車両位置推定装置及び車両位置推定方法
【目的】GPS受信データより得られるGPS位置及びGPS速度を用いて、GPS受信情況が悪くなっても車両位置を正しく推定して表示する「車両位置推定装置及び車両位置推定方法」を提供することである。
【構成】GPS衛星より受信したGPS受信信号より算出されるGPS位置に基づいて車両位置を推定する車両位置推定装置において、(1)車両の進行方向履歴を進行方向履歴保存部に保存し、(2)GPS位置とGPS速度とGPS進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し、(3)GPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、(4)予測位置範囲内に存在しなければ、予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と保存されている車両進行方向とから次の車両位置と車両位置範囲を予測する。
【構成】GPS衛星より受信したGPS受信信号より算出されるGPS位置に基づいて車両位置を推定する車両位置推定装置において、(1)車両の進行方向履歴を進行方向履歴保存部に保存し、(2)GPS位置とGPS速度とGPS進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し、(3)GPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、(4)予測位置範囲内に存在しなければ、予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と保存されている車両進行方向とから次の車両位置と車両位置範囲を予測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両位置推定装置及び車両位置推定方法に係わり、特にGPS衛星より受信したGPS受信信号より算出されるGPS位置に基づいて車両位置を推定する車両位置推定装置及び車両位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は、車両の現在位置に応じた地図データをCD−ROM、DVD,HDDなどの記録媒体から読み出してディスプレイ画面に描画すると共に、車両マークをディスプレイ画面の一定位置に固定表示し、走行に応じて地図をスクロ−ル表示する。また、ナビゲーション装置は以上に加えて、出発地から目的地までの誘導経路を探索し、該誘導経路を地図上に表示する経路誘導機能や地図上に所定のPOIマーク(ランドマーク)を表示するPOI表示機能を備えている。
かかるナビゲーション装置には車両位置を測定する位置測定装置が不可欠である。従来の第1の位置測定法は、車両の進行方向を検出するジャイロなどの角度センサーと所定時間毎の走行距離を検出する距離センサー(車速センサー)を用いて自立的に車両位置を推定し、適宜、マップマッチング処理を行って車両位置を道路上に位置補正する。また、第2の位置測定法は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信して計算されるGPS位置と自立航法位置とを併用して車両位置を推定する。この方法には、第1、第2の従来技術がある(特許文献1特許文献2および参照)。
【0003】
前記第2の位置測定方法における第1の従来技術は、自立測位データにおける予測誤差が所定の閾値を越えていなければ、GPS測位データに自立測位データを組み合わせて現在位置を算出し、所定の閾値を越えていればGPS測位データに自立測位データを組み合わせることなく現在位置を算出するものである。
前記第2の位置測定方法における第2の従来技術は、自立航法センサーを用いて車両位置及び車両位置範囲を予測し、GPS測位位置が予測位置範囲内に存在すれば該GPS測位位置を現在位置とし、GPS測位位置が予測位置範囲外であれば、前記予測位置を現在位置とみなすものである。
【特許文献1】特開2002−333332号公報
【特許文献2】特開2004−271293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1の従来技術は、通常、GPS測位位置と自立測位位置を組み合わせて車両現在位置を求めるものであり、通常時にGPS測位位置を車両現在位置とするものではない。また、第1従来技術はGPS位置に信頼がなくなったときにGPS位置に代えて自立測位位置を使用するものではない。
第2の従来技術は、GPS測位データと地図データを用いてGPS測位位置を求めるものであり、GPS測位データのみからGPS測位位置を求めて車両現在位置とするものではない。また、第2の従来技術は、常時、自立航法センサーを用いて車両位置及び車両位置範囲を予測してGPS測位位置が予測位置範囲内に存在すれば該GPS測位位置を現在位置とし、GPS測位位置が予測位置範囲外であれば、前記予測位置を現在位置とみなすものである。
以上から、本発明の目的は、GPS受信信号より得られる位置(GPS位置)及び速度(GPS速度)を用いて、GPS受信状況が悪くなっても車両位置を正しく推定して表示することができる車両位置推定装置及び車両位置推定方法を提供することである。
本発明の別の目的は、GPS電波を受信できなくなったとき、自立航法センサーを用いて車両位置を正しく推定し表示することができる車両位置推定装置及び車両位置推定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は本発明によれば、GPS衛星より受信したGPS受信信号より算出されるGPS位置に基づいて車両位置を推定する車両位置推定装置および車両位置推定方法により達成される。
・車両位置推定装置
本発明の車両位置推定装置は、車両の進行方向履歴を保存する進行方向履歴保存部、GPS衛星より受信した信号より得られる位置(GPS位置)と速度(GPS速度)と車両進行方向(GPS進行方向)とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し、GPS衛星より受信した信号より得られるGPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合には、前記予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と前記進行方向履歴保存部に保存されている車両進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する位置推定部を備えている。
本発明の車両位置推定装置は、更に、所定時間毎に進行方向変化θGYROおよび走行距離を検出する自立航法センサー、GPS位置に信頼があるか、ないかを判定するGPS位置信頼度判定部、前記進行方向履歴保存部の進行方向履歴を更新する進行方向履歴更新部を備え、前記進行方向履歴更新部は、(1)GPS位置に信頼があれば、GPS受信信号より求まる最新の進行方向(GPS進行方向)を前記進行方向履歴保存部に保存すると共に一番古い進行方向履歴情報を除去し、かつ、残りの進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、(2)GPS位置に信頼がなければ、前記進行方向履歴保存部に保存されている全進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、(3)前記車両進行方向と共に前記GPS速度と前記自立航法センサーにより得られる車速の差ΔVを保存し、前記位置推定部は、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合、前記進行方向履歴保存部に記憶されている進行方向のうち車速差ΔVが最小の進行方向θを用いて前記予測位置範囲及び予測位置を算出する。
前記GPS位置信頼度判定部は、(1)GPS受信信号による位置測定ができない、(2)GPS衛星より受信した信号より得られる車速が1km/h以下になる、(3)GPS進行方向の変化と前記進行方向変化θGYROの差が設定値以上になる、(4)前記進行方向変化θGYROの変化が設定値以上になる、のいずれかが成立したとき、GPS位置に信頼がないと判定する。
本発明の車両位置推定装置は、更に、前記自立航法センサーの出力信号を用いて次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する自立航法位置推定部を備え、前記位置推定部は、GPS受信信号による位置測定ができなくなったとき、前記自立航法位置推定部で予測した自立航法予測位置を現在位置とみなし、GPS受信信号による位置測定が可能になったとき、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在しなければは、前記自立航法予測位置を現在位置とみなす。
【0006】
・車両位置推定方法
本発明の車両位置推定方法は、車両の進行方向履歴を進行方向履歴保存部に保存する第1ステップ、GPS衛星より受信した信号より得られる位置(GPS位置)と速度(GPS速度)と車両進行方向(GPS進行方向)とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する第2ステップ、GPS衛星より受信した信号より得られるGPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなす第3ステップ、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合には、前記予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と前記進行方向履歴保存部に保存されている車両進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する第4ステップを有している。
上記本発明の車両位置推定方法は、更に、(1)所定時間毎に進行方向変化θGYROおよび走行距離を検出する自立航法センサーを設け、(2)GPS位置に信頼があるか、ないかを判定し、GPS位置に信頼があれば、GPS受信信号より求まる最新の進行方向(GPS進行方向)を前記進行方向履歴保存部に保存すると共に一番古い進行方向履歴情報を除去し、かつ、残りの進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、(3)GPS位置に信頼がなければ、前記進行方向履歴保存部に保存されている全進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、(4)前記車両進行方向と共に前記GPS速度と前記自立航法センサーにより得られる車速の差ΔVを保存し、(5)前記第4ステップにおいて、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合、前記進行方向履歴保存部に記憶されている進行方向のうち車速差ΔVが最小の進行方向θを用いて前記予測位置範囲及び予測位置を算出する。
上記本発明の車両位置推定方法は、更に、(1)前記自立航法センサーの出力信号を用いて次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲とを予測するステップ、(2)GPS受信信号による位置測定ができなくなったとき、前記自立航法予測位置を現在位置とみなすステップ、(3)GPS受信信号による位置測定が可能になったとき、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在しなければ前記自立航法予測位置を現在位置とみなすステップを有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の進行方向履歴を進行方向履歴保存部に保存し、GPS位置とGPS速度とGPS進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、予測位置範囲内に存在しなければ、予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と保存されている車両進行方向とから次の車両位置と車両位置範囲を予測するようにしたから、GPS受信状況が悪くなっても車両位置を正しく推定して表示することができる。
また、本発明によれば、自立航法センサーの出力信号を用いて次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲とを予測し、GPS受信信号による位置測定ができなくなったとき、前記自立航法予測位置を現在位置とみなし、GPS受信信号による位置測定が可能になったとき、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在しなければ前記自立航法予測位置を現在位置とみなすようにしたから、GPS電波を受信できなくなったとき、自立航法センサーを用いて車両位置を正しく推定して表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
GPS衛星より受信したGPS受信信号より算出されるGPS位置に基づいて車両位置を推定する車両位置推定装置において、進行方向履歴更新部は、(1)GPS位置に信頼があるか、ないかを判定し、(2)GPS位置に信頼があれば、GPS受信信号より求まる最新の進行方向を進行方向履歴保存部に保存すると共に一番古い進行方向履歴情報を除去し、かつ、残りの進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、(3)GPS位置に信頼がなければ、前記進行方向履歴保存部に保存されている全進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、(4)車両の進行方向と共にGPSより受信した信号より得られる車速と前記自立航法センサーにより得られる車速の差ΔVを保存する。
車両位置推定部は、(1)GPS衛星より受信した信号より得られるGPS位置とGPS速度と車両進行方向(GPS進行方向)とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し、(2)GPS衛星より受信した信号より得られるGPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、(3)GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合には、前記予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と前記進行方向履歴保存部に保存されている車両進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する。
【実施例】
【0009】
(A)本発明の原理
図1は本発明の原理説明図である。
車両位置推定部(図示せず)は、図1(A)に示すように、時刻T0においてGPS受信信号より得られたGPS位置P0とGPS速度VGPSと進行方向履歴保存部(図示せず)に保存されている車両進行方向θとから次の位置測定時刻T1における車両位置P1と車両が存在する可能性のある位置範囲PRG1を予測する。そして、次の位置測定時刻T1におけるGPS受信信号より得られるGPS位置PGPSが(B)に示すように予測位置範囲PRG1内に存在すれば該GPS位置PGPSを現在位置とみなし、次の位置測定時刻T2における車両位置P2と車両が存在する可能性のある位置範囲PRG2を予測する。
一方、位置測定時刻T1においてマルチパスなどの影響で正確な位置検出ができず、GPS位置PGPSが(C)に示すように予測位置範囲PRG1内に存在しない場合には、予測位置P1を現在位置とみなし、次の位置測定時刻T2における車両位置P2と車両が存在する可能性のある位置範囲PRG2を予測する。位置範囲PRG2の角度は位置範囲PRG1より大きくし、位置範囲PRG2内に道路RDが含まれるようにする。このようにすることにより、位置測定時刻T2におけるGPS受信信号より得られるGPS位置が正しく検出されて道路上に存在する場合にはこの正しいGPS位置を車両現在位置として使用できるようになる。
以上はGPS測位が可能な場合であるが、トンネルやビル街などで測位可能な数のGPS衛星からGPS電波を同時に受信できなくなる場合がある。かかる場合、上記の方法でも、トンネルに入る前の進行方向とトンネル内での進行方向に大きな差が無ければ車両推定位置は道路から大きく外れない。しかし、図2に示すように、トンネル内TNin〜TNoutで進行方向変化が大きくなると車両推定値が道路RDから外れてしまう問題がある。すなわち、トンネルを出た時にGPS位置P GPS2が正しく検出されても、予測位置範囲PRGi内に存在しないため、予測位置Piを現在位置としてしまう。また、GPS位置PGPS1のようにGPS位置が正しく検出されないときにも予測位置範囲PRGi内に存在しないため、予測位置Piを現在位置としてしまう。
そこで、GPS測位ができなくなれば、図3(A)に示すように自立航法センサー(角度センサー、距離センサー)の出力信号を用いて次の位置測定時刻Ti+1における車両位置P i+1と車両が存在する可能性のある位置範囲PRG i+1とを予測する。そして、GPS受信信号による位置測定が可能になったとき、図3(B)に示すようにGPS位置が自立航法予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置P GPSが予測位置範囲PRG3内に存在しなければ予測位置P3を現在位置とみなすようにする。このようにすることにより、GPS電波を受信できなくなったとき、自立航法センサーを用いて車両位置を正しく推定して車両位置表示をすることができる。
【0010】
(B)ナビゲーション装置
図4は本発明のナビゲーション装置の構成図である。
地図記録媒体(CD-ROM、DVDなど)11には地図データが記録されており、必要に応じて読み取られるようになっている。地図データは、誘導経路探索に際して使用する道路レイヤ、地図上のオブジェクトを表示するための背景レイヤ、地図上の市町村名など文字を表示するための文字レイヤなどから構成されている。操作部12はナビゲーション制御装置10を操作するものでリモコン、操作用のハードキーなどを有している。
GPS受信機13はGPS衛星から送られてくるGPS信号を受信し、車両の絶対的現在位置(GPS位置)や進行方向を算出すると共に、ドプラーシフトを利用して車両速度(GPS速度)を算出し、ナビゲーション制御装置10に入力する。自立航法センサー部14は、所定時間毎に進行方向変化θGYROおよび走行距離を検出すると共に、GPS測位ができなくなったとき自立的に車両位置を推定してナビゲーション制御装置10に入力する。
タッチパネル式ディスプレイ装置15はナビゲーション制御装置10からの指示に従って車両周辺地図、誘導経路、メニュー、車両位置マーク等を表示する。また、タッチパネル式ディスプレイ装置15は、スクリーンに表示したソフトキーが押下されたとき所定のコマンドをナビゲーション制御装置10に入力するようになっている。
【0011】
ナビゲーション制御装置10において、地図バッファ21は地図記録媒体から読み取った地図データを保存する。ナビゲーション制御部22は入力される各種情報、コマンドに基づいて、車両位置周辺の地図データをバッファに読み出す地図読み出し制御、(2)誘導経路探索及び経路誘導制御、(3)各種操作画面、車両マークの発生制御等を実行する。地図描画部23は地図バッファ21に読み出された地図データを用いて地図画像を生成してVRAM 24に書込み、画像読み出し部25は制御部22からの指示に従ってVRAM 24から所定の画像部分を切り取って画像合成部26に入力する。
誘導経路メモリ27は、制御部22により探索された目的地までの誘導経路情報、すなわち、誘導経路を構成する全ノードの位置データを出発地から目的地まで記録する。誘導経路描画部28は誘導経路情報を用いて誘導経路画像を発生して画像合成部26に入力し、描画地図上に強調表示する。操作画面発生部29は各種メニュー画面(操作画面)を生成して画像合成部26に入力し、マーク発生部30は車両位置マークやカーソル等の各種マークを生成して画像合成部26に入力する。画像合成部26は、VRAM 24から読み出した地図画像に各種マークや誘導経路画像を重ね合わせてスクリーン全体に表示する。
位置推定制御部31はGPS受信機13及び自立航法センサー部14からの信号に基づいて車両位置を推定してナビゲーション制御部22に入力する。また、位置推定制御部31は、走行履歴保存部32に、車両進行方向と共に、GPS速度と自立航法センサー部に検出された車速の差ΔVを走行履歴情報として保存する。走行履歴情報は最新の複数個、たとえば10個の履歴を記憶する。
【0012】
図5は車両位置推定部周辺の詳細図であり、図4と同一部分には同一符号を付している。GPS受信機13はGPS受信アンテナ13aと、GPS受信部13bと、GPS信号に基づいて車両の絶対的現在位置(GPS位置)や車両進行方向(GPS進行方向)を算出すると共に、ドプラーシフトを利用して車両速度(GPS速度)を算出するGPS計算部13cを備えている。
自立航法センサー部14は、車両回転角度を検出するジャイロなどの角度センサー14aと、一定走行距離毎にパルスを発生する距離センサー(車速センサー)14bと、自立航法推定位置計算部14cを備えている。自立航法推定位置計算部14cは、GPS測位が不能になったとき、車両現在位置と各センサー信号を用いて次の位置測定時刻における車両位置(自立航法推定位置) を予測するとともに、車両が存在する可能性のある位置範囲(自立航法位置範囲)を予測する。
【0013】
図6は自立航法による車両位置推定方法の説明図である。
距離センサー14bは車両が所定距離走行する毎にパルスを出力し、したがって単位時間当たりに発生するパルス数を計数することにより車両移動速度Vを測定できる。また、基準方位(θ=0)をX軸の正方向、基準方位から反時計方向回りを+方向とする。前回の車両位置を点P0(X0,Y0)、点P0での車両進行方向の絶対方位をθ0、単位時間t後の移動距離L0(=V×t)した時点での相対方位センサーの出力をΔθ1であるとすると、車両位置の変化分は、
ΔX=L0・cos(θ0+Δθ1)
ΔY=L0・sin(θ0+Δθ1)
となり、今回の点P1での車両進行方向の推定方位θ1と推定車両位置(X1,Y1)は、
θ1=θ0+Δθ1 (1)
X1=X0+ΔX=X0+L0・cosθ1 (2)
Y1=Y0+ΔY=Y0+L0・sinθ1 (3)
としてベクトル合成により計算できる。
【0014】
位置推定制御部31はコンピュータ構成になっており、機能的に車両現在位置を推定する制御を行う位置推定部41、GPS位置の信頼度を測定する信頼度測定部42、走行履歴保存部32の内容の更新制御を行う走行履歴更新部43を備えている。
走行履歴保存部32は図7に示すように、最新の10組の車両進行方向θREFと車速差ΔVを保存する。車速差ΔV は、GPS信号よりドプラーシフトを利用して計算されたGPS速度と自立航法センサー部で検出された車速との差である。注意すべきは、10組の進行方向は全て現時点における車両進行方向を示している点であり、走行履歴更新部43が、この10組の進行方向が全て現時点における車両進行方向となるように更新処理を行う。なお、位置推定部41は、GPS位置が予測位置範囲の外に出たとき、車速差ΔVが最小の進行方向を用いて車両位置や位置範囲を予測する。
【0015】
(C)走行履歴更新処理
図8は走行履歴更新部43による走行履歴更新処理フロー、図9は走行履歴更新説明図である。
走行履歴更新部43は、走行履歴保存タイミングになったか、すなわち、位置測定タイミングになったか監視し(ステップ101)、該タイミングになればGPSデータに信頼性があるかチェックする(ステップ102)。
GPSデータに信頼性があるか否かは信頼度決定部42が決定し、決定結果を走行履歴更新部43に入力する。信頼度決定部42は、(1)GPS受信信号による位置測定が可能か、(2)GPS受信信号より得られる車速が1km/h以であるか、(3) GPS受信信号より得られるGPS進行方向の変化と角度センサー14aから得られる進行方向変化θGYROの差が設定値以上になったか、(4)前記進行方向変化θGYROの変化が設定値以上になったか監視する。そして、GPS受信信号による位置測定ができない、GPS衛星より受信した信号より得られる車速が1km/h以下になる、GPS進行方向の変化と前記進行方向変化θGYROの差が設定値以上になる、前記進行方向変化θGYROの変化が設定値以上になる、のいずれかが成立したとき、GPS位置に信頼性がないと判定する。また、GPS受信信号による位置測定ができ、GPS衛星より受信した信号より得られる車速が1km/hより大きく、GPS進行方向の変化と前記進行方向変化θGYROの差が設定値より小さく、前記進行方向変化θGYROの変化が設定値より小さいとき、GPS位置に信頼性があると判定する。
【0016】
走行履歴更新部43は、GPSデータに信頼性があれば(図9参照)、GPS受信信号より求まる最新のGPS進行方向θGPSを前記進行方向履歴保存部に保存すると共に、GPS受信信号より得られるGPS速度と車速センサー(距離センサー)14bにより得られる車速との差ΔVを保存する(ステップ103)。すなわち、次式
(θREF)1=θGPS
ΔV1=ΔV
の更新処理を行う。
ついで、走行履歴更新部43は、一番古い進行方向履歴情報を除去し、かつ、残りの進行方向履歴情報に角度センサーから求まる進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新する(ステップ104)。すなわち、次式
(θREF)i+1=(θREF)i+θGYRO
ΔVi+1=ΔVi
の更新処理を行う。以上により、10組の進行方向は全て現時点における車両進行方向となるように更新される。
一方、ステップ102において、GPSデータに信頼性がなければ、進行方向履歴保存部32に保存されている全進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新する(ステップ105)。なお、車速差は変更しない。すなわち、次式
(θREF)i=(θREF)i+θGYRO
ΔVi=ΔVi
の更新処理を行う。これにより、GPSデータに信頼性がある場合と同様に10組の進行方向は全て現時点における車両進行方向となるように更新される。
【0017】
(D)車両位置推定処理
図10及び図11は本発明の車両位置推定の処理フローである。
位置推定部41は、位置計算タイミングになったか監視する(ステップ201)。なお、一定時間毎に位置計算するようになっている。位置計算タイミングになれば、位置推定部41はGPS受信機13よりGPS計算データ(GPS位置PGPS、GPS速度VGPS、GPS進行方向θGPS、GPS測位可能/不可信号)を取得し、自立航法センサー部14より進行方向変化θGYROや車速Vcを取得する(ステップ202)。
上記の取得処理が終了すれば、位置推定部41はGPS測位可能か否かをチェックし(ステップ203)、可能であれば走行履歴更新部43に走行履歴更新処理実行を指示する。走行履歴更新部43は、図8のフローにしたがって走行履歴更新処理を実行する(ステップ204)。
ついで、位置推定部41は、受信したGPS位置が前回の位置計算タイミングにおいて計算済みの予測位置範囲内に存在するかチェックする(ステップ205)。なお、位置推定部41は、前回の位置計算タイミングおいて、次の位置計算タイミングにおける車両位置を予測すると共に、車両が存在する可能性のある位置範囲を算出して保持している。
【0018】
予測した位置範囲内に存在していれば、GPS位置を現在位置として出力する(ステップ206)。ついで、位置推定部41は、該現在位置とGPS進行方向θGPSとGPS速度VGPSとを用いて次の位置計算タイミングにおける車両位置を予測すると共に、車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し(ステップ207)、始めに戻る。
しかし、ステップ205において、GPS位置が予測位置範囲内に存在していなければ計算済みの予測位置を現在位置として出力する(ステップ208)。ついで、位置推定部41は、推定した車両の現在位置とGPS速度VGPSと進行方向履歴保存部32に保存されている車両進行方向θとを用いて次の位置計算タイミングにおける車両位置を予測すると共に、車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し(ステップ209)、始めに戻る。このステップ209の予測処理において使用する車両進行方向θとしては、走行履歴保存部32に保存されている10組の進行方向履歴データのうち、車速差ΔVが最も小さい組の車両進行方向を選ぶ。これは、GPS速度VGPSと車速センサーより得られた速度Vcとの差が最小のときに最も進行方向データの信頼度が高くなるからである。
また、予測位置は、現在位置から車両進行方向θにL(=VGPS×T(Tは位置計算周期))進めた位置である。予測位置範囲は所定の角度幅Δθを有する半径L+ΔLのセクターとする。なお、GPS速度VGPSはドプラーシフトに基づいて検出されるためGPS位置に信頼性がなくても精度は高い。
【0019】
一方、ステップ203において、GPS測位が不可能の場合には、位置推定部41は自立航法センサー部14に1つ前の時刻における車両現在位置を入力すると共に車両位置の予測を依頼する。これにより、自立航法センサー部14の自立航法推定位置計算部14cは車両現在位置を推定して位置推定部41に入力する。位置推定部41は該車両位置を現在位置として出力すると共に(ステップ211)、走行履歴更新部43に履歴情報更新を指示する(ステップ212)。この指示により、走行履歴更新部43は図8のステップ105の処理と同様の処理で履歴情報を更新する。
ついで、位置推定部41は、自立航法センサー部14に次の時刻における車両位置と車両が位置する可能性のある範囲の予測を依頼する。該依頼により、自立航法推定位置計算部14cは車両現在位置および位置範囲を予測して位置推定部41に入力する。位置推定部41は入力された予測位置と予測位置範囲を保存し(ステップ213)、次の位置計算タイミングになったか監視する(ステップ214)。
次の位置計算タイミングになればGPS測位が可能であるかチェックし(ステップ215)、不能であればステップ211の処理を繰り返す。一方、GPS測位が可能となれば、図8の走行履歴情報保存処理の実行制御を行った後(ステップ216)、GPS受信機よりGPS位置を取得し(ステップ217)、該GPS位置がステップ213で取得してある予測位置範囲内に存在するかチェックする(ステップ218)。
【0020】
予測位置範囲内に存在していれば、GPS位置を現在位置として出力し(ステップ219)、予測位置範囲内に存在していなければステップ213で取得してある予測位置を現在位置として出力し(ステップ220)、始めに戻る。
以上本発明によれば、GPS受信状況が悪くなっても車両位置を正しく推定して表示することができる。また、GPS電波を受信できなくなったとき、自立航法センサーを用いて車両位置を正しく推定し表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の原理説明図である。
【図2】本発明の第2の原理説明図である。
【図3】本発明の第3の原理説明図である。
【図4】本発明のナビゲーション装置の構成図である。
【図5】車両位置推定部周辺の詳細図である。
【図6】自立航法による車両位置推定方法の説明図である。
【図7】走行履歴情報の説明図である。
【図8】走行履歴更新部による走行履歴更新処理フローである。
【図9】走行履歴更新説明図である。
【図10】本発明の車両位置推定の第1の処理フローである。
【図11】本発明の車両位置推定の第2の処理フローである。
【符号の説明】
【0022】
RD 道路
P0 車両現在位置
P1 位置測定時刻T1における車両予測位置
PRG1 位置測定時刻T1における予測位置範囲
PGPS GPS位置
P2 位置測定時刻T2における車両予測位置
PRG2 位置測定時刻T2における予測位置範囲
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両位置推定装置及び車両位置推定方法に係わり、特にGPS衛星より受信したGPS受信信号より算出されるGPS位置に基づいて車両位置を推定する車両位置推定装置及び車両位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は、車両の現在位置に応じた地図データをCD−ROM、DVD,HDDなどの記録媒体から読み出してディスプレイ画面に描画すると共に、車両マークをディスプレイ画面の一定位置に固定表示し、走行に応じて地図をスクロ−ル表示する。また、ナビゲーション装置は以上に加えて、出発地から目的地までの誘導経路を探索し、該誘導経路を地図上に表示する経路誘導機能や地図上に所定のPOIマーク(ランドマーク)を表示するPOI表示機能を備えている。
かかるナビゲーション装置には車両位置を測定する位置測定装置が不可欠である。従来の第1の位置測定法は、車両の進行方向を検出するジャイロなどの角度センサーと所定時間毎の走行距離を検出する距離センサー(車速センサー)を用いて自立的に車両位置を推定し、適宜、マップマッチング処理を行って車両位置を道路上に位置補正する。また、第2の位置測定法は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信して計算されるGPS位置と自立航法位置とを併用して車両位置を推定する。この方法には、第1、第2の従来技術がある(特許文献1特許文献2および参照)。
【0003】
前記第2の位置測定方法における第1の従来技術は、自立測位データにおける予測誤差が所定の閾値を越えていなければ、GPS測位データに自立測位データを組み合わせて現在位置を算出し、所定の閾値を越えていればGPS測位データに自立測位データを組み合わせることなく現在位置を算出するものである。
前記第2の位置測定方法における第2の従来技術は、自立航法センサーを用いて車両位置及び車両位置範囲を予測し、GPS測位位置が予測位置範囲内に存在すれば該GPS測位位置を現在位置とし、GPS測位位置が予測位置範囲外であれば、前記予測位置を現在位置とみなすものである。
【特許文献1】特開2002−333332号公報
【特許文献2】特開2004−271293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1の従来技術は、通常、GPS測位位置と自立測位位置を組み合わせて車両現在位置を求めるものであり、通常時にGPS測位位置を車両現在位置とするものではない。また、第1従来技術はGPS位置に信頼がなくなったときにGPS位置に代えて自立測位位置を使用するものではない。
第2の従来技術は、GPS測位データと地図データを用いてGPS測位位置を求めるものであり、GPS測位データのみからGPS測位位置を求めて車両現在位置とするものではない。また、第2の従来技術は、常時、自立航法センサーを用いて車両位置及び車両位置範囲を予測してGPS測位位置が予測位置範囲内に存在すれば該GPS測位位置を現在位置とし、GPS測位位置が予測位置範囲外であれば、前記予測位置を現在位置とみなすものである。
以上から、本発明の目的は、GPS受信信号より得られる位置(GPS位置)及び速度(GPS速度)を用いて、GPS受信状況が悪くなっても車両位置を正しく推定して表示することができる車両位置推定装置及び車両位置推定方法を提供することである。
本発明の別の目的は、GPS電波を受信できなくなったとき、自立航法センサーを用いて車両位置を正しく推定し表示することができる車両位置推定装置及び車両位置推定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は本発明によれば、GPS衛星より受信したGPS受信信号より算出されるGPS位置に基づいて車両位置を推定する車両位置推定装置および車両位置推定方法により達成される。
・車両位置推定装置
本発明の車両位置推定装置は、車両の進行方向履歴を保存する進行方向履歴保存部、GPS衛星より受信した信号より得られる位置(GPS位置)と速度(GPS速度)と車両進行方向(GPS進行方向)とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し、GPS衛星より受信した信号より得られるGPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合には、前記予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と前記進行方向履歴保存部に保存されている車両進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する位置推定部を備えている。
本発明の車両位置推定装置は、更に、所定時間毎に進行方向変化θGYROおよび走行距離を検出する自立航法センサー、GPS位置に信頼があるか、ないかを判定するGPS位置信頼度判定部、前記進行方向履歴保存部の進行方向履歴を更新する進行方向履歴更新部を備え、前記進行方向履歴更新部は、(1)GPS位置に信頼があれば、GPS受信信号より求まる最新の進行方向(GPS進行方向)を前記進行方向履歴保存部に保存すると共に一番古い進行方向履歴情報を除去し、かつ、残りの進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、(2)GPS位置に信頼がなければ、前記進行方向履歴保存部に保存されている全進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、(3)前記車両進行方向と共に前記GPS速度と前記自立航法センサーにより得られる車速の差ΔVを保存し、前記位置推定部は、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合、前記進行方向履歴保存部に記憶されている進行方向のうち車速差ΔVが最小の進行方向θを用いて前記予測位置範囲及び予測位置を算出する。
前記GPS位置信頼度判定部は、(1)GPS受信信号による位置測定ができない、(2)GPS衛星より受信した信号より得られる車速が1km/h以下になる、(3)GPS進行方向の変化と前記進行方向変化θGYROの差が設定値以上になる、(4)前記進行方向変化θGYROの変化が設定値以上になる、のいずれかが成立したとき、GPS位置に信頼がないと判定する。
本発明の車両位置推定装置は、更に、前記自立航法センサーの出力信号を用いて次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する自立航法位置推定部を備え、前記位置推定部は、GPS受信信号による位置測定ができなくなったとき、前記自立航法位置推定部で予測した自立航法予測位置を現在位置とみなし、GPS受信信号による位置測定が可能になったとき、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在しなければは、前記自立航法予測位置を現在位置とみなす。
【0006】
・車両位置推定方法
本発明の車両位置推定方法は、車両の進行方向履歴を進行方向履歴保存部に保存する第1ステップ、GPS衛星より受信した信号より得られる位置(GPS位置)と速度(GPS速度)と車両進行方向(GPS進行方向)とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する第2ステップ、GPS衛星より受信した信号より得られるGPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなす第3ステップ、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合には、前記予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と前記進行方向履歴保存部に保存されている車両進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する第4ステップを有している。
上記本発明の車両位置推定方法は、更に、(1)所定時間毎に進行方向変化θGYROおよび走行距離を検出する自立航法センサーを設け、(2)GPS位置に信頼があるか、ないかを判定し、GPS位置に信頼があれば、GPS受信信号より求まる最新の進行方向(GPS進行方向)を前記進行方向履歴保存部に保存すると共に一番古い進行方向履歴情報を除去し、かつ、残りの進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、(3)GPS位置に信頼がなければ、前記進行方向履歴保存部に保存されている全進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、(4)前記車両進行方向と共に前記GPS速度と前記自立航法センサーにより得られる車速の差ΔVを保存し、(5)前記第4ステップにおいて、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合、前記進行方向履歴保存部に記憶されている進行方向のうち車速差ΔVが最小の進行方向θを用いて前記予測位置範囲及び予測位置を算出する。
上記本発明の車両位置推定方法は、更に、(1)前記自立航法センサーの出力信号を用いて次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲とを予測するステップ、(2)GPS受信信号による位置測定ができなくなったとき、前記自立航法予測位置を現在位置とみなすステップ、(3)GPS受信信号による位置測定が可能になったとき、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在しなければ前記自立航法予測位置を現在位置とみなすステップを有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の進行方向履歴を進行方向履歴保存部に保存し、GPS位置とGPS速度とGPS進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、予測位置範囲内に存在しなければ、予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と保存されている車両進行方向とから次の車両位置と車両位置範囲を予測するようにしたから、GPS受信状況が悪くなっても車両位置を正しく推定して表示することができる。
また、本発明によれば、自立航法センサーの出力信号を用いて次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲とを予測し、GPS受信信号による位置測定ができなくなったとき、前記自立航法予測位置を現在位置とみなし、GPS受信信号による位置測定が可能になったとき、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在しなければ前記自立航法予測位置を現在位置とみなすようにしたから、GPS電波を受信できなくなったとき、自立航法センサーを用いて車両位置を正しく推定して表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
GPS衛星より受信したGPS受信信号より算出されるGPS位置に基づいて車両位置を推定する車両位置推定装置において、進行方向履歴更新部は、(1)GPS位置に信頼があるか、ないかを判定し、(2)GPS位置に信頼があれば、GPS受信信号より求まる最新の進行方向を進行方向履歴保存部に保存すると共に一番古い進行方向履歴情報を除去し、かつ、残りの進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、(3)GPS位置に信頼がなければ、前記進行方向履歴保存部に保存されている全進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、(4)車両の進行方向と共にGPSより受信した信号より得られる車速と前記自立航法センサーにより得られる車速の差ΔVを保存する。
車両位置推定部は、(1)GPS衛星より受信した信号より得られるGPS位置とGPS速度と車両進行方向(GPS進行方向)とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し、(2)GPS衛星より受信した信号より得られるGPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、(3)GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合には、前記予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と前記進行方向履歴保存部に保存されている車両進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する。
【実施例】
【0009】
(A)本発明の原理
図1は本発明の原理説明図である。
車両位置推定部(図示せず)は、図1(A)に示すように、時刻T0においてGPS受信信号より得られたGPS位置P0とGPS速度VGPSと進行方向履歴保存部(図示せず)に保存されている車両進行方向θとから次の位置測定時刻T1における車両位置P1と車両が存在する可能性のある位置範囲PRG1を予測する。そして、次の位置測定時刻T1におけるGPS受信信号より得られるGPS位置PGPSが(B)に示すように予測位置範囲PRG1内に存在すれば該GPS位置PGPSを現在位置とみなし、次の位置測定時刻T2における車両位置P2と車両が存在する可能性のある位置範囲PRG2を予測する。
一方、位置測定時刻T1においてマルチパスなどの影響で正確な位置検出ができず、GPS位置PGPSが(C)に示すように予測位置範囲PRG1内に存在しない場合には、予測位置P1を現在位置とみなし、次の位置測定時刻T2における車両位置P2と車両が存在する可能性のある位置範囲PRG2を予測する。位置範囲PRG2の角度は位置範囲PRG1より大きくし、位置範囲PRG2内に道路RDが含まれるようにする。このようにすることにより、位置測定時刻T2におけるGPS受信信号より得られるGPS位置が正しく検出されて道路上に存在する場合にはこの正しいGPS位置を車両現在位置として使用できるようになる。
以上はGPS測位が可能な場合であるが、トンネルやビル街などで測位可能な数のGPS衛星からGPS電波を同時に受信できなくなる場合がある。かかる場合、上記の方法でも、トンネルに入る前の進行方向とトンネル内での進行方向に大きな差が無ければ車両推定位置は道路から大きく外れない。しかし、図2に示すように、トンネル内TNin〜TNoutで進行方向変化が大きくなると車両推定値が道路RDから外れてしまう問題がある。すなわち、トンネルを出た時にGPS位置P GPS2が正しく検出されても、予測位置範囲PRGi内に存在しないため、予測位置Piを現在位置としてしまう。また、GPS位置PGPS1のようにGPS位置が正しく検出されないときにも予測位置範囲PRGi内に存在しないため、予測位置Piを現在位置としてしまう。
そこで、GPS測位ができなくなれば、図3(A)に示すように自立航法センサー(角度センサー、距離センサー)の出力信号を用いて次の位置測定時刻Ti+1における車両位置P i+1と車両が存在する可能性のある位置範囲PRG i+1とを予測する。そして、GPS受信信号による位置測定が可能になったとき、図3(B)に示すようにGPS位置が自立航法予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置P GPSが予測位置範囲PRG3内に存在しなければ予測位置P3を現在位置とみなすようにする。このようにすることにより、GPS電波を受信できなくなったとき、自立航法センサーを用いて車両位置を正しく推定して車両位置表示をすることができる。
【0010】
(B)ナビゲーション装置
図4は本発明のナビゲーション装置の構成図である。
地図記録媒体(CD-ROM、DVDなど)11には地図データが記録されており、必要に応じて読み取られるようになっている。地図データは、誘導経路探索に際して使用する道路レイヤ、地図上のオブジェクトを表示するための背景レイヤ、地図上の市町村名など文字を表示するための文字レイヤなどから構成されている。操作部12はナビゲーション制御装置10を操作するものでリモコン、操作用のハードキーなどを有している。
GPS受信機13はGPS衛星から送られてくるGPS信号を受信し、車両の絶対的現在位置(GPS位置)や進行方向を算出すると共に、ドプラーシフトを利用して車両速度(GPS速度)を算出し、ナビゲーション制御装置10に入力する。自立航法センサー部14は、所定時間毎に進行方向変化θGYROおよび走行距離を検出すると共に、GPS測位ができなくなったとき自立的に車両位置を推定してナビゲーション制御装置10に入力する。
タッチパネル式ディスプレイ装置15はナビゲーション制御装置10からの指示に従って車両周辺地図、誘導経路、メニュー、車両位置マーク等を表示する。また、タッチパネル式ディスプレイ装置15は、スクリーンに表示したソフトキーが押下されたとき所定のコマンドをナビゲーション制御装置10に入力するようになっている。
【0011】
ナビゲーション制御装置10において、地図バッファ21は地図記録媒体から読み取った地図データを保存する。ナビゲーション制御部22は入力される各種情報、コマンドに基づいて、車両位置周辺の地図データをバッファに読み出す地図読み出し制御、(2)誘導経路探索及び経路誘導制御、(3)各種操作画面、車両マークの発生制御等を実行する。地図描画部23は地図バッファ21に読み出された地図データを用いて地図画像を生成してVRAM 24に書込み、画像読み出し部25は制御部22からの指示に従ってVRAM 24から所定の画像部分を切り取って画像合成部26に入力する。
誘導経路メモリ27は、制御部22により探索された目的地までの誘導経路情報、すなわち、誘導経路を構成する全ノードの位置データを出発地から目的地まで記録する。誘導経路描画部28は誘導経路情報を用いて誘導経路画像を発生して画像合成部26に入力し、描画地図上に強調表示する。操作画面発生部29は各種メニュー画面(操作画面)を生成して画像合成部26に入力し、マーク発生部30は車両位置マークやカーソル等の各種マークを生成して画像合成部26に入力する。画像合成部26は、VRAM 24から読み出した地図画像に各種マークや誘導経路画像を重ね合わせてスクリーン全体に表示する。
位置推定制御部31はGPS受信機13及び自立航法センサー部14からの信号に基づいて車両位置を推定してナビゲーション制御部22に入力する。また、位置推定制御部31は、走行履歴保存部32に、車両進行方向と共に、GPS速度と自立航法センサー部に検出された車速の差ΔVを走行履歴情報として保存する。走行履歴情報は最新の複数個、たとえば10個の履歴を記憶する。
【0012】
図5は車両位置推定部周辺の詳細図であり、図4と同一部分には同一符号を付している。GPS受信機13はGPS受信アンテナ13aと、GPS受信部13bと、GPS信号に基づいて車両の絶対的現在位置(GPS位置)や車両進行方向(GPS進行方向)を算出すると共に、ドプラーシフトを利用して車両速度(GPS速度)を算出するGPS計算部13cを備えている。
自立航法センサー部14は、車両回転角度を検出するジャイロなどの角度センサー14aと、一定走行距離毎にパルスを発生する距離センサー(車速センサー)14bと、自立航法推定位置計算部14cを備えている。自立航法推定位置計算部14cは、GPS測位が不能になったとき、車両現在位置と各センサー信号を用いて次の位置測定時刻における車両位置(自立航法推定位置) を予測するとともに、車両が存在する可能性のある位置範囲(自立航法位置範囲)を予測する。
【0013】
図6は自立航法による車両位置推定方法の説明図である。
距離センサー14bは車両が所定距離走行する毎にパルスを出力し、したがって単位時間当たりに発生するパルス数を計数することにより車両移動速度Vを測定できる。また、基準方位(θ=0)をX軸の正方向、基準方位から反時計方向回りを+方向とする。前回の車両位置を点P0(X0,Y0)、点P0での車両進行方向の絶対方位をθ0、単位時間t後の移動距離L0(=V×t)した時点での相対方位センサーの出力をΔθ1であるとすると、車両位置の変化分は、
ΔX=L0・cos(θ0+Δθ1)
ΔY=L0・sin(θ0+Δθ1)
となり、今回の点P1での車両進行方向の推定方位θ1と推定車両位置(X1,Y1)は、
θ1=θ0+Δθ1 (1)
X1=X0+ΔX=X0+L0・cosθ1 (2)
Y1=Y0+ΔY=Y0+L0・sinθ1 (3)
としてベクトル合成により計算できる。
【0014】
位置推定制御部31はコンピュータ構成になっており、機能的に車両現在位置を推定する制御を行う位置推定部41、GPS位置の信頼度を測定する信頼度測定部42、走行履歴保存部32の内容の更新制御を行う走行履歴更新部43を備えている。
走行履歴保存部32は図7に示すように、最新の10組の車両進行方向θREFと車速差ΔVを保存する。車速差ΔV は、GPS信号よりドプラーシフトを利用して計算されたGPS速度と自立航法センサー部で検出された車速との差である。注意すべきは、10組の進行方向は全て現時点における車両進行方向を示している点であり、走行履歴更新部43が、この10組の進行方向が全て現時点における車両進行方向となるように更新処理を行う。なお、位置推定部41は、GPS位置が予測位置範囲の外に出たとき、車速差ΔVが最小の進行方向を用いて車両位置や位置範囲を予測する。
【0015】
(C)走行履歴更新処理
図8は走行履歴更新部43による走行履歴更新処理フロー、図9は走行履歴更新説明図である。
走行履歴更新部43は、走行履歴保存タイミングになったか、すなわち、位置測定タイミングになったか監視し(ステップ101)、該タイミングになればGPSデータに信頼性があるかチェックする(ステップ102)。
GPSデータに信頼性があるか否かは信頼度決定部42が決定し、決定結果を走行履歴更新部43に入力する。信頼度決定部42は、(1)GPS受信信号による位置測定が可能か、(2)GPS受信信号より得られる車速が1km/h以であるか、(3) GPS受信信号より得られるGPS進行方向の変化と角度センサー14aから得られる進行方向変化θGYROの差が設定値以上になったか、(4)前記進行方向変化θGYROの変化が設定値以上になったか監視する。そして、GPS受信信号による位置測定ができない、GPS衛星より受信した信号より得られる車速が1km/h以下になる、GPS進行方向の変化と前記進行方向変化θGYROの差が設定値以上になる、前記進行方向変化θGYROの変化が設定値以上になる、のいずれかが成立したとき、GPS位置に信頼性がないと判定する。また、GPS受信信号による位置測定ができ、GPS衛星より受信した信号より得られる車速が1km/hより大きく、GPS進行方向の変化と前記進行方向変化θGYROの差が設定値より小さく、前記進行方向変化θGYROの変化が設定値より小さいとき、GPS位置に信頼性があると判定する。
【0016】
走行履歴更新部43は、GPSデータに信頼性があれば(図9参照)、GPS受信信号より求まる最新のGPS進行方向θGPSを前記進行方向履歴保存部に保存すると共に、GPS受信信号より得られるGPS速度と車速センサー(距離センサー)14bにより得られる車速との差ΔVを保存する(ステップ103)。すなわち、次式
(θREF)1=θGPS
ΔV1=ΔV
の更新処理を行う。
ついで、走行履歴更新部43は、一番古い進行方向履歴情報を除去し、かつ、残りの進行方向履歴情報に角度センサーから求まる進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新する(ステップ104)。すなわち、次式
(θREF)i+1=(θREF)i+θGYRO
ΔVi+1=ΔVi
の更新処理を行う。以上により、10組の進行方向は全て現時点における車両進行方向となるように更新される。
一方、ステップ102において、GPSデータに信頼性がなければ、進行方向履歴保存部32に保存されている全進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新する(ステップ105)。なお、車速差は変更しない。すなわち、次式
(θREF)i=(θREF)i+θGYRO
ΔVi=ΔVi
の更新処理を行う。これにより、GPSデータに信頼性がある場合と同様に10組の進行方向は全て現時点における車両進行方向となるように更新される。
【0017】
(D)車両位置推定処理
図10及び図11は本発明の車両位置推定の処理フローである。
位置推定部41は、位置計算タイミングになったか監視する(ステップ201)。なお、一定時間毎に位置計算するようになっている。位置計算タイミングになれば、位置推定部41はGPS受信機13よりGPS計算データ(GPS位置PGPS、GPS速度VGPS、GPS進行方向θGPS、GPS測位可能/不可信号)を取得し、自立航法センサー部14より進行方向変化θGYROや車速Vcを取得する(ステップ202)。
上記の取得処理が終了すれば、位置推定部41はGPS測位可能か否かをチェックし(ステップ203)、可能であれば走行履歴更新部43に走行履歴更新処理実行を指示する。走行履歴更新部43は、図8のフローにしたがって走行履歴更新処理を実行する(ステップ204)。
ついで、位置推定部41は、受信したGPS位置が前回の位置計算タイミングにおいて計算済みの予測位置範囲内に存在するかチェックする(ステップ205)。なお、位置推定部41は、前回の位置計算タイミングおいて、次の位置計算タイミングにおける車両位置を予測すると共に、車両が存在する可能性のある位置範囲を算出して保持している。
【0018】
予測した位置範囲内に存在していれば、GPS位置を現在位置として出力する(ステップ206)。ついで、位置推定部41は、該現在位置とGPS進行方向θGPSとGPS速度VGPSとを用いて次の位置計算タイミングにおける車両位置を予測すると共に、車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し(ステップ207)、始めに戻る。
しかし、ステップ205において、GPS位置が予測位置範囲内に存在していなければ計算済みの予測位置を現在位置として出力する(ステップ208)。ついで、位置推定部41は、推定した車両の現在位置とGPS速度VGPSと進行方向履歴保存部32に保存されている車両進行方向θとを用いて次の位置計算タイミングにおける車両位置を予測すると共に、車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し(ステップ209)、始めに戻る。このステップ209の予測処理において使用する車両進行方向θとしては、走行履歴保存部32に保存されている10組の進行方向履歴データのうち、車速差ΔVが最も小さい組の車両進行方向を選ぶ。これは、GPS速度VGPSと車速センサーより得られた速度Vcとの差が最小のときに最も進行方向データの信頼度が高くなるからである。
また、予測位置は、現在位置から車両進行方向θにL(=VGPS×T(Tは位置計算周期))進めた位置である。予測位置範囲は所定の角度幅Δθを有する半径L+ΔLのセクターとする。なお、GPS速度VGPSはドプラーシフトに基づいて検出されるためGPS位置に信頼性がなくても精度は高い。
【0019】
一方、ステップ203において、GPS測位が不可能の場合には、位置推定部41は自立航法センサー部14に1つ前の時刻における車両現在位置を入力すると共に車両位置の予測を依頼する。これにより、自立航法センサー部14の自立航法推定位置計算部14cは車両現在位置を推定して位置推定部41に入力する。位置推定部41は該車両位置を現在位置として出力すると共に(ステップ211)、走行履歴更新部43に履歴情報更新を指示する(ステップ212)。この指示により、走行履歴更新部43は図8のステップ105の処理と同様の処理で履歴情報を更新する。
ついで、位置推定部41は、自立航法センサー部14に次の時刻における車両位置と車両が位置する可能性のある範囲の予測を依頼する。該依頼により、自立航法推定位置計算部14cは車両現在位置および位置範囲を予測して位置推定部41に入力する。位置推定部41は入力された予測位置と予測位置範囲を保存し(ステップ213)、次の位置計算タイミングになったか監視する(ステップ214)。
次の位置計算タイミングになればGPS測位が可能であるかチェックし(ステップ215)、不能であればステップ211の処理を繰り返す。一方、GPS測位が可能となれば、図8の走行履歴情報保存処理の実行制御を行った後(ステップ216)、GPS受信機よりGPS位置を取得し(ステップ217)、該GPS位置がステップ213で取得してある予測位置範囲内に存在するかチェックする(ステップ218)。
【0020】
予測位置範囲内に存在していれば、GPS位置を現在位置として出力し(ステップ219)、予測位置範囲内に存在していなければステップ213で取得してある予測位置を現在位置として出力し(ステップ220)、始めに戻る。
以上本発明によれば、GPS受信状況が悪くなっても車両位置を正しく推定して表示することができる。また、GPS電波を受信できなくなったとき、自立航法センサーを用いて車両位置を正しく推定し表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の原理説明図である。
【図2】本発明の第2の原理説明図である。
【図3】本発明の第3の原理説明図である。
【図4】本発明のナビゲーション装置の構成図である。
【図5】車両位置推定部周辺の詳細図である。
【図6】自立航法による車両位置推定方法の説明図である。
【図7】走行履歴情報の説明図である。
【図8】走行履歴更新部による走行履歴更新処理フローである。
【図9】走行履歴更新説明図である。
【図10】本発明の車両位置推定の第1の処理フローである。
【図11】本発明の車両位置推定の第2の処理フローである。
【符号の説明】
【0022】
RD 道路
P0 車両現在位置
P1 位置測定時刻T1における車両予測位置
PRG1 位置測定時刻T1における予測位置範囲
PGPS GPS位置
P2 位置測定時刻T2における車両予測位置
PRG2 位置測定時刻T2における予測位置範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星より受信したGPS受信信号より算出される位置に基づいて車両位置を推定する車両位置推定装置において、
車両の進行方向履歴を保存する進行方向履歴保存部、
GPS衛星より受信した信号より得られる位置(GPS位置)と速度(GPS速度)と車両進行方向(GPS進行方向)とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し、GPS衛星より受信した信号より得られるGPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合には、前記予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と前記進行方向履歴保存部に保存されている車両進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する位置推定部、
を備えたことを特徴とする車両位置推定装置。
【請求項2】
所定時間毎に進行方向変化θGYROおよび走行距離を検出する自立航法センサー、
GPS位置に信頼があるか、ないかを判定するGPS位置信頼度判定部、
前記進行方向履歴保存部の進行方向履歴を更新する進行方向履歴更新部、
を備え、前記進行方向履歴更新部は、
GPS位置に信頼があれば、GPS受信信号より求まる最新の進行方向(GPS進行方向)を前記進行方向履歴保存部に保存すると共に一番古い進行方向履歴情報を除去し、かつ、残りの進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、
GPS位置に信頼がなければ、前記進行方向履歴保存部に保存されている全進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、
前記車両進行方向と共に前記GPS速度と前記自立航法センサーにより得られる車速の差ΔVを保存し、
前記位置推定部は、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合、前記進行方向履歴保存部に記憶されている進行方向のうち車速差ΔVが最小の進行方向θを用いて前記予測位置範囲及び予測位置を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両位置推定装置。
【請求項3】
前記GPS位置信頼度判定部は、
GPS受信信号による位置測定ができない、GPS衛星より受信した信号より得られる車速が1km/h以下になる、GPS進行方向の変化と自立航法センサーより得られる前記進行方向変化θGYROとの差が設定値以上になる、前記進行方向変化θGYROの変化が設定値以上になる、のいずれかが成立したとき、GPS位置に信頼がないと判定する、
ことを特徴とする請求項2記載の車両位置推定装置。
【請求項4】
前記自立航法センサーの出力信号を用いて次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する自立航法位置推定部を備え、
前記位置推定部は、GPS受信信号による位置測定ができなくなったとき、前記自立航法位置推定部で予測した自立航法予測位置を現在位置とみなし、GPS受信信号による位置測定が可能になったとき、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在しなければは、前記自立航法予測位置を現在位置とみなす、
ことを特徴と請求項1乃至3記載の車両位置推定装置。
【請求項5】
GPS衛星より受信したGPS受信信号より算出されるGPS位置に基づいて車両位置を推定する車両位置推定方法において、
車両の進行方向履歴を進行方向履歴保存部に保存する第1ステップ、
GPS衛星より受信した信号より得られる位置(GPS位置)と速度(GPS速度)と車両進行方向(GPS進行方向)とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する第2ステップ、
GPS衛星より受信した信号より得られるGPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなす第3ステップ、
GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合には、前記予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と前記進行方向履歴保存部に保存されている車両進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する第4ステップ、
を有することを特徴とする車両位置推定方法。
【請求項6】
所定時間毎に進行方向変化θGYROおよび走行距離を検出する自立航法センサーを設け、
GPS位置に信頼があるか、ないかを判定し、GPS位置に信頼があれば、GPS受信信号より求まる最新の進行方向(GPS進行方向)を前記進行方向履歴保存部に保存すると共に一番古い進行方向履歴情報を除去し、かつ、残りの進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、
GPS位置に信頼がなければ、前記進行方向履歴保存部に保存されている全進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、
前記車両進行方向と共に前記GPS速度と前記自立航法センサーにより得られる車速の差ΔVを保存し、
前記第4ステップにおいて、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合、前記進行方向履歴保存部に記憶されている進行方向のうち車速差ΔVが最小の進行方向θを用いて前記予測位置範囲及び予測位置を算出する、
ことを特徴とする請求項5記載の車両位置推定方法。
【請求項7】
GPS受信信号による位置測定ができない、GPS衛星より受信した信号より得られる車速が1km/h以下になる、GPS進行方向の変化と前記自立航法センサーにより得られる進行方向変化θGYROとの差が設定値以上になる、前記進行方向変化θGYROの変化が設定値以上になる、のいずれかが成立したとき、GPS位置に信頼がないと判定する、
ことを特徴とする請求項6記載の車両位置推定方法。
【請求項8】
前記自立航法センサーの出力信号を用いて次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲とを予測し、
GPS受信信号による位置測定ができなくなったとき、前記自立航法予測位置を現在位置とみなし、
GPS受信信号による位置測定が可能になったとき、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在しなければ前記自立航法予測位置を現在位置とみなす、
ことを特徴と請求項5乃至7記載の車両位置推定方法。
【請求項1】
GPS衛星より受信したGPS受信信号より算出される位置に基づいて車両位置を推定する車両位置推定装置において、
車両の進行方向履歴を保存する進行方向履歴保存部、
GPS衛星より受信した信号より得られる位置(GPS位置)と速度(GPS速度)と車両進行方向(GPS進行方向)とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測し、GPS衛星より受信した信号より得られるGPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合には、前記予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と前記進行方向履歴保存部に保存されている車両進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する位置推定部、
を備えたことを特徴とする車両位置推定装置。
【請求項2】
所定時間毎に進行方向変化θGYROおよび走行距離を検出する自立航法センサー、
GPS位置に信頼があるか、ないかを判定するGPS位置信頼度判定部、
前記進行方向履歴保存部の進行方向履歴を更新する進行方向履歴更新部、
を備え、前記進行方向履歴更新部は、
GPS位置に信頼があれば、GPS受信信号より求まる最新の進行方向(GPS進行方向)を前記進行方向履歴保存部に保存すると共に一番古い進行方向履歴情報を除去し、かつ、残りの進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、
GPS位置に信頼がなければ、前記進行方向履歴保存部に保存されている全進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、
前記車両進行方向と共に前記GPS速度と前記自立航法センサーにより得られる車速の差ΔVを保存し、
前記位置推定部は、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合、前記進行方向履歴保存部に記憶されている進行方向のうち車速差ΔVが最小の進行方向θを用いて前記予測位置範囲及び予測位置を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両位置推定装置。
【請求項3】
前記GPS位置信頼度判定部は、
GPS受信信号による位置測定ができない、GPS衛星より受信した信号より得られる車速が1km/h以下になる、GPS進行方向の変化と自立航法センサーより得られる前記進行方向変化θGYROとの差が設定値以上になる、前記進行方向変化θGYROの変化が設定値以上になる、のいずれかが成立したとき、GPS位置に信頼がないと判定する、
ことを特徴とする請求項2記載の車両位置推定装置。
【請求項4】
前記自立航法センサーの出力信号を用いて次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する自立航法位置推定部を備え、
前記位置推定部は、GPS受信信号による位置測定ができなくなったとき、前記自立航法位置推定部で予測した自立航法予測位置を現在位置とみなし、GPS受信信号による位置測定が可能になったとき、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在しなければは、前記自立航法予測位置を現在位置とみなす、
ことを特徴と請求項1乃至3記載の車両位置推定装置。
【請求項5】
GPS衛星より受信したGPS受信信号より算出されるGPS位置に基づいて車両位置を推定する車両位置推定方法において、
車両の進行方向履歴を進行方向履歴保存部に保存する第1ステップ、
GPS衛星より受信した信号より得られる位置(GPS位置)と速度(GPS速度)と車両進行方向(GPS進行方向)とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する第2ステップ、
GPS衛星より受信した信号より得られるGPS位置が前記予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなす第3ステップ、
GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合には、前記予測位置を現在位置とみなすと共に、該現在位置とGPS速度と前記進行方向履歴保存部に保存されている車両進行方向とから次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲を予測する第4ステップ、
を有することを特徴とする車両位置推定方法。
【請求項6】
所定時間毎に進行方向変化θGYROおよび走行距離を検出する自立航法センサーを設け、
GPS位置に信頼があるか、ないかを判定し、GPS位置に信頼があれば、GPS受信信号より求まる最新の進行方向(GPS進行方向)を前記進行方向履歴保存部に保存すると共に一番古い進行方向履歴情報を除去し、かつ、残りの進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、
GPS位置に信頼がなければ、前記進行方向履歴保存部に保存されている全進行方向履歴情報に前記進行方向変化θGYROを加算して進行方向履歴情報を更新し、
前記車両進行方向と共に前記GPS速度と前記自立航法センサーにより得られる車速の差ΔVを保存し、
前記第4ステップにおいて、GPS位置が前記予測位置範囲内に存在しない場合、前記進行方向履歴保存部に記憶されている進行方向のうち車速差ΔVが最小の進行方向θを用いて前記予測位置範囲及び予測位置を算出する、
ことを特徴とする請求項5記載の車両位置推定方法。
【請求項7】
GPS受信信号による位置測定ができない、GPS衛星より受信した信号より得られる車速が1km/h以下になる、GPS進行方向の変化と前記自立航法センサーにより得られる進行方向変化θGYROとの差が設定値以上になる、前記進行方向変化θGYROの変化が設定値以上になる、のいずれかが成立したとき、GPS位置に信頼がないと判定する、
ことを特徴とする請求項6記載の車両位置推定方法。
【請求項8】
前記自立航法センサーの出力信号を用いて次の位置測定時刻における車両位置と車両が存在する可能性のある位置範囲とを予測し、
GPS受信信号による位置測定ができなくなったとき、前記自立航法予測位置を現在位置とみなし、
GPS受信信号による位置測定が可能になったとき、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在すれば該GPS位置を現在位置とみなし、GPS位置が前記自立航法予測位置範囲内に存在しなければ前記自立航法予測位置を現在位置とみなす、
ことを特徴と請求項5乃至7記載の車両位置推定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−155471(P2007−155471A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350320(P2005−350320)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】
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