説明

車両用動力分割装置

【課題】動力分割機構24のリングギアRにオルタネータ40を機械的に連結するのみでは、回生運転時において、駆動輪16側からフライホイール36側への動力の伝達量が十分とならないこと。
【解決手段】動力分割機構24は、1の遊星歯車機構によって構成されており、そのキャリアCには、駆動輪16が機械的に連結され、サンギアSには、フライホイール36が機械的に連結されている。リングギアRに、オルタネータ40に加えて、オイルポンプ44の従動軸を機械的に連結する。これにより、回生運転時にリングギアRに加わる負荷トルクを大きくすることができ、ひいては駆動輪16からフライホイール36に伝達される動力を大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転エネルギを力学的エネルギとして蓄えるフライホイールおよび駆動輪のそれぞれに機械的に連結される第1の回転体および第2の回転体に加えて第3の回転体を備える動力分割機構を備え、前記フライホイールおよび前記駆動輪の間の動力を分割する車両用動力分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の動力伝達装置としては、例えば下記特許文献1に見られるように、駆動輪に連結された変速装置および内燃機関間の回転軸の動力と、フライホイールの動力と、発電機の動力とが遊星歯車機構によって分割されるものも提案されている。これによれば、駆動輪の回転力を変速装置を介してフライホイールや発電機に蓄えることができる。
【0003】
ただし、遊星歯車機構は、各回転体に加わるトルクの間に比例関係がある。このため、バッテリがフル充電状態に近かったり電気負荷が小さい場合等には、発電機に機械的に連結される回転体に加わるトルクが小さくなり、ひいては遊星歯車機構を介した動力の伝達を十分に行うことができなくなる。このため、こうした状況にあっては、たとえ回生時であってもフライホイールへのエネルギの蓄積を十分に行うことができなくなるおそれがある。そこで上記装置では、発電機に機械的に連結される回転体にブレーキによって制動力を付与可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/010819号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記遊星歯車機構を介した動力の伝達量を大きくするためには、ブレーキに要求される制動力も自ずと大きいものとなる。そしてこれは、ブレーキの体格や重量の増大につながる。またブレーキはメンテナンスの要求が生じやすいというデメリットもある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、回転エネルギを力学的エネルギとして蓄えるフライホイールおよび駆動輪のそれぞれに機械的に連結される第1の回転体および第2の回転体に加えて第3の回転体を備える動力分割機構を備え、前記フライホイールおよび前記駆動輪の間の動力を分割する新たな車両用動力分割装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、回転エネルギを力学的エネルギとして蓄えるフライホイールおよび駆動輪のそれぞれに機械的に連結される第1の回転体および第2の回転体に加えて第3の回転体を備える動力分割機構を備え、前記フライホイールおよび前記駆動輪の間の動力を分割する車両用動力分割装置において、車両内において潤滑油を供給するオイルポンプをさらに備え、前記動力分割機構は、前記第2の回転体に入力される動力が正である場合に前記第1の回転体および第3の回転体のそれぞれに入力される動力が負となりうるように設定され、前記第1の回転体に入力される動力の絶対値は、前記第3の回転体に入力される動力の絶対値と正の相関を有し、前記第3の回転体に、前記オイルポンプの従動軸を機械的に連結したことを特徴とする。
【0009】
上記発明では、第1の回転体の動力をフライホイールに伝達させる際に伝達可能な量が第3の回転体の動力によって制限される。上記発明では、この点に鑑み、第3の回転体にオイルポンプの従動軸を機械的に連結させることで、第3の回転体の動力の絶対値を確保することができ、ひいては第1の回転体を介してフライホイールに伝達される動力を大きくすることができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記オイルポンプは、吐出量および吐出圧の少なくとも一方を電子制御可能なものであることを特徴とする。
【0011】
上記発明では、オイルポンプの吐出量や吐出圧を電子制御することで、第3の回転体およびオイルポンプ間の動力を制御することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記オイルポンプは、前記フライホイールおよび前記第1の回転体間に介在する回転体に前記潤滑油を供給することを特徴とする。
【0013】
上記発明では、オイルポンプに供給される動力を上記潤滑油の供給のために有効利用することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記フライホイールおよび前記第1の回転体間に介在する回転体は、羽根車を備える回転体を含むことを特徴とする。
【0015】
上記発明では、オイルポンプから供給される潤滑油の有する運動エネルギをフライホイールの回転エネルギとして有効利用することができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記フライホイールの周囲を覆うハウジングと、前記オイルポンプの吐出口が設けられたエジェクタとを備え、前記エジェクタは、前記ハウジングに連通されていることを特徴とする。
【0017】
上記発明では、エジェクタから潤滑油が流出するに際し、ハウジング内の気体がエジェクタ側に吸引される。このため、ハウジング内においてフライホイールの回転が周囲の気体によって妨げられることを好適に抑制することができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記ハウジングと前記エジェクタとの間に、前記ハウジング側の圧力の方が前記エジェクタ側の圧力よりも低い場合に閉弁する逆止弁を備えることを特徴とする。
【0019】
ハウジング内の圧力が低下し、エジェクタ側の圧力よりも低くなることでエジェクタ側からハウジング側に気体が流入する場合、ハウジング内の低圧化が妨げられることとなる。この点、上記発明では、逆止弁を備えることでこうした事態を回避することができる。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記フライホイールの周囲を覆うハウジングを備え、前記車両は、内燃機関を搭載し、前記ハウジングは内燃機関の吸気通路と連通していることを特徴とする。
【0021】
上記発明では、内燃機関の吸気通路の圧力がハウジング内の圧力よりも低い間は、ハウジング内の気体が吸気通路へと吸引されるため、ハウジング内の圧力を低下させることができる。
【0022】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記オイルポンプと前記第3の回転体との間には、前記オイルポンプ側である出力側に対する前記第3の回転体側である入力側の相対回転速度が負でない場合に動力を伝達する一方向伝達機構が設けられていることを特徴とする。
【0023】
上記発明では、オイルポンプの回転方向を一方向とすることができるため、オイルポンプが逆回転によって消耗しやすい場合であっても、消耗を抑制することができる。
【0024】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記第1の回転体に、発電機が機械的に連結されていることを特徴とする。
【0025】
上記発明では、動力分割機構による動力伝達量の制限を受けることなく、フライホイールの回転エネルギを発電機によって電気エネルギに変換することができる。
【0026】
請求項10記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記第3の回転体に、発電機が機械的に連結されていることを特徴とする。
【0027】
上記発明では、第3の回転体に発電機を機械的に連結することで、第3の回転体に加えることが可能な動力の絶対値を、オイルポンプ単独の場合よりも大きくすることができ、ひいては第1の回転体を介した第2の回転体からフライホイールへの動力の伝達量を増大させることができる。
【0028】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記第1の回転体、前記第2の回転体および前記第3の回転体は、そのトルクの絶対値が比例関係を有するものであり、前記第2の回転体と前記駆動輪との間の動力の伝達および遮断を切り替える動力伝達規制手段と、前記第2の回転体に制動力を付与する制動手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0029】
上記発明では、動力伝達規制手段によって駆動輪と第2の回転体との間の動力の伝達を遮断することができる。ただしこの場合、第2の回転体に加わるトルクがゼロとなると、動力分割機構を介した動力の伝達ができなくなるため、フライホイールの回転エネルギを発電機に伝達することができなくなる。この点、上記発明では、制動手段を備えることで、こうした場合であっても第2の回転体にトルクを付与することができ、ひいては動力分割機構を介した動力の伝達を可能とする。
【0030】
請求項12記載の発明は、請求項9〜11のいずれか1項に記載の発明において、前記第3の回転体には、前記オイルポンプに加えて、前記発電機以外の車載補機がさらに機械的に連結されていることを特徴とする。
【0031】
上記発明では、第3の回転体に加える動力の絶対値をさらに大きくすることができるため、第1の回転体を介した第2の回転体からフライホイールへの動力の伝達量をさらに大きくすることができる。また、上記車載補機が回転エネルギを機械的なエネルギのまま利用するものである場合、エネルギの変換ロスを抑制することができることから、車載補機の駆動に際してのエネルギ利用効率を高めることもできる。
【0032】
請求項13記載の発明は、請求項10〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記第1の回転体には、前記発電機の発電電力によって力行運転可能な回転機が機械的に連結されていることを特徴とする。
【0033】
上記発明では、発電機による発電電力を蓄電手段に十分に蓄えることができない状況等においても、回転機によって発電電力を消費することができるため、第3の回転体に十分な負荷トルクを付与することができる。そして、消費された発電電力を、フライホイールの回転エネルギとして蓄えることができる。
【0034】
請求項14記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の発明において、前記第2の回転体と前記駆動輪との間の動力の伝達および遮断を切り替える動力伝達規制手段をさらに備えることを特徴とする。
【0035】
上記発明では、動力伝達規制手段によって駆動輪側と動力分割機構側との間の動力の伝達を遮断可能であるため、駆動輪の駆動に際して動力分割機構側から負荷トルクが加わる事態を回避することなどができる。
【0036】
請求項15記載の発明は、請求項1〜14のいずれか1項に記載の発明において、前記第2の回転体には、内燃機関が機械的に連結されており、前記第2の回転体と前記内燃機関との間の動力の伝達および遮断を切り替える手段をさらに備えることを特徴とする。
【0037】
請求項16記載の発明は、請求項1〜15のいずれか1項に記載の発明において、前記第2の回転体には、内燃機関が機械的に連結されており、前記内燃機関と前記駆動輪との間の動力の伝達および遮断を切り替える手段をさらに備えることを特徴とする。
【0038】
上記発明では、内燃機関の負荷トルクが駆動輪に加わることを回避することも可能となる。
【0039】
請求項17記載の発明は、請求項1〜16のいずれか1項に記載の発明において、前記フライホイールの周囲を覆うハウジングをさらに備え、前記ハウジングには、真空ポンプが接続されていることを特徴とする。
【0040】
上記発明では、ハウジング内の気体を好適に低減することができるため、フライホイールの回転エネルギが、気体の運動エネルギに変換される事態を好適に抑制することができる。
【0041】
請求項18記載の発明は、請求項1〜17のいずれか1項に記載の発明において、前記第1の回転体、前記第2の回転体および前記第3の回転体は、そのトルクの絶対値が比例関係を有するものであることを特徴とする。
【0042】
請求項19記載の発明は、回転エネルギを力学的エネルギとして蓄えるフライホイールおよび駆動輪のそれぞれに機械的に連結される第1の回転体および第2の回転体に加えて第3の回転体を備える動力分割機構を備え、前記フライホイールおよび前記駆動輪の間の動力を分割する車両用動力分割装置において、前記動力分割機構は、前記第2の回転体に入力される動力が正である場合に前記第1の回転体および第3の回転体のそれぞれに入力される動力が負となりうるように設定され、前記第1の回転体に入力される動力の絶対値は、前記第3の回転体に入力される動力の絶対値と正の相関を有し、前記第3の回転体には、発電機が機械的に連結され、前記第1の回転体には、前記発電機の発電電力によって力行運転可能な回転機が機械的に連結されていることを特徴とする。
【0043】
上記発明では、発電機による発電電力を蓄電手段に十分に蓄えることができない状況等においても、回転機によって発電電力を消費することができるため、第3の回転体の動力の絶対値を十分に確保することができる(十分な負荷トルクを付与することができる)。そして、消費された発電電力を、フライホイールの回転エネルギとして蓄えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる動力伝達装置の一部の断面構成を示す断面図。
【図3】同実施形態にかかるエジェクタの構成を示す図。
【図4】同実施形態にかかる動力伝達機構の利用手法を示す図。
【図5】同実施形態にかかる動力伝達態様を示すタイムチャート。
【図6】同実施形態の効果を示す図。
【図7】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図8】第3の実施形態にかかるシステム構成図。
【図9】第4の実施形態にかかるシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる車両用動力分割装置を車載主機として内燃機関のみを搭載する車両に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0046】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0047】
図示されるように、エンジン10は、車載主機としての内燃機関である。エンジン10のクランク軸10aは、クラッチ11や、変速装置12、ディファレンシャル14を介して駆動輪16に機械的に連結されている。ここで、クラッチ11は、エンジン10と変速装置12との間の締結状態および解除状態を切り替えることで、エンジン10と変速装置12との間の動力伝達および遮断を切り替える電子制御式の締結手段である。なお、クランク軸10aには、これに初期回転を付与する初期回転付与手段(スタータ18)が設けられている。
【0048】
クラッチ11および変速装置12間には、クラッチ20およびロック機構22を介して動力分割機構24が機械的に連結されている。ここで、動力分割機構24は、互いに連動して回転する回転体であって且つ、エンジン10、フライホイール36およびオルタネータ40間の動力を分割する複数の動力分割用回転体を備える。詳しくは、動力分割機構24は、1つの遊星歯車機構によって構成されており、そのサンギアSにフライホイール36が機械的に連結され、キャリアCにエンジン10が機械的に連結され、リングギアRにオルタネータ40が機械的に連結されている。また、ロック機構22は、動力分割機構24のキャリアCの回転を禁止する制動手段である。一方、クラッチ20は、エンジン10や駆動輪16と動力分割機構24(キャリアC)との間の締結状態および解除状態を切り替えることで、エンジン10や駆動輪16と動力分割機構24(キャリアC)との間の動力伝達および遮断を切り替える電子制御式の締結手段である。
【0049】
上記オルタネータ40は、スタータ18等の車載補機の電源としての機能や補機バッテリ(図示略)を充電する機能等を有する発電手段である。
【0050】
一方、上記フライホイール36は、入力される回転エネルギを運動エネルギのまま蓄えるエネルギ蓄積手段である。フライホイール36は、サンギアSと、ロック機構26、クラッチ28、羽根車30および増速歯車32を介して機械的に連結されている。ここで、ロック機構26は、フライホイール36に機械的に連結される回転体(サンギアS)の回転を禁止する制動手段である。クラッチ28は、フライホイール36と動力分割機構24(サンギアS)との間の締結状態および解除状態を切り替えることで、フライホイール36と動力分割機構24(サンギアS)との間の動力伝達および遮断を切り替える電子制御式の締結手段である。また、増速歯車32は、動力分割機構24側(サンギアS側)の回転速度よりもフライホイール36側の回転速度を大きくするための変速手段である。また、フライホイール36は、ハウジング34内に収容されている。
【0051】
上記動力分割機構24のリングギアRには、さらに、ワンウェイクラッチ42を介してオイルポンプ44の従動軸が機械的に連結されている。ワンウェイクラッチ42は、出力側であるオイルポンプ44側に対する入力側であるリングギアR側の相対回転速度が負でない場合に動力を伝達させる一方向伝達機構である。上記オイルポンプ44の吐出する潤滑油(図中、破線)は、電子制御式の圧力制御弁46を介してエジェクタ48に取り込まれる。エジェクタ48は、その吐出口が羽根車30や増速歯車に対向しており、また、逆止弁49を介してハウジング34に接続されている。ここで、逆止弁49は、ハウジング34内の圧力の方がエジェクタ48側の圧力よりも高い場合に開弁し、そうでないなら閉弁するものである。これにより、エジェクタ48から潤滑油が吐出されるに際し、フライホイール36内の気体がエジェクタ48側に吸引されることとなる。
【0052】
上記ハウジング34は、実際には、図2(a)に示すように、動力分割機構24やオイルポンプ44等を収容する部材と一体的に構成されている。
【0053】
図2(b)は、図2(a)のA−A断面である。図示されるように、オイルポンプ44は、外周がトロコイド曲線を描くロータ44bがハウジング44a内で回転するトロコイドポンプである。トロコイドポンプは、回転方向が規定されており、逆回転をする場合には、ロータ44bの外周とハウジング44aの内壁との摩擦力が大きくなり劣化が促進されやすくなる。このため、本実施形態では、オイルポンプ44の逆回転を回避すべく、上述したようにワンウェイクラッチ42を備えている。
【0054】
図2(c)は、図2(a)のB−B断面である。図示されるように、羽根車30は、円盤状の回転体の外周から複数の羽30aが突き出すようにして設けられるものであり、この羽30aにエジェクタ48から流出する潤滑油がぶつかることで、潤滑油の運動エネルギを羽根車30の回転エネルギに変換する手段である。
【0055】
図3に、エジェクタ48の構造を示す。図示されるように、エジェクタ48は、ノズル部から潤滑油を吐出するに際し、その周囲の気圧を低下させるため、潤滑油の流通方向に直交する方向から気体を吸引する。これにより、混合部において気体と潤滑油とが混合され、デフューザ部において、混合物が拡散しつつ外部へと流出する。
【0056】
先の図1に示した制御装置50は、車両を制御対象とする制御装置である。詳しくは、エンジン10、スタータ18、クラッチ20、ロック機構22、ロック機構26、クラッチ28およびオルタネータ40、圧力制御弁46等を操作することで、車両の駆動力等を制御する。
【0057】
図4に、制御装置50によって実現される動力分割機構24の3つの回転体(サンギアS、キャリアCおよびリングギアR)の回転速度の共線図を、エンジン10の回転速度とともに示す。なお、矢印は、トルクの向きを示すものである。トルクの向きは、回転速度と同様、図中上側を正としており、これにより、動力分割機構24に動力が入力される場合の動力の符号を正と定義している。以下、図2(a)〜図2(f)の順に説明していく。
【0058】
図2(a):車両の停止時
車両停止時であってフライホイール36に回転エネルギが十分ある場合(i)には、この回転エネルギをオルタネータ40によって電気エネルギに変換して補機バッテリに入力させる。この際、エンジン10は、停止状態とされており、先の図1に示したクラッチ20は遮断状態である。このため、ロック機構22によってキャリアCの回転を禁止している。これは、キャリアCにトルクを付与するための処理である。すなわち、遊星歯車機構のサンギアSのトルクTs、キャリアCのトルクTcおよびリングギアRのトルクTrの関係は、リングギアRの歯数Zrに対するサンギアSの歯数Zsの比ρ(Zs/Zr)を用いて、以下の式(c1)、(c2)にて表現される。
【0059】
Tr=−Tc/(1+ρ) …(c1)
Ts=−ρTc/(1+ρ) …(c2)
このため、ロック機構22をロックしない場合には、キャリアCのトルクTcがゼロとなることから、リングギアRおよびサンギアSにトルクが付与されない。そしてこの場合には、リングギアRおよびサンギアS間で動力を伝達することができなくなる。これに対し、ロック機構22によってキャリアCをロックすることで、オルタネータ40がリングギアRに付与するトルクによってフライホイール36からオルタネータ40へと伝達される動力を制御することができる。ちなみに、サンギアS,キャリアCおよびリングギアRの回転速度は一直線上に並ぶため、キャリアCの回転速度をゼロに固定する場合、フライホイール36(サンギアS)の回転速度によってオルタネータ40(リングギアR)の回転速度が一義的に定まる。
【0060】
一方、車両の停止時であってフライホイール36の回転速度がゼロである場合(ii)には、動力分割機構24の3つの回転体は、すべて停止状態となる。
【0061】
図4(b):エンジン10の始動時
エンジン10の始動に際してフライホイール36の回転エネルギが十分である場合(i)には、スタータ18を用いることなく、フライホイール36の回転エネルギを利用してエンジン10のクランク軸10aに初期回転を付与することができる。この際オルタネータ40を発電制御する。これは、上記の式(c1)、(c2)の関係より、動力分割機構24を介した動力伝達を可能とするための処理である。
【0062】
これに対し、エンジン10の始動に際してフライホイール36の回転エネルギが不十分である場合(ii)には、スタータ18によってエンジン10を始動させる。この際、オルタネータ40による発電は行なわない。このため、動力分割機構24を介した動力伝達はなされない。なお、この際、クラッチ28を解除状態として且つロック機構26によってサンギアSをロックする。これは、クラッチ28を締結する際にその入力側と出力側との回転速度の相違が大きくなることを回避するためのものである。なお、クラッチ28を締結状態として且つロック機構26を解除状態としてもよい。
【0063】
図4(c):発進・軽負荷走行時
フライホイール36に回転エネルギが十分にある場合(i)、エンジン10を使用せずフライホイール36の回転エネルギを利用して走行することもできる。この際、オルタネータ40の発電制御を行なうことでリングギアRにトルクが付与されることから、動力分割機構24を介した動力伝達が可能となる。もっとも、フライホイール36に回転エネルギが十分にある場合であっても、フライホイール36の回転エネルギを走行に利用することなくオルタネータ40による発電にのみ利用してもよい。
【0064】
これに対し、フライホイール36の回転エネルギが不十分である場合(ii)には、上記ロック機構26によってサンギアSをロックして且つオルタネータ40の発電制御を行いつつ、エンジン10の駆動力で走行する。ここで、ロック機構26を用いるのは、エンジン10の回転エネルギがフライホイール36に供給されない状態で動力分割機構24を介した動力伝達を可能とし、ひいてはオルタネータ40の発電制御を可能とするための設定である。これに対し、ロック機構26を用いない場合には、エンジン10の回転エネルギの一部がフライホイール36に供給されることとなる。
【0065】
図4(d):定常走行時
フライホイール36に回転エネルギを蓄える場合(i)、エンジン10を駆動する。この際、オルタネータ40を発電制御してもよい。
【0066】
これに対し、フライホイール36へのエネルギの蓄積およびフライホイール36からのエネルギの放出のいずれも行なわない場合(ii)、上記ロック機構26によってサンギアSをロックして且つオルタネータ40の発電制御を行いつつ、エンジン10の駆動力で走行する。ここで、ロック機構26を用いるのは、エンジン10の動力がフライホイール36に供給されない状態で動力分割機構24を介した動力伝達を可能とし、ひいてはオルタネータ40の発電制御を可能とするための設定である。
【0067】
また、エンジン10の駆動力によって車両を走行させた状態でフライホイール36のエネルギをオルタネータ40によって電気エネルギに変換する場合(iii)、ロック機構22によってキャリアCをロックしつつオルタネータ40による発電制御を行なう。この際、クラッチ20を解除状態とすることで、エンジン10側と動力分割機構24側との動力伝達を遮断する。ここで、ロック機構22によってキャリアCをロックするのは、フライホイール36の回転エネルギを動力分割機構24を介してオルタネータ40に伝達可能とするための設定である。
【0068】
図4(e):加速時
エンジン10の動力に加えてフライホイール36の動力を利用する場合(i)、クラッチ20,28の双方を締結状態とする。なお、この際、フライホイール36から駆動輪16への動力の伝達量を増加させる上では、オルタネータ40の発電制御を行なってもよい。
【0069】
これに対し、フライホイール36の動力を利用しない場合(ii)、上記ロック機構26によってサンギアSをロックして且つオルタネータ40の発電制御を行いつつ、エンジン10の動力で走行する。ここで、ロック機構26を用いるのは、動力分割機構24を介した動力の伝達を可能とするための設定である。このため、オルタネータ40の発電制御を停止する場合には、ロック機構26によるロック制御を行なわなくてもよい。
【0070】
図4(f):回生時
この場合、エンジン10を停止させ、オルタネータ40の発電制御を行なう。これにより、キャリアCに入力された動力は、サンギアSおよびリングギアRのそれぞれからフライホイール36およびオルタネータ40のそれぞれに出力される。ちなみに、この際、エンジン10による負荷トルクが不要である場合には、クラッチ11を解除状態とすることが望ましい。
【0071】
このように本実施形態によれば、車両の減速回生運転時において、フライホイール36に回転エネルギを蓄えることができるため、エネルギの利用効率を向上させることができる。しかも、オイルポンプ44を動力分割機構24のリングギアRに機械的に連結することで、フライホイール36への動力の供給量を増大させることができる。すなわち、オルタネータ40による発電量は、補機バッテリのSOC等によって制約を受けるため、回生運転時であってもオルタネータ40のトルクを大きくすることができるとは限らない。このため、リングギアRにオルタネータ40のみを機械的に連結する場合には、回生運転時において駆動輪16側からフライホイール36への動力の伝達量がオルタネータ40のトルクによって制限される。これに対し、本実施形態では、リングギアRにオイルポンプ44を機械的に連結することで、リングギアRにオイルポンプ44のトルクを付与することができ、ひいては駆動輪16側からフライホイール36への動力の伝達量を増大させることができる。
【0072】
ここで、オイルポンプ44とリングギアRとの間には、ワンウェイクラッチ42が設けられているため、リングギアRの逆回転時においては、オイルポンプ44には動力が伝達されない。しかし先の図4(f)に示されるように、回生運転時においては、リングギアRが逆回転しない設定とされている。このため、動力分割機構24を介した動力の伝達量を増大させる必要がある回生運転時においては、オイルポンプ44の負荷トルクを動力分割機構24に付与することができる。しかも、回生運転時においては、オイルポンプ44のオイルを増速歯車32や羽根車30に供給することが最も望まれる状況となる。すなわち、回生運転時においては、動力分割機構24側とフライホイール36との間の動力伝達量が大きくなるため、増速歯車32に加わるトルクが最も大きくなる。このため、増速歯車32を構成するギア同士の係合部に潤滑油を供給することが最も望まれる期間となる。また、回生運転時においては駆動輪16からの動力をフライホイール36に極力蓄えることが望ましいため、オイルポンプ44の駆動によって消費された駆動輪16側のエネルギについても可能ならフライホイール36の回転エネルギとして回収することが望ましい。このため、駆動輪16の動力によって生成された潤滑油の運動エネルギを羽根車30によって回収する。
【0073】
図5に、車両が発進および停車を繰り返すに際してのフライホイール36やオルタネータ40のエネルギ蓄積処理態様を例示する。図示されるように、車両の減速時において、クラッチ20を締結状態とすることで、駆動輪16の回転エネルギを動力分割機構24を介してオルタネータ40およびフライホイール36に伝達させる。この処理は、リングギアRの回転速度がゼロとなるまで行なわれる。なお、リングギアRが逆回転する場合であっても動力分割機構24の動力をオルタネータ40に伝達させることは可能であるが、この場合にはオルタネータ40が力行側となるため、本実施形態では、オルタネータ40から動力分割機構24へのトルクの付与も停止される。なお、図5では、クラッチ20の解除タイミングを駆動輪16の回転速度がゼロとなるタイミングとする例を示したが、これは、クラッチ20の解除によって駆動輪16にショックが伝達される事態を回避することを狙ったものである。
【0074】
図6に、オイルポンプ44をリングギアRに機械的に連結したことの効果を示す。詳しくは、リングギアRに付与されるトルクのうちのオルタネータ40によるもの以外の最大トルクと燃料消費率の改善効果との関係を示す。図示されるように、リングギアRに加えることのできるトルクが大きくなるほど燃料消費率の改善効果が大きくなる。このため、オイルポンプ44をリングギアRに機械的に連結することで、量的に明確な効果を奏することができる。
【0075】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0076】
(1)動力分割機構24のリングギアRに、オイルポンプ44の従動軸を機械的に連結した。これにより、回生運転時において、キャリアCからサンギアSを介してフライホイール36に伝達される動力を大きくすることができる。特にオイルポンプ44は、リングギアRに加えることのできるトルクを増大させることによる体格の増大がロック機構22,26よりも小さいため、本システムの小型化にも寄与する。さらに、オイルポンプ44は、正回転時には、ロータ44bとハウジング44aとの摩擦による磨耗が小さいため、メンテナンスの要求も生じにくい。
【0077】
(2)オイルポンプ44の吐出圧を調節する電子制御式の圧力制御弁46を備えた。これにより、オイルポンプ44がリングギアRに加えるトルクを制御することができ、ひいては、キャリアCからサンギアSを介してフライホイール36に伝達される動力を制御することができる。
【0078】
(3)オイルポンプ44の潤滑油の供給対象を、増速歯車32とした。これにより、オイルポンプ44に供給される動力を、潤滑油の供給を必要とする増速歯車32への潤滑油の供給のために有効利用することができる。
【0079】
(4)フライホイール36に羽根車30を機械的に連結させた。これにより、オイルポンプ44から供給される潤滑油の有する運動エネルギをフライホイール36の回転エネルギとして有効利用することができる。
【0080】
(5)エジェクタ48をハウジング34に連通した。これにより、ハウジング34内においてフライホイール36の回転が周囲の気体によって妨げられることを好適に抑制することができる。
【0081】
(6)ハウジング34とエジェクタ48との間に、ハウジング34側の圧力の方がエジェクタ48側の圧力よりも低い場合に閉弁する逆止弁49を備えた。これにより、ハウジング34内の圧力がエジェクタ48側の圧力よりも低くなる場合に、エジェクタ48側からハウジング34側に気体が流入する事態を好適に回避することができる。
【0082】
(7)オイルポンプ44とリングギアRとの間に、ワンウェイクラッチ42を備えた。これにより、オイルポンプ44が逆回転することを回避することができ、ひいてはオイルポンプ44の消耗を抑制することができる。
【0083】
(8)リングギアRにオルタネータ40を機械的に連結した。これにより、リングギアRに機械的に連結される部材をオイルポンプ44単独とする場合と比較して、駆動輪16から動力分割機構24を介してフライホイール36に伝達される動力を増大させることができる。
【0084】
(9)キャリアCと駆動輪16との間の動力の伝達および遮断を切り替えるクラッチ20と、キャリアCに制動力を付与するロック機構22とを備えた。これにより、クラッチ20を解除状態とした場合であっても、ロック機構22によってキャリアCにトルクを付与することで、フライホイール36の回転エネルギを動力分割機構24を介してオルタネータ40に伝達することができる。
【0085】
(10)クラッチ11を設けた。これにより、エンジン10による負荷トルクが駆動輪16に付与される事態を回避することも可能となるため、駆動輪16に制動力を付与する際に駆動輪16から取り出されるエネルギを十分に有効利用することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0086】
図7に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図7において、先の図1に示した部材と対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0087】
図示されるように、本実施形態では、動力分割機構24のリングギアRに、車載空調装置(エアコン60)に搭載されるコンプレッサ62の従動軸が機械的に連結されている。また、フライホイール36を収容するハウジング34は、エンジン10の吸気通路54に連通されている。また、ハウジング34は、ブレーキブースタ用バキュームポンプ56によって減圧されるようになっている。ブレーキブースタ用バキュームポンプ56は、たとえばエンジン10のカム軸等からエンジン10の動力が付与されることで駆動される機関駆動式の真空ポンプである。
【0088】
以上説明した本実施形態によれば、上記第1の実施形態の上記各効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0089】
(11)リングギアRにコンプレッサ62の従動軸を機械的に連結した。これにより、リングギアRに付与可能なトルクをさらに大きくすることができるため、回生運転時において、駆動輪16から動力分割機構24を介してフライホイール36に伝達可能な動力をいっそう大きくすることができる。また、駆動輪16の動力等を、機械的なエネルギのままコンプレッサ62によって利用可能なため、エネルギ利用効率が向上する。
【0090】
(12)フライホイール36が収容されるハウジング34とエンジン10の吸気通路54とを連通させた。これにより、ハウジング34内の圧力を好適に低下させることができる。
【0091】
(13)ブレーキブースタ用バキュームポンプ56にハウジング34を連通させた。これにより、ハウジング34内の圧力をいっそう好適に低下させることができる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0092】
図8に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図8において、先の図1に示した部材と対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0093】
図示されるように、本実施形態では、オルタネータ40をサンギアSに機械的に連結させた。これにより、フライホイール36の回転エネルギをオルタネータ40によって電気エネルギに変換するに際して、動力分割機構24を介在させる必要が生じない。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0094】
図9に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図9において、先の図1に示した部材と対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0095】
図示されるように、本実施形態では、オルタネータ40をリングギアRに機械的に連結させて且つ、サンギアSにさらに、モータジェネレータ60を機械的に連結させた。これにより、補機バッテリが満充電に近い状況であっても、オルタネータ40によって発電制御を行い、その発電電力によってモータジェネレータ60を駆動することで、フライホイール36へのエネルギ充填速度を向上させることができる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0096】
「オイルポンプについて」
オイルポンプによる潤滑油の供給対象としては、上記実施形態において例示したものに限らない。たとえば変速装置12やエンジン10を含めてもよい。もっとも、上記各実施形態において例示した供給対象を除き、変速装置12やエンジン10のみを供給対象とすることも可能である。
【0097】
オイルポンプとしては、トロコイダルポンプに限らない。また、吐出圧や吐出量を電子制御可能なものでなくても、オイルポンプを動力分割機構24に機械的に連結することで、動力分割機構24を介した動力伝達量を増大させることはできる。
【0098】
「一方向伝達機構について」
出力側に対する入力側の相対回転速度が負でない場合に動力を伝達する一方向伝達機構としては、ワンウェイクラッチに限らず、ワンウェイベアリング等であってもよい。
【0099】
「動力分割機構との機械的な連結態様について」
たとえばサンギアSにオルタネータ40を機械的に連結して且つ、リングギアRにフライホイール36を機械的に連結してもよい。またたとえば、サンギアS、キャリアCおよびリングギアRのそれぞれに、駆動輪16、オルタネータ40およびフライホイール36を機械的に連結してもよい。
【0100】
「動力分割機構について」
動力分割機構としては、上記実施形態において例示したものに限らない。たとえばダブル遊星ギアタイプのものであってもよい。また、3つの回転体のみからなるものに限らず、たとえば一対の遊星歯車機構のそれぞれの3つの回転体のうちの2つずつを互いに機械的に連結することで、互いに相違した回転速度となりうる回転体を4つ備えるものとしてもよい。
【0101】
また、遊星歯車機構を備えるものに限らず、たとえばデフギアを備えるものであってもよい。
【0102】
さらに、動力分割機構を構成する回転体のトルク同士に比例関係があるものに限らず、フライホイールに機械的に連結される回転体とオイルポンプに機械的に連結される回転体とのそれぞれのトルク同士(または動力同士)の間に正の相関があるものであれば、オイルポンプを用いて動力伝達量を増大させるという上記実施形態同様の技術的意義を有する。
【0103】
「車載補機について」
車載補機としては、エアコン60のコンプレッサ62に限らず、たとえばウォーターポンプであってもよい。
【0104】
「発電機について」
発電機としては、オルタネータ40に限らず、電動機としても機能するモータジェネレータであってもよい。
【0105】
「真空ポンプについて」
真空ポンプとしては、ブレーキブースタ用バキュームポンプに限らず、ハウジング34を減圧する専用のポンプであってもよい。
【0106】
「そのほか」
・上記第4の実施形態において、オイルポンプ44を備えなくても、モータジェネレータ60を備えることで、オルタネータ40によってリングギアRに確実に負荷トルクを付与することはできる。
【0107】
・上記第4の実施形態において、モータジェネレータ60を電動機(発電機として機能しない回転機)としてもよい。
【0108】
・上記各実施形態において、羽根車30を削除しても上記第1の実施形態の上記(1)等の効果を得ることはできる。
【0109】
・上記各実施形態において、増速歯車32を備えなくても上記第1の実施形態の上記(1)等の効果を得ることはできる。
【0110】
・上記各実施形態において、オイルポンプ44の動力を利用してハウジング34内の気体を吸引しなくても、上記第1の実施形態の上記(1)等の効果を得ることはできる。
【0111】
・上記各実施形態において、クラッチ28を削除したり、クラッチ28およびロック機構26を削除しても上記第1の実施形態の上記(1)等の効果を得ることはできる。
【0112】
・上記各実施形態において、クラッチ20を削除したり、クラッチ20およびロック機構22を削除しても上記第1の実施形態の上記(1)等の効果を得ることはできる。
【0113】
・上記第3の実施形態において、サンギアSおよびオルタネータ40間に、クラッチを設けてもよい。また、これに限らず、オルタネータ40側である出力側に対するサンギアS側である入力側の相対回転速度が負でない場合に動力を伝達する一方向伝達機構を備えてもよい。
【0114】
・車両としては、車載主機として内燃機関のみを搭載するものに限らない。たとえば先の図1に示した構成において、クラッチ20および変速装置12間にモータジェネレータを備えるパラレルハイブリッド車であってもよい。
【符号の説明】
【0115】
10…エンジン、16…駆動輪、24…動力分割機構、36…フライホイール、44…オイルポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転エネルギを力学的エネルギとして蓄えるフライホイールおよび駆動輪のそれぞれに機械的に連結される第1の回転体および第2の回転体に加えて第3の回転体を備える動力分割機構を備え、前記フライホイールおよび前記駆動輪の間の動力を分割する車両用動力分割装置において、
車両内において潤滑油を供給するオイルポンプをさらに備え、
前記動力分割機構は、前記第2の回転体に入力される動力が正である場合に前記第1の回転体および第3の回転体のそれぞれに入力される動力が負となりうるように設定され、
前記第1の回転体に入力される動力の絶対値は、前記第3の回転体に入力される動力の絶対値と正の相関を有し、
前記第3の回転体に、前記オイルポンプの従動軸を機械的に連結したことを特徴とする車両用動力分割装置。
【請求項2】
前記オイルポンプは、吐出量および吐出圧の少なくとも一方を電子制御可能なものであることを特徴とする請求項1記載の車両用動力分割装置。
【請求項3】
前記オイルポンプは、前記フライホイールおよび前記第1の回転体間に介在する回転体に前記潤滑油を供給することを特徴とする請求項1または2記載の車両用動力分割装置。
【請求項4】
前記フライホイールおよび前記第1の回転体間に介在する回転体は、羽根車を備える回転体を含むことを特徴とする請求項3記載の車両用動力分割装置。
【請求項5】
前記フライホイールの周囲を覆うハウジングと、
前記オイルポンプの吐出口が設けられたエジェクタとを備え、
前記エジェクタは、前記ハウジングに連通されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用動力分割装置。
【請求項6】
前記ハウジングと前記エジェクタとの間に、前記ハウジング側の圧力の方が前記エジェクタ側の圧力よりも低い場合に閉弁する逆止弁を備えることを特徴とする請求項5記載の車両用動力分割装置。
【請求項7】
前記フライホイールの周囲を覆うハウジングを備え、
前記車両は、内燃機関を搭載し、
前記ハウジングは内燃機関の吸気通路と連通していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用動力分割装置。
【請求項8】
前記オイルポンプと前記第3の回転体との間には、前記オイルポンプ側である出力側に対する前記第3の回転体側である入力側の相対回転速度が負でない場合に動力を伝達する一方向伝達機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両用動力分割装置。
【請求項9】
前記第1の回転体に、発電機が機械的に連結されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両用動力分割装置。
【請求項10】
前記第3の回転体に、発電機が機械的に連結されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両用動力分割装置。
【請求項11】
前記第1の回転体、前記第2の回転体および前記第3の回転体は、そのトルクの絶対値が比例関係を有するものであり、
前記第2の回転体と前記駆動輪との間の動力の伝達および遮断を切り替える動力伝達規制手段と、
前記第2の回転体に制動力を付与する制動手段とをさらに備えることを特徴とする請求項10記載の車両用動力分割装置。
【請求項12】
前記第3の回転体には、前記オイルポンプに加えて、前記発電機以外の車載補機がさらに機械的に連結されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の車両用動力分割装置。
【請求項13】
前記第1の回転体には、前記発電機の発電電力によって力行運転可能な回転機が機械的に連結されていることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の車両用動力分割装置。
【請求項14】
前記第2の回転体と前記駆動輪との間の動力の伝達および遮断を切り替える動力伝達規制手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の車両用動力分割装置。
【請求項15】
前記第2の回転体には、内燃機関が機械的に連結されており、
前記第2の回転体と前記内燃機関との間の動力の伝達および遮断を切り替える手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の車両用動力分割装置。
【請求項16】
前記第2の回転体には、内燃機関が機械的に連結されており、
前記内燃機関と前記駆動輪との間の動力の伝達および遮断を切り替える手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の車両用動力分割装置。
【請求項17】
前記フライホイールの周囲を覆うハウジングをさらに備え、
前記ハウジングには、真空ポンプが接続されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の車両用動力分割装置。
【請求項18】
前記第1の回転体、前記第2の回転体および前記第3の回転体は、そのトルクの絶対値が比例関係を有するものであることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の車両用動力分割装置。
【請求項19】
回転エネルギを力学的エネルギとして蓄えるフライホイールおよび駆動輪のそれぞれに機械的に連結される第1の回転体および第2の回転体に加えて第3の回転体を備える動力分割機構を備え、前記フライホイールおよび前記駆動輪の間の動力を分割する車両用動力分割装置において、
前記動力分割機構は、前記第2の回転体に入力される動力が正である場合に前記第1の回転体および第3の回転体のそれぞれに入力される動力が負となりうるように設定され、
前記第1の回転体に入力される動力の絶対値は、前記第3の回転体に入力される動力の絶対値と正の相関を有し、
前記第3の回転体には、発電機が機械的に連結され、
前記第1の回転体には、前記発電機の発電電力によって力行運転可能な回転機が機械的に連結されていることを特徴とする車両用動力分割装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−126361(P2012−126361A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282150(P2010−282150)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】