説明

車両位置演算装置及び車両位置演算方法

【課題】低コスト化を実現できる車両位置演算装置を提供する。
【解決手段】複数車線道路のうち、一の車線を走行する自車両の位置を計測する自車両位置計測手段と、複数車線道路のうち、他の車線を走行する他車両を検出するセンサ11と、センサ11の検出信号に基づき、自車両に対する他車両の方位を演算する他車両方位演算手段と、一の車線と他の車線との間隔を特定する車線間隔特定手段と、自車両の位置、他車両の方位及び間隔に基づいて、他車両の位置を演算する他車両位置演算手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両位置演算装置及び車両位置演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の指向性受信装置により音を受信し、当該音の時間差に基づき音源位置を検出し、当該音の到達方位から音源位置を検出し、検出された各音源位置に基づいて、最終的な音源位置を検出する音源位置検出システムが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−144669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の音源位置検出システムは、センサにより正確に音源の位置を検出するために多数のセンサを用いており、コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、低コスト化を実現できる車両位置演算装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両の位置、他車両の方位及び車線の間隔に基づいて、道路リンク上における他車両の位置を演算することにより上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両の位置、他車両の方位及び車線の間隔に基づいて、他車両の位置を演算するため、他車両により発生する音の検出センサは、少なくとも音源の方位を検出できればよく、システムのコストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】発明の実施形態に係る車両位置演算装置を含む運転支援装置のブロック図である。
【図2】図1に示す運転支援装置の制御手順を示すフローチャートである。
【図3】実際の道路上における、自車両と他車両の走行状態を説明するための図である。
【図4】図1に示す運転支援装置において、ディスプレイに表示されない時の位置Bを示す道路上の図である。
【図5】図1に示す運転支援装置において、補正される前の位置Baと、補正された後の位置Bbを示す道路上の図である。
【図6】図1に示す運転支援装置において、ヒストグラムを用いて推定される位置B1〜B3示す、道路上の図である。
【図7】本例の車両位置演算装置を含む運転支援装置のブロック図である。
【図8】図7に示す運転支援装置において、カメラによる撮影の対象と道路の状態を示す図である。
【図9】本例の車両位置演算装置を含む運転支援装置のブロック図である。
【図10】発明の他の実施形態に係る運転支援装置のブロック図である。
【図11a】実際の道路上(直線上)における、自車両の走行状態の経緯と他車両の位置を説明するための図である。
【図11b】図11aの各時間における方向ベクトルを示す図である。
【図12】実際の道路上(曲線上)における、自車両の走行状態と他車両の位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
《第1実施形態》
本発明の車両位置演算装置を含む運転支援装置1を、例えば車両に搭載される場合を例として説明する。図1は、運転支援装置1のブロック図を示す。
【0011】
図1に示す運転支援装置1は、コントローラ10と、車両位置演算装置を備える自車両の外壁に取り付けられるセンサ11と、自車両の内部に備える地図データ12と、ディスプレイ13と、スピーカ14を有する。
【0012】
センサ11は、他車両を検出するセンサであって、例えば他車両により発生する音(例えば、走行中のタイヤと道路との接地面で生じる音)を検出し、後述する他車両方位演算部101と合わせて、自車両に対する他車両の方位を推定するために使用される。地図データ12は、道路上の特定地点を表すノード、特定地点間の接続を示す道路リンク、家屋の位置、等高線等の情報を含むデータであって、カーナビゲーションシステムに用いられている地図データを示す。なお地図データ12は、HDD(Hard Disk Drive)、DVD(Digital Versatile Disk)又はフラッシュメモリ等の記録媒体に記録され、当該記録媒体は、車両内に取り付けられる。なお、当該記録媒体は、コントローラ10の一部として備えてもよい。
【0013】
コントローラ10は、センサ11からの検出信号に基づいて、他車両の方位を演算する他車両方位演算部101と、地図データ12に含まれる情報を用いてGPS(Global Position System)により自車両の位置を測定する自車両位置計測部102と、自車両が走行する車線と当該車線の隣の車線との間隔を特定する車線間隔特定部106と、他車両方位演算部101、車線間隔特定部106及び自車両位置計測部102からの制御信号に基づき他車両の位置を演算する他車両位置演算部103と、地図データに含まれる情報、自車両位置計測部102からの信号に含まれる自車両の位置情報及び他車両位置演算部103からの信号に含まれる他車両の位置情報をディスプレイ13に表示するための制御を行う制御部104を有する。なお、制御部104は、スピーカ14から出力される音も制御する。
【0014】
他車両方位演算部101は、例えば接近する他車両により発生する音の特有の周波数分布を予め保持しており、当該周波数分布とセンサ11により受信させる信号の周波数分布とを比較し、整合性を確認することにより、他車両から発生される音を検出する。または、他車両方位演算部101は、例えば複数のマイクロホンを備えるセンサ11からの信号から、それぞれのマイクロホンに入力される音信号の位相差、時間差、音圧レベル等から、他車両の方位を推定する。ここで、本例の車両演算装置1は、必ずしも接近する他車両の位置を正確に把握する必要はない。また他車両方位演算部101により演算される他車両の方位は、必ずしも正確な方向を特定するはなく、ある程度、方位に幅を持たせて、自車両に対する方位を演算してもよい。そのため、センサ11は、必ずしも検出精度を高めるために多くのセンサを設ける必要なく、センサの構成を複雑化させる必要もない。また他車両方位演算部101は、上記の通り、必ずしも接近する他車両の正確な位置を演算する必要はないため、演算負荷を必要以上に高めるアルゴリズムを用いなくもよい。なお、センサ101は、音を検出するセンサの代わりにカメラやレーダ等を用いて他車両を検出しもよく、検出結果に応じて他車両方位演算部101により、他車両の方位を演算すればよい。
【0015】
自車両位置計測部102は、GPSによる衛星を用いた測位等により、地図データに含まれる地図情報に対応する位置座標を計測する。
【0016】
車線間隔特定部106は、GPSによる衛星を用いた測位等により、地図データに含まれる地図情報に対応する位置座標を計測し、自車両が走行する車線と、隣の車線との間隔を測定し、特定する。また地図データ12に道路幅情報が含まれている場合、車線間隔特定部106は、当該道路幅情報から間隔を特定する。他車両位置演算部103及び制御部104については、後述する。
【0017】
次に、運転支援装置1の制御内容及び制御手順を、図2〜5を参照しつつ説明する。図2は、本例の運転支援装置1の制御手順を示すフローチャートである。図3は、実際の道路上における、自車両と他車両の走行状態を説明するための図である。
【0018】
ステップS1にて、他車両方位演算部101は、センサ11からの検出信号から、自車両に対する他車両の方位を推定する。推定の対象となる他車両の範囲は、例えば、音の強度や周波数分布により、設定される。他車両方位演算部101は、予め基準値となる音の強度及び周波数帯域を有し、検出音の強度及び周波数帯域を比較することにより、方位を推定する対象を絞ることができる。なお、当該方位は、自車両の進行方向に対して垂直な方向を基準(方位角0度)とする角度により示される。
【0019】
ステップS2にて、自車両位置計測部102は、地図データ12に含まれる地図データを用いて、GPSにより、自車両の位置を計測する(以下、自車両の位置を位置Aと称す)。自車両の位置Aは、地図データ上の座標により示される。
【0020】
ステップS3にて、車線間隔特定部106は、地図データ12に含まれる道路幅の情報を用いて、車線の間隔を特定する(以下、車線の間隔を間隔Wと称す)。自車両位置計測部102により、自車両の位置Aは特定されているため、車線間隔特定部106は、位置Aを含む道路リンクの情報を、地図データ12から抽出し、道路幅のデータから、車線の間隔Wを特定する。ここで、間隔Wは自車両が走行する車線の中央から自車両の隣の車線の中央までの距離を示し、一般的な道路では3.5mから5.0m程度である。自車両が走行する車線の当該中央又は自車両の隣の車線の当該中央は、厳格に各車線の中央である必要はなく、ある程度の幅を持たせてもよい。
【0021】
なお、本例は、地図データ12に含まれる地図情報とGPSにより、間隔Wを特定するが、例えば予め使用国の一般的な道路幅または最も頻出する道路幅に関する情報を、コントローラ10のメモリ(図示しない)に格納し、車線間隔特定部106が当該情報を抽出して、間隔Wを特定してもよい。
【0022】
ステップS4にて、他車両位置演算部103は、他車両方位演算部101からの制御信号に含まれる他車両の方位情報、自車両位置計測部102からの制御信号に含まれる自車両の位置情報及び車線間隔特定部106からの制御信号に含まれる車線の間隔Wの情報を取得し、他車両の位置を演算する(以下、他車両の位置を位置Bと称す)。地図データ12には、地図上の仮想の道路を示すためのノードと道路リンクが含まれており、位置Aは当該地図上の座標により示され、他車両の方位は、地図上のベクトルにより示される。以下、図3を用いて、他車両位置演算部103による位置Bの演算方法を説明する。図3は実際の道路における状況を示し、位置Bを特定するための制御を説明する図である。
【0023】
図3を参照し、直線Cは、自車両200の位置Aから、他車両の方位に向けて引く直線である。直線Bは、車線A又は車線B(車線Aは自車両200が走行する車線を、車線Bは他車両が走行する車線を示す。)と平行な線であって、自車両200の位置Aから、間隔W分、他車両の車線側に平行移動される線である。自車両200は、車線Aの中央付近を走行するため、直線Bは、車線Bの中央に引かれる線となる。そして、ステップ1により、他車両の方位を推定がされているため、他車両位置演算部103は、直線Bと直線Cとの交点を、他車両の位置Bとする。
【0024】
位置Bは、自車両200の進行方向に対して垂直な方向に対して他車両の方位を示す方位角θにより演算される。ここで、方位角θは、自車両200の進行方向に対して垂直な方向と他車両の方位を示す方向ベクトルとの間の角である。自車両200から他車両までの直線距離(以下当該直線距離を距離Rと称す。)、すなわち位置Aから位置Bまでの距離Rは、R=W/cosθにより演算される。また、車線Bにおける、位置Aの投影位置から位置Bまでの距離(以下当該距離を距離Dと称す。)は、D=W・tanθにより演算される。
【0025】
これにより、他車両位置演算部103は、距離R及び距離Dを演算し、位置Bを演算し、他車両の位置、自車両200から他車両までの車間距離を特定する。
【0026】
そして、制御部104は、他車両の位置Bをディスプレイ104に表示すべきか否かを判定する。以下、本例の制御部104によって、ディスプレイ13に表示される態様又は表示されない態様を、図3〜5を参照しつつ説明する。図4は、ディスプレイ13に表示されない時の位置Bを示す道路上の図であり、図5は、後述する補正により補正された後の位置Bbと、補正される前の位置Baを示す道路上の図である。
【0027】
例えば、図4に示すように、位置Bが自車両200の前方の位置に特定された場合、言い換えると、位置Bに対応する他車両が自車両200を通り過ぎた場合、自車両200の運転手は、当該他車両を目視により確認することできるため、他車両の存在を運転手に報知する有用性は低い。かかる場合、制御部104は、位置Bをディスプレイ13に表示する必要はないと判断し、制御部104は、位置Bをディスプレイ13に表示させず、制御処理を終了する。
【0028】
一方、図3に示すように、自車両200の後方に対して、他車両が近い状態の時、言い換えると、自車両200の運転者に対して他車両の存在を報知した方がよい場合、制御部104は、地図データと位置Aに加えて、位置Bを道路リンク上に表示させて、ディスプレイ13に表示する。これにより、運転者は、ディスプレイ13を確認することにより、他車両の走行位置を確認することができる。
【0029】
また、制御部104は、図5に示すように、ディスプレイ13の表示対象となる範囲を、予め設定してもよい。制御部104は、例えば、他車両との車間距離100m以内を表示対象の範囲αに設定する。そして、制御部104は、上記演算により、距離Dが当該範囲αを超えている場合(例えば、他車両が、自車両200に対して200m遠方かつ後方を走行している場合)、他車両の位置Baを補正し、当該範囲αの下端部分である位置Bbの位置に、他車両の存在を表示させる。これにより、運転者は、遠方から自車両200に近づいている他車両の存在を認識することができる。
【0030】
上記のとおり、本例の車両演算装置は、自車両200の位置A、他車両の方位及び間隔Wに基づいて、他車両の位置Bを演算する。これによりセンサ11及び他車両方位演算部101が少なくとも他車両の方位を演算すれば、車両演算装置は、他車両の位置B及び自車両200から他車両までの距離を特定することができる。また、センサ11及び他車両方位演算部101が、必ずしも他車両の正確な位置を検出する必要はないため、センサ11に対して精度の高いセンサを必ずしも用いなくてもよく、車両演算装置のコストを抑えることができる。また、他車両方位演算部101は、他車両の位置を正確に計測するための複雑なアルゴリズムを必ずしも必要としないため、他車両方位演算部101に対する演算負荷を軽減させることができる。
【0031】
また本例の車両演算装置は、地図データ12に含まれている道路データを用いて、間隔Wを特定する。これにより、自車両200が様々な車幅又は隣接車線との間隔を有する道路を走行しても、本例は、他車両の位置及び距離を演算し、特定することができる。
【0032】
また本発明は、本例の運転支援装置1により演算される位置Bが、ディスプレイ13に表示されるため、運転者に対して、他車両が接近していることを注意喚起することができ、安全な運転環境を提供することができる。
【0033】
また本発明において、位置Bが車両の前方の位置で特定される場合、当該位置Bをディスプレイ13に表示させない。これにより、自車両200に接近する可能性が低く、運転者にとって有用性の低い、他車両の情報が、ディスプレイ13に表示されることを防ぐことができる。
【0034】
また本例の運転支援装置1は、位置Bが地図データ上の所定の範囲外にある場合、当該所定の範囲内の予め設定されている位置に、位置Bを表示させる。これにより、運転者は、所定の範囲外である、遠方から自車両200に近づいている他車両の存在を認識することができる。
【0035】
なお、本例は、接近する他車両の位置をディスプレイ13に表示するが、音を出力し、運転者に注意喚起をしてもよい。すなわち、運転支援装置1の制御部104は、他車両の位置Bと自車両200の位置Aとの距離またはそれぞれの車両の速度に応じて、スピーカ14からの出力音を制御する。運転者に注意喚起すべきと判定される場合、制御部104は、スピーカ14を制御し、警告音を発する。これにより、本例は、運転者に対して、他車両が近づいていることを、報知することができるため、より安全な運転環境を提供することができる。
【0036】
なお本例の他車両方位演算部101は、他車両の方位を一方向に推定するが、に短い単位時間(例えば0.1秒)内に複数の推定方向θa, θb, θcを得ることができるアルゴリズム(例えば文献 安藤他,“時空間勾配法に基づく3次元音源定位センサシステム”計測自動制御学会論文集 Vol.29 No.5を参照)を利用して音源方向を探索する技術により、複数の方位を推定してもよい。なお、θa, θb, θcは、自車両200の進行方向に対して垂直な方向を基準として、推定される方位の角度を示す。図6は、ヒストグラムを用いて推定される位置を示す、道路上の図である。
【0037】
上記のアルゴリズムを利用する場合、θの値を一意に決定せず、時間周波数領域において得られる総ての推定方向の統計を計算し、度数分布によりディスプレイ13に表示する方法が有効である。他車両方位演算部101には、センサ101の検出信号をサンプリングするサンプリング周期(0.01秒程度)が設定されており、この間の周波数毎の方位推定結果、または、サンプルペア毎の方位推定結果等を演算し、ここで得られた複数のθについて、方位毎のヒストグラム(度数分布)を計算し、ヒストグラムのビン毎の頻度値に応じて表示サイズを変更して表示する。図6を参照し、ヒストグラム分析によって3つのビンに頻度値が得られた場合の表示態様を示す。このとき、頻度値が得られたθa, θb, θcに対応する位置B1, 位置B2, 位置B3がディスプレイ13に表示され、それぞれ頻度値(度数分布)が半径r1, r2, r3の大きさに対応する。
【0038】
これにより、本例は、センサ11の検出信号に含まれる情報から他車両の複数の方位を推定し、かつ、推定される方位毎に対応する度数分布を演算し、度数分布と他車両の位置とを合わせて、ディスプレイ13に表示する。そのため、運転者がディスプレイ13を見た際、接近する他車両の存在に気付き、また表示の大きさから、接近する他車両の存在する位置を理解することができる。なお、ヒストグラムの頻度値に閾値を設け、表示される位置情報の数を絞ってもよい。また、頻度値をr1, r2, r3に直接対応させてもよく、また、正規化した値等(頻度値を単位時間に得られるθの個数で割った値)に対応させてもよい。
【0039】
なお、本例は、位置Bの座標位置又は距離を演算して、位置Bが、範囲α外にある場合、位置Bをディスプレイ13に表示させない、または位置Bを補正してディスプレイ13に表示させる制御を行うが、他車両の方位を推定する段階で、ディスプレイ13に表示させるか否かを判断してもよい。他車両の方位は、自車両200に対して他車両が前方を走行する、又は後方を走行することを示している。例えば自車両200対して後方の方位角θを正にとると、推定される方位角θが負の場合、他車両は前方を走行することになるため、コントローラ10は、方位角θが負の場合、位置Bの座標位置を演算することなく、制御処理を終了させ、当該位置Bをディスプレイ13に表示させない。これにより、本例は、演算時間の短縮、演算負荷の軽減を図ることができる。
【0040】
また本例は、間隔Wを地図データ12に含まれている情報から特定するが、図7に示すように、カメラ15を用いて、特定してもよい。図7は、本例の運転支援装置1のブロック図を示す。図8は、カメラによる撮影の対象と道路の状態を示す。
【0041】
図7に示す、車両位置演算装置を含む運転支援装置1は、コントローラ10からの信号に基づいて車両の外部を撮影するカメラ15を有する。カメラ15は、車両の後方に備え付けられ、所定のサンプリング周期により車両の後方を撮影する。車線間隔特定部106は、カメラ15により撮影される画像を解析し、車線のエッジ80を特定する。そして、車線間隔特定部106は、時刻t0における画像から車線のエッジ80間の距離dを測定し、時刻t1における画像から車線のエッジ80間の距離dを測定し、当該距離の平均をとり、平均値から間隔Wを特定する。なお、時刻t0から時刻t1の間の時間は、サンプリング周期に相当する。これにより、本例は、走行により車線の幅が変化しても、当該変化に追随して、間隔Wを特定することができる。
【0042】
なお本例は、間隔Wを地図データ12に含まれている情報から特定するが、図9に示すように、発信器16及び受信器17を用いて、特定してもよい。図9は、本例の運転支援装置1のブロック図を示す。図9に示す、車両位置演算装置を含む運転支援装置1は、コントローラ10からの発信信号に基づいて、例えば赤外線レーザ等の信号を発信する発信器と、発信信号の反射信号を受信する受信器を有する。発信器16から発信される信号は、所定のサンプリング周期により、車両前方又は側方の道路に対して発信される。車線間隔特定部106は、道路に反射した受信信号の位相差等により、車線の幅を測定し、間隔Wを特定する。また、当該発信信号は、所定のサンプリング周期の間隔で送受信されるため、本例は、走行の途中で車線の幅が変化しても、当該変化に追随して、間隔Wを特定することができる。
【0043】
なお、本例のディスプレイ13は「表示部」に相当し、自車両位置計測部102は「自車両位置計測手段」に、他車両方位演算部101は「他車両方位演算手段」、他車両位置演算部103は「他車両位置演算手段」に、制御部104は「表示部制御手段」に、車線間隔特定部106が「車線間隔特定手段」に、カメラ15が「撮像手段」に、発信器16が「発信手段」に、受信器17が「受信手段」に相当する。
【0044】
《第2実施形態》
図10は発明の他の実施形態に係る運転支援装置1のブロック図である。本例は上述した第1実施形態に対して、ステアリング18、操舵角検出部107及び方位補正部108を有する点が異なる。これ以外の構成で上述した第1実施形態と同じ構成は、その記載を適宜、援用する。
【0045】
図10に示す運転支援装置1は、ステアリング18と、前記ステアリング18の操舵角を検出する操舵角検出部107と、後述するように他車両の方位を補正する方位補正部108を有する。
【0046】
操舵角検出部108は、ステアリング18に備え付けられる例えば加速度センサ、磁気センサ、ジャイロセンサ等の各種センサから、CAN(Controller Area Network)信号通じて、自車両の基準方向に対する向きを、逐次、検出する。これにより、車両の基準方向である自車両の進行方向に対する、ステアリング角の角度が検出される。方位補正部108は、他車両方位演算部101により演算される他車両の方位角を、検出したステアリング角に基づき補正して、補正された方位角を、他車両位置演算部103へ送信する。
【0047】
次に、図11を用いて、方位補正部108及び他車両位置演算部103による制御内容を説明する。図11aは、実際の道路における状況を示し、位置Bを特定するための制御を説明する図である。図11(b)は、時間t、t及びtにおける自車両の方向ベクトルと、後述する補正角τを、示す図である。
【0048】
方位補正部108は、所定のサンプリング周期で、自車両のステアリング角を検出し、図11(a)参照し、時間t、t及びtにおける自車両の向きを検出する。ベクトルd、d及びdは、各時間t、t及びtにおける方向ベクトルを示す。方向ベクトルd、d及びdの方向は、車両の向きを示し、自車両のステアリング角に対応する。また、方向ベクトルd、d及びdの大きさは、車速を示し、車両の走行速度から算出される。
【0049】
次に、方位補正部108は、方向ベクトルd、d及びdから補正角τを演算する。図11(b)に示すように、まず方位補正部108は、方向ベクトルd及びdを加算することで、道路の方向ベクトルdvを決定する。つぎに、方位補正部108は、現在の車両の向きである方向ベクトルdとdvとの間の角を補正角τを演算する。このように、道路の方向ベクトルdvは、過去のステアリング角の平均をとることにより演算され、補正角τは、当該道路の方向ベクトルに対する、自車両の方向ベクトルの角度になる
図11(a)に示すように、時刻tにおける、自車両200の向きは、ベクトルd0の方向を向いており、道路の方向ベクトルdvと異なる。そのため、方位角θの基準となる軸z(自車両の進行方向に対して垂直な方向の軸)と車線の間隔wとが一致していない。そこで、方位角θの基準となる軸zと車線の間隔wとは、補正角τの角度分、ずれているため、他車両の位置B及び他車両までの距離Rは、方位角θに補正角τを加えた角度に基づいて、算出される。
【0050】
すなわち、方位補正部108は、他車両方位演算部101により演算される方位角θに補正角τを加算して、他車両位置演算部103に送信する。他車両位置演算部103は、位置Aから位置Bまでの距離RをR=W/cos(θ+τ)により演算し、位置Aの投影位置から位置Bまでの距離Dは、D=W・tan(θ+τ)により演算する。これにより、補正後の他車両の方位に基づいて、他車両の位置Bまたは他車両までの距離が、演算される。
【0051】
また、自車両200が、カーブを走行する場合であっても、図12に示すように、上記と同様に、本例の運転支援装置1は、他車両の位置B等を演算し、特定することができる、図12は、自車両200がカーブを走行している途中における、補正角τ、方位角θ、補正された角(θ+τ)及び位置Bを説明するための図である。
【0052】
なお、本例は操舵角検出部107により検出される操舵角に基づいて、道路のカーブの曲率半径を算出し、算出結果を上記の方位角の補正に用いてもよい。
【0053】
上記のように、本例は、操舵角検出部107によりステアリング18の操舵角を検出し、方位補正部108により他車両の方位θを補正し、補正された方位角(θ+τ)に基づいて、他車両位置演算部103により、他車両の位置Bを演算する。これにより、自車両200の走行方向が、車線の向きに対してずれている場合であっても、他車両の位置又は他車両までの距離を特定することができる。また自車両の一時的な傾きによって生じる、他車両の方位角のずれを補正することによって、他車両の方位の推定の精度、他車両までの距離を演算する精度を高めることができる。
【0054】
なお本例の操舵角検出部107が「操舵角検出手段」に相当し、方位補正部108が「方位補正手段」に相当する。
【符号の説明】
【0055】
1…運転支援装置
10…コントローラ
11…センサ
12…地図データ
13…ディスプレイ
14…スピーカ
15…カメラ
16…発信部
17…受信部
18…ステアリング
80…エッジ
101…他車両方位演算部
102…自車両位置計測部
103…他車両位置演算部
104…制御部
106…車線間隔特定部
107…操舵角検出部
108…方位補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数車線道路のうち、一の車線を走行する自車両の位置を計測する自車両位置計測手段と、
前記複数車線道路のうち、他の車線を走行する他車両を検出するセンサと、
前記センサの検出信号に基づき、前記自車両に対する前記他車両の方位を演算する他車両方位演算手段と、
前記一の車線と前記他の車線との間隔を特定する車線間隔特定手段と、
前記自車両の位置、前記他車両の方位及び前記間隔に基づいて、前記他車両の位置を演算する他車両位置演算手段を有することを特徴とする
車両位置演算装置。
【請求項2】
前記他車両位置演算手段は、
前記他の車線上、かつ、前記自車両の進行方向と平行な直線と、前記自車両の位置から前記方位に向けて引く直線との交点を、前記他車両の位置とすることを特徴とする
請求項1記載の車両位置演算装置。
【請求項3】
前記複数車線道路の画像を撮像する撮像手段をさらに有し、
前記車線間隔特定手段は、前記画像を解析して、前記間隔を特定することを特徴とする
請求項1又は2に記載の車両位置演算装置。
【請求項4】
前記複数車線道路に対して信号を発する発信手段と、
前記複数車線道路から反射する反射信号を受信する受信手段とをさらに有し、
前記車線間隔特定手段は、前記反射信号に基づいて、前記間隔を特定することを特徴とする
請求項1又は2に記載の車両位置演算装置。
【請求項5】
道路上の特定地点を表すノード及び特定地点間の接続を表す道路リンクを含む地図データをさらに有し、
前記車線間隔特定手段は、前記地図データに含まれる道路の情報から前記間隔を特定することを特徴とする
請求項1又は2に記載の車両位置演算装置。
【請求項6】
ステアリングの操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記操舵角に基づいて、前記他車両の方位を補正する方位補正手段とをさらに有し、
前記他車両位置演算手段は、前記方位補正手段により補正される前記他車両の方位に基づいて、前記他車両の位置を演算することを特徴とする
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両位置演算装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両位置演算装置を含む運転支援装置において、
道路上の特定地点を表すノード及び特定地点間の接続を表す道路リンクを含む地図データを表示する表示部と、
前記他車両位置演算手段の演算結果に応じて、前記表示部を制御する表示部制御手段を有し、
前記表示部制御手段は、前記他車両の位置を前記表示部に表示させる
ことを特徴とする
運転支援装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両位置演算装置を含む運転支援装置において、
道路上の特定地点を表すノード及び特定地点間の接続を表す道路リンクを含む地図データを表示する表示部と、
前記他車両位置演算手段の演算結果に応じて、前記表示部を制御する表示部制御手段を有し、
前記表示制御手段は、前記他車両の位置が前記地図データ上の所定の範囲外にある場合、前記所定の範囲内の予め設定されている位置に、前記他車両の位置を表示させることを特徴とする
運転支援装置。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両位置演算装置を含む車両において、
前記地図データを表示する表示部と、
前記他車両位置演算手段の演算結果に応じて、前記表示部を制御する表示部制御手段とを有し、
前記他車両方位演算手段は、
前記検出信号に含まれる情報から前記他車両の複数の方位を推定し、かつ、推定される方位毎に対応する度数分布を演算し、
前記表示部制御手段は、
前記度数分布と前記他車両の位置とを合わせて、前記表示部に表示することを特徴とする
車両。
【請求項10】
複数車線道路のうち、一の車線を走行する自車両の位置を計測するステップと、
前記複数車線道路のうち、他の車線を走行する他車両をセンサにより検出するステップと、
前記センサの検出信号に基づき、前記自車両に対する前記他車両の方位を演算するステップと、
前記一の車線と前記他の車線との間隔を特定するステップと、
前記自車両の位置、前記他車両の方位及び前記間隔に基づいて、前記他車両の位置を演算するステップを有する
車両位置演算方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−34435(P2011−34435A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181612(P2009−181612)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】