説明

車両用回転電機

【課題】
高回転化の可能な車両用回転電機を提供することにある。
【解決手段】
固定子2は、ステータ磁極25a,25bと、ステータ磁極に巻回された固定子コイル3とを有する。回転子4は、固定子2に対して回転可能に支持されるとともに、複数のロータ磁極5a,5bと、複数のロータ磁極間に配置される界磁巻線6とを有する。ステータ磁極5a,5bは、円筒型磁極からなり、複数のロータ磁極内の円周方向に等間隔でそれぞれ配置された複数の永久磁石23を備える。円周方向に等間隔で配置された永久磁石の間に凸極磁極部23bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機能とモータ機能を備えた車両用回転電機に係り、特に、自動車用駆動発電装置として好適な車両用回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用回転電機,特に、発電機としては、例えば、特開2002−199678号公報や、特開平11−98787号公報に記載されているように、爪形磁極(ルンデル)を備えた車両用交流発電機が一般的に知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−199678号公報
【特許文献2】特開平11−98787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2002−199678号公報や、特開平11−98787号公報に記載されているな爪形磁極(ルンデル)を備えた回転電機では、爪形磁極は厚板を曲げて製造するために、高速回転時の爪形磁極の起きあがりの問題があった。そのため、例えば、回転子の外周と固定子の内周の間に形成されるギャップを0.3〜0.4mmとすると、回転電機の回転数を18000rpm以上にすることができなかった。回転電機の回転数を高くできれば、発電機として同じ発電電流を得る場合や、モータとして同じ出力トルクを得る場合には、小型化できる訳であるが、従来の爪形磁極を備えた回転電機では、回転数の制限が生じていた。
【0005】
本発明の目的は、高回転化の可能な車両用回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、ステータ磁極と、前記ステータ磁極に巻回された固定子コイルとを有する固定子と、前記固定子に対して回転可能に支持されるとともに、複数のロータ磁極と、前記複数のロータ磁極間に配置される界磁巻線とを有する回転子とを有する車両用回転電機において、前記複数のロータ磁極は、それぞれ円筒型磁極からなるものである。
かかる構成により、高回転化が可能となる。
【0007】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記回転子は、前記複数のロータ磁極内の円周方向に等間隔でそれぞれ配置された複数の永久磁石を備え、前記複数のロータ磁極は、それぞれ、前記円周方向に等間隔で配置された永久磁石の間に凸極磁極部を有するものである。
【0008】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記複数のロータ磁極の内、第1のロータ磁極の前記凸極磁極部に対して、第2のロータ磁極の前記凸極磁極部は、互いの凸部の位相が180度ずれているものである。
【0009】
(4)上記(3)において、好ましくは、前記凸極磁極に形成された空間部を備えるようにしたものである。
【0010】
(5)上記(3)において、好ましくは、前記永久磁石は、前記ロータ磁極の最外周面に近いところに埋め込まれているものである。
【0011】
(6)上記(1)において、好ましくは、前記回転子は、前記複数のロータ磁極の円周方向に等間隔でそれぞれ配置された複数の凸極磁極部を備えるようにしたものである。
【0012】
(7)上記(6)において、好ましくは、前記複数のロータ磁極の内、第1のロータ磁極の前記凸極磁極部に対して、第2のロータ磁極の前記凸極磁極部は、互いの凸部の位相が180度ずれているものである。
【0013】
(8)上記(1)において、好ましくは、前記固定子は、複数の前記ステータ磁極を接続する連結部を備えるようにしたものである。
【0014】
(9)上記(8)において、好ましくは、前記複数のステータ磁極は、前記連結部により、位相差をもって接続されているものである。
【0015】
(10)上記(1)において、好ましくは、前記固定子コイルは、同相コイルが固定子コア内で位相差を持つように配置されているものである。
【0016】
(11)上記(1)において、好ましくは、前記ロータ磁極は、薄板を積層して構成されるかまたは鉄の粒子を固めて製造した材料から構成されるものである。
【0017】
(12)上記(1)において、好ましくは、前記ステータ磁極は、薄板を積層して構成されるかまたは鉄の粒子を固めて製造した材料から構成されるものである。
【0018】
(13)上記目的を達成するために、本発明は、ステータ磁極と、前記ステータ磁極に巻回された固定子コイルとを有する固定子と、前記固定子に対して回転可能に支持されるとともに、複数のロータ磁極と、前記複数のロータ磁極間に配置される界磁巻線とを有する回転子とを有する車両用回転電機において、前記複数のロータ磁極は、それぞれ円筒型磁極からなり、前記ステータ磁極は、2つのステータ磁極片から構成されるとともに、前記2つのステータ磁極片は、その内周面であって前記ロータと対向する側に三角形状の爪部を有するものである。
かかる構成により、高回転化が可能となる。
【0019】
(14)上記(1)において、好ましくは、前記ステータ磁極は、鉄の粒子を固めて製造した材料から構成されるものである。
【0020】
(15)上記目的を達成するために、本発明は、複数の磁極を有する固定子と、該固定子に空隙を介して回転可能に保持された回転子とを有し、前記回転子は、薄板を積層した積層鉄心又は磁性材を圧して形成した圧粉磁心からなる少なくとも2つの鉄心が回転軸に対して並設して設けられ、かつそれらの鉄心間に巻線を介在させたものであり、前記鉄心の一方は、前記巻線の励磁によって一方の極を構成する複数の磁極鉄心を備えており、前記鉄心の他方は、前記巻線の励磁によって他方の極を構成する複数の磁極鉄心を備えており、前記複数の磁極鉄心は放射状に径方向に延びており、前記鉄心の一方の磁極鉄心の磁極中心と前記鉄心の他方の磁極鉄心の磁極中心は互いに周方向にずれており、前記巻線の前記鉄心の一方に最も近接した軸方向端部或いは軸方向端面は、前記鉄心の一方の前記巻線に最も近接した軸方向端部或いは軸方向端面よりも前記鉄心の他方寄りにあり、前記巻線の前記鉄心の他方に最も近接した軸方向端部或いは軸方向端面は、前記鉄心の他方の前記巻線に最も近接した軸方向端部或いは軸方向端面よりも前記鉄心の一方寄りにある。
かかる構成により、高回転化が可能となる。
【0021】
(16)上記(15)において、好ましくは、前記鉄心の周方向に隣接する各磁極鉄心間には永久磁石が配置されているものである。
【0022】
(17)上記(15)において、好ましくは、前記固定子の磁極は、極性の異なる磁極片が周方向に交互に配置されて構成されているものである。
【0023】
(18)上記(17)において、好ましくは、 前記磁極片は、磁性材を圧して形成した圧粉磁心から構成されているものである。
【0024】
(19)上記目的を達成するために、本発明は、複数の磁極を有する固定子と、該固定子に空隙を介して回転可能に保持された回転子とを有し、前記回転子は、薄板を積層した積層鉄心又は磁性材を圧して形成した圧粉磁心からなる少なくとも2つの鉄心が回転軸に対して並設して設けられ、かつそれらの鉄心間に巻線を介在させたものであり、前記鉄心の一方は、前記巻線の励磁によって一方の極を構成する複数の磁極鉄心を備えており、前記鉄心の他方は、前記巻線の励磁によって他方の極を構成する複数の磁極鉄心を備えており、前記複数の磁極鉄心は放射状に径方向に延びており、前記鉄心の一方の磁極鉄心の磁極中心と前記鉄心の他方の磁極鉄心の磁極中心は互いに周方向にずれており、前記巻線は、前記鉄心の一方と前記鉄心の他方との間に形成された空間から外周表面全面が露出するように、前記鉄心の一方と前記鉄心の他方とによって軸方向から挟持されているものである。
かかる構成により、高回転化が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高回転な車両用回転電機を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図1〜図10を用いて、本発明の第1の実施形態による車両用回転電機の構成について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による車両用回転電機を用いる駆動発電システムの構成について説明する。なお、以下の説明において、本実施形態による車両用回転電機は車両用発電機とし、かつモータとして駆動可能なものである。
図1は、本発明の第1の実施形態による車両用回転電機を用いる駆動発電システムの構成を示すシステムブロック図である。
【0027】
エンジン52には、スタータモータ53が取り付けられており、エンジン52を始動する場合に使用される。スタータモータ53の起動は、キースイッチ54を運転者が操作することで動作する。電源としては、バッテリー55の電力を使用する。
【0028】
バッテリー55のプラス端子およびマイナス端子は、車両用交流発電機100にも電気的に接続されている。バッテリー55のマイナス側端子はアースとして車体に接続される。車両用交流発電機100は、エンジン52に対してクランクプーリ51とプーリ8をベルト50を介して動力の伝達を行うものである。ベルト50の回転方向は一定方向であり、エンジン52によって車両用交流発電機100を回す場合と、車両用交流発電機100がエンジン52を回す2通りの動作ができるようになっている。
【0029】
車両用交流発電機100の内部には、インバータ回路を含んだ駆動部200が設けられている。駆動部200とECU(エンジンコントロールユニット)60間の信号には、エンジン始動信号61と、発電指令信号62と、回転数検出信号63とがある。ECU60にはアクセルペダル56の踏み込み量を検出するアクセル信号57とブレーキペダル58の踏み込み量を検出するブレーキ信号59が接続されている。
【0030】
次に、車両用駆動発電システムの動作について説明する。
【0031】
エンジン52が冷えている場合には、エンジン内のエンジンオイルの粘性が高いためエンジンを駆動するために必要なトルクが大きいので、運転者がキースイッチ54を操作することで、スタータモータ53を駆動してエンジンを始動する。
【0032】
一方、エンジンが十分暖まった場合には、エンジンオイルの粘性が下がるため、エンジンの摩擦抵抗が低減し、冷えた状態に比較して小さい力でエンジンを始動することができるので、アイドルストップ後の再始動時には交流発電機100よりエンジン52を始動する。例えば、運転者がアクセルペダル56から足を離してブレーキペダルを踏んだ場合、車速を検出して車速が零速度の場合にエンジンを停止するかアイドル状態を維持するかを、ECU60が決定する。例えば、ECU60が信号待ちや渋滞と判断した場合、エンジンを停止する。次に、運転者がブレーキペダル58から足を離して、アクセルペダル56を踏んだ場合、アクセル信号57がECU60に対して出力されるために、ECU60はエンジン始動信号61を車両用交流発電機100に内蔵した駆動部200に対して出力する。駆動部200は車両用交流発電機の3相巻線にモータ動作が可能なインバータ部101と界磁巻線電流を制御するレギュレータ102が搭載されており、ECU60からエンジン始動信号61がオンになった場合には、車両用交流発電機100をモータとして回転させる。このとき、エンジン52は車両用交流発電機100にプーリとベルトで接続されているため、交流発電機100によって回転させることができ、エンジンを始動させることができる。エンジンが始動した場合、駆動部200からは回転数検出信号63がECU60に戻されるため、ECU60ではエンジン始動信号61をオフすると共に、発電指令信号62をオンして車両用交流発電機100をモータ動作から発電機動作モードに切り替える。
【0033】
以上の動作により、車両用交流発電機は、モータとして動作する場合と、発電機として動作する場合の2通りに大別される。
【0034】
次に、図2を用いて、本実施形態による車両用回転電機の構成について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態による車両用回転電機の断面図である。
【0035】
車両用回転電機100は、回転子4と、固定子2とを備えている。回転子4は、2個の円筒型ロータ磁極5a,5bと、ヨーク1と、界磁巻線6とから構成される。2個の円筒型ロータ磁極5a,5bには、それぞれ、空間部が形成され、この空間部には永久磁石23が挿入固定されている。2個の円筒型ロータ磁極5a,5bと、ヨーク1とによって、ロータコアが構成される。2個の円筒型ロータ磁極5a,5bは、ヨーク1の両端に固定されている。ヨーク1の外周であって、2個の円筒型ロータ磁極5a,5bの間に、界磁巻線6が巻回される。2個の円筒型ロータ磁極5a,5bの構成については、図3を用いて後述する。
【0036】
回転子4は、シャフト7に固定されている。回転子4の軸方向の両端面には、冷却ファン14,15が設けられている。シャフト7の一端には、プーリー8が取り付けられている。
【0037】
固定子2は、回転子4の外周に配置されている。固定子2は、2個のステータ磁極25a,25bと、ステータ連結部26と、固定子コイル3とから構成される。2個のステータ磁極25a,25bと、ステータ連結部26とにより、ステータコアが構成される。2個のステータ磁極25a,25bは、ステータ連結部26によって連結されている。2個のステータ磁極25a,25bには、固定子コイル3が3相分布巻きで巻回されている。
【0038】
固定子2は、フロントブラケット9とリアブラケット10により前後から挟み込まれるように配置されている。各ブラケット9,10には、ベアリング12,13により、シャフト7を回転自由に支持しており、回転子4は固定子2に対して回転可能である。
【0039】
回転子4に配置された界磁巻線6には、シャフト7に設けられたスリップリング18とブラシ17から直流電流が供給され、軸方向に磁化を作る構成である。例えば、円筒型ロータ磁極5aがN極の場合には、円筒型ロータ磁極5bがS極となる。この磁極の励磁磁化の強さは、界磁巻線6に流れる界磁電流の大きさに応じて変化する。シャフト7の反プーリ側端部には、磁極センサ22が配置されており、回転子4の磁極位置を検出する手段として用いられる。
【0040】
また、リアブラケット10に接してヒートシンク20が設けられている。ヒートシンク20には、図1にて説明した駆動部200に設けられたインバータ部を構成するパワー素子(インバータ素子)21が実装されており、パワー素子21の損失をヒートシンク20に放熱できるような構成となっている。パワーモジュール19は、ヒートシンク20とパワー素子21で一体的に構成されている。
【0041】
リアブラケット10の端部には、リアカバー11とバッテリーに接続されるプラス端子16が配置されている。
【0042】
次に、図3を用いて、本実施形態による車両用回転電機に用いる回転子4の構成について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態による車両用回転電機に用いる回転子の構成を示す斜視図である。
【0043】
2個の円筒型ロータ磁極5a,5bは、それぞれ、円筒形状であり、珪素鋼板等の薄板を積層したり、または、圧粉磁芯のような鉄の粒子を固めて構成されている。2個の円筒型ロータ磁極5a,5bは、それぞれ、回転子4の軸方向に貫通し、円周方向に等間隔で形成された6個の空間部23aを有している。複数の空間部23aには、それぞれ、永久磁石23が挿入固定されている。隣接する空間部23aの間の凸部が磁極部23bとなる。また、円筒型ロータ磁極5aの凸部である磁極部23bに対して、円筒型ロータ磁極5bの凸部である磁極部23b’は、凸部同士の位相が180度ずれるように、2個の円筒型ロータ磁極5a,5bは、それぞれ、シャフト7に固定されている。なお、円筒型ロータ磁極5a,5bと永久磁石23を、それぞれ、ボンド入りの粉末を圧縮成形する2色成形により形成してもよいものである。
【0044】
また、図2にて説明したように、2個の円筒型ロータ磁極5a,5bの間にはロータヨーク1が配置され、シャフト7に固定されている。2個の円筒型ロータ磁極5a,5bの間の磁極中心部であって、しかも、ロータヨーク1の外周には、界磁巻線6が巻回されている。
【0045】
界磁巻線6に対して、例えば、矢印方向に界磁電流が流れた場合、磁極部の磁化方向は、磁極5aの磁極部23bがN極となり、磁極5bの磁極部23’がS極となる。このとき、磁極5aの磁極部23b間に配置した永久磁石23は、磁極部23bの磁極とは逆の磁極が外周面になるように、外周側がS極で、内周側がN極となるように、配置される。一方の磁極5bは180度位相がずれて配置されるため、磁極5bの磁極部23b’間に配置される永久磁石23’は、外周側がN極で、内周側がS極となるように配置される。よって、磁石23が作る磁極と界磁巻線6が作る磁極は外周から見ると、同極が回転子4の軸方向に横一列に並んだ形になっている。
【0046】
なお、永久磁石が配置される位置は、ロータ磁極の最外周面に近いところとしている。すなわち、永久磁石23の外周部には、円筒型ロータ磁極5a,5bのブリッジ部が存在するが、ロータ磁極の最外周面に近いところに永久磁石23を配置することで、このブリッジ部の薄くでき、永久磁石単体の磁束の漏れを低減することができる。
【0047】
以上説明したように、円筒型のロータ磁極5a,5bを用いることによって、従来の爪型磁極式の回転電機を高速回転した時の爪型磁極の起きあがりの問題は生じないものである。従来の爪型磁極式の回転電機では、回転子の外周と、固定子の内周の間に形成されるギャップを、例えば、0.3mmとしたとき、回転電機の回転数は、例えば、18000rpmに制限されていた。この回転数以上に回転させると、爪型磁極が起きあがり、固定子の内周面と接触する恐れがあるからである。それに対して、本実施形態のように、円筒型のロータ磁極5a,5bを用いることにより、例えば、22000rpmまで高速回転が可能になる。回転数を高回転化できることで、発電機として同じ発電電流を得る場合や、モータとして同じ出力トルクを得る場合には、小型化することができる。
【0048】
また、ロータ磁極5a,5bは、圧粉磁芯や珪素鋼板等の薄板を積層して構成している。ロータ磁極を渦電流損失の少ない圧粉磁芯や積層鉄板で構成することで高速回転時にステータのスロットによる磁場の変動で発生する渦電流損(表面損)を低減することができる。従来の爪型磁極式の回転電機では、爪型磁極は、例えば厚さ12mm程度の厚板によって構成されているため、高速回転時には爪表面で発生する渦電流損失がステータ銅損と同じ程度まで増加するため、効率が低下していた。例えば、従来の爪型磁極式の回転電機を18000rpmで回転させる場合、渦電流損失は、約1kW程度である。それに対して、本実施形態のように円筒型のロータ磁極5a,5bを用い、圧粉磁芯や珪素鋼板等の薄板を積層して構成した場合には、18000rpmで回転させる場合の渦電流損失は、約0.1kW程度であり、22000rpmで回転させた場合でも渦電流損失は、約0.14kW程度であり、高回転時でも効率を向上することができる。
【0049】
また、従来の爪型磁極式の回転電機では、爪磁極を構成するために爪の曲がり部の厚み分界磁巻線が巻けない部分があった。一方、本実施形態の円筒型のロータ磁極5a,5bを用いた場合、界磁巻線を磁極の外周側近くまで巻くことが可能となるため、同じ巻数を巻く場合にはロータの軸方向厚みを短縮することが可能になる。例えば、直径1mmのエナメル被覆導線を312ターン巻回して界磁巻線6を構成する場合について、具体的に説明する。従来の爪型磁極式の回転電機では、爪型磁極の厚さを12mmであり、爪型磁極の内周側とヨークの外周側との間のギャップが12mmである場合、ヨークの軸方向の長さを26mmとすることで、312ターンの界磁巻線を巻回できる。一方、本実施形態の場合、爪型磁極を用いないため、ヨークの外周には24mmの界磁巻線を巻回するスペースがあり、ヨークの軸方向の長さを13mmとすることで、312ターンの界磁巻線を巻回できる。すなわち、従来に比べて、ロータヨークの軸方向の厚さを半減でき、ロータの軸方向厚みを13mm短縮することができる。
【0050】
さらに、円筒型の空間部に永久磁石を配置することで、発電時の発電出力を向上でき、また、モータ動作時には出力トルクを向上できる。
【0051】
次に、図4を用いて、本実施形態による車両用回転電機に用いる他の回転子4’の構成について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態による車両用回転電機に用いる他の回転子の構成を示す斜視図である。なお、図2と同一符号は、同一部分を示している。
【0052】
本例の回転子4’においては、円筒型のロータ磁極5a’,5b’に、貫通する空間部27を設けている。空間部27は、回転時に界磁巻線6の冷却促進となる冷却風の取り入れ口と発電動作時の電機子反作用による増磁磁極の磁束集中を緩和する機能を兼ねたもので、磁気音の発生の低減と界磁巻線6の冷却促進を兼ね合わせたものである。
【0053】
なお、空間部27を用いて非磁性体のファンを界磁巻線6の外周部に配置しても良い。その場合、ステータ2の連結部26に配置された巻線3は、露出しているため、ファンによって生じる冷却風によって固定子コイル3を冷却することができる。
【0054】
また、空間部27に非磁性体の部材を配置して、円筒型のロータ磁極5a’,5b’を連結するための連結部材とすることもできる。
【0055】
次に、図5〜図7を用いて、本実施形態による車両用回転電機に用いる固定子2の構成について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態による車両用回転電機に用いる固定子の構成を示す分解斜視図である。図6は、本発明の第1の実施形態による車両用回転電機に用いる固定子の要部断面図である。図7は、本発明の第1の実施形態による車両用回転電機に用いる固定子の要部を内周側から見た平面図である。
【0056】
図5に示すように、固定子2の固定子コアは、2個のステータ磁極25a,25bと、連結部26で構成される。例えば、ステータ磁極25aは、リング状のコアバック部25a1と、コアバック部25a1から内周方向に突出したティース部25a2とから構成される。ステータ磁極25a,25bは、圧粉成形や、珪素鋼板の薄板を積層して形成される。隣接するティース部25a2の間にはスロット部が形成されている。ここでは、スロットの数は、90個の例を示している。
【0057】
連結部26の厚みは、ステータ磁極25a,25bのコアバック部の厚さと同じか、または厚く構成される。連結部26の材質としてはステータ磁極25a,25bと同じ磁性体である。
【0058】
2個のステータ磁極25a,25bと、連結部26とは、溶接で一体化されても良いし、インロー等の嵌合で固定されても良い。更に、どちらかのステータ磁極が自由に動けるようにすることで、発電性能の調整や、トルクの調整,弱め界磁機能を持たせることが可能になる。この場合には、別途回転制御機能なアクチュエータが必要となる。最終的にはフロントブラケット9とリアブラケット10により前後から押さえ込まれる構造である。
【0059】
なお、2つのステータ磁極25a,25bのスロットの位置関係は、ロータ磁極の電気角で30度程度ずらして固定子コイルの空間的な起磁力分布を滑らかにすることもできる。また、それぞれの位置合わせ用マークや凹凸部を設けることで、位置合わせを容易にすることができる。
【0060】
図6に示すように、2つのステータ磁極25a,25bの中心に連結部26が配置され、更に2つのステータ磁極25a,25bのスロットを貫通するように固定子コイル3が通っている。ここで、連結部26にスロットが無い理由は、コイルのインダクタンスを低減するためである。連結部26では、コイルは、鉄心の一方と鉄心の他方との間に形成された空間から外周表面全面が露出するように、鉄心の一方と鉄心の他方とによって軸方向から挟持されているため、固定子コイル3はむき出しとなっている。そのために、外部から風を送ることで、固定子コイルの冷却促進が可能になる。
【0061】
次に、図7に示すように、2つのステータ磁極25a,25bを貫く固定子コイル3は中心部で一旦曲がっている。すなわち、2つのステータ磁極25a,25bに固定子コイル3を真っ直ぐに通した後に、一方のステータ磁極25aに対して他方のステータ磁極25bを捻って位相差を付けている。このように、第一のステータ磁極25aと第二のステータ磁極25bの位相をずらすことで、固定子コイルの空間的な起磁力分布を滑らかにすることができ、騒音を低減することができる。この場合の位相差は、回転子の基本波に対して電気角で30度程度までが、性能と騒音低減効果でバランスが良いものである。固定子コイル3は、3相分布巻きで巻線される。
【0062】
次に、図8を用いて、本実施形態による車両用回転電機の構成について説明する。
図8は、本発明の第1の実施形態による車両用回転電機の構成を示す分解斜視図である。なお、図2〜図7と同一符号は、同一部分を示している。
【0063】
図8は、図3に示した回転子4と、図5〜7に示した固定子2を組み合わせた状態を示している。なお、固定子コイルの図示は省略している。図3に示したように、回転子4は、2つのロータ磁極5a,5bは、それぞれ、6個づつの永久磁石が内蔵されており、回転子4としての極数は12である。また、固定子2のスロット数は90である。すなわち、図8に示した回転電機は、3相回転電機であるので、毎極毎相スロット数は2.5となっている。
【0064】
次に、図9を用いて、本実施形態による車両用回転電機の他の構成について説明する。
図9は、本発明の第1の実施形態による車両用回転電機の他の構成を示す分解斜視図である。なお、図2〜図7と同一符号は、同一部分を示している。
【0065】
図9においては、固定子2’を構成する2つのステータ磁極25a’,25b’のスロット数を36としている。回転子4は、図8と同様に、2つのロータ磁極5a,5bは、それぞれ、6個づつの永久磁石が内蔵されており、回転子4としての極数は12である。すなわち、図8に示した回転電機は、3相回転電機であるので、毎極毎相スロット数は1となっている。
【0066】
次に、図10を用いて、本実施形態による車両用回転電機に用いられる駆動部200の構成について説明する。
図10は、本発明の第1の実施形態による車両用回転電機に用いられる駆動部の構成を示す回路図である。なお、図1,図2と同一符号は、同一部分を示している。
【0067】
駆動部200は、3相インバータとH型のインバータから構成されている。3相インバータは、固定子コイル3を構成する3相巻線3U,3V,3Wのモータ駆動時に動作する6個のスイッチング素子21U1,21U2,21V1,21V2,21W1,21W2から構成されている。スイッチング素子21U1,21U2は直列接続され、U相上アームスイッチとU相下アームスイッチを構成している。スイッチング素子21V1,21V2は直列接続され、V相上アームスイッチとV相下アームスイッチを構成している。スイッチング素子21W1,21W2は直列接続され、W相上アームスイッチとW相下アームスイッチを構成している。
【0068】
また、H型インバータは、界磁巻線6に界磁電流を正負の方向に流すスイッチング素子31X1,31X2,31Y1,31Y2から構成されている。なお、いずれのインバータも、スイッチング素子を駆動するゲート回路の図示は省略している。
【0069】
図2に示した磁極センサ22の信号を基に、3相インバータのスイッチング素子を制御して、各相に流す電流を制御することでモータ駆動させたり、発電時には同期整流もしくはフライホイルダイオードによる全波整流を行う。また、この例では、発電の場合は定電圧発電としているため、界磁電流の制御は、発電電圧が一定値になるように界磁電流に流す電流方向と電流値を制御する。H型を採用したのは、磁極間に配置した永久磁石の漏れ磁束により高速回転時に電圧を規定値以内にできない場合を考えたためであり、電源電圧が高い場合において不要な場合には通常使用している1つの制御素子による電圧制御でもよいものである。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、円筒型のロータ磁極5a,5bを用いることによって、従来の爪型磁極式の回転電機を高速回転した時の爪型磁極の起きあがりの問題は生じないものであり、高速回転が可能となる。したがって、発電機として同じ発電電流を得る場合や、モータとして同じ出力トルクを得る場合には、小型化することができる。
【0071】
また、ロータ磁極5a,5bは、圧粉磁芯や珪素鋼板等の薄板を積層して構成することで、高速回転時にステータのスロットによる磁場の変動で発生する渦電流損(表面損)を低減することができる。したがって、効率を向上することができる。
【0072】
また、界磁巻線を磁極の外周側近くまで巻くことが可能となるため、同じ巻数を巻く場合にはロータの軸方向厚みを短縮することが可能になる。
【0073】
次に、図11を用いて、本発明の第2の実施形態による車両用回転電機の構成について説明する。本実施形態による車両用回転電機を用いる駆動発電システムの構成は、図1と同様である。本実施形態による車両用回転電機の構成は、図2とほぼ同様であり、本実施形態による車両用回転電機に用いる固定子の構成は、図5〜図7と同様であるが、本実施形態による車両用回転電機に用いる回転子の構成は、図3とは異なるものである。
図11は、本発明の第2の実施形態による車両用回転電機に用いる回転子の構成を示す斜視図である。
【0074】
本実施形態の回転子4”では、ロータ磁極5a”,5b”の形状が、図3に示したロータ磁極5a,5bとは、異なっている。すなわち、ロータ磁極5a”,5b”は、円筒形の外周側に、それぞれ、半径方向に突出した形状の6個の凸極磁極23b’を有している円筒型ロータ磁極である。ロータ磁極5a”の凸極磁極23b’に対して、ロータ磁極5b”の凸極磁極23b’は、凸部の位相が180度ずれている。2個の円筒型ロータ磁極5a”,5b”は、それぞれ、珪素鋼板等の薄板を積層したり、または、圧粉磁芯にて構成されている。
【0075】
2個の円筒型ロータ磁極5a”,5b”は、それぞれ、シャフト7に固定されている。また、2個の円筒型ロータ磁極5a”,5b”の間には、図2にて説明したロータヨーク1が配置され、シャフト7に固定されている。2個の円筒型ロータ磁極5a”,5b”の間の磁極中心部であって、しかも、ロータヨーク1の外周には、界磁巻線6が巻回されている。
【0076】
界磁巻線6に対して、例えば、矢印方向に界磁電流が流れた場合、磁極部の磁化方向は、磁極5a”の凸極磁極部23b’がN極となり、磁極5b2の凸極磁極部23’がS極となる。
【0077】
以上説明したように、円筒型の凸極磁極を有するロータ磁極5a”,5b”を用いることによって、従来の爪型磁極式の回転電機を高速回転した時の爪型磁極の起きあがりの問題は生じないものである。したがって、従来よりも高速回転が可能になる。回転数を高回転化できることで、発電機として同じ発電電流を得る場合や、モータとして同じ出力トルクを得る場合には、小型化することができる。
【0078】
また、ロータ磁極5a”,5b”は、圧粉磁芯や珪素鋼板等の薄板を積層して構成しているので、高速回転時にステータのスロットによる磁場の変動で発生する渦電流損(表面損)を低減することができる。
【0079】
また、界磁巻線を磁極の外周側近くまで巻くことが可能となるため、同じ巻数を巻く場合にはロータの軸方向厚みを短縮することが可能になる。
【0080】
なお、凸極磁極部23b’の外周面の形状,すなわち、固定子の内周面と対向する面の形状は、図示するように、長方形で示しているが、破線X1で示す三角形状や、一点鎖線X2で示す台形形状等にすることで、スキュー効果が得られ、騒音を低減することができる。
【0081】
次に、図12を用いて、本発明の第3の実施形態による車両用回転電機の構成について説明する。本実施形態による車両用回転電機を用いる駆動発電システムの構成は、図1と同様である。本実施形態による車両用回転電機の構成は、図2とほぼ同様である。
図12は、本発明の第3の実施形態による車両用回転電機の構成を示す正面図である。なお、図2〜図8と同一符号は、同一部分を示している。
【0082】
本実施形態の回転電機は、図8に示した回転電機の回転子と固定子を、軸方向に2倍に展開したタンデム構成である。回転子の構成において、両側に位置する2個の円筒型ロータ磁極5aは、図3に示した円筒型ロータ磁極5aと同じものである。円筒型ロータ磁極5b”は、図3に示した円筒型ロータ磁極5bの軸方向の厚さを2倍にしたものである。
【0083】
図示の左側の円筒型ロータ磁極5aの凸部である磁極部に対して、中央部の円筒型ロータ磁極5b”の凸部である磁極部は、凸部同士の位相が180度ずれるように、2個の円筒型ロータ磁極5a,5b”は、それぞれ、シャフト7に固定されている。また、中央部の円筒型ロータ磁極5b”の凸部である磁極部に対して、図示の右側の円筒型ロータ磁極5aの凸部である磁極部は、凸部同士の位相が180度ずれるが、左右の円筒型ロータ磁極5aの凸部である磁極部は、凸部同士の位相が同相となるように、シャフト7に固定されている。
【0084】
また、3個の円筒型ロータ磁極5a,5b”の間にはそれぞれロータヨーク1が配置され、シャフト7に固定されている。3個の円筒型ロータ磁極5a,5b”の間の磁極中心部であって、しかも、ロータヨーク1の外周には、それぞれ界磁巻線6が巻回されている。
【0085】
また、固定子の構成において、両側に位置する2個のステータ磁極25aは、図5に示したステータ磁極25aと同じものである。ステータ磁極25b”は、図5に示したステータ磁極25bの軸方向の厚さを2倍にしたものである。各ステータ磁極25a,25b”のスロットには、固定子コイル3が挿入され、各ティースには、3相分布巻きで固定子コイルが巻回されている。
【0086】
本実施形態では、軸方向回転子と固定子の長さを増やすことで、発電機として動作するときには発電出力を増加でき、モータとして駆動されるときは出力トルクを増加することができる。
【0087】
次に、図13を用いて、本発明の第4の実施形態による車両用回転電機の構成について説明する。本実施形態による車両用回転電機を用いる駆動発電システムの構成は、図1と同様である。本実施形態による車両用回転電機の構成は、図2とほぼ同様である。
図13は、本発明の第4の実施形態による車両用回転電機の構成を示す正面図である。なお、図2〜図8と同一符号は、同一部分を示している。
【0088】
図3〜図12に示した例では、ステータ磁極25a,25bに巻回された固定子コイルは分布巻きであったのに対して、本実施形態では、集中巻きで構成している。すなわち、ステータ磁極25a,25bの内周側に突出して形成された1つのティース部に対して、集中して固定子コイルが巻回される。例えば、2:3系列ではロータ磁極が12極の場合ステータのティース数は18個となり、その18個のティースに18個のコイルを巻き付けて構成する。本実施形態では、ステータ磁極は、独立して2個(25a,25b)有るためロータ磁極数が12極でも、ステータのティース数は36個となる。ここで、第一のステータ磁極25aのティース部に巻回する固定子コイル3aと第二のステータ磁極25bのティース部に巻回する固定子コイル3bを、それぞれを独立させて3相を独立2巻線としている。なお、第一のステータ磁極25aのティース部に巻回する固定子コイル3aと第二のステータ磁極25bのティース部に巻回する固定子コイル3bの間で、最も近い位相のコイルを直列に接続して、3相の巻線としてもよいものである。また、図示する例では、回転子の磁極に対して界磁巻線6の上部にも冷却用のファン14を配置しており固定子コイルの冷却を促進している。
【0089】
本実施形態では、複数の磁極鉄心は放射状に径方向に延びており、鉄心の一方の磁極鉄心の磁極中心と鉄心の他方の磁極鉄心の磁極中心は互いに周方向にずれている。そして、巻線の鉄心の一方に最も近接した軸方向端部或いは軸方向端面は、鉄心の一方の巻線に最も近接した軸方向端部或いは軸方向端面よりも鉄心の他方寄りにあり、巻線の鉄心の他方に最も近接した軸方向端部或いは軸方向端面は、鉄心の他方の巻線に最も近接した軸方向端部或いは軸方向端面よりも鉄心の一方寄りにある。
【0090】
次に、図14〜図16を用いて、本発明の第5の実施形態による車両用回転電機の構成について説明する。本実施形態による車両用回転電機を用いる駆動発電システムの構成は、図1と同様である。本実施形態による車両用回転電機の構成は、図2とほぼ同様である。
図14は、本発明の第5の実施形態による車両用回転電機の構成を示す斜視図である。図15は、本発明の第5の実施形態による車両用回転電機に用いられる固定子の部分断面の構成を示す斜視図である。図16は、本発明の第5の実施形態による車両用回転電機に用いられる駆動部の構成を示す回路図である。なお、図1〜図10と同一符号は、同一部分を示している。
【0091】
図14に示した回転電機の構成において、回転子4の構成は、図3に示した回転子4と同様である。一方、固定子2”は、図5に示した固定子2とは一部異なっている。その詳細については、図15を用いて説明する。
【0092】
図15に示すように、固定子2”は、第1のステータ磁極を構成するステータ磁極片25a1,25a2と、第2のステータ磁極を構成するステータ磁極片25b1,25b2と、第1及び第2のステータ磁極を連結する連結部26’と、2つの固定子コイル3A,3Bとから構成される。ステータ磁極片25a1は、図示するように、その内周面側に、三角形状の爪部25a11を有している。また、ステータ磁極片25a2も、図示するように、その内周面側に、三角形状の爪部25a21を有している。各爪部25a11,25a21は、互いに180度位相がずれており、互いの爪部の先端が相手方の爪部の間隙に挿入される位置関係となっている。ステータ磁極片25b1,25b2も同様に構成されている。ステータ磁極片25a1,25a2,25b1,25b2は、圧粉磁芯や珪素鋼板等の薄板を積層して構成しているので、高速回転時にステータのスロットによる磁場の変動で発生する渦電流損(表面損)を低減することができる。特に、ステータ磁極片25a1,25a2,25b1,25b2で圧粉磁芯により構成することで、騒音を低減することができる。
【0093】
ステータ磁極片25a1,25a2からなる第1のステータ磁極の内部には、リング状に巻回された固定子コイル3Aが挿入されている。また、ステータ磁極片25b1,25b2からなる第1のステータ磁極の内部には、リング状に巻回された固定子コイル3Bが挿入されている。
【0094】
次に、図16に示すように、駆動部200Aは、2相全波整流回路を備えている。なお、駆動部200Aは、図10に示した界磁電流を制御するためのH型のインバータも備えているものであるが、図10と同じため、図示は省略している。
【0095】
2相全波整流回路は、固定子コイル3Aに生じた起電圧を全波整流するためのダイオードDA11,DA12,DA21,DA22と、固定子コイル3Bに生じた起電圧を全波整流するためのダイオードDB11,DB12,DB21,DB22とからなる。
【0096】
なお、図14〜図16に示したものは、2相の発電機であるが、3相の発電機としてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1の実施形態による車両用回転電機を用いる駆動発電システムの構成を示すシステムブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による車両用回転電機の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による車両用回転電機に用いる回転子の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による車両用回転電機に用いる他の回転子の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による車両用回転電機に用いる固定子の構成を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による車両用回転電機に用いる固定子の要部断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態による車両用回転電機に用いる固定子の要部を内周側から見た平面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態による車両用回転電機の構成を示す分解斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施形態による車両用回転電機の他の構成を示す分解斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施形態による車両用回転電機に用いられる駆動部の構成を示す回路図である。
【図11】本発明の第2の実施形態による車両用回転電機に用いる回転子の構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の第3の実施形態による車両用回転電機の構成を示す正面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態による車両用回転電機の構成を示す正面図である。
【図14】本発明の第5の実施形態による車両用回転電機の構成を示す斜視図である。
【図15】本発明の第5の実施形態による車両用回転電機に用いられる固定子の部分断面の構成を示す斜視図である。
【図16】本発明の第5の実施形態による車両用回転電機に用いられる駆動部の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0098】
1…ロータヨーク
2…固定子
3…固定子コイル
4…回転子
5…ロータ磁極
6…界磁巻線
7…シャフト
19…パワーモジュール
21…パワー素子
22…磁極センサ
23…永久磁石
25…ステータ磁極
26…連結部
27…空間部
100…車両用回転電機
200…駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ磁極と、前記ステータ磁極に巻回された固定子コイルとを有する固定子と、
前記固定子に対して回転可能に支持されるとともに、複数のロータ磁極と、前記複数のロータ磁極間に配置される界磁巻線とを有する回転子とを有する車両用回転電機において、
前記複数のロータ磁極は、それぞれ円筒型磁極からなることを特徴とする車両用回転電機。
【請求項2】
請求項1記載の車両用回転電機において、
前記回転子は、前記複数のロータ磁極内の円周方向に等間隔でそれぞれ配置された複数の永久磁石を備え、
前記複数のロータ磁極は、それぞれ、前記円周方向に等間隔で配置された永久磁石の間に凸極磁極部を有することを特徴とする車両用回転電機。
【請求項3】
請求項2記載の車両用回転電機において、
前記複数のロータ磁極の内、第1のロータ磁極の前記凸極磁極部に対して、第2のロータ磁極の前記凸極磁極部は、互いの凸部の位相が180度ずれていることを特徴とする車両用回転電機。
【請求項4】
請求項3記載の車両用回転電機において、
前記凸極磁極に形成された空間部を備えたことを特徴とする車両用回転電機。
【請求項5】
請求項3記載の車両用回転電機において、
前記永久磁石は、前記ロータ磁極の最外周面に近いところに埋め込まれていることを特徴とする車両用回転電機。
【請求項6】
請求項1記載の車両用回転電機において、
前記回転子は、前記複数のロータ磁極の円周方向に等間隔でそれぞれ配置された複数の凸極磁極部を備えることを特徴とする車両用回転電機。
【請求項7】
請求項6記載の車両用回転電機において、
前記複数のロータ磁極の内、第1のロータ磁極の前記凸極磁極部に対して、第2のロータ磁極の前記凸極磁極部は、互いの凸部の位相が180度ずれていることを特徴とする車両用回転電機。
【請求項8】
請求項1記載の車両用回転電機において、
前記固定子は、複数の前記ステータ磁極を接続する連結部を備えることを特徴とする車両用回転電機。
【請求項9】
請求項8記載の車両用回転電機において、
前記複数のステータ磁極は、前記連結部により、位相差をもって接続されていることを特徴とする車両用回転電機。
【請求項10】
請求項1記載の車両用回転電機において、
前記固定子コイルは、同相コイルが固定子コア内で位相差を持つように配置されていることを特徴とする車両用回転電機。
【請求項11】
請求項1記載の車両用回転電機において、
前記ロータ磁極は、薄板を積層して構成されるかまたは鉄の粒子を固めて製造した材料から構成されることを特徴とする車両用回転電機。
【請求項12】
請求項1記載の車両用回転電機において、
前記ステータ磁極は、薄板を積層して構成されるかまたは鉄の粒子を固めて製造した材料から構成されることを特徴とする車両用回転電機。
【請求項13】
ステータ磁極と、前記ステータ磁極に巻回された固定子コイルとを有する固定子と、
前記固定子に対して回転可能に支持されるとともに、複数のロータ磁極と、前記複数のロータ磁極間に配置される界磁巻線とを有する回転子とを有する車両用回転電機において、
前記複数のロータ磁極は、それぞれ円筒型磁極からなり、
前記ステータ磁極は、2つのステータ磁極片から構成されるとともに、
前記2つのステータ磁極片は、その内周面であって前記ロータと対向する側に三角形状の爪部を有することを特徴とする車両用回転電機。
【請求項14】
請求項13記載の車両用回転電機において、
前記ステータ磁極は、鉄の粒子を固めて製造した材料から構成されることを特徴とする車両用回転電機。
【請求項15】
複数の磁極を有する固定子と、
該固定子に空隙を介して回転可能に保持された回転子とを有し、
前記回転子は、薄板を積層した積層鉄心又は磁性材を圧して形成した圧粉磁心からなる少なくとも2つの鉄心が回転軸に対して並設して設けられ、かつそれらの鉄心間に巻線を介在させたものであり、
前記鉄心の一方は、前記巻線の励磁によって一方の極を構成する複数の磁極鉄心を備えており、
前記鉄心の他方は、前記巻線の励磁によって他方の極を構成する複数の磁極鉄心を備えており、
前記複数の磁極鉄心は放射状に径方向に延びており、
前記鉄心の一方の磁極鉄心の磁極中心と前記鉄心の他方の磁極鉄心の磁極中心は互いに周方向にずれており、
前記巻線の前記鉄心の一方に最も近接した軸方向端部或いは軸方向端面は、前記鉄心の一方の前記巻線に最も近接した軸方向端部或いは軸方向端面よりも前記鉄心の他方寄りにあり、
前記巻線の前記鉄心の他方に最も近接した軸方向端部或いは軸方向端面は、前記鉄心の他方の前記巻線に最も近接した軸方向端部或いは軸方向端面よりも前記鉄心の一方寄りにある
ことを特徴とする車両用回転電機。
【請求項16】
請求項15に記載の車両用回転電機において、
前記鉄心の周方向に隣接する各磁極鉄心間には永久磁石が配置されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項17】
請求項15に記載の車両用回転電機において、
前記固定子の磁極は、極性の異なる磁極片が周方向に交互に配置されて構成されている
ことを特徴とする車両用回転電機。
【請求項18】
請求項17に記載の車両用回転電機において、
前記磁極片は、磁性材を圧して形成した圧粉磁心から構成されている
ことを特徴とする車両用回転電機。
【請求項19】
複数の磁極を有する固定子と、
該固定子に空隙を介して回転可能に保持された回転子とを有し、
前記回転子は、薄板を積層した積層鉄心又は磁性材を圧して形成した圧粉磁心からなる少なくとも2つの鉄心が回転軸に対して並設して設けられ、かつそれらの鉄心間に巻線を介在させたものであり、
前記鉄心の一方は、前記巻線の励磁によって一方の極を構成する複数の磁極鉄心を備えており、
前記鉄心の他方は、前記巻線の励磁によって他方の極を構成する複数の磁極鉄心を備えており、
前記複数の磁極鉄心は放射状に径方向に延びており、
前記鉄心の一方の磁極鉄心の磁極中心と前記鉄心の他方の磁極鉄心の磁極中心は互いに周方向にずれており、
前記巻線は、前記鉄心の一方と前記鉄心の他方との間に形成された空間から外周表面全面が露出するように、前記鉄心の一方と前記鉄心の他方とによって軸方向から挟持されている
ことを特徴とする車両用回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−333642(P2006−333642A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154809(P2005−154809)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】