説明

車両用表示装置

【課題】 サンバイザによって隠される方向をカメラにより撮影して表示器に表示するようにした車両用表示装置において、カメラにより撮影した映像を表示器に表示する場合に、使用者がその映像の中から自身の見たいものを探し出すといった作業をせずとも済むようにする。
【解決手段】 太陽光を遮るためにサンバイザを使用すると、そのサンバイザによって隠された方向をHDRCカメラ7が撮影する。パターン認識部13は、カメラ7の撮影映像中から信号機を抽出し表示器9に送って画面10に表示させる。この場合、表示要求スイッチ18が操作されなければ、画面10への信号機の表示は行われないようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の構成部材または車両の備品などによって隠される例えば信号機を表示するように構成した車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点において信号機の信号灯の状態を認識し、信号機の信号に応じて車両を停止させたり、進行させたりすることは、事故防止上きわめて重要なことである。しかしながら、現実には、太陽光が逆光となって信号機の状態を認識し難かったり、また、逆光を遮るためにサンバイザを使用していた場合には、信号機がサンバイザに隠されてしまって見えなくなったりする。
【0003】
信号機の重要性に鑑み、特許文献1は、信号機の状態を無線信号として出力する送信機を信号機に付設すると共に、車両に送信機から出力される無線信号を受信する受信機および受信された信号機の状態情報を運転者に告知する表示装置を設けるシステムを提案している。また、特許文献2は、自動車の構成部品、例えば左右のフロントピラーによって運転者の視界が妨げられるので、そのフロントピラーによって見えなくなる領域を撮影するカメラを設け、このカメラで撮影した映像を表示装置に表示させるようにした車両用表示装置を開示している。
【特許文献1】特開平8−269921号公報
【特許文献2】特開2004−64131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムは、信号機に送信機が付設されていることによって初めて機能するシステムであるから、大きなコスト負担が発生する。特許文献2の車両用表示装置では、信号機側に送信機などの装置を新たに付設する必要はない。しかしながら、特許文献2では、カメラによって撮影された全ての物が表示装置に表示されるので、その映像中に信号機が含まれているか否かは運転者自身が見分けて認識する必要がある。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、撮影手段によって撮影した映像を表示手段に表示する場合に、使用者がその映像の中から自身の見たいものを探し出すといった作業をせずとも済む車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明では、車両を構成する部材または車両に設けられた備品によって運転席からの視界が妨げられる領域を撮影可能な撮影手段と、この撮影手段によって撮影された映像のうちから特定の物を検出してその物の映像を抽出する抽出手段と、この抽出手段によって抽出された特定の物の映像を表示する表示手段とを備えているので、表示手段には、撮影手段の撮影映像の全てが表示されるのではなく、使用者が見たい物(特定の物)が表示される。このため、表示手段に表示された映像の中から使用者が自分の見たい物を探し出すといった作業をせずとも済む。
【0007】
請求項2の発明では、サンバイザを使用すると、サンバイザによって運転席からの視界が一部遮られるが、そのサンバイザによって遮られた領域は、撮影手段によって撮影され、その映像の中から特定の物の映像が表示手段に表示される。このため、逆光で見難くなっている領域内に使用者が見たい物があった場合、その物を表示手段の表示によって認識できる。
【0008】
この場合、請求項3のように、信号機の映像を抽出して表示手段に表示するようにすることで、逆光によって見難くなった信号機の状態を表示手段により認識でき、車両の進行・停止を信号機の状態に合わせて正しく行うことができる。
請求項4の発明によれば、使用者が見たいと思ったときに、操作手段を操作することで、その物を表示手段に表示させることができる。
請求項5の発明では、サンバイザの使用を検出したときに限り前記特定の物の映像を表示手段に表示するので、それ以外のときには、表示手段を他のもの、例えばナビゲーション装置の地図表示のために使用することができる。
【0009】
請求項6の発明では、操作手段を設け、サンバイザの使用が検出され、且つ操作手段が操作されたときに限り、表示手段に前記特定の物の映像を表示させるので、表示手段を他のものの表示に使用する機会が増す。
請求項7の発明では、操作手段が操作されてから一定時間だけ、抽出手段により抽出された映像が表示手段に表示されるので、いつまでも表示手段への映像表示が続くといった不具合を解消することができる。
【0010】
請求項8の発明では、操作手段がステアリングホイールに設けられているので、運転者の操作がし易くなる。
請求項9の発明によれば、地図データを取得する地図データ取得手段と、自車の現在位置を取得する位置取得手段と、自車の進行方向を取得する進行方向取得手段と、前記位置情報取得手段により取得した現在位置と前記進行方向取得手段により取得した自車の進行方向と前記地図データ取得手段により取得した地図データとに基づいて自車が信号機の設置位置に接近するか否かを判断する信号機接近判断手段とを備えているので、車両が交差点に接近する状態にあって、しかもサンバイザを使用していて信号機の状態が見難くなっている場合に、自動的に信号機の映像を表示手段に表示させることができる。
【0011】
請求項10の発明によれば、自車の現在位置を取得する位置取得手段と、自車の進行方向を取得する進行方向取得手段と、現在の日時を取得する日時情報取得手段と、日時と太陽の位置との関係を地域別に有するデータベースと、前記位置取得手段と前記日時情報取得手段と前記データベースとから現在位置の太陽の位置を推測する太陽位置推測手段と、 前記推測した太陽の位置と前記進行方向取得手段により取得した自車の進行方向とにより、自車の運転席からフロントウインドを通して見る方向が太陽光による逆光の影響を受けるか否かを判断する逆光判断手段と、逆光の影響を受けると判断したとき、その逆光となる方向を撮影する撮影手段と、この撮影手段によって撮影された映像のうちから信号機の映像を抽出する抽出手段と、この抽出手段によって抽出された映像を表示する表示手段と を具備しているので、逆光で信号機が見難くなっている場合に、自動的に信号機の映像を表示手段に表示させることができる。
【0012】
請求項11の発明によれば、地図データを取得する地図データ取得手段と、前記位置情報取得手段により取得した位置情報と前記進行方向取得手段により取得した自車の進行方向と前記地図データ取得手段により取得した地図データとから自車が信号機の設置位置に接近するか否かを判断する信号機接近判断手段と、前記逆光判断手段が逆光の影響を受けると判断し、且つ前記信号機接近判断手段により自車が信号機に接近すると判断されたことを条件に、前記抽出手段により抽出された信号機の映像を前記表示手段に表示する表示制御手段とを備えているので、逆光で信号機が見難くなっている場合であって、車両が交差点に接近する状態にある場合に、自動的に信号機の映像を表示手段に表示させることができる。
【0013】
請求項12の発明では、車両が信号機から遠ざかるようになった場合、つまり、信号機の状態を見る必要がなくなったときに、自動的に信号機の映像を表示手段から消去することができる。
請求項13のように、広ダイナミックレンジ特性を有する撮影手段を使用することによって太陽光が逆光となっていても、信号機の状態を明確に表示手段に表示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図3は自動車(車両)1の車内からフロントウインド2を通して前方を見た状態を示している。図3に示すように、フロントウインド2の上部には、運転席側サンバイザ3と助手席側サンバイザ4とが設けられている。これら運転席側および助手席側の各サンバイザ3および4は、L形の枢軸5により上下方向に回動可能に支持されている。
【0015】
これらサンバイザ3,4は、常には、フロントウインド2の上方の車内天井部に重ねられた不使用位置に置かれている。そして、この不使用位置から、下方に回動されると、フロントウインド2の上部から車内に差し込む光(多くは太陽光)を遮るようになる。このようにフロントウインド2の上部から車内に差し込む光を遮るサンバイザ3,4の位置を使用位置という。
【0016】
運転席6に座った使用者(運転者)は、特に運転席側サンバイザ3が使用位置にあると、フロントウインド2を通して見る前方視界の上側が一部遮られる。このサンバイザ3,4によって遮られる視界を死角領域ということとし、この死角領域を図4にDで示す。そして、自動車1の前部には、図4に示すように撮影手段としてのHDRCカメラ7が設けられており、このHDRCカメラ7は、自動車1の前上方を広い範囲をカラーで撮影可能となっており、このHDRCカメラ7の撮影可能範囲(図4にEで示す。)は、上記運転席側サンバイザ3によって運転者の死角となる領域Dを包含する。
【0017】
ここで、HDRCカメラ7のHDRCとは、High Dynamic Range Cmosの略で、広ダイナミックレンジ特性を有する。ダイナミックレンジが広いカメラでは、明瞭に撮影することができる明部分と暗部分との光量の差が大きい。このため、HDRCカメラ7では、太陽光が逆光となるような被写体でも明瞭に撮影することができる。本実施例では、信号機を撮影対象としているが、信号機の後に太陽があってその太陽光が逆光となるような場合でも、このHDRCカメラ7によれば、信号機を明瞭に映し出すことができるのである。
【0018】
図1は車両用表示装置8を示す。この車両用表示装置8は、HDRCカメラ7の撮影した映像から信号機を抽出して表示器9の画面10に表示するもので、CPUを備えたECUからなる画像処理装置11を主体にして構成されている。そして、HDRCカメラ7の映像信号は、画像処理装置11に入力される。この画像処理装置11は、画像処理部12、パターン認識部13、映像出力部14、全体を統括制御する制御部15を備えている。
【0019】
上記画像処理部12は、HDRCカメラ7の映像信号を処理して画像情報を生成する。パターン認識部13は、画像処理部12が処理した画像情報に基づいて、HDRCカメラ7の撮影画像の中に信号機(特定の物)が含まれているか否かを認識し、信号機が含まれていれば、その信号機の映像を抽出する。従って、パターン認識部13は、HDRCカメラ7の撮影映像から信号機の映像を抽出する抽出手段として機能する。
【0020】
この場合、信号機は、横長或いは縦長のほぼ矩形状をなし、その矩形状の外郭の中に円形の信号灯が3個並んでおり、その3個の円形内の色は赤、黄、青でそのうちのいずれかが他よりも明るい、といった特徴を有している。パターン認識部13は、画像処理部12により処理された映像中から上記特徴を有する部分を検出し、検出したらその部分(信号機)を抽出する。
映像出力部14は、パターン認識部13が抽出した映像を表示手段として前記表示器9に出力する。表示器9は、カラー表示可能なディスプレイ、例えばカラー液晶ディスプレイからなるもので、画像処理装置11の映像出力部14から出力された映像信号は、表示器9の制御部16により処理されて画面10に信号機の映像として表示される。
【0021】
表示器8は、本実施形態では、カーナビゲーション装置(図示せず)の表示器としても使用される。この表示器8の画面10は、図3に示すように、インストルメントパネル17の中央部に配設されている。また、図3に示すように、自動車1のステアリングホイール18には、操作手段としての表示要求スイッチ19が設けられており、この表示要求スイッチ19の操作信号は車両用表示装置8に入力されるようになっている。画像処理装置11の制御部(表示制御手段)15は、表示要求スイッチ19から操作信号が入力されると、HDRCカメラ7に撮影を開始させる。そして、制御部15は、HDRCカメラ7の撮影時点から計時動作を開始し、一定時間が経過すると、HDRCカメラ7による撮影を停止させるようになっている。
【0022】
次の上記構成の作用を図2のフローチャートをも参照しながら説明する。太陽光がフロントウインド2の上部から車内に差し込んでくると、運転者の目に太陽光が入るので、まぶしくて前方が見難くなる。このような場合、運転者は、運転席側のサンバイザ3を下方に回動操作して使用位置にセットする。すると、サンバイザ3がフロントウインド2の上部右側の視界を遮るため、交差点の信号機がサンバイザ3に隠されて見えなくなることがある。
【0023】
このような場合、表示要求スイッチ19を操作する。すると、その操作信号が画像処理装置11に入力される(ステップS1で「YES」)。画像処理装置11の制御部15は、表示要求スイッチ19からの操作信号の入力に基づき、HDRCカメラ7による撮影を開始する。そして、画像処理装置11のパターン認識部13は、HDRCカメラ7の撮影映像中に信号機があるか否かを判断し、信号機の映像がある場合(ステップS2で「YES」)、その信号機の映像を抽出して表示器9に出力する(ステップS3)。
ここで、HDRCカメラ7のダイナミックレンジは広い。このため、HDRCカメラ7の撮影範囲内に太陽光が入っていて逆光状態となっていたとしても、HDRCカメラ7は、信号機を明瞭に撮影する。
【0024】
表示器9の制御部16は、画像処理装置11から送られてきた信号機の映像Sを、図5に示すように、画面10に、既に表示されている道路地図に重ねて表示する(ステップS4)。そして、運転者は、信号機が使用位置にあるサンバイザ3に隠されて直接見ることができなくても、表示器9の画面10に表示された信号機を見ることにより、信号灯の状態を認識することができる。そして、画像処理装置11の制御部15は、表示要求スイッチ19が操作された時点で計時動作を開始しており、その計時時間が一定時間に達すると(ステップS5で「YES」)、HDRCカメラ7による撮影を停止し、これにより表示器9の画面10への信号機の映像表示も停止され(ステップS6)、リターンとなる。
【0025】
このように本実施例によれば、サンバイザ3の使用により、運転者が信号機を直接見ることができない状態となっても、運転者は、表示器9の画面10によって信号機の状態を認知することができる。この場合、カメラ7は、広ダイナミックレンジ特性を有しているので、太陽が撮影範囲に入るという逆光状態でも、明瞭に信号機を撮影することができ、画面10にも信号機を明瞭に表示することができる。
【0026】
また、表示要求スイッチ19を操作したことを条件に、HDRCカメラ7で撮影した信号機が画面10に表示されるので、信号機が道路の左側に設置されていて、サンバイザ3を使用していても、運転者が信号機をフロントウインド2を通して見ることができるようなときには、信号機を画面10に表示しないで済み、カーナビゲーション装置の地図表示用としてだけの使用を継続することができる。なお、本実施形態では、HDCRカメラ7の助手席側サンバイザ4によって隠される信号機も表示器9の画面に表示することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
図6〜図9は本発明の第2の実施形態を示す。この第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と次の2点において相違する。第1点は、表示要求スイッチ19が操作されたことに加えて、運転席側サンバイザ3が使用状態にあることを条件に、信号機の映像を表示するようにした点である。第2点は、信号機を表示する表示器をそれ専用のものとし、その表示器を運転席側サンバイザ3に設けたところにある。
【0028】
図9に示すように、運転席側サンバイザ3の枢軸5側には、固定接点20が設けられ、サンバイザ3側には可動接点21が設けられており、これら固定および可動の両接点20および21により、サンバイザ3の使用を検出する使用検出手段としての検出スイッチ22が構成されている。この検出スイッチ22は、サンバイザ3が不使用位置にあるときには、図9(a)に示すように、可動接点21が固定接点20から離れていることにより、不使用を検出(オフ)している。そして、サンバイザ3を不使用位置から使用位置に回動操作すると、図9(b)に示すように、可動接点21が固定接点20に接触するようになり、使用検出スイッチ22は、使用を検出(オン)する。この使用検出スイッチ22は、画像処理装置11に接続され、該画像処理装置11に対し、サンバイザ3の使用・不使用に応じて使用信号・不使用信号を出力する。
【0029】
信号機表示専用の表示器(表示手段)23は、図6に示すように、制御部24およびカラー液晶からなる画面25を備えている。この表示器23の画面25は、図9に示すように、サンバイザ3の表裏両面のうち、不使用位置では上向きとなって運転者からは見えないが、使用位置に回動操作された状態では室内の後方を向いて運転者から見得るようになる面に取り付けられている。
【0030】
この構成においてフロントウインド2の上部から車内に差し込む太陽光が眩しく感じるときには、サンバイザ3を図9(a)の不使用位置から下方に回動操作して図9(b)に示すように使用位置に回動操作して図8にも示すようにフロントウインド2の上部を隠すようにする。すると、検出スイッチ22がオンして使用検出信号を出力する。これにより、画像処理装置11の制御部15は、サンバイザ3が使用中であることを認識し(ステップA1)、表示要求スイッチ19が操作されたか否かを監視する状態となる(ステップA2)。
【0031】
そして、図8(a)に示すように、信号機のない場合には良いが、図8(b)に示すように、信号機のある交差点に差し掛かったとき、その交差点に設置されている信号機がサンバイザ3により隠されて運転席から見えない場合、運転者が表示要求スイッチ19を操作する。すると、画像処理装置11の制御部15は、表示要求スイッチ19の操作を検出し(ステップA2で「YES」)、そして、前述の第1の実施形態の場合と同様に、HDRCカメラ7による撮影映像から信号機を抽出して表示器23の画面25に表示させる(ステップA3〜A5)。
【0032】
このとき、サンバイザ3は、図8に示すように、表示器23の画面25が取り付けられた面を車内に向けているので、運転者はその画面25を見ることによって該画面25に表示された信号機により信号灯の状態を認識することができる。そして、表示要求スイッチ19の操作から一定時間経過すると(ステップA6で「YES」)、制御部15は、HDRCカメラ7による撮影を停止して表示器23への信号機の表示を停止させ(ステップA7)、リターンとなる。
【0033】
このように本実施例によれば、サンバイザ3を使用位置にセットすると、運転者が少し上を向くと、そのサンバイザ3に設けられた表示器23の画面25を見ることができる状態となる。そして、表示要求スイッチ19を操作すると、そのサンバイザ3の画面25に信号機が表示されるので、サンバイザ3によって隠された信号機を、該サンバイザ3を透して見るかのごとき状態となり、信号機の確認にとって好都合となる。
【0034】
(第3の実施形態)
図10および図11は本発明の第3の実施形態を示す。この第3の実施形態は、前述の第2の実施形態を前提にしており、以下に第2の実施形態と異なるところを説明する。
図10に示すように、画像処理装置11には、カーナビゲーション装置26の位置検出手段としての位置検出器27および地図データ記憶装置28が接続されている。
上記位置検出器27は、GPS用の人工衛星からの送信電波に基づいて自動車(自車)1の位置を検出(測位)するGPS(Global Positioning System )のためのGPS受信機29、自車の回転角速度を検出する方位センサとしてのジャイロスコープ30、自車の走行距離を検出する距離センサ31を有している。これらセンサの検出データにより自動車1の現在位置が検出される。なお、各センサは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら自動車1の現在位置を検出するように構成されている。
また、地図データ記憶装置28は、例えば地図データを記憶したDVD−ROMとこのDVD−ROMから地図データを読み取るDVDプレーヤとから構成されている。そして、地図データ中には、信号機設置データが含まれており、この信号機設置データにより、信号機が設置してある位置を検出することができるようになっている。
【0035】
次に上記構成の作用を図11のフローチャートを参照しながら説明する。図11のルーチンに入ると、画像処理装置11の制御部15は、サンバイザ3が使用されているか否かを判断し、使用されていれば(ステップB1で「YES」)、次に位置検出器27から自動車1の現在位置およびジャイロスコープ30から自動車1の進行方向を取得する取得する(ステップB2)と共に、地図データ記憶装置28から現在位置周辺の地図データを取得する(ステップB3)。
【0036】
そして、制御部15は、ジャイロスコープ(進行方向取得手段)30の検出情報から自動車1の進行方向を取得し、そして、図データから現在位置が信号機の手前であるか否か、つまり自動車1の進行方向前方の所定距離内に信号機設置位置があるか否かを判断する(ステップB4;信号機接近判断手段)。自動車1の現在位置が信号機の手前である場合(ステップB4で「YES」)、制御部15は、HDRCカメラ7による撮影を開始し、その映像中からパターン認識部13によって信号機の映像を抽出して表示器9の画面10に表示させる(ステップB5、ステップB6で「YES」、ステップB7)。そこで、運転者は、逆光によって信号機が見難い状態にあったり、使用位置にあるサンバイザ3により信号機が隠されていたりした場合、表示器9の画面10を見ることによって信号機の状態を認識することができる。
【0037】
表示器9の画面10に信号機を表示させている状態において、制御部15は、位置検出器27から現在位置を取得し(ステップB8)、先に取得した地図データから自動車1が信号機設置位置を通過したか否かを判断することを繰り返す(ステップB9で「NO」)。そして、自動車1が信号機設置位置を通過したと判断すると(ステップB9で「YES」)、制御部15は、HDRCカメラ7による撮影を停止して表示器9の画面10への信号機の表示を停止し(ステップB10)、リターンとなる。
【0038】
このように本実施例によれば、サンバイザ3が使用され、且つ信号機の手前であるとき、HDRCカメラ7による撮影映像から信号機を抽出して表示器23の画面25に表示するので、必要な時に自動的に画面25に信号機が表示され、利便性が向上する。
【0039】
(第4の実施形態)
図12および図13は本発明の第4の実施形態を示す。この第4の実施形態は、前述の第1の実施形態を前提にしており、以下に第1の実施形態と異なるところを説明する。なお、この実施形態では、上述の第3の実施形態と同様のカーナビゲーション装置を利用するので、カーナビゲーション装置については、上記第3の実施形態で使用した符号をそのまま使用し、詳細な説明は省略する。
【0040】
図12に示すように、画像処理装置11には、カーナビゲーション装置26の位置検出器27および地図データ記憶装置28が接続されている。なお、GPS用の人工衛星からの送信電波には、現在日時(年月日時刻)を通知する信号も含まれており、この実施形態では、その送信電波により現在日時を検出するようにしている。
【0041】
一方、画像処理装置11は、データベース32を有している。このデータベース32には、地域別に、暦日毎の時刻と太陽の位置との関係がテーブル化して記憶されている。
次に上記構成の作用を図13のフローチャートを参照しながら説明する。図13のルーチンに入ると、画像処理装置11の制御部15は、位置検出器27から自動車1の現在位置を取得すると共に、GPS受信機29から現在の暦日および時刻を取得し、且つジャイロスコープ30から自動車1の進行方向を取得する(ステップC1)。次に、制御部15は、データベース31を検索して、取得した自動車1の現在位置が属する地域において、現在の暦日および時刻から太陽の位置を取得し、これを基に現在位置での太陽の位置を推測する(ステップC2;太陽位置推測手段)。
【0042】
そして、制御部15は、推測した太陽の位置と自動車1の進行方向とから、フロントウインド2から太陽光が差し込むか否か、つまり進行方向の前方に太陽があって、その太陽が逆光となるか否かを判断する(ステップC3;逆光判断手段)。逆光となると判断した場合(ステップC3で「YES」)、制御部15は、次に、地図データ記憶装置28から現在位置周辺の地図データを取得し(ステップC4)、この地図データから現在位置が信号機の手前であるか否か、つまり自動車1の進行方向前方の所定距離内に信号機設置位置があるか否かを判断する(ステップC5)。
【0043】
自動車1の現在位置が信号方向の手前である場合(ステップC5で「YES」)、制御部15は、HDRCカメラ7による撮影を開始し、その映像中からパターン認識部13によって信号機の映像を抽出して表示器9の画面10に表示させる(ステップC6〜C8)。
このため、運転者は、逆光によって信号機が見難い状態にあったり、使用位置にあるサンバイザ3により信号機が隠されていたりした場合、表示器9の画面10を見ることによって信号機の状態を認識することができる。
【0044】
表示器9の画面10に信号機を表示させている状態において、制御部15は、位置検出器27から現在位置を取得し(ステップC9)、先に取得した地図データから自動車1が信号機設置場所を通過したか否かを判断することを繰り返す(ステップC10で「NO」)。そして、自動車1が信号機設置場所を通過したと判断すると(ステップC10で「YES」)、制御部15は、HDRCカメラ7による撮影を停止して表示器9の画面10への信号機の表示を停止し(ステップC10)、リターンとなる。
【0045】
(他の実施形態)
信号機の映像は、図14に示す本発明の第5の実施形態のように、図示しないヘッドアップディスプレイ(表示手段)によってフロントウインド2に表示するようにしても良い。
また、信号機の映像は、図15に示す本発明の第6の実施形態のように、図視しないヘッドアップディスプレイ(表示手段)によって計器盤33の前面を覆っているメータ用カバーガラス34に表示するようにしても良い。
上述の第4の実施形態において、逆光と判断したときに信号機の映像を表示器9の画面10に表示するようにしても良い。つまり、ステップC4以降はなくとも良い。この場合でも、HDRCカメラ7の撮影映像中に信号機がなければ画面10には表示されず、信号機が撮影されたときにだけ、その映像が画面10に表示されるので、運転者が画面10から信号機を探し出すといった作業をしなくとも済む。
【0046】
カメラは、HDRCカメラに限られない。
カメラで撮影する方向は、サンバイザ3によって隠される方向に限られず、左右のピラーによって隠される方向など、車両を構成する部材、或いは車両に取り付けられる備品によって隠される方向を撮影するものであっても良い。そして、撮影画像から抽出する特定の物としては、信号機に限らず、電柱などであっても良い。
表示要求スイッチ19を設けるところは、運転者の操作可能な範囲にあれば、ステアリングホイール18に限られない。
現在日時は、画像処理装置11に計時手段を設け、この計時手段によって計時するようにしても良い。
助手席側サンバイザ4によって隠される領域内の信号機を表示するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すブロック図
【図2】信号機映像表示のフローチャート
【図3】車内から前方を見た斜視図
【図4】自動車の平面図
【図5】表示器への信号機の表示形態を示す図
【図6】本発明の第2の実施形態を示すブロック図
【図7】信号機映像表示のフローチャート
【図8】サンバイザの使用状態でフロントウインドを通して見た斜視図
【図9】サンバイザの使用の検出形態を示す断面図
【図10】本発明の第3の実施形態を示すブロック図
【図11】信号機映像表示のフローチャート
【図12】本発明の第4の実施形態を示すブロック図
【図13】信号機映像表示のフローチャート
【図14】本発明の第5の実施形態を示し、フロントウインドへの信号機の表示形態を示す図
【図15】本発明の第6の実施形態を示し、メータ用カバーガラスへの信号機の表示形態を示す図
【符号の説明】
【0048】
図中、1は自動車(車両)、2はフロントウインド、3は運転席側サンバイザ、7はHDRCカメラ(撮影手段)、8は車両用表示装置、9は表示器(表示手段)、10は画面、13はパターン認識部(抽出部)、15は制御部(表示制御部、信号機接近判断手段、太陽位置推測手段、逆光判断手段)、18はステアリングホイール、19は表示要求スイッチ(操作手段)、22は使用検出スイッチ(使用検出手段)、23は表示器(表示手段)、26はカーナビゲーション装置、27は位置検出器(位置取得手段)、28は地図データ記憶装置(地図データ取得手段)、30はジャイロスコープ(進行方向取得手段)、32はデータベースである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を構成する部材または車両に設けられた備品によって運転席からの視界が妨げられる領域を撮影可能な撮影手段と、
この撮影手段によって撮影された映像のうちから特定の物の映像を抽出する抽出手段と、
この抽出手段によって抽出された映像を表示する表示手段と
を具備してなる車両用表示装置。
【請求項2】
車両のフロントウインドの上部に設けられ不使用位置と使用位置との間で移動可能なサンバイザと、
前記使用位置にある前記サンバイザによって運転席から前記フロントウインドを通して見る視界が妨げられる領域を撮影可能な撮影手段と、
この撮影手段によって撮影された映像のうちから特定の物の映像を抽出する抽出手段と、
この抽出手段によって抽出された映像を表示する表示手段と
を具備してなる車両用表示装置。
【請求項3】
前記特定の物は、信号機であることを特徴とする請求項1または2記載の車両用表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用表示装置において、
操作手段と、
この操作手段が操作されたことを条件に、前記表示手段に前記抽出手段により抽出された映像を表示させる表示制御手段と
を設けたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項5】
請求項2記載の車両用表示装置において、
更に、前記サンバイザが使用位置に移動されたことを検出する使用検出手段と、
この使用検出手段が前記サンバイザの使用を検出したことを条件に、前記表示手段に前記抽出手段により抽出された映像を表示させる表示制御手段と
を設けたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両用表示装置において、
更に、操作手段を設け、
前記表示制御手段は、前記使用検出手段が前記サンバイザの使用を検出し、且つ前記操作手段が操作されたことを条件に、前記表示手段に前記抽出手段により抽出された映像を表示させることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記操作手段が操作されてから一定時間、前記表示手段に前記抽出手段により抽出された映像を表示させることを特徴とする請求項4または6記載の車両用表示装置。
【請求項8】
前記操作手段は、ステアリングホイールに設けられていることを特徴とする請求項4、6、7のいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項9】
請求項5記載の車両用表示装置において、
前記抽出手段が抽出する前記特定の物は信号機であり、
加えて、地図データを取得する地図データ取得手段と、
自車の現在位置を取得する位置取得手段と、
自車の進行方向を取得する進行方向取得手段と、
前記位置情報取得手段により取得した現在位置と前記進行方向取得手段により取得した自車の進行方向と前記地図データ取得手段により取得した地図データとに基づいて自車が信号機の設置位置に接近するか否かを判断する信号機接近判断手段と
を備え、
前記表示制御手段は、前記使用検出手段が前記サンバイザの使用を検出し、且つ前記信号機接近判断手段により自車が信号機設置位置に接近すると判断したことを条件に、前記表示手段に前記抽出手段により抽出された信号機の映像を表示させることを特徴とする請求項5記載の車両用表示装置。
【請求項10】
自車の現在位置を取得する位置取得手段と、
自車の進行方向を取得する進行方向取得手段と、
現在の日時を取得する日時情報取得手段と、
日時と太陽の位置との関係を地域別に有するデータベースと、
前記位置取得手段と前記日時情報取得手段と前記データベースとから現在位置の太陽の位置を推測する太陽位置推測手段と、
前記推測した太陽の位置と前記進行方向取得手段により取得した自車の進行方向とにより、自車の運転席からフロントウインドを通して見る方向が太陽光による逆光の影響を受けるか否かを判断する逆光判断手段と、
逆光の影響を受けると判断したとき、その逆光となる方向を撮影する撮影手段と、
この撮影手段によって撮影された映像のうちから信号機の映像を抽出する抽出手段と、
この抽出手段によって抽出された映像を表示する表示手段と
を具備してなる車両用表示装置。
【請求項11】
請求項10記載の車両用表示装置において、
更に、地図データを取得する地図データ取得手段と、
前記位置情報取得手段により取得した位置情報と前記進行方向取得手段により取得した自車の進行方向と前記地図データ取得手段により取得した地図データとから自車が信号機の設置位置に接近するか否かを判断する信号機接近判断手段と、
前記逆光判断手段が逆光の影響を受けると判断し、且つ前記信号機接近判断手段により自車が信号機に接近すると判断されたことを条件に、前記抽出手段により抽出された信号機の映像を前記表示手段に表示する表示制御手段と
を備えていることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項12】
前記信号機接近判断手段により自車が信号機の設置位置から遠ざかると判断したとき、
前記表示制御手段は、前記表示手段への信号機の映像の表示を停止することを特徴とする請求項9ないし11のいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項13】
前記撮影手段は、広ダイナミックレンジ特性を有することを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の車両用表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−260011(P2006−260011A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75041(P2005−75041)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】