説明

車両制御装置

【課題】車両の一時停車時にエンジン1を自動停止させるエンジン自動停止手段を有する車両制御装置において、エンジン1を始動しない放置期間が長期にわたる状況で車両を走行させる場合に、バッテリ6への充電を優先して行う。
【解決手段】人的な操作を受けてエンジン1を始動または停止させる操作手段5でもってエンジン1を停止させてから当該操作手段5でエンジン1が始動されるまでのソーク時間Tを計測し、操作手段5によるエンジン始動後に前記計測結果が所定値以上の場合にエンジン自動停止手段による処理の実行を禁止または制限する。これにより、一時停車時にエンジン1を自動停止しないので、バッテリ6への充電を中断せずに継続できる。しかも、エンジン1の自動停止後に車両を発進させようとする度にエンジン1を再始動せずに済むので、バッテリ6の電力が浪費されずに済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるアイドルストップ機能を備える車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車等の車両には、ランプ類や、空調用ブロアやパワー装置を駆動するための駆動モータ等の電気機器(電気負荷)が搭載されている。これら電気機器の駆動電力は、充放電可能なバッテリから供給される。
【0003】
バッテリは、車両に搭載されかつエンジンにより駆動される発電機(オルタネータ)により充電される。なお、バッテリの蓄電電圧が発電機による発電電圧より上回る場合にバッテリから放電が行われ、それと逆の場合にバッテリへの充電が行われる。
【0004】
近年、車両には、燃費の向上ならびに排気ガス放出の低減を図るため、いわゆるアイドルストップ機能、またはエコラン機能等と呼ばれるエンジン自動停止始動処理を行うようにしたものがある。
【0005】
この機能は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンを搭載した一般的な車両において、例えば信号待ち等で一時停車したとき(所定の条件が成立したとき)にエンジンを自動停止させて、その後で発進するとき(所定の条件が成立したとき)にエンジンを再始動させるものである。
【0006】
なお、エンジンの再始動の度に、そのクランキング用のスタータモータを駆動するためにバッテリの電力を消費するため、バッテリ充電容量が低下している状況では、エンジンの再始動が不可能な状況に陥るおそれがある。
【0007】
これに対し、従来、上記エンジン自動停止始動処理を行う車両において、走行中の車両が停車しようとする際、バッテリがエンジン再始動に必要な電力を出力可能な状態であるか否かを推定し、エンジンの自動停止を禁止または許容する他、エンジン自動停止状態において、バッテリがエンジン再始動に必要な電力を出力可能な状態であるか否かを推定し、エンジン自動停止状態を維持させるか再始動させるかを判断することが考えられている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0008】
この他、動力源としてエンジンとモータとの両方を搭載しかつ上記エンジン自動停止始動処理を行うハイブリッド型の車両において、バッテリがモータの再始動に必要な電力を出力可能な状態であるか否かを推定し、エンジンの自動停止を禁止または許容することが考えられている(例えば、特許文献5参照。)。
【特許文献1】特開平11−257120号公報
【特許文献2】特開2001−173480号公報
【特許文献3】特開2002−155775号公報
【特許文献4】特開2001−107768号公報
【特許文献5】特開2001−304008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来例では、エンジン自動停止始動処理の実行可否を判断するために、車両走行中において一時停車しようとする度にバッテリの充電容量を調べている。
【0010】
ところで、例えばエンジンを始動しない放置状態が長期にわたる状況では、電気負荷の暗電流や自己放電によって、バッテリ充電容量が著しく低下しやすい。このような長期放置後にエンジンを始動させる場合、仮に、エンジンを始動できたとしても、走行に伴うバッテリの充電容量回復に時間がかかることが予想されるので、このような状態で上記エンジン自動停止始動処理を実行させるとバッテリ上がりを招きやすくなることが容易に推測できる。特に、市街地を走行する場合には、車両の発進と一時停車とを繰り返すことが多いので、バッテリの充電容量を十分に回復させることは困難である。
【0011】
このような状態においては、バッテリの充電容量を十分に回復させることが重要であって、上記従来例のように車両走行中において一時停車しようとする度にバッテリの充電容量を調べてエンジン自動停止始動処理の実行可否を判断することが無駄であると言わざるを得ない。
【0012】
本発明は、車両の一時停車時にエンジンを自動停止させるエンジン自動停止手段を有する車両制御装置において、エンジンを始動しない放置期間が長期にわたる状況で車両を走行させる場合に、前記エンジン自動停止手段による処理の実行を即座に禁止または制限し、バッテリ等の蓄電手段への充電を優先して行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る車両制御装置は、エンジンと、エンジンを始動可能な電動機と、人的操作に応答してエンジンを始動または停止させる操作手段と、エンジンにより駆動される発電機と、少なくとも前記モータに電力を供給しかつ前記発電機により充電される蓄電手段とを有する車両に装備される車両制御装置であって、車両の所定条件成立時にエンジンを自動停止させるエンジン自動停止手段と、前記操作手段でエンジンを停止させてから当該操作手段でエンジンが始動されるまでの時間を計測する計測手段と、前記操作手段によるエンジン始動後に前記計測手段による計測結果が所定値以上の場合に前記エンジン自動停止手段による処理の実行を禁止または制限する管理手段とを含むことを特徴としている。
【0014】
なお、前記電動機と発電機とは、同一のものであってもよく、例えばいわゆるモータジェネレータ等を用いることができる。
【0015】
この構成では、エンジンを始動しない放置期間が長期にわたる状況で車両を走行させる場合に、バッテリ等の蓄電手段の充電容量が低下しているものと推測し、前記エンジン自動停止手段による処理の実行を禁止または制限するようにしている。これにより、走行中において一時停車してもエンジンが自動停止されなくなるので、蓄電手段への充電を中断せずに継続させることができる。しかも、一時停車後に発進するときにエンジンを再始動せずに済むので、蓄電手段の電力が浪費されなくなる。
【0016】
このように、エンジンを始動させる前の放置期間が長いことが原因で蓄電手段の充電容量が低下していると予想される場合に、その蓄電手段の電力浪費を防止または抑制したうえで、その充電を優先して行わせることができるので、蓄電手段の充電容量の回復ならびに保護を強化できる。
【0017】
この他、従来例のように車両走行中において一時停車しようとする度に蓄電手段の充電状態を調べてエンジン自動停止始動処理の実行可否を判断するという処理の無駄を無くすことができる。
【0018】
上記車両制御装置において、前記操作手段は、イグニッションキー装置とすることができる。
【0019】
また、上記車両制御装置において、前記計測手段による計測終了タイミングは、エンジンが始動されてから完爆状態になったことを認識した時点とすることができる。
【0020】
この構成では、エンジンが始動してからストールした場合に、計測手段による計測動作を開始させてしまうという誤判断がなくなる等、信頼性が向上する。
【0021】
また、上記車両制御装置において、前記エンジン自動停止手段によりエンジンを自動停止した場合で車両発進時にエンジンを再始動させるエンジン再始動手段をさらに含むものとすることができる。
【0022】
この構成では、エンジンの自動停止後における車両発進時に、運転者が操作手段を操作してエンジンを再始動させる必要がなくなる等、使い勝手が向上する。
【0023】
また、上記車両制御装置において、前記管理手段は、前記エンジン自動停止手段による処理の実行を禁止または制限した場合、その後前記バッテリがエンジン再始動に必要な充電容量を有する状態に回復したか否かを判定するとともに、回復したと判定したときに前記禁止または制限事項を解除するものとすることができる。
【0024】
この構成では、例えばエンジン自動停止手段による処理の実行を一旦禁止または制限しても、その後、蓄電手段の充電容量が十分に回復したときにエンジン自動停止手段による処理の実行を許可するようにしている。これにより、車両走行中における一時停車時にエンジンを自動停止させることができて、燃費向上、排気ガスの排出量低減に貢献できるとともに、一時停車後の発進時にエンジンを確実に再始動できるようになる等、運転に支障をきたすことが回避される。
【0025】
また、上記車両制御装置において、時間を計る計時手段をさらに有し、前記計測手段は、前記計時手段を利用して前記時間を計測するものとすることができる。
【0026】
この構成における計時手段は、例えば車両制御装置をコンピュータとする場合において、それに一般的に内蔵されるタイマとすることができる。そのようにすれば、余分な部品を追加する必要がなく、車両制御装置の製造コスト低減に貢献できる。
【0027】
また、上記車両制御装置において、外部情報を受信する外部情報受信手段をさらに有し、前記計測手段は、前記外部情報受信手段を利用して日時情報を入手して前記時間を計測するものとすることができる。
【0028】
この構成では、外部情報受信手段を利用して外部から日時情報を入手しているから、余分な部品を追加する必要がなく、車両制御装置の製造コスト低減に貢献できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、エンジンを始動しない放置期間が長期にわたる状況で車両を走行させる場合に、エンジン自動停止手段による処理の実行を禁止または制限し、蓄電手段への充電を優先して行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明における最良の実施の形態を図1から図3に示して説明する。この実施形態では、エンジンを備える一般的な車両に本発明を適用した例を挙げている。
【0031】
図1は、車両制御装置を備える車両の概略構成を模式的に示すブロック図である。図1において、1は例えば4サイクルガソリンエンジン等のエンジンである。
【0032】
エンジン1には、スタータモータ(電動機)2、発電機(オルタネータ)3および補機(例えばエアコン用コンプレッサ、パワーステアリングポンプ、ウォーターポンプ等)4が取り付けられている。
【0033】
スタータモータ2は、エンジン1を始動するものであり、操作手段としてのイグニッションキー装置5のエンジン始動操作により駆動される。発電機3は、エンジン1のクランクシャフト(図示省略)により例えばベルト等を介して駆動されて発電するものである。補機4は、エンジン1のクランクシャフト(図示省略)により例えばベルトを介して駆動されるものである。
【0034】
イグニッションキー装置5は、ここでは例えば人がイグニッションキーをキーシリンダに差し込んだ状態でイグニッションキーを回すよう操作されるものであり、イグニッションキーの回し角度に応じて、車両に搭載されている図示しない各種電気機器(オーディオ、パワーウインドウ等)を動作可能とするイグニッションオン信号と、スタータモータ2を駆動してエンジン1を始動させるスタータオン信号とを選択的に出力するようになっている。この他、イグニッションキーとスタートボタンとが分離されたタイプであってもよく、このような分離タイプの場合にはイグニッションオン信号とスタータオン信号とが個別に出力される。
【0035】
スタータモータ2、発電機3および補機4は、車両に搭載されるバッテリ6(蓄電手段)に接続されている。
【0036】
バッテリ6は、充放電可能なものであり、発電機3で発生する電力が必要に応じて蓄積される。なお、バッテリ6の蓄電電圧が発電機3による発電電圧より上回る場合にバッテリ6から放電が行われ、それと逆の場合にバッテリ6への充電が行われる。
【0037】
このような車両には、例えばエンジンECU(Electronic Control Unit)10と、エコ
ランECU20とを含む車両制御装置を装備している。
【0038】
エンジンECU10は、エンジン1を制御する電子制御装置であり、主としてエンジン1に取り付けられる回転センサ7からの回転数信号および他の各種センサ(図示省略)からの信号を用いてエンジン1を制御する。
【0039】
エコランECU20は、エンジンECU10と協働してエンジン1を制御する電子制御装置であり、いわゆるエコラン機能と呼ばれるエンジン自動停止始動処理を実行するとともに、エンジン始動直後におけるバッテリ6の充電容量を推測して、前記エンジン自動停止始動処理の実行を禁止または許可するバッテリ保護処理を実行する。
【0040】
上記エンジン自動停止始動処理とは、要するに、例えば信号待ち等で一時停車したとき(所定の条件が成立したとき)に、エンジン1を自動停止させ、その後、発進しようとするとき(所定の条件が成立したとき)にエンジン1を再始動させる処理のことである。なお、エンジン自動停止時には、例えばエンジン1の燃焼室への燃料供給をカットするようにしている。
【0041】
エンジン1の自動停止条件としては、例えば手動変速機を備える車両の場合、車速が0であること、エンジン回転数がアイドリング回転数であること、シフトレバーがニュートラルポジションであること、クラッチペダルが踏み込まれている(クラッチが切断されている)こと等が挙げられ、また、自動変速機を備える車両の場合、車速が0であること、シフトレバーがニュートラルポジションであること、ブレーキペダルが踏み込まれている
こと等が挙げられる。一方、エンジン1の再始動条件としては、例えば手動変速機を備える車両の場合、クラッチペダルの踏み込み(クラッチの接続)等が挙げられる。
【0042】
一方、上記バッテリ保護処理とは、要するに、エンジン1を長期間にわたって始動しない長期放置状況から車両を走行させた場合において、エンジン自動停止始動処理によりエンジン1を自動停止させるとバッテリ6によるスタータモータ2の駆動(エンジン1の始動)が困難になるおそれがあるので、前記エンジン自動停止始動処理の実行を禁止し、バッテリ6への充電を優先して行わせる処理のことである。このエコランECU20は、請求項に記載のエンジン自動停止手段、エンジン再始動手段、計測手段、管理手段として機能する。
【0043】
次に、上記車両制御装置におけるエコランECU20を中心としたバッテリ保護処理に関する動作について、図2に示すフローチャートおよび図3に示すタイミングチャートを参照して説明する。
【0044】
例えばイグニッションキー装置5からイグニッションオン信号が、図3のt1,t5,t7時点においてそれぞれ出力されると、図2のフローチャートに示すバッテリ保護機能に関するシーケンスにエントリーして、ステップS1でエンジン1が始動されたか否かを判定する。
【0045】
このエンジン1の始動の有無判定は、例えばイグニッションキー装置5からのスタータオン信号の出力の有無と、回転数センサ7からの出力とに基づいて行うことができる。
【0046】
ここで、イグニッションキー装置5からスタータオン信号が、図3のt2〜t3期間およびt8〜t9期間出力されることに伴いスタータモータ2が駆動されることによってエンジン1が始動された場合には、ステップS1でYESと判定し、ステップS2において、エンジン始動履歴フラグF1を「1」にセットし、下記ステップS4に移行する。
【0047】
一方、イグニッションキー装置5がイグニッションオン位置に図3のt5〜t6期間にわたって保持されてスタータモータ2が駆動されていない場合、つまりエンジン1が始動されていない場合には、ステップS1でNOと判定し、ステップS3において、イグニッションキー装置5からイグニッションオフ信号が出力されたか否かを判定する。
【0048】
上記ステップS3でYESと判定された場合、つまり、図3のt5〜t6期間に示すようにイグニッションオン状態になってからエンジン1が始動されずにイグニッションオフになった場合、図2に示すフローチャートを抜けて、エンジンECU10によるエンジン制御に関するシーケンス(図示省略)に移行する。しかし、ステップS3でNOと判定された場合には、下記ステップS4に移行する。
【0049】
ステップS4では、エンジン始動履歴フラグF1が「1」であるか否かを判定し、NOと判定された場合には上記ステップS1に戻りエンジン1が始動されるのを待つが、YESと判定された場合にはステップS5において長期放置判定フラグF2が「0」であるか否かを判定する。
【0050】
上記ステップS5では、要するに、下記するステップS6〜S9に示す長期放置判定処理を一回でも行っているか否かを調べている。この長期放置判定処理は、エンジン1が始動されたにもかかわらず、エンジンストール等といった不測の事態が発生したときに、エンジン自動停止始動処理の可否判断を短時間で繰り返さないようにするために行う。
【0051】
このステップS5において、YESと判定された場合にはステップS6〜S9に示す長
期放置判定処理に、また、NOと判定された場合にはステップS6〜S9の長期放置判定処理をスルーしてステップS10に移る。
【0052】
まず、ステップS6では、イグニッションキー装置5でエンジン1を停止させてからイグニッションキー装置5でエンジン1が始動されるまでのソーク時間Tを取得する。このソーク時間Tの計測は、例えばエコランECU20に内蔵されているタイマ21(請求項の計時手段に相当)を利用することができる。
【0053】
具体的に、前回のイグニッションキー装置5によるエンジン停止時点(図3のt4)でタイマ21の計時動作を開始させて、イグニッションキー装置5によりスタータモータ2を駆動してエンジン1が始動された時点(図3のt9)でタイマ21の計時動作を終了させるようにすることができる。
【0054】
但し、タイマ21の計時動作の終了タイミングについては、エンジン1が始動されてから完爆状態になったことを認識した時点とするのが好ましい。この完爆状態とは、スタータモータ2の助けを借りないで回転を続けられる状態のことであり、この完爆状態は、回転数センサ7の検出出力に基づいて認識することができる。
【0055】
完爆状態を検出すると、エンジン始動履歴フラグF1が「1」にセットされ、エンジン1の停止を検出するとエンジン始動履歴フラグF1が「0」にセットされる。このエンジン始動履歴フラグF1が「0」にセットされるとタイマ21をスタートさせ、「1」にセットされるとタイマ21をタイムアップさせるようにすればよい。
【0056】
話を戻して、続くステップS7において、上記ステップS6で取得したソーク時間Tと予め規定されている所定の閾値T0とを比較することにより、車両が長期にわたってエン
ジン1を始動していない長期放置状況であるか否かを判定する。前記閾値T0は、実験に
よりバッテリ6の放電状況を調べて経験的に取得して設定される。
【0057】
ここで、長期放置されていた場合には、上記ステップS7においてYESと判定し、ステップS8において、車両走行中におけるエンジン自動停止始動処理の実行を禁止する。一方、長期放置されていない場合には、上記ステップS7においてNOと判定し、ステップS8をスルーしてステップS9で長期放置判定フラグF2を「1」にセットする。
【0058】
この後、ステップS10において、イグニッションキー装置5からイグニッションオフ信号が出力されたか否かを判定し、NOと判定された場合、上記ステップS5に戻るが、YESと判定された場合には、ステップS11において、タイマ21による計時動作を開始させてそれ以降のソーク時間Tを計測させるとともに、バッテリ保護処理に関する各種の取得情報や設定情報等を初期化してから、図2に示すフローチャートを抜けて、エンジンECU10によるエンジン制御に関するシーケンス(図示省略)に移行する。
【0059】
以上説明したように、エンジン1を始動しない放置期間が長期にわたる状況で車両を走行させる場合に、バッテリ1の充電容量が低下しているものと推測し、前記エンジン自動停止始動処理の実行を禁止するようにしている。
【0060】
これにより、走行中において一時停車してもエンジン1が自動停止されなくなるので、バッテリ6への充電を中断せずに継続させることができる。しかも、一時停車後に発進するときにエンジン1を再始動せずに済むので、バッテリ6の電力が浪費されなくなる。
【0061】
このように、エンジン1を始動させる前の放置期間が長いことが原因でバッテリ6の充電容量が低下している場合に、走行中においてバッテリ6の電力浪費を防止または抑制し
たうえで、その充電を優先して行わせることができるので、バッテリ6の充電容量の回復ならびに保護を強化できる。
【0062】
しかも、従来例のように車両走行中において一時停車しようとする度にバッテリ6の充電状態を調べてエンジン自動停止始動処理の実行可否を判断するという処理の無駄を無くすことができる。
【0063】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0064】
(1)上記実施形態において、エンジン自動停止始動処理の実行を禁止した場合、その後、バッテリ6の充電容量の回復度合いを調べて、十分に回復した場合にのみ前記禁止事項を解除して、エンジン自動停止始動処理の実行を許可するようにしてもよい。具体的に、図4に示すように、上記実施形態での図2に示すフローチャートに、ステップS20〜S22を追加しているので、以下で説明する。
【0065】
つまり、ステップS20では、エンジン自動停止始動処理の実行を禁止しているか否かを判定し、NOと判定した場合には上記実施形態で説明したステップS10へ移行するが、YESと判定した場合には、ステップS21において、バッテリ6の充電容量が回復したか否かを調べる。バッテリ6が回復している場合には上記ステップS21でYESと判定し、ステップS22においてエンジン自動停止始動処理の実行禁止を解除して、上記実施形態で説明したステップS10へ移行するが、バッテリ6が回復していない場合には、上記ステップS21においてNOと判定し、ステップS22をスルーして上記実施形態で説明したステップS10に移行する。
【0066】
このように、例えばエンジン自動停止始動処理の実行を一旦禁止した場合であっても、その後、バッテリ6の充電容量が十分に回復したときにエンジン自動停止始動処理の実行を許可するようにしていれば、車両走行中における一時停車時にエンジン1を自動停止させることができるので、燃費向上、排気ガスの排出量低減に貢献できるとともに、一時停車後の発進時にエンジン1を確実に再始動できるようになる等、運転に支障をきたすことが回避される。
【0067】
(2)上記実施形態において、エンジン自動停止始動処理の実行を禁止した場合、車両の走行中に発電機3を最大発電電力で作動させてバッテリ6を充電させるようにすることができる。この場合、バッテリ6の充電容量を迅速に回復させるうえで有利となる。
【0068】
(3)上記実施形態において、エンジン自動停止始動処理の実行を許容している場合、車両走行過程におけるエンジン1の自動停止中に、車両の消費電流が増加してバッテリ6によるスタータモータ2の駆動(エンジン1の始動)が困難になると推定した場合に、エンジン1を強制的に自動始動させるようにしてもよい。
【0069】
(4)上記実施形態では、エンジン自動停止始動処理を行う構成とした例を挙げているが、一時停車時にエンジン1を自動停止させるエンジン自動停止処理のみを行う構成としてもよい。この構成では、エンジン1を自動停止した後で、車両発進時にエンジン1を自動で再始動させることができないので、このエンジン1の再始動はイグニッションキー装置5を手動で操作して行う必要がある。このような構成も本発明に含まれる。
【0070】
(5)上記実施形態において、エコランECU20にGPS(Global Positioning System)等の外部情報受信手段を設け、このGPS装置を利用して外部から時間情報を入
手して、前記ソーク時間Tを計測するように構成することができる。この場合、例えば、図2または図4のフローチャートにおいて、ステップS11で外部情報受信手段により外
部と通信して日時情報を入手してソーク時間Tの計測開始時刻を検出して記憶させる一方、ステップS6で外部情報受信手段により外部と通信して日時情報を入手してソーク時間Tの計測終了時刻を検出し、これら計測開始時刻と計測終了時刻とに基づいてソーク時間Tを算出するようにできる。
【0071】
(6)上記実施形態において、エコランECU20に適宜の外部情報受信手段を設け、エコランECU20と適宜のサービスセンター(図示省略)との間で双方向通信可能に構成し、前記サービスセンターでソーク時間Tを計測させるようにすることができる。例えば、エコランECU20は、図2または図4のフローチャートにおいて、ステップS11でサービスセンターに通信してソーク時間Tの計測開始を要求する一方、ステップS6でサービスセンターに通信してソーク時間Tの計測終了を要求し、このサービスセンターで算出したソーク時間Tを送信してもらうよう要求して、そのデータを受信するようにできる。
【0072】
(7)動力源としてエンジンと電動モータとを組み合わせたハイブリッド型の車両にも本発明を適用できる。その場合には、エンジンの自動停止後において発進可能な条件が成立した場合に動力源としての電動モータを駆動することによって再発進させるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る車両制御装置を備える車両の一実施形態の概略構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】図1の車両制御装置による動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】図1の車両制御装置によるソーク時間の計測タイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】本発明に係る車両制御装置を備える車両の他の実施形態で、図2に対応するフローチャートである。
【符号の説明】
【0074】
1 エンジン
2 スタータモータ(電動機)
3 発電機
4 補機
5 イグニッションキー装置(操作手段)
6 バッテリ(蓄電手段)
10 エンジンECU
20 エコランECU
21 タイマ(計時手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、エンジンを始動可能な電動機と、人的操作に応答してエンジンを始動または停止させる操作手段と、エンジンにより駆動される発電機と、少なくとも前記モータに電力を供給しかつ前記発電機により充電される蓄電手段とを有する車両に装備される車両制御装置であって、
車両の所定条件成立時にエンジンを自動停止させるエンジン自動停止手段と、
前記操作手段でエンジンを停止させてから当該操作手段でエンジンが始動されるまでの時間を計測する計測手段と、
前記操作手段によるエンジン始動後に前記計測手段による計測結果が所定値以上の場合に前記エンジン自動停止手段による処理の実行を禁止または制限する管理手段とを含むことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記操作手段は、イグニッションキー装置であることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記計測手段による計測終了タイミングは、エンジンが始動されてから完爆状態になったことを認識した時点とされることを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記エンジン自動停止手段によりエンジンを自動停止した場合で車両発進時にエンジンを再始動させるエンジン再始動手段をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記管理手段は、前記エンジン自動停止手段による処理の実行を禁止または制限した場合、その後前記バッテリがエンジン再始動に必要な充電容量を有する状態に回復したか否かを判定するとともに、回復したと判定したときに前記禁止または制限事項を解除することを特徴とする請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
時間を計る計時手段をさらに有し、前記計測手段は、前記計時手段を利用して前記ソーク時間を計測するものとされていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両制御装置。
【請求項7】
外部情報を受信する外部情報受信手段をさらに有し、前記計測手段は、前記外部情報受信手段を利用して日時情報を入手して前記時間を計測するものとされていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−177173(P2006−177173A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368542(P2004−368542)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】