車両の前部車体構造
【課題】空力性能および歩行者保護性能を向上しつつ、ボンネット下部空間内のサービス性やボンネット下部空間に対する収納性を確保する車両の前部車体構造を提供する。
【解決手段】フロントノーズ部50と、中間ノーズ部51と、フロントウインドパネル52と、を備え、フロントノーズ部50より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部56を備え、少なくとも中間ノーズ部51にボンネット開口70が形成されると共に、ボンネット開口70を開閉するボンネット部材71が設けられ、ボンネット部材71をアッパノーズ部56との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構72を備えたことを特徴とする。
【解決手段】フロントノーズ部50と、中間ノーズ部51と、フロントウインドパネル52と、を備え、フロントノーズ部50より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部56を備え、少なくとも中間ノーズ部51にボンネット開口70が形成されると共に、ボンネット開口70を開閉するボンネット部材71が設けられ、ボンネット部材71をアッパノーズ部56との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構72を備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部と、このフロントノーズ部と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部と、この中間ノーズ部の後方に設けられた車室の前方を車外が視認可能となるように覆ったフロントウインドパネル(フロントウインドガラス)と、を備えたような車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の空力特性を向上させるためには、車両前方から後方に傾斜して延びるノーズパネルの高さ位置を低く設定すると共に、このノーズパネルの前端部上方にスポイラを配設するとよいことが知られている。
すなわち、特許文献1に開示されているように、傾斜した上面を有して配設されたノーズパネルと、このノーズパネルの傾斜上面から上方に離間して配設されたバンパ部材(フローティングタイプのスポイラ)とを具備し、このバンパ部材がスポイラ機能を有するように形成したものがある。
【0003】
この特許文献1に開示された従来構造によれば、車両前部構造を低ノーズ化して、ボンネットラインを低く抑え、上記バンパ部材にスポイラとしての機能を発揮させながら、ノーズパネルとバンパ部材との間の開口から導入した走行風を、ボンネット、フロントウインドガラス、ルーフに沿って流し、空力抵抗の低減を図って、空力特性の向上を図ることができる。
【0004】
また、特許文献2には、ノーズパネルと、該ノーズパネルの上方に配置されスポイラ機能を備えたバンパ部材(フローティングタイプのスポイラ)との間に開口を有する車両において、上述のバンパ部材の下側に、走行風導入用の開口を設け、走行風を有効利用して、エンジンルームの冷却、またはオイルクーラの冷却、あるいは、エンジンへの吸気導入を行なうように構成したものが開示されている。
この特許文献2に開示された従来構造によれば、空力特性の向上と、走行風の有効利用とを両立させることができる。
【0005】
さらに、特許文献3には、車両の前端ノーズ部より上方に離間して車幅方向に延びるスポイラが配設された車両の前部車体構造において、上記スポイラには上方からの荷重を緩衝する緩衝部が設けられ、かつ、上記スポイラの下面と前端ノーズ部上面との間に走行風流入用の開口部を形成した構造が開示されている。
この特許文献3に開示された従来構造によれば、スポイラによる空力特性の確保と、緩衝部による歩行者保護との両立を図ることができる。
【0006】
このような車両の前部車体構造においては、空力特性のさらなる向上が要請されると共に、これと併せて、車両が歩行者と衝突した場合、当該歩行者を適切に保護するという安全性(歩行者保護性能)の向上が要求され、さらには、ボンネット下部空間をエンジンルームとする場合には、エンジンルーム内のサービス性向上が要求され、ボンネット下部空間を収納部とする場合には、収納性の確保が求められている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−69861号公報
【特許文献2】特開平9−86449号公報
【特許文献3】特開2001−138963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、フロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を備え、少なくともフロントノーズ部後方の中間ノーズ部にボンネット開口を形成し、該ボンネット開口を開閉するボンネット部材と、このボンネット部材を上記アッパノーズ部と干渉しないように開閉するボンネット開閉機構とを設けることで、空力性能および歩行者保護性能を向上しつつ、ボンネット下部空間内のサービス性やボンネット下部空間に対する収納性を確保することができる車両の前部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両の前部車体構造は、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部と、該フロントノーズ部と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部と、該中間ノーズ部の後方に設けられた車室の前方を車外が視認可能になるように覆ったフロントウインドパネルと、を備えた車両の前部車体構造であって、上記フロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を備え、少なくとも上記中間ノーズ部にボンネット開口が形成されると共に、該ボンネット開口を開閉するボンネット部材が設けられ、
該ボンネット部材をアッパノーズ部との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構を備えたものである。
【0010】
上記構成によれば、アッパノーズ部の下面とフロントノーズ部の上面との間には、走行風の通過が可能な通路が形成され、該アッパノーズ部がスポイラとして作用するので、空力特性の向上を図ることができる。
また、車両が歩行者と衝突した際、車両前部上側に倒れる歩行者を上記アッパノーズ部にて受け止めることができるので、歩行者保護性能の向上を図ることができる。
【0011】
さらに、ボンネット開口を開閉するボンネット部材を、ボンネット開閉機構にてアッパノーズ部と干渉しないように開閉することができるので、ボンネット下部空間をエンジンルームとする場合には、エンジンルーム内のサービス性を確保することができ、ボンネット下部空間を収納部とする場合には、収納性を確保することができる。
要するに、空力性能および歩行者保護性能を向上しつつ、ボンネット下部空間に対するサービス性や収納性を確保することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記ボンネット開口は中間ノーズ部より上記アッパノーズ部の下方領域に渡って形成され、該下方領域を含めて上記ボンネット部材が開閉可能に設けられたものである。
上記構成によれば、ボンネット開口の拡大により、サービス性や収納性の向上を図ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記ボンネット開閉機構は、上記ボンネット部材を前端で枢支し、かつ車両前後方向にスライド可能に支持するスライド支持機構を備えたものである。
上記構成によれば、シンプルな機構でありながら、ボンネット下部空間のサービス性や収納性の確保を達成することができる。また、ボンネット部材は単に開閉するのみならず車両前後方向にスライドするので、ボンネット部材を開放し、かつ前後方向の後方へスライドさせると、ボンネット開口を介してボンネット下部空間へのアクセス性が向上するので、サービス性や収納性の向上を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記中間ノーズ部の下方には車両を駆動するパワートレインが配設されたものである。
上記構成によれば、中間ノーズ部の下方にパワートレインを配設したので、該パワートレイン前方のスペース自由度が拡大し、フロントノーズ部の高さや傾斜角度などのレイアウトの自由度が確保できる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記フロントノーズ部と上記アッパノーズ部との間に、走行風を通過させて整流可能な整流通路を形成し、該整流通路の下面部を形成する整流下部面部と、上記中間ノーズ部上面と、上記フロントウインドパネル前面と、を所定の角度で略連続した形状に形成したものである。
上述の所定の角度は、水平面に対して約20度から25度の範囲、望ましくは、22度に設定してもよい。
【0016】
上記構成によれば、整流通路の形成と併せて、整流下部面部、中間ノーズ部上面およびフロントウインドパネル前面を所定角度で連続させたので、空力特性の向上を図ることができ、また、上記所定角度により、ボンネットライン全体を低く設定することができ、前方視認性の向上を図ることができ、さらに、低ボンネット化によりフロントオーバハングの短縮を図ることもできる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記フロントノーズ部および中間ノーズ部の下方には、車幅方向で離間して車両の前後方向に延びるフロントフレームが一対設けられ、該フロントフレームの前方には車幅方向に延びるバンパレインが設けられると共に、該バンパレインの中間部には上記フロントノーズ部下方において後方に後退する後退部が形成されたものである。
【0018】
上記構成によれば、バンパレインの中間部に上記後退部を形成したので、フロントノーズ部の先端部の高さを低く設定することができ、より一層良好な低ボンネット化を図ることができる。
因に、後退部を設けない場合には、フロントノーズ部の先端部、特に、先端中央を下げると、バンパレインとフロントノーズ部の先端部とが干渉するが、この実施態様では、バンパレインに上記後退部を形成したので、フロントノーズ部の先端を下げても、両者(バンパレインとフロントノーズ部)の干渉を回避することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、フロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を備え、少なくともフロントノーズ部後方の中間ノーズ部にボンネット開口を形成し、該ボンネット開口を開閉するボンネット部材と、このボンネット部材を上記アッパノーズ部と干渉しないように開閉するボンネット開閉機構とを設けたので、空力性能および歩行者保護性能を向上しつつ、ボンネット下部空間内のサービス性やボンネット下部空間に対する収納性を確保することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
空力性能および歩行者保護性能を向上しつつ、ボンネット下部空間内のサービス性やボンネット下部空間に対する収納性を確保するという目的を、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部と、該フロントノーズ部と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部と、該中間ノーズ部の後方に設けられた車室の前方を車外が視認可能になるように覆ったフロントウインドパネルと、を備えた車両の前部車体構造において、上記フロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を備え、少なくとも上記中間ノーズ部にボンネット開口が形成されると共に、該ボンネット開口を開閉するボンネット部材が設けられ、該ボンネット部材をアッパノーズ部との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構を備えるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は、車両の前部車体構造を示すが、まず、図1、図2、図3を参照して車両の全体構造について説明する。ここで、図1は車両の側面図、図2は車両の平面図、図3は車両の正面図である。
【0022】
図1において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル(ダッシュパネル)3を設け、このダッシュロアパネル3の下部には、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル4を、一体または一体的に連設し、このフロアパネル4の後部には、上方に立上がるキックアップ部5および凹形状のリヤシートパン6を形成し、このリヤシートパン6にはバルクヘッド7を介してリヤフロア8(フロアパネル)を連設している。
【0023】
上述のフロアパネル4の車幅方向中央部には、車室2内へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部9を設けている。このトンネル部9は、ダッシュロアパネル3とバルクヘッド7との間を車両の前後方向に延びており、該トンネル部9は車体剛性の中心となるものである。なお、このトンネル部9の上部には、該トンネル部9の上部に沿って車両の前後方向に延びるトンネルメンバ(いわゆる、ハイマウントバックボーンフレーム)を設けてもよい。
【0024】
また、上述のフロアパネル4の左右両サイドには、図2、図3に示すように、車両の前後方向に延びるサイドシル10を接合固定している。このサイドシル10は、サイドシルインナ11とサイドシルアウタ12とを接合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面13を有する車体剛性部材である。
【0025】
さらに、図1、図2に示すように、ダッシュロアパネル3とキックアップ部5との前後方向中間部において、上述のフロアパネル4上には、トンネル部9の縦壁とサイドシルインナ11の縦壁との間を車幅方向に連結する左右のフロアクロスメンバ14,14を設け、このフロアクロスメンバ14とフロアパネル4との間には、車幅方向に延びる閉断面15を形成している。
【0026】
図2に示すように、上述のトンネル部9とサイドシル10との間の車幅方向の中間部において、フロアパネル4の下部には、車両の前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム16,16を接合固定して、このフロアフレーム16とフロアパネル4との間には、前後方向に延びる閉断面を形成している。
【0027】
また、リヤフロア8の下部両サイドには、図1、図2に示すように、車両の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム17,17を接合固定して、このリヤサイドフレーム17とリヤフロア8との間には、前後方向に延びる閉断面を形成すると共に、これら一対のリヤサイドフレーム17,17の前部を、サイドシル10の後部と車両前後方向にオーバラップする位置まで延設させている。
【0028】
一方、ボンネット下部空間となるエンジンルーム1の左右両サイドを車両の前後方向に延びるフロントフレームとしての一対のフロントサイドフレーム18,18を設けている。これらフロントサイドフレーム18,18は図1に示すように、その後部がダッシュロアパネル3の前面に沿って下方に延び、該フロントサイドフレーム18の後端部は上述のフロアフレーム16の前端部に連結されていて、このフロントサイドフレーム18とフロアフレーム16とは、図2に示すように、車両の前後方向に連続するものである。
ここで、上述のサイドシル10、フロアクロスメンバ14、フロアフレーム16、リヤサイドフレーム17、フロントサイドフレーム18はそれぞれ車体剛性部材であって、これらの各車体剛性部材により、車体剛性を確保すべく構成している。
【0029】
また、左右一対のフロントサイドフレーム18,18間には、車幅方向に延びる閉断面構造のフロントクロスメンバ19(いわゆるNo.1.5クロスメンバ)を設ける一方、一対のフロントサイドフレーム18,18の前方には、クラッシュカン20,20(衝突エネルギ吸収部材)を介して、車幅方向に延びるバンパレイン21を設けている。
【0030】
このバンパレイン21の車幅方向中間部には、後方に後退する中間後退部21Aを形成すると共に、バンパレイン21の両端部にも後方に後退するサイド後退部21B,21Cを形成し、該バンパレイン21の平面から見た全体形状をW字状と成している。上述のサイド後退部21B,21Cを形成し、該バンパレイン21の平面から見た全体形状をW字状と成している。上述のサイド後退部21B,21Cを設けることで、車両前部のデザイン性の自由度を確保するように構成している。
さらに、バンパレイン21の中間後退部21Aと上述のフロントクロスメンバ19の中央部との間を、クラッシュカン22(衝突エネルギ吸収部材)で連結している。
【0031】
図1〜図3に示すように、上述のフロントクロスメンバ19の近傍において、左右一対のフロントサイドフレーム18,18間には、後部にファン23を備えたラジエータ24を前低後高状に傾斜させてスラント配設している。このラジエータ24は後述するエンジン25の前方に配設されたものである。
【0032】
ところで、図1、図2に示すように、エンジンルーム1内の後部およびトンネル部9の車外側には、エンジン25とトランスミッション26とから成るパワートレイン27を配設し、重量物としてのエンジン25を可及的車両中心部に後退配置して、所謂フロント・ミッドシップ・エンジン車と成している。
【0033】
また、上述のトンネル部9の車外側には、トランスミッション26の出力を、リヤディファレンシャル装置28に伝達するプロペラシャフト29を設け、上述のリヤディファレンシャル装置28の差動出力を左右のドライブシャフト30,30(図2参照)を介して後輪31,31に伝達すべく構成して、FR(前部機関後輪駆動)タイプの車両と成している。
【0034】
一方、図2に示すように、車室2内において、フロアクロスメンバ14と上下方向に対応する位置には、運転席シート32と助手席シート33とを車幅方向に並設している。これらの前列シートは、シートクッション34とシートバック35とをそれぞれ備えたバケットシート(セパレート・シート)である。この実施例では、運転席シート32を左側に配設して、左ハンドル車と成しているが、右ハンドル車と成してもよいことは勿論である。
【0035】
また、車室2内において、リヤシートパン6に対応する位置には、リヤシート36を配設している。この後列シートは、シートクッション37とシートバック38とを備えたベンチタイプのシートであるが、リヤシート36は、セパレートシートで構成してもよい。
なお、図中、39はステアリングホイール、40はインストルメントパネル、41はステアリングラック、42はフロントサスペンション(図示せず)を支持するサブフレーム、43は前輪、44はリヤシートパン6の下部およびバルクヘッド7の後部に設けられた燃料タンクである。
【0036】
次に、車両の前部車体構造について詳述する。
図4は図1の要部拡大側面図であって、この車両は、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部50と、このフロントノーズ部50と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部51と、この中間ノーズ部51の後方に設けられた車室2の前方を車外が視認可能となるように覆ったフロントウインドパネル(フロントウインドガラスと同意、以下単にフロントウインドと略記する)52と、を備えている。
【0037】
図3に示すように、上述のフロントウインド52は、左右のフロントピラー53と、ルーフ部54の前端と、カウル部上端との間に形成されたフロントウインド開口を覆うもので、このフロントウインド52の下端部は、カウルパネル(図示せず)で支持される一方、図2に示すように、フロントウインド52の下方には該フロントウインド52を払拭する一対のワイパ55,55が設けられている。
【0038】
図3、図4に示すように、上述のフロントノーズ部50より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部56を設けている。このアッパノーズ部56は、エネルギ吸収可能なEA部材(エネルギ・アブソーバ部材)としての発泡ウレタン部材57と、この発泡ウレタン部材57の外部を覆う樹脂製の外皮58とから構成されていて、上下方向にエネルギ吸収可能に設けられている。
【0039】
図3に示すように、上述のアッパノーズ部56は、その車幅方向中央が上方に位置するなだらかな曲面形状に形成されており、アッパノーズ部56の車幅方向両サイド部は、フロントノーズ部50を介して、左右のフロントフェンダ59,59と連続するように構成されている。また、図2に示すように、このアッパノーズ部56は、その中央部前端が上述の中間後退部21Aよりも前方に位置し、その中央部後端が前輪43の中心と略対応する部位に位置するように設定されている。
【0040】
また、図3、図4に示すように、上述のフロントノーズ部50とアッパノーズ部56との間には、走行風を通過させて整流可能な整流通路60を形成している。すなわち、この実施例のアッパノーズ部56は、バンパ機能と、スポイラ機能と、歩行者保護機能とを兼ねるように構成している。
さらに、図4に示すように、上述の整流通路60の下面部を形成する整流下部面部60aと、上述の中間ノーズ部51上面と、上述のフロントウインド52前面とを、所定の角度θで略連続した形状に形成している。
【0041】
この実施例では、上述の整流下部面部60aと、中間ノーズ部51上面と、フロントウインド52前面とを、図4に示すように、水平面(HOR)に対して約20度から25度の間の角度θで前低後高状に傾斜させている。
ここで上記角度θは20〜25度のうちで、22度が最も好ましい。また、上記角度θを20〜25度の範囲内に設定すると、空気抗力係数をCd=0.27だけ改善することができ、空力特性の向上を図ることができた。
【0042】
一方、車両を駆動するパワートレイン27、特にそのエンジン25は上述の中間ノーズ部51の下方に配設されており、エンジン25前方のスペース自由度の拡大を図るように構成している。すなわち、中間ノーズ部51の下方にエンジン25を配設することで、重量物としてのエンジン25を可及的車両中心側に寄せてレイアウトして、ヨー慣性モーメントの低減を図ることができるのは勿論、エンジン25よりも前方のスペース自由度の拡大を図って、フロントノーズ部50の高さや、傾斜角度などのレイアウトの自由度を確保すべく構成している。
【0043】
また、図3、図4に示すように、上述の一対のフロントサイドフレーム18,18は、フロントノーズ部50および中間ノーズ部51の下方に設けられており、一対のフロントサイドフレーム18,18の前方に設けられたバンパレイン21における中間後退部21Aは、上述のフロントノーズ部50の下方において後方に後退するように形成されており、この後退構造により、フロントノーズ部50の先端部の高さを低く設定して、低ボンネット化(低ノーズ化)を図るように構成している。
さらに、図2で示したように、バンパレイン21の両端部にも後方に後退する左右のサイド後退部21B,21Cをそれぞれ形成することで、車両前部のデザインの自由度向上を図るように構成している。
【0044】
図5に示すように、上述の中間ノーズ部51におけるダッシュロアパネル3の一般面よりも前側には、ボンネット開口70を形成している。図4、図5に示すように、このボンネット開口70を開閉するボンネット部材71を設け、このボンネット部材71を上述のアッパノーズ部56との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構としてのヒンジ72を備えている。
このヒンジ72は、上述のボンネット部材71をその前端で枢支し、かつ車両前後方向にスライド可能に支持するスライド支持機構としてのスライドレール73を備えている。
【0045】
このスライドレール73は、図4、図5、図6に示すように、ロアレール74と、このロアレール74に対して摺動可能なアッパレール75とから成り、ボンネット部材71の下部にアッパレール75を取付ける一方、ロアレール74は上述のヒンジ72に取付けている。
【0046】
この実施例では、図3、図7に示すように、上述のスライドレール73は車幅方向に離間して合計2本設けられている。また、上述のヒンジ72はスライドレール73に対応して設けられている。該ヒンジ72は、ボンネット開口70の下部口縁としてのフロントノーズ部50の下面に固定された一側のヒンジブラケットと、ロアレール74の前端部に固定された他側のヒンジブラケットと、これらの各ヒンジブラケットを枢着するヒンジピンとを備えている。
【0047】
図4はボンネット部材71でボンネット開口70を閉鎖した状態を示しており、この状態からヒンジ72を支点として、ボンネット部材71の後方側を上方に持ち上げた後に、ロアレール74に沿ってアッパレール75を遊端側にスライドさせると、図5に示すように、ボンネット開口70を開放することができると共に、ボンネット下部空間としてのエンジンルーム1内に対するアクセス・スペースの拡大を図ることができる。
なお、図7において、61はリトラクタブル式のヘッドランプである。
【0048】
このように構成した車両の前部車体構造の作用について説明する。
車両の前進走行時、該車両には前方からの走行風が相対的に吹付けられ、この走行風は車体前部に当って、アッパノーズ部56の上側を吹抜ける風と、整流通路60内を吹抜ける風(図4の点線矢印参照)とに分れ、翼理論から風の吹抜け長さの短い面から長い面に向けて、押下げ力(いわゆる、ダウンフォース)が発生する。
【0049】
このため、アッパノーズ部56を備えた車両の前部車体構造は、全体的に路面に対して押付けられるような力を受け、前輪43,43の接地力が増加し、走行安定性が増す。このように上述のアッパノーズ部56による空力特性が確保され、車両の走行安定性の向上によって、走行性能が改善される。
【0050】
しかも、整流下部面部60aと、中間ノーズ部51上面と、フロントウインド52前面とを、水平面(HOR)に対して約20〜25度の間の角度θで前低後高状に傾斜させたので、空気抗力係数の改善により、空力特性をさらに向上させることができた。
【0051】
一方、図8に示すように、車両の歩行者X(例えば、子供)とが衝突した場合、歩行者Xの上体がアッパノーズ部56上に倒れるが、発泡ウレタン部材57と外皮58とから成るアッパノーズ部56が撓んで、その衝撃エネルギを吸収するので、歩行者保護を図ることができる。このアッパノーズ部56の窪みは、図8で示す断面構造の窪みと、図3で示すアッパノーズ部56全体の撓みとの双方を意味する。
【0052】
このように、図1〜図8で示した実施例の車両の前部車体構造は、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部50と、該フロントノーズ部50と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部51と、該中間ノーズ部51の後方に設けられた車室2の前方を車外が視認可能になるように覆ったフロントウインド52と、を備えた車両の前部車体構造であって、上記フロントノーズ部50より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部56を備え、少なくとも上記中間ノーズ部51にボンネット開口70が形成されると共に、該ボンネット開口70を開閉するボンネット部材71が設けられ、該ボンネット部材71をアッパノーズ部56との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構(ヒンジ72参照)を備えたものである(図4、図5参照)。
【0053】
上記構成によれば、アッパノーズ部56の下面とフロントノーズ部50の上面との間には、走行風の通過が可能な通路が形成され、該アッパノーズ部56がスポイラとして作用するので、空力特性の向上を図ることができる。
また、車両が歩行者X(図8参照)と衝突した際、車両前部上側に倒れる歩行者Xを上記アッパノーズ部56にて受け止めることができるので、歩行者保護性能の向上を図ることができる。
【0054】
さらに、ボンネット開口70を開閉するボンネット部材71を、ボンネット開閉機構(ヒンジ72参照)にてアッパノーズ部56と干渉しないように開閉することができるので、ボンネット下部空間をエンジンルーム1とする場合には、エンジンルーム1内のエンジン25およびエンジン補機などのサービス性を確保することができ、またエンジンをリヤ側等にレイアウトして上記ボンネット下部空間を収納部とする場合には、この収納部に対する収納性を確保することができる。
要するに、空力性能および歩行者保護性能を向上しつつ、ボンネット下部空間に対するサービス性や収納性を確保することができる。
【0055】
また、上記ボンネット開閉機構(ヒンジ72参照)は、上記ボンネット部材71を前端で枢支し、かつ車両前後方向にスライド可能に支持するスライド支持機構(スライドレール73参照)を備えたものである(図4、図5、図6参照)。
この構成によれば、シンプルな機構でありながら、エンジンルーム1等のボンネット下部空間のサービス性や収納性の確保を達成することができる。また、ボンネット部材71は単に開閉するのみならず車両前後方向にスライドするので、ボンネット部材71を開放し、かつ前後方向の後方へスライドさせると、ボンネット開口70を介してボンネット下部空間へアクセスするアクセス性が向上するので、サービス性や収納性の向上を図ることができる。
【0056】
さらに、上記中間ノーズ部51の下方には車両を駆動するパワートレイン27(特に、エンジン25参照)が配設されたものである(図4参照)。
上記構成によれば、中間ノーズ部51の下方にパワートレイン27(特に、エンジン25)を配設したので、該パワートレイン27前方のスペース自由度が拡大し、フロントノーズ部50の高さや傾斜角度などのレイアウトの自由度が確保できる。
【0057】
しかも、上記フロントノーズ部50と上記アッパノーズ部56との間に、走行風を通過させて整流可能な整流通路60を形成し、該整流通路60の下面部を形成する整流下部面部60aと、上記中間ノーズ部51上面と、上記フロントウインド52前面と、を所定の角度θで略連続した形状に形成したものである(図4参照)。
上述の所定の角度は、水平面HORに対して約20度から25度の範囲、望ましくは、22度に設定される。
【0058】
この構成によれば、整流通路60の形成と併せて、整流下部面部60a、中間ノーズ部51上面およびフロントウインド52前面を所定角度θで連続させたので、空力特性の向上を図ることができ、また、上記所定角度θにより、ボンネットライン全体を低く設定することができ、前方視認性の向上を図ることができ、さらに低ボンネット化によりフロントオーバハングの短縮を図ることもできる。
【0059】
また、上記フロントノーズ部50および中間ノーズ部51の下方には、車幅方向で離間して車両の前後方向に延びるフロントフレーム(フロントサイドフレーム18参照)が一対設けられ、該フロントフレーム(フロントサイドフレーム18参照)の前方には車幅方向に延びるバンパレイン21が設けられると共に、該バンパレイン21の中間部には上記フロントノーズ部50下方において後方に後退する後退部(中間後退部21A参照)が形成されたものである(図2、図4参照)。
【0060】
この構成によれば、バンパレイン21の中間部に上記後退部(中間後退部21A参照)を形成したので、フロントノーズ部50の先端部の高さを低く設定することができ、より一層良好な低ボンネット化を図ることができる。
因に、後退部を設けない場合には、フロントノーズ部50の先端部、特に、先端中央を下げると、バンパレイン21とフロントノーズ部50の先端部とが干渉するが、この実施態様では、バンパレイン21に上記後退部(中間後退部21A参照)を形成したので、フロントノーズ部50の先端を下げても、両者(バンパレイン21とフロントノーズ部50)の干渉を回避することができる。
【実施例2】
【0061】
図9、図10は車両の前部車体構造の他の実施例を示すものである。
図9、図10に示すこの実施例では、中間ノーズ部51の後部より上述のアッパノーズ部56の下方領域としてのフロントノーズ部50の前後方向中間部に渡ってボンネット開口70を形成し、該下方領域を含めてボンネット開口70の全体を開閉する単一のボンネット部材71を設け、このボンネット部材71をアッパノーズ部56との干渉を防止して開閉するヒンジ72を設けたものである。
この実施例においても、上記ヒンジ72は、ボンネット部材71をその前端で枢支し、かつ車両前後方向にスライド可能に支持するスライドレール73を備えている。
【0062】
図9はボンネット部材71でボンネット開口70を閉鎖した状態を示しており、この状態からヒンジ72を支点として、ボンネット部材71の後方側を上方に持ち上げた後に、ロアレール74に沿ってアッパレール75を遊端側にスライドさせると、図10に示すように、ボンネット開口70を開放することができると共に、ボンネット下部空間としてのエンジンルーム1内に対するアクセス・スペースの拡大を図ることができる。
なお、この実施例においてもスライドレール73は車幅方向に離間して合計2本設けられている。
【0063】
このように、図9、図10で示した実施例の車両の前部車体構造は、上記ボンネット開口70は中間ノーズ部51より上記アッパノーズ部56の下方領域に渡って形成され、該下方領域を含めて上記ボンネット部材71が開閉可能の設けられたものである(図9、図10参照)。
この構成によれば、ボンネット開口70の拡大により、ボンネット下部空間におけるサービス性や収納性の向上を図ることができる。
【0064】
図9、図10で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図9、図10において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例3】
【0065】
図11は車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示すものである。
図11に示すこの実施例では、中間ノーズ部51におけるダッシュロアパネル3の一般面より前側にボンネット開口70を形成し、このボンネット開口70を開閉するボンネット部材71を設け、該ボンネット部材71をアッパノーズ部56との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構としてのヒンジ72を備えたものである。
【0066】
この実施例では、上記ヒンジ72はボンネット部材71をその後端で枢支すべく、ボンネット開口70の後部口縁において中間ノーズ部51の下面に取付けられている。
【0067】
ボンネット部材71は図11に実線で示すようにボンネット開口70を閉鎖しており、この閉鎖状態からヒンジ72を支点として、ボンネット部材71の前部を上方に持ち上げると、図11に仮想線αで示すように、ボンネット開口70を開放することができる。
【0068】
このため、ボンネット下部空間を図示の如くエンジンルーム1とする場合には、エンジンルーム1内のエンジン25およびエンジン補機などのサービス性を確保することができ、また、エンジンをリヤ側等にレイアウトして、ボンネット下部空間を収納部と成す場合には、収納性を確保することができるうえ、ボンネット枢支構造の簡略化を図ることができる。
【0069】
図11で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図11において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例4】
【0070】
図12は車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示すものである。
図12に示すこの実施例では、中間ノーズ部51にボンネット開口70を形成すると共に、このボンネット開口70を開閉する2つのボンネット部材71,71を設け、これらボンネット部材71,71を、アッパノーズ部56との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構としてのヒンジ72,72を備えたものである。
【0071】
車両右側のボンネット部材71はその右端でヒンジ72に枢支され、車両左側のボンネット部材71はその左端でヒンジ72に枢支されており、これら左右の各ボンネット部材71,71はヒンジ72を支点として、車幅方向(図12の矢印a,b方向)に開閉するように構成されている。また、上述のヒンジ72,72はボンネット開口70の左右両側部口縁において中間ノーズ部51の下面に取付けられている。
【0072】
図12に実線で示すように、左右一対のボンネット部材71,71を車幅方向に回動させて起立保持すると、ボンネット開口70が開放されるので、ボンネット下部空間をエンジンルーム1とする場合には、該エンジンルーム1内のエンジン25およびエンジン補機などのサービス性を確保することができ、また、エンジをリヤ側等にレイアウトして、ボンネット下部空間を収納部と成す場合には、収納性を確保することができる。
【0073】
図12で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図12において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例5】
【0074】
図13は車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示すものである。
図13に示すこの実施例では、中間ノーズ部51の後部から通常位置のアッパノーズ部56(仮想線β参照)の下方領域としてのフロントノーズ部50の前後方向中間部に渡ってボンネット開口70を形成し、このボンネット開口70を開閉するボンネット部材71を設けている。
上述のボンネット部材71はその後端がヒンジ72(ボンネット開閉機構)で枢支されており、該ヒンジ72はボンネット開口70の後部口縁において中間ノーズ部51の下面に取付けられている。
【0075】
一方、上述のアッパノーズ部56には、その合成樹脂製の外皮58により軸受76を内部に一体形成し、前部車体側のピン77で該軸受76を支持すると共に、アッパノーズ部56それ自体が図13の通常位置(仮想線β参照)と、ピン77および軸受76を支点として前方に反転させた実線位置と、の間を回動可能に構成している。なお、このアッパノーズ部56を図13に仮想線βで示す通常位置に保持するには、ロックピンなどのロック手段を別途設けるとよい。
【0076】
図13に示すこの実施例では、まず仮想線βで示す通常位置のアッパノーズ部56を、矢印cで示すように前方に反転させて実線位置と成した後に、ヒンジ72を支点として、ボンネット部材71を矢印dで示すように、上方に開成操作すると、ボンネット開口70が大きく開放される。
【0077】
このため、ボンネット下部空間をエンジンルーム1とする場合には、該エンジンルーム1内のエンジン25およびエンジン補機などのサービス性を確保することができ、また、エンジンをリヤ側等にレイアウトして、ボンネット下部空間を収納部と成す場合には、収納性を確保することができる。
図13で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図13において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0078】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフロントウインドパネルは、実施例のフロントウインド52に対応し、
以下同様に、
ボンネット開閉機構は、ヒンジ72に対応し、
スライド支持機構は、スライドレール73に対応し、
フロントフレームは、フロントサイドフレーム18に対応し、
後退部は、中間後退部21Aに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の車両の前部車体構造を示す側面図
【図2】車両の前部車体構造を示す平面図
【図3】車両の前部車体構造を示す正面図
【図4】図1の要部拡大側面図
【図5】ボンネット開成状態を示す側面図
【図6】図5のA−A線に沿う部分拡大断面図
【図7】車両の外観構造を示す斜視図
【図8】車両衝突時の歩行者保護を示す説明図
【図9】車両の前部車体構造の他の実施例を示す側面図
【図10】ボンネット開成状態を示す側面図
【図11】車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示す側面図
【図12】車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示す正面図
【図13】車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示す側面図
【符号の説明】
【0080】
2…車室
18…フロントサイドフレーム(フロントフレーム)
21…バンパレイン
21A…中間後退部(後退部)
27…パワートレイン
50…フロントノーズ部
51…中間ノーズ部
52…フロントウインド(フロントウインドパネル)
56…アッパノーズ部
60…整流通路
60a…整流下部面部
70…ボンネット開口
71…ボンネット部材
72…ヒンジ(ボンネット開閉機構)
73…スライドレール(スライド支持機構)
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部と、このフロントノーズ部と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部と、この中間ノーズ部の後方に設けられた車室の前方を車外が視認可能となるように覆ったフロントウインドパネル(フロントウインドガラス)と、を備えたような車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の空力特性を向上させるためには、車両前方から後方に傾斜して延びるノーズパネルの高さ位置を低く設定すると共に、このノーズパネルの前端部上方にスポイラを配設するとよいことが知られている。
すなわち、特許文献1に開示されているように、傾斜した上面を有して配設されたノーズパネルと、このノーズパネルの傾斜上面から上方に離間して配設されたバンパ部材(フローティングタイプのスポイラ)とを具備し、このバンパ部材がスポイラ機能を有するように形成したものがある。
【0003】
この特許文献1に開示された従来構造によれば、車両前部構造を低ノーズ化して、ボンネットラインを低く抑え、上記バンパ部材にスポイラとしての機能を発揮させながら、ノーズパネルとバンパ部材との間の開口から導入した走行風を、ボンネット、フロントウインドガラス、ルーフに沿って流し、空力抵抗の低減を図って、空力特性の向上を図ることができる。
【0004】
また、特許文献2には、ノーズパネルと、該ノーズパネルの上方に配置されスポイラ機能を備えたバンパ部材(フローティングタイプのスポイラ)との間に開口を有する車両において、上述のバンパ部材の下側に、走行風導入用の開口を設け、走行風を有効利用して、エンジンルームの冷却、またはオイルクーラの冷却、あるいは、エンジンへの吸気導入を行なうように構成したものが開示されている。
この特許文献2に開示された従来構造によれば、空力特性の向上と、走行風の有効利用とを両立させることができる。
【0005】
さらに、特許文献3には、車両の前端ノーズ部より上方に離間して車幅方向に延びるスポイラが配設された車両の前部車体構造において、上記スポイラには上方からの荷重を緩衝する緩衝部が設けられ、かつ、上記スポイラの下面と前端ノーズ部上面との間に走行風流入用の開口部を形成した構造が開示されている。
この特許文献3に開示された従来構造によれば、スポイラによる空力特性の確保と、緩衝部による歩行者保護との両立を図ることができる。
【0006】
このような車両の前部車体構造においては、空力特性のさらなる向上が要請されると共に、これと併せて、車両が歩行者と衝突した場合、当該歩行者を適切に保護するという安全性(歩行者保護性能)の向上が要求され、さらには、ボンネット下部空間をエンジンルームとする場合には、エンジンルーム内のサービス性向上が要求され、ボンネット下部空間を収納部とする場合には、収納性の確保が求められている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−69861号公報
【特許文献2】特開平9−86449号公報
【特許文献3】特開2001−138963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、フロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を備え、少なくともフロントノーズ部後方の中間ノーズ部にボンネット開口を形成し、該ボンネット開口を開閉するボンネット部材と、このボンネット部材を上記アッパノーズ部と干渉しないように開閉するボンネット開閉機構とを設けることで、空力性能および歩行者保護性能を向上しつつ、ボンネット下部空間内のサービス性やボンネット下部空間に対する収納性を確保することができる車両の前部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両の前部車体構造は、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部と、該フロントノーズ部と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部と、該中間ノーズ部の後方に設けられた車室の前方を車外が視認可能になるように覆ったフロントウインドパネルと、を備えた車両の前部車体構造であって、上記フロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を備え、少なくとも上記中間ノーズ部にボンネット開口が形成されると共に、該ボンネット開口を開閉するボンネット部材が設けられ、
該ボンネット部材をアッパノーズ部との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構を備えたものである。
【0010】
上記構成によれば、アッパノーズ部の下面とフロントノーズ部の上面との間には、走行風の通過が可能な通路が形成され、該アッパノーズ部がスポイラとして作用するので、空力特性の向上を図ることができる。
また、車両が歩行者と衝突した際、車両前部上側に倒れる歩行者を上記アッパノーズ部にて受け止めることができるので、歩行者保護性能の向上を図ることができる。
【0011】
さらに、ボンネット開口を開閉するボンネット部材を、ボンネット開閉機構にてアッパノーズ部と干渉しないように開閉することができるので、ボンネット下部空間をエンジンルームとする場合には、エンジンルーム内のサービス性を確保することができ、ボンネット下部空間を収納部とする場合には、収納性を確保することができる。
要するに、空力性能および歩行者保護性能を向上しつつ、ボンネット下部空間に対するサービス性や収納性を確保することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記ボンネット開口は中間ノーズ部より上記アッパノーズ部の下方領域に渡って形成され、該下方領域を含めて上記ボンネット部材が開閉可能に設けられたものである。
上記構成によれば、ボンネット開口の拡大により、サービス性や収納性の向上を図ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記ボンネット開閉機構は、上記ボンネット部材を前端で枢支し、かつ車両前後方向にスライド可能に支持するスライド支持機構を備えたものである。
上記構成によれば、シンプルな機構でありながら、ボンネット下部空間のサービス性や収納性の確保を達成することができる。また、ボンネット部材は単に開閉するのみならず車両前後方向にスライドするので、ボンネット部材を開放し、かつ前後方向の後方へスライドさせると、ボンネット開口を介してボンネット下部空間へのアクセス性が向上するので、サービス性や収納性の向上を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記中間ノーズ部の下方には車両を駆動するパワートレインが配設されたものである。
上記構成によれば、中間ノーズ部の下方にパワートレインを配設したので、該パワートレイン前方のスペース自由度が拡大し、フロントノーズ部の高さや傾斜角度などのレイアウトの自由度が確保できる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記フロントノーズ部と上記アッパノーズ部との間に、走行風を通過させて整流可能な整流通路を形成し、該整流通路の下面部を形成する整流下部面部と、上記中間ノーズ部上面と、上記フロントウインドパネル前面と、を所定の角度で略連続した形状に形成したものである。
上述の所定の角度は、水平面に対して約20度から25度の範囲、望ましくは、22度に設定してもよい。
【0016】
上記構成によれば、整流通路の形成と併せて、整流下部面部、中間ノーズ部上面およびフロントウインドパネル前面を所定角度で連続させたので、空力特性の向上を図ることができ、また、上記所定角度により、ボンネットライン全体を低く設定することができ、前方視認性の向上を図ることができ、さらに、低ボンネット化によりフロントオーバハングの短縮を図ることもできる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記フロントノーズ部および中間ノーズ部の下方には、車幅方向で離間して車両の前後方向に延びるフロントフレームが一対設けられ、該フロントフレームの前方には車幅方向に延びるバンパレインが設けられると共に、該バンパレインの中間部には上記フロントノーズ部下方において後方に後退する後退部が形成されたものである。
【0018】
上記構成によれば、バンパレインの中間部に上記後退部を形成したので、フロントノーズ部の先端部の高さを低く設定することができ、より一層良好な低ボンネット化を図ることができる。
因に、後退部を設けない場合には、フロントノーズ部の先端部、特に、先端中央を下げると、バンパレインとフロントノーズ部の先端部とが干渉するが、この実施態様では、バンパレインに上記後退部を形成したので、フロントノーズ部の先端を下げても、両者(バンパレインとフロントノーズ部)の干渉を回避することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、フロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を備え、少なくともフロントノーズ部後方の中間ノーズ部にボンネット開口を形成し、該ボンネット開口を開閉するボンネット部材と、このボンネット部材を上記アッパノーズ部と干渉しないように開閉するボンネット開閉機構とを設けたので、空力性能および歩行者保護性能を向上しつつ、ボンネット下部空間内のサービス性やボンネット下部空間に対する収納性を確保することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
空力性能および歩行者保護性能を向上しつつ、ボンネット下部空間内のサービス性やボンネット下部空間に対する収納性を確保するという目的を、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部と、該フロントノーズ部と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部と、該中間ノーズ部の後方に設けられた車室の前方を車外が視認可能になるように覆ったフロントウインドパネルと、を備えた車両の前部車体構造において、上記フロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を備え、少なくとも上記中間ノーズ部にボンネット開口が形成されると共に、該ボンネット開口を開閉するボンネット部材が設けられ、該ボンネット部材をアッパノーズ部との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構を備えるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は、車両の前部車体構造を示すが、まず、図1、図2、図3を参照して車両の全体構造について説明する。ここで、図1は車両の側面図、図2は車両の平面図、図3は車両の正面図である。
【0022】
図1において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル(ダッシュパネル)3を設け、このダッシュロアパネル3の下部には、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル4を、一体または一体的に連設し、このフロアパネル4の後部には、上方に立上がるキックアップ部5および凹形状のリヤシートパン6を形成し、このリヤシートパン6にはバルクヘッド7を介してリヤフロア8(フロアパネル)を連設している。
【0023】
上述のフロアパネル4の車幅方向中央部には、車室2内へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部9を設けている。このトンネル部9は、ダッシュロアパネル3とバルクヘッド7との間を車両の前後方向に延びており、該トンネル部9は車体剛性の中心となるものである。なお、このトンネル部9の上部には、該トンネル部9の上部に沿って車両の前後方向に延びるトンネルメンバ(いわゆる、ハイマウントバックボーンフレーム)を設けてもよい。
【0024】
また、上述のフロアパネル4の左右両サイドには、図2、図3に示すように、車両の前後方向に延びるサイドシル10を接合固定している。このサイドシル10は、サイドシルインナ11とサイドシルアウタ12とを接合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面13を有する車体剛性部材である。
【0025】
さらに、図1、図2に示すように、ダッシュロアパネル3とキックアップ部5との前後方向中間部において、上述のフロアパネル4上には、トンネル部9の縦壁とサイドシルインナ11の縦壁との間を車幅方向に連結する左右のフロアクロスメンバ14,14を設け、このフロアクロスメンバ14とフロアパネル4との間には、車幅方向に延びる閉断面15を形成している。
【0026】
図2に示すように、上述のトンネル部9とサイドシル10との間の車幅方向の中間部において、フロアパネル4の下部には、車両の前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム16,16を接合固定して、このフロアフレーム16とフロアパネル4との間には、前後方向に延びる閉断面を形成している。
【0027】
また、リヤフロア8の下部両サイドには、図1、図2に示すように、車両の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム17,17を接合固定して、このリヤサイドフレーム17とリヤフロア8との間には、前後方向に延びる閉断面を形成すると共に、これら一対のリヤサイドフレーム17,17の前部を、サイドシル10の後部と車両前後方向にオーバラップする位置まで延設させている。
【0028】
一方、ボンネット下部空間となるエンジンルーム1の左右両サイドを車両の前後方向に延びるフロントフレームとしての一対のフロントサイドフレーム18,18を設けている。これらフロントサイドフレーム18,18は図1に示すように、その後部がダッシュロアパネル3の前面に沿って下方に延び、該フロントサイドフレーム18の後端部は上述のフロアフレーム16の前端部に連結されていて、このフロントサイドフレーム18とフロアフレーム16とは、図2に示すように、車両の前後方向に連続するものである。
ここで、上述のサイドシル10、フロアクロスメンバ14、フロアフレーム16、リヤサイドフレーム17、フロントサイドフレーム18はそれぞれ車体剛性部材であって、これらの各車体剛性部材により、車体剛性を確保すべく構成している。
【0029】
また、左右一対のフロントサイドフレーム18,18間には、車幅方向に延びる閉断面構造のフロントクロスメンバ19(いわゆるNo.1.5クロスメンバ)を設ける一方、一対のフロントサイドフレーム18,18の前方には、クラッシュカン20,20(衝突エネルギ吸収部材)を介して、車幅方向に延びるバンパレイン21を設けている。
【0030】
このバンパレイン21の車幅方向中間部には、後方に後退する中間後退部21Aを形成すると共に、バンパレイン21の両端部にも後方に後退するサイド後退部21B,21Cを形成し、該バンパレイン21の平面から見た全体形状をW字状と成している。上述のサイド後退部21B,21Cを形成し、該バンパレイン21の平面から見た全体形状をW字状と成している。上述のサイド後退部21B,21Cを設けることで、車両前部のデザイン性の自由度を確保するように構成している。
さらに、バンパレイン21の中間後退部21Aと上述のフロントクロスメンバ19の中央部との間を、クラッシュカン22(衝突エネルギ吸収部材)で連結している。
【0031】
図1〜図3に示すように、上述のフロントクロスメンバ19の近傍において、左右一対のフロントサイドフレーム18,18間には、後部にファン23を備えたラジエータ24を前低後高状に傾斜させてスラント配設している。このラジエータ24は後述するエンジン25の前方に配設されたものである。
【0032】
ところで、図1、図2に示すように、エンジンルーム1内の後部およびトンネル部9の車外側には、エンジン25とトランスミッション26とから成るパワートレイン27を配設し、重量物としてのエンジン25を可及的車両中心部に後退配置して、所謂フロント・ミッドシップ・エンジン車と成している。
【0033】
また、上述のトンネル部9の車外側には、トランスミッション26の出力を、リヤディファレンシャル装置28に伝達するプロペラシャフト29を設け、上述のリヤディファレンシャル装置28の差動出力を左右のドライブシャフト30,30(図2参照)を介して後輪31,31に伝達すべく構成して、FR(前部機関後輪駆動)タイプの車両と成している。
【0034】
一方、図2に示すように、車室2内において、フロアクロスメンバ14と上下方向に対応する位置には、運転席シート32と助手席シート33とを車幅方向に並設している。これらの前列シートは、シートクッション34とシートバック35とをそれぞれ備えたバケットシート(セパレート・シート)である。この実施例では、運転席シート32を左側に配設して、左ハンドル車と成しているが、右ハンドル車と成してもよいことは勿論である。
【0035】
また、車室2内において、リヤシートパン6に対応する位置には、リヤシート36を配設している。この後列シートは、シートクッション37とシートバック38とを備えたベンチタイプのシートであるが、リヤシート36は、セパレートシートで構成してもよい。
なお、図中、39はステアリングホイール、40はインストルメントパネル、41はステアリングラック、42はフロントサスペンション(図示せず)を支持するサブフレーム、43は前輪、44はリヤシートパン6の下部およびバルクヘッド7の後部に設けられた燃料タンクである。
【0036】
次に、車両の前部車体構造について詳述する。
図4は図1の要部拡大側面図であって、この車両は、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部50と、このフロントノーズ部50と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部51と、この中間ノーズ部51の後方に設けられた車室2の前方を車外が視認可能となるように覆ったフロントウインドパネル(フロントウインドガラスと同意、以下単にフロントウインドと略記する)52と、を備えている。
【0037】
図3に示すように、上述のフロントウインド52は、左右のフロントピラー53と、ルーフ部54の前端と、カウル部上端との間に形成されたフロントウインド開口を覆うもので、このフロントウインド52の下端部は、カウルパネル(図示せず)で支持される一方、図2に示すように、フロントウインド52の下方には該フロントウインド52を払拭する一対のワイパ55,55が設けられている。
【0038】
図3、図4に示すように、上述のフロントノーズ部50より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部56を設けている。このアッパノーズ部56は、エネルギ吸収可能なEA部材(エネルギ・アブソーバ部材)としての発泡ウレタン部材57と、この発泡ウレタン部材57の外部を覆う樹脂製の外皮58とから構成されていて、上下方向にエネルギ吸収可能に設けられている。
【0039】
図3に示すように、上述のアッパノーズ部56は、その車幅方向中央が上方に位置するなだらかな曲面形状に形成されており、アッパノーズ部56の車幅方向両サイド部は、フロントノーズ部50を介して、左右のフロントフェンダ59,59と連続するように構成されている。また、図2に示すように、このアッパノーズ部56は、その中央部前端が上述の中間後退部21Aよりも前方に位置し、その中央部後端が前輪43の中心と略対応する部位に位置するように設定されている。
【0040】
また、図3、図4に示すように、上述のフロントノーズ部50とアッパノーズ部56との間には、走行風を通過させて整流可能な整流通路60を形成している。すなわち、この実施例のアッパノーズ部56は、バンパ機能と、スポイラ機能と、歩行者保護機能とを兼ねるように構成している。
さらに、図4に示すように、上述の整流通路60の下面部を形成する整流下部面部60aと、上述の中間ノーズ部51上面と、上述のフロントウインド52前面とを、所定の角度θで略連続した形状に形成している。
【0041】
この実施例では、上述の整流下部面部60aと、中間ノーズ部51上面と、フロントウインド52前面とを、図4に示すように、水平面(HOR)に対して約20度から25度の間の角度θで前低後高状に傾斜させている。
ここで上記角度θは20〜25度のうちで、22度が最も好ましい。また、上記角度θを20〜25度の範囲内に設定すると、空気抗力係数をCd=0.27だけ改善することができ、空力特性の向上を図ることができた。
【0042】
一方、車両を駆動するパワートレイン27、特にそのエンジン25は上述の中間ノーズ部51の下方に配設されており、エンジン25前方のスペース自由度の拡大を図るように構成している。すなわち、中間ノーズ部51の下方にエンジン25を配設することで、重量物としてのエンジン25を可及的車両中心側に寄せてレイアウトして、ヨー慣性モーメントの低減を図ることができるのは勿論、エンジン25よりも前方のスペース自由度の拡大を図って、フロントノーズ部50の高さや、傾斜角度などのレイアウトの自由度を確保すべく構成している。
【0043】
また、図3、図4に示すように、上述の一対のフロントサイドフレーム18,18は、フロントノーズ部50および中間ノーズ部51の下方に設けられており、一対のフロントサイドフレーム18,18の前方に設けられたバンパレイン21における中間後退部21Aは、上述のフロントノーズ部50の下方において後方に後退するように形成されており、この後退構造により、フロントノーズ部50の先端部の高さを低く設定して、低ボンネット化(低ノーズ化)を図るように構成している。
さらに、図2で示したように、バンパレイン21の両端部にも後方に後退する左右のサイド後退部21B,21Cをそれぞれ形成することで、車両前部のデザインの自由度向上を図るように構成している。
【0044】
図5に示すように、上述の中間ノーズ部51におけるダッシュロアパネル3の一般面よりも前側には、ボンネット開口70を形成している。図4、図5に示すように、このボンネット開口70を開閉するボンネット部材71を設け、このボンネット部材71を上述のアッパノーズ部56との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構としてのヒンジ72を備えている。
このヒンジ72は、上述のボンネット部材71をその前端で枢支し、かつ車両前後方向にスライド可能に支持するスライド支持機構としてのスライドレール73を備えている。
【0045】
このスライドレール73は、図4、図5、図6に示すように、ロアレール74と、このロアレール74に対して摺動可能なアッパレール75とから成り、ボンネット部材71の下部にアッパレール75を取付ける一方、ロアレール74は上述のヒンジ72に取付けている。
【0046】
この実施例では、図3、図7に示すように、上述のスライドレール73は車幅方向に離間して合計2本設けられている。また、上述のヒンジ72はスライドレール73に対応して設けられている。該ヒンジ72は、ボンネット開口70の下部口縁としてのフロントノーズ部50の下面に固定された一側のヒンジブラケットと、ロアレール74の前端部に固定された他側のヒンジブラケットと、これらの各ヒンジブラケットを枢着するヒンジピンとを備えている。
【0047】
図4はボンネット部材71でボンネット開口70を閉鎖した状態を示しており、この状態からヒンジ72を支点として、ボンネット部材71の後方側を上方に持ち上げた後に、ロアレール74に沿ってアッパレール75を遊端側にスライドさせると、図5に示すように、ボンネット開口70を開放することができると共に、ボンネット下部空間としてのエンジンルーム1内に対するアクセス・スペースの拡大を図ることができる。
なお、図7において、61はリトラクタブル式のヘッドランプである。
【0048】
このように構成した車両の前部車体構造の作用について説明する。
車両の前進走行時、該車両には前方からの走行風が相対的に吹付けられ、この走行風は車体前部に当って、アッパノーズ部56の上側を吹抜ける風と、整流通路60内を吹抜ける風(図4の点線矢印参照)とに分れ、翼理論から風の吹抜け長さの短い面から長い面に向けて、押下げ力(いわゆる、ダウンフォース)が発生する。
【0049】
このため、アッパノーズ部56を備えた車両の前部車体構造は、全体的に路面に対して押付けられるような力を受け、前輪43,43の接地力が増加し、走行安定性が増す。このように上述のアッパノーズ部56による空力特性が確保され、車両の走行安定性の向上によって、走行性能が改善される。
【0050】
しかも、整流下部面部60aと、中間ノーズ部51上面と、フロントウインド52前面とを、水平面(HOR)に対して約20〜25度の間の角度θで前低後高状に傾斜させたので、空気抗力係数の改善により、空力特性をさらに向上させることができた。
【0051】
一方、図8に示すように、車両の歩行者X(例えば、子供)とが衝突した場合、歩行者Xの上体がアッパノーズ部56上に倒れるが、発泡ウレタン部材57と外皮58とから成るアッパノーズ部56が撓んで、その衝撃エネルギを吸収するので、歩行者保護を図ることができる。このアッパノーズ部56の窪みは、図8で示す断面構造の窪みと、図3で示すアッパノーズ部56全体の撓みとの双方を意味する。
【0052】
このように、図1〜図8で示した実施例の車両の前部車体構造は、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部50と、該フロントノーズ部50と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部51と、該中間ノーズ部51の後方に設けられた車室2の前方を車外が視認可能になるように覆ったフロントウインド52と、を備えた車両の前部車体構造であって、上記フロントノーズ部50より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部56を備え、少なくとも上記中間ノーズ部51にボンネット開口70が形成されると共に、該ボンネット開口70を開閉するボンネット部材71が設けられ、該ボンネット部材71をアッパノーズ部56との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構(ヒンジ72参照)を備えたものである(図4、図5参照)。
【0053】
上記構成によれば、アッパノーズ部56の下面とフロントノーズ部50の上面との間には、走行風の通過が可能な通路が形成され、該アッパノーズ部56がスポイラとして作用するので、空力特性の向上を図ることができる。
また、車両が歩行者X(図8参照)と衝突した際、車両前部上側に倒れる歩行者Xを上記アッパノーズ部56にて受け止めることができるので、歩行者保護性能の向上を図ることができる。
【0054】
さらに、ボンネット開口70を開閉するボンネット部材71を、ボンネット開閉機構(ヒンジ72参照)にてアッパノーズ部56と干渉しないように開閉することができるので、ボンネット下部空間をエンジンルーム1とする場合には、エンジンルーム1内のエンジン25およびエンジン補機などのサービス性を確保することができ、またエンジンをリヤ側等にレイアウトして上記ボンネット下部空間を収納部とする場合には、この収納部に対する収納性を確保することができる。
要するに、空力性能および歩行者保護性能を向上しつつ、ボンネット下部空間に対するサービス性や収納性を確保することができる。
【0055】
また、上記ボンネット開閉機構(ヒンジ72参照)は、上記ボンネット部材71を前端で枢支し、かつ車両前後方向にスライド可能に支持するスライド支持機構(スライドレール73参照)を備えたものである(図4、図5、図6参照)。
この構成によれば、シンプルな機構でありながら、エンジンルーム1等のボンネット下部空間のサービス性や収納性の確保を達成することができる。また、ボンネット部材71は単に開閉するのみならず車両前後方向にスライドするので、ボンネット部材71を開放し、かつ前後方向の後方へスライドさせると、ボンネット開口70を介してボンネット下部空間へアクセスするアクセス性が向上するので、サービス性や収納性の向上を図ることができる。
【0056】
さらに、上記中間ノーズ部51の下方には車両を駆動するパワートレイン27(特に、エンジン25参照)が配設されたものである(図4参照)。
上記構成によれば、中間ノーズ部51の下方にパワートレイン27(特に、エンジン25)を配設したので、該パワートレイン27前方のスペース自由度が拡大し、フロントノーズ部50の高さや傾斜角度などのレイアウトの自由度が確保できる。
【0057】
しかも、上記フロントノーズ部50と上記アッパノーズ部56との間に、走行風を通過させて整流可能な整流通路60を形成し、該整流通路60の下面部を形成する整流下部面部60aと、上記中間ノーズ部51上面と、上記フロントウインド52前面と、を所定の角度θで略連続した形状に形成したものである(図4参照)。
上述の所定の角度は、水平面HORに対して約20度から25度の範囲、望ましくは、22度に設定される。
【0058】
この構成によれば、整流通路60の形成と併せて、整流下部面部60a、中間ノーズ部51上面およびフロントウインド52前面を所定角度θで連続させたので、空力特性の向上を図ることができ、また、上記所定角度θにより、ボンネットライン全体を低く設定することができ、前方視認性の向上を図ることができ、さらに低ボンネット化によりフロントオーバハングの短縮を図ることもできる。
【0059】
また、上記フロントノーズ部50および中間ノーズ部51の下方には、車幅方向で離間して車両の前後方向に延びるフロントフレーム(フロントサイドフレーム18参照)が一対設けられ、該フロントフレーム(フロントサイドフレーム18参照)の前方には車幅方向に延びるバンパレイン21が設けられると共に、該バンパレイン21の中間部には上記フロントノーズ部50下方において後方に後退する後退部(中間後退部21A参照)が形成されたものである(図2、図4参照)。
【0060】
この構成によれば、バンパレイン21の中間部に上記後退部(中間後退部21A参照)を形成したので、フロントノーズ部50の先端部の高さを低く設定することができ、より一層良好な低ボンネット化を図ることができる。
因に、後退部を設けない場合には、フロントノーズ部50の先端部、特に、先端中央を下げると、バンパレイン21とフロントノーズ部50の先端部とが干渉するが、この実施態様では、バンパレイン21に上記後退部(中間後退部21A参照)を形成したので、フロントノーズ部50の先端を下げても、両者(バンパレイン21とフロントノーズ部50)の干渉を回避することができる。
【実施例2】
【0061】
図9、図10は車両の前部車体構造の他の実施例を示すものである。
図9、図10に示すこの実施例では、中間ノーズ部51の後部より上述のアッパノーズ部56の下方領域としてのフロントノーズ部50の前後方向中間部に渡ってボンネット開口70を形成し、該下方領域を含めてボンネット開口70の全体を開閉する単一のボンネット部材71を設け、このボンネット部材71をアッパノーズ部56との干渉を防止して開閉するヒンジ72を設けたものである。
この実施例においても、上記ヒンジ72は、ボンネット部材71をその前端で枢支し、かつ車両前後方向にスライド可能に支持するスライドレール73を備えている。
【0062】
図9はボンネット部材71でボンネット開口70を閉鎖した状態を示しており、この状態からヒンジ72を支点として、ボンネット部材71の後方側を上方に持ち上げた後に、ロアレール74に沿ってアッパレール75を遊端側にスライドさせると、図10に示すように、ボンネット開口70を開放することができると共に、ボンネット下部空間としてのエンジンルーム1内に対するアクセス・スペースの拡大を図ることができる。
なお、この実施例においてもスライドレール73は車幅方向に離間して合計2本設けられている。
【0063】
このように、図9、図10で示した実施例の車両の前部車体構造は、上記ボンネット開口70は中間ノーズ部51より上記アッパノーズ部56の下方領域に渡って形成され、該下方領域を含めて上記ボンネット部材71が開閉可能の設けられたものである(図9、図10参照)。
この構成によれば、ボンネット開口70の拡大により、ボンネット下部空間におけるサービス性や収納性の向上を図ることができる。
【0064】
図9、図10で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図9、図10において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例3】
【0065】
図11は車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示すものである。
図11に示すこの実施例では、中間ノーズ部51におけるダッシュロアパネル3の一般面より前側にボンネット開口70を形成し、このボンネット開口70を開閉するボンネット部材71を設け、該ボンネット部材71をアッパノーズ部56との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構としてのヒンジ72を備えたものである。
【0066】
この実施例では、上記ヒンジ72はボンネット部材71をその後端で枢支すべく、ボンネット開口70の後部口縁において中間ノーズ部51の下面に取付けられている。
【0067】
ボンネット部材71は図11に実線で示すようにボンネット開口70を閉鎖しており、この閉鎖状態からヒンジ72を支点として、ボンネット部材71の前部を上方に持ち上げると、図11に仮想線αで示すように、ボンネット開口70を開放することができる。
【0068】
このため、ボンネット下部空間を図示の如くエンジンルーム1とする場合には、エンジンルーム1内のエンジン25およびエンジン補機などのサービス性を確保することができ、また、エンジンをリヤ側等にレイアウトして、ボンネット下部空間を収納部と成す場合には、収納性を確保することができるうえ、ボンネット枢支構造の簡略化を図ることができる。
【0069】
図11で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図11において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例4】
【0070】
図12は車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示すものである。
図12に示すこの実施例では、中間ノーズ部51にボンネット開口70を形成すると共に、このボンネット開口70を開閉する2つのボンネット部材71,71を設け、これらボンネット部材71,71を、アッパノーズ部56との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構としてのヒンジ72,72を備えたものである。
【0071】
車両右側のボンネット部材71はその右端でヒンジ72に枢支され、車両左側のボンネット部材71はその左端でヒンジ72に枢支されており、これら左右の各ボンネット部材71,71はヒンジ72を支点として、車幅方向(図12の矢印a,b方向)に開閉するように構成されている。また、上述のヒンジ72,72はボンネット開口70の左右両側部口縁において中間ノーズ部51の下面に取付けられている。
【0072】
図12に実線で示すように、左右一対のボンネット部材71,71を車幅方向に回動させて起立保持すると、ボンネット開口70が開放されるので、ボンネット下部空間をエンジンルーム1とする場合には、該エンジンルーム1内のエンジン25およびエンジン補機などのサービス性を確保することができ、また、エンジをリヤ側等にレイアウトして、ボンネット下部空間を収納部と成す場合には、収納性を確保することができる。
【0073】
図12で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図12において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例5】
【0074】
図13は車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示すものである。
図13に示すこの実施例では、中間ノーズ部51の後部から通常位置のアッパノーズ部56(仮想線β参照)の下方領域としてのフロントノーズ部50の前後方向中間部に渡ってボンネット開口70を形成し、このボンネット開口70を開閉するボンネット部材71を設けている。
上述のボンネット部材71はその後端がヒンジ72(ボンネット開閉機構)で枢支されており、該ヒンジ72はボンネット開口70の後部口縁において中間ノーズ部51の下面に取付けられている。
【0075】
一方、上述のアッパノーズ部56には、その合成樹脂製の外皮58により軸受76を内部に一体形成し、前部車体側のピン77で該軸受76を支持すると共に、アッパノーズ部56それ自体が図13の通常位置(仮想線β参照)と、ピン77および軸受76を支点として前方に反転させた実線位置と、の間を回動可能に構成している。なお、このアッパノーズ部56を図13に仮想線βで示す通常位置に保持するには、ロックピンなどのロック手段を別途設けるとよい。
【0076】
図13に示すこの実施例では、まず仮想線βで示す通常位置のアッパノーズ部56を、矢印cで示すように前方に反転させて実線位置と成した後に、ヒンジ72を支点として、ボンネット部材71を矢印dで示すように、上方に開成操作すると、ボンネット開口70が大きく開放される。
【0077】
このため、ボンネット下部空間をエンジンルーム1とする場合には、該エンジンルーム1内のエンジン25およびエンジン補機などのサービス性を確保することができ、また、エンジンをリヤ側等にレイアウトして、ボンネット下部空間を収納部と成す場合には、収納性を確保することができる。
図13で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図13において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0078】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフロントウインドパネルは、実施例のフロントウインド52に対応し、
以下同様に、
ボンネット開閉機構は、ヒンジ72に対応し、
スライド支持機構は、スライドレール73に対応し、
フロントフレームは、フロントサイドフレーム18に対応し、
後退部は、中間後退部21Aに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の車両の前部車体構造を示す側面図
【図2】車両の前部車体構造を示す平面図
【図3】車両の前部車体構造を示す正面図
【図4】図1の要部拡大側面図
【図5】ボンネット開成状態を示す側面図
【図6】図5のA−A線に沿う部分拡大断面図
【図7】車両の外観構造を示す斜視図
【図8】車両衝突時の歩行者保護を示す説明図
【図9】車両の前部車体構造の他の実施例を示す側面図
【図10】ボンネット開成状態を示す側面図
【図11】車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示す側面図
【図12】車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示す正面図
【図13】車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示す側面図
【符号の説明】
【0080】
2…車室
18…フロントサイドフレーム(フロントフレーム)
21…バンパレイン
21A…中間後退部(後退部)
27…パワートレイン
50…フロントノーズ部
51…中間ノーズ部
52…フロントウインド(フロントウインドパネル)
56…アッパノーズ部
60…整流通路
60a…整流下部面部
70…ボンネット開口
71…ボンネット部材
72…ヒンジ(ボンネット開閉機構)
73…スライドレール(スライド支持機構)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部と、該フロントノーズ部と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部と、該中間ノーズ部の後方に設けられた車室の前方を車外が視認可能になるように覆ったフロントウインドパネルと、を備えた車両の前部車体構造であって、
上記フロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を備え、
少なくとも上記中間ノーズ部にボンネット開口が形成されると共に、
該ボンネット開口を開閉するボンネット部材が設けられ、
該ボンネット部材をアッパノーズ部との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構を備えた
車両の前部車体構造。
【請求項2】
上記ボンネット開口は中間ノーズ部より上記アッパノーズ部の下方領域に渡って形成され、
該下方領域を含めて上記ボンネット部材が開閉可能に設けられた
請求項1記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
上記ボンネット開閉機構は、上記ボンネット部材を前端で枢支し、かつ車両前後方向にスライド可能に支持するスライド支持機構を備えた
請求項1または2記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
上記中間ノーズ部の下方には車両を駆動するパワートレインが配設された
請求項1〜3の何れか1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
上記フロントノーズ部と上記アッパノーズ部との間に、走行風を通過させて整流可能な整流通路を形成し、
該整流通路の下面部を形成する整流下部面部と、上記中間ノーズ部上面と、上記フロントウインドパネル前面と、を所定の角度で略連続した形状に形成した
請求項1〜4の何れか1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
上記フロントノーズ部および中間ノーズ部の下方には、車幅方向で離間して車両の前後方向に延びるフロントフレームが一対設けられ、
該フロントフレームの前方には車幅方向に延びるバンパレインが設けられると共に、
該バンパレインの中間部には上記フロントノーズ部下方において後方に後退する後退部が形成された
請求項1〜5の何れか1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項1】
車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部と、該フロントノーズ部と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部と、該中間ノーズ部の後方に設けられた車室の前方を車外が視認可能になるように覆ったフロントウインドパネルと、を備えた車両の前部車体構造であって、
上記フロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を備え、
少なくとも上記中間ノーズ部にボンネット開口が形成されると共に、
該ボンネット開口を開閉するボンネット部材が設けられ、
該ボンネット部材をアッパノーズ部との干渉を防止して開閉するボンネット開閉機構を備えた
車両の前部車体構造。
【請求項2】
上記ボンネット開口は中間ノーズ部より上記アッパノーズ部の下方領域に渡って形成され、
該下方領域を含めて上記ボンネット部材が開閉可能に設けられた
請求項1記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
上記ボンネット開閉機構は、上記ボンネット部材を前端で枢支し、かつ車両前後方向にスライド可能に支持するスライド支持機構を備えた
請求項1または2記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
上記中間ノーズ部の下方には車両を駆動するパワートレインが配設された
請求項1〜3の何れか1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
上記フロントノーズ部と上記アッパノーズ部との間に、走行風を通過させて整流可能な整流通路を形成し、
該整流通路の下面部を形成する整流下部面部と、上記中間ノーズ部上面と、上記フロントウインドパネル前面と、を所定の角度で略連続した形状に形成した
請求項1〜4の何れか1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
上記フロントノーズ部および中間ノーズ部の下方には、車幅方向で離間して車両の前後方向に延びるフロントフレームが一対設けられ、
該フロントフレームの前方には車幅方向に延びるバンパレインが設けられると共に、
該バンパレインの中間部には上記フロントノーズ部下方において後方に後退する後退部が形成された
請求項1〜5の何れか1に記載の車両の前部車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−161137(P2009−161137A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2865(P2008−2865)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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