説明

表面処理装置

【課題】被処理物の表面処理に際し、被処理物上の異物等を確実に、かつ被処理物等を損傷することなく検知する。
【解決手段】表面処理装置1の処理部3を被処理物9と対向させ、被処理物9に対し平面PLと平行な移動方向に相対移動させる。処理部3に表面状態検知手段10の回転体12を設ける。表面状態検知手段10の回転体12は、好ましくは円筒体であり、その回転軸12aが、平面PLと平行で上記移動方向と交差している。支持部13によって、回転体12を回転軸12aのまわりに回転可能に支持し、かつ回転軸12aを平面PLと交差する方向に変位可能にする。回転体12の回転を回転センサ21で検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理物の表面を処理する装置に関し、特に、表面処理に際し、被処理物の表面上の異物や被処理物の隆起の有無を検知するシステムを備えた表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理物を処理部に対し相対移動させながら、処理部から処理流体を噴き出し、被処理物の表面処理を行う装置は周知である(例えば特許文献1、2等)。この種の表面処理装置では、処理の均一性や安定性を確保するために処理部と被処理物との間隔を狭く設定することが多い。そのため、被処理物の表面上に異物があったり、被処理物とその設置台との間に異物が挟まれる等で被処理物の一部分が隆起していたりすると、処理部が異物や隆起部分に接触する可能性が高い。このような接触があると、処理部や被処理物が損傷するおそれがある。
そこで、例えば特許文献1では、塗布ヘッド(処理部)に板状部材を上下動可能に設け、この板状部材の振動により異物を検知している。
特許文献2では、検知体を回転軸のまわりに回転可能に設け、この検知体の回転により異物を検知している。
【特許文献1】特開2000−24571号公報
【特許文献2】特開2002−1195号公報(段落0050、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
異物の種類としては、ガラス破片、樹脂片、金属片などが想定され、その形状や硬度はさまざまである。これに対し、上掲特許文献1では、異物の形状によっては板状部材が乗り上げにくい。例えば被処理物の表面上の異物が垂直な端面を有している場合、この垂直端面が板状部材の側面に当たることになり、板状部材に上向きの力が働かない。そのため、被処理物の表面が損傷したり、板状部材等の装置の一部が破損したりするおそれがある。また、板状部材が異物に乗り上げたとしても、その後、板状部材の下端が異物の上をすべりながら相対移動する。したがって、やはり被処理物の表面が損傷するおそれがある。このような問題点は、上掲特許文献2でも同様である。
本発明は、上記事情に鑑み、被処理物の表面処理に際し、被処理物上の異物や隆起部分を確実に、かつ被処理物や装置構成部材を損傷することなく検知できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題点を解決するために、本発明に係る表面処理装置は、被処理物を平面上に配置する配置部と、
前記平面と対向し、前記被処理物の表面を処理する処理部と、
前記処理部を前記被処理物に対し前記平面と平行な移動方向に相対移動させる移動手段と、
前記表面上の異物又は前記表面の隆起を検知する表面状態検知手段と、
を備え、前記表面状態検知手段が、
前記平面と平行で前記移動方向と交差する(第1の)回転軸を有して前記平面に近接する(第1の)回転体と、
前記回転体を、前記回転軸のまわりに回転可能な状態で、かつ前記回転軸が前記平面と交差する方向に変位可能な状態で前記処理部に連結して支持する(第1の)支持部と、
前記回転体の回転を検知する(第1の)回転センサと、を含むことを特徴とする。
これによって、被処理物の表面に異物や隆起部分が存在する場合、これに接触した回転体が回転し、この回転を回転センサが検知する。これにより、異物や隆起部分の存在を確実に検出できる。さらに、異物や隆起部分の形状等に応じて回転軸が変位して回転体が異物や隆起部分に乗り上げるようにできる。これにより、被処理物や表面状態検知手段が損傷するのを防止できる。
【0005】
前記回転体の外周面が、前記回転軸を中心軸とする円筒面であることが好ましい。
これによって、回転体が異物や隆起部分に当たって確実に乗り上げるようにでき、更に異物や隆起部分上を転がるようにすることができる。これにより、被処理物や表面状態検知手段の損傷を確実に防止できる。
【0006】
前記支持部が、前記回転体を前記回転軸のまわりに回転可能に支持する支持部分と、この支持部分を前記回転軸と平行な支持軸のまわりに回転可能な状態で前記処理部に連結する連結部分とを有していることが好ましい。
これによって、回転体の支持部分が支持軸のまわりに回転することで回転軸が前記平面と交差する方向に変位するようにできる。
【0007】
前記表面処理装置が、前記回転センサにて検知した回転角度が閾値を超えたとき、前記移動手段を停止する制御部を、更に備えていることが好ましい。
これによって、被処理物や表面状態検知手段の損傷をより確実に防止できる。
【0008】
前記表面状態検知手段が、前記回転軸の前記平面と交差する方向への変位を検知する変位センサを更に含むことが好ましい。
これによって、異物や隆起部分が回転体を回転させにくい形状である場合(例えば異物が前記移動方向に延びる針状である場合等)でも、該異物又は隆起部分による回転軸の変位を変位センサによって検知でき、異物や隆起部分の存在を確実に把握できる。
【0009】
さらに、前記表面状態検知手段が、前記第1回転軸と平行な第2回転軸を有して前記第1回転体に対しずれ、前記平面に近接する第2回転体と、
前記第2回転体を、前記第2回転軸のまわりに回転可能な状態で、かつ前記第2回転軸が前記平面と交差する方向に変位可能な状態で前記処理部に連結して支持する第2支持部と、
前記第2回転体の回転を検知する第2回転センサと、を含むことが好ましい。
この構成によれば、異物や隆起部分が第1回転体に対応する位置に存在する場合は、第1回転体が回転し、この回転が第1回転センサで検知される。異物や隆起部分が第2回転体に対応する位置に存在する場合は、第2回転体が回転し、この回転が第2回転センサで検知される。これにより、検出範囲を広くできる。
【0010】
前記第1回転体と第2回転体が、前記移動方向と交差する方向に並んでいることが好ましい。
これによって、異物や隆起部分が前記移動方向と交差する方向の第1回転体に対応する位置に存在する場合は、第1回転センサで検知できる。異物や隆起部分が前記移動方向と交差する方向の第2回転体に対応する位置に存在する場合は、第2回転センサで検知できる。したがって、被処理物上のどのあたりに異物や隆起部分が存在するかを容易に把握でき、異物の除去作業や隆起部分の矯正作業を効率的に行なうことができ、表面処理の中断時間を短くできる。また、第1、第2の各回転体の長さを短くできる。したがって、組み付け精度を向上でき、各回転体と前記平面ひいては被処理物との間の隙間を十分に狭くできる。よって、異物や隆起部分が小さくても、確実に検知することができる。
【0011】
前記第1回転体が、前記処理部の前記移動方向の一側に配置され、前記第2回転体が、前記処理部の前記移動方向の他側に配置されていてもよい。
これにより、処理部を前記被処理物に対し相対的に往復移動させる場合、往方向に移動させる際も復方向に移動させる際も、処理部の移動方向の前方に常に第1、第2の回転体の何れか一方が位置し、移動方向の前方の異物や隆起部分を検知できる。したがって、処理部が回転体より先に異物や隆起部分に接触するのを確実に防止でき、処理部や被処理物が損傷するのを一層確実に防止できる。この場合の第1回転体と第2回転体は、前記移動方向と交差する方向の同一位置に配置されていてもよく、前記移動方向と交差する方向にずれて配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被処理物の表面処理に際し、被処理物上の異物や隆起部分を確実に検知でき、しかも被処理物や装置構成部材が損傷するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図2に示すように、この実施形態の被処理物9は、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用のガラス基板である。被処理物9は、平面視で長方形(四角形)の薄い板形状になっている。
【0014】
図1は、被処理物9を表面処理する装置1を示したものである。表面処理装置1は、略大気圧下でプラズマ処理を行なう常圧プラズマ処理装置で構成されているが、特にこれに限定されるものではなく、低圧下でプラズマ処理を行なう真空プラズマ処理装置であってもよく、プラズマを用いずに表面処理するものであってもよい。処理内容は、例えば被処理物9の表面の撥水化、親水化等の表面改質であるが、これに限定されるものではなく、乾燥、洗浄、エッチング、アッシング、成膜、スパッタ等の種々の表面処理に適用できる。レジストやスラリー等の塗布液をスリットから塗布するスリットコート式塗布装置にも適用可能である。また、紫外線ランプを備え基板表面の洗浄などを行うUV処理装置にも適用可能である。オゾナイザーから供給されるオゾンにより基板表面のアッシングを行うオゾン処理装置にも適用可能である。弗酸水溶液を気化させ、気化した弗酸により基板表面のエッチングを行う弗酸ベーパー処理装置にも適用可能である。
【0015】
図1及び図2に示すように、表面処理装置1は、基台2と、処理部3とを備えている。基台2は、長手方向を前後(図2の左右方向)に向け、幅方向を左右(図2の紙面と直交する方向)に向けて配置されている。基台2の長手方向の中央部には、四角形の金属盤からなるステージ4(配置部)が設けられている。ステージ4は、接地線(図示省略)を介して電気的に接地され、接地電極を構成している。このステージ4に被処理物9が水平にセットされ、表面処理が行われるようになっている。ステージ4にセットされた被処理物9の上面は、ステージ4の前後外側及び左右外側の基台2の上面と面一になる。図2及び図4において、被処理物9の上面及び基台2の上面が位置する平面を、符号PLにて示す。
【0016】
図2に示すように、ステージ4の下側に昇降機構5が設けられている。昇降機構5は、複数の昇降ピン5aを有している。昇降ピン5aは、ステージ4を貫通して上方へ突出可能(図2の二点鎖線)、及びステージ4内に没入可能(図2の実線)になっている。
【0017】
被処理物9をステージ4にセットする際は、図2の二点鎖線で示すように、昇降ピン5aをステージ4から突出させる。次に、フォーク状マニピュレータ(図示せず)などを用いて被処理物9を昇降ピン5aの上端部に載せる。次に、昇降ピン5aを下降させステージ4に没入させる。これにより、被処理物9をステージ4の上面に載置できる。図示は省略するが、少なくとも一部の昇降ピン5aには、該昇降ピン5aの上端がステージ4上の被処理物9を持ち上げることなく該被処理物9の下面に接触する接触調整手段が設けられている(国際公開番号WO2007/077765号公報等参照)。接触調整手段は、例えば、昇降ピン5aを上へ付勢するコイルスプリング等の弾性体で構成されている。表面処理装置1には、ステージ4に形成された吸着溝と、この吸着溝に接続された真空吸引手段とを含む吸着機構が設けられている(図示省略)。この吸着機構によって被処理物9をステージ4に吸着できる。
【0018】
表面処理後は、上記吸着溝に不活性ガスを供給し、被処理物9のステージ4への吸着を解除する。不活性ガスとして、ヘリウム、アルゴン等の希ガスを用いてもよく、窒素、酸素、クリーンドライエア(CDA)等を用いてもよく、これらのうち2以上のガス種を混合したガスを用いてもよい。続いて、昇降ピン5aをステージ4から上へ突出させ、被処理物9を持ち上げる。その後、フォーク状マニピュレータなどを用いて被処理物9を搬出する。
【0019】
昇降機構5として、昇降ピン5aに代えて、又は昇降ピン5aに加えて、被処理物9の外端部に沿う板状又は枠状をなし、被処理物9の外端部を昇降可能に支持する外端支持部材を設けてもよい。
【0020】
基台2の上側に処理部3が配置されている。処理部3は、複数(図では2つ)の処理ヘッド3aと、これら処理ヘッド3aを支持するフレーム7とを有している。処理ヘッド3aは、基台2の幅方向にそれぞれ延び、基台2の長手方向に互いに並べられている。処理ヘッド3aの数は、2つに限られず、1つでもよく、3つ以上でもよい。
【0021】
図3に示すように、各処理ヘッド3aの内部には、左右に延びる電極3bが設けられている。この電極3bに電源(図示せず)が接続されている。電源は、連続波状の高周波電圧を出力するようになっていてもよく、パルス波状の電圧を出力するようになっていてもよい。
【0022】
図示は省略するが、処理ヘッド3aの内部には、処理ガス噴出路が設けられている。処理ガス噴出路に処理ガス源が接続されている。処理ガス源からの処理ガス(処理流体)が、処理ガス噴出路を経て処理ヘッド3aの下方へ、かつ基台2の幅方向に均一に吹き出されるようになっている。
【0023】
処理ガスの成分は、表面処理の内容に応じて適宜選択される。処理ガス成分の一例として、窒素、酸素、クリーンドライエア(CDA)、PFC(CF、C、C等)、SF等が挙げられる。処理ガスは、これらのガス成分の1つだけで構成されていてよく、2以上のガス成分の混合ガスで構成されていてもよい。勿論、処理ガス成分は、上記列挙したガス成分に限定されるものではない。スリットコート式塗布装置等では、処理流体として、ガスに代えて液体を用いてもよい。
【0024】
図1に示すように、処理部3は、移動手段6を介して基台2に支持されている。移動手段6は、モータ等の駆動部6aや、基台2に敷設されたガイドレール6bを有し、処理部3を基台2ひいては被処理物9に対し前後方向(平面PLと平行な移動方向)に移動させるようになっている。
【0025】
被処理物9をステージ4にセットする際、又はステージ4から取り出す際は、移動手段6によって処理部3がステージ4より前後方向の外側に位置される。
被処理物9の表面処理時には、移動手段6によって処理部3がステージ4上の被処理物9の前後方向の一端部と他端部との間を前後に往復移動される。併せて、処理ガス源からの処理ガスが、処理ガス噴出路から処理ヘッド3aとステージ4上の被処理物9との間に吹き出される。さらに、電源から電極3bに電圧が供給される。これにより、電極3bとステージ4との間に電界が印加され、大気圧近傍下で放電が生成される。これにより、処理ヘッド3aと被処理物9との間の処理ガスがプラズマ化される。このプラズマ化された処理ガスが被処理物9に接触し、表面処理がなされる。
【0026】
本発明の最も特徴的な部分を説明する。
図2及び図3に示すように、表面処理装置1は、表面状態検知手段10を備えている。表面状態検知手段10は、複数の表面状態検知ユニット11を有している。これらユニット11は、処理部3の移動方向の両端部(前端部と後端部)の水平フレーム7aの内部に左右に並べられて収容されている。
【0027】
図3及び図4に示すように、各表面状態検知ユニット11は、回転体12と、この回転体12を処理部3に連結して支持する支持部13とを有している。回転体12は、円柱状になっており、その中心軸12aが左右方向(図4の紙面と直交する方向)に向けられている。回転体12の外周面は、軸12aを中心軸とする真円筒面になっている。軸12aは、被処理物9が配置される平面PLと平行で処理部3の移動方向(図3の上下方向、図4の左右方向)と直交(交差)している。
回転体12の材質は、樹脂でもよく、金属でもよい。回転体12の材質としてパーティクルを発生させないものであることが好ましい。
【0028】
図3に示すように、処理部3の前側(図3の上側)のフレーム7a内の複数の表面状態検知ユニット11の回転体12どうしが、左右に一列に並べられている。同様に、処理部3の後側(図3の下側)のフレーム7a内の複数の表面状態検知ユニット11の回転体12どうしが、左右に一列に並べられている。左右に隣り合う回転体12どうしは、互いに分離されている。
【0029】
各フレーム7a内の回転体12のうちの1つを「第1回転体」とすると、他の1つが「第2回転体」となる。この場合、第1回転体と第2回転体は左右(移動方向と交差する方向)に並んでいる。或いは、前側(移動方向の一側)のフレーム7aの回転体12のうちの1つを「第1回転体」とし、後側(移動方向の他側)のフレーム7aの回転体12のうちの1つを「第2回転体」としてもよい。第1回転体と第2回転体は、移動方向と交差する方向又は移動方向にずれている。第1回転体の軸12aが「第1回転軸」となる。第2回転体の軸12aが「第2回転軸」となる。
上記第1回転体に対応する支持部13は「第1支持部」を構成する。上記第2回転体に対応する支持部13は「第2支持部」を構成する。
【0030】
図3及び図4に示すように、支持部13は、一対の支持板14(支持部分)と、支持軸15と、軸受けブラケット16(連結部分)を含んでいる。各回転体12の両端部に一対の支持板14が設けられている。図4に示すように、各支持板14には円形の保持孔14cが形成されている。保持孔14cに回転体12の端部が回転可能に嵌め込まれている。これにより、回転体12が、中心軸12a(回転軸)の周りに回転可能に支持されている。保持孔14cは、支持板14の下面に達している。この保持孔14cの下端開口から回転体12の下端部が下方へ突出している。回転体12の下端部は、平面PLに上方から近接している。処理部3が被処理物9と対向する移動位置にあるとき、回転体12の下端部と被処理物9との間には、微小な隙間g2が形成される。この隙間g2の厚さは、処理ヘッド3aと被処理物9との間の隙間g1の厚さより小さい。
例えば、g1=2〜5mm程度であるのに対し、支持板14が後記の水平姿勢のときg2=0.5〜4mm程度である。
【0031】
支持板14の基端部は、支持軸15に連結されている。支持軸15は、回転体12から離れ、かつ回転軸12aと平行に左右に延びている。支持軸15は、軸受けブラケット16を介してフレーム7aに対し位置固定されている。図3に示すように、処理部3の前側のフレーム7a内の複数の表面状態検知ユニット11の支持軸15どうしが、左右に一列に並べられている。同様に、処理部3の後側のフレーム7a内の複数の表面状態検知ユニット11の支持軸15どうしが、左右に一列に並べられている。
【0032】
支持板14は、水平姿勢(図4)と、支持軸15側とは反対側の部分が上に傾いた上傾姿勢(図5(d)参照)との間で、支持軸15の周りに回転可能になっている。これにより、回転軸12aが上下(平面PLと交差する方向)に変位可能になっている。図示は省略するが、表面状態検知手段10には、支持板14が水平姿勢より下側(上傾姿勢とは反対側)に回転するのを阻止するストッパが設けられている。通常時、支持板14は、自重及び回転体12の重さにより水平姿勢で安定するようになっている。
【0033】
図4において模式的に示すように、各回転体12に回転センサ21が接続されている。回転センサ21は、例えばエンコーダからなり、回転体12の回転角度を検知する。
【0034】
フレーム7a内には、変位センサ22が設けられている。変位センサ22は、支持板14の先端部(支持軸15側とは反対側の部分)と対向するように配置されている。変位センサ22は、例えばコンタクトスイッチや近接スイッチで構成され、支持板14の先端部ひいては回転軸12aの上下方向の変位を検知する。
【0035】
回転センサ21及び変位センサ22は、制御部30に接続されている。制御部30は、マイクロコンピュータで構成され、回転センサ21及び変位センサ22の検知信号に基づいて移動手段6等を制御する。
【0036】
上記のように構成された表面状態検知手段10の作用を説明する。
被処理物9の表面処理は、処理部3を被処理物9の一端部と他端部の間で往復移動させながら行なう。ここで、図5(a)に示すように、処理部3の移動方向(同図の白抜き太矢印方向)の前方の被処理物9の上面に異物9aが存在しているものとする。すると、左右(図5の紙面と直交する方向)に並んだ複数の表面状態検知ユニット11のうち、異物9aと対応する位置のユニット11の回転体12が、処理部3の移動によって、やがて異物9aに当たる(図5(b))。これにより、該回転体12が、回転軸12aの周りに回転する。この回転が、対応する回転センサ21で検知され、この検知信号が制御部30に入力される。これによって、異物9aの存在を把握できる。
【0037】
図5(c)に示すように、上記回転体12の回転と同時併行して、異物9aの形状に応じて、支持板14が支持軸15の周りに回転し、支持板14の先端部ひいては回転軸12aが上方に変位する。この変位が変位センサ22によって検知され、検知信号が制御部30に入力される。これによって、異物9aの存在を一層確実に把握できる。たとえ、異物9aが回転体12を回転させにくい形状であったとしても(例えば異物が上記移動方向に延びる針状である場合等)、異物9aの存在を確実に把握できる。
【0038】
回転体12は、回転しながら上方へ変位することにより、異物9aに乗り上げる。異物9aの形状によって乗り上げにくくなることは殆どない。例えば図5のように異物9aの端面が垂直になっている場合、回転体12が異物9aの上面と端面の角部を支点にして異物9aに確実に乗り上げることができる。したがって、異物9aが回転体12によって押し動かされるのを防止でき、被処理物9が異物9aとの摩擦により損傷するのを防止できる。或いは、表面状態検知ユニット11の破損を防止できる。
【0039】
異物9aに乗り上げた後の回転体12は、処理部3の移動に伴なって異物9a上を転がる(図5(d))。したがって、異物9aと回転体12との間には、主にころがり摩擦が生じることになり、すべり摩擦が生じるのを防止できる。よって、被処理物9が受ける力を小さくでき、被処理物9の損傷を更に防止できる。回転軸12aが上下に変位できるため、異物9aが回転体12と被処理物9との間に挟まれて押圧されるのを防止でき、被処理物9の損傷を一層確実に防止できる。
【0040】
回転センサ21は、回転体12の異物9aへの乗り上げ時の回転だけでなく、回転体12の異物9a上での転がりをも検知し、その検知信号を制御部30に入力する。これにより、回転体12が異物9aに接触した以降の回転角度が検出される。制御部30は、この回転角度が閾値を超えた場合、移動手段6による処理部3の移動を強制的に停止する。これによって、被処理物9の損傷をより一層確実に防止できる。閾値を的確に設定することにより、誤動作を回避できる。
変位センサ22による変位検出量にも閾値を設定し、変位検出量がこの閾値を超えた場合、処理部3の移動を強制的に停止することにしてもよい。回転角度検出量と変位検出量の少なくとも一方が閾値を超えた場合、処理部3の移動を強制的に停止することにしてもよい。
【0041】
さらに、制御部30は、左右に一列に並んだ表面状態検知ユニット11のうち、回転又は変位が検出されたユニット11を識別し、これをモニタ(表示手段)に表示する。これによって、異物9aが被処理物9のどのあたりに存在するかを容易に把握でき、異物9aの除去作業を効率的に行なうことができ、表面処理の中断時間を短くできる。
【0042】
複数の表面状態検知ユニット11によって被処理物9の幅方向(図5の紙面と直交する方向)の全域の異物検知を漏れなく行なうことができる。一方、各回転体12の長さは、被処理物9の幅より十分に短い。したがって、組み付け精度を十分に確保でき、回転体12と被処理物9との間の隙間g2を十分に狭くできる。よって、異物9aが小さくても、確実に検知することができる。
【0043】
処理部3が往方向(図3の上側)に移動する際は、処理部3の前側(図3の上側)の表面状態検知ユニット11によって移動方向の前方の異物や隆起部分を検知できる。処理部3が復方向(図3の下側)に移動する際は、処理部3の後側(図3の下側)の表面状態検知ユニット11によって移動方向の前方の異物や隆起部分を検知できる。したがって、処理部3が表面状態検知手段10より先に異物や隆起部分に接触するのを確実に防止できる。これにより、処理部3や被処理物9が損傷するのを一層確実に防止できる。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、種々の改変をなすことができる。
例えば、上記実施形態では、被処理物9の表面上に存在する異物9aを検知したが、異物9aがステージ4と被処理物9との間に挟まれ、その部分の被処理物9が隆起している場合にも、表面状態検知手段10によって上記被処理物9の隆起部分を検知できる。被処理物9の一部分が異物9a以外の原因で隆起している場合にも、表面状態検知手段10によって上記隆起部分を検知できる。
回転体12の形状は、真円柱に限られず、楕円柱でもよく、多角形柱でもよい。回転体12は、中実の柱に限られず、中空の筒でもよい。回転体12の軸長が直径より短くてもよい。
各フレーム7a内の第1回転体と第2回転体は、処理部3の相対移動方向と交差する方向にずれていればよく、処理部3の相対移動と交差する方向に離れているのに限られず、処理部3の相対移動方向から見て一部分が重なっていてもよい。
処理部3の相対移動方向と、回転体12の軸方向は、正確に直交していなくてもよく、交差していればよい。
被処理物9のための配置部は、水平面を有する板状のステージ4に限られず、複数の支持ピンやローラーなどであってもよい。またステージ4の上面すなわち被処理物の支持面は、全体が平面でなくてもよく、突起や凸条が設けられていてもよく、この突起や凸条にて被処理物9を支持してもよい。
被処理物9が配置される平面PLは、水平でなくてもよく、水平に対し斜めになっていてもよく、垂直であってもよい。
支持部分14が支持軸15に回転可能に連結されるのに代えて、平面PLと交差する方向にスライド変位されるようになっていてもよい。支持部分14の変位方向は、平面PLに対し正確に直交していなくてもよく、交差していればよい。
被処理物は、ガラス基板に限られず、半導体ウェハや柔軟な連続シートであってもよい。
処理部が位置固定され、移動手段が被処理物を移動させるようになっていてもよい。移動手段が、ローラコンベア等で構成され、被処理物を配置する配置部を兼ねていてもよい。被処理物が連続シートである場合、移動手段は、連続シートを繰り出すロールと連続シートを巻き取るローラーで構成され、被処理物を平面PLに配置する配置部を兼ねていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る表面処理装置の斜視図である。
【図2】上記表面処理装置の側面図である。
【図3】上記表面処理装置の処理部を解説的に示す平面図である。
【図4】上記表面処理装置の表面状態検知手段を解説的に示す、図3のIV−IV線に沿う側面図である。
【図5】(a)は、異物が回転体に達する前の状態の側面図であり、(b)は、回転体が異物に当たった状態の側面図であり、(c)は、回転体が異物に乗り上げる状態の側面図であり、(d)は、回転体が異物の上を転がる状態の側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 表面処理装置
2 基台
3 処理部
3a 処理ヘッド
3b 電極
4 ステージ(配置部)
5 昇降機構
5a 昇降ピン
6 移動手段
6a 駆動部
6b ガイドレール
7 フレーム
7a 水平フレーム
9 被処理物
9a 異物
10 表面状態検知手段
11 表面状態検知ユニット
12 回転体
12a 中心軸(回転軸)
13 支持部
14 支持板(支持部分)
14c 保持孔
15 支持軸
16 軸受けブラケット(連結部分)
21 回転センサ
22 変位センサ
30 制御部
g2 回転体と被処理物との間の隙間
g1 処理ヘッドと被処理物との間の隙間
PL 平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を平面上に配置する配置部と、
前記平面と対向し、前記被処理物の表面を処理する処理部と、
前記処理部を前記被処理物に対し前記平面と平行な移動方向に相対移動させる移動手段と、
前記表面上の異物又は前記表面の隆起を検知する表面状態検知手段と、
を備え、前記表面状態検知手段が、
前記平面と平行で前記移動方向と交差する回転軸を有して前記平面に近接する回転体と、
前記回転体を、前記回転軸のまわりに回転可能な状態で、かつ前記回転軸が前記平面と交差する方向に変位可能な状態で前記処理部に連結して支持する支持部と、
前記回転体の回転を検知する回転センサと、を含むことを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記回転体の外周面が、前記回転軸を中心軸とする円筒面であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記支持部が、前記回転体を前記回転軸のまわりに回転可能に支持する支持部分と、この支持部分を前記回転軸と平行な支持軸のまわりに回転可能な状態で前記処理部に連結する連結部分とを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記回転センサにて検知した回転角度が閾値を超えたとき、前記移動手段を停止する制御部を、更に備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記表面状態検知手段が、前記回転軸の前記平面と交差する方向への変位を検知する変位センサを更に含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の表面処理装置。
【請求項6】
被処理物を平面上に配置する配置部と、
前記平面と対向し、前記被処理物の表面を処理する処理部と、
前記処理部を前記被処理物に対し前記平面と平行な移動方向に相対移動させる移動手段と、
前記表面上の異物又は前記表面の隆起を検知する表面状態検知手段と、
を備え、前記表面状態検知手段が、
前記平面と平行で前記移動方向と交差する第1回転軸を有して前記平面に近接する第1回転体と、
前記第1回転体を、前記第1回転軸のまわりに回転可能な状態で、かつ前記第1回転軸が前記平面と交差する方向に変位可能な状態で前記処理部に連結して支持する第1支持部と、
前記第1回転体の回転を検知する第1回転センサと、
前記第1回転軸と平行な第2回転軸を有して前記第1回転体に対しずれ、前記平面に近接する第2回転体と、
前記第2回転体を、前記第2回転軸のまわりに回転可能な状態で、かつ前記第2回転軸が前記平面と交差する方向に変位可能な状態で前記処理部に連結して支持する第2支持部と、
前記第2回転体の回転を検知する第2回転センサと、を含むことを特徴とする表面処理装置。
【請求項7】
前記第1回転体と第2回転体が、前記移動方向と交差する方向に並んでいることを特徴とする請求項6に記載の表面処理装置。
【請求項8】
前記第1回転体が、前記処理部の前記移動方向の一側に配置され、前記第2回転体が、前記処理部の前記移動方向の他側に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−7160(P2010−7160A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170684(P2008−170684)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】