説明

表面実装用の水晶発振器

【課題】ICチップの水晶端子の位置に拘わらず、水晶片の励振電極の一方が発振用増幅素子の出力側となる生産性に富んだ表面実装用の水晶発振器を提供する。
【解決手段】一対の励振電極を両主面に有する水晶片2とICチップ1とを容器本体3に収容し、IC端子中の水晶端子6(x、y)と前記励振電極とはワイヤーボンディングを経て電気的に接続し、前記ICチップの出力側に接続した一方の励振電極は前記容器本体の開口端面側に位置し、前記一方の励振電極にイオンビームを照射して発振周波数を調整してなる表面実装用の水晶発振器において、前記一対の励振電極はそれぞれ前記ICチップの入出力端となる水晶端子に選択的に導通可能な第1と第2の回路端子10(x1、x2)又は10(y1、y2)に接続し、前記発振用増幅素子の入出力端となる前記水晶端子は前記第1と第2の回路端子のいずれかに前記ワイヤーボンディングによって接続した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装用の水晶発振器(以下、表面実装発振器とする)を技術分野とし、特にイオンビームによって発振周波数を調整する表面実装発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
表面実装発振器は小型・軽量であることから特に携帯型の電子機器に周波数や時間の基準源として内蔵される。このようなものの一つに、イオンビームの照射によって発振周波数を調整した表面実装発振器がある。
【0003】
(従来技術の一例)
第3図及び第4図は一従来例を説明する図で、第3図(a)は表面実装発振器の断面図、同図(b)はカバーを除く平面図、同図(c)は水晶片の平面図、第4図は簡略的な発振回路図である。
【0004】
表面実装発振器は、ICチップ1と水晶片2とを容器本体3に収容し、金属カバー4を被せて密閉封入する。ICチップ1は少なくも発振用増幅素子5例えばC−MOSからなるインバータ素子を集積化し、ここでは所謂コルピッツ型とする分割コンデンサC(ab)を有する発振回路を形成する。
【0005】
そして、ICチップ1の回路機能面(一主面)にはIC端子6が例えば一主面の両側に沿って形成される。IC端子6は一対の水晶端子6(xy)、さらには例えば電源、出力、アース及びスタンバイ端子からなり、このうちの水晶端子6(xy)は一端部両側に設けられる。
【0006】
水晶片2は一対の励振電極7(xy)を両主面に有し、例えば外周部となる一端部両側に引出電極8(xy)を延出する。引出電極8(xy)は例えば一主面の引出電極8xを右側(図の下側)とする。なお、引出電極8(xy)は通常では反対面に折り返して形成されるが、ここでは便宜的に折返し部は示されていない。
【0007】
この場合、引出電極8(xy)は長さ方向の中心線に対して回転対称とし、水晶片2の表裏を反転しても、引出電極8xが常に右側に位置する。そして、発振用増幅素子5の入出力端間に水晶振動子3A(水晶片2)の励振電極7(xy)「引出電極8(xy)」が電気的に接続する。なお、第4図中の鎖線枠外がICチップ1であり、符号Rは帰還抵抗である。
【0008】
容器本体3は積層セラミックからなり、第1と第2の内壁段部9(ab)を有して凹状とする。第1内壁段部9aは長さ方向の両側に沿って形成され、第2内壁段部9bは長さ方向の両端側に形成される。そして、第1内壁段部9aは第2内壁段部9bよりも高さが低い。なお、第2内壁段部9bの一端部は、図示しないものの一般には中央から分割されて形成される。
【0009】
そして、容器本体3の内底面にICチップ1の他主面を固着し、回路機能面のIC端子6は長辺方向に沿った第1内壁段部9aの回路端子10にワイヤーボンディングによる金線等の導線12によって接続する。この場合、ICチップ1における一端部両側の水晶端子6(xy)は、容器本体3の長さ方向の一端側として、回路端子10(xy)と接続する。
【0010】
IC端子6のうちの電源、出力、アース及びスタンバイ端子に接続した回路端子10は、外底面の実装端子14に積層面を経てスルーホール等によって電気的に接続する。容器本体3の一端部となる第2内壁段部9bには一対の水晶保持端子11(xy)を有し、水晶片2の引出電極8(xy)の延出した一端部両側が導電性接着剤13によって固着する。一対の水晶保持端子11(xy)はスルーホール15等を経て第1内壁段部9aの回路端子10(xy)に延出する。
【0011】
このようなものでは、容器本体3の開口端面側として水晶片2の上面側となる一方の励振電極7xは発振用増幅素子5の出力端に電気的に接続する。そして、上面側の励振電極7xには図示しないイオンガンからイオンビームが照射され、励振電極7xの質量を減じて発振周波数を調整する。なお、励振電極7xの質量が減じられることによって発振周波数は高くなる。
【0012】
この場合、イオンビームの照射される上面側の励振電極7xは発振用増幅素子5の出力側なので、イオンビームの照射によって生じる電荷はアースに流入し、発振動作に影響を与えない。これに対し、イオンビームの照射される上面側の励振電極7xを発振用増幅素子5の入力側とすると、入力側に電荷が蓄積されて電圧が上昇し、動作点を変動させて発振停止等を生じる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3628931号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の表面実装発振器では、各メーカの設計に基づいたICチップ1によって、IC端子6の配置が異なる。この場合、発振用増幅素子5の入出力端に接続する一端部両側の水晶端子6(xy)は、必ずしも一様ではなく、例えば一端部両側の右側(図の下側)となる水晶端子6xが出力側になることも入力側になることもある。
【0014】
この場合、例えば一端部両側の右側となる一方の水晶端子6xが発振器用増幅素子5の出力側とすると、前述したように水晶片2における一主面の引出電極8xが右側であれば、一主面(同主面)の励振電極7xが上面側(容器本体3の開口端面側)となる。したがって、周波数調整時のイオンビームは、出力側となる上面側の励振電極7xに照射されるので、発振動作に支障を来すことはない。
【0015】
しかし、ICチップ1における一端部両側の右側とした一方の水晶端子6xが発振器用増幅素子5の入力側とすると、水晶片2における上面側の励振電極7xも発振用増幅素子5の入力側となる。したがって、周波数調整時のイオンビームは入力側となる上面側の励振電極7xに照射されるので、発振動作に障害を生じる。
【0016】
このことから、発振器用増幅素子5の入力側となる水晶端子6xが右側の場合は、第5図(ab)に示したように、一主面の励振電極7xから延出した引出電極8xを一主面の右側「同図(a)」から左側「同図(b)」に変更する。なお、第5図(a)は前第3図(c)と同一である。
【0017】
これにより、他主面の励振電極7yから延出した右側の引出電極8yが発振用増幅素子5の入力側に接続し、上面側の励振電極7xから延出した左側の引出電極8xが出力側に接続する。したがって、イオンビームは出力側に接続した上面側の励振電極7xに照射されて発振動作を正常にする。
【0018】
しかし、この場合には、一主面の励振電極7xから、引出電極8xが一端部両側の右側又は左側とした2種類の水晶片2を準備して在庫する必要がある。したがって、手間も掛かり、生産性を低下する問題があった。
【0019】
(発明の目的)
本発明は、ICチップのIC端子(水晶端子)の位置に拘わらず、水晶片の上面側となる一方の励振電極が発振用増幅素子の出力側になる生産性に富んだ表面実装発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、少なくとも発振用増幅素子を集積化してなるICチップと一対の励振電極を両主面に有する水晶片とを凹部を有する容器本体に収容し、前記発振用増幅素子の入出力端となるIC端子中の一端部両側に設けられた水晶端子と前記励振電極とはワイヤーボンディングを経て電気的に接続し、前記発振用増幅素子の出力側に電気的に接続した前記励振電極中の一方の励振電極は前記容器本体の開口端面側に位置し、前記一方の励振電極にイオンビームを照射して発振周波数を調整してなる表面実装用の水晶発振器において、前記一対の励振電極はそれぞれ前記発振用増幅素子の入出力端となるIC端子中の水晶端子に選択的に導通可能な第1と第2の回路端子に接続し、前記発振用増幅素子の入出力端となる前記水晶端子は前記第1と第2の回路端子のいずれかに前記ワイヤーボンディングによって接続した構成とする。
【発明の効果】
【0021】
このような構成であれば、一対の励振電極(上下面電極)はそれぞれ発振用増幅素子の入出力端となるIC端子中の水晶端子に選択的に導通可能な第1と第2の回路端子に接続する。したがって、発振用増幅素子の入出力端に接続したIC端子中の水晶端子は、第1と第2の回路端子のいずれかを選択してワイヤーボンディングできる。これにより、IC端子中における一端部両側の水晶端子が発振用増幅素子の入出力端のいずれに接続していたとしても、容器本体の開口端面側となる一方の励振電極(上面電極)を発振用増幅素子の出力端に接続できる。
【0022】
(実施態様項)
本発明の請求項2では、請求項1において、前記容器本体は一端部に内壁段部を有し、前記ICチップは容器本体の内底面に固着し、前記励振電極から引出電極の延出した一端部両側は前記内壁段部に固着する。これにより、請求項1での容器本体に対するICチップと水晶片との位置関係を明確にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
第1図及び第2図は本発明の一実施形態を説明する表面実装発振器の図で、第1図(ab)はカバーを除く平面図、第2図は簡略的な発振回路の図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0024】
表面実装発振器は、前述したように、凹状とした容器本体3の内底面にICチップ1を固着してワイヤーボンディングの導線12によって、長辺方向に沿った両側の第1内壁段部9aの回路端子10とIC端子6とを電気的に接続する。励振電極7(xy)から引出電極8(xy)の延出した水晶片2の一端部両側は、容器本体3の一端側となる第2内壁段部9bの水晶保持端子11(xy)に導電性接着剤13によって固着される。
【0025】
そして、水晶片2の一端部両側が固着される水晶保持端子11(xy)は、それぞれがスルーホール15等によって、長辺方向の両側となる第1内壁段部9aの表面上に設けた一端部寄りの回路端子10(xy)と電気的に接続する。この実施形態では、回路端子10は両側の第1内壁段部9aの表面上に2個ずつ「10(x1、y1)、10(x2、y2)」が設けられて、各水晶保持端子11(xy)と電気的に接続する。
【0026】
すなわち、例えば右側(図の下側)の水晶保持端子11xは、右側の第1内壁段部9aの回路端子10x1、及び左側の第1内壁段部9aの回路端子10x2に接続する。また、左側(図の上側)の水晶保持端子11yは、右側の第1内壁段部9aの回路端子10y1、及び左側の第1内壁段部9aの回路端子10y2に接続する。
【0027】
このようなものでは、水晶片2の一主面における励振電極7xから延出した引出電極8xが前述したように例えば右側にあるとして説明すると次になる。すなわち、ICチップ1の一端部両側の水晶端子6(xy)の右側が発振用増幅器5の出力端となる場合は、水晶端子6xはワイヤーボンディングによる導線12によって、右側の水晶保持端子11xから延出した第1内壁段部9aの右側となる回路端子10x1に接続する。
【0028】
そして、ICチップ1の左側の水晶端子6yはワイヤーボンディングによる導線12によって、第1内壁段部9aの左側の回路端子10y2に接続する。これにより、ICチップ1(発振用増幅器5)の出力側となる水晶端子6xと接続した水晶片2の右側の引出電極8x及び励振電極7xは上面側となって、即ち容器本体3の開口端面側上となる。
【0029】
また、ICチップ1の一端部両側の水晶端子6(xy)の右側が前述とは逆に発振用増幅器5の入力端となる場合は、水晶端子6xはワイヤーボンディングによる導線12によって、左側の水晶保持端子11yから延出した第1内壁段部9aの左側となる回路端子10y1に接続する。
【0030】
そして、ICチップ1の左側の水晶端子6yはワイヤーボンディングによる導線12によって、第1内壁段部9aの右側の回路端子10x2に接続する。この場合でも、ICチップ1の左側の水晶端子6yが出力端となるので、水晶片2の右側の引出電極8xが出力側の水晶端子6yと接続する。したがって、引出電極8xと同一主面の励振電極7xが上面側(容器本体3の開口端面側)となる。
【0031】
これらのことから、IC端子6のうちの一端部両側とした水晶端子6(xy)の位置が左右のいずれであっても、回路端子10(x1、y1)又は10(x2、y2)を選択してワイヤーボンディングすることによって、上面側の励振電極7xを発振用増幅器5の出力側にできる。
【0032】
したがって、一主面の励振電極7xから引出電極8(xy)が一端部両側即ち右側又は左側に延出した2種類の水晶片2を準備する必要もなく、手間も省けて生産性を向上できる。なお、水晶片2の一主面における励振電極7xから延出した引出電極8xが右側にあった場合でも、同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態を説明する表面実装発振器の図で、第1図(ab)ともにカバーを除く平面図である。
【図2】本発明の一実施形態を説明する表面実装発振器の簡略的な発振回路の図である。
【図3】従来例を説明する図で、同図(a)は表面実装発振器の断面図、同図(b)はカバーを除く平面図、同図(c)は水晶片の平面図である。
【図4】従来例を説明する表面実装発振器の簡略的な発振回路図である。
【図5】同図(ab)ともに従来例を説明する水晶片の平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ICチップ、2 水晶片、3 容器本体、4 金属カバー、5 発振用増幅器、6 回路端子、7 励振電極、8 引出電極、9 内壁段部、10 回路端子、11 水晶保持端子、12 導線、13 導電性接着剤、14 実装端子、15 スルーホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発振用増幅素子を集積化してなるICチップと一対の励振電極を両主面に有する水晶片とを凹部を有する容器本体に収容し、前記発振用増幅素子の入出力端となるIC端子中の一端部両側に設けられた水晶端子と前記励振電極とはワイヤーボンディングを経て電気的に接続し、前記発振用増幅素子の出力側に電気的に接続した前記励振電極中の一方の励振電極は前記容器本体の開口端面側に位置し、前記一方の励振電極にイオンビームを照射して発振周波数を調整してなる表面実装用の水晶発振器において、前記一対の励振電極はそれぞれ前記発振用増幅素子の入出力端となるIC端子中の水晶端子に選択的に導通可能な第1と第2の回路端子に接続し、前記発振用増幅素子の入出力端となる前記水晶端子は前記第1と第2の回路端子のいずれかに前記ワイヤーボンディングによって接続したことを特徴とする表面実装用の水晶発振器。
【請求項2】
請求項1において、前記容器本体は一端部に分割された内壁段部を有し、前記ICチップは容器本体の内底面に固着し、前記励振電極から引出電極の延出した一端部両側は前記内壁段部に固着した表面実装用の水晶発振器。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−152715(P2009−152715A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326813(P2007−326813)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】