車両用運転操作補助装置および車両用運転操作補助装置を備えた車両
【課題】
運転操作補助システムを継続して使用するときでも確実に情報の伝達を行える車両用運転操作補助装置を提供する。
【解決手段】
自車両と先行車との接触の可能性が高い場合は、接触可能性を低下するように制駆動力制御とアクセルペダル反力制御を行う。システムによる制駆動力制御が継続的に行われている場合、運転者は継続的に減速感を感じるので、接触可能性の報知としての減速度の変化を感知できなくなってしまう。制動制御を開始する前には、ブレーキアクチュエータをスタンバイ状態にしてブレーキの応答性を高めているが、制駆動力制御が継続的に行われている場合はスタンバイ状態を解除する。これにより、実際に制動力が発生するタイミングを遅くして運転者に刺激を与える。
運転操作補助システムを継続して使用するときでも確実に情報の伝達を行える車両用運転操作補助装置を提供する。
【解決手段】
自車両と先行車との接触の可能性が高い場合は、接触可能性を低下するように制駆動力制御とアクセルペダル反力制御を行う。システムによる制駆動力制御が継続的に行われている場合、運転者は継続的に減速感を感じるので、接触可能性の報知としての減速度の変化を感知できなくなってしまう。制動制御を開始する前には、ブレーキアクチュエータをスタンバイ状態にしてブレーキの応答性を高めているが、制駆動力制御が継続的に行われている場合はスタンバイ状態を解除する。これにより、実際に制動力が発生するタイミングを遅くして運転者に刺激を与える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用運転操作補助装置は、自車両と先行車との接触の可能性に基づいて自車両の制駆動力を制御し、運転者に減速感を与えて接触の可能性を報知している(例えば特許文献1参照)。この装置は、接触可能性に基づく制駆動力制御が継続して行われる場合に、制駆動力による報知を有効に作動させるために、制駆動力を増加または減少させている。
【0003】
本願発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【特許文献1】特開2002−328176号公報
【特許文献2】特開2003−267201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の装置は、制御が継続して行われる場合に制駆動力を変化させることにより、運転者に与える減速感を変化させて接触可能性を効果的に報知することができる。しかし、このように減速感を変化させて運転者への報知を効果的に行うためには、制駆動力の変化量を十分に大きく設定する必要がある。その結果、自車両の制駆動力特性が大きく変化し、運転者に違和感を与えてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用運転操作補助装置は、自車両前方の障害物を検出する障害物検出手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、障害物検出手段および走行状態検出手段による検出結果に基づいて、自車両と障害物との接触の可能性に関するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、リスクポテンシャル算出手段によって算出されるリスクポテンシャルに基づいて、運転操作装置に発生する操作反力、および自車両に発生する制駆動力の少なくともいずれかを制御する車両制御手段と、車両制御手段の作動状態を選定する際の選定条件を満たすか否かを判定する条件判定手段と、選定条件が満たされたか否かに応じて、車両制御手段の作動状態を選定する作動選定手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
自車両と障害物との接触の可能性に関するリスクポテンシャルに基づいて車両制御を行う際に、選定条件を満たすか否かに応じて作動状態を選定するので、ある条件において作動状態が変化する。これにより、違和感を与えることなく、運転者に刺激を与えて接触の可能性を効果的に報知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
《第1の実施の形態》
本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の構成を示すシステム図である。
【0008】
まず、車両用運転操作補助装置1の構成を説明する。車両用運転操作補助装置1は、レーダ装置10,車速センサ20,舵角センサ30,障害物検知装置40,コントローラ50,駆動力制御装置60,制動力制御装置70、アクセルペダル反力発生装置80、および表示装置90等を備えている。
【0009】
レーダ装置10は、例えば車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられたレーザレーダであり、水平方向に赤外線レーザ光を照射して車両前方領域を走査し、自車両前方の障害物を検出する。図2に、レーダ装置10による障害物検出の原理を説明する図を示す。図2に示すように、レーダ装置10はレーザ光を出力する発光部10aと、自車両の前方にある反射物(通常、前方車の後端)で反射された反射光を検出する受光部10bとを備えている。発光部10aはスキャニング機構が組み合わされており、図2に矢印で示すように振れるように構成されている。発光部10aは角度を変化させながら所定角度範囲内で順次発光する。レーダ装置10は、発光部10aによるレーザ光の出射から受光部10bにおける反射波の受光までの時間差に基づいて自車両から障害物までの距離を計測する。
【0010】
レーダ装置10は、スキャニング機構により自車両の前方領域をスキャニングしながら、各スキャニング位置またはスキャニング角度について反射光を受光した場合に障害物までの距離を算出する。さらに、レーダ装置10は、障害物を検出したときのスキャニング角とその障害物までの距離とに基づいて、自車両に対する障害物の左右方向の位置も算出する。すなわち、レーダ装置10は、障害物の有無とともに自車両に対する障害物の相対的な位置を検出する。
【0011】
図3に、レーダ装置10による障害物の検出結果の一例を示す。各スキャニング角で自車両に対して障害物の相対的な位置を特定することにより、図3に示すようにスキャニング範囲内で検出できる複数の物体についての平面的な存在状態図を得ることができる。
【0012】
障害物検知装置40は、レーダ装置10および車速センサ20の検出結果に基づいて前方障害物に関する情報を取得する。具体的には、障害物検知装置40は、レーダ装置10からスキャニング周期毎またはスキャニング角ごとに出力される検出結果に基づいて、検出した物体の動きを判別するとともに、物体間の近接状態や動きの類似性等に基づいて、検出した物体が同一物体であるか異なる物体であるかを判別する。
【0013】
そして、障害物検知装置40は、レーダ装置10と車速センサ20からの信号に基づいて、自車両と前方障害物との車間距離と相対速度、および自車両に対する前方障害物の左右方向距離を認識する。なお、障害物検知装置40は、複数の前方障害物を検知した場合は各障害物についての情報を取得する。障害物検知装置40は、取得した障害物情報をコントローラ50へ出力する。
【0014】
舵角センサ30は、ステアリングコラムもしくはステアリングホイール(不図示)付近に取り付けられた角度センサ等であり、ステアリングシャフトの回転を操舵角として検出し、コントローラ50へ出力する。
【0015】
アクセルペダル61には、アクセルペダル61の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。アクセルペダルストロークセンサによって検出されたアクセルペダル操作量はコントローラ50および駆動力制御装置60に出力される。ブレーキペダル71には、その踏み込み量(操作量)を検出するブレーキペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。ブレーキペダルストロークセンサによって検出されたブレーキペダル操作量は、制動力制御装置70に出力される。
【0016】
コントローラ50は、CPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成され、車両用運転操作補助装置1全体の制御を行う。コントローラ50は、車速センサ20から入力される自車速、および障害物検知装置40から入力される障害物情報から、自車両の走行状況を認識する。コントローラ50は、走行状況に基づいて前方障害物に対する自車両のリスクポテンシャルを算出する。さらに、コントローラ50は、障害物に対するリスクポテンシャルに基づいて、自車両に発生する制駆動力およびアクセルペダル61に発生する操作反力を制御する。
【0017】
駆動力制御装置60は、アクセルペダル61の操作状態に応じた駆動力を発生するようにエンジン(不図示)を制御するとともに、外部からの指令に応じて、発生させる駆動力を変化させる。図4に、駆動力制御装置60の構成を表すブロック図を示す。図5に、アクセルペダル操作量SAとドライバ要求駆動力Fdaとの関係を定めた特性マップを示す。駆動力制御装置60は、図4に示すようにドライバ要求駆動力算出部60aと、加算器60bと、エンジンコントローラ60cとを備えている。
【0018】
ドライバ要求駆動力算出部60aは、図5に示すようなマップを用いて、アクセルペダル61が踏み込まれたときの操作量(アクセルペダル操作量)SAに応じてドライバが要求する駆動力(ドライバ要求駆動力)Fdaを算出する。加算器60bは、算出されたドライバ要求駆動力Fdaに、後述する駆動力補正量ΔDaを加えて目標駆動力を算出し、エンジンコントローラ60cへ出力する。エンジンコントローラ60cは、目標駆動力に従ってエンジンへの制御指令値を算出する。
【0019】
制動力制御装置70は、ブレーキペダル71の操作状態に応じた制動力を発生するようにブレーキ液圧を制御するとともに、外部からの指令に応じて、発生させるブレーキ液圧を変化させる。図6に、制動力制御装置70の構成を表すブロック図を示す。図7に、ブレーキペダル操作量SBとドライバ要求制動力Fdbとの関係を定めた特性マップを示す。図6に示すように、制動力制御装置70は、ドライバ要求制動力算出部70aと、加算器70bと、ブレーキ液圧コントローラ70cとを備えている。
【0020】
ドライバ要求制動力算出部70aは、図7に示すようなマップを用いて、ブレーキペダル71の踏み込み量(ブレーキペダル操作量)SBに応じてドライバが要求する制動力(ドライバ要求制動力)Fdbを算出する。加算器70bは、算出されたドライバ要求制動力Fdbに、後述する制動力補正値ΔDbを加えて目標制動力を算出し、ブレーキ液圧コントローラ70cに出力する。ブレーキ液圧コントローラ70cは、目標制動力に従ってブレーキ液圧指令値を算出する。ブレーキ液圧コントローラ70cからの指令に応じて各車輪に設けられたホイールシリンダ(不図示)の液圧が制御され、制動力が発生する。
【0021】
図8(a)(b)に、ブレーキ液圧コントローラ70cによって制御されるブレーキアクチュエータの油圧回路を示す。車両には、左前輪/右後輪用、および右前輪/左後輪用の2系統の油圧回路が設けられているが、図8(a)(b)には説明を簡単にするため、左前輪/右後輪用の1系統の油圧回路のみを示している。
【0022】
図8(a)(b)に示すように、マスタシリンダ701と各ホイールシリンダ(ここでは左前輪ホイールシリンダおよび右後輪ホイールシリンダ)との間の管路には、制御バルブ702,切換バルブ703、増圧用ソレノイドバルブ704,705、減圧用ソレノイドバルブ706,707が設置されている。これらのバルブ702〜707は、ブレーキ液圧コントローラ70cからの信号に応じて駆動される。また、モータ708によって駆動されるポンプ709、ホイールシリンダからのブレーキ液を一時的に蓄えておくリザーバー710、ダンパー室711、ポンプ709へ流入したブレーキ液がリザーバー710へ戻ることを防止するインレットバルブ712、およびポンプ709から吐出したブレーキ液がポンプ709へ戻ることを防止するアウトレットバルブ713が設けられている。
【0023】
運転者によるブレーキペダル71の踏み込み操作に応じて制動力を発生させる場合、すなわち制動力制御装置70による制動力制御を行わない場合は、図8(a)に示すように、制御バルブ702のポートを閉じ、切換バルブ703のポートを開く。また、増圧用ソレノイドバルブ704,705のポートを開き、減圧用ソレノイドバルブ706,707のポートを閉じる。このとき、モータ708およびポンプ709の作動は停止する。これにより、マスタシリンダ701は切換バルブ703および増圧用ソレノイドバルブ704,705を介して、左前輪ホイールシリンダおよび右後輪ホイールシリンダに連通され、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた制動力が発生する。
【0024】
制動力制御装置70による制動力制御を行う場合は、図8(b)に示すように、ブレーキ液圧コントローラ70cからの指令に応じて制御バルブ702のポートを開き、切換バルブ703のポートを閉じる。また、増圧用ソレノイドバルブ704のポートを開き、増圧用ソレノイドバルブ705のポートを閉じ、減圧用ソレノイドバルブ706,707のポートを閉じる。そして、モータ708およびポンプ709を作動し、マスタシリンダ701内のブレーキ液を制御バルブ702を介して吸入する。ブレーキ液はポンプ709で加圧されて左前輪ホイールシリンダへ供給される。これにより、ブレーキ液圧コントローラ70cからの指令に応じた制動力が発生する。
【0025】
アクセルペダル反力発生装置80は、アクセルペダル61のリンク機構に組み込まれたサーボモータ(不図示)を備えている。アクセルペダル反力発生装置80は、コントローラ50からの指令に応じてサーボモータで発生させるトルクを制御し、運転者がアクセルペダル61を操作する際に発生する操作反力を任意に制御することができる。なお、反力制御を行わない場合のアクセルペダル反力は、アクセルペダル操作量SAに対して比例するように設定されている。
【0026】
表示装置90は、例えばインストルメントパネルに設けられた警告ランプであり、コントローラ50からの信号に応じて点灯または消灯する。
【0027】
以下に、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を説明する。まず、動作の概要を説明する。車両用運転操作補助装置1は、障害物検知装置40で検出される障害物情報に基づいて自車両と前方障害物とが接触する可能性を推定する。そして、接触の可能性が高い場合には自車両の制駆動力制御およびアクセルペダル反力制御を行い、運転者に減速感を与えて運転者の注意を喚起する。また、制駆動力制御を行う際に、接触可能性の上昇に応じてブレーキアクチュエータをスタンバイ状態として、接触の可能性が高くなった場合に自車両に速やかに制動力を発生させるようにする。
【0028】
このように、自車両に発生する制駆動力を制御して運転者に減速感を与えることにより、自車両が前方障害物に接近し、接触の可能性が高くなっているという情報を運転者に確実に知覚させることができる。ただし、システムからの情報提供を継続的に行った場合、運転者は接触可能性の報知としての減速度の変化を感知しづらくなり、効果的な情報提供を行うことが困難となってしまう。
【0029】
そこで、第1の実施の形態においては、運転者がシステムからの情報提供を継続的に受けている場合に、運転者がシステムの作動状態を容易に感知できるように運転者に刺激を与える。具体的には、制駆動力制御システムの使用頻度が高く、運転者がシステムを過度に頼っているような場合には、ブレーキアクチュエータのスタンバイ状態を解除し、システムによる制動力の発生を遅らせることによって運転者の注意を喚起する。
【0030】
以下に、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を、図9を用いて詳細に説明する。図9は、第1の実施の形態のコントローラ50における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
【0031】
まず、ステップS110で、車速センサ20によって検出される自車速Vhと、舵角センサ30によって検出される自車両の操舵角δのデータを読み込む。ステップS120では、アクセルペダルストロークセンサ(不図示)によって検出されるアクセルペダル操作量SAを読み込む。つづくステップS130で、レーダ装置10および車速センサ20の検出結果に従って障害物検知装置40で算出した複数の前方障害物に関する情報を読み込む。前方障害物に関する情報は、例えば各障害物までの前後方向の距離(車間距離)D、自車両に対する障害物の左右方向位置xと前後方向位置y、および障害物の幅である。
【0032】
ステップS140では、ステップS110で読み込んだ自車速Vhおよび操舵角δに基づいて、自車両の進路を推定する。以下に、予測進路の推定方法を図10および図11を用いて説明する。予測進路を推定するために、図10に示すように自車両が矢印方向に進行している場合の旋回半径Rを算出する。まず、自車両の旋回曲率ρ(1/m)を算出する。旋回曲率ρは、自車速Vhおよび操舵角δに基づいて、以下の(式1)で算出できる。
ρ=1/{L(1+A・Vh2)}×δ/N・・・(式1)
ここで、L:自車両のホイールベース、A:車両に応じて定められたスタビリティファクタ(正の定数)、N:ステアリングギア比である。
【0033】
旋回半径Rは、旋回曲率ρを用いて以下の(式2)で表される。
R=1/ρ ・・・(式2)
(式2)を用いて算出した旋回半径Rを用いることで、図10に示すように自車両の走行軌道を半径Rの円弧として予測することができる。そして、図11に示すように、旋回半径Rの円弧を中心線とした幅Twの領域を、自車両が走行するであろう予測進路として設定する。幅Twは、自車両の幅に基づいて予め適切に設定しておく。
【0034】
ステップS150では、障害物検知装置40によって検出され、ステップS140で設定した自車両の予測進路内にある障害物のうち、自車両に最も近い物体を、制御の対象とする前方障害物として選択する。
【0035】
つづくステップS160では、ステップS150で選択した前方障害物に対する自車両のリスクポテンシャルを算出する。ここでは、自車両と前方障害物との接触のリスクを表すリスクポテンシャルとして、自車両から前方障害物までの車間時間THWを算出する。車間時間THWは、前方障害物の現在位置に自車両が到達するまでの時間を示す物理量であり、以下の(式3)から算出される。
THW=D/Vh ・・・(式3)
(式3)で算出される車間時間THWが小さいほど、自車両と前方障害物との接触の可能性、すなわち接触のリスクが高くなる。
【0036】
ステップS170では、制動制御スタンバイ判断処理を行う。具体的には、ステップS160で算出した車間時間THWに基づいて、ブレーキアクチュエータをスタンバイ状態にするか否かを判断する。ここでの処理を、図12のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1701では、ステップS160で算出した車間時間THWが所定のしきい値T1以上か否かを判定する。
【0037】
車間時間THW<T1の場合は、ステップS1702へ進み、ブレーキアクチュエータをスタンバイ状態に設定する。具体的には、図8(a)に示すように制御バルブ702を閉じた状態でモータ708を回転させる。制御バルブ702が閉じているので、モータ708を回転させてもマスタシリンダ701からのブレーキ液はポンプ709に流入しない。スタンバイ状態から制動力制御を開始する場合は、モータ708およびポンプ709がすでに回転しているので、制御バルブ702を開くことで速やかにブレーキ液圧が上昇する。これにより、制動力制御開始時の応答性を高めることができる。
【0038】
一方、車間時間THW≧T1の場合は、ステップS1703へ進み、ブレーキアクチュエータがスタンバイ状態となっている場合はそれを解除する。また、ブレーキアクチュエータがスタンバイ状態に設定されていない場合は、そのまま維持する。具体的には、制動力制御開始前にモータ708およびポンプ709を予め回転させておくことを禁止する。
このようにステップS170で制動力制御スタンバイ判断を行った後、ステップS180へ進む。
【0039】
ステップS180では、制駆動力の特性を変更するために用いる制御反発力を算出する。具体的には、図13(a)(b)に示すように自車両前方に仮想的な弾性体を設けたと仮定し、この仮想的な弾性体が前方車両に当たって圧縮され、自車両に対する擬似的な走行抵抗を発生するというモデルを考える。図13(a)に示すように自車両と前方障害物との車間距離Dが仮想的な弾性体の長さlよりも長い場合は、仮想弾性体は前方障害物に接触しないので圧縮されない。一方、図13(b)に示すように車間距離Dが仮想弾性体の長さlよりも短い場合は仮想弾性体が圧縮される。そこで、図13(b)に示すように仮想弾性体が圧縮される場合の仮想弾性体の反発力(制御反発力)Fcを算出する。ここでの処理を、図14のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
ステップS1801では、ステップS160で算出した車間時間THWが所定のしきい値T2以上か否かを判定する。THW≧T2の場合は、車間時間THWが大きく自車両と前方障害物との接触の可能性が低いと判断し、ステップS1802へ進んで制御反発力Fc=0に設定する。
【0041】
一方、THW<T2の場合は、車間時間THWが小さく自車両と前方障害物との接触の可能性が高いと判断し、ステップS1803へ進んで仮想弾性体が圧縮されるときの制御反発力Fcを算出する。制御反発力Fcは、以下の(式4)から算出できる。
Fc=k×(Th−D) ・・・(式4)
【0042】
ここで、kは、仮想的な弾性体の弾性定数であり、適切な制御効果が得られるように予め適切に調整される制御パラメータである。Thは、仮想弾性体の長さlを表すしきい値であり、例えばステップS1801で用いた車間時間THWのしきい値T2を用いる。このように、ステップS180で制御反発力Fcを算出した後、ステップS190へ進む。
【0043】
ステップS190では、システム作動制限判断処理を行う。具体的には、運転者によるシステムの使用頻度に基づいて、制動力制御の動作を制限するか否かを判断する。ここでの処理を、図15のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1901では、ステップS180で算出した制御反発力Fcが予め設定したしきい値Fc1以上か否かを判定する。
【0044】
Fc≧Fc1の場合は、ステップS1902へ進み、作動制限を判断するためのカウンタCを加算する。一方、Fc<Fc1の場合は、ステップS1903へ進み、カウンタCを減算する。なお、カウンタCはC≧0である。つづくステップS1904では、カウンタCが所定のしきい値C1以上か否かを判定する。
【0045】
C≧C1の場合は、制駆動力制御の使用頻度が高いと判断し、ステップS1905へ進む。ステップS1905では、システムの作動、すなわち制動力制御の動作を制限する。具体的には、上述したステップS170でブレーキアクチュエータのスタンバイ状態が設定されている場合に、スタンバイ状態を強制的に解除する。すなわち、実際に制動力を発生させるための制動指令が出力されていない場合にモータ708を予め回転させておくことを禁止する(プリ回転の禁止)。さらに、表示装置90によりシステム作動制限状態であることを表示する。例えば、警告ランプを点灯する。一方、C<C1の場合はステップS1906へ進み、モータ708のプリ回転を禁止せずにシステムの標準動作を行うようにする。このように、ステップS190でシステム作動制限判断処理を行った後、ステップS200へ進む。
【0046】
ステップS200では、ステップS180で算出した制御反発力Fcを用いて、制駆動力補正を行う際の駆動力補正量ΔDaおよび制動力補正量ΔDbを算出する。ステップS200における制駆動力補正量の算出処理を、図16を用いて説明する。
【0047】
まずステップS2001で、ステップS120で読み込んだアクセルペダル操作量SAに基づいて、アクセルペダル61が踏みこまれているか否かを判定する。アクセルペダル61が踏み込まれていない場合には、ステップS2002へ進み、アクセルペダル61が急に解放されたか否かを判定する。例えば、アクセルペダル操作量SAから算出するアクセルペダル61の操作速度が所定値未満であった場合は、アクセルペダル61がゆっくりと戻されたと判断し、ステップS2003へ進む。ステップS2003では、駆動力補正量ΔDaとして0をセットし、つづくステップS2004で制動力補正量ΔDbとして上述した(式4)で算出した制御反発力Fcをセットする。
【0048】
一方、ステップS2002でアクセルペダル61が急に戻されたと判定されると、ステップS2005へ進む。ステップS2005では駆動力補正量ΔDaを漸減させ、ステップS2006で制動力補正量ΔDbを制御反発力Fcまで漸増させる。具体的には、アクセルペダル61が急に戻された場合は、アクセルペダル操作中には駆動力を制御反発力Fc分だけ減少させるように設定していた駆動力補正量ΔDa(=−Fc)を、0まで徐々に変化させる。また、アクセルペダル61が急に戻されてから制動力補正量ΔDbを制御反発力Fcまで徐々に増加させる。このように、アクセルペダル61が急に戻された場合は、最終的に駆動力補正量ΔDaが0に、制動力補正量ΔDbがFcになるように変化させる。
【0049】
一方、ステップS2001が肯定判定され、アクセルペダル61が踏み込まれている場合は、ステップS2007へ進んでドライバ要求駆動力Fdaを推定する。コントローラ50内には、駆動力制御装置60内に記憶されたドライバ要求駆動力算出マップ(図5)と同一のものが用意されており、アクセルペダル操作量SAに従って、ドライバ要求駆動力Fdaを推定する。
【0050】
つづくステップS2008で、ステップS2007で推定したドライバ要求駆動力Fdaと制御反発力Fcとの大小関係を比較する。ドライバ要求駆動力Fdaが制御反発力Fc以上(Fda≧Fc)の場合は、ステップS2009へ進む。ステップS2009では、駆動力補正量ΔDaとして−Fcをセットし、ステップS2010で制動力補正量ΔDbに0をセットする。すなわち、Fda−Fc≧0であることから、駆動力Fdaを制御反発力Fcにより補正した後も正の駆動力が残る。従って、補正量の出力は駆動力制御装置60のみで行うことができる。この場合、車両の状態としては、ドライバがアクセルペダル61を踏んでいるにも関わらず期待した程の駆動力が得られない状態となる。補正後の駆動力が走行抵抗より大きい場合には、加速が鈍くなる挙動としてドライバに感じられ、補正後の駆動力が走行抵抗より小さい場合には、減速する挙動としてドライバに感じられる。
【0051】
一方、ステップS2008が否定判定され、ドライバ要求駆動力Fdaが制御反発力Fcより小さい場合(Fda<Fc)は、駆動力制御装置60のみでは目標とする補正量を出力できない。そこで、ステップS2011において駆動力補正量ΔDaに−Fdaをセットし、ステップS2012で制動力補正量ΔDbとして、補正量の不足分(Fc−Fda)をセットする。この場合、車両の減速挙動としてドライバには察知される。
【0052】
このようにステップS200で制駆動力補正量ΔDa,ΔDbを算出した後、ステップS210へ進む。ステップS210では、ステップS180で算出した制御反発力Fcに基づいて、アクセルペダル61に発生する操作反力の制御量、すなわちアクセルペダル反力制御指令値FAを算出する。
【0053】
図17に、制御反発力Fcとアクセルペダル反力制御指令値FAとの関係を示す。図17において、アクセルペダル反力制御を行わない場合の、通常のアクセルペダル反力を破線で示す。ここではアクセルペダル操作量SAが一定の場合のアクセルペダル反力を示している。図17に示すように、制御反発力Fcが大きくなるほど、通常値に対してアクセルペダル反力制御指令値FAが増加する。制御反発力Fcが所定値FcAを超えると、アクセルペダル反力制御指令値FAの増加率が大きくなる。このように、制駆動力の補正量が大きくなるほど、アクセルペダル61に発生する操作反力が大きくなる。
【0054】
つづくステップS220では、ステップS200で算出した駆動力補正量ΔDa、及び制動力補正量ΔDbをそれぞれ駆動力制御装置60、及び制動力制御装置70に出力する。駆動力制御装置60は、駆動力補正量ΔDaと要求駆動力Fdaとから目標駆動力を算出し、算出した目標駆動力を発生するようにエンジンコントローラ60cに指令を出力する。また、制動力制御装置70は、制動力補正量ΔDbと要求制動力Fdbとから目標制動力を算出し、目標制動力を発生するようにブレーキ液圧コントローラ70cに指令を出力する。
【0055】
ステップS230では、ステップS210で算出したアクセルペダル反力制御指令値FAをアクセルペダル反力発生装置80に出力する。アクセルペダル反力発生装置80は、コントローラ50から入力される指令値に応じてアクセルペダル反力を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
【0056】
つぎに、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の作用を、図面を用いて説明する。
図18(a)〜(c)に、システム作動制限を行わない場合の車間時間THW、自車両に発生する駆動力と制動力、およびアクセルペダル反力の時間変化を示す。なお、アクセルペダル61は一定の操作量SAで操作され、ドライバ要求駆動力Fdaは一定であるとする。図18(a)に示すように、時間taで自車両と先行車との車間時間THWがしきい値T2を下回ると、制御反発力Fcが算出される。なお、制御反発力Fcは自車両に作用する走行抵抗として算出されるので、図18(b)において制動力の領域に示している。ドライバ要求駆動力Fdaから制御反発力Fcを引いた値(Fda-Fc)が補正後の制駆動力として自車両に発生する。したがって、Fda>Fcの場合は、アクセルペダル61を踏み込んでいる場合に、運転者が思ったほどの駆動力が得られない状態となる。
【0057】
時間tbで車間時間THWがしきい値T1を下回ると、ブレーキアクチュエータがスタンバイ状態に設定される。これに応じて、ブレーキアクチュエータのモータ708がプリ回転される。さらに車間時間THWが減少し、時間tcで制御反発力Fcがドライバ要求駆動力Fdaを上回ると、制動力制御装置70による制動力制御が開始する。モータ708およびポンプ709が予め回転しているので、制動力制御の開始時に速やかにブレーキ液圧が上昇して制動力が作用する。
【0058】
アクセルペダル反力は、図18(c)に示すように、制御反発力Fcの増加、すなわち車間時間THWの減少に伴って増加する。なお、アクセルペダル操作量SAが一定であるので、通常のアクセルペダル反力は一定である。
【0059】
図19(a)〜(g)に、システム作動制限を行う場合の車間時間THW、自車両に発生する駆動力と制動力、カウンタC,作動制限状態、スタンバイ状態、ブレーキ作動状態およびポンプ作動状態の時間変化を示す。なお、アクセルペダル61は一定の操作量SAで操作され、ドライバ要求駆動力Fdaは一定であるとする。図19(a)に示すように、先行車に対する車間時間THWがしきい値T2を下回る状態が継続し、システムによる制駆動力制御が継続的に行われている。
【0060】
図19(a)に示すように時間tdで車間時間THWがしきい値T1を下回ると、ブレーキアクチュエータがスタンバイ状態に設定され(図19(e))、モータ708およびポンプ709がプリ回転を開始する(図19(g))。時間teで制御反発力Fcがしきい値Fc1以上となると、カウンタCがカウントアップされ始める(図19(c))。時間tfで制御反発力Fcがドライバ要求駆動力Fdaを上回ると、制動力制御装置70による制動力制御が開始される。このとき、図19(g)に示すようにブレーキアクチュエータのモータ708およびポンプ709が予め回転しているので、制動力制御開始とともに速やかにブレーキ液圧が上昇して制動力が作用する。
【0061】
時間tgで制御反発力Fcがドライバ要求駆動力Fdaを下回ると、制動力制御は終了するが、車間時間THWが時間thでしきい値T1を超えるまでスタンバイ状態が維持されてポンプ708が回転する。
【0062】
時間tiで車間時間THWがしきい値T1を下回ると、再びブレーキアクチュエータがスタンバイ状態に設定され、モータ708およびポンプ709がプリ回転する。その後、時間tjで制御反発力Fcがしきい値Fc1を超えると、カウンタCがカウントアップされる。時間tkでカウンタCがしきい値C1を超えると、システムの標準動作状態から作動制限状態に変化する(図19(d))。これにより、ブレーキアクチュエータのスタンバイ状態が強制的に解除され、時間tlで制動力制御が終了すると、モータ708およびポンプ709の回転も同時に終了する。
【0063】
時間tmで制御反発力Fcが再びしきい値Fc1を超えても、カウンタCがしきい値C1を上回り作動制限状態となっているので、モータ708およびポンプ709のプリ回転は禁止されている。したがって、時間tnで制御反発力Fcがドライバ要求駆動力Fdaを上回り、制動力制御が開始されると同時に、モータ708およびポンプ709が回転し始める。この場合、モータ708およびポンプ709を予め回転させておく場合に比べて、実際に制動力が作用し始めるタイミングが遅くなる。
【0064】
−第1の実施の形態の変形例−
ここでは、システムの作動制限を行う場合に、制動力制御装置70による制動力制御を禁止する。図20(a)〜(g)を用いて、どのよにシステム作動制限を行うかを説明する。
【0065】
図20(a)に示すように、先行車に対する車間時間THWがしきい値T2を下回る状態で、システムによる制駆動力制御が継続的に行われている。図20(c)に示すように、時間tkでカウンタCがしきい値C1を上回ると、システムの標準動作状態から作動制限状態に変化する(図20(d))。これに応じて、ブレーキアクチュエータのスタンバイ状態が強制的に解除されるとともに、制動力制御自体も禁止される。具体的には、システムの作動制限状態においてモータ708の回転を禁止し、制御反発力Fcがドライバ要求駆動力Fdaを上回る場合であっても、制動力を発生させない。これにより、システム作動制限状態に移行した時間tk以降は、図20(g)に示すように駆動力のみを用いて接触可能性の報知を行う。
【0066】
また、システム作動制限状態において、制動力制御に加えて駆動力制御を禁止すること、すなわちシステムの作動を禁止することも可能である。
【0067】
このように、以上説明した第1の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置1は、自車両前方の障害物状況および自車両の走行状態に基づいて、自車両と先行車との接触の可能性に関するリスクポテンシャル、すなわち自車両と先行車との車間時間THWを算出する。そして、算出した車間時間THWに基づいて、運転操作機器であるアクセルペダル61に発生する操作反力および自車両に発生する制駆動力の少なくともいずれかを制御する。これにより、自車両と先行車との接触の可能性を、運転者に与える減速感により報知することができる。さらに、コントローラ50はシステム(車両制御システム)の作動状態を選定する際の選定条件を満たすか否かを判定し、特定の選定条件が満たされたか否かに応じて、システムの作動状態を選定する。これにより、ある特定の条件においてシステムの作動状態が変化するので、運転者に刺激を与えて接触可能性の報知を効果的に行うことが可能となる。
(2)コントローラ50は、システムの作動状態を選定する際の選定条件として、運転者によるシステムの使用頻度を検出する。運転者が車両制御システムを頻繁に使用している場合、接触可能性の報知としての減速感を継続的に受けているため、減速感の変化を感知しづらくなっている。そこで、システムの作動状態を変化させることにより、運転者に刺激を与えて接触可能性の報知を効果的に行うことができる。
(3)コントローラ50は、特定の選定条件が満たされた場合に、システムのスタンバイ状態と作動制限状態とから、システムの作動状態を選定する。具体的には、システムの使用頻度が高い場合は作動制限状態を選定し、使用頻度が高くない場合はスタンバイ状態を選定する。これにより、使用頻度が高くない場合は、車間時間THWがしきい値T1を下回るとシステムがスタンバイ状態となるので制御開始時に速やかな接触可能性の報知を行うことができる。一方、使用頻度が高い場合は、システムを作動制限状態とする。例えば、スタンバイ状態の設定を禁止したり、システムの作動自体を禁止する。これにより、制御開始時に運転者に刺激を与え、接触可能性の報知を効果的に行うことが可能となる。
(4)コントローラ50は、先行車に対するリスクポテンシャルが所定値を超えると、すなわち車間時間THWが所定値T1を下回ると、スタンバイ状態に設定する。具体的には、制動力制御を開始する前にブレーキアクチュエータのモータ708およびポンプ709(増圧装置)を回転させておく。これにより、制動力制御が開始するときの応答性を高めることができる。
(5)コントローラ50は、システムが作動制限状態に設定されると、制動力制御の開始時に制動力の発生を遅延させる。これにより、制御開始時に運転者に刺激を与え、接触可能性の報知を効果的に行うことが可能となる。
(6)コントローラ50は、ブレーキアクチュエータのモータ708およびポンプ709(増圧装置)のプリ回転を禁止することにより、制動力開始時の制動力の発生を遅延させる。すなわち、制動力制御が開始してからモータ708およびポンプ709が回転し始めるため、実際に制動力が作用するタイミングがスタンバイ状態に設定していた場合に比べて遅くなる。制動力の効き始めるタイミングを遅らせることにより、運転者に適度の刺激を与え、接触可能性の報知を効果的に行うことができる。また、制動力が効き始めるタイミングを遅らせるだけで、実際の制動力の大きさは変化しないので、例えば制動力の大きさを変化させて運転者に刺激を与える場合のように制動力特性が変化して運転者に違和感を与えてしまうことを防止できる。さらに、制動力の大きさを変化させて運転者に刺激を与える場合に比べて、制動力制御の開始タイミングを遅らせることにより、より大きな刺激を運転者に与えることができる。
(7)また、システムの作動制限状態においてモータ708およびポンプ709のプリ回転を禁止するだけでなく、制動力の発生自体を禁止することも可能である。これにより、自車両が先行車に接近して接触可能性が高くなっていく状況において、通常であればシステムによって制動力が発生するところ、制動力が発生しなくなる。その結果、運転者に刺激を与え、効果的な接触可能性の報知を行うことができる。また、作動制限状態において制動力の発生を禁止した場合でも、図20(g)に示すように駆動力は制御されるので、運転者にある程度の減速感を与えることができる。
(8)さらに、システムの作動制限状態において、制動力の発生とともに、駆動力の発生も禁止することも可能である。また、アクセルペダル61の操作反力の発生を禁止することもできる。これにより、システムの使用頻度が高く減速感の変化を運転者が感知しづらくなっている状況で、運転者に刺激を与え、効果的な接触可能性の報知を行うことができる。
(9)コントローラ50は、特定の選定条件が満たされてシステムが作動制限状態に設定された場合、作動制限状態であることを運転者に報知する。具体的には、警報ランプ90を点灯する。これにより、システムが作動制限状態であり、制動力の発生タイミングが遅れることを運転者に報知することができる。
【0068】
《第2の実施の形態》
以下に、本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0069】
第2の実施の形態においては、システムにかかる負荷の状態に基づいてシステム作動制限を行うか否かを判定する。以下に、第2の実施の形態におけるシステム作動制限判断処理について、図21のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図9に示したフローチャートのステップS190で実行される。
【0070】
まず、ステップS1911で制動力制御装置70による制動力制御(ブレーキ自動制御)が行われているか否かを判定する。ステップS1911が肯定判定されるとステップS1912へ進み、カウンタCを加算する。一方、ステップS1911が否定判定されると、ステップS1913へ進んでカウンタCを減算する。なお、カウンタC≧0である。
【0071】
つづくステップS1914では、カウンタCが所定のしきい値C2以上であるか否かを判定する。C≧C2の場合は、ステップS1915へ進んでシステム作動制限を行う。例えば、ブレーキアクチュエータのスタンバイ状態を強制的に解除するとともに、警告ランプ90を点灯する。C<C2の場合は、ステップS1916へ進んでシステムの標準動作を行うようにする。
【0072】
このように、以上説明した第2の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。ブレーキ自動制御を継続的に行ってシステムに継続的に負荷がかかっているような状態で、システムの作動を制限する。システムに継続的に負荷がかかっている場合は、運転者がシステムに頼りすぎて減速度の変化を感知しづらくなっている場合であり、システムの作動を制限することにより、運転者に刺激を与えて接触可能性の報知を効果的に行うことが可能となる。
【0073】
《第3の実施の形態》
以下に、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0074】
第3の実施の形態においては、レーザレーダ10、車速センサ20および舵角センサ30等の異常が検出された場合にシステムの作動制限を行う。以下に、第3の実施の形態におけるシステム作動制限判断処理について、図22のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図9に示したフローチャートのステップS190で実行される。
【0075】
まず、ステップS1921で各センサの異常が検出されたか否かを判定する。ステップS1921が肯定判定されてセンサ異常が検出されるとステップS1922へ進み、システム作動制限を行う。例えば、ブレーキアクチュエータのスタンバイ状態を強制的に解除するとともに、警告ランプ90を点灯する。一方、ステップS1921が否定判定されてセンサが正常に作動している場合は、ステップS1923へ進んでシステムの標準動作を行うようにする。
【0076】
このように、以上説明した第3の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。センサの異常が検出された場合にシステムの作動を制限することにより、信頼性の高いシステムの作動を行うことができる。
【0077】
《第4の実施の形態》
以下に、本発明の第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0078】
第4の実施の形態においては、システムの作動制限を行う前に、システム作動制限を行うことを予告する。以下に、第4の実施の形態におけるシステム作動制限判断処理について、図23のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図9に示したフローチャートのステップS190で実行される。
【0079】
まず、ステップS1931で、制御反発力Fcが所定のしきい値Fc1以上か否かを判定する。ステップS1931が肯定判定されるとステップS1932へ進み、カウンタCを加算する。ステップS1933では、カウンタCが所定のしきい値C3以上か否かを判定する。ステップS1933が肯定判定されると、ステップS1934へ進み、システム作動制限を行うことを予告する。具体的には、警告ランプ90を点滅する。
【0080】
ステップS1935では、システム作動制限の予告を行ってからの経過時間を示す作動制限タイマTnを加算する。ステップS1936では、作動制限タイマTnが所定の予告時間Tn1以上であるか否かを判定する。ステップS1936が肯定判定されると、ステップS1937へ進み、システム作動制限を行う。具体的には、ブレーキアクチュエータをスタンバイ状態に設定するとともに、警告ランプ90を点灯する。
【0081】
一方、ステップS1931が否定判定されると、ステップS1938へ進んでカウンタCを減算する。ステップS1939では、作動制限タイマTnをリセットする。ステップS1940では、システムを標準動作状態とする。なお、ステップS1933が否定判定されてC<C3の場合はステップS1939へ進む。また、ステップS1936が否定判定されてTn<Tn1の場合はステップS1940へ進む。
【0082】
このように、以上説明した第4の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。システムが作動制限状態に設定される前に、作動制限状態が設定されることを運転者に予告するようにした。具体的には、警報ランプ90を点滅させる。これにより、近々システムの作動が制限されて制動力の発生タイミングが遅れることを運転者に報知することができる。また、作動制限状態が設定されると警報ランプ90を点灯状態に切り替えることにより、作動制限状態に移行したことを運転者に報知することができる。
【0083】
《第5の実施の形態》
以下に、本発明の第5の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第5の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0084】
第5の実施の形態においては、システム作動制限を行う場合に、制動力制御装置70に出力する制動力補正量ΔDbの出力タイミングを遅らせる。以下に、第5の実施の形態における制駆動力補正量出力処理について、図24のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図9に示したフローチャートのステップS220で実行される。ステップS220では駆動力補正量ΔDaと制動力補正量ΔDbの出力処理を行うが、図24には、説明を簡単にするため制動力補正量ΔDbの出力処理のみを示している。また、この処理はシステム作動制限状態において制動力を発生させ始めるときに行い、すでに制動力を発生させているときには行わない。
【0085】
まず、ステップS2201でシステムの作動制限状態であるか否かを判定する。ステップS2201が肯定判定され、システム作動制限状態である場合は、ステップS2202へ進む。ステップS2202では、出力タイミングを遅延させるための遅延タイマTdを加算する。遅延タイマTdは、システム作動制限状態において制動力補正量ΔDbが0から0を超える値に変化してからの経過時間を表す。ステップS2201が否定判定されると、ステップS2203へ進み、遅延タイマTdをリセットする。
【0086】
ステップS2204では、遅延タイマTdが所定のしきい値Td1以上であるか否かを判定する。Td<Td1の場合は、ステップS2205へ進み、制動力補正量ΔDb=0として制動力制御装置70に出力する。一方、Td≧Td1の場合は、ステップS2206へ進み、ステップS200で算出した制動力補正量ΔDbを制動力制御装置70へ出力する。
【0087】
このように、以上説明した第5の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。システム作動制限状態において制動力を発生させる場合は、所定の遅延時間Td1だけ遅れて制動指令が出力される。このように、制動力補正量ΔDbの出力タイミングを遅らせることによっても、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、システム作動制限状態において制動力制御の開始タイミングを遅らせて、運転者に刺激を与え接触可能性の報知を効果的に行うことができる。
【0088】
《第6の実施の形態》
以下に、本発明の第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0089】
第6の実施の形態においては、システム作動制限を行う場合に、制動力制御装置70によって制動力を発生させ始めるときの制動力の増加量を制限する。以下に、第6の実施の形態における制駆動力補正量出力処理について、図25のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図9に示したフローチャートのステップS220で実行される。ステップS220では駆動力補正量ΔDaと制動力補正量ΔDbの出力処理を行うが、図25には、説明を簡単にするため制動力補正量ΔDbの出力処理のみを示している。また、この処理はシステム作動制限状態において制動力を発生させ始めるときに行い、すでに制動力を発生させているときには行わない。
【0090】
まず、ステップS2211でシステムの作動制限状態であるか否かを判定する。ステップS2211が肯定判定され、システム作動制限状態である場合は、ステップS2212へ進む。ステップS2212では、制動力制御を開始する際の制動力補正量の増加量リミッタLを、所定の値Lsに設定する。一方、ステップS2211が否定判定されると、ステップS2213へ進み、制動力制御を開始する際の制動力補正量の増加量リミッタLを、Lsよりも大きい所定の値Lmに設定する。
【0091】
ステップS2214では、今回周期で算出された制動力補正量ΔDbから前回周期で設定された制動力補正量ΔDb_zを引いた値(ΔDb-ΔDb_z)が、ステップS2212またはS2213で設定した増加量リミッタL以上であるか否かを判定する。ΔDb-ΔDb_z≧Lの場合は、ステップS2215へ進み、制動力補正量ΔDbとして、前回値ΔDb_zに増加量リミッタLを加算した値(ΔDb_z+L)を制動力制御装置70に出力する。一方、ΔDb-ΔDb_z<Lの場合は、ステップS2216へ進み、今回周期で算出された制動力補正量ΔDbを制動力制御装置70へ出力する。
【0092】
このように、以上説明した第6の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果加えて以下のような作用効果を奏することができる。システム作動制限状態において制動力を発生させる場合、制動力補正量ΔDbの増加量が制限される。このように、制動力制御開始時の制動力の増加速度を遅らせることによっても、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、システム作動制限状態において制動力制御を開始するときに、制動力の増加速度を遅らせることにより、運転者に刺激を与え接触可能性の報知を効果的に行うことができる。
【0093】
《第7の実施の形態》
以下に、本発明の第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図26に、第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置2の構成を示す。図26において、図1に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0094】
図26に示すように、車両用運転操作補助装置2は、アクセルペダル61の操作反力を制御するアクセルペダル反力発生装置80を備えていない。コントローラ50Aは、自車両と先行車との接触の可能性が高い場合に自車両の制駆動力を制御する。また、コントローラ50Aはシステムの作動制御状態に応じて警告ランプ90の点灯状態を制御する。
【0095】
図27に、第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置2における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートを示す。図27において、ステップS310〜S400での処理は、図9に示したフローチャートのステップS110〜S200での処理と同様である。ステップS400で制駆動力補正量ΔDa,ΔDbを算出した後、アクセルペダル反力指令値を算出せずに、ステップS410で補正量ΔDa,ΔDbを駆動力制御装置60および制動力制御装置70にそれぞれ出力する。
【0096】
このように、自車両と先行車との接触可能性に応じた操作反力制御を行わない場合でも、システムの使用頻度等の特定の選定条件が満たされた場合にシステムの作動を制限することにより、上述した第1の実施の形態と同様に、運転者に刺激を与えて接触可能性の報知を効果的に行うことができる。
【0097】
上述した第1〜第6の実施の形態においては、システム作動制限状態において制動力制御を制限した。しかしこれには限定されず、制動力制御を制限する代わりに、アクセルペダル反力制御を制限、例えば禁止することも可能である。または、制動力制御の制限と、アクセルペダル反力の制限を同時に行うこともできる。
【0098】
上述した第1〜第6の実施の形態においては、自車両周囲のリスクポテンシャル(車間時間THW)に応じたアクセルペダル反力制御を行った。ただし、これには限定されず、アクセルペダル反力制御に加えてブレーキペダル71の反力制御を行うこともできる。
【0099】
上述した第1〜第7の実施の形態においては、自車両と先行車との車間時間THWを障害物との接触の可能性に関するリスクポテンシャルとして算出したが、これには限定されない。例えば、車間時間THWの代わりに自車両が障害物に接触するまでの時間を表す余裕時間TTCを用いることもできる。余裕時間TTCは、自車両と障害物との車間距離Dを相対速度で割ることにより算出できる。なお、余裕時間TTCを用いる場合も、車間時間THWを用いる場合と同様に制御反発力Fcを算出する。
【0100】
上述した第1〜第7の実施の形態においては、システムを作動制限状態に設定すると、警告ランプ90を点灯してこれを報知した。また、第4の実施の形態においては、システムを作動制限状態に設定する前に、警告ランプ90を点滅して予告した。しかし、これには限定されず、警告ブザー等を用いて報知または予告を行うことも可能である。あるいは、液晶モニタ等に作動制限状態であること、または作動制限状態になることを表示することもできる。
【0101】
以上説明した第1から第7の実施の形態においては、障害物検出手段としてレーダ装置10および障害物検知装置40を用い、走行状態検出手段として車速センサ20を用い、リスクポテンシャル算出手段、条件判定手段、および作動選定手段としてコントローラ50,50Aを用いた。また、車両制御手段、スタンバイ手段、および作動制限手段として、コントローラ50,50A,駆動力制御装置60,制動力制御装置70,およびアクセルペダル反力発生装置80を用い、報知手段および予告手段として表示装置90を用いた。なお、上述した第1から第7の実施の形態においては、レーザレーダをレーダ装置10として用いる例を説明したが、レーザレーダの代わりにミリ波レーダ等の別方式のレーダ装置を用いることももちろん可能である。また、報知手段または予告手段を音声の発生装置で構成することも可能である。また、駆動力制御装置60とアクセルペダル反力発生装置80を省略して、制動力制御のみを行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図2】レーダ装置の測距原理を説明する図。
【図3】レーダ装置による検出結果の一例を示す図。
【図4】駆動力制御装置を説明する図。
【図5】アクセルペダル操作量と要求駆動力との関係を示す図。
【図6】制動力制御装置を説明する図。
【図7】ブレーキペダル操作量と要求制動力との関係を示す図。
【図8】(a)(b)ブレーキアクチュエータの油圧回路を示す図。
【図9】第1の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図10】自車両の予測進路の算出方法を説明する図。
【図11】自車両の予測進路の算出方法を説明する図。
【図12】制動制御スタンバイ処理の処理手順を示すフローチャート。
【図13】(a)(b)制駆動力制御の概念を説明する図。
【図14】制御反発力算出処理の処理手順を示すフローチャート。
【図15】システム作動制限判断処理の処理手順を示すフローチャート。
【図16】制駆動力補正量算出処理の処理手順を示すフローチャート。
【図17】制御反発力とアクセルペダル反力指令値との関係を示す図。
【図18】(a)〜(c)システム作動制限を行わない場合の、車間時間、制駆動力、およびアクセルペダル反力の時間変化を示す図。
【図19】(a)〜(g)システム作動制限を行う場合の、車間時間、制駆動力、カウンタ、作動制限状態、スタンバイ状態、ブレーキ作動状態、およびポンプ作動状態の時間変化を示す図。
【図20】(a)〜(g)システム作動制限を行う場合の、車間時間、制駆動力、カウンタ、作動制限状態、スタンバイ状態、ブレーキ作動状態、および実際の制駆動力の時間変化を示す図。
【図21】システム作動制限判断処理の処理手順を示すフローチャート。
【図22】システム作動制限判断処理の処理手順を示すフローチャート。
【図23】システム作動制限判断処理の処理手順を示すフローチャート。
【図24】制駆動力補正量出力処理の処理手順を示すフローチャート。
【図25】制駆動力補正量出力処理の処理手順を示すフローチャート。
【図26】本発明の第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図27】第7の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0103】
10:レーダ装置
20:車速センサ
30:舵角センサ
40:障害物検知装置
50、50A:コントローラ
60:駆動力制御装置
61:アクセルペダル
70:制動力制御装置
71:ブレーキペダル
80:アクセルペダル反力発生装置
90:表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用運転操作補助装置は、自車両と先行車との接触の可能性に基づいて自車両の制駆動力を制御し、運転者に減速感を与えて接触の可能性を報知している(例えば特許文献1参照)。この装置は、接触可能性に基づく制駆動力制御が継続して行われる場合に、制駆動力による報知を有効に作動させるために、制駆動力を増加または減少させている。
【0003】
本願発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【特許文献1】特開2002−328176号公報
【特許文献2】特開2003−267201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の装置は、制御が継続して行われる場合に制駆動力を変化させることにより、運転者に与える減速感を変化させて接触可能性を効果的に報知することができる。しかし、このように減速感を変化させて運転者への報知を効果的に行うためには、制駆動力の変化量を十分に大きく設定する必要がある。その結果、自車両の制駆動力特性が大きく変化し、運転者に違和感を与えてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用運転操作補助装置は、自車両前方の障害物を検出する障害物検出手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、障害物検出手段および走行状態検出手段による検出結果に基づいて、自車両と障害物との接触の可能性に関するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、リスクポテンシャル算出手段によって算出されるリスクポテンシャルに基づいて、運転操作装置に発生する操作反力、および自車両に発生する制駆動力の少なくともいずれかを制御する車両制御手段と、車両制御手段の作動状態を選定する際の選定条件を満たすか否かを判定する条件判定手段と、選定条件が満たされたか否かに応じて、車両制御手段の作動状態を選定する作動選定手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
自車両と障害物との接触の可能性に関するリスクポテンシャルに基づいて車両制御を行う際に、選定条件を満たすか否かに応じて作動状態を選定するので、ある条件において作動状態が変化する。これにより、違和感を与えることなく、運転者に刺激を与えて接触の可能性を効果的に報知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
《第1の実施の形態》
本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の構成を示すシステム図である。
【0008】
まず、車両用運転操作補助装置1の構成を説明する。車両用運転操作補助装置1は、レーダ装置10,車速センサ20,舵角センサ30,障害物検知装置40,コントローラ50,駆動力制御装置60,制動力制御装置70、アクセルペダル反力発生装置80、および表示装置90等を備えている。
【0009】
レーダ装置10は、例えば車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられたレーザレーダであり、水平方向に赤外線レーザ光を照射して車両前方領域を走査し、自車両前方の障害物を検出する。図2に、レーダ装置10による障害物検出の原理を説明する図を示す。図2に示すように、レーダ装置10はレーザ光を出力する発光部10aと、自車両の前方にある反射物(通常、前方車の後端)で反射された反射光を検出する受光部10bとを備えている。発光部10aはスキャニング機構が組み合わされており、図2に矢印で示すように振れるように構成されている。発光部10aは角度を変化させながら所定角度範囲内で順次発光する。レーダ装置10は、発光部10aによるレーザ光の出射から受光部10bにおける反射波の受光までの時間差に基づいて自車両から障害物までの距離を計測する。
【0010】
レーダ装置10は、スキャニング機構により自車両の前方領域をスキャニングしながら、各スキャニング位置またはスキャニング角度について反射光を受光した場合に障害物までの距離を算出する。さらに、レーダ装置10は、障害物を検出したときのスキャニング角とその障害物までの距離とに基づいて、自車両に対する障害物の左右方向の位置も算出する。すなわち、レーダ装置10は、障害物の有無とともに自車両に対する障害物の相対的な位置を検出する。
【0011】
図3に、レーダ装置10による障害物の検出結果の一例を示す。各スキャニング角で自車両に対して障害物の相対的な位置を特定することにより、図3に示すようにスキャニング範囲内で検出できる複数の物体についての平面的な存在状態図を得ることができる。
【0012】
障害物検知装置40は、レーダ装置10および車速センサ20の検出結果に基づいて前方障害物に関する情報を取得する。具体的には、障害物検知装置40は、レーダ装置10からスキャニング周期毎またはスキャニング角ごとに出力される検出結果に基づいて、検出した物体の動きを判別するとともに、物体間の近接状態や動きの類似性等に基づいて、検出した物体が同一物体であるか異なる物体であるかを判別する。
【0013】
そして、障害物検知装置40は、レーダ装置10と車速センサ20からの信号に基づいて、自車両と前方障害物との車間距離と相対速度、および自車両に対する前方障害物の左右方向距離を認識する。なお、障害物検知装置40は、複数の前方障害物を検知した場合は各障害物についての情報を取得する。障害物検知装置40は、取得した障害物情報をコントローラ50へ出力する。
【0014】
舵角センサ30は、ステアリングコラムもしくはステアリングホイール(不図示)付近に取り付けられた角度センサ等であり、ステアリングシャフトの回転を操舵角として検出し、コントローラ50へ出力する。
【0015】
アクセルペダル61には、アクセルペダル61の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。アクセルペダルストロークセンサによって検出されたアクセルペダル操作量はコントローラ50および駆動力制御装置60に出力される。ブレーキペダル71には、その踏み込み量(操作量)を検出するブレーキペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。ブレーキペダルストロークセンサによって検出されたブレーキペダル操作量は、制動力制御装置70に出力される。
【0016】
コントローラ50は、CPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成され、車両用運転操作補助装置1全体の制御を行う。コントローラ50は、車速センサ20から入力される自車速、および障害物検知装置40から入力される障害物情報から、自車両の走行状況を認識する。コントローラ50は、走行状況に基づいて前方障害物に対する自車両のリスクポテンシャルを算出する。さらに、コントローラ50は、障害物に対するリスクポテンシャルに基づいて、自車両に発生する制駆動力およびアクセルペダル61に発生する操作反力を制御する。
【0017】
駆動力制御装置60は、アクセルペダル61の操作状態に応じた駆動力を発生するようにエンジン(不図示)を制御するとともに、外部からの指令に応じて、発生させる駆動力を変化させる。図4に、駆動力制御装置60の構成を表すブロック図を示す。図5に、アクセルペダル操作量SAとドライバ要求駆動力Fdaとの関係を定めた特性マップを示す。駆動力制御装置60は、図4に示すようにドライバ要求駆動力算出部60aと、加算器60bと、エンジンコントローラ60cとを備えている。
【0018】
ドライバ要求駆動力算出部60aは、図5に示すようなマップを用いて、アクセルペダル61が踏み込まれたときの操作量(アクセルペダル操作量)SAに応じてドライバが要求する駆動力(ドライバ要求駆動力)Fdaを算出する。加算器60bは、算出されたドライバ要求駆動力Fdaに、後述する駆動力補正量ΔDaを加えて目標駆動力を算出し、エンジンコントローラ60cへ出力する。エンジンコントローラ60cは、目標駆動力に従ってエンジンへの制御指令値を算出する。
【0019】
制動力制御装置70は、ブレーキペダル71の操作状態に応じた制動力を発生するようにブレーキ液圧を制御するとともに、外部からの指令に応じて、発生させるブレーキ液圧を変化させる。図6に、制動力制御装置70の構成を表すブロック図を示す。図7に、ブレーキペダル操作量SBとドライバ要求制動力Fdbとの関係を定めた特性マップを示す。図6に示すように、制動力制御装置70は、ドライバ要求制動力算出部70aと、加算器70bと、ブレーキ液圧コントローラ70cとを備えている。
【0020】
ドライバ要求制動力算出部70aは、図7に示すようなマップを用いて、ブレーキペダル71の踏み込み量(ブレーキペダル操作量)SBに応じてドライバが要求する制動力(ドライバ要求制動力)Fdbを算出する。加算器70bは、算出されたドライバ要求制動力Fdbに、後述する制動力補正値ΔDbを加えて目標制動力を算出し、ブレーキ液圧コントローラ70cに出力する。ブレーキ液圧コントローラ70cは、目標制動力に従ってブレーキ液圧指令値を算出する。ブレーキ液圧コントローラ70cからの指令に応じて各車輪に設けられたホイールシリンダ(不図示)の液圧が制御され、制動力が発生する。
【0021】
図8(a)(b)に、ブレーキ液圧コントローラ70cによって制御されるブレーキアクチュエータの油圧回路を示す。車両には、左前輪/右後輪用、および右前輪/左後輪用の2系統の油圧回路が設けられているが、図8(a)(b)には説明を簡単にするため、左前輪/右後輪用の1系統の油圧回路のみを示している。
【0022】
図8(a)(b)に示すように、マスタシリンダ701と各ホイールシリンダ(ここでは左前輪ホイールシリンダおよび右後輪ホイールシリンダ)との間の管路には、制御バルブ702,切換バルブ703、増圧用ソレノイドバルブ704,705、減圧用ソレノイドバルブ706,707が設置されている。これらのバルブ702〜707は、ブレーキ液圧コントローラ70cからの信号に応じて駆動される。また、モータ708によって駆動されるポンプ709、ホイールシリンダからのブレーキ液を一時的に蓄えておくリザーバー710、ダンパー室711、ポンプ709へ流入したブレーキ液がリザーバー710へ戻ることを防止するインレットバルブ712、およびポンプ709から吐出したブレーキ液がポンプ709へ戻ることを防止するアウトレットバルブ713が設けられている。
【0023】
運転者によるブレーキペダル71の踏み込み操作に応じて制動力を発生させる場合、すなわち制動力制御装置70による制動力制御を行わない場合は、図8(a)に示すように、制御バルブ702のポートを閉じ、切換バルブ703のポートを開く。また、増圧用ソレノイドバルブ704,705のポートを開き、減圧用ソレノイドバルブ706,707のポートを閉じる。このとき、モータ708およびポンプ709の作動は停止する。これにより、マスタシリンダ701は切換バルブ703および増圧用ソレノイドバルブ704,705を介して、左前輪ホイールシリンダおよび右後輪ホイールシリンダに連通され、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた制動力が発生する。
【0024】
制動力制御装置70による制動力制御を行う場合は、図8(b)に示すように、ブレーキ液圧コントローラ70cからの指令に応じて制御バルブ702のポートを開き、切換バルブ703のポートを閉じる。また、増圧用ソレノイドバルブ704のポートを開き、増圧用ソレノイドバルブ705のポートを閉じ、減圧用ソレノイドバルブ706,707のポートを閉じる。そして、モータ708およびポンプ709を作動し、マスタシリンダ701内のブレーキ液を制御バルブ702を介して吸入する。ブレーキ液はポンプ709で加圧されて左前輪ホイールシリンダへ供給される。これにより、ブレーキ液圧コントローラ70cからの指令に応じた制動力が発生する。
【0025】
アクセルペダル反力発生装置80は、アクセルペダル61のリンク機構に組み込まれたサーボモータ(不図示)を備えている。アクセルペダル反力発生装置80は、コントローラ50からの指令に応じてサーボモータで発生させるトルクを制御し、運転者がアクセルペダル61を操作する際に発生する操作反力を任意に制御することができる。なお、反力制御を行わない場合のアクセルペダル反力は、アクセルペダル操作量SAに対して比例するように設定されている。
【0026】
表示装置90は、例えばインストルメントパネルに設けられた警告ランプであり、コントローラ50からの信号に応じて点灯または消灯する。
【0027】
以下に、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を説明する。まず、動作の概要を説明する。車両用運転操作補助装置1は、障害物検知装置40で検出される障害物情報に基づいて自車両と前方障害物とが接触する可能性を推定する。そして、接触の可能性が高い場合には自車両の制駆動力制御およびアクセルペダル反力制御を行い、運転者に減速感を与えて運転者の注意を喚起する。また、制駆動力制御を行う際に、接触可能性の上昇に応じてブレーキアクチュエータをスタンバイ状態として、接触の可能性が高くなった場合に自車両に速やかに制動力を発生させるようにする。
【0028】
このように、自車両に発生する制駆動力を制御して運転者に減速感を与えることにより、自車両が前方障害物に接近し、接触の可能性が高くなっているという情報を運転者に確実に知覚させることができる。ただし、システムからの情報提供を継続的に行った場合、運転者は接触可能性の報知としての減速度の変化を感知しづらくなり、効果的な情報提供を行うことが困難となってしまう。
【0029】
そこで、第1の実施の形態においては、運転者がシステムからの情報提供を継続的に受けている場合に、運転者がシステムの作動状態を容易に感知できるように運転者に刺激を与える。具体的には、制駆動力制御システムの使用頻度が高く、運転者がシステムを過度に頼っているような場合には、ブレーキアクチュエータのスタンバイ状態を解除し、システムによる制動力の発生を遅らせることによって運転者の注意を喚起する。
【0030】
以下に、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を、図9を用いて詳細に説明する。図9は、第1の実施の形態のコントローラ50における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
【0031】
まず、ステップS110で、車速センサ20によって検出される自車速Vhと、舵角センサ30によって検出される自車両の操舵角δのデータを読み込む。ステップS120では、アクセルペダルストロークセンサ(不図示)によって検出されるアクセルペダル操作量SAを読み込む。つづくステップS130で、レーダ装置10および車速センサ20の検出結果に従って障害物検知装置40で算出した複数の前方障害物に関する情報を読み込む。前方障害物に関する情報は、例えば各障害物までの前後方向の距離(車間距離)D、自車両に対する障害物の左右方向位置xと前後方向位置y、および障害物の幅である。
【0032】
ステップS140では、ステップS110で読み込んだ自車速Vhおよび操舵角δに基づいて、自車両の進路を推定する。以下に、予測進路の推定方法を図10および図11を用いて説明する。予測進路を推定するために、図10に示すように自車両が矢印方向に進行している場合の旋回半径Rを算出する。まず、自車両の旋回曲率ρ(1/m)を算出する。旋回曲率ρは、自車速Vhおよび操舵角δに基づいて、以下の(式1)で算出できる。
ρ=1/{L(1+A・Vh2)}×δ/N・・・(式1)
ここで、L:自車両のホイールベース、A:車両に応じて定められたスタビリティファクタ(正の定数)、N:ステアリングギア比である。
【0033】
旋回半径Rは、旋回曲率ρを用いて以下の(式2)で表される。
R=1/ρ ・・・(式2)
(式2)を用いて算出した旋回半径Rを用いることで、図10に示すように自車両の走行軌道を半径Rの円弧として予測することができる。そして、図11に示すように、旋回半径Rの円弧を中心線とした幅Twの領域を、自車両が走行するであろう予測進路として設定する。幅Twは、自車両の幅に基づいて予め適切に設定しておく。
【0034】
ステップS150では、障害物検知装置40によって検出され、ステップS140で設定した自車両の予測進路内にある障害物のうち、自車両に最も近い物体を、制御の対象とする前方障害物として選択する。
【0035】
つづくステップS160では、ステップS150で選択した前方障害物に対する自車両のリスクポテンシャルを算出する。ここでは、自車両と前方障害物との接触のリスクを表すリスクポテンシャルとして、自車両から前方障害物までの車間時間THWを算出する。車間時間THWは、前方障害物の現在位置に自車両が到達するまでの時間を示す物理量であり、以下の(式3)から算出される。
THW=D/Vh ・・・(式3)
(式3)で算出される車間時間THWが小さいほど、自車両と前方障害物との接触の可能性、すなわち接触のリスクが高くなる。
【0036】
ステップS170では、制動制御スタンバイ判断処理を行う。具体的には、ステップS160で算出した車間時間THWに基づいて、ブレーキアクチュエータをスタンバイ状態にするか否かを判断する。ここでの処理を、図12のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1701では、ステップS160で算出した車間時間THWが所定のしきい値T1以上か否かを判定する。
【0037】
車間時間THW<T1の場合は、ステップS1702へ進み、ブレーキアクチュエータをスタンバイ状態に設定する。具体的には、図8(a)に示すように制御バルブ702を閉じた状態でモータ708を回転させる。制御バルブ702が閉じているので、モータ708を回転させてもマスタシリンダ701からのブレーキ液はポンプ709に流入しない。スタンバイ状態から制動力制御を開始する場合は、モータ708およびポンプ709がすでに回転しているので、制御バルブ702を開くことで速やかにブレーキ液圧が上昇する。これにより、制動力制御開始時の応答性を高めることができる。
【0038】
一方、車間時間THW≧T1の場合は、ステップS1703へ進み、ブレーキアクチュエータがスタンバイ状態となっている場合はそれを解除する。また、ブレーキアクチュエータがスタンバイ状態に設定されていない場合は、そのまま維持する。具体的には、制動力制御開始前にモータ708およびポンプ709を予め回転させておくことを禁止する。
このようにステップS170で制動力制御スタンバイ判断を行った後、ステップS180へ進む。
【0039】
ステップS180では、制駆動力の特性を変更するために用いる制御反発力を算出する。具体的には、図13(a)(b)に示すように自車両前方に仮想的な弾性体を設けたと仮定し、この仮想的な弾性体が前方車両に当たって圧縮され、自車両に対する擬似的な走行抵抗を発生するというモデルを考える。図13(a)に示すように自車両と前方障害物との車間距離Dが仮想的な弾性体の長さlよりも長い場合は、仮想弾性体は前方障害物に接触しないので圧縮されない。一方、図13(b)に示すように車間距離Dが仮想弾性体の長さlよりも短い場合は仮想弾性体が圧縮される。そこで、図13(b)に示すように仮想弾性体が圧縮される場合の仮想弾性体の反発力(制御反発力)Fcを算出する。ここでの処理を、図14のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
ステップS1801では、ステップS160で算出した車間時間THWが所定のしきい値T2以上か否かを判定する。THW≧T2の場合は、車間時間THWが大きく自車両と前方障害物との接触の可能性が低いと判断し、ステップS1802へ進んで制御反発力Fc=0に設定する。
【0041】
一方、THW<T2の場合は、車間時間THWが小さく自車両と前方障害物との接触の可能性が高いと判断し、ステップS1803へ進んで仮想弾性体が圧縮されるときの制御反発力Fcを算出する。制御反発力Fcは、以下の(式4)から算出できる。
Fc=k×(Th−D) ・・・(式4)
【0042】
ここで、kは、仮想的な弾性体の弾性定数であり、適切な制御効果が得られるように予め適切に調整される制御パラメータである。Thは、仮想弾性体の長さlを表すしきい値であり、例えばステップS1801で用いた車間時間THWのしきい値T2を用いる。このように、ステップS180で制御反発力Fcを算出した後、ステップS190へ進む。
【0043】
ステップS190では、システム作動制限判断処理を行う。具体的には、運転者によるシステムの使用頻度に基づいて、制動力制御の動作を制限するか否かを判断する。ここでの処理を、図15のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1901では、ステップS180で算出した制御反発力Fcが予め設定したしきい値Fc1以上か否かを判定する。
【0044】
Fc≧Fc1の場合は、ステップS1902へ進み、作動制限を判断するためのカウンタCを加算する。一方、Fc<Fc1の場合は、ステップS1903へ進み、カウンタCを減算する。なお、カウンタCはC≧0である。つづくステップS1904では、カウンタCが所定のしきい値C1以上か否かを判定する。
【0045】
C≧C1の場合は、制駆動力制御の使用頻度が高いと判断し、ステップS1905へ進む。ステップS1905では、システムの作動、すなわち制動力制御の動作を制限する。具体的には、上述したステップS170でブレーキアクチュエータのスタンバイ状態が設定されている場合に、スタンバイ状態を強制的に解除する。すなわち、実際に制動力を発生させるための制動指令が出力されていない場合にモータ708を予め回転させておくことを禁止する(プリ回転の禁止)。さらに、表示装置90によりシステム作動制限状態であることを表示する。例えば、警告ランプを点灯する。一方、C<C1の場合はステップS1906へ進み、モータ708のプリ回転を禁止せずにシステムの標準動作を行うようにする。このように、ステップS190でシステム作動制限判断処理を行った後、ステップS200へ進む。
【0046】
ステップS200では、ステップS180で算出した制御反発力Fcを用いて、制駆動力補正を行う際の駆動力補正量ΔDaおよび制動力補正量ΔDbを算出する。ステップS200における制駆動力補正量の算出処理を、図16を用いて説明する。
【0047】
まずステップS2001で、ステップS120で読み込んだアクセルペダル操作量SAに基づいて、アクセルペダル61が踏みこまれているか否かを判定する。アクセルペダル61が踏み込まれていない場合には、ステップS2002へ進み、アクセルペダル61が急に解放されたか否かを判定する。例えば、アクセルペダル操作量SAから算出するアクセルペダル61の操作速度が所定値未満であった場合は、アクセルペダル61がゆっくりと戻されたと判断し、ステップS2003へ進む。ステップS2003では、駆動力補正量ΔDaとして0をセットし、つづくステップS2004で制動力補正量ΔDbとして上述した(式4)で算出した制御反発力Fcをセットする。
【0048】
一方、ステップS2002でアクセルペダル61が急に戻されたと判定されると、ステップS2005へ進む。ステップS2005では駆動力補正量ΔDaを漸減させ、ステップS2006で制動力補正量ΔDbを制御反発力Fcまで漸増させる。具体的には、アクセルペダル61が急に戻された場合は、アクセルペダル操作中には駆動力を制御反発力Fc分だけ減少させるように設定していた駆動力補正量ΔDa(=−Fc)を、0まで徐々に変化させる。また、アクセルペダル61が急に戻されてから制動力補正量ΔDbを制御反発力Fcまで徐々に増加させる。このように、アクセルペダル61が急に戻された場合は、最終的に駆動力補正量ΔDaが0に、制動力補正量ΔDbがFcになるように変化させる。
【0049】
一方、ステップS2001が肯定判定され、アクセルペダル61が踏み込まれている場合は、ステップS2007へ進んでドライバ要求駆動力Fdaを推定する。コントローラ50内には、駆動力制御装置60内に記憶されたドライバ要求駆動力算出マップ(図5)と同一のものが用意されており、アクセルペダル操作量SAに従って、ドライバ要求駆動力Fdaを推定する。
【0050】
つづくステップS2008で、ステップS2007で推定したドライバ要求駆動力Fdaと制御反発力Fcとの大小関係を比較する。ドライバ要求駆動力Fdaが制御反発力Fc以上(Fda≧Fc)の場合は、ステップS2009へ進む。ステップS2009では、駆動力補正量ΔDaとして−Fcをセットし、ステップS2010で制動力補正量ΔDbに0をセットする。すなわち、Fda−Fc≧0であることから、駆動力Fdaを制御反発力Fcにより補正した後も正の駆動力が残る。従って、補正量の出力は駆動力制御装置60のみで行うことができる。この場合、車両の状態としては、ドライバがアクセルペダル61を踏んでいるにも関わらず期待した程の駆動力が得られない状態となる。補正後の駆動力が走行抵抗より大きい場合には、加速が鈍くなる挙動としてドライバに感じられ、補正後の駆動力が走行抵抗より小さい場合には、減速する挙動としてドライバに感じられる。
【0051】
一方、ステップS2008が否定判定され、ドライバ要求駆動力Fdaが制御反発力Fcより小さい場合(Fda<Fc)は、駆動力制御装置60のみでは目標とする補正量を出力できない。そこで、ステップS2011において駆動力補正量ΔDaに−Fdaをセットし、ステップS2012で制動力補正量ΔDbとして、補正量の不足分(Fc−Fda)をセットする。この場合、車両の減速挙動としてドライバには察知される。
【0052】
このようにステップS200で制駆動力補正量ΔDa,ΔDbを算出した後、ステップS210へ進む。ステップS210では、ステップS180で算出した制御反発力Fcに基づいて、アクセルペダル61に発生する操作反力の制御量、すなわちアクセルペダル反力制御指令値FAを算出する。
【0053】
図17に、制御反発力Fcとアクセルペダル反力制御指令値FAとの関係を示す。図17において、アクセルペダル反力制御を行わない場合の、通常のアクセルペダル反力を破線で示す。ここではアクセルペダル操作量SAが一定の場合のアクセルペダル反力を示している。図17に示すように、制御反発力Fcが大きくなるほど、通常値に対してアクセルペダル反力制御指令値FAが増加する。制御反発力Fcが所定値FcAを超えると、アクセルペダル反力制御指令値FAの増加率が大きくなる。このように、制駆動力の補正量が大きくなるほど、アクセルペダル61に発生する操作反力が大きくなる。
【0054】
つづくステップS220では、ステップS200で算出した駆動力補正量ΔDa、及び制動力補正量ΔDbをそれぞれ駆動力制御装置60、及び制動力制御装置70に出力する。駆動力制御装置60は、駆動力補正量ΔDaと要求駆動力Fdaとから目標駆動力を算出し、算出した目標駆動力を発生するようにエンジンコントローラ60cに指令を出力する。また、制動力制御装置70は、制動力補正量ΔDbと要求制動力Fdbとから目標制動力を算出し、目標制動力を発生するようにブレーキ液圧コントローラ70cに指令を出力する。
【0055】
ステップS230では、ステップS210で算出したアクセルペダル反力制御指令値FAをアクセルペダル反力発生装置80に出力する。アクセルペダル反力発生装置80は、コントローラ50から入力される指令値に応じてアクセルペダル反力を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
【0056】
つぎに、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の作用を、図面を用いて説明する。
図18(a)〜(c)に、システム作動制限を行わない場合の車間時間THW、自車両に発生する駆動力と制動力、およびアクセルペダル反力の時間変化を示す。なお、アクセルペダル61は一定の操作量SAで操作され、ドライバ要求駆動力Fdaは一定であるとする。図18(a)に示すように、時間taで自車両と先行車との車間時間THWがしきい値T2を下回ると、制御反発力Fcが算出される。なお、制御反発力Fcは自車両に作用する走行抵抗として算出されるので、図18(b)において制動力の領域に示している。ドライバ要求駆動力Fdaから制御反発力Fcを引いた値(Fda-Fc)が補正後の制駆動力として自車両に発生する。したがって、Fda>Fcの場合は、アクセルペダル61を踏み込んでいる場合に、運転者が思ったほどの駆動力が得られない状態となる。
【0057】
時間tbで車間時間THWがしきい値T1を下回ると、ブレーキアクチュエータがスタンバイ状態に設定される。これに応じて、ブレーキアクチュエータのモータ708がプリ回転される。さらに車間時間THWが減少し、時間tcで制御反発力Fcがドライバ要求駆動力Fdaを上回ると、制動力制御装置70による制動力制御が開始する。モータ708およびポンプ709が予め回転しているので、制動力制御の開始時に速やかにブレーキ液圧が上昇して制動力が作用する。
【0058】
アクセルペダル反力は、図18(c)に示すように、制御反発力Fcの増加、すなわち車間時間THWの減少に伴って増加する。なお、アクセルペダル操作量SAが一定であるので、通常のアクセルペダル反力は一定である。
【0059】
図19(a)〜(g)に、システム作動制限を行う場合の車間時間THW、自車両に発生する駆動力と制動力、カウンタC,作動制限状態、スタンバイ状態、ブレーキ作動状態およびポンプ作動状態の時間変化を示す。なお、アクセルペダル61は一定の操作量SAで操作され、ドライバ要求駆動力Fdaは一定であるとする。図19(a)に示すように、先行車に対する車間時間THWがしきい値T2を下回る状態が継続し、システムによる制駆動力制御が継続的に行われている。
【0060】
図19(a)に示すように時間tdで車間時間THWがしきい値T1を下回ると、ブレーキアクチュエータがスタンバイ状態に設定され(図19(e))、モータ708およびポンプ709がプリ回転を開始する(図19(g))。時間teで制御反発力Fcがしきい値Fc1以上となると、カウンタCがカウントアップされ始める(図19(c))。時間tfで制御反発力Fcがドライバ要求駆動力Fdaを上回ると、制動力制御装置70による制動力制御が開始される。このとき、図19(g)に示すようにブレーキアクチュエータのモータ708およびポンプ709が予め回転しているので、制動力制御開始とともに速やかにブレーキ液圧が上昇して制動力が作用する。
【0061】
時間tgで制御反発力Fcがドライバ要求駆動力Fdaを下回ると、制動力制御は終了するが、車間時間THWが時間thでしきい値T1を超えるまでスタンバイ状態が維持されてポンプ708が回転する。
【0062】
時間tiで車間時間THWがしきい値T1を下回ると、再びブレーキアクチュエータがスタンバイ状態に設定され、モータ708およびポンプ709がプリ回転する。その後、時間tjで制御反発力Fcがしきい値Fc1を超えると、カウンタCがカウントアップされる。時間tkでカウンタCがしきい値C1を超えると、システムの標準動作状態から作動制限状態に変化する(図19(d))。これにより、ブレーキアクチュエータのスタンバイ状態が強制的に解除され、時間tlで制動力制御が終了すると、モータ708およびポンプ709の回転も同時に終了する。
【0063】
時間tmで制御反発力Fcが再びしきい値Fc1を超えても、カウンタCがしきい値C1を上回り作動制限状態となっているので、モータ708およびポンプ709のプリ回転は禁止されている。したがって、時間tnで制御反発力Fcがドライバ要求駆動力Fdaを上回り、制動力制御が開始されると同時に、モータ708およびポンプ709が回転し始める。この場合、モータ708およびポンプ709を予め回転させておく場合に比べて、実際に制動力が作用し始めるタイミングが遅くなる。
【0064】
−第1の実施の形態の変形例−
ここでは、システムの作動制限を行う場合に、制動力制御装置70による制動力制御を禁止する。図20(a)〜(g)を用いて、どのよにシステム作動制限を行うかを説明する。
【0065】
図20(a)に示すように、先行車に対する車間時間THWがしきい値T2を下回る状態で、システムによる制駆動力制御が継続的に行われている。図20(c)に示すように、時間tkでカウンタCがしきい値C1を上回ると、システムの標準動作状態から作動制限状態に変化する(図20(d))。これに応じて、ブレーキアクチュエータのスタンバイ状態が強制的に解除されるとともに、制動力制御自体も禁止される。具体的には、システムの作動制限状態においてモータ708の回転を禁止し、制御反発力Fcがドライバ要求駆動力Fdaを上回る場合であっても、制動力を発生させない。これにより、システム作動制限状態に移行した時間tk以降は、図20(g)に示すように駆動力のみを用いて接触可能性の報知を行う。
【0066】
また、システム作動制限状態において、制動力制御に加えて駆動力制御を禁止すること、すなわちシステムの作動を禁止することも可能である。
【0067】
このように、以上説明した第1の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置1は、自車両前方の障害物状況および自車両の走行状態に基づいて、自車両と先行車との接触の可能性に関するリスクポテンシャル、すなわち自車両と先行車との車間時間THWを算出する。そして、算出した車間時間THWに基づいて、運転操作機器であるアクセルペダル61に発生する操作反力および自車両に発生する制駆動力の少なくともいずれかを制御する。これにより、自車両と先行車との接触の可能性を、運転者に与える減速感により報知することができる。さらに、コントローラ50はシステム(車両制御システム)の作動状態を選定する際の選定条件を満たすか否かを判定し、特定の選定条件が満たされたか否かに応じて、システムの作動状態を選定する。これにより、ある特定の条件においてシステムの作動状態が変化するので、運転者に刺激を与えて接触可能性の報知を効果的に行うことが可能となる。
(2)コントローラ50は、システムの作動状態を選定する際の選定条件として、運転者によるシステムの使用頻度を検出する。運転者が車両制御システムを頻繁に使用している場合、接触可能性の報知としての減速感を継続的に受けているため、減速感の変化を感知しづらくなっている。そこで、システムの作動状態を変化させることにより、運転者に刺激を与えて接触可能性の報知を効果的に行うことができる。
(3)コントローラ50は、特定の選定条件が満たされた場合に、システムのスタンバイ状態と作動制限状態とから、システムの作動状態を選定する。具体的には、システムの使用頻度が高い場合は作動制限状態を選定し、使用頻度が高くない場合はスタンバイ状態を選定する。これにより、使用頻度が高くない場合は、車間時間THWがしきい値T1を下回るとシステムがスタンバイ状態となるので制御開始時に速やかな接触可能性の報知を行うことができる。一方、使用頻度が高い場合は、システムを作動制限状態とする。例えば、スタンバイ状態の設定を禁止したり、システムの作動自体を禁止する。これにより、制御開始時に運転者に刺激を与え、接触可能性の報知を効果的に行うことが可能となる。
(4)コントローラ50は、先行車に対するリスクポテンシャルが所定値を超えると、すなわち車間時間THWが所定値T1を下回ると、スタンバイ状態に設定する。具体的には、制動力制御を開始する前にブレーキアクチュエータのモータ708およびポンプ709(増圧装置)を回転させておく。これにより、制動力制御が開始するときの応答性を高めることができる。
(5)コントローラ50は、システムが作動制限状態に設定されると、制動力制御の開始時に制動力の発生を遅延させる。これにより、制御開始時に運転者に刺激を与え、接触可能性の報知を効果的に行うことが可能となる。
(6)コントローラ50は、ブレーキアクチュエータのモータ708およびポンプ709(増圧装置)のプリ回転を禁止することにより、制動力開始時の制動力の発生を遅延させる。すなわち、制動力制御が開始してからモータ708およびポンプ709が回転し始めるため、実際に制動力が作用するタイミングがスタンバイ状態に設定していた場合に比べて遅くなる。制動力の効き始めるタイミングを遅らせることにより、運転者に適度の刺激を与え、接触可能性の報知を効果的に行うことができる。また、制動力が効き始めるタイミングを遅らせるだけで、実際の制動力の大きさは変化しないので、例えば制動力の大きさを変化させて運転者に刺激を与える場合のように制動力特性が変化して運転者に違和感を与えてしまうことを防止できる。さらに、制動力の大きさを変化させて運転者に刺激を与える場合に比べて、制動力制御の開始タイミングを遅らせることにより、より大きな刺激を運転者に与えることができる。
(7)また、システムの作動制限状態においてモータ708およびポンプ709のプリ回転を禁止するだけでなく、制動力の発生自体を禁止することも可能である。これにより、自車両が先行車に接近して接触可能性が高くなっていく状況において、通常であればシステムによって制動力が発生するところ、制動力が発生しなくなる。その結果、運転者に刺激を与え、効果的な接触可能性の報知を行うことができる。また、作動制限状態において制動力の発生を禁止した場合でも、図20(g)に示すように駆動力は制御されるので、運転者にある程度の減速感を与えることができる。
(8)さらに、システムの作動制限状態において、制動力の発生とともに、駆動力の発生も禁止することも可能である。また、アクセルペダル61の操作反力の発生を禁止することもできる。これにより、システムの使用頻度が高く減速感の変化を運転者が感知しづらくなっている状況で、運転者に刺激を与え、効果的な接触可能性の報知を行うことができる。
(9)コントローラ50は、特定の選定条件が満たされてシステムが作動制限状態に設定された場合、作動制限状態であることを運転者に報知する。具体的には、警報ランプ90を点灯する。これにより、システムが作動制限状態であり、制動力の発生タイミングが遅れることを運転者に報知することができる。
【0068】
《第2の実施の形態》
以下に、本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0069】
第2の実施の形態においては、システムにかかる負荷の状態に基づいてシステム作動制限を行うか否かを判定する。以下に、第2の実施の形態におけるシステム作動制限判断処理について、図21のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図9に示したフローチャートのステップS190で実行される。
【0070】
まず、ステップS1911で制動力制御装置70による制動力制御(ブレーキ自動制御)が行われているか否かを判定する。ステップS1911が肯定判定されるとステップS1912へ進み、カウンタCを加算する。一方、ステップS1911が否定判定されると、ステップS1913へ進んでカウンタCを減算する。なお、カウンタC≧0である。
【0071】
つづくステップS1914では、カウンタCが所定のしきい値C2以上であるか否かを判定する。C≧C2の場合は、ステップS1915へ進んでシステム作動制限を行う。例えば、ブレーキアクチュエータのスタンバイ状態を強制的に解除するとともに、警告ランプ90を点灯する。C<C2の場合は、ステップS1916へ進んでシステムの標準動作を行うようにする。
【0072】
このように、以上説明した第2の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。ブレーキ自動制御を継続的に行ってシステムに継続的に負荷がかかっているような状態で、システムの作動を制限する。システムに継続的に負荷がかかっている場合は、運転者がシステムに頼りすぎて減速度の変化を感知しづらくなっている場合であり、システムの作動を制限することにより、運転者に刺激を与えて接触可能性の報知を効果的に行うことが可能となる。
【0073】
《第3の実施の形態》
以下に、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0074】
第3の実施の形態においては、レーザレーダ10、車速センサ20および舵角センサ30等の異常が検出された場合にシステムの作動制限を行う。以下に、第3の実施の形態におけるシステム作動制限判断処理について、図22のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図9に示したフローチャートのステップS190で実行される。
【0075】
まず、ステップS1921で各センサの異常が検出されたか否かを判定する。ステップS1921が肯定判定されてセンサ異常が検出されるとステップS1922へ進み、システム作動制限を行う。例えば、ブレーキアクチュエータのスタンバイ状態を強制的に解除するとともに、警告ランプ90を点灯する。一方、ステップS1921が否定判定されてセンサが正常に作動している場合は、ステップS1923へ進んでシステムの標準動作を行うようにする。
【0076】
このように、以上説明した第3の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。センサの異常が検出された場合にシステムの作動を制限することにより、信頼性の高いシステムの作動を行うことができる。
【0077】
《第4の実施の形態》
以下に、本発明の第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0078】
第4の実施の形態においては、システムの作動制限を行う前に、システム作動制限を行うことを予告する。以下に、第4の実施の形態におけるシステム作動制限判断処理について、図23のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図9に示したフローチャートのステップS190で実行される。
【0079】
まず、ステップS1931で、制御反発力Fcが所定のしきい値Fc1以上か否かを判定する。ステップS1931が肯定判定されるとステップS1932へ進み、カウンタCを加算する。ステップS1933では、カウンタCが所定のしきい値C3以上か否かを判定する。ステップS1933が肯定判定されると、ステップS1934へ進み、システム作動制限を行うことを予告する。具体的には、警告ランプ90を点滅する。
【0080】
ステップS1935では、システム作動制限の予告を行ってからの経過時間を示す作動制限タイマTnを加算する。ステップS1936では、作動制限タイマTnが所定の予告時間Tn1以上であるか否かを判定する。ステップS1936が肯定判定されると、ステップS1937へ進み、システム作動制限を行う。具体的には、ブレーキアクチュエータをスタンバイ状態に設定するとともに、警告ランプ90を点灯する。
【0081】
一方、ステップS1931が否定判定されると、ステップS1938へ進んでカウンタCを減算する。ステップS1939では、作動制限タイマTnをリセットする。ステップS1940では、システムを標準動作状態とする。なお、ステップS1933が否定判定されてC<C3の場合はステップS1939へ進む。また、ステップS1936が否定判定されてTn<Tn1の場合はステップS1940へ進む。
【0082】
このように、以上説明した第4の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。システムが作動制限状態に設定される前に、作動制限状態が設定されることを運転者に予告するようにした。具体的には、警報ランプ90を点滅させる。これにより、近々システムの作動が制限されて制動力の発生タイミングが遅れることを運転者に報知することができる。また、作動制限状態が設定されると警報ランプ90を点灯状態に切り替えることにより、作動制限状態に移行したことを運転者に報知することができる。
【0083】
《第5の実施の形態》
以下に、本発明の第5の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第5の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0084】
第5の実施の形態においては、システム作動制限を行う場合に、制動力制御装置70に出力する制動力補正量ΔDbの出力タイミングを遅らせる。以下に、第5の実施の形態における制駆動力補正量出力処理について、図24のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図9に示したフローチャートのステップS220で実行される。ステップS220では駆動力補正量ΔDaと制動力補正量ΔDbの出力処理を行うが、図24には、説明を簡単にするため制動力補正量ΔDbの出力処理のみを示している。また、この処理はシステム作動制限状態において制動力を発生させ始めるときに行い、すでに制動力を発生させているときには行わない。
【0085】
まず、ステップS2201でシステムの作動制限状態であるか否かを判定する。ステップS2201が肯定判定され、システム作動制限状態である場合は、ステップS2202へ進む。ステップS2202では、出力タイミングを遅延させるための遅延タイマTdを加算する。遅延タイマTdは、システム作動制限状態において制動力補正量ΔDbが0から0を超える値に変化してからの経過時間を表す。ステップS2201が否定判定されると、ステップS2203へ進み、遅延タイマTdをリセットする。
【0086】
ステップS2204では、遅延タイマTdが所定のしきい値Td1以上であるか否かを判定する。Td<Td1の場合は、ステップS2205へ進み、制動力補正量ΔDb=0として制動力制御装置70に出力する。一方、Td≧Td1の場合は、ステップS2206へ進み、ステップS200で算出した制動力補正量ΔDbを制動力制御装置70へ出力する。
【0087】
このように、以上説明した第5の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。システム作動制限状態において制動力を発生させる場合は、所定の遅延時間Td1だけ遅れて制動指令が出力される。このように、制動力補正量ΔDbの出力タイミングを遅らせることによっても、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、システム作動制限状態において制動力制御の開始タイミングを遅らせて、運転者に刺激を与え接触可能性の報知を効果的に行うことができる。
【0088】
《第6の実施の形態》
以下に、本発明の第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0089】
第6の実施の形態においては、システム作動制限を行う場合に、制動力制御装置70によって制動力を発生させ始めるときの制動力の増加量を制限する。以下に、第6の実施の形態における制駆動力補正量出力処理について、図25のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図9に示したフローチャートのステップS220で実行される。ステップS220では駆動力補正量ΔDaと制動力補正量ΔDbの出力処理を行うが、図25には、説明を簡単にするため制動力補正量ΔDbの出力処理のみを示している。また、この処理はシステム作動制限状態において制動力を発生させ始めるときに行い、すでに制動力を発生させているときには行わない。
【0090】
まず、ステップS2211でシステムの作動制限状態であるか否かを判定する。ステップS2211が肯定判定され、システム作動制限状態である場合は、ステップS2212へ進む。ステップS2212では、制動力制御を開始する際の制動力補正量の増加量リミッタLを、所定の値Lsに設定する。一方、ステップS2211が否定判定されると、ステップS2213へ進み、制動力制御を開始する際の制動力補正量の増加量リミッタLを、Lsよりも大きい所定の値Lmに設定する。
【0091】
ステップS2214では、今回周期で算出された制動力補正量ΔDbから前回周期で設定された制動力補正量ΔDb_zを引いた値(ΔDb-ΔDb_z)が、ステップS2212またはS2213で設定した増加量リミッタL以上であるか否かを判定する。ΔDb-ΔDb_z≧Lの場合は、ステップS2215へ進み、制動力補正量ΔDbとして、前回値ΔDb_zに増加量リミッタLを加算した値(ΔDb_z+L)を制動力制御装置70に出力する。一方、ΔDb-ΔDb_z<Lの場合は、ステップS2216へ進み、今回周期で算出された制動力補正量ΔDbを制動力制御装置70へ出力する。
【0092】
このように、以上説明した第6の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果加えて以下のような作用効果を奏することができる。システム作動制限状態において制動力を発生させる場合、制動力補正量ΔDbの増加量が制限される。このように、制動力制御開始時の制動力の増加速度を遅らせることによっても、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、システム作動制限状態において制動力制御を開始するときに、制動力の増加速度を遅らせることにより、運転者に刺激を与え接触可能性の報知を効果的に行うことができる。
【0093】
《第7の実施の形態》
以下に、本発明の第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図26に、第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置2の構成を示す。図26において、図1に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0094】
図26に示すように、車両用運転操作補助装置2は、アクセルペダル61の操作反力を制御するアクセルペダル反力発生装置80を備えていない。コントローラ50Aは、自車両と先行車との接触の可能性が高い場合に自車両の制駆動力を制御する。また、コントローラ50Aはシステムの作動制御状態に応じて警告ランプ90の点灯状態を制御する。
【0095】
図27に、第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置2における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートを示す。図27において、ステップS310〜S400での処理は、図9に示したフローチャートのステップS110〜S200での処理と同様である。ステップS400で制駆動力補正量ΔDa,ΔDbを算出した後、アクセルペダル反力指令値を算出せずに、ステップS410で補正量ΔDa,ΔDbを駆動力制御装置60および制動力制御装置70にそれぞれ出力する。
【0096】
このように、自車両と先行車との接触可能性に応じた操作反力制御を行わない場合でも、システムの使用頻度等の特定の選定条件が満たされた場合にシステムの作動を制限することにより、上述した第1の実施の形態と同様に、運転者に刺激を与えて接触可能性の報知を効果的に行うことができる。
【0097】
上述した第1〜第6の実施の形態においては、システム作動制限状態において制動力制御を制限した。しかしこれには限定されず、制動力制御を制限する代わりに、アクセルペダル反力制御を制限、例えば禁止することも可能である。または、制動力制御の制限と、アクセルペダル反力の制限を同時に行うこともできる。
【0098】
上述した第1〜第6の実施の形態においては、自車両周囲のリスクポテンシャル(車間時間THW)に応じたアクセルペダル反力制御を行った。ただし、これには限定されず、アクセルペダル反力制御に加えてブレーキペダル71の反力制御を行うこともできる。
【0099】
上述した第1〜第7の実施の形態においては、自車両と先行車との車間時間THWを障害物との接触の可能性に関するリスクポテンシャルとして算出したが、これには限定されない。例えば、車間時間THWの代わりに自車両が障害物に接触するまでの時間を表す余裕時間TTCを用いることもできる。余裕時間TTCは、自車両と障害物との車間距離Dを相対速度で割ることにより算出できる。なお、余裕時間TTCを用いる場合も、車間時間THWを用いる場合と同様に制御反発力Fcを算出する。
【0100】
上述した第1〜第7の実施の形態においては、システムを作動制限状態に設定すると、警告ランプ90を点灯してこれを報知した。また、第4の実施の形態においては、システムを作動制限状態に設定する前に、警告ランプ90を点滅して予告した。しかし、これには限定されず、警告ブザー等を用いて報知または予告を行うことも可能である。あるいは、液晶モニタ等に作動制限状態であること、または作動制限状態になることを表示することもできる。
【0101】
以上説明した第1から第7の実施の形態においては、障害物検出手段としてレーダ装置10および障害物検知装置40を用い、走行状態検出手段として車速センサ20を用い、リスクポテンシャル算出手段、条件判定手段、および作動選定手段としてコントローラ50,50Aを用いた。また、車両制御手段、スタンバイ手段、および作動制限手段として、コントローラ50,50A,駆動力制御装置60,制動力制御装置70,およびアクセルペダル反力発生装置80を用い、報知手段および予告手段として表示装置90を用いた。なお、上述した第1から第7の実施の形態においては、レーザレーダをレーダ装置10として用いる例を説明したが、レーザレーダの代わりにミリ波レーダ等の別方式のレーダ装置を用いることももちろん可能である。また、報知手段または予告手段を音声の発生装置で構成することも可能である。また、駆動力制御装置60とアクセルペダル反力発生装置80を省略して、制動力制御のみを行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図2】レーダ装置の測距原理を説明する図。
【図3】レーダ装置による検出結果の一例を示す図。
【図4】駆動力制御装置を説明する図。
【図5】アクセルペダル操作量と要求駆動力との関係を示す図。
【図6】制動力制御装置を説明する図。
【図7】ブレーキペダル操作量と要求制動力との関係を示す図。
【図8】(a)(b)ブレーキアクチュエータの油圧回路を示す図。
【図9】第1の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図10】自車両の予測進路の算出方法を説明する図。
【図11】自車両の予測進路の算出方法を説明する図。
【図12】制動制御スタンバイ処理の処理手順を示すフローチャート。
【図13】(a)(b)制駆動力制御の概念を説明する図。
【図14】制御反発力算出処理の処理手順を示すフローチャート。
【図15】システム作動制限判断処理の処理手順を示すフローチャート。
【図16】制駆動力補正量算出処理の処理手順を示すフローチャート。
【図17】制御反発力とアクセルペダル反力指令値との関係を示す図。
【図18】(a)〜(c)システム作動制限を行わない場合の、車間時間、制駆動力、およびアクセルペダル反力の時間変化を示す図。
【図19】(a)〜(g)システム作動制限を行う場合の、車間時間、制駆動力、カウンタ、作動制限状態、スタンバイ状態、ブレーキ作動状態、およびポンプ作動状態の時間変化を示す図。
【図20】(a)〜(g)システム作動制限を行う場合の、車間時間、制駆動力、カウンタ、作動制限状態、スタンバイ状態、ブレーキ作動状態、および実際の制駆動力の時間変化を示す図。
【図21】システム作動制限判断処理の処理手順を示すフローチャート。
【図22】システム作動制限判断処理の処理手順を示すフローチャート。
【図23】システム作動制限判断処理の処理手順を示すフローチャート。
【図24】制駆動力補正量出力処理の処理手順を示すフローチャート。
【図25】制駆動力補正量出力処理の処理手順を示すフローチャート。
【図26】本発明の第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図27】第7の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0103】
10:レーダ装置
20:車速センサ
30:舵角センサ
40:障害物検知装置
50、50A:コントローラ
60:駆動力制御装置
61:アクセルペダル
70:制動力制御装置
71:ブレーキペダル
80:アクセルペダル反力発生装置
90:表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の障害物を検出する障害物検出手段と、
前記自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記障害物検出手段および前記走行状態検出手段による検出結果に基づいて、前記自車両と前記障害物との接触の可能性に関するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャル算出手段によって算出される前記リスクポテンシャルに基づいて、運転操作装置に発生する操作反力、および前記自車両に発生する制駆動力の少なくともいずれかを制御する車両制御手段と、
前記車両制御手段の作動状態を選定する際の選定条件を満たすか否かを判定する条件判定手段と、
前記選定条件が満たされたか否かに応じて、前記車両制御手段の前記作動状態を選定する作動選定手段とを備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記条件判定手段は、運転者による前記車両制御手段の制御の使用頻度に基づいて前記選定条件を満たすかを判定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記条件判定手段は、前記車両制御手段の負荷状態に基づいて前記選定条件を満たすかを判定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記条件判定手段は、前記障害物検出手段もしくは前記走行状態検出手段の異常の有無に基づいて、前記選定条件を満たすかを判定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車両制御手段の作動をスタンバイ状態とするスタンバイ手段と、
前記車両制御手段の作動を制限して作動制限状態とする作動制限手段とをさらに備え、
前記作動選定手段は、前記作動スタンバイ手段による前記スタンバイ状態と、前記作動制限手段による前記作動制限状態とから、前記車両制御手段の前記作動状態を選定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車両制御手段は、前記操作反力および前記制駆動力のうち、すくなくとも前記自車両に発生する制動力を制御し、
前記スタンバイ手段は、前記リスクポテンシャル算出手段によって算出される前記リスクポテンシャルが所定値を超えると、前記制動力を発生するアクチュエータの増圧装置の作動を開始することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項7】
請求項5に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車両制御手段は、前記操作反力および前記制駆動力のうち、すくなくとも前記自車両に発生する制動力を制御し、
前記作動制限手段は、前記車両制御手段による制動力制御の開始時に、前記制動力の発生を遅延させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記作動制限手段は、前記制動力を発生するアクチュエータの増圧装置の作動を禁止することにより、前記制動力の発生を遅延させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項9】
請求項5に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車両制御手段は、前記操作反力および前記制駆動力のうち、すくなくとも前記自車両に発生する制動力を制御し、
前記作動制限手段は、前記車両制御手段による前記制動力の発生を禁止することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項10】
請求項5に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記作動制限手段は、前記車両制御手段の作動を禁止することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項11】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記作動選定手段は、前記選定条件が満たされた場合に、前記車両制御手段の作動を制限する作動制限状態を選定し、
前記作動選定手段によって前記作動制限状態が選定された場合に、前記作動制限状態であることを運転者に報知する報知手段をさらに備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項12】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記作動選定手段は、前記選定条件が満たされた場合に、前記車両制御手段の作動を制限する作動制限状態を選定し、
前記作動選定手段によって前記作動制限状態が選定される前に、前記作動制限状態となることを運転者に予告する予告手段をさらに備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置を備えることを特徴とする車両。
【請求項1】
自車両前方の障害物を検出する障害物検出手段と、
前記自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記障害物検出手段および前記走行状態検出手段による検出結果に基づいて、前記自車両と前記障害物との接触の可能性に関するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャル算出手段によって算出される前記リスクポテンシャルに基づいて、運転操作装置に発生する操作反力、および前記自車両に発生する制駆動力の少なくともいずれかを制御する車両制御手段と、
前記車両制御手段の作動状態を選定する際の選定条件を満たすか否かを判定する条件判定手段と、
前記選定条件が満たされたか否かに応じて、前記車両制御手段の前記作動状態を選定する作動選定手段とを備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記条件判定手段は、運転者による前記車両制御手段の制御の使用頻度に基づいて前記選定条件を満たすかを判定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記条件判定手段は、前記車両制御手段の負荷状態に基づいて前記選定条件を満たすかを判定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記条件判定手段は、前記障害物検出手段もしくは前記走行状態検出手段の異常の有無に基づいて、前記選定条件を満たすかを判定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車両制御手段の作動をスタンバイ状態とするスタンバイ手段と、
前記車両制御手段の作動を制限して作動制限状態とする作動制限手段とをさらに備え、
前記作動選定手段は、前記作動スタンバイ手段による前記スタンバイ状態と、前記作動制限手段による前記作動制限状態とから、前記車両制御手段の前記作動状態を選定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車両制御手段は、前記操作反力および前記制駆動力のうち、すくなくとも前記自車両に発生する制動力を制御し、
前記スタンバイ手段は、前記リスクポテンシャル算出手段によって算出される前記リスクポテンシャルが所定値を超えると、前記制動力を発生するアクチュエータの増圧装置の作動を開始することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項7】
請求項5に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車両制御手段は、前記操作反力および前記制駆動力のうち、すくなくとも前記自車両に発生する制動力を制御し、
前記作動制限手段は、前記車両制御手段による制動力制御の開始時に、前記制動力の発生を遅延させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記作動制限手段は、前記制動力を発生するアクチュエータの増圧装置の作動を禁止することにより、前記制動力の発生を遅延させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項9】
請求項5に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車両制御手段は、前記操作反力および前記制駆動力のうち、すくなくとも前記自車両に発生する制動力を制御し、
前記作動制限手段は、前記車両制御手段による前記制動力の発生を禁止することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項10】
請求項5に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記作動制限手段は、前記車両制御手段の作動を禁止することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項11】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記作動選定手段は、前記選定条件が満たされた場合に、前記車両制御手段の作動を制限する作動制限状態を選定し、
前記作動選定手段によって前記作動制限状態が選定された場合に、前記作動制限状態であることを運転者に報知する報知手段をさらに備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項12】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記作動選定手段は、前記選定条件が満たされた場合に、前記車両制御手段の作動を制限する作動制限状態を選定し、
前記作動選定手段によって前記作動制限状態が選定される前に、前記作動制限状態となることを運転者に予告する予告手段をさらに備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置を備えることを特徴とする車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2006−7850(P2006−7850A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184700(P2004−184700)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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