部20には、第1方向と交差する第2方向に延在する噴出口24と吸引口25を互いに第1方向に離して形成する。吸引口25の第2方向の端部を噴出口24より第2方向に延出させる。噴出口24から処理流体を噴き出し、吸引口15から吸引する。ノズル部20と配置部10との間であって噴出口24と吸引口25との間に画成された流体流通空間50の第2方向の外側には、該流体流通空間50より流体の流通抵抗を大きくする流通抵抗部30を設ける。流通抵抗部30における吸引口側部分33を噴出口側部分32より第2方向の外側に引っ込ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理流体を被処理物に噴き付けて表面処理を行なう装置に関し、特に、ノズル部と被処理物との間から処理流体が漏れないようにしながら両者を相対移動させるのに適した表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、表面処理装置の一例として所謂リモート式の大気圧プラズマ処理装置が記載されている。大気圧プラズマ処理装置のステージの上面に被処理物が配置され、この被処理物の上方に処理ヘッドが設けられている。処理ヘッドは、ステージひいては被処理物に対し一方向に移動可能になっている。処理ヘッドの底面には、上記移動方向と直交する方向にそれぞれ延びる噴出口と吸引口が上記移動方向に離れて平行に設けられている。プラズマ化された処理ガスが、噴出口から噴き出される。これにより、被処理物の表面処理が行なわれる。処理済みのガスは、吸引口に吸い込まれ、排出される。
処理ヘッドとステージの上記移動方向と直交する方向の端部には、ラビリンスシール等からなる流通抵抗部材が設けられている。これによって、外部の雰囲気ガスが処理ヘッドと被処理物の間に入り込んだり処理ガスが漏れ出たりするのを抑えることができる。
【特許文献1】特開2003−173899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上掲特許文献1において、ヘッド側の流通抵抗部材とステージ側の流通抵抗部材との間には僅かなギャップが設けられている。ギャップが無いと、相対移動時の摺擦によりパーティクルが発生するおそれがあるためである。そのため、ガスの出入りを完全に阻止するのは容易でなく、被処理部の端部の処理が不均一になりがちであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するために提案されたものであり、処理流体を被処理物に噴き付けて表面処理を行なう装置であって、
被処理物の配置部と、この配置部と対向されるとともに配置部に対し前記対向方向と交差する第1方向に相対移動可能なノズル部とを備え、
前記ノズル部には、前記処理流体を噴き出す噴出口と、流体を吸引する吸引口とが、それぞれ前記第1方向と交差する第2方向に延在されるとともに互いに前記第1方向に離れて設けられ、前記吸引口の第2方向の端部が、前記噴出口より第2方向に延出されており、
前記ノズル部と配置部との間であって前記噴出口と吸引口との間に画成された流体流通空間の第2方向の外側には、該流体流通空間より流通抵抗を大きくする流通抵抗部(第1流通抵抗部)が設けられ、この流通抵抗部における前記吸引口側の部分が前記噴出口側の部分より前記第2方向の外側に引っ込んでいることを特徴とする。
これにより、前記流体流通空間の第2方向の端部どうし間から処理流体が外部に漏れ出るのを抑制ないし防止できるとともに、外部の雰囲気ガスが流入した場合、その流入ガスが主に吸引口の延出部分に吸い込まれるようにすることができる。これによって、被処理物の端部付近の処理量が中央部分より低下するのを抑制ないしは防止でき、この結果、表面処理の均一性を向上させることができる。
【0005】
前記流通抵抗部における前記第2方向の内側を向く内端縁が、前記噴出口側部分から前記吸引口側部分まで滑らかに連続していることが好ましい。
これによって、前記流体流通空間の第2方向の端部に入り込んだ外部流入ガスをスムーズに第1方向の吸引口側へ向けさせ、吸引口の延出部分に確実に吸い込ませることができる。
前記滑らかに連続する内端縁は、上記対向方向から見て直線状であってもよく、曲線状であってもよい。曲線状の前記内端縁は、第2方向の内側への凸曲線でもよく、第2方向の外側への凹曲線でもよく、凸曲線の部分と凹曲線の部分とがそれぞれ1又は複数含まれていてもよい。
【0006】
前記流通抵抗部の前記内端縁が、前記吸引口側部分に向かうにしたがって第2方向の外側に傾く直線状になっていてもよく、前記吸引口側部分に向かうにしたがって第2方向の外側に傾く緩やかな曲線状になっていてもよい。これによって、前記内端縁の作製を容易化できる。また、外部からの流入ガスを確実にスムーズに第1方向の吸引口側へ向けさせることができる。
【0007】
前記流通抵抗部における前記第2方向の外側を向く外端縁が、前記内端縁とほぼ並行に前記噴出口側部分から前記吸引口側部分まで滑らかに連続していることが好ましい。
これによって、流通抵抗部内の第2方向の流通抵抗が噴出口部分から吸引口部分に向かう方向に一様になるようにすることができる。
【0008】
前記流通抵抗部の噴出口側部分によって前記噴出口の第2方向の端部が画成され、前記吸引口側部分によって前記吸引口の第2方向の端部が画成されていてもよい。
前記流通抵抗部における前記吸引口側部分が、前記噴出口側部分に対し前記第2方向に相対変位可能であってもよい。
これによって、ノズル部と被処理物との間の圧力変動等に伴なう外部からのガス流入量の変化に応じて、吸引口の延出部分の長さを調節することができ、表面処理の均一性をより確保することができる。
前記流通抵抗部が、前記対向方向に沿う軸線の周りに角度調節可能であってもよい。
これによって、前記吸引口側部分を前記噴出口側部分に対し前記第2方向に容易に相対変位させることができる。
前記流通抵抗部の噴出口側部分によって前記噴出口の第2方向の端部が画成され、前記吸引口側部分によって前記吸引口の第2方向の端部が画成されており、かつ、前記流通抵抗部における前記吸引口側部分が、前記噴出口側部分に対し前記第2方向に相対変位可能であってもよい。
これによって、前記流通抵抗部の相対変位により、前記吸引口の端部を噴出口の端部に対し第2方向に相対変位させることができる。
【0009】
処理流体の略全量が前記吸引口における噴出口と第1方向に重なる部分に吸引され、外部から前記流通抵抗部を経て前記流体流通空間の第2方向の端部に流入したガスの略全量が前記吸引口の前記延出部分に吸引されるように、前記流通抵抗部の流通抵抗と前記吸引口の延出部分の長さが設定されていることが好ましい。
これによって、噴出口の第2方向の中央部分から噴出された処理流体は勿論、噴出口の第2方向の端部から噴出された処理流体についても第1方向にほぼ沿って吸引口へ向かって流れるようにでき、被処理物の第2方向の端部についても中央部分とほぼ同程度に表面処理することができ、表面処理の均一性を一層確実に確保することができる。
【0010】
前記ノズル部の前記吸引口より前記噴出口側とは第1方向の反対側と、前記配置部との間には、前記流通抵抗部より流体の流通抵抗を大きくする他の流通抵抗部(第2の流通抵抗部)が設けられていることが好ましい。
これによって、外部の雰囲気ガスが吸引口の前記反対側から入り込むのを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノズル部と配置部との間の端部から処理流体が外部に漏れ出るのを抑制ないし防止できるとともに、外部の雰囲気ガスが前記端部から流入した場合、その流入ガスが主に吸引口の延出部分に吸い込まれるようにすることができる。これによって、被処理物の端部付近の処理量が中央部分より低下するのを抑制ないしは防止でき、この結果、表面処理の均一性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1〜図5は、本発明の第1実施形態を示したものである。図1〜図3に示すように、表面処理装置1は、ステージ10(配置部)と、このステージ10の上方に配置されたノズルヘッド20(ノズル部)とを備えている。ステージ10は、移動手段(図示省略)によってノズルヘッド20に対し互いの対向方向(上下方向)と直交(交差)する第1方向(図1及び図2において紙面直交方向、図3において左右方向)に移動されるようになっている。
移動手段がステージ10に代えてノズルヘッド20に接続され、ステージ10が位置固定されるとともにノズルヘッド20が第1方向に移動されるようになっていてもよい。
【0013】
ステージ10の上面に被処理物Wが配置されている。被処理物Wは、例えばFPD(フラットパネルディスプレイ)用のガラス基板である。被処理物Wの上記移動方向(第1方向)と直交する第2方向(図1及び図2において左右方向)の寸法は、例えば2m程度になっている。
【0014】
ステージ10の周縁部(第1方向の両端部及び第2方向の両側部)には、被処理物Wと同じ厚さのダミープレート11が設けられ、その端面が被処理物Wの端面に突き当てられている。被処理物Wとダミープレート11の上面は面一になっている。以下、ステージ10の第1方向の両端部のダミープレート11と第2方向の両側部のダミープレート11とを互いに区別するときは、前者の符号を「11B」とし、後者の符号を「11A」とする。
【0015】
ノズルヘッド20は、ノズルボディ21と、第1、第2の流通抵抗板30,40とを備えている。
ノズルボディ21は、第2方向に延びる長尺の直方体形状をなしている。ノズルボディ21の底面(配置部を向く面)と被処理物W及びダミープレート11との間に流体流通ギャップ50(流体流通空間)が画成されている。流体流通ギャップ50の厚さは、例えば2mm程度になっている。
【0016】
図3に示すように、ノズルボディ21の内部には、3つのチューブ22,23,23が設けられている。チューブ22,23,23は、例えばテフロン(登録商標)で構成されている。図1〜図3に示すように、3つのチューブ22,23,23は、それぞれ第2方向に延びるとともに、互いに第1方向に並べられている。チューブ22,23,23の内直径は、例えば20数mmになっており、肉厚は、例えば1.数mmになっている。
【0017】
中央のチューブ22の内部は、供給ヘッダ路22aを構成している。ヘッダ路22aの両端には、処理流体供給路2Aから処理目的に応じた成分を含む処理ガス(ガス状の処理流体)が導入されるようになっている。大気圧プラズマ生成部(不図示)を用意し、この大気圧プラズマ生成部で処理ガスをプラズマ化したうえでヘッダ路22aに導入するようにしてもよく、ノズルヘッド20に大気圧プラズマ生成部を組み込み、ノズルヘッド20内で処理ガスをプラズマ化することにしてもよい。
【0018】
チューブ22の底側の周壁には、厚さ方向に貫通する小孔22bが長手方向(第2方向)に等間隔置きに多数形成されている。各小孔22bの直径は、例えば1mm程度になっており、小孔22bの配置間隔は、例えば10mm程度になっている。
【0019】
図1及び図3に示すように、ノズルボディ21の第1方向の中央部におけるチューブ22より下側の部分には、噴出スリット21aが設けられている。噴出スリット21aは、内部流路方向を上下に向けて第2方向に長く延びている。噴出スリット21aの上端部は、各小孔22bに連なり、下端部は、ノズルボディ21の底面に達して開口されている。この噴出スリット21aの下端開口が、ノズルヘッド20の噴出口24を構成している。噴出口24は第2方向に連続的に延在されている。噴出スリット21aの厚さ(第1方向の寸法)は、例えば1mm程度になっており、上下方向の寸法は、例えば30mm程度になっている。噴出スリット21a及び噴出口24の第2方向の長さL0(図1)は、被処理物Wの第2方向の長さ(例えば約2m)と略同じかそれより若干大きくなっている。
【0020】
ノズルボディ21の両側のチューブ23,23の内部は、吸引ヘッダ路23a,23aを構成している。各ヘッダ路23aの両端には、吸引路2Bを介して吸引ポンプ等からなる吸引手段(図示省略)が連ねられている。チューブ23の底部には、厚さ方向に貫通する小孔23bが長手方向(第2方向)に等間隔置きに多数形成されている。各小孔23bの直径は、例えば1mm程度になっており、小孔23bの配置間隔は、例えば10mm程度になっている。
【0021】
各チューブ23より下側のノズルボディ21の部分には、吸引スリット21bが設けられている。吸引スリット21bは、内部流路方向を上下に向けて第2方向に長く延びている。吸引スリット21bの上端部は、各小孔23bに連なり、下端部は、ノズルボディ21の底面に達して開口されている。この吸引スリット21bの下端開口が、ノズルヘッド20の吸引口25を構成している。吸引口25は第2方向に連続的に延在されている。吸引スリット21bの厚さ(第1方向の寸法)は、例えば1mm程度になっており、上下方向の寸法は、例えば30mm程度になっている。
【0022】
噴出口24と吸引口25は第1方向に離れ、互いに平行になっている。噴出口24と吸引口25の第1方向の間隔は、例えば50mm程度になっている。
【0023】
図4に示すように、吸引口25の長さL1(図2)は、噴出スリット21a及び噴出口24の長さL0(図1)より大きい。したがって、吸引スリット21bひいては吸引口25の両端部が、それぞれ噴出スリット21aひいては噴出口24より第2方向の外側に延び出ている。図5に示すように、以下、吸引口25において、噴出口24と第1方向に重なる部分を主吸引部分25aと称し、噴出口24より第2方向に延び出た部分を延出部分25bと称す。各延出部分25bの長さL2は、例えばL2=20mm程度になっている。
また、流体流通ギャップ50のうち、噴出口24と第1方向に重なる領域を処理ギャップ51と称し、噴出口24より第2方向の外側の領域を端流通ギャップ52と称する。
【0024】
図1及び図2に示すように、ノズルボディ21の底面の第2方向の両端に、それぞれ第1流通抵抗板30(流通抵抗部)が設けられている。第1流通抵抗板30は、ノズルボディ21の底面より下(ステージ10の側)へ突出されている。図4に示すように、第1流通抵抗板30は、一対の平行四辺形状の板部分31をV字状に連ねた形状になっている。流通抵抗板30の中央部分(噴出口24側の部分32)は、第2方向の内側に突出され、噴出スリット21aの第2方向の端部とほぼ面一をなし、噴出口24の第2方向の端部を画成している。流通抵抗板30の第1方向の両端部分(吸引口25側の部分33)は、第2方向の外側に引っ込み、吸引スリット21bの第2方向の端部とほぼ面一をなし、吸引口25の第2方向の端部を画成している。
【0025】
図4に示すように、流通抵抗板30の第2方向の内側を向く内端縁34は、底面視で噴出口側部分32から吸引口側部分33まで滑らかに連続するとともに吸引口側部分33に向かうにしたがって第2方向の外側に傾く直線状をなしている。この板部分31の内端縁34によって、上記端流通ギャップ52の第2方向の外側の端部が画成され、端流通ギャップ52が三角形状になっている。
【0026】
板部分31の第2方向の外側を向く外端縁35は、噴出口側部分32から吸引口側部分33まで滑らかに連続するとともに、底面視で吸引口側部分33に向かうにしたがって第2方向の外側に傾く直線状をなし、内端縁34と並行に延びている。
板部分31の幅(外端縁35と内端縁34の直交方向に沿うこれら端縁間の距離)は、例えば例えば100mm程度になっている。
【0027】
図1及び図2に示すように、流通抵抗板30とダミープレート11Aとの間には流通抵抗ギャップ30aが形成されている。流通抵抗ギャップ30aの厚さは、流体流通ギャップ50の厚さより十分に小さく、例えば0.5mm程度になっている。したがって、流通抵抗ギャップ30a内の流通抵抗は、流体流通ギャップ50内の流通抵抗より大きい。
【0028】
図3及び図4に示すように、ノズルボディ21の第1方向の両側には、それぞれ第2の流通抵抗部を構成する流通抵抗板40が設けられている。第2流通抵抗板40は、ノズルボディ21の底面より下へ突出されている。第2流通抵抗板40の底面は、第1流通抵抗板30の底面と面一になっているが、非面一であってもよい。第2流通抵抗板40とダミープレート11及び被処理物Wとの間には、流通抵抗ギャップ40aが形成されている。流通抵抗ギャップ40aの厚さは、例えば0.5mm程度になっている。
【0029】
第2流通抵抗板40は、ノズルボディ21から第1方向の外側へ大きく延び出ている。第2流通抵抗板40の第1方向の長さは、第1流通抵抗板30の幅(外端縁35と内端縁34との間の距離)より十分に大きく、例えば500mm程度になっている。したがって、流通抵抗ギャップ40a内の流体の流通抵抗は、流通抵抗ギャップ30a内の流体の流通抵抗より十分に大きい。
【0030】
上記構成において、処理ガスが、供給路2Aからヘッダ路22aの両端部に導入される。処理ガスの供給流量Q0は、全体で例えばQ0=120L/min程度であり、その半分ずつ(例えば60L/min)がヘッダ路22aの各端部に導入される。この処理ガスは、ヘッダ路22a内を進みながら順次小孔22bを通って噴出スリット21aに導出され、この噴出スリット21aの下端の噴出口24から処理ギャップ51内に噴き出される。ヘッダ路22a及び小孔22bの均一化作用によって、噴出口24の第2方向の単位長さ当たりの噴出流量をほぼ均一にすることができる。この処理ガスが被処理物Wの表面に接触し、表面処理がなされる。
【0031】
処理ガスは、噴出口24の直下でほぼ半分ずつに分かれ、それぞれ第1方向の一端側と他端側に向かって処理ギャップ51内を流れる。そして、処理済みの流体が、吸引口25に吸込まれ、吸引スリット21bから小孔23bを通ってヘッダ路23aに入り、ヘッダ路23aの両端部から排出されて、吸引手段へ送られる。ヘッダ路23a及び小孔23bの均一化作用によって、吸引口25の第2方向に沿う単位長さ当たりの吸引流量をほぼ均一にすることができる。
併行して、ステージ10が第1方向に相対移動される。これにより、被処理物Wの全面を処理することができる。ノズルヘッド20とステージ10とが非接触になっているため、ステージ10の移動によって摺擦が起きることがない。これによって、パーティクルの発生を防止することができる。
【0032】
噴出口24を挟んで両側の吸引口25からの吸引流量q1は、互いに等しく、かつ、噴出口24からの処理ガス噴出流量Q0の半分q0(=Q0/2)より大きくなるように設定される。したがって、流体流通ギャップ50内が、外部雰囲気より低圧になる。これにより、処理ガスが流通抵抗ギャップ30a,40aを経て外部に漏れ出るのを確実に防止することができる。
流体流通ギャップ50内の外部雰囲気(大気圧)に対する圧力差は、例えば−10Pa程度が好ましい。
【0033】
この圧力差によって外部雰囲気ガスが流通抵抗ギャップ30a,40aを経て流体流通ギャップ50内に流入しようとする。一方、流通抵抗ギャップ40a内は、流通抵抗ギャップ30aより流通抵抗が十分に大きいため、流入ガスのほとんどは流通抵抗ギャップ30aから流入したものになり、流通抵抗ギャップ40aからの流入ガスはほぼ無視できる。
ここで、各吸引口25の長さL1(ひいては延出部分25bの長さL2)を次の関係式がほぼ満たされるように設定しておく。
L1=(q1/q0)×L0 式(1)
これによって、各吸引口25の主吸引部分25aにおける吸引流量が、噴出流量の2分の1の大きさq0とほぼ等しくなる。したがって、図5において白抜き矢印に示すように、処理ガスg0は、処理ギャップ51内の中央側だけでなく第2方向の端側においても、第1方向に沿ってほぼ真っ直ぐ流れ、吸引口25の主吸引部分25aに吸い込まれるようにすることができる。
一方、図5において太線矢印に示すように、外部からの流入ガスg1は、流通抵抗ギャップ30a内を各板部分31の幅方向にほぼ沿うように流れる。そして、流通抵抗板30の内端縁34から端流通ギャップ52内に入ると、第1方向の外側に向きを変える。内端縁34は、底面視で滑らかな線状になっているため、ガスg1の乱れを防止でき、第1方向に沿ってほぼ真っ直ぐ流れるようにすることができる。これにより、外部からの流入ガスg1のほぼ全量が、吸引口25の延出部分25bに吸い込まれるようにすることができる。
【0034】
したがって、処理ガスg0が第2方向の外側へ拡がって延出部分25bに吸込まれるのを防止できるとともに、外部流入ガスg1が第2方向の内側へ入り込んで主吸引部分25aに吸込まれるのを防止することができる。よって、被処理物Wの第2方向の端部を中央部と同程度に処理することができる。この結果、被処理物Wの全体を均一に表面処理することができる。
【0035】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
図6及び図7は、本発明の第2実施形態を示したものである。この実施形態ではノズルボディ21の底面の第2方向の両端部(一端部のみ図示)に第1流通抵抗部として角度調節機能付きの流通抵抗装置60が設けられている。流通抵抗装置60は、円形の回転盤61と、一対の円弧状の可動板62とを有している。
【0036】
回転盤61は、噴出口24の第2方向の外側において、噴出口24の端部にほぼ接するように配置されている。
【0037】
回転盤61の第1方向の両側部に可動板62が取り付けられている。図6において、実線と二点鎖線と三点鎖線に示すように、可動板62は、ノズルボディ21の噴出スリット21aに沿う中心軸線に関して対称の関係を維持しながら回転盤61のまわりに角度調節可能になっている。
図示は省略するが、回転盤61及び可動板62とダミープレート11Aとの間に流通抵抗ギャップ30aが形成されている。
【0038】
吸引スリット21bの端側の下端が、可動板62の先端側部分(回転盤61から遠い側の部分、吸引側部分62a)によって塞がれている。可動板62の内端縁62bによって、吸引口25の端部が画成されている。
【0039】
可動板62を角度調節することによって、可動板62の内端縁62bが第2方向に進退される。これにより、吸引口25の端部が第2方向に変位され、延出部分25bの長さが伸縮されるようになっている。
【0040】
図7に示すように、可動板62の上面には、平板状の端閉止部材63が取り付けられている。端閉止部材63は、吸引スリット21bの第2方向の端部に差し入れられている。端閉止部材63の第2方向の内側を向く端面は、可動板62の内端縁62bとほぼ面一になっている。この端閉止部材63の端面によって、吸引スリット21bの内部空間におけるガス吸引可能な部分の第2方向の端部が画成されている。端閉止部材63は、可動板62の回転に伴なって第2方向に進退されるとともに、常に第2方向に向くように可動板62に対し鉛直な軸線の周りに回転可能になっている。
【0041】
いま、処理ギャップ51の大気圧に対する圧力差を負圧側に大きくしたとする。この負圧度の増大分だけ外部雰囲気ガスの流通抵抗ギャップ11fへの流入量が増加する。この場合、可動板62を第2方向の外側へ向けて回転変位させる。したがって、吸引口25の端部が第2方向の外側にずれ、延出部分25bの長さが大きくなる。これにより、外部からの流入ガスが増加しても、その全量が吸引口25の延出部分25bから確実に吸い込まれるようにでき、流入ガスが被処理物W上の処理ギャップ51にまで流れ込むのを防止することができる。
【0042】
反対に、処理ギャップ51の大気圧に対する圧力差(負圧度)を小さくしたとする。すると、外部雰囲気ガスの流通抵抗ギャップ30aへの流入量が減少する。この場合、可動板62を第2方向の内側へ向けて回転変位させる。したがって、吸引口25の端部が第2方向の内側にずれ、延出部分25bの長さが縮小される。これにより、処理ガスが、外部からの流入ガスの減少分だけ処理ギャップ51から第2方向の外側に拡がるのを防止できる。
よって、吸引口25の主吸引部分25aには確実に処理ガスだけが吸い込まれ、延出部分25bには確実に流入ガスだけが吸込まれるようにすることができる。この結果、被処理物Wの表面処理の均一性を一層確実に確保することができる。
【0043】
さらに、可動板62の回転に追随して、端閉止部材63が第2方向にスライドされる。これにより、吸引スリット21bの内部空間の第2方向の端部が、吸引口25の端部とほぼ面一の状態を維持しながら第2方向に変位される。したがって、吸引口25から入ったガスが、吸引スリット21bの内部で第2方向に広がるのを防止することができる。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、当業者に自明な範囲で適宜改変することができる。
例えば、噴出口24は、第2方向に並べられた小孔の列で構成され、断続的に延在されていてもよい。同様に、吸引口25は、第2方向に並べられた小孔の列で構成され、第2方向に断続的に延在されていてもよい。
流通抵抗板30をノズルヘッド20に代えてステージ10(ダミープレート11A)に設けてもよく、ノズルヘッド20とステージ10(ダミープレート11A)の両方に互いに対をなすように設けてもよい。
流通抵抗部は、底面視ないしは平面視で四角形の凸面状の板30であるのに限られず、第1方向に延びる凸条と凹条が第2方向に交互に並んだ櫛歯状であってもよい。ノズルボディ21とステージ10(ダミープレート11A)の両方に上記櫛歯状の流通抵抗部を設けるとともに、相互に噛み合うようにさせ、ラビリンスシールを構成するようにしてもよい。
板部分31,62の内端縁34,62bは、必ずしも底面視で直線状でなくてもよく、緩やかな凸曲線や凹曲線になっていてもよい。さらに、板部分31の内端縁34は、噴出口側部分32が第2方向の内側に突出し、吸引口側部分33が第2方向の外側に引っ込んでいればよく、必ずしも底面視で直線状や曲線状などの滑らかな線状になっているのに限られず、階段状になっていてもよい。
第1実施形態においては、第1流通抵抗板30と第2流通抵抗板40とが別々の板材で構成されていたが、共通の板材で構成されて一体になっていてもよい。
第2実施形態において、処理ギャップ51内の圧力(外部との圧力差でも可)をセンサで検出し、その検出圧力に応じて板部分31の角度をフィードバック制御することにしてもよい。
吸引口25の端部を位置固定する一方、噴出口24の端部を第2方向に位置調節可能にしてもよい。吸引口25の端部と噴出口24の端部を共に第2方向に位置調節可能にしてもよい。
本発明は、表面改質、エッチング、成膜などの種々の表面処理に適用可能である。
処理流体は、ガス状に限られず、液体(霧状を含む)でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板の表面処理に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表面処理装置を示し、図3のI−I線に沿う断面図である。
【図2】上記表面処理装置を図3のII−II線に沿って示す断面図である。
【図3】上記表面処理装置を図1のIII−III線に沿って示す断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う上記表面処理装置のノズルヘッドの底面図である。
【図5】上記ノズルヘッドの第2方向の端部におけるガス流を解説した底面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る表面処理装置のノズルヘッドを示す底面図である。
【図7】上記第2実施形態のノズルヘッドの斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 表面処理装置
2A 処理流体供給路
2B 吸引路
10 ステージ(配置部)
20 ノズルヘッド(ノズル部)
21 ノズルボディ
21a 噴出スリット
21b 吸引スリット
22 中央チューブ
22a ヘッダ路
22b 小孔
23 端チューブ
23a ヘッダ路
23b 小孔
24 噴出口
25 吸引口
25a 主吸引部分
25b 延出部分
30 第1流通抵抗板(流通抵抗部)
30a 流通抵抗ギャップ
31 板部分
32 噴出口側部分
33 吸引口側部分
34 内端縁
35 外端縁
40 第2流通抵抗板(他の流通抵抗部)
40a 流通抵抗ギャップ
50 流体流通ギャップ(流体流通空間)
51 処理ギャップ
52 端流通ギャップ
60 角度調節機能付き流通抵抗装置(流通抵抗部)
61 回転盤
62 可動板
62a 吸引側部分
62b 内端縁
63 端閉止部材
g0 処理ガス(処理流体)の流れ
g1 外部からの流入ガスの流れ
W 被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理流体を被処理物に噴き付けて表面処理を行なう装置であって、
被処理物の配置部と、この配置部と対向されるとともに配置部に対し前記対向方向と交差する第1方向に相対移動可能なノズル部とを備え、
前記ノズル部には、前記処理流体を噴き出す噴出口と、流体を吸引する吸引口とが、それぞれ前記第1方向と交差する第2方向に延在されるとともに互いに前記第1方向に離れて設けられ、前記吸引口の第2方向の端部が、前記噴出口より第2方向に延出されており、
前記ノズル部と配置部との間であって前記噴出口と吸引口との間に画成された流体流通空間の第2方向の外側には、該流体流通空間より流通抵抗を大きくする流通抵抗部が設けられ、この流通抵抗部における前記吸引口側の部分が前記噴出口側の部分より前記第2方向の外側に引っ込んでいることを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記流通抵抗部における前記第2方向の内側を向く内端縁が、前記噴出口側部分から前記吸引口側部分まで滑らかに連続していることを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記流通抵抗部の前記内端縁が、前記吸引口側部分に向かうにしたがって第2方向の外側に傾く直線状ないしは緩やかな曲線状になっていることを特徴とする請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記流通抵抗部における前記第2方向の外側を向く外端縁が、前記内端縁とほぼ並行に前記噴出口側部分から前記吸引口側部分まで滑らかに連続していることを特徴とする請求項2又は3に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記流通抵抗部の噴出口側部分によって前記噴出口の第2方向の端部が画成され、前記吸引口側部分によって前記吸引口の第2方向の端部が画成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の表面処理装置。
【請求項6】
前記流通抵抗部における前記吸引口側部分が、前記噴出口側部分に対し前記第2方向に相対変位可能であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の表面処理装置。
【請求項7】
前記処理流体の略全量が前記吸引口における前記噴出口と第1方向に重なる部分に吸引され、外部から前記流通抵抗部を経て前記流体流通空間の第2方向の端部に流入したガスの略全量が前記吸引口の前記延出部分に吸引されるように、前記流通抵抗部の流通抵抗と前記吸引口の延出部分の長さが設定されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の表面処理装置。
【請求項8】
前記ノズル部の前記吸引口より前記噴出口側とは第1方向の反対側と、前記配置部との間には、前記流通抵抗部より流体の流通抵抗を大きくする他の流通抵抗部が設けられていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−99358(P2009−99358A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269208(P2007−269208)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】