説明

車両制御装置とブレーキ電子制御装置と電動パワーステアリング装置

【課題】車両が搭載するバッテリの消耗を低減した車両制御装置等を実現することを目的とする。
【解決手段】車両に搭載されたバッテリ800を用いて車両を電気的に制御する車両制御装置100において、検知した車両状態に基づき車両の制御の迅速性が必要ではないと判断される場合に、バッテリ800の電流消費を低減するように、制御の通電量を抑制する車両制御装置100とする。好ましくはホイールシリンダを増圧する増圧弁を通電制御して要求制動力に対応する液圧を供給するブレーキ電子制御装置においては、検知した車両の状態に基づき要求制動の迅速性が必要ではないと判断される場合に、増圧弁への通電量を抑制するブレーキ電子制御装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたバッテリの消耗を抑制する車両制御装置とブレーキ電子制御装置と電動パワーステアリング装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
電子制御ブレーキ(ECB)システムは、車両運転者の制動要求に応じて油圧目標を計算し、油圧サーボを実行する。このような車両運転者の制動要求への対応油圧制御は、中高速走行のような通常走行時には迅速に実行されることが望まれる。一方、ブレーキフィーリングに影響の少ない低速走行時や停車時等の車両状態においても、常に迅速な制御追従性とすると制御に伴う消費電流が増大する。
【0003】
車両制御に伴う消費電流を低減する方法として、例えば下記特許文献1には、通常モードとは異なる省エネルギーモードを設け、省エネルギーモード時においては、車両の動力性能よりも燃費向上や消費電流低減を優先させた運転モードとすることを、運転者の指示入力により一括して設定できる制御手段が提案されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、車両が所定の状態にある場合には、制限手段によって目標制動制御量を所定の制限値に制限することで、制動制御に伴い消費される電源の電気エネルギー量を低減し、省エネルギーな制御装置とする事が提案されている。
【特許文献1】特開2006−151039号公報
【特許文献2】特開2000−177555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の車両制御装置においては、運転者の細かなブレーキペダル操作等により、電磁弁やモータ等が頻繁に作動することも生じ得ることから、さらに省エネルギーな車両制御装置を提案する余地があった。
【0006】
本発明は、上述の問題点に鑑み為されたものであって、車両が搭載するバッテリの消耗を低減した車両制御装置等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる車両制御装置は、車両に搭載されたバッテリを用いて車両を電気的に制御する車両制御装置において、検知した車両状態に基づき車両の制御の迅速性が必要ではないと判断される場合に、バッテリの電流消費を低減するように、制御の通電量を抑制する。
【0008】
また、この発明にかかるブレーキ電子制御装置は、ホイールシリンダを増圧する増圧弁を通電制御して要求制動力に対応する液圧を供給するブレーキ電子制御装置において、検知した車両の状態に基づき要求制動の迅速性が必要ではないと判断される場合に、増圧弁への通電量を抑制する。
【0009】
また、この発明にかかるブレーキ電子制御装置は、好ましくは車両の運転者による制動指示部への要求制動力の入力速度が所定入力速度より小さい場合に、増圧弁への通電量を抑制するように、目標液圧と実液圧との最大差となる制御猶予値を増大させてもよい。
【0010】
また、この発明にかかるブレーキ電子制御装置は、さらに好ましくは車両の速度が所定速度より小さい場合に、増圧弁への通電量を抑制するように、目標液圧と実液圧との最大差となる制御猶予値を増大させてもよい。
【0011】
また、この発明にかかるブレーキ電子制御装置は、さらに好ましくは車両がパーキングブレーキを備え、車両のシフトレバーが駐車レンジであり、かつパーキングブレーキが作動中である場合に、要求制動力に対応する液圧の目標上限値を低減させてもよい。
【0012】
また、この発明にかかるブレーキ電子制御装置は、好ましくは検知した車両の状態に基づき要求制動力の迅速性が必要ではないと判断される場合に、増圧弁への通電量を抑制して実液圧の目標液圧への追従勾配を低減させてもよい。
【0013】
また、この発明にかかる車両制御装置は、好ましくは車両がバッテリの電流消費を抑制するエコモードへの移行指示が入力されるエコスイッチを備え、エコスイッチへ車両の運転者のエコモードへの移行指示が入力された場合に、ホイールシリンダを増圧するための液圧を生成するモータの駆動電流を低減してもよい。
【0014】
また、この発明にかかる車両制御装置は、好ましくはホイールシリンダを増圧するための液圧媒体を昇圧する電動モータと、電動モータにより昇圧された液圧媒体を蓄えるアキュムレータとを備え、アキュムレータの温度が所定温度より高い場合に、電動モータの駆動電流を低減させてもよい。
【0015】
また、この発明にかかるブレーキ電子制御装置は、さらに好ましくはパーキングブレーキ制御部を備え、車両が平坦路にあり、シフトレバーが駐車レンジであり、制動要求中である場合に、パーキングブレーキ制御部は、パーキングブレーキのモータ駆動電流を低減してもよい。
【0016】
また、この発明にかかる電動パワーステアリング装置は、車両に搭載されたバッテリを用いてステアリング操舵を電気的にアシスト制御する電動パワーステアリング装置において、検知した操舵状態に基づきステアリング操舵に対する電気的なアシスト制御の必要度が低いか否かを判断する操舵アシスト制御必要度判断部を備え、操舵アシスト制御必要度判断部が電気的なアシスト制御の必要度が低いと判断した場合に、バッテリの電流消費を低減するように、ステアリング操舵の電気的なアシスト制御を抑制してもよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明により、バッテリの消耗を抑制する車両制御装置等とできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施形態で説明する車両制御装置は、過敏にブレーキ応答制御をする必要がない車両状況を、ブレーキペダルの踏み込み速度等により判断する。そして、過敏にブレーキ応答制御をする必要がない場合には、ブレーキ液圧の目標制御値と、増圧動作を開始する実液圧と、の差に相当する制御猶予値(制御不感帯ともいう)を増大させる。
【0019】
また、過敏にブレーキ応答制御をする必要がない場合には、通電量により開度調整されるブレーキ液圧の増圧制御弁の電流値を制限し、昇圧勾配(Gain)を低減させて緩やかに目標液圧まで昇圧させる。また、例えば車両が停止している場合や車速が小さい場合(典型的には5km/h以下)など一定の条件下においては、ブレーキ液圧の目標制御値を低減させる。車両制御装置は、これらのいずれか又は任意に組み合わせた制御を実行することで、ブレーキ液圧媒体の消費を抑制し、また液圧を生成するモータ駆動電流の消費量を低減させる。従って、車両制御装置は、車両が搭載するバッテリ(蓄電池)の消耗を抑制することが可能となる。
【0020】
また、実施形態の車両制御装置は、アキュムレータの温度が高い場合には低い場合に比較して、アキュムレータに蓄積するブレーキ液圧の圧力値を低減させる。これにより、アキュムレータの温度に拘わらず、アキュムレータ内の区間油量を例えば一定とし、温度が高い場合に必要量以上のブレーキ液圧媒体が昇圧されることを抑制する。必要量以上のブレーキ液圧媒体を昇圧する動作を抑制できるので、車両制御装置は、昇圧の為のモータ駆動を減らすことができる。従って、モータ駆動電流の消費量を低減して省エネルギーな動作とできる。そこで、以下図面に基づいて、第一の実施形態の車両制御装置について説明する。
【0021】
(第一の実施形態)
図1は、第一の実施形態にかかる車両制御装置100の構成概要を示す概念ブロック図である。図1に示すように、車両制御装置100は、車両の種々の制御を行うものであって、典型的にはブレーキ操作に関する制御を行う液圧ブレーキユニット20を備える。
【0022】
液圧ブレーキユニット20は、ブレーキECU(以下、適宜ブレーキ電子制御部という)70の他に車両の運転者から制動力の指示が入力されるブレーキペダル24と、ブレーキ液圧媒体を昇圧するモータ36aと、昇圧されたブレーキ液圧媒体を蓄積するアキュムレータ35等を備える。
【0023】
また、ブレーキ電子制御部70は、車両の運転者がブレーキペダル24を踏み込む際のペダル踏み込み速度を検出する踏み込み速度演算部750を備える。一般に、車両運転者がブレーキペダル24を早く踏み込む場合には、車両に急制動が要求される場合と考えられる。すなわち、踏み込み速度演算部750が演算する踏み込み速度により、車両の急制動の要求度合いが判断できる。
【0024】
踏み込み速度演算部750で演算された踏み込み速度は、制御猶予値判断部720に入力される。制御猶予値判断部720は、例えばブレーキペダル24の踏み込み深さに対応したブレーキ液圧の制御目標値と、現実に検出された実液圧との差異であってブレーキ液圧の増圧動作が開始される圧力と、の差異に相当する制御猶予値を決定する制御猶予値判断部720に入力される。
【0025】
ここで、ホイールシリンダのブレーキ液圧の増圧動作は、制御目標液圧と実液圧との差が、所定の制御猶予値となった場合に開始される。所定の制御猶予値があることにより、過剰に頻繁な増圧動作が行われることを低減している。制御猶予値が大きければ増圧動作があまり行われずにホイールシリンダのブレーキ液圧の増圧動作は遅れ気味となる。例えば、車両の運転者によりブレーキペダル24を頻繁に軽く踏み込まれたような場合(典型的には渋滞時でいわゆるのろのろ運転時)に、過剰な頻度での増圧動作やモータ駆動動作等を抑制できる。
【0026】
一方、制御猶予値が小さければ(典型的にはゼロであれば)、目標液圧と実液圧とのわずかな差により増圧動作が頻繁に行われて、ホイールシリンダのブレーキ液圧はほぼ常に制御目標液圧に追随することとなる。反面、頻繁な増圧動作に伴う増圧弁の制御が行われるので、過剰に電流を消費することにつながる。また、過剰に液圧媒体を消費することにもなるので、新たにブレーキ液圧媒体を昇圧するためのモータ36a駆動電流を過剰に必要とすることともなる。
【0027】
制御猶予値判断部720は、予めブレーキペダル24の踏み込み速度に関連して対応付けされた制御猶予値を記憶する制御猶予値記憶部760を備える。制御猶予値判断部720は、踏み込み速度演算部750が演算した踏み込み速度に対応する制御猶予値を、制御猶予値記憶部760から読み出し、読み出した制御猶予値でホイールシリンダが増圧制御動作されるように、ホイールシリンダ増圧弁電流値調整部740に指示する。
【0028】
また、制御猶予値判断部720には、車両に備えられたエコスイッチ770から、エコモードへのモード切替え入力の有無が入力される。エコスイッチ770からエコモードへのモード切替え指示入力が車両の運転者からあった場合に、制御猶予値判断部720は、ブレーキペダル24の踏み込み速度が急制動を要求する程度に大きな速度で踏み込まれない限り、原則として制御猶予値を増大させることとしてもよい。
【0029】
また、制御猶予値判断部720は、制御猶予値記憶部760を備えずまたは制御猶予値記憶部760と共に、踏み込み速度演算部750から入力されるブレーキペダル24の踏み込み速度情報等に基づき、所定の演算式によって制御猶予値の演算をすることとしてもよい。
【0030】
ブレーキ電子制御部70は、モータ36aを駆動する電流値を調整制御するモータ駆動電流調整部810を備える。また、ブレーキ電子制御部70は、アキュムレータ35に蓄積するブレーキ液圧媒体の圧力をどこまで昇圧させるのかを算出する昇圧値演算部820を備える。モータ駆動電流調整部810は、エコスイッチ770と昇圧値演算部820とからの入力に基づき、モータ36aの駆動電流を調整する。
【0031】
例えば、モータ駆動電流調整部810は、アキュムレータ35に蓄積される液圧媒体の圧力値が、昇圧値演算部820が演算した圧力値となるように、モータ36aを駆動する電流を調整制御する。また、モータ駆動電流調整部810は、エコスイッチ770にエコモードへの移行が指示入力された場合に、モータ36aの駆動電流を抑制し、昇圧勾配を緩やかにする制御をする。
【0032】
昇圧値演算部820には、アキュムレータ35の温度情報が入力される。昇圧値演算部820は、アキュムレータ35の温度に対応して関連付けられた昇圧値を予め記憶する記憶部850から、アキュムレータ35の温度に対応する昇圧値を読み出し、モータ駆動電流調整部810へ出力する。モータ駆動電流調整部810は、アキュムレータ35に蓄積する液圧媒体の液圧が、昇圧値演算部820から入力された昇圧値となるように、モータ36aのモータ駆動電流を制御する。
【0033】
ここで、記憶部850が予め記憶するアキュムレータ35の温度に対応して関連付けられた昇圧値は、アキュムレータ35の温度が高くなるとアキュムレータ35の温度が低い場合よりも圧力値が低減されものとする。アキュムレータ35の温度が高い場合には、容器が膨張するので単位区間に蓄積される液量が増大する。このため、アキュムレータ35の温度が高い場合には、アキュムレータ35に蓄積する液圧媒体の圧力を低減させることで、液圧を加圧処理するモータ36aの仕事負荷が過剰に増大しないものとする。
【0034】
区間油量の増大傾向は、アキュムレータ35等の装置に固有のものであり、一定の再現性が見込まれる。このため、車両作製時等に温度と昇圧圧力値との関係を予め計測して記憶部850に記憶させておくことで、車両走行時に、アキュムレータ35等の温度に対応して最適な昇圧圧力値を適宜読み出すこととできるので好ましい。
【0035】
また、ブレーキ電子制御部70は、ホイールシリンダを昇圧する目標油圧を演算するホイールシリンダ目標油圧演算部730を備える。ホイールシリンダ目標油圧演算部730で演算された昇圧の目標油圧は、ホイールシリンダ増圧弁電流値調整部740に入力される。また、ホイールシリンダ増圧弁電流値調整部740は、入力された目標油圧となるように、検知されたホイールシリンダの実液圧と目標油圧との差異が、制御猶予値を超えた場合に、常閉型電磁弁である増圧弁を通電制御してホイールシリンダを目標油圧とする。なお、ホイールシリンダ目標油圧演算部730で算出する目標油圧は、車両の状況等に応じて、時間経過と共に増大等適宜経時変化してもよい。
【0036】
ホイールシリンダ目標油圧演算部730は、車両の車速を検知する車速検知部780と、車両のシフトレバー790と、不図示の駐車ブレーキのワイヤを電動巻上げする電動パーキングブレーキ制御部710とからの入力情報等に基づき、ホイールシリンダに供給する液圧目標値を随時演算するものとする。なお、パーキングブレーキは、電動方式であってもメカニカル方式であってもよいものとする。
【0037】
ホイールシリンダ目標油圧演算部730は、例えば車速検知部780で車両がゼロであって停止状態であることを検知し、シフトレバー790が「P」レンジであり、かつ電動パーキングブレーキ制御部710から電動パーキングブレーキが作動中であることが入力された場合に、ホイールシリンダの目標油圧を低減させるものとする。なお、メカニカル方式のパーキングブレーキの場合には、パーキングブレーキ作動検知部からの検知情報に基づいて、ホイールシリンダの目標油圧を低減させるものとしてもよい。
【0038】
なお、液圧ブレーキユニット20は、車両に備えられたバッテリ800から供給される電流を用いて上述した増圧弁やモータ36a等を駆動するものとする。また、ブレーキ電子制御部70は、上述の構成の全てを備えなくてもよく、動作処理に支障のない範囲で任意に適宜選択して構成して駆動処理することとしてもよい。
【0039】
次に、図2を用いてブレーキ電子制御部70の省エネルギー動作の典型例について説明する。図2は、第一の実施形態にかかるブレーキ電子制御部70の省エネルギー動作を概念的に説明するフロー図である。図2は、第一の実施形態にかかる車両制御装置100の省エネルギー動作の一例を示すものであって、省エネルギー動作処理はこれに限られるものではない。以下、各ステップごとに順次説明する。
【0040】
(ステップS21)
ブレーキ電子制御部70は、エコスイッチ770に車両の運転者によるエコモードへの移行指示があるか否かを判断する。エコスイッチ770にエコモードへの移行指示がある場合には、ステップS22へと進む。エコスイッチ770にエコモードへの移行指示がない場合には、ステップS21で待機する。
【0041】
(ステップS22)
ブレーキ電子制御部70は、車両の制動要求があるか否かを判断する。車両の制動要求がある場合には、ステップS23へと進む。車両の制動要求がない場合には、ステップS21へと戻る。
【0042】
車両の制動要求は、典型的には車両の運転者によるブレーキペダル24の踏み込みによる制動要求である。しかし、いわゆるオートクルーズコントロール(Auto Cruise Control:ACC)や車両安定性制御装置(Vehicle Stability Control:VSC)等による種々の自動制動制御において実行される液圧制御による制動動作指示であってもよい。
【0043】
(ステップS23)
ブレーキ電子制御部70は、車速検知部780で検知した車速が所定の速度閾値よりも小さいか否かを判断する。このため、ブレーキ電子制御部70は、不図示の速度閾値記憶部と不図示の速度比較部とを備えてもよい。車速検知部780で検知した車速が所定の速度閾値よりも小さければ、ステップS24へと進む。また、車速検知部780で検知した車速が所定の速度閾値よりも小さくなければ、ステップS21へと戻る。
【0044】
(ステップS24)
ブレーキ電子制御部70は、電動パーキングブレーキ制御部710からの入力情報により、不図示の電動パーキングブレーキが作動しているか否かを判断する。電動パーキングブレーキが作動している場合には、ステップS25へと進む。また電動パーキングブレーキが作動していない場合には、ステップS27へと進む。
【0045】
ここで、電動パーキングブレーキが作動している状態とは、いわゆる駐車ブレーキが利いている状態であるものとする。必ずしも、ワイヤ巻上げモータが電流駆動されてワイヤ巻上げ動作中であることに限られない。
【0046】
(ステップS25)
ブレーキ電子制御部70は、シフトレバー790が「P」レンジであるか否かを判断する。シフトレバー790が「P」レンジであれば、ステップS26へと進む。また、シフトレバー790が「P」レンジでなければ、ステップS21へと戻る。
【0047】
(ステップS26)
ホイールシリンダ目標油圧演算部730は、ホイールシリンダの目標油圧の上限値を低減化する処理をする。特に、ステップS24乃至ステップS25において、車両が停止状態であることが確認されるので、車両が停止状態にある場合は、ホイールシリンダに付与される制動力は比較的弱くてもよい。換言すれば、この場合には、中高速走行時からの急減速時の場合等ほどの強大な制動力は必要とはされない。このため、ブレーキ電子制御部70は、ホイールシリンダの目標油圧の上限値を低減化する処理をする。これにより、ホイールシリンダの増圧に必要な液圧媒体量、すなわち消費される液圧媒体量を低減する。消費される液圧媒体量が低減されれば、新たに昇圧が必要となる液圧媒体は、低減されることとなるので、モータ36aの消費電流の低減される。
【0048】
(ステップS27)
制御猶予値判断部720は、制御猶予値を増大させてホイールシリンダ増圧弁電流値調整部740に指示する。制御猶予値判断部720が制御猶予値を増大させれば、あまり細かな通電オンオフ制御とはならないので、全体としてホイールシリンダの増圧弁の電流駆動回数が低減される。これにより、増圧弁の細かな通電制御に伴う過剰な電流消費を抑制させることができる。
【0049】
なお、このステップS27の動作処理は、例えばステップS21でエコスイッチ770にエコモードへの移行指示が入力された場合に、実行することとしてもよい。この場合には、例えば所定の要求制動力閾値よりも大きな要求制動力が車両に対してあった場合(典型的にはブレーキペダル24が迅速かつ強く踏み込まれた場合)には、エコスイッチ770に拘わらずエコモードを例えば一時的に解除し、ブレーキ電子制御部70は迅速かつ強大な制動力を生じる液圧制御としてもよい。
【0050】
図3は、液圧ブレーキユニット20の概略を説明する液圧系統図である。以下、図3を用いて液圧ブレーキユニット20の構成について詳述する。図3においては、図1と同一の部位については同一の符号を付してその説明を簡略化するものとする。液圧ブレーキユニット20は、各車輪に対応して設けられたディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLと、マスタシリンダユニット27と、動力液圧源30と、液圧アクチュエータ40とを含む。
【0051】
ディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪、左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。マニュアル液圧源としてのマスタシリンダユニット27は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24の運転者による踏み込み操作量に応じて加圧されたブレーキフルード(液圧媒体)を、ディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。
【0052】
動力液圧源30は、動力の供給により加圧されたブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル24の操作から独立してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。
【0053】
また、液圧アクチュエータ40は、動力液圧源30またはマスタシリンダユニット27から供給されたブレーキフルードの液圧を適宜調整してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに送出する。
【0054】
次に、ディスクブレーキユニット21FR〜21RL、マスタシリンダユニット27、動力液圧源30、および液圧アクチュエータ40のそれぞれについて以下で更に詳しく説明する。各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22と、不図示のブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLとを含む。
【0055】
各ホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLは、それぞれ異なる流体通路を介して液圧アクチュエータ40に接続されている。なお以下では適宜、ホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLを総称して「ホイールシリンダ23」という。
【0056】
ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ23に液圧アクチュエータ40からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク22に、摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。
【0057】
これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニット21FR〜21RLを用いているが、例えばドラムブレーキ等のホイールシリンダ23を含む他の制動力付与機構を用いてもよい。
【0058】
マスタシリンダユニット27は、本実施形態では液圧ブースタ付きマスタシリンダであり、液圧ブースタ31、マスタシリンダ32、レギュレータ33、およびリザーバ34を具備する。また、液圧ブースタ31は、ブレーキペダル24に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ32に伝達する。
【0059】
動力液圧源30からレギュレータ33を介して液圧ブースタ31にブレーキフルードが供給されることにより、ペダル踏力は増幅される。そして、マスタシリンダ32は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
【0060】
マスタシリンダ32とレギュレータ33との上部には、ブレーキフルードを貯留するリザーバ34が配置されている。マスタシリンダ32は、ブレーキペダル24の踏み込みが解除されているときにリザーバ34と連通する。
【0061】
一方、レギュレータ33は、リザーバ34と動力液圧源30のアキュムレータ35との双方と連通しており、リザーバ34を低圧源とすると共に、アキュムレータ35を高圧源とし、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。レギュレータ33における液圧を以下では適宜、「レギュレータ圧」という。
【0062】
動力液圧源30は、アキュムレータ35とポンプ36とを具備する。アキュムレータ35は、ポンプ36により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギ、例えば14〜22MPa程度に変換して蓄えるものである。ポンプ36は、その駆動源として車両が備えるバッテリ800の電流により駆動されるモータ36aを有し、その吸込口がリザーバ34に接続される一方、その吐出口がアキュムレータ35に接続される。
【0063】
また、アキュムレータ35は、マスタシリンダユニット27に設けられたリリーフバルブ35aにも接続されている。アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ35aが開状態となり、高圧のブレーキフルードはリザーバ34へと戻される。
【0064】
上述のように、液圧ブレーキユニット20は、ホイールシリンダ23に対するブレーキフルードの供給源として、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35を有している。マスタシリンダ32にはマスタ配管37が、レギュレータ33にはレギュレータ配管38が、アキュムレータ35にはアキュムレータ配管39が接続されている。
【0065】
これらのマスタ配管37、レギュレータ配管38およびアキュムレータ配管39は、それぞれ液圧アクチュエータ40に接続される。すなわち、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35のそれぞれは、ホイールシリンダ23への液圧源として液圧アクチュエータ40に並列に接続されている。
【0066】
本実施形態における作動液供給系統としての液圧アクチュエータ40は、複数の流路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流路には、個別流路41、42、43および44と、主流路45とが含まれる。
【0067】
また、個別流路41〜44は、それぞれ主流路45から分岐されて、対応するディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RR、21RLのホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLに接続されている。これにより、各ホイールシリンダ23は、主流路45と独立して連通可能となる。
【0068】
また、個別流路41、42、43および44の中途には、各々ABS保持弁51、52、53および54が設けられている。各ABS保持弁51〜54は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁であるものとする。常閉型電磁制御弁である各ABS保持弁51〜54のON/OFF制御は、車両が備えるバッテリ800の電流を用いて駆動制御される。
【0069】
また、開状態とされた各ABS保持弁51〜54は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。典型的には、主流路45からホイールシリンダ23へとブレーキフルードを供給して液圧を供給することができる。
【0070】
また、逆にホイールシリンダ23から主流路45へもブレーキフルードを流すこともできる。ソレノイドに通電されて各ABS保持弁51〜54が閉弁されると、個別流路41〜44におけるブレーキフルードの流通は遮断され、典型的には液圧の供給が遮断される。
【0071】
更に、ホイールシリンダ23は、個別流路41〜44にそれぞれ接続された減圧用流路46、47、48および49を介してリザーバ流路55に接続されている。減圧用流路46、47、48および49の中途には、各々ABS減圧弁56、57、58および59が設けられている。
【0072】
また、各ABS減圧弁56〜59は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、ABS減圧弁56,57は、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。また、ABS減圧弁58,59は、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。各ABS減圧弁56〜59が閉状態であるときには、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
【0073】
また、ソレノイドに通電または非通電とされて各ABS減圧弁56〜59が開状態とされると、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードがホイールシリンダ23から減圧用流路46〜49およびリザーバ流路55を介してリザーバ34へと還流する。これにより、典型的にはホイールシリンダ23の液圧が増圧状態から低減されて減圧状態となる。なお、リザーバ流路55は、リザーバ配管77を介してマスタシリンダユニット27のリザーバ34に接続されている。
【0074】
主流路45は、中途に分離弁60を有する(なお、分離弁を連通弁とも称呼するが、実施形態においては分離弁とする)。この分離弁60により、主流路45は、個別流路41および42と接続される第1流路45aと、個別流路43および44と接続される第2流路45bとに区分けされている。
【0075】
第1流路45aは、個別流路41および42を介して前輪側のホイールシリンダ23FRおよび23FLに接続され、第2流路45bは、個別流路43および44を介して後輪側のホイールシリンダ23RRおよび23RLに接続される。
【0076】
分離弁60は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。分離弁60が閉状態であるときには、主流路45におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて分離弁60が開状態とされると、第1流路45aと第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
【0077】
また、液圧アクチュエータ40においては、主流路45に連通するマスタ流路61およびレギュレータ流路62が形成されている。より詳細には、マスタ流路61は、主流路45の第1流路45aに接続されており、レギュレータ流路62は、主流路45の第2流路45bに接続されている。また、マスタ流路61は、マスタシリンダ32と連通するマスタ配管37に接続される。レギュレータ流路62は、レギュレータ33と連通するレギュレータ配管38に接続される。
【0078】
マスタ流路61は、中途にマスタカット弁64を有する。マスタカット弁64は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。
【0079】
開状態とされたマスタカット弁64は、マスタシリンダ32と主流路45の第1流路45aとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてマスタカット弁64が閉弁されると、マスタ流路61におけるブレーキフルードの流通は遮断され、典型的にはマスタシリンダ32から第1流路45aの液圧供給が遮断される。
【0080】
また、マスタ流路61には、マスタカット弁64よりも上流側において、シミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69が接続されている。すなわち、シミュレータカット弁68は、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69とを接続する流路に設けられている。シミュレータカット弁68は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。
【0081】
また、シミュレータカット弁68が閉状態であるときには、マスタ流路61とストロークシミュレータ69との間のブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁68が開状態とされると、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
【0082】
また、ストロークシミュレータ69は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁68の開放時に運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ69としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、好ましくは多段のバネ特性を有するものが採用され、本実施形態のストロークシミュレータ69は多段のバネ特性を有するものとする。
【0083】
また、レギュレータ流路62は、中途にレギュレータカット弁65を有する。レギュレータカット弁65も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。
【0084】
開状態とされたレギュレータカット弁65は、レギュレータ33と主流路45の第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてレギュレータカット弁65が閉弁されると、レギュレータ流路62におけるブレーキフルードの流通は遮断され、典型的にはレギュレータ33から第2流路45bへの液圧供給が遮断される。
【0085】
液圧アクチュエータ40には、マスタ流路61およびレギュレータ流路62に加えて、アキュムレータ流路63も形成されている。アキュムレータ流路63の一端は、主流路45の第2流路45bに接続され、他端は、アキュムレータ35と連通するアキュムレータ配管39に接続される。
【0086】
アキュムレータ流路63は、中途に増圧リニア制御弁66を有する。また、アキュムレータ流路63および主流路45の第2流路45bは、減圧リニア制御弁67を介してリザーバ流路55に接続されている。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、それぞれのソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、車両が備えるバッテリ800の電流を用いて、弁の開き度合いが駆動制御される。
【0087】
増圧リニア制御弁66は、各車輪に対応して複数設けられた各ホイールシリンダ23に対して共通の増圧用制御弁として設けられている。すなわち、増圧リニア制御弁66の開き具合を電流調節により適宜制御することで、各ホイールシリンダ23を要求制動力に応じた目標制御圧にまで増圧できることとなる。また、減圧リニア制御弁67も同様に、各ホイールシリンダ23に対して共通の減圧用制御弁として設けられている。
【0088】
つまり、本実施形態においては、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、動力液圧源30から送出される作動流体を、各ホイールシリンダ23へ給排制御する1対の共通の制御弁として設けられている。例えば増圧リニア制御弁66を開とすれば、アキュムレータ35からの液圧を第2流路45bに供給することができ、減圧リニア制御弁67を開とすれば、第2流路45bのブレーキフルードを排出して液圧を低減することができる。
【0089】
なお、増圧リニア制御弁66の出入口間の差圧は、アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力と、主流路45におけるブレーキフルードの圧力と、の差圧に対応する。また、減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧は、主流路45におけるブレーキフルードの圧力と、リザーバ34におけるブレーキフルードの圧力と、の差圧に対応する。
【0090】
また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。
【0091】
従って、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧を制御することができる。
【0092】
液圧ブレーキユニット20において、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40は、本実施形態における制御部としてのブレーキ電子制御部(Electrical Control Unit:ブレーキ電子制御部)70により制御される。ブレーキ電子制御部70は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート等を備える。
【0093】
また、ブレーキ電子制御部70は、ハイブリッドECUなどと通信可能である。また、ブレーキ電子制御部70は、ハイブリッドECUからの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて動力液圧源30のポンプ36や、液圧アクチュエータ40を構成する電磁制御弁51〜54、56〜59、60、64〜68を制御して、液圧制動力を制御可能である。
【0094】
また、ブレーキ電子制御部70には、レギュレータ圧センサ71、アキュムレータ圧センサ72、および制御圧センサ73が接続される。レギュレータ圧センサ71は、レギュレータカット弁65の上流側でレギュレータ流路62内のブレーキフルードの圧力、すなわちレギュレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。
【0095】
また、アキュムレータ圧センサ72は、増圧リニア制御弁66の上流側でアキュムレータ流路63内のブレーキフルードの圧力、すなわちアキュムレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。
【0096】
また、制御圧センサ73は、主流路45の第1流路45a内のブレーキフルードの圧力を検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。また、分離弁60が開となって第1流路と第2流路とが連通している場合には、制御圧センサ73は主流路45内のブレーキフルードの圧力を検知する。各圧力センサ71〜73の検出値は、所定時間おきにブレーキ電子制御部70に順次与えられ、ブレーキ電子制御部70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
【0097】
従って、分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合、制御圧センサ73の出力値は、増圧リニア制御弁66の低圧側の液圧を示すと共に減圧リニア制御弁67の高圧側の液圧を示す。従って、制御圧センサ73のこの出力値を、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の制御に利用することができる。
【0098】
また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67が閉鎖されていると共に、マスタカット弁64が開状態とされている場合、制御圧センサ73の出力値は、マスタシリンダ圧を示す。更に、分離弁60が開放されて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通し、かつ各ABS保持弁51〜54が開放される一方、各ABS減圧弁56〜59が閉鎖されている場合には、制御圧センサの73の出力値は、各ホイールシリンダ23に作用する作動流体圧、すなわちホイールシリンダ圧を示す。
【0099】
例えば、車両の運転者または自動制動制御装置から制動力要求があった場合には、要求された制動力を生じる為に必要な目標液圧が算出され、制御圧センサ73の検出圧力が目標液圧となるように、バッテリ800からの電流により増圧リニア制御弁66の開度が調整される。目標液圧は、例えばブレーキペダル24の踏み込み深さ等車両状況に応じて、経過時間と共に随時増大され得る。制御圧センサ73と目標液圧との差圧が、制御猶予値を超えた場合に、増圧リニア制御弁66に通電されて開状態とされる。
【0100】
また、分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合にレギュレータカット弁65を開状態とすれば、制御圧センサ73の出力値は、通常はレギュレータ圧センサ71の出力値と等しくなる。
【0101】
典型的には、車両が停止状態にあるときに、ブレーキペダル24の踏力がホイールシリンダ23へ伝達されるように、増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とを共に閉状態とし、分離弁60が開状態とされて、かつレギュレータカット弁65が開状態とされる。また、ABS保持弁51〜54の各ソレノイドに通電されて、開弁状態とされる。
【0102】
さらに、ブレーキ電子制御部70に入力されるセンサ出力には、ブレーキペダル24に設けられたストロークセンサ25も含まれる。ストロークセンサ25は、ブレーキペダル24の操作量としてのペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。ストロークセンサ25の出力値も、所定時間おきにブレーキ電子制御部70に順次与えられ、ブレーキ電子制御部70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
【0103】
なお、ストロークセンサ25以外のブレーキ操作状態検出手段をストロークセンサ25に加えて、あるいは、ストロークセンサ25に代えて設け、検出値をブレーキ電子制御部70に接続してもよい。ブレーキ操作状態検出手段としては、例えば、ブレーキペダル24の操作力を検出するペダル踏力センサや、ブレーキペダル24が踏み込まれたことを検出するブレーキスイッチ、ペダル踏み込み速度検出センサなどがある。また、ブレーキ電子制御部70には、図示されない車輪速度センサ等も接続され、検知された信号が所定時間おきに与えられ、所定の記憶領域に格納保持される。
【0104】
ブレーキ操作入力手段は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24に限定されることはなく、例えば押圧ボタンによるブレーキ操作入力手段とすることもできる。押圧ボタンによるブレーキ操作入力手段とした場合においても、押圧ボタンのストローク検知に加え、押圧ボタンの押し込み速度や押圧力を検出する検出センサや、押圧ボタンが押し込まれたことを検出する押圧ボタンスイッチなどがある。
【0105】
液圧ブレーキユニット20は、走行中に急制動をかけた場合に、アキュムレータ配管39を介した油圧供給に、レギュレータ配管38を介した油圧供給も加えて制動するリニアレギュレータアシストモードをとる場合もある。なお、走行中からの通常の制動は、アキュムレータ配管39を介した油圧供給によるリニア制御モードとなる。リニア制御モードにおいては、各ホイールシリンダ23は、マスタシリンダユニット27から遮断される。すなわち、ブレーキ電子制御部70は、レギュレータカット弁65を閉状態とし、レギュレータ33から送出されるブレーキフルードが主流路45へ供給されないようにする。
【0106】
ブレーキ電子制御部70は、マスタカット弁64を閉状態とするとともにシミュレータカット弁68を開状態とする。これは、運転者によるブレーキペダル24の操作に伴ってマスタシリンダ32から送出されるブレーキフルードがストロークシミュレータ69へと供給されるようにするためである。またブレーキ電子制御部70は、分離弁60を開状態とする。
【0107】
リニア制御モードにおいては、ブレーキ電子制御部70は、要求制動力から回生制動力を減じることにより、液圧ブレーキユニット20により発生させるべき液圧制動力を算出する。ここで、回生制動力の値は、ハイブリッドECUからブレーキ電子制御部70に供給される。
【0108】
ブレーキ電子制御部70は、要求された制動力に基づいて各ホイールシリンダ23FR〜23RLの目標液圧を算出する。ブレーキ電子制御部70は、ホイールシリンダ23の液圧が目標液圧となるように、フィードバック制御により増圧リニア制御弁66及び減圧リニア制御弁67に対する供給電流の値を決定する。
【0109】
その結果、液圧ブレーキユニット20においては、動力液圧源30から増圧リニア制御弁66を介してブレーキフルードが各ホイールシリンダ23に供給されて車輪に所定目標の制動力が付与される。また、各ホイールシリンダ23からブレーキフルードが減圧リニア制御弁67を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が適宜調整される。このようにして、リニア制御モードにおいては、液圧制動と回生制動とを併用して、要求制動力を発生させるブレーキ回生協調制御が実行される。
【0110】
オートクルーズコントロールや車両安定性制御装置(VSC)による車両挙動安定化の種々の自動制動制御においても、上述したリニア制御モードと同様の油圧制御により制動動作が実行される。
【0111】
また、走行中Reg増モードにおいては、ブレーキ電子制御部70は、増圧リニア制御弁66への制御電流の供給を停止して増圧リニア制御弁66を閉状態とし、各ホイールシリンダ23から動力液圧源30を遮断する。更にブレーキ電子制御部70は、レギュレータカット弁65及びマスタカット弁64を開状態とするとともにシミュレータカット弁68を開状態とする。またブレーキ電子制御部70は、分離弁60を開状態とする。
【0112】
停止中Reg増モードにおいては、レギュレータカット弁65が開状態とされてもよい。この場合、停止中Reg増モードにおいては、レギュレータ圧がそのままホイールシリンダ23に伝達されるので、運転者によるブレーキペダル24の操作量に応じた液圧制動力を発生させることができる。
【0113】
ブレーキ電子制御部70は、これらのリニア制御モード、走行中Reg増モード、及び停止中Reg増モード等のいずれかを、車両の走行速度、あるいは回生制動力の値などの車両の状態、またはオペレータからの指示に応じて適宜選択してもよい。
【0114】
図4は、ブレーキ電子制御部70が算出した目標油圧と、制御圧センサ73で検出したホイールシリンダ23の現実の油圧値との関係を概念的に説明する図である。図4(a)は、例えばブレーキペダル24の踏み込みにより時間と共に増大する目標油圧に対し、実油圧が比較的小さな制御猶予値Saで細かく追随してキャッチアップしていく様子を説明する図である。
【0115】
図4(b)は、例えばブレーキペダル24の踏み込みにより時間と共に増大する目標油圧に対し、実油圧が比較的大きな制御猶予値Sbで追随してキャッチアップしていく様子を説明する図である。図4(b)に示す上限目標油圧Tbは、図4(a)に示す上限目標油圧Taよりも低減されている。上限目標油圧Taを上限目標油圧Tbへと低減することで、ブレーキフルードの消費液量が減少し、ひいては新たに昇圧が必要とされるブレーキフルードの量が低減するので、モータ36a駆動の消費電流を低減できる。
【0116】
また、図4(a)に示す実油圧が目標油圧に追随する場合の勾配Iaは、図4(b)においては比較的小さな勾配Ibへと低減されている。勾配Ibは、例えば増圧リニア制御弁66への通電量を、勾配Iaの場合よりも低減させることで為し得る。この場合の勾配Ibは、目標油圧の勾配よりは大きいことが、油圧追随の関係上好ましい。
【0117】
ブレーキ電子制御部70は、通常状態であれば図4(a)に示すような制御であるところを、例えば車両が停止状態や渋滞時等の低速走行状態である場合であって制御の緊急度が必要でない場合には図4(b)に示すような制御とする。
【0118】
これにより、増圧弁の制御頻度が低減されるので、弁制御等に伴うバッテリ800の電流消費量を低減して省エネルギーを実現できる。なお、ブレーキ電子制御部70は、図4(b)に示されているようにより小さな上限目標油圧Tbとする処理と、より小さな勾配Ibとする処理と、より小さな制御猶予値Sbとする処理と、の全てを実行してもよく、任意のいずれか一以上を選択または組み合わせて実行することとしてもよい。
【0119】
図5は、アキュムレータ35の温度が異なる場合の区間油量とアキュムレータ圧(ACC圧)との関係を示す図である。図5に示すように、低温時のアキュムレータ圧Pの区間油量V1Lは、高温時には区間油量V1Hへと増大する。これは、主として熱膨張によるアキュムレータ35の体積増大に起因すると考えられる。
【0120】
図5に示されるように、低温時に、アキュムレータ圧Pからアキュムレータ圧Pまでモータ36aを電流駆動して昇圧すると、区間油量ΔV相当液量がモータ36aにより汲み上げられる。一方、高温時(例えば50℃以上)に、アキュムレータ圧Pからアキュムレータ圧Pまでモータ36aを電流駆動して昇圧すると、区間油量ΔV相当液量がモータ36aにより汲み上げられることとなる。ただし、ΔV>ΔVである。
【0121】
液圧ブレーキユニット20で消費される液量は、温度に拘わらずほぼ一定と考えてよいことから、その差(ΔV−ΔV)に相当するブレーキフルードが過剰に汲み上げられていることとなる。そこで、ブレーキ電子制御部70は、高温時に、区間油量ΔVより小さな区間油量ΔV´に相当するアキュムレータ圧P´にまで、昇圧目標圧を低減化させる。なお、区間油量ΔV´は、区間油量ΔVと等しいことが、汲み上げる区間油量、すなわちモータ36aの吐出量が温度に拘わらず一定となるのでさらに好ましい。
【0122】
(第二の実施形態)
図6は、第二の実施形態にかかる電動パワーステアリング装置610を概念的に説明する図である。図6(a)は電動パワーステアリング装置610の構成概要を示し、図6(b)は、操舵角に対するアシスト量(A)を示す概念図である。
【0123】
図6(a)に示すように、電動パワーステアリング装置610は、ステアリング650の操舵角に応じて、操舵アシスト制御量がどの程度必要であるかを判断する操舵アシスト制御必要度判断部620を備える。また、電動パワーステアリング装置610は、操舵アシスト制御必要度判断部620の判断したアシスト量に対応するバッテリ800からの制御電流を調整して生成する操舵アシスト電流制御部630を備える。また、電動パワーステアリング装置610は、操舵アシスト電流制御部630から供給される制御電流に基づいてアシスト力を生起するアシスト力生成部640を備える。
【0124】
操舵アシスト制御必要度判断部620は、典型的には図6(b)に示すように操舵角が60°より大きい場合と操舵角が60°より小さい場合とで必要アシスト量を異ならせる。操舵アシスト制御必要度判断部620は、操舵角が60°より小さい場合には必要なアシスト量をA1とし、操舵角が60°より大きい場合には必要なアシスト量をA2とする。但し、A1>A2であるものとする。アシスト量A1とアシスト量A2との変更は、一定の緩衝時間または緩衝角度を設けて、急激に変更されることがないようにすれば、運転者のステアリングフィールに与える影響が少なくて済むので好ましい。
【0125】
これにより、操舵アシスト電流制御部630は、操舵角が60°より大きい場合には小さな制御電流を調整すればよいので、バッテリ800の電流消費を低減した制御とできる。なお、電動パワーステアリング装置610自体の動作及び詳細な構成は、既に広く知られているので、ここでは説明を省略する。
【0126】
(第三の実施形態)
図7は、第三の実施形態にかかる電動パーキングブレーキ制御部710の処理構成を概念的に説明する図である。図7では、図1と同一の部位には同一の符号を付して、その説明を簡略化する。
【0127】
図7において、電動パーキングブレーキ制御部710は、駐車時する場合に、いわゆる駐車ブレーキ(例えば後輪に備えられるドラムブレーキ)を利かせる為に電気的にワイヤを巻上げるEPB駆動モータ840に供給する電流を調整制御する。EPB駆動モータ840は、バッテリ800から供給される電流により駆動される。
【0128】
図7に示すように、電動パーキングブレーキ制御部710は、車両が備える重力センサ(Gセンサ)830と、シフトレバー790と、ブレーキペダル24及びバッテリ800からの検知情報が入力される。なお、メカニカル方式のパーキングブレーキの場合には、パーキングスイッチをみる。電動パーキングブレーキ制御部710は、例えば重力センサ830が平坦路であることを検知し、シフトレバー790がパーキングレンジ(Pレンジ)であり、ブレーキペダル24が踏み込まれてブレーキが利いている状態にある場合には、EPB駆動モータ840へ供給する電流の応答性を低減させる処理をする。
【0129】
すなわち、電動パーキングブレーキ制御部710は、EPB駆動モータ840へ供給する電流の駆動パルス数を下げる等により供給電流量を低減させる。これにより、省電力な電動パーキングブレーキの動作を実現できる。なお、電動パーキングブレーキ制御部710は、車両の運転者等によるEPBスイッチ860への押圧入力により、EPB駆動モータ840を動作させるものとする。
【0130】
図8は、電動パーキングブレーキ制御部710がEPB駆動モータ840へ供給する電流の駆動パルスを例示する概念図である。図8(a)は、上述の条件が満たされない場合に、電動パーキングブレーキ制御部710がEPB駆動モータ840へ供給する電流パルスである。また、図8(b)は、上述の条件が満たされた場合に、電動パーキングブレーキ制御部710がEPB駆動モータ840へ供給する電流パルスである。
【0131】
次に、図9を用いて電動パーキングブレーキ制御部710の制御動作について説明する。図9は、電動パーキングブレーキ制御部710の制御動作を概念的に説明するフロー図である。
【0132】
(ステップS81)
電動パーキングブレーキ制御部710は、バッテリ800の電圧が所定の閾値電圧より大きいか否かを判断する。バッテリ800の電圧が所定の閾値電圧より大きい場合には、ステップS82へと進む。また、バッテリ800の電圧が所定の閾値電圧より大きくない場合には、ステップS85へと進む。
【0133】
(ステップS82)
電動パーキングブレーキ制御部710は、重力センサ830の検知情報により車両が平坦路にあるか否かを判断する。車両が平坦路にある場合には、ステップS83へと進む。また、車両が平坦路にない場合には、ステップS81へと戻る。
【0134】
(ステップS83)
電動パーキングブレーキ制御部710は、シフトレバー790からの情報によりPレンジにあるか否かを判断する。シフトレバー790がPレンジにある場合には、ステップS84へと進む。また、シフトレバー790がPレンジにない場合には、ステップS81へと戻る。
【0135】
(ステップS84)
電動パーキングブレーキ制御部710は、ブレーキペダル24からの情報によりペダル踏み込みがされた状態であるか否かを判断する。ブレーキペダル24が踏み込まれた状態である場合には、ステップS85へと進む。また、ブレーキペダル24が踏み込まれた状態でない場合には、ステップS81へと戻る。
【0136】
なお、ペダル踏み込みがされた状態とは、例えばホイールシリンダ23が増圧されている状態であってもよく、制御圧センサ73の検出圧力値に基づいて、このステップS84での判断処理をしてもよい。
【0137】
(ステップS85)
電動パーキングブレーキ制御部710は、電動パーキングブレーキの応答性を低下させる。具体的には、電動パーキングブレーキ制御部710は、EPB駆動モータ840へ供給する電流パルスのパルス数を低減させる。これにより、EPB駆動モータ840はワイヤの巻上げ立ち上がり動作が緩和されて、モータの突入電流(過渡電流)を低減し、バッテリ800の消費電流を低減できる。
【0138】
(ステップS86)
電動パーキングブレーキ制御部710は、EPBスイッチ860が押圧されたか否かを判断する。EPBスイッチ860が押圧された場合には、ステップS87へと進む。また、EPBスイッチ860が押圧されない場合には、ステップS81へ戻る。
【0139】
(ステップS87)
電動パーキングブレーキ制御部710は、EPB駆動モータ840へパルス数を低減させた電流を供給して、いわゆる駐車ブレーキを作動させる。上述の条件が充足されているので、とりわけ迅速な駐車ブレーキ作動は必要とされないことから、電動パーキングブレーキ制御部710は、バッテリ800の消費電流を低減させる動作処理とする。
【0140】
なお、ステップS82乃至ステップS84に示す各判断事項は、ステップS85へ進む条件であるので、順不同であるものとする。また、ステップS82乃至ステップS84に示す各判断事項を全て満たさなくても、任意のいずれか一以上の判断条件を満たす場合にステップS85の処理をしてもよい。
【0141】
また、上述の説明においては、バッテリー電圧が閾値電圧より小さい場合には、ステップS85の処理をすることとしたが、例えばエコスイッチ770が押圧されエコモード状態にある場合に、ステップS85の処理をすることとしてもよい。
【0142】
また、図8で説明したパルス数の低減処理は、例えばエコスイッチ770が押圧されてエコモードである場合に、モータ36aの駆動に適用してもよい。これにより、モータの36aの突入電流が低減され、低消費電力とできるので、バッテリ800を効率的に利用できる。
【0143】
上述した各実施形態で例示した車両制御装置は、ある条件が充足される場合に、過剰な制御対応を抑制して低消費電力を実現するものである。このような条件は、典型的には制御反応の迅速性が必要か否かに関する条件となる。
【0144】
実施形態においては、このような条件を判断する場合に、車速が所定値より小さいか否か、ブレーキペダルの踏み込み速度が所定速度より小さいか否か、シフトがPレンジであるか否か、電動パーキングブレーキが作動状態であるか否か、車速(または車輪速)がゼロであるか否か、エコモード状態であるか否か、アキュムレータ内が高温であるか否か、操舵角が所定角より大きいか否か、平坦路であるか否か、ECB制動要求中であるか否か、バッテリ電圧が低下しているか否か等に基づいて判断することを説明した。
【0145】
また実施形態においては、上述した条件が充足された場合に省電力するために実行する処理として、制御猶予値の増大化、液圧の勾配(Gain)の低減化、目標油圧上限(油圧到達点(T))の低減化、モータ駆動電流パルス数の低減化、アキュムレータに蓄積される液圧媒体の圧力を低減化、電動パワーステアリングアシスト量の低減化、電動パーキングブレーキのモータ駆動電流パルス数の低減化の各処理について説明した。
【0146】
これらの条件の組み合わせと、その条件に対応して実行する処理の組み合わせとは、様々な組み合わせが考えられるところ、技術的に齟齬が生じない範囲において、適宜任意の条件と任意の処理とを実行する車両制御装置とできることは、特に説明を要することなく当業者にとって理解されるところである。
【0147】
なお、図10には、本発明の適用に好適なECBシステムの油圧回路概念図を示した。図10に示すECBシステムの構成と動作とは、特開2007−160950にも開示されているように既に当業者に知られているので、ここでは詳述をしないこととする。図10に示すECBシステムでは、リニア制御弁がさらに多く用いられているので、本発明を適用すればさらに効果的であるので好ましい。
【0148】
また、各実施形態で説明した液圧ブレーキユニット20や電動パワーステアリング制御装置等は、自明な範囲で適宜その構成と動作処理とを変更して用いることとできる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】第一の実施形態にかかる車両制御装置の構成概要を示す概念ブロック図である。
【図2】第一の実施形態にかかるブレーキ電子制御部の省エネルギー動作を概念的に説明するフロー図である。
【図3】液圧ブレーキユニットの概略を説明する液圧系統図である。
【図4】ブレーキECUが算出した目標油圧と、制御圧センサで検出したホイールシリンダの現実の油圧値との関係を概念的に説明する図である。
【図5】アキュムレータの温度が異なる場合の区間油量とアキュムレータ圧との関係を示す図である。
【図6】第二の実施形態にかかる電動パワーステアリング装置を概念的に説明する図である。
【図7】第三の実施形態にかかる電動パーキングブレーキ制御部の処理構成を概念的に説明する図である。
【図8】電動パーキングブレーキ制御部がEPB駆動モータへ供給する電流の駆動パルスを例示する概念図である。
【図9】電動パーキングブレーキ制御部の制御動作を概念的に説明するフロー図である。
【図10】ECBシステムの油圧回路概念図である。
【符号の説明】
【0150】
20・・液圧ブレーキユニット、22・・ブレーキディスク、23・・ホイールシリンダ、24・・ブレーキペダル、25・・ストロークセンサ、27・・マスタシリンダユニット、30・・動力液圧源、31・・液圧ブースタ、32・・マスタシリンダ、33・・レギュレータ、34・・リザーバ、35・・アキュムレータ、35a・・リリーフバルブ、36・・ポンプ、36a・・モータ、37・・マスタ配管、38・・レギュレータ配管、39・・アキュムレータ配管、40・・液圧アクチュエータ、41・・個別流路、45・・主流路、46・・減圧用流路、55・・リザーバ流路、56・・ABS減圧弁、60・・分離弁、61・・マスタ流路、62・・レギュレータ流路、63・・アキュムレータ流路、64・・マスタカット弁、65・・レギュレータカット弁、66・・増圧リニア制御弁、67・・減圧リニア制御弁、68・・シミュレータカット弁、69・・ストロークシミュレータ、70・・ブレーキ電子制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリを用いて車両を電気的に制御する車両制御装置において、
検知した車両状態に基づき前記車両の前記制御の迅速性が必要ではないと判断される場合に、
前記バッテリの電流消費を低減するように、前記制御の通電量を抑制する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
ホイールシリンダを増圧する増圧弁を通電制御して要求制動力に対応する液圧を供給するブレーキ電子制御装置において、
検知した車両の状態に基づき要求制動の迅速性が必要ではないと判断される場合に、前記増圧弁への通電量を抑制する
ことを特徴とするブレーキ電子制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のブレーキ電子制御装置において、
前記車両の運転者による制動指示部への前記要求制動力の入力速度が所定入力速度より小さい場合に、前記増圧弁への通電量を抑制するように、目標液圧と実液圧との最大差となる制御猶予値を増大させる
ことを特徴とするブレーキ電子制御装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のブレーキ電子制御装置において、
前記車両の速度が所定速度より小さい場合に、前記増圧弁への通電量を抑制するように、目標液圧と実液圧との最大差となる制御猶予値を増大させる
ことを特徴とするブレーキ電子制御装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載のブレーキ電子制御装置において、
前記車両はパーキングブレーキを備え、
前記車両のシフトレバーが駐車レンジであり、かつ前記パーキングブレーキが作動中である場合に、
前記要求制動力に対応する前記液圧の目標上限値を低減させる
ことを特徴とするブレーキ電子制御装置。
【請求項6】
請求項2に記載のブレーキ電子制御装置において、
検知した車両の状態に基づき要求制動力の迅速性が必要ではないと判断される場合に、前記増圧弁への通電量を抑制して実液圧の目標液圧への追従勾配を低減させる
ことを特徴とするブレーキ電子制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記車両はバッテリの電流消費を抑制するエコモードへの移行指示が入力されるエコスイッチを備え、
前記エコスイッチへ前記車両の運転者による前記エコモードへの移行指示が入力された場合に、
ホイールシリンダを増圧するための液圧を生成するモータの駆動電流を低減する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の車両制御装置において、
ホイールシリンダを増圧するための液圧媒体を昇圧する電動モータと、
前記電動モータにより昇圧された前記液圧媒体を蓄えるアキュムレータと、を備え、
前記アキュムレータの温度が所定温度より高い場合に、前記電動モータの駆動電流を低減させる
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項9】
請求項2乃至請求項6のいずれか一項に記載のブレーキ電子制御装置において、
パーキングブレーキ制御部を備え、
前記車両が平坦路にあり、シフトレバーが駐車レンジであり、かつ制動要求中である場合に、
前記パーキングブレーキ制御部は、パーキングブレーキのモータ駆動電流を低減させる
ことを特徴とするブレーキ電子制御装置。
【請求項10】
車両に搭載されたバッテリを用いてステアリング操舵を電気的にアシスト制御する電動パワーステアリング装置において、
検知した操舵状態に基づき前記ステアリング操舵に対する電気的なアシスト制御の必要度が低いか否かを判断する操舵アシスト制御必要度判断部を備え、
前記操舵アシスト制御必要度判断部が電気的な前記アシスト制御の必要度が低いと判断した場合に、前記バッテリの電流消費を低減するように、前記ステアリング操舵の電気的な前記アシスト制御を抑制する
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−111230(P2010−111230A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284826(P2008−284826)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】