説明

車両用補機の配設構造

【課題】車室への影響を抑えつつ、パワートレインユニットの後方シフトレイアウトと、車両用補機ユニットの配設とを両立させ、また、パワートレインユニットの吸排気系の取り回しが有利となり、パワートレインユニットの特性向上を図る車両用補機の配設構造を提供する。
【解決手段】車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネル3が設けられ、ダッシュパネル3に設けられた凹部4内に車輪を駆動するパワートレインユニット31が設けられ、ダッシュパネル3の車室内側の凹部4の側方には車両用補機ユニット40が設けられ、パワートレイン31は、正面視で車幅方向に傾斜しては配設されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルを設け、該ダッシュパネルには後方に窪む凹部を設けると共に、この凹部内に車輪(FR車両の場合には後輪)を駆動するパワートレインユニットが設けられた車両において、空調ユニット等の補機を配設するような車両用補機の配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重量物としてのパワートレインユニット(例えば、エンジンとトランスミッション)を車両前後方向の中央寄りに配設し、ヨー慣性モーメントの低減を図って、操縦安定性および車両の運動性能の向上を図った車両としては、図13に示す構造がある。なお、図13では、パワートレインユニットとしてロータリエンジンおよびトランスミッションを用いた場合の構成を実線で示し、パワートレインユニットとしてレシプロエンジンおよびトランスミッションを用いた場合の構成を点線で示している。
【0003】
図13に示す従来構造は、エンジンルームと車室とを前後方向に仕切るダッシュパネル90A,90Bを設け、このダッシュパネル90A,90Bの車幅方向中央部に、該中央部が後方に向けて窪む凹部91A,91Bを形成し、この凹部91A,91B内にパワートレインユニットを構成するロータリエンジン92Aまたはレシプロエンジン92Bの後側一部を配設すると共に、トンネル部93の下部、つまり車外側にはトランスミッション94A,94Bを配設し、さらに、上記凹部91A,91Bに近接するように車幅方向の中央部には車両用補機ユニットの一例としての空調ユニット95A,95Bを配設したものである。
【0004】
図13の実線(ロータリエンジン搭載形態)と、点線(レシプロエンジン搭載形態)との比較において、レシプロエンジン92Bはロータリエンジン92Aよりも大きいため、ダッシュパネル90Bの凹部91Bを、ロータリエンジン搭載時のそれに対してさらに後方に設定し、かつ、車幅方向のセンタ部分に配設される空調ユニット95Bはロータリエンジン搭載時の空調ユニット95Aに対して小さいものに設定している。なお、図13において、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示す。
【0005】
このように構成すると、ロータリエンジン92A、レシプロエンジン92Bの何れを搭載した場合においても、ヨー慣性モーメントの低減、操縦安定性および車両の運動性能の向上を達成することができる。
【0006】
しかしながら、ヨー慣性モーメントのさらなる低減、操縦安定性等のさらなる向上を図ることが要請されており、この場合、ロータリエンジン92A、またはレシプロエンジン92Bを、さらに後方に後退させることが考えられるが、エンジン92A,92Bが空調ユニット95A,95Bと干渉するので、その後退配置(後方シフトレイアウト)は不可能であった。
【0007】
また、エンジン92A,92Bが空調ユニット95A,95Bと干渉するのみならず、パワートレインユニット用の補機として発電機などが車両正面視でエンジン回転軸(レシプロエンジンの場合には、クランクシャフト、ロータリエンジンの場合には、エキセントリックシャフト)よりも上方において車幅方向の一方側外方に出っ張るように配設されている関係上、ロータリエンジン92A、またはレシプロエンジン92Bを単に後方に後退させると、発電機などの補機が凹部91A,91Bの壁面と干渉することが懸念されるので、パワートレインユニットの後方シフトレイアウト(後退配置)が困難であった。
【0008】
特許文献1には、図13のロータリエンジン92Aを搭載した場合の構成とほぼ同様の構造が開示されているので、上述同様の問題点がある。
一方、特許文献2、特許文献3には、パワートレインユニットのさらなる後退配置を達成する目的で、車室内を空調する空調ユニットが、車室後方に配設された車両用補機の配設構造が開示されているが、空調ユニットの占有スペースに対応して車室または荷室が狭くなるので、実用性に乏しい問題点があった。
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【特許文献2】特開2005−28911号公報
【特許文献3】特開2005−29057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、ダッシュパネルの車室内側の凹部の側方に車両用補機ユニットを設け、パワートレインユニットは正面視で車幅方向に傾斜して配設(いわゆるスラント配置)することにより、車室への影響を抑えつつ、パワートレインユニットの後方シフトレイアウトと、車両用補機ユニットの配設とを両立させることができ、また、パワートレインユニットの吸排気系の取り回しが有利となり、パワートレインユニットの特性向上を図ることができる車両用補機の配設構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による車両用補機の配設構造は、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルが設けられ、該ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインユニットが設けられた車両において、上記ダッシュパネルの車室内側の上記凹部の側方には車両用補機ユニットが設けられ、上記パワートレインユニットは、正面視で車幅方向に傾斜して配設されたものである。
上記構成の車両用補機ユニットは、車室内を空調する空調ユニットに設定してもよい。
【0011】
上記構成によれば、車両用補機ユニットを上記凹部の車室内側においてその側方に設けると共に、パワートレインユニットは正面視で車幅方向に傾斜して配設されたものであるから、車室への影響を抑えつつ、パワートレインユニットの後方シフトレイアウトと、車両用補機ユニットの配設とを両立させることができる。
【0012】
ここで、上記パワートレインユニットには正面視において、その回転軸よりも上方に補機が車幅方向外方に出っ張るようにレイアウトされる場合があり、この場合、パワートレインを正面視で車幅方向に傾斜させると、正面視における車幅方向の全幅(パワートレインユニットの全幅)が小さくなり、該パワートレインユニットの凹部内への配設が容易となり、これにより、該パワートレインユニットの後退レイアウトが可能となって、ヨー慣性モーメントの低減を図ることができる。
【0013】
また、パワートレインユニットを正面視で車幅方向に傾斜させることにより、パワートレインユニットの吸排気系の取り回しが有利となり、パワートレインユニットの特性向上を図ることができる。
特に、吸気経路を所定長さに長く設定することができ吸気効率の向上と、吸気系のレイアウトの自由度向上を図ることができ、慣性吸気の関係上、有利となる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記車両用補機ユニットは平面視で上記パワートレインユニットと前後方向でオーバラップして配設されたものである。
上記構成によれば、車両用補機ユニットが上記凹部の側方で、かつパワートレインユニットと前後方向にオーバラップしているので、該車両用補機ユニットを適切にレイアウトすることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記ダッシュパネル後方の車室内には、運転席と助手席とが車幅方向に並設して配設され、上記車両用補機ユニットは上記助手席側の上記凹部側方に配設されたものである。
【0016】
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、助手席側にはステアリングホイール、ステアリングシャフトが存在しない分、レイアウト的に余裕があり、この助手席側スペースを利用して、車両用補機ユニットを配設したので、車室への影響を抑えることができ、助手席乗員の安全性と居住空間を維持しつつ、パワートレインユニットの後方シフトレイアウトを確保することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記車両用補機ユニットは空調ユニットであることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、上記空調ユニットはその容積が大きく、剛性も大きいので、上記配設構造を採用することで、安全性上有利となる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記パワートレインユニットは、縦置きエンジンとその後方に接続されたトランスミッションから構成されたものである。
上述のエンジンとしては、ロータリエンジン、またはレシプロエンジンを、エンジンルームに対して縦置きに配設して用いることができる。
【0020】
上記構成によれば、エンジンおよびトランスミッションは所定の大きさを有するので、上記配設構造を採用することで、パワートレインユニットの後方シフトレイアウトに寄与することができる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、上記ダッシュパネルの凹部には車室内から上記パワートレインユニットにアクセス可能なサービスホールが形成され、該サービスホールがサービスリッドによって開閉可能に覆われているものである。
【0022】
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、パワートレインユニットの後方シフトレイアウトにより、該パワートレインユニットに対するエンジンルーム側からのサービス性が悪化するが、上記凹部にサービスホールおよびサービスリッドを設けることにより、車室内からパワートレインユニットに対するサービスを行なうことができ、サービス性とパワートレインユニットの後方シフトレイアウトとの両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、ダッシュパネルの車室内側の凹部の側方に車両用補機ユニットを設け、パワートレインユニットを正面視で車幅方向に傾斜して配設(いわゆるスラント配置)したので、車室への影響を抑えつつ、パワートレインユニットの後方シフトレイアウトと、車両用補機ユニットの配設とを両立させることができ、また、パワートレインユニットの吸排気系の取り回しが有利となり、パワートレインユニットの特性向上を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
車室への影響を抑えながら、パワートレインユニットの後方シフトレイアウトと、車両用補機ユニットの配設とを両立させ、また、パワートレインの吸排気系の取り回しが有利となり、パワートレインユニットの特性向上を図るという目的を、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルが設けられ、該ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインユニットが設けられた車両において、上記ダッシュパネルの車室内側の上記凹部の側方に車両用補機ユニットを設け、上記パワートレインユニットを、正面視で車幅方向に傾斜して配設するという構成にて実現した。
【実施例】
【0025】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両用補機の配設構造を示し、図1は平面図、図2は側面図、図3は正面図であり、図4〜図6は詳細構造を示す部分平面図、部分側面図、部分正面図である。
【0026】
図1〜図6において、エンジンが搭載されるエンジンルーム1と、乗員が乗り込む車室2と、を前後方向に仕切るダッシュロアパネル3(ダッシュパネル)を設け、このダッシュロアパネル3の車幅方向中央部には後方に窪む凹部4を一体または一体的に形成している。
【0027】
上述のダッシュロアパネル3の下部には、図2に示すように、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル5を一体または一体的に連設し、車室フロアを形成するこのフロアパネル5の車幅方向中央部には、車室2内に突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部6を設けている。
このトンネル部6は、車体剛性の中心となる部材であり、上述の凹部4の前部と、トンネル部6の下部とは連続するように構成されている。
【0028】
図2に示すように、上述のダッシュロアパネル3の上部には、車幅方向に延びるカウル部8を設ける一方、図1、図2に示すように、ダッシュロアパネル3の前部からエンジンルーム1の左右両サイドにおいて車両前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム9,9を設けている。
このフロントサイドフレーム9は車体剛性部材であって、該フロントサイドフレーム9の前端には、左右一対のクラッシュカン10,10(衝撃エネルギ吸収部材)を介して、車幅方向に延びるバンパレイン11を取付けている。
【0029】
また、図1に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム9,9間には、車幅方向に延びる閉断面構造のフロントクロスメンバ12(いわゆるNo.1.5クロスメンバ)を張架し、このフロントクロスメンバ12の後方部には、フロントサスペンションを支持するサブフレーム13(サスペンションクロスメンバと同意)を設けている。
【0030】
上述のフロントサイドフレーム9は図2、図5に示すように、そのキックアップ部9aがダッシュロアパネル3の前面部に沿って下方に延び、このフロントサイドフレーム9の下端部には、フロアフレーム14が前後方向に連続するように設けられている。
【0031】
上述のフロアフレーム14は、フロアパネル5の下面に接合固定された車体剛性部材であって、フロアフレーム14とフロアパネル5との間には、車両の前後方向に延びる閉断面14a(図3参照)が形成されていて、下部車体剛性の向上を図っている。
【0032】
図4〜図6に詳細図で示すように、ダッシュロアパネル3の車室内側の面には、車幅方向に延びて該ダッシュロアパネル3との間に閉断面を形成するダッシュクロスメンバ15を設け、このダッシュクロスメンバ15により、ダッシュロアパネル3の剛性向上を図るように構成している。
上述のダッシュロアパネル3、ダッシュクロスメンバ15の左右両端部は、図1に示す左右のヒンジピラー16,16(車体剛性部材)に接合固定されている。
【0033】
ヒンジピラー16は、ヒンジピラーアウタと、ヒンジピラーインナとを接合固定して、上下方向に延びるピラー閉断面16aを備えた車体剛性部材である。
【0034】
また、上述のフロアパネル5の左右両端部は、車両の前後方向に延びる車体剛性部材としてのサイドシル17,17に接合固定されている。このサイドシル17は図3に示すように、サイドシルインナ18とサイドシルアウタ19とを接合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面20を備えたものである。
【0035】
一方、図1、図2に示す前輪21を操舵するパワーステアリング22(図4、図6参照)を設けている。このパワーステアリング22は、エンジン32の前方に位置し、該パワーステアリング22は、パワーシリンダ部23、ブーツ24、タイロッド25を備えており、図4に示すように、左右のタイロッド25,25は前輪21のホイールサポート26(ナックルアームと同意)に連結されている。
【0036】
ところで、ダッシュロアパネル3およびカウル部8の後方には、図1、図2に示すように、インストルメントパネル27を設け、上述のダッシュロアパネル3およびインストルメントパネル27後方の車室2内には、運転席28(ドライバーズシート)と、助手席29(パッセンジャーズシート)とを車幅方向に並設して配設している。なお、この実施例では右ハンドル車両を例示しているが、これに限定されるものではない。
【0037】
図1〜図3に示すように、運転席28と助手席29とは、トンネル部6を隔てて左右独立して設けられたバケットシートであって、これらのフロントシートはそれぞれシートクッション28c,29cと、シートバック28B,29Bとを備えている。また、運転席28の前部にはステアリングホイール30、ステアリングシャフトおよびステアリングコラム(図示せず)を配置している。
【0038】
上述のダッシュロアパネル3に設けられた凹部4内には、後輪(図示せず)を駆動するパワートレインユニット31を設けるが、図1〜図6で示すこの実施例においては、縦置きロータリエンジン32と、その後方に接続されたトランスミッション33とから、パワートレインユニット31を構成し、ロータリエンジン32のリヤ側部を上記凹部4内に配設し、その後方に接続されたトランスミッション33は、トンネル部6の下部車外側に配設している。要するに、この実施例の車両の駆動方式はFR(フロント・エンジン・リヤドライブ)方式に設定されている。
【0039】
ここで、上述のロータリエンジン32は、パワートレインユニット補機(エンジン補機)としての発電機34と、吸気経路としての吸気通路35と、ロータハウジングに設けられたリーディング側の点火プラグ36およびトレーリング側の点火プラグ37とを有するものである。
【0040】
さらに、パワートレインユニット31を構成するロータリエンジン32は、図6に示すように、正面視で車幅方向に傾斜して配設したものである。
詳しくは、エンジン回転軸としてのエキセントリックシャフトの軸芯を中心に、該軸芯を通る仮想垂直線L1に対して、ロータリエンジン32の上部が車幅方向右方に角度θ1だけ傾斜するように配設(いわゆるスラント配置)したものである。
【0041】
つまり、ロータリエンジン32には正面視において、そのエンジン回転軸としてのエキセントリックシャフトよりも上方にパワートレインユニット補機としての発電機34が車幅方向左側外方に出っ張るようにレイアウトされており、ロータリエンジン32を図6に示すように正面視においてエキセントリックシャフトの軸芯を中心として車幅方向右方に傾斜させると、正面視における車幅方向の全幅が小さくなり、該ロータリエンジン32の凹部4内への配設が容易となるものである。
【0042】
因に、上述のエキセントリックシャフトの位置は、トランスミッション33の出力軸に連結されるプロペラシャフト(図示せず)の位置で規制されており、該エキセントリックシャフトの位置を変更することはできない。
【0043】
また、ロータリエンジン32の場合には、上記スラント配置を採用することで、傾斜させない場合と比較して、リーディング側およびトレーリング側の各点火プラグ36,37が可及的上方に位置するようになる(図3参照)。
なお、この実施例では、図5から明らかなように、ロータリエンジン32として2ロータ構造のものを例示したが、これに限定されるものではなく、3ロータ等の他のロータリエンジンを搭載してもよい。
【0044】
ところで、図1〜図3に示すように、インストルメントパネル27内において、
車室内側で、かつ、助手席29側の上記凹部4の側方(この実施例では、右ハンドル車両を例示しているので、凹部4の左側方)には、車両用補機ユニットとしての空調ユニット40を配設している。
【0045】
また、図1に平面図で示すように、上述の空調ユニット40は平面視で上記パワートレインユニット31と前後方向でオーバラップして配設されている。さらに、図2に側面図で示すように、該空調ユニット40はパワートレインユニット31よりも上方の高さ位置に配設されている。
【0046】
空調ユニット40をパワートレインユニット31よりも上方の高さ位置に配設することにより、次のような効果がある。つまり、ダッシュパネル(ダッシュロアパネル3参照)は一般的に前高後低状に傾斜するスラント形状を有しているか、または、部分的にこのようなスラント部を有しているので、車両用補機ユニットとしての空調ユニット40を上方に配置した方が、該空調ユニット40を前方に詰めて配設することができるものである。
【0047】
すなわち、この空調ユニット40は、上記凹部4の側方においてダッシュロアパネル3およびカウル部8に可及的近接するように配設されたものであり、空調ユニット40をダッシュロアパネル3に近接配置することで、助手席乗員の足元スペースを確保すべく構成している。
【0048】
空調ユニット40の詳細構造を図4〜図6に示すように、該空調ユニット40は、空調風の取入れユニット41(つまり外気導入ユニット)と、エアミックスユニット42と、を備え、この空調風の取入れユニット41と、エアミックスユニット42とは、前後方向に並設されている。
上述の空調風の取入れユニット41と、エアミックスユニット42との両ユニットを前後方向に並設すると、限られた車幅方向の空間を有効利用して、上記空調ユニット40を適切に配設することができる。
【0049】
ここで、上述の空調風の取入れユニット41は図5に示すように、外気取入れ口43、ユニット本体44、ブロア45、ブロアモータ46を備えている。また、エアミックスユニット42は、同図に示すように、エバポレータ47(蒸発器)およびヒータコア48をユニット本体49に内蔵すると共に、該ユニット本体49の内部には図示しない複数の空調用のドアを備えている。
【0050】
ところで、図1〜図5に示すように、上述のダッシュロアパネル3の凹部4には、車室2内から上記パワートレインユニット31にアクセス可能なサービスホール50が形成されると共に、このサービスホール50を開閉可能に覆うサービスリッド51を設けている。
【0051】
上述のサービスホール50およびサービスリッド51は、図7、図8に示すように、設けられている。つまり、上述の凹部4には連続してトンネル部6が設けられており、サービスホール50は凹部4からトンネル部6にかけて形成されており、サービスリッド51の断面形状は略門形状に構成されており、上記凹部4(またはトンネル部6)の縦壁部52の車外側には、予め複数のナット53,53…(シール性を考慮して袋ナットを用いてもよい)が溶接固定されている。
そして、これらのナット53に対応する取付け部材としての複数のボルト54,54…を用いて、サービスリッド51を、縦壁部52を介して上記ナット53に締付け固定するように構成している。
【0052】
また、サービスホール50の上面側において、その開口部周辺と、サービスリッド51下面との間には、該サービスホール50の周辺部に環状に位置するシール部材55を介設し、メンテナンス時には、車室内側から複数のボルト54をナット53から取外すことで、サービスリッド51を離脱して、サービスホール50からパワートレインユニット31のサービス、メンテナンスを行なうように構成したものである。
【0053】
図3に示すように、パワートレインユニット31を構成するロータリエンジン32を正面視で車幅方向に傾斜して配設したので、リーディング側点火プラグ36、トレーリング側点火プラグ37は非スラント構造のものに対して可及的上方に位置するので、これらの各点火プラグ36,37のメンテナンスが容易となる。
【0054】
サービスリッド51の取付け構造は、図7、図8で示した構造に代えて、図9に示す構造を採用してもよい。
すなわち、図7、図8で示したボルト54,ナット53による締結箇所と対応して、図9の実施例では、サービスリッド51の側片部(スカート部)に複数のフック56を取付け固定する一方、上記凹部4(またはトンネル部6)の縦壁部52の車内側には、係合手段57を設けている。
【0055】
この係合手段57は、上記縦壁部52に直接固定されたベース部材58と、このベース部材58に対してピン(支軸)を介して回動可能に連結された操作レバー59と、この操作レバー59に取付けられ該操作レバー59のロック操作時に図9に示すように上記フック56に係合して、該フック56を介して、サービスリッド51をサービスホール50の閉鎖方向に締付ける係止部材60とを備えている。
【0056】
図9に示すサービスリッド51の取付け構造においては、係合手段57のロック操作、アンロック操作により、サービスリッド51の開閉を容易に行なうことができる。なお、図9において、操作レバー59および係止部材60は常閉方向(ロック方向)にバネ付勢されている。
【0057】
また、図7、図8の実施例に対して、図9で示したこの実施例においては、凹部4(またはトンネル部6)の縦壁部52、およびサービスリッド51にボルト挿通孔を開口形成する必要がないので、シール性の向上を図ることができる。
【0058】
なお、図2、図3において、70はボンネット、71はルーフ、72はフロントピラー、73はフロントフェンダパネル、図4において、74はサスタワー、75はディスクプレート、76はブレーキキャリパである。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示す。
【0059】
このように、図1〜図9で示した実施例の車両用補機の配設構造は、車室2とエンジンルーム1とを仕切るダッシュパネル(ダッシュロアパネル3参照)が設けられ、該ダッシュパネル(ダッシュロアパネル3参照)に設けられた凹部4内に車輪(図示しない後輪参照)を駆動するパワートレインユニット31が設けられた車両において、上記ダッシュパネル(ダッシュロアパネル3)の車室2内側の上記凹部4の側方には車両用補機ユニット(空調ユニット40参照)が設けられ、上記パワートレインユニット31は、正面視で車幅方向に傾斜して配設されたものである(図1、図3、図6参照)。
【0060】
この構成によれば、車両用補機ユニット(空調ユニット40参照)を上記凹部4の車室2内側においてその側方に設けると共に、パワートレインユニット31は正面視で車幅方向に傾斜して配設されたものであるから、車室2への影響を抑えつつ、パワートレインユニット31の後方シフトレイアウトと、車両用補機ユニット(空調ユニット40参照)の配設とを両立させることができる。
【0061】
ここで、上記パワートレインユニット31には正面視において、そのエンジン回転軸(エキセントリックシャフト参照)よりも上方に補機(発電機34参照)が車幅方向左側外方に出っ張るようにレイアウトされる場合があり、この場合、パワートレインユニット31の上部を正面視でエンジン回転軸(パワートレインユニット31をロータリエンジン32で構成する場合には、エキセントリックシャフト)を中心として車幅方向右方に傾斜させると、正面視における車幅方向の全幅(パワートレインユニットの全幅)が小さくなり、該パワートレインユニット31の凹部4内への配設が容易となり、これにより、該パワートレインユニット31の後退レイアウトが可能となって、ヨー慣性モーメントの低減を図ることができる。
【0062】
また、パワートレインユニット31を正面視で車幅方向に傾斜(図3、図6参照)させることにより、パワートレインユニット31の吸排気系の取り回しが有利となり、パワートレインユニット31の特性向上を図ることができる。
特に、吸気経路(吸気通路35参照)を所定長さに長く設定することができ、
吸気効率の向上と、吸気系のレイアウトの自由度向上を図ることができ、慣性吸気の関係上、有利となる。
【0063】
さらに、上記車両用補機ユニット(空調ユニット40参照)は平面視で上記パワートレインユニット31と前後方向でオーバラップして配設されたものである(図1参照)。
この構成によれば、車両用補機ユニット(空調ユニット40参照)が凹部4の側方で、かつパワートレインユニット31と前後方向にオーバラップしているので、該車両用補機ユニット(空調ユニット40参照)を適切にレイアウトすることができる。
【0064】
加えて、上記ダッシュパネル(ダッシュロアパネル3参照)後方の車室2内には、運転席28と助手席29とが車幅方向に並設して配設され、上記車両用補機ユニット(空調ユニット40参照)は上記助手席29側の上記凹部4側方(この実施例では、右ハンドル車両を例示したので凹部の左側方)に配設されたものである(図1参照)。
【0065】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、助手席29側にはステアリングホイール30、ステアリングシャフトが存在しない分、レイアウト的に余裕があり、この助手席29側スペースを利用して、車両用補機ユニット(空調ユニット40参照)を配設したので、車室への影響を抑えることができ、助手席乗員の安全性と居住空間を維持しつつ、パワートレインユニット31の後方シフトレイアウトを確保することができる。
【0066】
また、上記車両用補機ユニットは空調ユニット40であることを特徴とする(図4、図5参照)。
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、上記空調ユニット40はその容積が大きく、剛性も大きいので、上記配設構造を採用することで、安全性上有利となる。
【0067】
さらに、上記パワートレインユニット31は、縦置きエンジン(縦置きに配設したロータリエンジン32参照)とその後方に接続されたトランスミッション33から構成されたものである(図1参照)。
この構成によれば、エンジン32およびトランスミッション33は所定の大きさを有するので、上記配設構造を採用することで、パワートレインユニット31の後方シフトレイアウトに寄与することができる。
【0068】
さらには、上記ダッシュパネル(ダッシュロアパネル3参照)の凹部4には車室2内から上記パワートレインユニット31にアクセス可能なサービスホール50が形成され、該サービスホール50がサービスリッド51によって開閉可能に覆われているものである(図3参照)。
【0069】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、パワートレインユニット31の後方シフトレイアウトにより、該パワートレインユニット31に対するエンジンルーム1側からのサービス性が悪化するが、上記凹部4にサービスホール50およびサービスリッド51を設けることにより、車室2内からパワートレインユニット31に対するサービスを行なうことができ、サービス性とパワートレインユニット31の後方シフトレイアウトとの両立を図ることができる。
【0070】
図10、図11、図12は車両用補機の配設構造の他の実施例を示し、図1〜図9で示した先の各実施例においては、パワートレインユニット31を構成するエンジンとしてロータリエンジン32を用いたが、図10〜図12に示すこの実施例では、ロータリエンジン32に代えて、例えば、直列4気筒等のレシプロエンジン80を用いるものである。
【0071】
レシプロエンジン80は、シリンダブロック、シリンダヘッド、シリンダヘッドカバーを有し、シリンダブロックの下部には、オイルパン81を取付ける一方、シリンダヘッドには吸気通路82および排気通路83を取付けている。
ここで、パワートレイン31を構成するレシプロエンジン80は、図12に示すように、正面視で車幅方向に傾斜して配設したものである。
【0072】
詳しくは、エンジン回転軸としてのクランクシャフトの軸芯を中心に、該軸芯を通る仮想垂直線L2に対して、レシプロエンジン80の上部が車幅方向右方に角度θ2だけ傾斜するように配設(いわゆるスラント配置)したものである。
つまり、レシプロエンジン80には、正面視において、そのエンジン回転軸としてのクランクシャフトよりも上方にパワートレインユニット補機としての発電機84およびスロットルボディ85が車幅方向左側外方に出っ張るようにレイアウトされており、レシプロエンジン80を図12に示すように、正面視においてクランクシャフトの軸芯を中心として車幅方向右方に傾斜させると、正面視における車幅方向の全幅が小さくなり、該レシプロエンジン80の凹部4内への配設が容易となるものである。
【0073】
因に、上述のクランクシャフトの位置は、トランスミッション33の出力軸に連結されるプロペラシャフト(図示せず)の位置により規制されるものであって、該クランクシャフトの位置を変更することができない点については、ロータリエンジンと同様である。
【0074】
このレシプロエンジン80も縦置きに配置され、該レシプロエンジン80の後部には図示しないトランスミッションを接続している。また、このレシプロエンジン80のリヤ側の一部は上述の凹部4内に配設されている。
【0075】
図4、図5、図6と、図10、図11、図12との比較から明らかなように、レシプロエンジン80はロータリエンジン32に対して形状が大型となるが、レシプロエンジン80のリヤ側一部を凹部4内に配設し、また、トランスミッションをトンネル部6の下部車外側に配設し、さらに、車両用補機ユニットとしての空調ユニット40を上記ダッシュロアパネル3の車室2内側で、かつ助手席29側における凹部4の側方に配置することにより、ロータリエンジン32を搭載した場合と同様に、車室2への影響を抑えつつ、パワートレインユニット31の後方シフトレイアウトと、空調ユニット40の配設とを達成することができる。
【0076】
しかも、パワートレインユニット31を正面視で車幅方向に傾斜させたので、パワートレインユニット31の吸排気系の取り回しが有利となり、パワートレインユニット31の特性向上を図ることができる。
【0077】
特に、吸気通路82を所定長さに長く設定することができ、吸気効率の向上と、吸気系のレイアウトの自由度向上を図ることができ、慣性吸気の関係上、有利となる。
【0078】
図10〜図12で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例と同様であるから、図10〜図12において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0079】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のダッシュパネルは、実施例のダッシュロアパネル3に対応し、
以下同様に、
パワートレインで駆動される車輪は、FR車両の後輪に対応し、
車両用補機ユニットは、空調ユニット40に対応し、
縦置きエンジンは、エンジンルーム1内に縦置に配設されたロータリエンジン32または、レシプロエンジン80に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記構成を電気自動車に適用する場合には、エンジン32,80の搭載位置に、これらの内燃機関に代えて、モータを搭載してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の車両用補機の配設構造を示す平面図
【図2】図1の側面図
【図3】図1の要部正面図
【図4】詳細構造を示す部分平面図
【図5】詳細構造を示す部分側面図
【図6】詳細構造を示す部分正面図
【図7】サービスホールおよびサービスリッドの構成を示す斜視図
【図8】図7の要部縦断面図
【図9】サービスホール、サービスリッド構造の他の実施例を示す断面図
【図10】レシプロエンジンを搭載した場合の平面図
【図11】図10の側面図
【図12】図10の要部正面図
【図13】従来の車両用補機の配設構造を示す側面図
【符号の説明】
【0081】
1…エンジンルーム
2…車室
3…ダッシュロアパネル(ダッシュパネル)
4…凹部
28…運転席
29…助手席
31…パワートレインユニット
32…ロータリエンジン(縦置きエンジン)
33…トランスミッション
40…空調ユニット(車両用補機ユニット)
50…サービスホール
51…サービスリッド
80…レシプロエンジン(縦置きエンジン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルが設けられ、該ダッシュパネルに設けられた凹部内に車輪を駆動するパワートレインユニットが設けられた車両において、
上記ダッシュパネルの車室内側の上記凹部の側方には車両用補機ユニットが設けられ、
上記パワートレインユニットは、正面視で車幅方向に傾斜して配設された
車両用補機の配設構造。
【請求項2】
上記車両用補機ユニットは平面視で上記パワートレインユニットと前後方向でオーバラップして配設された
請求項1記載の車両用補機の配設構造。
【請求項3】
上記ダッシュパネル後方の車室内には、運転席と助手席とが車幅方向に並設して配設され、
上記車両用補機ユニットは上記助手席側の上記凹部側方に配設された
請求項1または2記載の車両用補機の配設構造。
【請求項4】
上記車両用補機ユニットは空調ユニットである
請求項1〜3の何れか1に記載の車両用補機の配設構造。
【請求項5】
上記パワートレインユニットは、縦置きエンジンとその後方に接続されたトランスミッションから構成された
請求項1〜4の何れか1に記載の車両用補機の配設構造。
【請求項6】
上記ダッシュパネルの凹部には車室内から上記パワートレインユニットにアクセス可能なサービスホールが形成され、
該サービスホールがサービスリッドによって開閉可能に覆われている
請求項1〜5の何れか1に記載の車両用補機の配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−57023(P2009−57023A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228460(P2007−228460)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】