説明

超靭性の単結晶ホウ素ドープダイヤモンド

本発明は、少なくとも約22MPa m1/2の靭性を有する単結晶ホウ素ドープCVDダイヤモンドに関する。本発明はさらに、単結晶ホウ素ドープCVDダイヤモンドを製造する方法に関する。本発明のダイヤモンドの成長速度は約20μm/h〜100μm/hであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年5月5日出願の米国仮特許出願第60/071,524号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
政府関与の申立
【0002】
本発明は米国国立科学財団及び米国エネルギー省からの合衆国政府援助によりなされた。合衆国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は一般には、化学蒸着(CVD)によって製造される単結晶ダイヤモンドに関する。より具体的には、本発明は、ホウ素がドープされた高品質かつ超靭性の単結晶CVDダイヤモンドに関する。本発明はまた、そのようなダイヤモンドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
大きい成長速度で製造される高品質の単結晶CVDダイヤモンド(SC−CVD)の製造がかなり注目されている(Yanら、Proc. Nat. Acad. Sci.、2002;Liangら、Phys. Lett.、2009)。このダイヤモンド物質は、CVD成長を最適化することによるか、又は、成長後の処理によるかのどちらであっても、様々な光学特性及び機械的特性を示すように製造することができる。具体的には、SC−CVDの硬度を高圧/高温(HPHT)アニーリングによって著しく高めることができる(Yanら、Phys. Stat. Sol.、2004)。この処理はまた、測定される破壊靭性を低下させ、硬度/靭性を調節するための手段を提供する。ダイヤモンドは、現在知られている最も硬い物質であるが、ダイヤモンドはまた脆く、このことが特定の科学的応用及び技術的応用を制限している。様々な努力が、ダイヤモンドの破壊靭性を改善するために取られており、ダイヤモンド/金属の複合物を作製することによって(Wentorfら、Science、1980)、また、多構造化ダイヤモンド物質を作製することによって(Anthonyら、Diam. Rel. Mater.、1997)、ダイヤモンドの破壊靭性が改善される。
【0005】
ダイヤモンドは、人類に知られている最も硬い物質として認められている。天然の単結晶ダイヤモンドについての固有硬度が100GPa前後である。しかしながら、上記で記されるように、ダイヤモンドはまた、脆い物質として知られている。Ia型ダイヤモンドについての破壊靭性(KIC)が7.0MPa m1/2〜8.4MPa m1/2の間であり、IIa型ダイヤモンドについては、KICが4.2MPa m1/2〜5.6MPa m1/2であることが報告されている(Novikovら、J. Hard Mater.、1993;Patridgeら、Materials Science and Technology、1994)。
【0006】
単結晶CVDダイヤモンド(SC−CVD)をMPCVD(マイクロ波プラズマ支援化学蒸着)プロセスによって成長させることにおける改善は、(市販のHPHT合成Ibダイヤモンドとして3ctを超える)大きいサイズの高品質ダイヤモンドの製造を可能にしている(Yanら、Physica. Status. Solidi.、2004;Yanら、Proceedings of the National Academy of Science、2002)。H/CH/N/Oを含む気相化学がダイヤモンド成長のためのMPCVDプロセスにおいて使用されている。(100)成長が、成長条件(これには、基板温度、圧力、N及びOの流速が含まれる)を変更することによって著しく高められた。また、SC−CVDの色が、暗い褐色から、明るい褐色にまで、ほぼ無色にまで、無色にまで及ぶ。極めて大きい硬度(150GPaを超える)及び靭性(30MPa m1/2を超える)がそのような結晶について報告されている(Yanら、Physica. Status. Solidi.、2004)。
【0007】
ホウ素が宝石ダイヤモンド(Burnsら、J. Cryst. Growth、1990)及びCVDダイヤモンド(Miyataら、J. Mater. Res.、1993)の両方において(111)セクターに優先的に取り込まれ得ることもまた報告されている。置換型ホウ素はダイヤモンド格子を33.7%拡大させることができ、ダイヤモンドにおけるその溶解度が0.9%もの大きさであり得る(Vornovら、Neorganicheskie Materialy、1993;Arimaら、J. Crys. Growth、2007)。ホウ素ドープされた単結晶ダイヤモンドがHPHTプロセス及びCVDプロセスによって製造されている。しかしながら、(2mmを超える厚さの)大きいサイズを有するIIb型ダイヤモンドはこれまで報告されていない。
【0008】
米国特許第5,981,057号は、ホウ素ドーパント原子を少なくとも0.05原子パーセントの濃度で含有するCVDダイヤモンド層に関する。このダイヤモンド層は、少なくとも600MPaの平均引張破壊強度を、核形成面が張力状態にある場合に有し、また、少なくとも300MPaの平均引張破壊強度を、成長面が張力状態にある場合に有する。両方の引張破壊強度が、長さが11mmで、幅が2mmで、かつ、厚さが1.4mm以下であるサンプルに対する三点曲げ試験によって測定された。
【0009】
米国特許第7,201,886号は、目に見える色を生じさせるために大量にドープされた単結晶ダイヤモンドの少なくとも1つの層を有する形状化されたダイヤモンドを含むダイヤモンドツールに関する。
【0010】
米国特許第7,160,617号は、CVDによって製造され、かつ、一様である全体的なホウ素濃度を有する単結晶ホウ素ドープダイヤモンドの層に関する。
【0011】
米国特許第6,858,078号(Hemleyら)(これは参照により本明細書に組み込まれる)はダイヤモンド製造のための装置及び方法に関する。開示される装置及び方法は、明るい褐色から無色までであるダイヤモンドの製造をもたらすことができる。
【0012】
米国特許出願第10/889,171号(これは参照により本明細書に組み込まれる)は、単結晶の化学蒸着ダイヤモンドをアニーリングすることに関する。重要な発明上の特徴には、CVDダイヤモンドを、ダイヤモンド安定相の範囲外である少なくとも1500℃の設定温度及び少なくとも4.0GPaの圧力に上げることが含まれる。
【0013】
米国特許出願第10/889,170号(米国特許第7,115,241号)(これは参照により本明細書に組み込まれる)は、改善された硬度を有するダイヤモンドに関する。この出願は、硬度が120GPaを超える単結晶ダイヤモンドを開示する。
【0014】
米国特許出願第10/889,169号(現在、米国特許第7,157,067号)(これは参照により本明細書に組み込まれる)は、改善された靭性を有するダイヤモンドに関する。この特許出願は、11MPam1/2〜20MPam1/2の破壊靭性及び50GPa〜90GPaの硬度を有する単結晶ダイヤモンドを開示する。
【0015】
米国特許出願第11/222,224号(これは参照によって組み込まれる)は、大きい靭性を有するアニーリングされた単結晶CVDダイヤモンドに関する。
【0016】
これらの引用参考文献は、極めて堅い単結晶ホウ素ドープCVDダイヤモンドに関するものではない。大きい靭性が、ミクロ機械加工及びナノ機械加工並びに削岩(これらに限定されない)を含めて、様々な使用のための単結晶ダイヤモンドにおける所望される特性である。従って、大きい靭性を有する単結晶ダイヤモンドが、実現されることなく、求められている。加えて、色(これに限定されない)を含めて、調節可能な特徴を有する高靭性の単結晶ダイヤモンドが実際には求められている。従って、そのような高靭性ダイヤモンドを提供することが本発明の主たる目的である。他の目的もまた、下記の発明の詳細な説明から明らかになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/071,524号
【特許文献2】米国特許第5,981,057号
【特許文献3】米国特許第7,201,886号
【特許文献4】米国特許第7,160,617号
【特許文献5】米国特許第6,858,078号
【特許文献6】米国特許出願第10/889,171号
【特許文献7】米国特許出願第10/889,170号(米国特許第7,115,241号)
【特許文献8】米国特許出願第10/889,169号(米国特許第7,157,067号)
【特許文献9】米国特許出願第11/222,224号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Yanら、Proc. Nat. Acad. Sci.、2002
【非特許文献2】Liangら、Phys. Lett.、2009
【非特許文献3】Yanら、Phys. Stat. Sol.、2004
【非特許文献4】Wentorfら、Science、1980
【非特許文献5】Anthonyら、Diam. Rel. Mater.、1997
【非特許文献6】Novikovら、J. Hard Mater.、1993
【非特許文献7】Patridgeら、Materials Science and Technology、1994
【非特許文献8】Yanら、Proceedings of the National Academy of Science、2002
【非特許文献9】Burnsら、J. Cryst. Growth、1990
【非特許文献10】Miyataら、J. Mater. Res.、1993
【非特許文献11】Vornovら、Neorganicheskie Materialy、1993
【非特許文献12】Arimaら、J. Crys. Growth、2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、その目的を、部分的には、ホウ素をダイヤモンドに取り込むことにより達成する。大まかに述べると、本発明は、少なくとも約22MPa m1/2の靭性を有する、マイクロ波プラズマ化学蒸着によって成長した単結晶ホウ素ドープダイヤモンドに関する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
大まかに述べると、高靭性の単結晶ホウ素ドープダイヤモンドを成長させるための方法は、下記の工程を含むことができる:
i)種ダイヤモンドを、ダイヤモンドの成長表面全域での温度勾配を最小限に抑えるために、高い融点及び大きい熱伝導率を有する材料から作製されるヒートシンクホルダーに置く工程;
ii)ダイヤモンドの成長表面の温度を、成長中のダイヤモンド結晶の温度が約900℃〜1500℃の範囲にあるように制御する工程;及び
iii)単結晶ダイヤモンドを、5%〜20%のCH/Hと、5%〜20%のO/CHと、0%〜20%のN/CHと、ホウ素供給源とを含む蒸着チャンバにおいてダイヤモンドの成長表面にマイクロ波プラズマ化学蒸着によって成長させる工程。
そのようなダイヤモンドについての成長速度は20μm/h〜100μm/hである。
【0021】
1つの態様において、本発明は、少なくとも約22MPa m1/2の靭性を有する、マイクロ波プラズマ化学蒸着によって成長した単結晶ホウ素ドープダイヤモンドを包含する。別の態様において、硬度は約60GPaを超えることができる。
【0022】
添付されている図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含められ、また、本明細書に組み込まれ、かつ、本明細書の一部を構成するものであり、本発明の様々な実施形態を例示し、かつ、説明と一緒になって、本発明の原理を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ビッカース硬度対破壊靭性のプロットを、天然のIa型ダイヤモンド、IIa型ダイヤモンド及びIb型ダイヤモンド、CVD単結晶ダイヤモンド、並びに、CVDホウ素ドープ単結晶ダイヤモンドについて示す。
【図2】圧痕パターンを様々なダイヤモンドについて示す。
【図3】明るい褐色、無色及びかすかな青色のホウ素ドープSC−CVDダイヤモンドの写真を示す。
【図4】フォトルミネセンススペクトルを、明るい褐色、無色及びかすかな青色のホウ素ドープSC−CVDダイヤモンドについて示す。
【図5】明るい褐色、無色及びかすかな青色のホウ素ドープSC−CVDダイヤモンドの吸収係数を示す。
【図6】明るい褐色、無色及びかすかな青色のホウ素ドープSC−CVDダイヤモンドのIRスペクトルを示す。スペクトルは同一スケールではない。
【図7】ホウ素/窒素ドープされた単結晶CVDダイヤモンドのフォトルミネセンススペクトルを示す。
【図8】水平線が各タイプの成長セクターにおける窒素ドナーの相対的濃度(ND)を表し、傾斜した線が各タイプの成長セクターにおけるホウ素アクセプターの濃度(NA)を合成カプセルに加えられるホウ素ドーパントの量の関数として表す修正Kandaダイヤグラムを示す。参考文献(Burnsら、J. Cryst. Growth、1990)を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、マイクロ波プラズマ支援化学蒸着によって大きい成長速度で製造される単結晶ダイヤモンドの機械的特性におけるさらなる改善に関する。そのようなさらなる改善をホウ素及び/又は窒素のドーピングの後で認めることができる。さらなる改善を、ホウ素/窒素のドーピングが、米国特許出願第12/244,053号及び米国仮特許出願第61/108,283号(これらはともに参照により本明細書に組み込まれる)の主題である低圧/高温(LPHT)アニーリングと併せて行われるときに認めることができる。ホウ素/窒素の取り込みは単結晶CVDダイヤモンドの靭性を劇的に増大させることができ、これにより、超靭性であると呼ぶことができる物質がもたらされる。LPHTアニーリングは、このダイヤモンドの固有硬度を、破壊靭性における相当の喪失を伴うことなく2倍高めることができる。ダイヤモンドのこのドーピング及び成長後の処理は、ダイヤモンドの高まった機械的特性を必要とする新しい技術用途をもたらし得る。
【0025】
様々なホウ素含有単結晶ダイヤモンドが、5%〜20%のCH/H、5%〜20%のO/CH、0%〜20%のN/CH、100Torr〜400Torr、及び、900℃から1500℃にまで及ぶ温度における高密度MPCVDによって合成された。他のガスがOの代わりに使用され得ることには留意しなければならない。その場合、そのような他のガスは酸素を分子内に含有する。例には、二酸化炭素、一酸化炭素及び水蒸気が含まれる。ホウ素を、ホウ素を含む任意の化学化合物を使用してこの化学反応に加えることができる。分子内の他の原子には、任意の相での窒素原子、炭素原子、水素原子及び酸素原子の1つ又はそれ以上が含まれ得る。CVD反応チャンバに効果的に導入され得るホウ素含有化合物の例には、ジボラン(B)又はホウ酸トリメチル(TMB)ガス、気化B、或いは、六方晶窒化ホウ素粉末が含まれるが、これらに限定されない。プラズマシステムにおけるこれらの化合物の分解により、十分な量のホウ素がドーピングプロセスに供給される。水素が多いCVDプロセスにおけるCH化学種によるダイヤモンド形成の反応と同様に、ホウ素と、水素との反応により、多量のBH(X=0〜3)が生じる。BH+H⇔BHX−1+H(X=0〜3)の迅速な相互変換反応により、ダイヤモンド構造の中に挿入され得る十分な量のBH化学種がもたらされる(Cheesmanら、Phys. Chem. Chem. Phys.、2005)。ドーピングレベルを下記によって調節することができる:
1)反応でのホウ素ドーパントの量における変化;
2)窒素供給ガスにおける変化(Liangら、Appl. Phys. Lett.、2003);
3)オフ角度の変化、これもまた、ホウ素取り込みレベルを変化させることができる−ホウ素取り込みレベルがそれぞれの格子面について異なる:(111)>(110)>(100)=(113)(Burnsら、J. Cryst. Growth、1990、図27);すなわち、(110)方向からずれる角度は、(100)からずれる角度よりも大きいホウ素取り込みを有する;及び
4)ダイヤモンド成長期間中の基板温度における変化。
【0026】
本発明のダイヤモンドを作製するために使用される基板は、(100)表面を有する天然のIa型又はIIa型、HPHT合成Ib型、或いは、SC−CVDであった。最大成長表面が、好ましくは0度〜20度の間で、より好ましくは0度〜15度の間で、(100)面からわずかにずれ得る。軸からずれる角度が1度よりも小さい場合、(111)面を有する八面体ダイヤモンドが形成し始め、(100)の優先した成長を継続することができない。成長層は100ミクロンよりも厚くなることができない。軸からずれる角度が20度よりも大きい場合、孤立した(100)の柱及び段が生じる。1度〜20度の間のオフ角度は、小丘がない滑らかなステップフロー(step flow)形態学を生じさせ、従って、単結晶ダイヤモンドを大きくする。20μm/h〜100μm/hの成長速度が記録された(これは、他のBドープ単結晶ダイヤモンドの成長と比較して10倍〜100倍の改善である)(Arimaら、J. Cryst. Growth、2007)。
【0027】
プロセスパラメーター(これには、N供給ガス速度、Bドーパント量、オフ角度及び表面温度が含まれるが、これらに限定されない)を変え、続いて、ホウ素及び窒素の含有量を変えることによって、ホウ素ドープSC−CVDの色が、暗い褐色、明るい褐色、ほぼ無色、無色、かすかな青色から、濃い青色にまで調節可能である。図3は、色が(a)明るい褐色、(b)無色、及び、(c)かすかな青色である3つのサンプルを示す。
【0028】
514nmレーザーで励起されるサンプルa〜サンプルcについてのフォトルミネセンススペクトルが図4に示される。ホウ素を含まないCVDダイヤモンドと比較した場合、ホウ素の取り込みを有するCVDダイヤモンドはダイヤモンドの品質を向上させることができ、かつ、ダイヤモンドの欠陥を最小限にすることができる(Chrenko、Physical Review B、1973;Showら、Diamond Relat. Mater.、2000;Locherら、Diamond Relat. Mater.、1995)。窒素空位(N−V)中心がホウ素ドープダイヤモンドについては存在してもよく、又は、存在しなくてもよい。高靭性及び超靭性のホウ素ドープダイヤモンドの単結晶ダイヤモンドについては、INV@575nm/ID@551nmの比率が0〜100/1の間で変化する。ホウ素ドープ単結晶ダイヤモンドの色等級がダイヤモンド色等級スケールでD〜Zの間にある。ホウ素を導入することにより、735nmにおけるケイ素のPLピークが示されることがなくなることによって立証されるように、ダイヤモンド構造におけるケイ素の取り込みが完全に排除され得る。このことから、非常に少量のホウ素を反応チャンバに加えて、例えば、CVDチャンバにおける加熱された石英成分から生じるケイ素混入;プロセスガスのタンク(例えば、メタンタンク(60ppmの窒素不純物を含む研究用規格4.0)など)からの混入に由来してもよい窒素混入;真空シーリングからの混入;マイクロ波プラズマによって加熱されるチャンバ壁及び基板ホルダーからの混入を補償することによって、SC−CVDダイヤモンドをさらに無色化するという考えが生じる。
【0029】
図5のUV可視吸収スペクトルから、褐色のホウ素ドープSC−CVDダイヤモンドは、置換型窒素に関連づけられる270nm付近の幅広いバンド、及び、窒素空位中心に起因する550nm付近の幅広いバンドを示した(Martineauら、Gems & Gemology、2004)。無色のホウ素ドープSC−CVDダイヤモンドははるかにより低いバックグラウンドを有し、270nm及び550nmのバンドの極めて低い痕跡を示す(又は、270nm及び550nmのバンドの痕跡を示さない)。かすかな青色のホウ素ドープSC−CVDダイヤモンドについては、極めて少ない窒素不純物が存在し(又は、窒素不純物が全く存在せず)、スペクトル上での青色の色相が認められた。
【0030】
図6に示されるように、ホウ素の取り込みがFTIRによってさらに確認される:2800cm−1及び2457cm−1における吸収バンド(電子励起)と、1282cm−1における吸収バンド(単光子吸収)とが観測された(Burnsら、J. Cryst. Growth、1990;Prelasら、Handbook of Industrial Diamonds and Diamond Films、Marcel Dekker、New York、USA、1989;Gheeraertら、Diamond Relat. Mater.、1998)。より大きいホウ素濃度を有するサンプルについては、より大きい波数でのピーク、すなわち、3723cm−1、4085cm−1、5025cm−1、5362cm−1におけるピークもまた認めることができる。ホウ素濃度はSIMSによって求めることができる;非補償ホウ素はまた、1282cm−1、2457cm−1、2800cm−1におけるピークの吸収係数の積分強度によって求めることができる(Prelasら、Handbook of Industrial Diamonds and Diamond Films、Marcel Dekker、New York、USA、1998;Gheeraertら、Diamond and Relat. Mater.、1998)。CVDによるホウ素ドープダイヤモンド薄膜については、非補償ホウ素の濃度が下記の式から計算される:
[B](cm−3)=1.1×1015I(2880cm−1)(cm−2) (3)
この式及び靭性対硬度のプロット(図1)に基づいて、超靭性のホウ素ドープダイヤモンドのホウ素濃度が0ppm〜100ppmの間で変化する。同様にまた、ホウ素の取り込みは、IRスペクトルにおける5000cm−1を超える水素の電子中心をほとんど導入しなかった(又は、IRスペクトルにおける5000cm−1を超える水素の電子中心を除きさえした)。ホウ素の取り込みによる色の改善がさらに、より大きい波数でのHに関連づけられるIRピークが最小になることによって確認される(Mengら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、2008)。言い換えれば、CVD単結晶ダイヤモンドの褐色の色をホウ素の添加によって調節することができる。
【実施例】
【0031】
実施例1
【0032】
単結晶ダイヤモンドを、150torr〜220torrで、かつ、二色赤外高温計により測定される1100℃から1300℃にまで及ぶ温度で、5%〜20%のCH/H、0%〜0.2%のN/CHにおける高密度マイクロ波プラズマ化学蒸着(MPCVD)によって合成した。六方晶窒化ホウ素(h−BN)粉末をドーパントとして選択し、CVDシステムに導入した。プラズマシステムにおけるh−BNの分解により、十分な量のホウ素がドーピングプロセスのために供給される。20μm/h〜100μm/hの成長速度が記録された。成長後、CVD層をQスイッチNd:YAGレーザーによって基板から分離し、その後、精密研磨して、何らかの残留炭素を除いた。0.2mm〜6mmのサイズ範囲での目に見える欠陥がないドープされていないSC−CVD結晶をLPHTアニーリングのために選択した。6kWの、2.45GHz MPCVDリアクターをアニーリングのために使用し、アニーリングを、150torr〜300torrの間のガス圧力で、1600℃〜2200℃の測定されたダイヤモンド表面温度とともに行った。
【0033】
破壊靭性などの機械的特性をダイヤモンドなどの物質について定量化することは、容易なことではない。歴史的には、ビッカース微小硬度試験技術が、ダイヤモンドの硬度及び破壊靭性の両方を評価するために使用されている(Novikovら、Diam. Rel. Mater.、1993;Droryら、Appl. Phys. Lett.、1995)。しかしながら、ビッカース圧子が、圧子物質(例えば、単結晶ダイヤモンド)の硬度と同程度の硬度を有する材料に対して、又は、圧子物質(例えば、単結晶ダイヤモンド)の硬度を上回る硬度を有する材料に対して使用されるときには、曖昧さが生じる。120GPaよりも大きい硬度値は、この場合には押込み用先端の変形が生じるので、非現実的である(Brazhkinら、Nature Materials、2004)。しかしながら、その機械的特性が様々な方法によって決定されている他のタイプのダイヤモンドにより得られる値が一致することにより、この方法は有用な結果を提供することができることが明らかにされる。この技術はまた、超硬質物質の機械的特性を一般に調べるために使用される重要な比較可能な結果をもたらす(Yanら、Phys. Stat. Sol.、2004)。本研究では、同一の方法論が、ホウ素ドープ及びLPHT処理されたSC−CVDダイヤモンドの硬度/靭性を研究するために用いられた。
【0034】
硬度−破壊靭性のデータが、天然のIa型、IIa型、合成のIb型、SC−CVD、LPHT処理SC−CVD及びホウ素/窒素ドープSC−CVDについて図1にプロットされる。硬度(H)が、下記の式に従って、加えられた負荷(P)及び圧痕サイズ(2a)によって求められる:
=1.854P/a、a=(a+a)/2 (1)
この場合、圧痕の隅から広がる半径方向の亀裂の平均長さが、破壊靭性を推定するために使用された(Yanら、Physica. Status Solidi.、2004;Miyataら、J. Mater. Res.、1993;Cheesmanら、Phys. Chem. Chem. Phys.、2005)。
IC=0.016(E/H0.5P/c1.5 (2)
この場合、Cは、くぼみ中心から測定される半径方向の亀裂の長さであり、c=(c+c)/4、Eはヤング率である(Liangら、Appl. Phys. Lett.、2003)。可塑的変形を防止するために、1kg〜3kgの間での負荷を使用した。圧痕結果の妥当性を評価するために、すべての圧子を顕微鏡で調べ、それぞれのダイヤモンド圧痕の前後で研磨金属表面に対して試験した。すべての試験を、同じビッカース圧子装置を使用して行った;天然Ia型、天然IIa型、合成Ib型、そしてまた、SC−CVDダイヤモンドに対する選択された以前の測定が示される(Yanら、Physica. Status Solidi.、2004)。硬度/靭性の値を他のタイプの測定の結果との比較のために定量化することは、詳細な分析を必要とする(Prelasら、Handbook of Industrial Diamonds and Diamond Films、Marcel Dekker、New York、USA、1998;Hemleyら、米国特許出願公開第2006065187号)が、データセットは、本研究で調べられたダイヤモンド物質について、硬度/靭性の定量可能な相対的尺度を提供する。
【0035】
本研究で測定されたIa型ダイヤモンド及びIIa型ダイヤモンドは8(±4)MPa m1/2のKIC値を有し、I−b型合成ダイヤモンドのKIC値が10(±2)MPa m1/2である。ホウ素ドーピングがない場合、H/CH/N化学により成長したSC−CVDダイヤモンドは、ビッカースに基づく破壊靭性測定値が15(±5)MPa m1/2であり、これはI−b型合成ダイヤモンドよりも50%大きい。対照的に、ホウ素ドープSC−CVDダイヤモンドの計算された破壊靭性は22MPa m1/2よりも大きい。この物質は、硬度を損なうことなく[78(±12)GPa]、ドープされていないSC−CVDダイヤモンドで得られる値と比較して、このスケールで、非常に高まった破壊靭性を有する。
【0036】
ダイヤモンドにおける最も強い結合が{100}方向に沿ってであり、{111}面が劈開面であることが認められている(Chrenko、Physical Review、1973)。本研究において測定される結晶については、{100}方向、{111}方向及び{110}方向に沿った断面亀裂が天然型結晶及びIb型結晶において観測されただけであった。(成長時及びアニーリングされた)SC−CVDについては、圧痕の跡が、より軟らかい{110}方向及び{111}方向に沿って正方形の亀裂パターンを示す。しかしながら、多数のホウ素/窒素ドープダイヤモンド試料については、圧痕のへこみに沿った亀裂形成の痕跡が全くない。この顕著な結果は、ダイヤモンドについて以前には報告されていなかったようである(図2)。観測結果は、ビッカース技術を使用する破壊靭性の定量化を明白に不可能にする。実際、30MPa m1/2よりも大きい破壊靭性を有する物質に対する定量的測定は圧痕技術の限界を超えていることが主張される場合がある。それにもかかわらず、本発明者らは、本研究において研究されるダイヤモンド物質の挙動は定性的に異なることを強調する。
【0037】
測定により、LPHTアニーリングされたSC−CVDは、靭性における相当の低下を伴うことなく(KIC=12MPa m1/2〜16MPa m1/2)、超硬質特徴(少なくとも約125GPaの測定された硬度)を示すことがさらに明らかにされる。このことは、高圧/高温(HPHT)アニーリングを受けたSC−CVDについて以前に得られた結果とは対照的である(Yanら、Phys. Stat. Sol.、2004)。近年、低圧/高温(LPHT)条件(1600℃超、300torr未満、すなわち、ダイヤモンド安定領域の範囲外)におけるこれらのダイヤモンドのアニーリング研究では、可視吸収における低下を含めて、光学特性における大きな変化が明らかにされた(Mengら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、2008)。ダイヤモンド表面強化プロセスがイオン注入(Andersonら、Nucl. Methods Phys. Res.、1993)又は表面熱拡散(Mengら、米国特許第6322891号)によって報告されている。本研究で調べられたすべてのCVDダイヤモンド結晶が圧痕前に徹底的に研磨された。これにより、靭性強化がバルク特性であることが明らかにされる。LPHT処理されたSC−CVD物質が優れた硬度を有するというさらなる証拠が、ビッカース圧子が典型的には、ドープされたSC−CVDについては約10回の測定の後でひび割れ、しかし、アニーリングされたダイヤモンド結晶についてはほんの1回〜2回の圧痕の後でひび割れたことである。
【0038】
研究されたダイヤモンド物質の代表的なフォトルミネセンススペクトル及び画像が図7に示される。高品質のダイヤモンド結晶は顕著な二次ラマン特徴を示す。575nm付近に中心を有するNVに帰属されるバンド、及び、637nm付近に中心を有するNVに帰属されるバンドにより、ダイヤモンド構造における窒素の取り込みが明らかにされる。LPHTアニーリング後の赤外スペクトルにおける変化は、HPHT加工後に見出される変化と類似していた(Mengら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、2008)。理論によってとらわれることはないが、今日までの測定から、本発明者らは、窒素原子、ホウ素原子及び隣接する炭素原子の間における相互作用により、高まった靭性がもたらされると提案するに至っている。
【0039】
今回の結果に基づいて、本明細書に記載されるダイヤモンド物質の高まった光学特性及び機械的特性は、過酷な環境、機械的試験、砥粒加工、レーザー光学、並びに、透明な遮蔽デバイス及びMEMSデバイスにおける光学窓としての有用な用途が見出され得ることが示唆される。低コストの大面積LPHTアニーリングプロセスはHPHTアニーリングの代替法となる場合があり、また、重要な産業上の応用を有し得る。
【0040】
超靭性のホウ素ドープダイヤモンドの用途の例には、下記の用途が含まれるが、それらに限定されない:非鉄材料の機械加工、ミクロ機械加工及びナノ機械加工(黒鉛、自動車産業における高ケイ素合金の機械加工);極めて大きい靭性のダイヤモンドが必要とされる削岩/石油掘削;高い圧力限界を続けるための調節可能な伝導率及びより大きい靭性を有する高圧アンビル;並びに、高温センサー及び過酷な環境でのエレクトロセンサー。ホウ素ドープダイヤモンドの大きい靭性はまた、ホウ素ドープダイヤモンドを航空宇宙産業のためのチタン機械加工のための可能性のある代替物にする。
【0041】
本発明は、その精神又は本質的特徴から逸脱することなく、いくつかの形態で具体化され得るので、上記の実施形態は、別途具体的に述べられない限り、前記の説明の細部のいずれによっても限定されるのではなく、むしろ、添付されている特許請求の範囲において定義されるようなその精神及び範囲において幅広く解釈されなければならず、従って、請求項の境界(metes and bounds)の範囲内に含まれるか、又は、そのような境界の均等物の範囲内に含まれるすべての変化及び改変が、添付されている請求項によって包含されることが意図されることもまた理解されなければならない。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約22MPa m1/2の靭性を有する、マイクロ波プラズマ化学蒸着によって成長した単結晶ホウ素ドープダイヤモンド。
【請求項2】
靭性が約22MPa m1/2〜約35MPa m1/2の間である、請求項1に記載の単結晶ホウ素ドープダイヤモンド。
【請求項3】
硬度が約60GPaを超える、請求項1に記載の単結晶ホウ素ドープダイヤモンド。
【請求項4】
硬度が約60GPa〜約85GPaの間である、請求項1に記載の単結晶ホウ素ドープダイヤモンド。
【請求項5】
ダイヤモンドの色等級がダイヤモンド色等級スケールでDからZにまで及ぶ、請求項1に記載の単結晶ホウ素ドープダイヤモンド。
【請求項6】
NV@575nm/ID@551nmの比率が0〜100/1の間で変化する、請求項1に記載の単結晶ホウ素ドープダイヤモンド。
【請求項7】
ダイヤモンド構造においてケイ素を実質的に含まない、請求項1に記載の単結晶ホウ素ドープダイヤモンド。
【請求項8】
ホウ素濃度が0ppm〜100ppmの間である、請求項1に記載の単結晶ホウ素ドープダイヤモンド。
【請求項9】
高靭性の単結晶ホウ素ドープダイヤモンドを成長させる方法であって、
i)種ダイヤモンドを、ダイヤモンドの成長表面全域での温度勾配を最小限に抑えるために、高い融点及び大きい熱伝導率を有する材料から作製されるヒートシンクホルダーに置くこと、
ii)ダイヤモンドの成長表面の温度を、成長中のダイヤモンド結晶の温度が約900℃〜1500℃の範囲にあるように制御すること、及び
iii)単結晶ダイヤモンドを、5%〜20%のCH/Hと、5%〜20%のO/CHと、0%〜20%のN/CHと、ホウ素供給源とを含む蒸着チャンバにおいてダイヤモンドの成長表面にマイクロ波プラズマ化学蒸着によって成長させること
を含む、方法。
【請求項10】
前記蒸着チャンバにおける圧力が約100Torr〜400Torrである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ホウ素供給源が、ジボラン、六方晶窒化ホウ素粉末、ホウ酸トリメチルガス、気化B又はこれらの混合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ダイヤモンドの成長速度が約20μm/h〜100μm/hである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記単結晶ダイヤモンドを、その靭性を改善するためにアニーリングすることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒートシンクホルダーがモリブデンから作製される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも約22MPa m1/2の靭性を有する、マイクロ波プラズマ化学蒸着によって成長した単結晶ホウ素ドープダイヤモンドであって、
i)種ダイヤモンドを、ダイヤモンドの成長表面全域における温度勾配を最小限に抑えるために、高い融点及び大きい熱伝導率を有する材料から作製されるヒートシンクホルダーに置くこと;
ii)ダイヤモンドの成長表面の温度を、成長中のダイヤモンド結晶の温度が約900℃〜1500℃の範囲にあるように制御すること;及び
iii)単結晶ダイヤモンドを、5%〜20%のCH/Hと、5%〜20%のO/CHと、0%〜20%のN/CHと、ホウ素供給源とを含む蒸着チャンバにおいてダイヤモンドの成長表面にマイクロ波プラズマ化学蒸着によって成長させること
を含む方法によって成長した、前記単結晶ホウ素ドープダイヤモンド。
【請求項16】
の供給源が、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気又はこれらの混合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記単結晶ダイヤモンド種の配向が{100}面から0度〜15度ずれている、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−519814(P2011−519814A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508486(P2011−508486)
【出願日】平成21年5月5日(2009.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/002753
【国際公開番号】WO2009/137020
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(500026234)カーネギー インスチチューション オブ ワシントン (25)
【Fターム(参考)】