説明

赤外線検出器

【課題】高感度が可能で、且つ、気密性を確保しつつ、製造時の赤外線用の光学フィルタ膜の剥れを抑制できる赤外線検出器を提供する。
【解決手段】赤外線検出素子1が実装されたパッケージ本体4と、パッケージ本体4に気密的に接合されたパッケージ蓋5と、赤外線を透過する第1の無機材料により形成されパッケージ蓋5の開口部5aを塞ぐように配置されたキャップ材6と、赤外線を透過する第2の無機材料により形成されてキャップ材6よりも赤外線検出素子1から離れた位置でパッケージ蓋5の外側に配置されたレンズ7とを備える。レンズ7に、赤外線用の光学フィルタ膜が積層されており、キャップ材6が、パッケージ蓋5に気密的に接合され、レンズ7が、導電性ペーストによりパッケージ蓋5に接合されることでパッケージ蓋5と電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、赤外線を検出する熱型の赤外線検出素子と、当該赤外線検出素子を収納するパッケージとを備えた赤外線検出器が各所で研究開発されている(例えば、特許文献1,2,3)。
【0003】
特許文献1には、図7に示すように、複数の端子149が装着されたベースプレート140と、ベースプレート140に接合され赤外線検出素子101などを囲むキャップ152と、キャップ152の開口部152aを塞ぐようにキャップ152に気密接合された赤外線透過部材160とを備えた赤外線検出器が開示されている。ここで、ベースプレート140およびキャップ152は、金属により形成されており、赤外線透過部材160は、ゲルマニウムにより形成されている。また、赤外線透過部材160は、平板状に形成されており、低融点ガラスを使用してキャップ152に接合されている。
【0004】
また、特許文献2には、図8に示すように、複数のリード端子249を有するベース240と、ベース240に接合され赤外線検出素子201などを囲むキャップ252と、キャップ252の上壁の赤外線入射窓252aを塞ぐようにキャップ250に接合された赤外線透過フィルタ260と、ポリエチレンにより形成されキャップ250および赤外線透過フィルタ260などを覆うコーティング膜270とを備え、コーティング膜270のうちキャップ252の上面側の部分をフレネルレンズ272となるように成形した赤外線検出器が開示されている。ここで、ベース240およびキャップ252は、金属により形成されている。また、赤外線透過フィルタ260は、シリコン基板もしくはゲルマニウム基板を用いて形成されており、反射防止膜並びに赤外線透過フィルタ膜が蒸着されている。この赤外線透過フィルタ260は、接合材280によりキャップ252に接合されている。
【0005】
また、特許文献3には、図9に示すように、シリコン基板からなる基板340と、基板340の主表面上に形成された画素領域からなる赤外線検出素子301と、シリコンもしくはゲルマニウムにより形成され赤外線検出素子301の上方に設けられたレンズ370と、赤外線検出素子301を取り囲むように基板340上に設けられレンズ370を支持する支持部333を有する筐胴330と、レンズ370を覆うように筐胴330上に設けられ筐胴330内の空間を真空封止する封止窓360と、封止窓360とレンズ370との間に設けられレンズ360を筐胴330に向けて押圧することでレンズ370を固定する固定部材としてのストッパ350とを備えた赤外線検出器が開示されている。ここで、封止窓360と筐胴330およびストッパ350とは、互いの対向面に形成されたメタライズ膜380同士が半田部390により接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−229765号公報
【特許文献2】実開平5−23070号公報
【特許文献3】特開2007−228347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7に示した構成の赤外線検出器では、赤外線透過部材160が低融点ガラスを使用してキャップ152に気密接合され、ベースプレート140とキャップ152と赤外線透過部材160とで囲まれた空間が真空に保たれている。ここで、赤外線透過部材160において検知対象の赤外線を反射することなく効率良く取り込むようにして高感度化を図るために、赤外線透過部材160に赤外線透過フィルタ膜を形成することが考えられる。しかしながら、赤外線透過部材160をキャップ152に気密接合する接合時に、400℃〜600℃程度の高温になるため、赤外線透過フィルタ膜の剥れが発生してしまう懸念がある。
【0008】
また、図7の構成の赤外線検出器では、赤外線透過部材160が平板状に形成された板材なので、図8のようにフレネルレンズ272を備えた赤外線検出器や図9のようにレンズ370を備えた赤外線検出器に比べて、感度が低くなってしまうことが考えられる。そこで、図7の赤外線検出器における赤外線透過部材160の代わりにレンズを用いることも考えられるが、この場合も、レンズをキャップ152に気密接合する接合時に、レンズに形成されている赤外線透過フィルタ膜の剥れが発生してしまう懸念がある。
【0009】
また、図8の構成の赤外線検出器では、フレネルレンズ272により赤外線を集光させることができるので、高感度化を図れる。しかしながら、図8の赤外線検出器でも、赤外線透過フィルタ260をキャップ252に気密接合するために接合材280として半田を用いた場合、赤外線透過フィルタの反射防止膜並びに赤外線透過フィルタ膜の剥れが発生してしまう懸念がある。
【0010】
また、図8の構成の赤外線検出器では、フレネルレンズ272がポリエチレンにより形成されているが、ポリエチレンは、シリコンやゲルマニウムなどの赤外線透過材料に比べて屈折率が低く、赤外線の吸収率が大きいので、バックフォーカスが短く且つ明るい赤外線レンズを形成できない。また、上述のようにポリエチレンはシリコンやゲルマニウムに比べて屈折率が低いので、赤外線検出器の検知対象が人体などから放射される赤外線である場合、検知エリアを広くするために、レンズの開口径を大きくする必要があり、開口径の増大に伴うレンズ厚みの増大により、感度が低下してしまい、しかも、バックフォーカスが長くなって赤外線検出器の薄型化が難しくなってしまう。
【0011】
また、図9の構成の赤外線検出器では、レンズ370と筐胴330とを半田により接合する必要がないという利点ある。しかしながら、レンズ370の厚みやレンズ曲率の異なる赤外線検出器ごとにストッパ350を高い寸法精度で形成する必要があり、コストが高くなってしまう。また、ストッパ350によりレンズ370を押圧するので、筐胴330、ストッパ350、レンズ370それぞれの寸法精度を高めなければ、封止窓360と筐胴330との気密的な接合ができないという懸念や、レンズ370が破損してしまうという懸念がある。また、レンズ370に反射防止膜や赤外線透過フィルタ膜を形成した場合には、ストッパ350が当たることにより剥れたり、筐胴330と封止窓360とを半田により接合する際に剥れたりする懸念がある。
【0012】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、高感度が可能で、且つ、気密性を確保しつつ、製造時の赤外線用の光学フィルタ膜の剥れを抑制できる赤外線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、赤外線検出素子と、電磁シールド機能を有し前記赤外線検出素子が実装されたパッケージ本体と、金属により形成されて前記赤外線検出素子の前方に開口部を有し前記パッケージ本体に気密的に接合されたパッケージ蓋と、赤外線を透過する第1の無機材料により形成され前記パッケージ蓋の前記開口部を塞ぐように配置されたキャップ材と、赤外線を透過する第2の無機材料により形成されて前記キャップ材よりも前記赤外線検出素子から離れた位置で前記パッケージ蓋の外側に配置されたレンズとを備え、前記レンズに、赤外線用の光学フィルタ膜が積層されてなり、前記キャップ材が、前記パッケージ蓋に気密的に接合され、前記レンズが、導電性ペーストと非導電性樹脂との少なくとも一方により前記パッケージ蓋もしくは前記キャップ材に接合されてなり、前記キャップ材と前記レンズとの少なくとも一方が、前記パッケージ蓋への接合により前記パッケージ蓋と電気的に接続されてなることを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記キャップ材は、前記パッケージ蓋の内側に配置されてなることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記キャップ材は、前記パッケージ蓋の外側に配置されてなることを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記キャップ材と前記パッケージ蓋とは、低融点ガラスにより接合されてなることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4の発明において、前記パッケージ蓋の内側にゲッタが形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明は、高感度が可能で、且つ、気密性を確保しつつ、製造時の赤外線用の光学フィルタ膜の剥れを抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1の赤外線検出器の概略断面図である。
【図2】実施形態2の赤外線検出器の概略断面図である。
【図3】実施形態3の赤外線検出器の概略断面図である。
【図4】実施形態4の赤外線検出器の概略断面図である。
【図5】実施形態5の赤外線検出器の概略断面図である。
【図6】実施形態6の赤外線検出器の概略断面図である。
【図7】従来例の赤外線検出器の概略断面図である。
【図8】他の従来例の赤外線検出器の概略断面図である。
【図9】別の従来例の赤外線検出器の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
以下、本実施形態の赤外線検出器について図1を参照しながら説明する。
【0021】
本実施形態の赤外線検出器は、赤外線検出素子1と、電磁シールド機能を有し赤外線検出素子1が実装されたパッケージ本体4と、金属により形成されて赤外線検出素子1の前方に開口部5aを有しパッケージ本体4に気密的に接合されたパッケージ蓋5とを備えている。また、赤外線検出器は、赤外線を透過する第1の無機材料により形成されパッケージ蓋5の開口部5aを塞ぐように配置されたキャップ材6を備えている。また、赤外線検出器は、赤外線を透過する第2の無機材料により形成されてキャップ材6よりも赤外線検出素子1から離れた位置でパッケージ蓋5の外側に配置されたレンズ7を備えている。レンズ7には、赤外線用の光学フィルタ膜が積層されている。キャップ材6は、パッケージ蓋5に気密的に接合され、レンズ7は、導電性ペーストと非導電性樹脂との両方によりパッケージ蓋5に接合されている。要するに、レンズ7は、パッケージ蓋5への接合によりパッケージ蓋5と電気的に接続されている。
【0022】
また、赤外線検出器は、赤外線検出素子1の出力信号を信号処理するIC素子2を備え、当該IC素子2が、赤外線検出素子1と横並びでパッケージ本体4に実装され、パッケージ蓋5が、赤外線検出素子1とIC素子2との両方を囲む大きさに形成されている。
【0023】
パッケージ本体4は、絶縁材料からなる基体40に金属材料からなる配線パターン(図示せず)および電磁シールド層44が形成されており、電磁シールド層44により電磁シールド機能を有している。一方、パッケージ蓋5は、金属により形成されており、導電性を有している。ここにおいて、パッケージ蓋5は、パッケージ本体4の電磁シールド層と電気的に接続されている。しかして、本実施形態では、パッケージ本体4の電磁シールド層とパッケージ蓋5とレンズ7とを同電位とすることができる。その結果、パッケージ3は、赤外線検出素子1とIC素子2と上記配線パターンと後述のボンディングワイヤ71〜73と含んで構成されるセンサ回路(図示せず)への外来の電磁ノイズを防止することが機能を有している。
【0024】
また、パッケージ本体4とパッケージ蓋5とキャップ材6とで構成されるパッケージ3は、内部空間(気密空間)を、ドライ窒素雰囲気としてあるが、これに限らず、例えば、真空雰囲気としてもよい。
【0025】
以下、各構成要素についてさらに説明する。
【0026】
赤外線検出素子1は、マイクロマシニング技術を利用して形成された赤外線アレイセンサ(赤外線イメージセンサ)であって、熱型赤外線検出部と画素選択用のスイッチ要素であるMOSトランジスタとを有する複数の画素部が、シリコン基板からなるベース基板の一表面側において2次元アレイ状に配列されている。熱型赤外線検出部の感温部は、サーモパイルにより構成してあるが、これに限らず、抵抗ボロメータ、焦電体薄膜などにより構成してもよい。
【0027】
赤外線検出素子1は、各画素部にMOSトランジスタを設けてあるが、必ずしも設ける必要はない。また、赤外線検出素子1は、必ずしも画素部を2次元アレイ状に備えた赤外線アレイセンサである必要はなく、少なくとも1つの感温部を備えたものであればよい。また、赤外線検出素子1は、焦電体基板を用いて形成した焦電素子でもよく、この場合には、赤外線検出器を、プリント配線板のような回路基板などに2次実装する際に、接合材料として鉛フリー半田(例えば、SnCuAg半田など)を用いることを考慮して、焦電素子の材料としてPZT(:Pb(Zr,Ti)O3)よりもキュリー温度の高いリチウムタンタレート(:LiTaO3)やリチウムナイオベート(:LiNbO3)を用いることが好ましい。また、集電素子として、同一の焦電体基板に4つの素子エレメント(受光部)が2×2もしくは1×4のアレイ状に形成されたクワッドタイプ素子や、2つの素子エレメントが1×2のアレイ状に形成されたデュアルタイプ素子などを用いることにより、外部からの熱に起因した焦電素子の出力のゆらぎを低減することが可能となる。
【0028】
IC素子2は、ASIC(:Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されている。また、IC素子2としてベアチップを用いている。しかして、本実施形態では、IC素子2がベアチップをパッケージングしたものである場合に比べて、パッケージ3の小型化を図れる。
【0029】
IC素子2の回路構成は、赤外線検出素子1の種類などに応じて適宜設計すればよく、例えば、赤外線検出素子1が上述の赤外線アレイセンサの場合には、赤外線検出素子1を制御する制御回路、赤外線検出素子1の出力電圧を増幅する増幅回路、赤外線検出素子1の複数の出力用のパッドに電気的に接続された複数の入力用のパッドの出力電圧を択一的に上記増幅回路に入力するマルチプレクサなどを備えた回路構成とすれば、赤外線画像を得ることができる。また、赤外線検知器が人体検知用のものであり、赤外線検出素子1が上述の焦電素子の場合、IC素子2の回路構成は、例えば、赤外線検出素子1から出力される出力信号である焦電電流を電圧信号に変換する電流電圧変換回路と、電流電圧変換回路により変換された電圧信号のうち所定の周波数帯域の電圧増幅する電圧増幅回路(バンドパスアンプ)と、電圧増幅回路で増幅された電圧信号を適宜設定したしきい値と比較し電圧信号がしきい値を越えた場合に検知信号を出力する検知回路と、検知回路の検知信号を所定の人体検出信号として出力する出力回路とを備えた回路構成とすればよい。
【0030】
パッケージ本体4は、赤外線検出素子1およびIC素子2が一表面側に実装される平板状のセラミック基板により構成してある。要するに、パッケージ本体4は、基体40が絶縁材料であるセラミックスにより形成されており、上記配線パターンのうち基体40の一表面側に形成された部位に、赤外線検出素子1およびIC素子2それぞれのパッド(図示せず)が、ボンディングワイヤ71,72を介して適宜接続されている。また、赤外線検出素子1とIC素子2とは、ボンディングワイヤ73を介して電気的に接続されている。各ボンディングワイヤ71〜73としては、Alワイヤに比べて耐腐食性の高いAuワイヤを用いることが好ましい。
【0031】
本実施形態では、パッケージ本体4の絶縁材料としてセラミックスを採用しているので、上記絶縁材料としてエポキシ樹脂などの有機材料を採用する場合に比べて、パッケージ本体4の耐湿性および耐熱性を向上させることができる。ここで、絶縁材料のセラミックスとして、アルミナを採用すれば、窒化アルミニウムや炭化珪素などを採用する場合に比べて、上記絶縁材料の熱伝導率が小さく、IC素子2やパッケージ3の外部からの熱に起因した赤外線検出素子1の感度の低下を抑制できる。
【0032】
また、パッケージ本体4は、上記配線パターンの一部により構成される外部接続電極(図示せず)が、基体40の他表面と側面とに跨って形成されている。しかして、本実施形態の赤外線検出器では、回路基板などへの2次実装後において、回路基板などとの接合部の外観検査を容易に行うことができる。
【0033】
ここで、赤外線検出素子1は、パッケージ本体4の第1の領域41に第1のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる複数の接合部15を介して実装され、IC素子2は、パッケージ本体4の第2の領域42に第2のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる接合部25を介して実装されている。各ダイボンド剤としては、低融点ガラスやエポキシ系樹脂やシリコーン系樹脂などの絶縁性接着剤、半田(鉛フリー半田、Au−Sn半田など)や銀ペーストなどの導電性接着剤を用いればよい。また、各ダイボンド剤を用いずに、例えば、常温接合法や、Au−Sn共晶もしくはAu−Si共晶を利用した共晶接合法などにより接合してもよい。
【0034】
上述の赤外線検出素子1は、複数の接合部15を介して第1の領域41に接合してあるので、赤外線検出素子1の裏面の全体が接合部15を介して第1の領域41に接合される場合に比べて、赤外線検出素子1とパッケージ本体4との間の空間16が断熱部として機能することと、接合部15の断面積の低減とにより、パッケージ本体4から赤外線検出素子1へ熱が伝達しにくくなる。この接合部15の数は、特に限定するものではないが、赤外線検出素子1の外周形状が矩形状(正方形状ないし長方形状)の場合には、例えば、3つが好ましい。赤外線検出素子1の外周形状に基づいて規定した仮想三角形の3つの頂点に対応する3箇所に接合部15を設けることにより、パッケージ本体4への実装時などの温度変化に起因したパッケージ本体4の変形が赤外線検出素子1の傾きとして伝わるから、赤外線検出素子1が変形するのを抑制することができ、赤外線検出素子1に生じる応力を低減することが可能となる。なお、本実施形態では、赤外線検出素子1の外周形状が例えば正方形状の場合、赤外線検出素子1の外周の1辺の両端の2箇所と、当該1辺に平行な辺の1箇所(ここでは、中央部)との3箇所に頂点を有する仮想三角形を規定しているが、仮想三角形の頂点の位置は、赤外線検出素子1の外周形状、赤外線検出素子1のパッドへのワイヤボンディング時の接合信頼性(言い換えれば、赤外線検出素子1のパッドの位置)を考慮して規定することが好ましい。また、接合部15には、赤外線検出素子1と第1の領域41との距離を規定するスペーサを混入させてもよい。このようなスペーサを混入させておけば、赤外線検出器の製品間での赤外線検出素子1とパッケージ本体4との間の熱絶縁性能のばらつきを低減可能となる。
【0035】
また、IC素子2は、外周形状が矩形状(正方形状ないし長方形状)であり、裏面全体が接合部25を介して第2の領域42に接合されている。
【0036】
ところで、パッケージ本体4の第2の領域42は、基体40の上記一表面に凹部40bを設けることにより、第2の領域42の厚みを第1の領域41の厚みよりも薄くしてある。また、パッケージ本体4は、基体40に金属材料(例えば、Cuなど)からなる電磁シールド層44が埋設されており、第2の領域42では、電磁シールド層44が露出している。また、パッケージ本体4の第2の領域42では、金属材料(例えば、Cuなど)からなる複数のビア(サーマルビア)45が基体40の厚み方向に貫設されており、各ビア45が電磁シールド層44と接して熱結合されている。
【0037】
ここで、IC素子2は、第2の領域42において電磁シールド層44に接合部25を介して接合されている。しかして、IC素子2で発生した熱を電磁シールド層44におけるIC素子2の直下の部位およびビア45を通してパッケージ3の外側へ効率良く放熱させることが可能となる。本実施形態では、電磁シールド層44のうち第2の領域41に形成された部位が、IC素子2が実装され熱結合される金属部を構成し、各ビア45が、第1の領域41を避けて形成されてパッケージ3の外側に一部が露出する放熱部を構成している。要するに、金属部は、第1の領域41を避けて形成されてパッケージ3の外側に一部が露出する放熱部と熱結合されている。
【0038】
パッケージ本体4は、上記配線パターンのうち赤外線検出素子1およびIC素子2それぞれのグランド用のパッド(図示せず)が接続される部位を、電磁シールド層44に電気的に接続しておくことにより、赤外線検出素子1およびIC素子2などにより構成されるセンサ回路への外来の電磁ノイズの影響を低減でき、外来の電磁ノイズに起因したS/N比の低下を抑制することができる。なお、赤外線検出器を回路基板などに2次実装する場合には、ビア45を回路基板などのグランドパターンと電気的に接続することで、赤外線検出素子1およびIC素子2などにより構成されるセンサ回路への外来の電磁ノイズの影響を低減でき、外来の電磁ノイズに起因したS/N比の低下を抑制することができる。
【0039】
パッケージ蓋5は、パッケージ本体4側の一面が開放された箱状に形成されたメタルキャップである。このパッケージ蓋5は、当該一面がパッケージ本体4により塞がれるようにパッケージ本体4に気密的に接合されている。ここで、パッケージ本体4の上記一表面の周部には、パッケージ本体4の外周形状に沿った枠状の金属パターン47が全周に亘って形成されている。パッケージ蓋5とパッケージ本体4の金属パターン47とは、シーム溶接(抵抗溶接法)により金属接合されており、気密性および電磁シールド効果を高めることができる。なお、パッケージ蓋5は、コバールにより形成されており、Niめっきが施されている。また、パッケージ本体4の金属パターン47は、コバールにより形成され、Niのめっきが施され、さらにAuのめっきが施されている。
【0040】
パッケージ蓋5とパッケージ本体4の金属パターン47との接合方法は、シーム溶接に限らず、他の溶接(例えば、スポット溶接)や、導電性樹脂により接合してもよい。ここで、導電性樹脂として異方導電性接着剤を用いれば、樹脂(バインダー)中に分散された導電粒子の含有量が少なく、接合時に加熱・加圧を行うことでパッケージ蓋5とパッケージ本体4との接合部の厚みを薄くできるので、外部からパッケージ3内へ水分やガス(例えば、水蒸気、酸素など)が侵入するのを抑制できる。また、導電性樹脂として、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入させたものを用いてもよい。
【0041】
なお、パッケージ本体4およびパッケージ蓋5の外周形状は矩形状としてあるが、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、パッケージ蓋5は、パッケージ本体4側の端縁から全周に亘って外方に延設された鍔部5bを備えており、鍔部5bが全周に亘ってパッケージ本体4と接合されている。
【0042】
キャップ材6の材料、つまり、赤外線を透過する第1の無機材料としては、シリコンやガラスを採用することが好ましい。ここで、キャップ材6をシリコン基板やガラス基板により形成した場合には、パッケージ蓋5に対して、低融点ガラスや半田からなる接合部65(以下、第1の接合部65と称する)により気密的に接合すればよい。ただし、半田により接合する場合には、キャップ材6およびパッケージ蓋5それぞれの適宜部位にメタライズ膜を設ける必要がある。キャップ材6は、パッケージ蓋5の開口部5aを塞ぎ且つパッケージ蓋5に気密的に接合されるものであればよいから、平板状に形成してある。ここで、キャップ材6の厚みが薄いほど赤外線の透過量が多くなり感度が向上するが、薄くしすぎるとパッケージ蓋5側から受ける応力などによりクラックなどが発生する懸念があるので、例えば、キャップ材6がシリコン基板の場合には厚みが150μmを下回らないようにすることが好ましい。
【0043】
レンズ7は、平凸型の非球面レンズであり、赤外線検出素子1の受光効率の向上による高感度化を図れるとともに、赤外線検出素子1の検知エリアをレンズ7により設定することが可能となる。レンズ7は、所望のレンズ形状に応じて半導体基板(ここでは、シリコン基板)との接触パターンを設計した陽極を半導体基板の一表面側に半導体基板との接触がオーミック接触となるように形成した後に半導体基板の構成元素の酸化物をエッチング除去する溶液からなる電解液中で半導体基板の他表面側を陽極酸化することで除去部位となる多孔質部を形成してから当該多孔質部を除去することにより形成された半導体レンズ(ここでは、シリコンレンズ)により構成されている。なお、この種の陽極酸化技術を応用した半導体レンズの製造方法については、例えば、特許第3897055号公報、特許第3897056号公報などに開示されているので、説明を省略する。
【0044】
しかして、本実施形態では、赤外線検出素子1の検知エリアを上述の半導体レンズからなるレンズ7により設定することができ、また、レンズ7として、球面レンズよりも短焦点で且つ開口径が大きく収差が小さな半導体レンズを採用することができるから、短焦点化により、パッケージ3の薄型化を図れる。本実施形態の赤外線検出器は、赤外線検出素子1の検知対象の赤外線として人体から放射される10μm付近の波長帯(8μm〜13μm)の赤外線を想定しており、レンズ7の材料として、Siを採用している。レンズ7の材料としては、Si以外に、Ge、ZnSやGaAsを用いてもよいが、ZnSやGaAsなどに比べて環境負荷が少なく且つ、Geに比べて低コスト化が可能であり、しかも、ZnSに比べて波長分散が小さなSiを採用することが好ましい。
【0045】
また、レンズ7は、赤外線の入射面側に赤外線の反射を防止する反射防止膜(図示せず)を積層するとともに、赤外線の出射面側に赤外線用の光学フィルタ膜(図示せず)を積層してある。光学フィルタ膜43は、8μm未満の赤外線を遮断するように光学設計してあるが、赤外線検出器の用途(例えば、人体検知の用途、ガス検知、炎検知の用途など)に応じた検出対象の赤外線の波長や波長域に応じて適宜の光学設計を行えばよい。ここで、反射防止膜および光学フィルタ膜は、例えば、屈折率の異なる複数種類の薄膜を交互に積層することにより形成すればよい。なお、この種の薄膜の材料としては、例えば、Ge、ZnS、ZnSe、Al、SiO、SiN、MgFなどを採用することができる。
【0046】
本実施形態では、レンズ7に反射防止膜および光学フィルタ膜を積層してあるが、少なくともフィルタ膜を積層してあればよく、互いの光学特性の異なる光学フィルタ膜を積層してもよい。
【0047】
本実施形態では、レンズ7に、光学フィルタ膜を設けてあるので、所望の波長域以外の不要な波長域の赤外線や可視光を光学フィルタ膜によりカットすることが可能となり、太陽光などによるノイズの発生を防止することができ、高感度化を図れる。
【0048】
ここにおいて、本実施形態では、上述のようにIC素子2としてベアチップを採用しているので、可視光がカットされるように、パッケージ蓋5およびレンズ7および光学フィルタ膜の材料を適宜選択することにより、可視光に起因したIC素子2の起電力による誤動作を防止することができる。ただし、ベアチップからなるIC素子2における少なくともパッケージ蓋5側の表面に外部からの光を遮光する樹脂部(図示せず)を設けるようにすれば、IC素子2がベアチップをパッケージングしたものである場合に比べてパッケージ3の小型化を図りつつ、可視光に起因したIC素子2の起電力による誤動作をより確実に防止することができる。
【0049】
また、上述のレンズ7は、シリコンウェハを用いて形成すればよく、多数のレンズ7の基礎となるシリコンウェハの一表面側に光学フィルタ膜を形成するとともに他表面側に反射防止膜を形成した後、個々のレンズ7にダイシングすればよい。
【0050】
ここで、レンズ7は、パッケージ蓋5の開口部5aの周部に重なる領域においてパッケージ蓋5との導通をとるために、シリコンウェハの上記一表面側の全面に形成した光学フィルタ膜のうちパッケージ本体4の開口部5aの周部に重なる領域を、上述のダイシング工程において、分割前のシリコンウェハの段階でダイシングブレードなどを利用して除去している。
【0051】
したがって、レンズ7の母材(シリコンにより形成された部分)7aとパッケージ蓋5とを導電性ペーストからなる第2の接合部75を介して接合することにより、レンズ7とパッケージ蓋5とを電気的に接続することができ、赤外線検出器の電磁シールド効果を高めることができる。要するに、本実施形態では、光学フィルタ膜の材料によらず、電磁シールド性を確保することができるので、光学フィルタ膜の材料の選択肢が多くなる。なお、光学フィルタ膜を蒸着法やスパッタ法などの薄膜形成技術を利用して成膜する際に、適宜のシャドーマスクを配置して所定領域のみに光学フィルタ膜を形成するようにすれば、光学フィルタ膜の成膜後に光学フィルタ膜の不要部分をダイシングブレードなどにより除去する工程が不要となる。
【0052】
また、レンズ7は、パッケージ蓋5における開口部5aの内周面および周部に位置決めされる段差部7bが周部の全周に亘って形成されており、段差部7bを第2の接合部75を介してパッケージ蓋5の外側の表面における開口部5aの周部の全周に亘って接合してある。したがって、レンズ7と赤外線検出素子1との平行度を高めることができ、レンズ7の光軸方向におけるレンズ7と赤外線検出素子1との距離の精度を高めることができる。なお、段差部7bは、例えば、上述のダイシング工程において、分割前のシリコンウェハの段階でダイシングブレードなどを利用して形成すればよい。
【0053】
ところで、パッケージ3の気密性は、パッケージ本体4とパッケージ蓋5との接合部と、パッケージ蓋5とキャップ材6との第1の接合部65とで確保される。しかして、レンズ7は、気密性に関係なく、パッケージ蓋5に接合することができるので、接合材料として低融点ガラスや半田などを用いる場合に比べて、低温での接合な接合材料を用いることが可能となる。そこで、レンズ7は、上述の導電性ペーストを用いてパッケージ蓋5に接合してある。ここで、導電性ペーストとしては、銀ペーストを用いているが、これに限定するものではない。導電性ペーストは、導電フィラーとバインダーとからなる。導電フィラーとしては、銀、金、銅、ニッケル、アルミニウム、カーボン、グラファイトなどを用いることができる。バインダーとしては、エポキシ樹脂、ウレタン、シリコーン、アクリル、ポリイミドなどを用いることができる。
【0054】
また、レンズ7は、パッケージ蓋5に対して、第2の接合部75の他に、非導電性樹脂からなる第3の接合部76を介して接合されている。ここで、第2の接合部75は、レンズ7とパッケージ蓋5との所望の接合強度を確保するために第2の接合部75を囲むように設けてある。非導電性樹脂としては、エポキシ樹脂を用いているが、これに限らず、例えば、シリコーン樹脂などを用いてもよい。
【0055】
以上説明した本実施形態の赤外線検出器では、レンズ7に、赤外線用の光学フィルタ膜が積層されており、キャップ材6が、パッケージ蓋5に気密的に接合され、レンズ7が、導電性ペーストによりパッケージ蓋5に接合されることでパッケージ蓋5と電気的に接続されているので、高感度が可能で、且つ、気密性を確保しつつ、製造時の赤外線用の光学フィルタ膜の剥れを抑制できる。
【0056】
また、本実施形態の赤外線検出器では、キャップ材6がパッケージ蓋5の内側に配置されているので、レンズ7をパッケージ蓋5に接合することができ、レンズ7の位置精度を高めることが可能となる。また、パッケージ蓋5の外側へ突出する部分の高さを低くすることができ赤外線検出器の薄型化を図れる。また、レンズ7の凸曲面側をパッケージ蓋5の開口部5a側としてあり、パッケージ蓋5の開口部5a内にレンズ7の一部を収納することができるので、赤外線検出器のより一層の薄型化を図れる。また、本実施形態の赤外線検出器は、パッケージ3が、表面実装型のパッケージとなるので、回路基板などに実装する際の低背化を図れる。
【0057】
また、本実施形態の赤外線検出器では、キャップ材6とパッケージ蓋5とが低融点ガラスにより接合されているので、当該低融点ガラスよりなる第1の接合部65からのアウトガスが少なく、アウトガスに起因した製造歩留まりの低下や特性の劣化を防止することが可能となる。また、半田により接合する場合には、メタライズ膜が必要なのに対して、このようなメタライズ膜の形成が不要なので、低コスト化を図れる。
【0058】
また、本実施形態の赤外線検出器では、パッケージ本体4が平板状に形成されているので、パッケージ本体4への赤外線検出素子1の実装が容易になるとともに、パッケージ本体4の低コスト化が可能となる。また、パッケージ本体4が平板状に形成されているので、パッケージ本体4を、一面が開放された箱状の形状として、多層セラミック基板により構成し、内底面に赤外線検出素子1を実装する場合に比べて、パッケージ本体4の上記一表面側に配置される赤外線検出素子1とレンズ7との間の距離の精度を高めることができ、より一層の高感度化を図れる。
【0059】
また、本実施形態の赤外線検出器では、赤外線検出素子1が、当該赤外線検出素子1における第1の領域41側の裏面に平行な面内で互いに離間して配置された複数の接合部15を介して第1の領域41に実装されているので、赤外線検出素子1とパッケージ本体4との間の空間16が断熱部として機能することと、接合部15の断面積の低減とにより、パッケージ本体4から赤外線検出素子1へ熱が伝達しにくくなり、パッケージ3の外部からの熱やIC素子2からの熱が、パッケージ本体4を通して赤外線検出素子1へ伝達されにくくなり、高感度化を図れる。
【0060】
また、本実施形態の赤外線検出器は、パッケージ3内に赤外線検出素子1の出力信号を信号処理するIC素子2が収納されているので、赤外線検出器の高機能化を図れ、しかも、IC素子2が別のパッケージに収納されている場合に比べて、S/N比の向上を図れる。
【0061】
また、本実施形態の赤外線検出器では、パッケージ本体4の第2の領域42に、IC素子2が実装され熱結合される金属部(電磁シールド層44の一部により構成される)を備え、金属部が、第1の領域41を避けて形成されてパッケージ3の外側に一部が露出する放熱部であるビア45と熱結合されているので、IC素子2で発生した熱が金属部および放熱部を通して効率的に放熱されることとなり、第1の領域41側への伝熱が抑制されるから、IC素子2の発熱が赤外線検出素子1に与える影響を更に低減できる。
【0062】
上述のパッケージ本体4は、電磁シールド板を内蔵したプリント配線板により構成してもよく、この場合には、当該プリント配線板により構成されるパッケージ本体4の周部とパッケージ蓋5とを、例えば、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入させた導電性樹脂や、導電性を有するBステージのエポキシ樹脂などからなる接合部により気密的に接合すればよい。また、パッケージ本体4にIC素子2も実装する場合には、第2の領域42で電磁シールド板の一面を露出させ当該電磁シールド板にIC素子2を実装するようにしてもよい。
【0063】
(実施形態2)
ところで、図1のように赤外線検出素子1とIC素子2とが同一のパッケージ3内に収納されている場合、IC素子2の発熱に起因した赤外線検出素子1の感度の低下が懸念される。
【0064】
これに対して、本実施形態の赤外線検出器の基本構成は実施形態1と略同じであり、図2に示すように、パッケージ本体4における第1の領域41と第2の領域42との間に、IC素子2から赤外線検出素子1側へ放射される赤外線を遮蔽する壁部43が立設されている点が相違するだけである。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
パッケージ本体4において、赤外線検出素子1を実装する第1の領域41とIC素子2を実装する第2の領域42との間で基体40の上記一表面側に立設された壁部43の材料としては、セラミックスを採用しており、壁部43は、パッケージ本体4と一体成形されている。ここで、本実施形態では、実施形態1と同様、第2の領域42の厚みを第1の領域41の厚みよりも薄くしてある。
【0066】
しかして、本実施形態の赤外線検出器では、IC素子2の発熱に起因して発生した赤外線がIC素子2と赤外線検出素子1との間の空間を通る経路で赤外線検出素子1に向かう赤外線を壁部43で遮蔽することが可能となるとともに、IC素子2で発生した熱がパッケージ本体4を通る経路で赤外線検出素子1に伝熱されにくくなり、IC素子2の発熱が赤外線検出素子1に与える影響を低減でき、IC素子2の発熱に起因した赤外線検出素子1の感度の低下を抑制することが可能となる。なお、本実施形態では、パッケージ本体4の上記一表面からの壁部43の突出寸法を、上記一表面から赤外線検出素子1の表面(受光面)までの高さ寸法よりも大きく設定してあるが、この突出寸法は、IC素子2から赤外線検出素子1へ直接向かう赤外線を遮蔽できる値であればよく、IC素子2は凹部40bの内底面に実装されているので、例えば上記高さ寸法と同じ値でもよい。壁部43の突出寸法を小さくした方が、赤外線検出素子1とIC素子2とを接続するボンディングワイヤ73の長さを短くでき、S/N比の向上を図ることが可能となり、また、ボンディングワイヤ73の高さを低くできて、パッケージ3の低背化を図れる。
【0067】
また、本実施形態の赤外線検出器では、パッケージ本体4の絶縁材料がセラミックスであり、壁部43が、パッケージ本体4の絶縁材料と同じセラミックスでパッケージ本体4に一体成形されているので、壁部43を別部材として形成して、パッケージ本体4に取り付ける場合に比べて、製造が容易になるとともに、製造コストの低コスト化を図れる。また、壁部43が断熱性を有しているので、壁部43からの赤外線の2次輻射を低減でき、IC素子2の発熱が赤外線検出素子1に与える影響を、より低減できる。
【0068】
(実施形態3)
図3に示す本実施形態の赤外線検出器の基本構成は実施形態2と略同じであり、壁部43上に、赤外線検出素子1とIC素子2との中継用の複数の電極(図示せず)が形成されており、赤外線検出素子1およびIC素子2それぞれのパッドと電極とがボンディングワイヤ73a,73bを介して電気的に接続されている点が相違するだけである。なお、実施形態2と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
図2に示した実施形態2の赤外線検出器のように赤外線検出素子1のパッドとIC素子2との対応するパッド間を1本のボンディングワイヤ73のみにより電気的に接続した場合には、IC素子2で発生した熱が、IC素子2と赤外線検出素子1とを電気的に接続する電路であるボンディングワイヤ73を通して赤外線検出素子1に伝熱されてしまう懸念がある。
【0070】
これに対して、本実施形態の赤外線検出器では、赤外線検出素子1とIC素子2との対応するパッド同士がボンディングワイヤ73a−中継用の電極−ボンディングワイヤ73bの経路で電気的に接続されているので、IC素子2で発生した熱が、IC素子2と赤外線検出素子1とを電気的に接続する電路を通して赤外線検出素子1へ伝熱されにくくなる。
【0071】
(実施形態4)
本実施形態の赤外線検出器の基本構成は実施形態3と略同じであり、図4に示すように、キャップ材6がパッケージ5の外側に配置されてパッケージ蓋5に気密的に接合されており、レンズ7が非導電性樹脂からなる接合部79を介してキャップ材6に接合されている点などが相違する。なお、実施形態3と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
本実施形態では、キャップ材6の材料(赤外線を透過する第1の無機材料)としてシリコンを採用しており、キャップ材6とパッケージ蓋5とを、低融点ガラスからなる第1の接合部65により接合した後で、導電性ペーストからなる接合部78により接合して電気的に接続してある。ここで、接合部78は、キャップ材5の側縁とパッケージ蓋5とを接合しており、第1の接合部65を全周に亘って囲んでいる。したがって、レンズ7とキャップ材6との接合は、気密性および電磁シールド性に影響しないので、非導電性樹脂による接合により接合強度を確保すればよい。
【0073】
また、レンズ7は、実施形態3と同様に平凸型のレンズであるが、凸曲面がキャップ材6側とは反対側になるように配置されている。しかして、実施形態1で説明したような光学フィルタ膜の一部を除去する過程や段差部7bを形成する過程が不要となり、レンズ7の低コスト化が可能となる。
【0074】
以上説明した本実施形態の赤外線検出器では、キャップ材6がパッケージ蓋5に気密的に接合され、レンズ7が非導電性樹脂によりキャップ材6に接合されており、キャップ材6が、パッケージ蓋5への接合によりパッケージ蓋5と電気的に接続されているので、高感度が可能で、且つ、気密性を確保しつつ、製造時の赤外線用の光学フィルタ膜の剥れを抑制できる。
【0075】
また、本実施形態の赤外線検出器では、キャップ材6がパッケージ蓋5の外側に配置されているので、パッケージ本体4とパッケージ蓋5とキャップ材6とで囲まれる内部空間の容積を小さくすることが可能となり、内部空間の雰囲気の温度の均一性が向上する。
【0076】
なお、レンズ7とキャップ材6とを非導電性樹脂だけでなく、導電性ペーストでも接合するようにしてもよく、この場合には、レンズ7もキャップ材6およびパッケージ蓋5と同電位とすることができ、レンズ7に起因した浮遊容量の発生を防止できる。
【0077】
(実施形態5)
本実施形態の赤外線検出器の基本構成は実施形態3と略同じであって、図5に示すように、パッケージ本体4およびパッケージ蓋5の形状が相違する。なお、実施形態3と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。また、図5では、図3の電磁シールド層44およびビア(サーマルビア)45の図示を省略してある。
【0078】
本実施形態におけるパッケージ3は、パッケージ本体4が、一表面が開放された箱状(ここでは、矩形箱状)に形成され、パッケージ蓋5が、パッケージ本体4の上記一表面を塞ぐようにパッケージ本体3に気密的に接合されるリッドにより構成されている。
【0079】
また、本実施形態では、パッケージ本体4の内底面40aから壁部43が突設されている。
【0080】
また、本実施形態の赤外線検出器では、パッケージ蓋5の内側にゲッタ8が形成されている。ここで、ゲッタ8の材料としては、例えば、活性化温度が300〜350℃程度の非蒸発ゲッタを用いることが好ましく、例えば、Zrの合金やTiの合金などからなる非蒸発ゲッタを採用すればよい。本実施形態の赤外線検出器では、キャップ材6をパッケージ蓋5に接合する接合材料として、軟化点がゲッタ8の活性化温度よりも高く、且つ、接合温度がキャップ材6の耐熱温度よりも低い低融点ガラスを用いる。なお、低融点ガラスとしては、例えば、軟化点が350℃〜500℃程度のものを用いればよい。
【0081】
以上説明した本実施形態の赤外線検出器においても、実施形態3と同様、レンズ7に、赤外線用の光学フィルタ膜が積層されており、キャップ材6が、パッケージ蓋5に気密的に接合され、レンズ7が、導電性ペーストによりパッケージ蓋5に接合されることでパッケージ蓋5と電気的に接続されているので、高感度が可能で、且つ、気密性を確保しつつ、製造時の赤外線用の光学フィルタ膜の剥れを抑制できる。
【0082】
また、本実施形態の赤外線検出器では、パッケージ3の内部空間を真空雰囲気として真空封止した場合に、パッケージ3内に残留したガスをゲッタ8により吸着することができるので、所望の真空度を維持することができる。
【0083】
また、ゲッタ8を、パッケージ蓋5において赤外線検出素子1に重ならない領域(特に、IC素子2に対向する領域)に形成してあるので、パッケージ本体4にゲッタ8を形成するスペースを確保する必要がなく、パッケージ3の平面サイズの小型化が可能となる。
【0084】
なお、実施形態1〜4においても、パッケージ3の内部空間を真空雰囲気とする場合には、本実施形態と同様に、ゲッタ8を設けることが好ましい。
【0085】
(実施形態6)
本実施形態の赤外線検出器の基本構成は実施形態5と略同じであり、図6に示すように、キャップ材6がパッケージ5の外側に配置されてパッケージ蓋5に気密的に接合されており、レンズ7が非導電性樹脂からなる接合部79を介してキャップ材6に接合されている点などが相違する。なお、実施形態5と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
本実施形態では、実施形態4と同様、キャップ材6の材料(赤外線を透過する第1の無機材料)としてシリコンを採用しており、キャップ材6とパッケージ蓋5とを、低融点ガラスからなる第1の接合部65により接合した後で、導電性ペーストからなる接合部78により接合して電気的に接続してある。
【0087】
以上説明した本実施形態の赤外線検出器では、キャップ材6がパッケージ蓋5に気密的に接合され、レンズ7が非導電性樹脂によりキャップ材6に接合されており、キャップ材6が、パッケージ蓋5への接合によりパッケージ蓋5と電気的に接続されているので、高感度が可能で、且つ、気密性を確保しつつ、製造時の赤外線用の光学フィルタ膜の剥れを抑制できる。
【0088】
また、本実施形態の赤外線検出器では、キャップ材6がパッケージ蓋5の外側に配置されているので、パッケージ本体4とパッケージ蓋5とキャップ材6とで囲まれる内部空間の容積を小さくすることが可能となり、内部空間の雰囲気の温度の均一性が向上する。
【符号の説明】
【0089】
1 赤外線検出素子
3 パッケージ
4 パッケージ本体
5 パッケージ蓋
5a 開口部
6 キャップ材
7 レンズ
65 第1の接合部
75 第2の接合部
76 第3の接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線検出素子と、電磁シールド機能を有し前記赤外線検出素子が実装されたパッケージ本体と、金属により形成されて前記赤外線検出素子の前方に開口部を有し前記パッケージ本体に気密的に接合されたパッケージ蓋と、赤外線を透過する第1の無機材料により形成され前記パッケージ蓋の前記開口部を塞ぐように配置されたキャップ材と、赤外線を透過する第2の無機材料により形成されて前記キャップ材よりも前記赤外線検出素子から離れた位置で前記パッケージ蓋の外側に配置されたレンズとを備え、前記レンズに、赤外線用の光学フィルタ膜が積層されてなり、前記キャップ材が、前記パッケージ蓋に気密的に接合され、前記レンズが、導電性ペーストと非導電性樹脂との少なくとも一方により前記パッケージ蓋もしくは前記キャップ材に接合されてなり、前記キャップ材と前記レンズとの少なくとも一方が、前記パッケージ蓋への接合により前記パッケージ蓋と電気的に接続されてなることを特徴とする赤外線検出器。
【請求項2】
前記キャップ材は、前記パッケージ蓋の内側に配置されてなることを特徴とする請求項1記載の赤外線検出器。
【請求項3】
前記キャップ材は、前記パッケージ蓋の外側に配置されてなることを特徴とする請求項1記載の赤外線検出器。
【請求項4】
前記キャップ材と前記パッケージ蓋とは、低融点ガラスにより接合されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤外線検出器。
【請求項5】
前記パッケージ蓋の内側にゲッタが形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の赤外線検出器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−174763(P2011−174763A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37812(P2010−37812)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】