説明

車両の動力制御装置及びその方法

【課題】無段階変速機で最適燃費を得ることができるようにエンジン出力及び変速比を制御する。
【解決手段】車両の動力制御装置は、運転者が要求する車両出力を実現する無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルク、無段階変速機3の変速比を基に、無段階変速機3の入力軸の入力回転数及び入力トルクを算出し、算出した無段階変速機の入力軸の入力回転数及び入力トルクを基に、エンジンの出力回転数及び出力トルクを演算する無段階変速機入力演算部22及びエンジン出力演算部23、並びに無段階変速機3の変速比を演算上で変化させていったときのそのエンジン1の出力回転数と出力トルクとの関係を示す特性線とエンジン1の出力回転数と出力トルクとの関係で得られる最良燃費線との交点をエンジンの最適運転点として選定し、最適運転点を選定したときに演算上で用いた無段階変速機の変速比を選定する運転点選定部24及び変速比選定部25を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの出力を無段階変速機を介して車輪に伝達し、車輪を駆動する車両の動力制御装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃費向上を得る目的として、変速機の変速比等を制御することは有効である。特許文献1では、エンジントルクと変速機の変速比を制御して最適燃費を得ている。この特許文献1では、変速機が有段のAT(AutomaticTransmission)であることを前提として、エンジントルクや変速比を制御している。
【特許文献1】特開平5−262169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、無段階変速機(CVT,Continuously Variable Transmission)を駆動系に備える車両が増加している。このような無段階変速機を搭載した車両に対しても、最適な燃費を得る目的とした技術の提案が望まれる。
しかし、特許文献1の技術は有段のATに適用した技術である。そのため、特許文献1の技術を、無段階変速機を搭載する車両にそのまま適用することはできない。よって、特許文献1の技術では、無段階変速機を搭載する車両について最適燃費を得ることができない。
本発明の課題は、無段階変速機を搭載する車両でも最適燃費を得ることができるようにエンジン出力及び変速比を制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明は、運転者が要求する車両出力を実現する無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルクを検出する。また、本発明は、検出した無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルク、無段階変速機の入出力軸間の伝達特性、並びに無段階変速機の変速比を基に、無段階変速機の入力軸の入力回転数及び入力トルクを演算し、算出した無段階変速機の入力軸の入力回転数及び入力トルク、並びにトルクコンバータの入出力軸間の伝達特性を基に、エンジンの出力回転数及び出力トルクを演算する。そして、本発明は、無段階変速機の変速比を演算上で変化させていったときのそのエンジンの出力回転数と出力トルクとの関係を示す特性線と、エンジンの出力回転数と出力トルクとの関係で得られる最良燃費線との交点をエンジンの最適運転点として選定し、最適運転点を選定したときに演算上で用いた無段階変速機の変速比を選定する。さらに、本発明は、選定した最適運転点の出力回転数と出力トルクを基に、エンジンを制御するとともに、選定した無段階変速機の変速比を基に、無段階変速機の変速を制御する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、運転者が要求する車両出力を実現する無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルクを検出し演算処理するだけで、エンジンの最適運転点の出力回転数と出力トルクと、そのときの無段階変速機の変速比とを得ることができる。
これにより、無段階変速機を搭載する車両でも最適燃費を得るエンジン出力及び変速比を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を図面を参照しながら詳細に説明する。
(構成)
本実施形態は、本発明を適用した車両である。
図1は、本実施形態の車両の構成を示す。図1に示すように、車両は、駆動系として、エンジン1、トルクコンバータ2、無段階変速機(CVT,ContinuouslyVariable Transmission)3、動力伝達装置4及び駆動輪5を有する。すなわち、車両は、エンジン1の出力を、トルクコンバータ2、無段階変速機3、動力伝達装置4を介して駆動輪5に伝達する。
また、車両は、駆動力制御装置として、運転操作検出部11、無段階変速機出力回転数検出部12及び演算部となるECU(Electronic ControlUnit)20を有する。ECU20は、目標駆動トルク算出部21、無段階変速機入力演算部22、エンジン出力演算部23、運転点選定部24、変速比選定部25、エンジン制御部26及び変速比制御部27を有する。運転操作検出部11等のこれら構成については後で詳述する。
【0007】
図2は、車両の駆動系の具体的な構成例を示す。図2に示すように、車両は、駆動系として、エンジン出力軸34、オイルポンプ35、トルクコンバータ2、トルクコンバータ出力軸37、フォワードクラッチ38(発進締結要素)、変速機入力軸39、無段階変速機3、変速機出力軸42、出力ギヤ45、ドライブギヤ46、ディファレンシャル47、ドライブシャフト48,49及びCVT油圧ユニット50を有する。ここで、出力ギヤ45、ドライブギヤ46、ディファレンシャル47及びドライブシャフト48,49は、動力伝達装置4を構成する。
オイルポンプ35は、エンジン出力軸34により駆動される油圧供給源としてのメカポンプである。オイルポンプ35は、CVT油圧ユニット50にポンプ吐出油を供給する。CVT油圧ユニット50は、クラッチアクチュエータ51によりフォワードクラッチ38の締結状態を制御する。具体的には、CVT油圧ユニット50は、ECU20からのフォワードクラッチ38の締結開始指令を受けて、その締結状態を制御する。
【0008】
駆動力の伝達経路上、すなわちトルクコンバータ出力軸37と変速機入力軸39との間にフォワードクラッチ38を介装している。フォワードクラッチ38は、油圧締結される多板摩擦クラッチ等による発進締結要素である。CVT油圧ユニット50からのクラッチ制御圧によりフォワードクラッチ38を締結する。
無段階変速機3は、変速機入力軸39に設置したプライマリプーリ3a、変速機出力軸42に設置したセカンダリプーリ3b、及びプライマリプーリ3aとセカンダリプーリ3bとの間に掛け渡したVベルト3cを有する。CVT油圧ユニット50は、ベルト接触径を決めるプライマリプーリ圧とセカンダリプーリ圧(=ライン圧)とをプライマリプーリ3a及びセカンダリプーリ3bに供給する。
なお、変速機出力軸42には出力ギヤ45を備える。変速機出力軸42は、出力ギヤ45に噛み合うドライブギヤ46を介してディファレンシャル47に回転駆動力を伝達する。ディファレンシャル47は、右ドライブシャフト48を介して右駆動輪(例えば右前輪)5Rに回転駆動力を伝達する。また、ディファレンシャル47は、左ドライブシャフト49を介して左駆動輪(例えば左前輪)5Lに回転駆動力を伝達する。
【0009】
(車両の駆動系の出力特性)
図3は、車両の駆動系の出力特性を示す。図3の特性図は、横軸に回転数N(rpm)をとり、横軸にトルクT(Nm)をとる。図3に示すPは、無段階変速機3のセカンダリプーリ3bの出力Pであり、前記図2の構成では具体的には変速機出力軸42の出力となる。また、図3に示すPは、無段階変速機3のプライマリプーリ3aの出力(入力)であり、前記図2の構成では変速機入力軸39の出力(入力)となる。また、図3に示すPは、エンジン1の出力であり、前記図2の構成ではエンジン出力軸34の出力となる。また、図3には、エンジン1の最良燃費線であるα線を示す。
このような車両の駆動系の出力特性において、セカンダリプーリ3bの出力(セカンダリ出力)Pは、運転者の要求する出力(N・T)に相当する。実際には、駆動輪5の出力が運転者の要求する出力となる。これに対して、本実施形態では、動力伝達装置4等におけるディファレンシャル47等の伝達部分の伝達効率を考慮した上で、セカンダリプーリ3bの出力(セカンダリ出力)Pを運転者の要求する出力として扱う。
【0010】
そして、プライマリプーリ3aの出力(プライマリ出力)Pは、そのような運転者の要求する出力を実現するために、プライマリプーリ3aで必要な出力(N・T)である。また、エンジン1の出力(エンジン出力)Pは、そのプライマリプーリ3aで必要な出力を実現するために、エンジン1で必要な出力(N・T)である。
そして、セカンダ出力Pとプライマリ出力Pとの間には、セカンダリプーリ3bとプライマリプーリ3aとの間の駆動力伝達のVベルト3c等を介して行うための効率、損失等が存在する。また、プライマリ出力Pとエンジン出力Pとの間には、無段階変速機3とエンジン1との間の駆動力伝達をトルクコンバータ2等を介して行うための効率、損失等が存在する。
本実施形態では、そのような駆動系での効率、損失等を適切に考慮し、運転者の要求する出力となるセカンダリプーリ3bの出力(セカンダリ出力)Pを実現しつつも、エンジン1の運転点であるエンジン出力Pがα線上に存在することを実現するものである。
以下に、その実現するための構成を説明する。
【0011】
(トルクコンバータの特性)
図4〜図6は、トルクコンバータの一般的な特性図を示す。図4は、速度比eと容量係数cとの関係を示す。図5は、速度比eとトルク比tとの関係を示す。図6は、速度比eと伝達効率ηとの関係を示す。
ここで、
:エンジン回転数
:プライマリ回転数(プライマリプーリの回転数)
:セカンダリ回転数(セカンダリプーリの回転数)
:エンジントルク
:プライマリトルク(プライマリプーリのトルク)
:セカンダリトルク(セカンダリプーリのトルク)
と定義した場合、速度比eを下記(1)式により得ることができる。容量係数c(e)を下記(2)式により得ることができる。トルク比t(e)を下記(3)式により得ることができる。伝達効率ηを下記(4)式により得ることができる。
【0012】
e=N/N ・・・(1)
c(e)=T/N ・・・(2)
t(e)=T/T ・・・(3)
η=t・e ・・・(4)
例えば、速度比eは、トルクコンバータの出力を入力で割った値となる。また、前記(4)式を展開して、伝達効率ηを下記(5)式として得ることができる。
η=t・e
=(T/T)・(N/N
=P/P ・・・(5)
ここで、Pはプライマリ出力(プライマリパワー)である。Pはエンジン出力(エンジンパワー)である。すなわち、伝達効率ηは出力効率(パワー効率)となる。
【0013】
なお、車両特性に応じてブレードの形状等を選定することで、車両特性に応じた所望のトルクコンバータ特性を得ることができる。
(プライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ))の演算)
先ず、セカンダリの回転数及びトルク(N,T)及び変速比ρに基づく、プライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ)の演算について説明する。ここで、変速比ρ(n=0〜N)は任意の変速比(仮定値)である。
先ず、下記(6)式によりセカンダリ回転数Nを得る。また、下記(7)式によりセカンダリトルクTを得る。
=N(ρ)/ρ ・・・(6)
=T(ρ)・ρ・ηCVT(N(ρ),T(ρ) ・・・(7)
【0014】
ここで、N(ρ)は、ある変速比ρにおけるプライマリ回転数である。T(ρ)は、ある変速比ρにおけるプライマリトルクである。ηCVTはCVT(無段階変速機3)の伝達効率である。プーリのベルトスリップを防ぐために入力トルク(プライマリトルク)の上昇に応じて挟圧力を増加させる必要がある。このことから、挟圧力に応じてフリクション(CVT損失トルク)が変化するので、CVT伝達効率ηCVTを定義する。一般的には、CVT伝達効率ηCVTは、プライマリ回転数(入力回転数)N(ρ)とプライマリトルク(入力トルク)T(ρ)の関数となる。例えば、プライマリ回転数N(ρ)とプライマリトルクT(ρ)とを基に、マップを参照してCVT伝達効率ηCVTを得る。又は、プライマリ回転数N(ρ)とプライマリトルクT(ρ)とを変数として、演算によりCVT伝達効率ηCVTを得る。
【0015】
図7は、(N(ρ),T(ρ))−ηCVTマップ(CVT伝達効率マップ)の例を示す。この図7に示すようなマップを参照して、プライマリ回転数N(ρ)とプライマリトルクT(ρ)とを基にCVT伝達効率ηCVTを得る。図では省略しているが、マップには、各プライマリ回転数と各プライマリトルクの交差する位置にCVTの伝達効率が設定されている。
ここで、前述のようにセカンダリの回転数及びトルク(N,T)を基にプライマリの回転数(N(ρ),T(ρ))を得ている。このことから、実質的には、セカンダリの回転数及びトルク(N,T)を基にCVT伝達効率ηCVTを得ていることになる。
続いて、前記(6)式を変形して、下記(8)式によりプライマリ回転数N(ρ)を得る。また、前記(7)式を変形して、下記(9)式によりプライマリトルクT(ρ)を得る。
(ρ)=ρ・N ・・・(8)
(ρ)=(T/ρ)・(1/ηCVT(N(ρ),T(ρ)) ・・・(9)
【0016】
一般的に入力トルク(プライマリトルクT)に対してCVT損失トルク(フリクション分)は小さい。このことから、入力トルク(プライマリトルクT)が変化しても、CVT伝達効率ηCVTが変化しないものと仮定して、プライマリトルクT(ρ)をT’(ρ)とおく。そして、このプライマリトルクT’(ρ)を下記(10)式のように仮定する。これにより、前記(9)式は下記(11)式のようになる。
T’(ρ)=T/ρ ・・・(10)
(ρ)=T’(ρ)・(1/ηCVT(N(ρ),T’(ρ)) ・・・(11)
【0017】
図8は、セカンダリの動作点(N,T)、プライマリの動作点(N(ρ),T(ρ))及びT’(ρ)の関係を示す。図8に示すように、入力トルク(プライマリトルクT)が変化しても、CVT伝達効率ηCVTが変化しないと仮定して、プライマリトルクT(ρ)をT’(ρ)とおく。
以上のような手順で、セカンダリの回転数及びトルク(N,T)及び変速比ρを基に、プライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ)を算出できる(前記(8)式、(11)式)。
(エンジンの回転数及びトルク(NEρ(ρ),TEρ(ρ))の演算)
続いて、プライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ)に基づく、エンジンの回転数及びトルク(NEρ(ρ),TEρ(ρ)の演算について説明する。ここで、NEρ(ρ)の表記は、変速比ρにおけるエンジン回転数を意味する。TEρ(ρ)の表記は、変速比ρにおけるエンジントルクを意味する。
【0018】
先ず、前記(2)式及び(3)式をそれぞれ下記(12)式及び(13)式に展開する。それから、(12)式及び(13)式の連立により下記(14)式を得る。
=c(e)・N ・・・(12)
=T/t(e) ・・・(13)
=t(e)・c(e)・N・・・(14)
ここで、速度比eが前記(1)式により得られるから、(14)式は下記(15)式のようになる。
=t(N/N)・c(N/N)・N・・・(15)
この(15)式によれば、プライマリトルクTは、プライマリ回転数Nとエンジン回転数Nの関数になることがわかる(T=f(N,N))。よって、この(15)式を基に、プライマリ回転数及びエンジン回転数(N,N)からプライマリトルクTを得るためのマップを作成する。
【0019】
図9は、プライマリ回転数N及びエンジン回転数Nを変数(座標軸)として、プライマリトルクTを得るマップの例を示す。図では省略しているが、マップには、各プライマリ回転数と各エンジン回転数の交差する位置に、対応するプライマリトルクが設定されている。それから、図10に示すように、前記図9のマップを軸変換して、プライマリ回転数N及びプライマリトルクTを変数(座標軸)として、エンジン回転数Nを得るマップを作成する。図では省略しているが、マップには、各プライマリ回転数と各プライマリトルクの交差する位置に、対応するエンジン回転数が設定されている。
そして、前記(8)式及び(11)式から得られるプライマリ回転数N(ρ)及びプライマリトルクT(ρ)を基に、図10に例示するマップを参照し、エンジン回転数NEρ(ρ)を得る。
【0020】
一方、前記(3)式を展開し下記(16)式としてエンジントルクTEρ(ρ)を得る。
Eρ(ρ)=T(ρ)/t(e)
=T(ρ)/t(N(ρ)/NEρ(ρ)) ・・・(16)
ここで、プライマリトルクT(ρ)は、前記(11)式により得られる値である。
以上のような手順で、プライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ)を基に、変速比ρにおけるエンジンの回転数及びトルク、すなわち変速比ρにおけるエンジンの運転点(NEρ(ρ),TEρ(ρ))を算出できる。
また、前述のように、セカンダリの回転数及びトルク(N,T)及び変速比ρを基に、プライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ)を算出できる。よって、セカンダリの回転数及びトルク(N,T)及び変速比ρを基に、変速比ρにおけるエンジンの運転点(NEρ(ρ),TEρ(ρ)を算出できる。
【0021】
(変速比ρを変数とした各種マップの作成)
続いて、変速比ρを変数としたエンジン回転数NEρ(ρ)とエンジントルクTEρ(ρ)との関係を示すマップ(エンジン運転点マップ)の作成について説明する。具体的には、変速比ρ(n=0〜N、Nは整数)を任意に変化させてマップを作成する。図11は、これにより作成した(NEρ(ρ),TEρ(ρ))−ρマップの例を示す。
さらに、変速比ρとエンジン回転数NEρ(ρ)との関係を示すマップ(変速比マップ又はエンジン回転数マップ)を作成する。具体的には、変速比ρ(n=0〜N、Nは整数)を任意に変化させてマップを作成する。図12は、これにより作成したNEρ(ρ)−ρマップの例を示す。図12に例示するマップによれば、エンジン回転数NEρ(ρ)がわかれば、そのときの変速比ρがわかる。
【0022】
(α線を通るエンジン運転点を求める)
続いて、エンジン運転点マップ((NEρ(ρ),TEρ(ρ))−ρマップ)とα線マップ(NEα−TEα)との交点を求める処理について説明する。具体的には、エンジン運転点マップにおいて、隣接する任意の運転点n(NEρ(ρ),TEρ(ρ))と運転点n+1(NEρ(ρn+1),TEρ(ρn+1))とを選定する。又は、隣接する任意の運転点n(NEρ(ρ),TEρ(ρ))と運転点n−1(NEρ(ρn−1),TEρ(ρn−1))とを選定する。
【0023】
また、α線マップにおいて、隣接する任意の運転点m(NEαm,TEαm)と運転点m+1(NEαm+1,TEαm+1)とを選定する。又は、隣接する任意の運転点m(NEαm,TEαm)と運転点m−1(NEαm−1,TEαm−1)とを選定する。α線マップについては、予め得られているマップ(最良燃費線マップ)である。図13は、α線マップの例を示す。
そして、選定したエンジン運転点マップの運転点n,n+1(又はn−1)同士を結んだ線と、選定したエンジンの最良燃費線の運転点m,m+1(又はm−1)同士を結んだ線とが交わり、かつその交点がそれら運転点同士の間にある場合に、その交点を実際のエンジンの運転点(N,T)として決定する。
【0024】
(CVT変速比ρCVTを求める)
続いて、CVT変速比(目標CVT変速比)ρCVTを得る処理を説明する。ここでは、前述のようにして求めた実際のエンジンの運転点(エンジン最適運転点)のエンジン回転数Nに基づいて、変速比マップ(NEρ(ρ)−ρマップ)を参照し、CVT変速比ρCVTを得る。
以上のようにして、実際のエンジンの運転点(N,T)及びCVT変速比ρCVTを得ることができる。これにより、これら値を目標値としてエンジン1及び無段階変速機3を制御することで、所望の出力P(N,T)を得ることができるようになる。
【0025】
(前記処理を実現する具体的な構成)
前記処理を実現する具体的な構成は次のようになる。
図14及び図15は、前述の処理を実現するための具体的な構成を示す。図14は、前述のプライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ))の演算処理から各種マップの作成処理までを実現する構成を示す。図15は、前述のα線を通るエンジン運転点を求める処理からCVT変速比ρCVTを求める処理までを実現する構成を示す。
先ず、図14に示すように、前述のプライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ))の演算処理を次のように行う。
この処理では、無段階変速機出力回転数(セカンダリ回転数)N及び目標駆動トルク(セカンダリトルク)Tを入力値としている。すなわち、運転者の要求出力P(N,T)を入力値としている。
【0026】
その無段階変速機出力回転数Nをρ乗算器101に入力させる。これにより、無段階変速機出力回転数Nに変速比ρを乗算したプライマリ回転数N(ρ)を算出する(前記(8)式)。
また、目標駆動トルクTを(1/ρ)乗算器102に入力させる。これにより、目標駆動トルクTsに(1/ρ)を乗算したT’(ρ)を算出する(前記(10)式)。そして、算出したそれらT’(ρ)及びプライマリ回転数N(ρ)を基に、(N(ρ),T(ρ))−ηCVTマップ103(前記図7)を参照し、CVT伝達効率ηCVTを得る。
そして、そのようにして得たCVT伝達効率ηCVTを1/K変換器104で逆数変換する。さらに、逆数変換した値(1/ηCVT)とT’(ρ)とを乗算器105で乗算する。これにより、プライマリトルクT(ρ)を算出する(前記(11)式)。
【0027】
例えば、前記図1の構成では、無段階変速機入力演算部22が、プライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ))の演算処理のための構成を実現する。また、目標駆動トルク算出部21が目標駆動トルクTを得る(ρ乗算器101に出力する)。また、無段階変速機出力回転数検出部12が無段階変速機出力回転数を得る(ρ乗算器101に出力する)。ここで、無段階変速機出力回転数検出部12は、セカンダリプーリ3bの回転軸の回転数を検出する。又は、無段階変速機出力回転数検出部12を車速検出部とすることもできる。
続いて、前述のエンジンの回転数及びトルク(NEρ(ρ),TEρ(ρ))の演算処理を次のように行う。
先ず、先に算出したプライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ))を基に、(N(ρ),T(ρ))−Nマップ106(前記図10)を参照し、エンジン回転数NEρ(ρ)を得る。
【0028】
また、その算出したエンジン回転数NEρ(ρ)を1/K変換器107で逆数変換する。そして、逆数変換した値(1/NEρ(ρ))と先に算出したプライマリ回転数N(ρ)とを乗算器108で乗算する。これにより、速度比e(ρ)を算出する。さらに、算出した速度比e(ρ)を基に、e(ρ)−t(e)マップ(トルク比マップ)109を参照し、速度比t(N(ρ)/NEρ(ρ))を算出する。また、算出した速度比t(N(ρ)/NEρ(ρ))を1/K変換器110で逆数変換する。そして、逆数変換した値と先に算出したプライマリトルクT(ρ)とを乗算器111で乗算する。これにより、エンジントルクTEρ(ρ)を得る(前記(16)式)。
例えば、前記図1の構成では、エンジン出力演算部23が、エンジンの回転数及びトルク(NEρ(ρ),TEρ(ρ))の演算処理のための構成を実現する。
【0029】
続いて、前述の各種マップの作成処理を次のように行う。
先ず、プライマリ回転数NPK(n)を1/K変換器112で逆数変換する。ここで、プライマリ回転数NPK(n)を任意に変化する値(仮定値)とする。例えば、NPK(n)をNPK(0)〜NPK(N)として与え、NPK(0)=500(rpm)〜NPK(N)=7000(rpm)で離散的に変化させる。
そして、逆数変換した値(1/NPK(n))と無段階変速機出力回転数Nとを乗算器113で乗算する。これにより、変速比ρを得る。例えば、NPK(0)=500(rpm)〜NPK(N)=7000(rpm)で変化させた場合、変速比ρ(n=0〜N)は、そのプライマリ回転数NPK(n=0〜N)の変化に応じた値(仮定値)になる。
【0030】
そして、変速比ρを変数としたエンジン運転点マップ((NEρ(ρ),TEρ(ρ))−ρマップ)114を作成する(前記図11)。すなわち、複数の変速比ρに対応する複数のエンジン運転点(NEρ(ρ),TEρ(ρ))からなるエンジン運転点の特性線を表現するマップを作成する。さらに、変速比ρを変数とした変速比マップ(NEρ(ρ)−ρマップ)115を作成する(前記図12)。
例えば、前記図1の構成では、運転点選定部24が、エンジン運転点マップの作成処理のための構成を実現する。また、変速比選定部25が、変速比マップの作成処理のための構成を実現する。
【0031】
続いて、図15に示すように、前述のα線を通るエンジン運転点を求める処理を次のように行う。
先ず、エンジン回転数N(n)(N(ρ))を基に、先に得たエンジン運転点マップ114を参照し、エンジントルクTEρ(n)(TEρ(ρ))を得る。そして、取得したエンジントルクTEρ(n)をZ−1部122、比較器125及びエンジン運転点演算部128に出力する。Z−1部(記憶部、レジスタ等)122では、前回処理時に得たエンジントルクTEρ(n−1)を、今回の処理で得たエンジントルクTEρ(n)と同じタイミングで、比較器126及びエンジン運転点演算部128に出力する。
また、エンジン回転数N(n)(N(ρ))を基に、α線マップ121(前記図13)を参照し、最良燃費線のエンジントルクTEα(n)(TEα(ρ))を得る。そして、取得したエンジントルクTEα(n)をZ−1部123、比較器125及びエンジン運転点演算部128に出力する。Z−1部(記憶部、レジスタ等)123では、前回処理時に得たエンジントルクTEα(n−1)を、今回の処理で得たエンジントルクTEα(n)と同じタイミングで、比較器126及びエンジン運転点演算部128に出力する。
【0032】
また、エンジン回転数N(n)(N(ρ))をZ−1部(記憶部、レジスタ等)124及びエンジン運転点演算部128に出力する。Z−1部124では、前回処理時のエンジン回転数N(n−1)を、今回の処理で得たエンジン回転数N(n)と同じタイミングで、エンジン運転点演算部128に出力する。
エンジン運転点演算部128では、入力された値を基に、今回処理で得たエンジン運転点(N(n),TEρ(n))と前回処理で得たエンジン運転点(N(n−1),TEρ(n−1))とを通る直線式を得る。具体的には、直線式を下記(17)式として得る。また、エンジン運転点演算部128では、入力された値を基に、今回処理で得たエンジン運転点(N(n),TEα(n))と前回処理で得たエンジン運転点(N(n−1),TEα(n−1))とを通る直線式を得る。具体的には、直線式を下記(18)式として得る。
【0033】
【数1】

【0034】
そして、エンジン運転点演算部128では、前記(17)式で示す直線と前記(18)式で示す直線の交点(N,T)を下記(19)式及び(20)式として得る。これにより、エンジン運転点の特性線とα線との交点を得る。
【0035】
【数2】

【0036】
エンジン運転点演算部128では、以上のようにして得たエンジン運転点(N,T)をラッチ部129に出力する。
一方、比較器125では、今回処理で得た値(今回値)について、エンジン運転点マップ114から得たエンジントルクTEρ(n)がα線マップから得たエンジントルクTEα(n)以下か否を判定する。また、比較器126では、前回処理で得た値(前回値)について、エンジン運転点マップ114から得たエンジントルクTEρ(n−1)がα線マップから得たエンジントルクTEα(n−1)よりも大きいか否を判定する。AND回路127にそれら判定結果(“1”又は“0”)を入力する。
AND回路127は、今回値について、エンジントルクTEρ(n)がエンジントルクTEα(n)以下であり(TEρ(n)≦TEα(n))、かつ前回値について、エンジントルクTEρ(n−1)がエンジントルクTEα(n−1)よりも大きい場合(TEρ(n−1)>TEα(n−1))、真(“1”)をラッチ部129に出力する。AND回路127は、そうでなければ、偽(“0”)をラッチ部129に出力する。
【0037】
ラッチ部129は、真(“1”)が入力された場合、対応するエンジン運転点(N,T)をα線を通るエンジン運転点(エンジン最適運転点)として出力する。
例えば、前記図1の構成では、運転点選定部24が、以上のようなエンジン運転点を求める処理のための構成を実現する。
続いて、前述のα線を通るCVT変速比ρCVTを求める処理として次のような処理を行う。
前述のα線を通るエンジン運転点を求める処理で得たエンジン回転数N(n)を基に、NEρ(ρ)−ρマップ130(前記図12)を参照し、CVT変速比(目標CVT変速比)ρCVTを得る。
【0038】
例えば、前記図1の構成では、変速比選定部25が、CVT変速比ρCVTを求める処理のための構成を実現する。
そして、以上のようにして得たエンジン最適運転点(N,T)及びCVT変速比ρCVTを目標値としてエンジン1及び無段階変速機3の変速比を制御して、所望の出力P(N,T)を得る。
例えば、前記図1の構成では、エンジン制御部26が、エンジン最適運転点(N,T)を目標値としてエンジン1を制御する。また、変速比制御部27が、CVT変速比ρCVTを目標値として無段階変速機3の変速比を制御する。
【0039】
(動作及び作用)
運転操作検出部11は、運転者の加減速操作を検出する。具体的には、運転操作検出部11は、アクセル開度を検出する。運転操作検出部11は、検出した加減速操作(アクセル開度)を目標駆動トルク算出部21に出力する。目標駆動トルク算出部21は、検出した加減速操作(アクセル開度)を基に目標駆動トルクとしてセカンダリトルクTを算出する。目標駆動トルク算出部21は、算出したセカンダリトルクTを無段階変速機入力演算部22に出力する。一方、無段階変速機出力回転数検出部12は、無段階変速機の出力回転数としてセカンダリ回転数Nを検出する。無段階変速機出力回転数検出部12は、検出したセカンダリ回転数Nを無段階変速機入力演算部22に出力する。
無段階変速機入力演算部22は、セカンダリの回転数及びトルク(N,T)を基に、プライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ))を算出する。無段階変速機入力演算部22は、算出したプライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ))をエンジン出力演算部23に出力する。
【0040】
エンジン出力演算部23は、プライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ))を基に、(N(ρ),T(ρ))−Nマップ106(前記図10)を参照し、エンジン回転数NEρ(ρ)を得る。また、エンジン出力演算部23は、e(ρ)−t(e)マップ(トルク比マップ)109を参照等して、エンジントルクTEρ(ρ)を得る。エンジン出力演算部23は、そのようにして得たエンジン1の回転数及びトルク(NEρ(ρ),TEρ(ρ))を運転点選定部24及び変速比選定部25に出力する。
運転点選定部24は、変速比ρを変数としたエンジン運転点マップ((NEρ(ρ),TEρ(ρ))−ρマップ)114を作成する(前記図11)。また、変速比選定部25は、変速比ρを変数とした変速比マップ(NEρ(ρ)−ρマップ)115を作成する(前記図12)。
【0041】
運転点選定部24は、エンジン運転点マップ(エンジン運転点の特性線)114とα線マップ(α線)121との交点をエンジン最適運転点(N,T)として選定する。運転点選定部24は、選定したエンジン最適運転点(N,T)をエンジン制御部26に出力する。
変速比選定部25は、変速比マップ115を参照し、エンジン最適運転点のエンジン回転数N(n)に対応する変速比ρをCVT変速比ρCVTとして選定する。変速比選定部25は、選定したCVT変速比ρCVTを変速比制御部27に出力する。
エンジン制御部26は、エンジン最適運転点(N,T)を目標値としてエンジン1を制御する。また、変速比制御部27は、CVT変速比ρCVTを目標値として無段階変速機3の変速比を制御する。これにより、実運転時のエンジン1のエンジン運転点が最良燃費線上に存在するようになる。
【0042】
図16は、セカンダリ出力P(N,T)、プライマリ出力P(N,T)及びエンジン出力PEρ(NEρ(ρ),TEρ(ρ))との関係を示す。実施形態では、この図16に示すように、セカンダリ出力P(N,T)を検出し、その検出したセカンダリ出力P(N,T)に基づいて、エンジン1の制御に必要な最適運転点のエンジン出力P(N,T)を得ることができる。さらに、検出したセカンダリ出力P(N,T)に基づいて、無段階変速機3の変速制御に必要なCVT変速比ρCVTを得ることができる。
【0043】
(実施形態の変形例)
(1)この実施形態では、図17に示すように、トルクコンバータ2の作動流体(作動油)の温度を検出する作動流体温度検出部13と、作動流体温度検出部13が検出した作動流体の温度を基に、トルクコンバータ2の入出力軸間の伝達特性(例えば伝達効率η)を補正する伝達特性補正部28と、を備えることもできる。
この実施形態では、運転操作検出部11は、運転者による車両出力の要求を検出する運転者要求検出手段を実現している。また、無段階変速機出力回転数検出部12及び目標駆動トルク算出部21は、前記運転者要求検出手段が検出した運転者が要求する車両出力を実現する前記無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルクを検出する無段階変速機出力検出手段を実現する。また、無段階変速機入力演算部22は、前記無段階変速機出力検出手段が検出した前記無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルク、前記無段階変速機の入出力軸間の伝達特性、並びに前記無段階変速機の変速比を基に、前記無段階変速機の入力軸の入力回転数及び入力トルクを演算する無段階変速機入力演算手段を実現する。また、エンジン出力演算部23は、前記無段階変速機入力演算手段が算出した前記無段階変速機の入力軸の入力回転数及び入力トルク、並びに前記トルクコンバータの入出力軸間の伝達特性を基に、前記エンジンの出力回転数及び出力トルクを演算するエンジン出力演算手段を実現する。また、運転点選定部24は、前記無段階変速機入力演算手段にて前記無段階変速機の変速比を演算上で変化させていったときに前記エンジン出力演算手段が算出する前記エンジンの出力回転数と出力トルクとの関係を示す特性線と、前記エンジンの出力回転数と出力トルクとの関係で得られる最良燃費線との交点を前記エンジンの最適運転点として選定する運転点選定手段を実現する。また、変速比選定部25は、前記運転点選定手段が最適運転点を選定したときに演算上で用いた前記無段階変速機の変速比を選定する変速比選定手段を実現する。また、エンジン制御部26及び変速比制御部27は、前記運転点選定手段が選定した最適運転点の出力回転数と出力トルクを基に、前記エンジンを制御するとともに、前記変速比選定手段が選定した前記無段階変速機の変速比を基に、前記無段階変速機の変速を制御する制御手段を実現する。
【0044】
また、この実施形態では、エンジンの出力をトルクコンバータの入力軸に入力し、前記トルクコンバータの出力軸からの出力を無段階変速機の入力軸に入力し、前記無段階変速機の出力軸からの出力を駆動輪に出力して前記駆動輪を駆動する車両の動力制御方法において、運転者が要求する車両出力を実現する前記無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルクを検出する無段階変速機出力検出ステップと、前記無段階変速機の変速比を演算上で変化させていきながら、該変速比と、前記無段階変速機出力検出ステップで検出した前記無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルクと、前記無段階変速機の入出力軸間の伝達特性とを基に、前記無段階変速機の入力軸の入力回転数及び入力トルクを演算し、その算出した前記無段階変速機の入力軸の入力回転数及び入力トルクと、前記トルクコンバータの入出力軸間の伝達特性とを基に、前記エンジンの出力回転数及び出力トルクを演算する演算ステップと、前記演算ステップで前記無段階変速機の変速比を変化させていったときの前記エンジンの出力回転数と出力トルクとの関係を示す特性線と、前記エンジンの出力回転数と出力トルクとの関係で得られる最良燃費線との交点を前記エンジンの最適運転点として選定する運転点選定ステップと、前記運転点選定ステップで最適運転点を選定したときに演算上で用いた前記無段階変速機の変速比を選定する変速比選定ステップと、前記運転点選定ステップで選定した最適運転点の出力回転数と出力トルクを基に、前記エンジンを制御するとともに、前記変速比選定ステップで選定した前記無段階変速機の変速比を基に、前記無段階変速機の変速を制御する制御ステップと、を有する車両の動力制御方法を実現している。
【0045】
(効果)
次に本実施形態における効果を説明する。
(1)無段階変速機出力回転数検出部12及び目標駆動トルク算出部21は、運転操作検出部11が検出した運転者が要求する車両出力を実現する無段階変速機3の出力軸の出力回転数及び出力トルク(N,T)を検出する。また、無段階変速機入力演算部22は、その無段階変速機出力回転数検出部12及び目標駆動トルク算出部21が検出した無段階変速機3の出力軸の出力回転数及び出力トルク(N,T)、無段階変速機3の入出力軸間の伝達特性、並びに無段階変速機3の変速比を基に、無段階変速機3の入力軸の入力回転数及び入力トルク(N(ρ),T(ρ))を演算する。また、エンジン出力演算部23は、その無段階変速機入力演算部22が算出した無段階変速機3の入力軸の入力回転数及び入力トルク(N(ρ),T(ρ))、並びにトルクコンバータ2の入出力軸間の伝達特性を基に、エンジン1の出力回転数及び出力トルク(NEρ(ρ),TEρ(ρ))を演算する。そして、運転点選定部24は、無段階変速機3の変速比ρを演算上で変化させていったときのエンジン1のその出力回転数NEρ(ρ)と出力トルクTEρ(ρ)との関係を示す特性線(前記図11)と、エンジン1の出力回転数と出力トルクとの関係で得られる最良燃費線(前記図13)との交点(N,T)をエンジン1の最適運転点として選定する。また、変速比選定部25は、最適運転点(N,T)を選定したときに演算上で用いた無段階変速機3の変速比ρCVTを選定する。そして、エンジン制御部26及び変速比制御部27は、運転点選定部24が選定した最適運転点の出力回転数と出力トルク(N,T)を基に、エンジン1を制御するとともに、変速比選定部25が選定した無段階変速機3の変速比ρCVTを基に、無段階変速機3の変速を制御する。
【0046】
これにより、運転者が要求する車両出力を実現する無段階変速機3の出力軸の出力回転数及び出力トルク(N,T)を検出し演算処理するだけで、エンジン1の最適運転点の出力回転数と出力トルク(N,T)と、そのときの無段階変速機3の変速比ρCVTとを得ることができる。
この結果、無段階変速機3を搭載する車両でも最適燃費を得るエンジン出力及び変速比を制御することができる。
【0047】
(2)無段階変速機入力演算部22は、無段階変速機3の出力軸の出力回転数及び出力トルクと無段階変速機3の入出力軸間の伝達特性との関係を示すマップ(前記図7)を備える。そして、無段階変速機入力演算部22は、該マップを参照し、無段階変速機3の出力軸の出力回転数及び出力トルクに対応する無段階変速機3の入出力軸間の伝達特性を得る。
これにより、容易に無段階変速機3の入出力軸間の伝達特性を得ることができる。この結果、適切にエンジン出力及び変速比を制御することができる。
【0048】
(3)エンジン出力演算部23は、無段階変速機3の出力軸の出力回転数及び出力トルクとエンジン1の出力回転数との関係をトルクコンバータ2の入出力軸間の伝達特性を基に得たマップ(前記図4〜図6)を備える。そして、エンジン出力演算部23は、該マップを参照し、無段階変速機3の出力軸の出力回転数及び出力トルクに対応するエンジン1の出力回転数を得る。
これにより、容易にエンジン1の出力回転数を得ることができる。この結果、適切にエンジン出力及び変速比を制御することができる。
【0049】
(4)運転点選定部24は、無段階変速機入力演算部22にて無段階変速機3の変速比ρを演算上で変化させていったときに、該無段階変速機3の変速比ρとエンジン1の出力回転数NEρ(ρ)との関係を示すマップ(前記図12)を作成する。そして、変速比選定部25は、該マップを参照し、運転点選定部24が選定した最適運転点の出力回転数Nに対応する無段階変速機3の変速比ρCVTを選定する。
これにより、容易に無段階変速機3の変速比ρCVTを選定することができる。この結果、適切にエンジン出力及び変速比を制御することができる。
【0050】
(5)トルクコンバータ2の作動流体の温度を検出する作動流体温度検出部13と、作動流体温度検出部13が検出した作動流体の温度を基に、トルクコンバータ2の入出力軸間の伝達特性を補正する伝達特性補正部28と、を備える。
これにより、トルクコンバータ2の作動流体の温度変化によるトルクコンバータ2の入出力軸間の伝達特性の変化にかかわらず、エンジン1の出力回転数及び出力トルク(NEρ(ρ),TEρ(ρ))を適切に演算できる。この結果、適切にエンジン出力及び変速比を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態の車両の構成を示すブロック図である。
【図2】車両の駆動系の具体的な構成例を示す図である。
【図3】車両の駆動系の出力特性を示す特性図である。
【図4】トルクコンバータの一般的な特性であり、速度比eと容量係数cとの関係を示す特性図である。
【図5】トルクコンバータの一般的な特性であり、速度比eとトルク比tとの関係を示す特性図である。
【図6】トルクコンバータの一般的な特性であり、速度比eと伝達効率ηとの関係を示す特性図である。
【図7】CVT伝達効率マップの例を示す図である。
【図8】セカンダリの動作点(N,T)、プライマリの動作点(N(ρ),T(ρ))及びT’(ρ)の関係を示す特性図である。
【図9】プライマリ回転数N及びエンジン回転数Nを変数(座標軸)として、プライマリトルクTを得るマップの例を示す図である。
【図10】図9のマップを軸変換して、プライマリ回転数N及びプライマリトルクTを変数(座標軸)として、エンジン回転数Nを得るマップの例を示す図である。
【図11】エンジン運転点マップの例を示す図である。
【図12】変速比マップの例を示す図である。
【図13】α線(最良燃費線)マップの例を示す図である。
【図14】プライマリの回転数及びトルク(N(ρ),T(ρ)の演算処理から各種マップの作成処理までを実現する構成を示す図である。
【図15】α線を通るエンジン運転点を求める処理からCVT変速比ρCVTを求める処理までを実現する構成を示す図である。
【図16】セカンダリ出力PS(NS,TS)、プライマリ出力PP(NP,TP)及びエンジン出力PEρ(NEρ(ρn),TEρ(ρn))との関係を示す図である。
【図17】実施形態の他の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
1 エンジン、2 トルクコンバータ、3 無段階変速機、3a プライマリプーリ、3b セカンダリプーリ、4 動力伝達装置、 5 駆動輪、11 運転操作検出部、12 無段階変速機出力回転数検出部、20 ECU、21 目標駆動トルク算出部、22 無段階変速機入力演算部、23 エンジン出力演算部、24 運転点選定部、25 変速比選定部、26 エンジン制御部、27 変速比制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力をトルクコンバータの入力軸に入力し、前記トルクコンバータの出力軸からの出力を無段階変速機の入力軸に入力し、前記無段階変速機の出力軸からの出力を駆動輪に出力して前記駆動輪を駆動する車両の動力制御装置において、
運転者による車両出力の要求を検出する運転者要求検出手段と、
前記運転者要求検出手段が検出した運転者が要求する車両出力を実現する前記無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルクを検出する無段階変速機出力検出手段と、
前記無段階変速機出力検出手段が検出した前記無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルク、前記無段階変速機の入出力軸間の伝達特性、並びに前記無段階変速機の変速比を基に、前記無段階変速機の入力軸の入力回転数及び入力トルクを演算する無段階変速機入力演算手段と、
前記無段階変速機入力演算手段が算出した前記無段階変速機の入力軸の入力回転数及び入力トルク、並びに前記トルクコンバータの入出力軸間の伝達特性を基に、前記エンジンの出力回転数及び出力トルクを演算するエンジン出力演算手段と、
前記無段階変速機入力演算手段にて前記無段階変速機の変速比を演算上で変化させていったときに前記エンジン出力演算手段が算出する前記エンジンの出力回転数と出力トルクとの関係を示す特性線と、前記エンジンの出力回転数と出力トルクとの関係で得られる最良燃費線との交点を前記エンジンの最適運転点として選定する運転点選定手段と、
前記運転点選定手段が最適運転点を選定したときに演算上で用いた前記無段階変速機の変速比を選定する変速比選定手段と、
前記運転点選定手段が選定した最適運転点の出力回転数と出力トルクを基に、前記エンジンを制御するとともに、前記変速比選定手段が選定した前記無段階変速機の変速比を基に、前記無段階変速機の変速を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする車両の動力制御装置。
【請求項2】
前記無段階変速機入力演算手段は、前記無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルクと前記無段階変速機の入出力軸間の伝達特性との関係を示すマップを備えており、該マップを参照し、前記無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルクに対応する前記無段階変速機の入出力軸間の伝達特性を得ることを特徴とする請求項1に記載の車両の動力制御装置。
【請求項3】
前記エンジン出力演算手段は、前記無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルクと前記エンジンの出力回転数との関係を前記トルクコンバータの入出力軸間の伝達特性を基に得たマップを備えており、該マップを参照し、前記無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルクに対応する前記エンジンの出力回転数を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の動力制御装置。
【請求項4】
前記運転点選定手段は、前記無段階変速機入力演算手段にて前記無段階変速機の変速比を演算上で変化させていったときに、該無段階変速機の変速比と前記エンジンの出力回転数との関係を示すマップを作成しており、
前記変速比選定手段は、該マップを参照し、前記運転点選定手段が選定した最適運転点の出力回転数に対応する前記無段階変速機の変速比を選定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の動力制御装置。
【請求項5】
前記トルクコンバータの作動流体の温度を検出する作動流体温度検出手段と、前記作動流体温度検出手段が検出した前記作動流体の温度を基に、前記トルクコンバータの入出力軸間の伝達特性を補正する伝達特性補正手段と、を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の動力制御装置。
【請求項6】
エンジンの出力をトルクコンバータの入力軸に入力し、前記トルクコンバータの出力軸からの出力を無段階変速機の入力軸に入力し、前記無段階変速機の出力軸からの出力を駆動輪に出力して前記駆動輪を駆動する車両の動力制御方法において、
運転者が要求する車両出力を実現する前記無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルクを検出する無段階変速機出力検出ステップと、
前記無段階変速機の変速比を演算上で変化させていきながら、該変速比と、前記無段階変速機出力検出ステップで検出した前記無段階変速機の出力軸の出力回転数及び出力トルクと、前記無段階変速機の入出力軸間の伝達特性とを基に、前記無段階変速機の入力軸の入力回転数及び入力トルクを演算し、その算出した前記無段階変速機の入力軸の入力回転数及び入力トルクと、前記トルクコンバータの入出力軸間の伝達特性とを基に、前記エンジンの出力回転数及び出力トルクを演算する演算ステップと、
前記演算ステップで前記無段階変速機の変速比を変化させていったときの前記エンジンの出力回転数と出力トルクとの関係を示す特性線と、前記エンジンの出力回転数と出力トルクとの関係で得られる最良燃費線との交点を前記エンジンの最適運転点として選定する運転点選定ステップと、
前記運転点選定ステップで最適運転点を選定したときに演算上で用いた前記無段階変速機の変速比を選定する変速比選定ステップと、
前記運転点選定ステップで選定した最適運転点の出力回転数と出力トルクを基に、前記エンジンを制御するとともに、前記変速比選定ステップで選定した前記無段階変速機の変速比を基に、前記無段階変速機の変速を制御する制御ステップと、
を有することを特徴とする車両の動力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−149696(P2010−149696A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329949(P2008−329949)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】