車両用運転支援装置
【課題】車車間通信等の通信を利用して、交差点における車両どうしの衝突を回避する際に、燃料消費量の増加を抑制するようにした車両用運転支援装置の提供。
【解決手段】自車両が接近している信号機のない交差点を検出する交差点検出手段1と、自車両と他車両との間で燃費等のデータを交換する通信手段2と、他車両のうち交差点において自車両との衝突が予測される交差車両を抽出する交差車両抽出手段3と、自車両及び当該自車両に後続する一連の車両を自車両群として設定し、かつ、交差車両及び当該交差車両に後続する一連の車両を交差車両群として設定する車両群設定手段4と、自車両群及び交差車両群それぞれの燃料消費効率を求めてそれらどうし比較する燃費比較手段5と、自車両群及び交差車両群が互いに衝突することなく交差点を通過できるように、低燃費車両群の各車両に対して車速の変更を指示する走行制御指示手段6とを備える。
【解決手段】自車両が接近している信号機のない交差点を検出する交差点検出手段1と、自車両と他車両との間で燃費等のデータを交換する通信手段2と、他車両のうち交差点において自車両との衝突が予測される交差車両を抽出する交差車両抽出手段3と、自車両及び当該自車両に後続する一連の車両を自車両群として設定し、かつ、交差車両及び当該交差車両に後続する一連の車両を交差車両群として設定する車両群設定手段4と、自車両群及び交差車両群それぞれの燃料消費効率を求めてそれらどうし比較する燃費比較手段5と、自車両群及び交差車両群が互いに衝突することなく交差点を通過できるように、低燃費車両群の各車両に対して車速の変更を指示する走行制御指示手段6とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用運転支援装置に係り、より詳細には、交差点における車両どうしの衝突を回避する際に、燃料消費量の増加を抑制するようにした車両用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転を支援する技術として、車車間通信を利用して、自車両の周囲の他車両の位置、速度及び進行方向情報を取得し、周囲の他車両を注目リストに登録し、衝突の可能性のある他車両に対して注意情報を送信する技術が下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−90663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の運転支援技術においては、無線により車両間でデータを送受信する車車間通信は、車両どうしの衝突の危険性を回避するといった安全性の向上のために利用されている。一方、近年、ガソリン等の車両用燃料の価格が上昇する傾向にあり、車両の燃料消費量をより少なくすることが望まれている。しかし、従来の運転支援技術においては、交差点における車両どうしの衝突を回避を図る際に、燃料消費量の増加を抑制することは考慮されていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、車車間通信等の通信を利用して、交差点における車両どうしの衝突を回避する際に、燃料消費量の増加を抑制するようにした車両用運転支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の車両用運転支援装置は、車両に搭載された車両用運転支援装置であって、自車両が接近している信号機のない交差点を検出する交差点検出手段と、上記自車両と他車両との間で、車両位置、車速、進行方向及び燃料消費効率を含むデータを交換する通信手段と、上記自車両及び上記他車両の車両位置、車速及び進行方向のデータを使用して、上記他車両のうち上記交差点において上記自車両との衝突が予測される交差車両を抽出する交差車両抽出手段と、上記自車両及び当該自車両に後続する一連の車両を自車両群として設定し、かつ、上記交差車両及び当該交差車両に後続する一連の車両を交差車両群として設定する車両群設定手段と、上記自車両の燃料消費効率、及び上記通信手段によって交換された上記他車両の燃料消費効率のデータを使用して、上記自車両群及び交差車両群それぞれの燃料消費効率を求め、かつ、それらの燃料消費効率どうしを比較する燃費比較手段と、上記自車両群及び上記交差車両群が、互いに衝突することなく上記交差点を通過することができるように、上記自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率が良い方の車両群の各車両に対して、車速の変更を指示する走行制御指示手段と、を備えることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明の車両用運転支援装置によれば、自車両群及び交差車両群のうち、燃料消費効率が良い方の車両群(以下、低燃費車両群とも称する。)の各車両に対して、車速の変更が指示される。これにより、自車両群及び交差車両群のうち、燃料消費効率が悪い方の車両群(以下、高燃費車両群とも称する。)の各車両の車速の変更の必要性が低減される。その結果、車車間通信等の通信を利用して交差点における車両どうしの衝突を回避する際に、両車両群全体としての燃料消費量の増加が抑制され、また、二酸化炭素の排出量の増加も抑制される。
なお、自車両又は交差車両に後続車両がない場合には、自車両又は交差車両単独で、車両群が構成されるものとする。
【0008】
また、本発明において好ましくは、上記燃費比較手段は、上記自車両群の燃料消費効率及び交差車両群の燃料消費効率を、それぞれの車両群に含まれる各車両の燃料消費効率の合計としてそれぞれ求める。
これにより、自車両群の燃料消費効率及び交差車両群の燃料消費効率が容易に求められる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、上記走行制御指示手段は、上記自車両群及び交差車両群のいずれにも先行車両がない場合に、燃料消費効率が良い方の車両群の各車両に対して、加速を指示するとともに、上記各車両の前後の車両間隔を短くすることを指示する。
【0010】
このように、燃料消費効率が良い方の車両群(低燃費車両群)の各車両が加速することにより、燃料消費効率が悪い方の車両群(高燃費車両群)が交差点を通過する前に、低燃費車両群が交差点を通過する。これにより、理想的には、高燃費車両群が車速を変更することなく交差点を通過することが可能となる。その結果、車車間通信等の通信を利用して交差点における車両どうしの衝突を回避する際に、両車両群全体としての燃料消費量の増加が抑制される。
【0011】
また、本発明において好ましくは、上記走行制御指示手段は、上記自車両群及び交差車両群のうちの一方の車両群にのみ先行車両がある場合に、上記自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率の良い方の車両群に減速を指示する。
【0012】
このように、燃料消費効率が良い方の車両群(低燃費車両群)の各車両が減速することにより、燃料消費効率が悪い方の車両群(高燃費車両群)が交差点を通過した後に、低燃費車両群が交差点を通過する。これにより、理想的には、高燃費車両群が車速を変更することなく交差点を通過することが可能となる。その結果、車車間通信等の通信を利用して交差点における車両どうしの衝突を回避する際に、両車両群全体としての燃料消費量の増加が抑制される。
【0013】
また、本発明において好ましくは、上記走行制御指示手段は、上記自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率の良い方の車両群にのみ先行車両がある場合に、上記先行車両に対して加速を指示する。
【0014】
これにより、先行車両が交差点を通過してから、燃料消費効率が悪い方の車両群(高燃費車両群)が交差点を通過するまでの時間が長くなる。その結果、先行車両と高燃費車両群の先頭車両との衝突の可能性が低減され、交通の安全の向上が図られる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、上記自車両群の燃料消費効率と交差車両群の燃料消費効率との差が所定値以下である場合に、上記走行制御指示手段は、上記交差点を上記自車両群及び交差車両群の車両が交互に通過できるように、上記自車両群及び交差車両群の各車両に対して車間距離を空けるように指示する。
【0016】
このように、自車両群及び交差車両群それぞれの燃料消費効率が同等である場合に、自車両群及び交差車両群の車両が交互に通過するようにすれば、いずれの車両群も車速を大きく変更する必要性が低減される。その結果、両方の車両群全体としての燃料消費量の増加が抑制されつつ、交差点における車両どうしの衝突が回避される。
【0017】
また、本発明において好ましくは、上記通信手段によって交換されるデータには、自車両及び他車両の車長が含まれ、上記走行制御指示手段は、一方の車両群の車両の車長が長いほど、当該車両が上記交差点を通過する直前及び直後に当該交差点を通過する他方の車両群の車両どうしの車間距離を長くするように指示する。
これにより、交差点を交互に通過するのに過不足のない適切な車間距離が指示される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用運転支援装置によれば、車車間通信等の通信を利用して、交差点における車両どうしの衝突を回避する際に、燃料消費量の増加が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の車両用運転支援装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】交差点付近の車両どうしの車車間通信の模式図である。
【図3】本発明の実施形態の車両用運転支援装置の動作例を説明するフローチャートである。
【図4】燃費比較の処理を説明するフローチャートである。
【図5】走行制御指示の処理を説明するフローチャートである。
【図6】(A)及び(B)は、自車両群及び交差車両群のいずれにも先行車両がない場合の車両の走行制御を説明する模式図である。
【図7】(A)及び(B)は、交差車両群にのみ先行車両があり、かつ、交差車両群が低燃費車両群である場合の走行制御を説明する模式図である。
【図8】(A)及び(B)は、自車両群にのみ先行車両があり、かつ、自車両群が低燃費車両群である場合の走行制御を説明する模式図である。
【図9】(A)及び(B)は、交差車両群にのみ先行車両があり、かつ、交差車両群が高燃費車両群である場合の走行制御を説明する模式図である。
【図10】(A)及び(B)は、自車両群にのみ先行車両があり、かつ、自車両群が高燃費車両群である場合の走行制御を説明する模式図である。
【図11】(A)及び(B)は、自車両群及び交差車両群のいずれにも先行車両がある場合の車両の走行制御を説明する模式図である。
【図12】自車両群の燃料消費効率と交差車両群の燃料消費効率とが同等である場合の走行制御指示の処理を説明するフローチャートである。
【図13】(A)及び(B)は、自車両群及び交差車両群それぞれの燃料消費効率が同等である場合の車両の走行制御を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明の車両用運転支援装置の実施形態を説明する。
まず、図1のブロック図を参照して、本実施形態の車両用運転支援装置の構成を説明する。図1に示すように、本実施形態の車両用運転支援装置は、車両に搭載された車両用運転支援装置であって、交差点検出手段1と、通信手段2と、交差車両抽出手段3と、車両群設定手段4と、燃費比較手段5と、走行制御指示手段6とを備えている。さらに、本実施形態の車両用運転支援装置は、エンジン制御部7及び情報提示部8を備えている。
【0021】
交差点検出手段1、交差車両抽出手段3、車両群設定手段4と、燃費比較手段5と、走行制御指示手段6の各ブロックは、それぞれ、車載ECU(electric control unit:電子制御装置)100における処理機能に相当する。これらの処理機能は、例えば、コンピュータにおいて所定のプログラムを実行することにより、或いはマイクロチップにより実現される。
【0022】
交差点検出手段1は、自車両の接近している信号機のない交差点を検出する。交差点は、地図データ及び自車両の位置によって検出される。自車両の現在位置は、GPS(global positioning system:全地球測位システム)9によって検出される。また、自車両の車速は、不図示の速度センサによって検知される。また、自車両の進行方向は、GPS及び不図示のジャイロによって検出される。また、交差点の位置、及び信号機の有無は、ナビゲーションシステム10の地図データとによって特定される。
【0023】
通信手段2は、自車両と他車両との間で、車車間通信により、車両位置、車速、進行方向及び燃料消費効率を含むデータを交換する。自車両の車速は、車速センサによって検出される。また、自車両の燃料消費効率は、不図示のメモリに格納されている。
【0024】
なお、図2に模式的に示すように、自車両c1と車車間通信を行う他車両c2及びc3は、交差点C付近の車両、例えば、交差点Cから所定距離以内(例えば、数百メートル以内)を走行している車両であるのがよい。所定距離は、経験的に任意好適な値を設定することができる。また、データの交換は、車車間通信によって自車両と他車両との間で直接行ってもよいし、路車間通信を介して間接的に行ってもよい。
また、燃料消費効率(燃費)は、単位燃料当たりの走行可能距離をいい、例えば、ガソリン等の燃料1リットル当たりの走行キロメートル数で表される。
【0025】
交差車両抽出手段3は、自車両及び他車両の車両位置、車速及び進行方向のデータを使用して、他車両のうち交差点において自車両との衝突が予測される交差車両を抽出する。例えば、自車両が現車速を維持した場合に交差点に到達する時刻T1と、他車両が現車速を維持した場合にその交差点に到達する時刻T2との時間差が所定値以内である場合に、その他車両を交差車両として抽出するとよい。
なお、自車両と他車両との衝突の予測にあたっては、従来公知の任意好適な技術を利用することができる。
【0026】
車両群設定手段4は、自車両及び当該自車両に後続する一連の車両を自車両群として設定し、かつ、交差車両及び当該交差車両に後続する一連の車両を交差車両群として設定する。車両群の設定にあたっては、前後に隣接する車両どうしの車間距離が所定距離以下である一連の車両を車両群として設定する。車間距離は、各車両の位置データから算出してもよいし、車両に装備されたレーダーで直接測定してもよい。
【0027】
燃費比較手段5は、自車両の燃料消費効率、及び通信手段によって交換された他車両の燃料消費効率のデータを使用して、自車両群及び交差車両群それぞれの燃料消費効率を求め、かつ、それらの燃料消費効率どうしを比較する。自車両群の燃料消費効率及び交差車両群の燃料消費効率は、それぞれの車両群に含まれる各車両の燃料消費効率の合計としてそれぞれ求められる。なお、自車両の燃料消費効率は、自車両のメモリ(図示せず)から読み出される。
【0028】
走行制御指示手段6は、自車両群及び交差車両群が、互いに衝突することなく交差点を通過することができるように、自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率の良い方の車両群(低燃費車両群)の各車両に対して、車速の変更を指示する。自車両に対する指示は、例えば、エンジン制御部7に伝えられて、スロットルの開度や燃料噴射量の調節によりエンジンが制御されることによって、車速が変更される。
【0029】
自車両に対する走行制御指示は、例えば、運転席のフロントパネルやダッシュボード上に配置された情報提示部8に伝えられる。情報提示部8は、運転者に対して表示及び音声の一方又は双方により車速の変更を指示する。また、自車両の後続車両及び他車両群の車両等の他車両に対する走行制御指示は、通信手段2を介してそれらの他車両に伝えられる。
【0030】
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施形態の車両用運転支援装置の動作例を説明する。
まず、通信手段2を介して、車車間通信により、自車両と他車両との間で、車両位置、車速、進行方向及び燃料消費効率を含むデータを交換する(S1)。
【0031】
次いで、交差点検出手段1によって、自車両が接近している信号機のない交差点を検出する(S2)。
【0032】
かかる交差点が検出された場合(S3において「Yes」の場合)、交差車両抽出手段3によって、自車両及び他車両の車両位置、車速及び進行方向のデータを使用して、他車両のうち交差点において自車両との衝突が予測される交差車両を抽出する(S4)。
【0033】
かかる交差車両が抽出された場合(S5におい「Yes」の場合)、車両群設定手段4により、自車両及び当該自車両に後続する一連の車両を自車両群として設定し、かつ、上記交差車両及び当該交差車両に後続する一連の車両を交差車両群として設定する(S6)。
【0034】
ここで、図6(A)を参照して、車両群の設定例を説明する。図6(A)では、図面下から上に向かって、自車両aが走行している。一方、自車両の接近している交差点Cに向かって、図面左から右に向かって、交差車両gが走行している。自車両aと交差車両gとが現車速を維持して交差点に進入した場合、互いに衝突することが予測されている。
【0035】
図6(A)に示す例では、自車両aに、車両b、c及びdが後続している。このため、自車両a及び自車両aに後続する一連の車両b、c及びdが、自車両群Sとして設定される。また、交差車両gには、車両h、i及びjが後続している。このため、交差車両g及び交差車両gに後続する一連の車両h、i及びjが、交差車両群Tとして設定される。
【0036】
次いで、燃費比較手段5により、自車両群S及び交差車両群Tそれぞれの燃料消費効率を求め、かつ、それらの燃料消費効率どうしを比較する(S7)。
ここで、図4のフローチャートを参照して、燃料比較手段5による燃費比較処理について説明する。
【0037】
まず、自車両群の燃料消費効率を算出する(S71)。図6(A)に示す例では、自車両群Sの燃料消費効率は、自車両群Sを構成する各車両a、b、c及びdの燃料消費効率の合計として求められる。例えば、自車両a、後続車両b、c及びdの燃料消費効率が、それぞれ10km/L、14km/L、11km/L、及び15km/Lである場合、自車両群Sの燃料消費効率は、これらの合計値として、50km/Lと算出される。
【0038】
次いで、交差車両群の燃料消費効率を算出する(S72)。図6(A)に示す例では、交差車両群Tの燃料消費効率は、交差車両群Tを構成する各車両g、h、i及びjの燃料消費効率の合計として求められる。例えば、交差車両g、後続車両h、i及びjの燃料消費効率が、それぞれ14km/L、21km/L、11km/L、及び15km/Lである場合、交差車両群Tの燃料消費効率は、これらの合計値として、61km/Lと算出される。
【0039】
次いで、自車両群の燃料消費効率と、交差車両群の燃料消費効率とを比較する(S73)。例えば、上記の自車両群Sの燃料消費効率50km/Lと、交差車両群Tの燃料消費効率61km/Lとを比較すると、自車両群Sの燃料消費効率の方が悪く(低く)、交差車両群Tの燃料消費効率の方が良い(高い)ことが分かる。すなわち、自車両群Sが、燃料消費効率の悪い高燃費車両群と判定され、かつ、交差車両群Tが、燃料消費効率の良い低燃費車両群と判定される。
【0040】
次いで、走行制御指示手段6により、自車両群及び上記交差車両群が、互いに衝突することなく交差点を通過することができるように、自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率の良い方の車両群の各車両に対して、車速の変更を指示する(図3のS8)。
【0041】
ここで、図5のフローチャートを参照して、走行制御指示の処理について説明する。ここでは、走行制御指示の処理を、第1〜第5の場合に分けて説明する。
まず、第1の場合の走行制御指示の処理について説明する。第1の場合、自車両群及び交差車両群の燃料消費効率が同等でなく(図5のS81で「No」の場合)、かつ、自車両群及び交差車両群のいずれにも先行車両がない場合(S82及びS83で「No」の場合)、燃料消費効率が良い方の車両群(低燃費車両群)の各車両に対して、加速を指示するとともに、各車両の前後の車両間隔を短くすることを指示する(S84)。
【0042】
例えば、図6(A)に示すように、交差車両群Tが低燃費車両群であって、自車両a及び交差車両gがいずれも先頭車両である場合、交差車両群Tの各車両g、h、i及びjに対して加速が指示され、かつ、各車両g、h、i及びjの前後の車間距離を短くすることが指示される。その結果、図6(B)に示すように、交差車両群Tが、交差点Cを先に通過した後に、自車両群Sが交差点Cを通過する。これにより、両方の車両群全体での燃料消費量の増加を抑制しつつ、衝突が回避される。
【0043】
なお、交差車両群Tの加速の程度は、自車両群Sが交差点に進入する前に、交差車両群Tが交差点を通過できる程度であることが望ましい。また、高燃費車両群である自車両群Sは、現車速を維持したままで交差点を通過することが望ましいが、自車両群Sに対して、減速を指示してもよい。
【0044】
また、図6(A)示した例では、自車両群が高燃費車両群であり、かつ、交差車両群が低燃費車両群である例を説明したが、自車両群が低燃費車両群であり、かつ、交差車両群が高燃費車両群である場合には、自車両群に対して加速が指示される。
【0045】
次に、第2の場合の走行制御指示の処理について説明する。第2の場合、自車両群及び交差車両群の燃料消費効率が同等でなく(図5のS81で「No」の場合)、高燃費車両群に先行車両がなく(S82で「Yes」の場合)、かつ、低燃費群にのみ先行車両がある場合(S83で「No」の場合)、低燃費車両群に減速を指示し、かつ、先行車両に加速を指示する(S85)。
【0046】
図7(A)に示す例では、自車両aと交差車両gとの衝突が予想されている。そして、自車両a及びその後続車両b、c及びdからなる自車両群Sが、高燃費車両群であり、一方、交差車両g及びその後続車両h及びiからなる交差車両群Tが、低燃費車両群である。そして、高燃費車両群である自車両群Sには、先行車両がなく、一方、低燃費車両群である交差車両群Tには、2台の先行車両p1及びp2がある。すなわち、自車両aは、車群の先頭に位置しているが、交差車両gは、先行車両を含めた車群の中間に位置している。
【0047】
かかる場合、低燃費車両群である交差車両群Tの各車両g、h及びiに対して、減速が指示され、かつ、交差車両群Tの先行車両p1及びp2に対して、加速が指示される。その結果、図7(B)に示すように、先行車両p1及びp2が交差点Cを先に通過した後に、自車両群Sが交差点を通過し、更にその後、交差車両群Tが交差点Cを通過する。これにより、両方の車両群全体での燃料消費量の増加を抑制しつつ、衝突が回避される。
【0048】
なお、先行車両p1及びp2は、加速しなくてもよい。また、交差車両群Tの減速の程度は、自車両群Sが交差点Cを通過した後に、交差車両群Tが交差点に進入する程度であることが望ましい。また、高燃費車両群である自車両群Sは、現車速を維持したままで交差点を通過することが望ましいが、自車両群Sに対しても加速又は減速といった車速の変更を指示してもよい。
【0049】
また、図8(A)に示す例では、自車両aと交差車両gとの衝突が予想されている。そして、自車両a及びその後続車両bからなる自車両群Sが、低燃費車両群であり、一方、交差車両g及びその後続車両h、i及びjからなる交差車両群Tが、高燃費車両群である。そして、低燃費車両群である自車両群Sには、1台の先行車両pがあり、一方、高燃費車両群である交差車両群Tには、先行車両がない。すなわち、自車両aは、先行車両pを含めた車群の中間に位置し、一方、交差車両gは、車群の先頭に位置している。
【0050】
かかる場合、低燃費車両群である自車両群Sの各車両a及びbに対して、減速が指示され、かつ、自車両群Sの先行車両pに対して、加速が指示される。その結果、図8(B)に示すように、先行車両pが交差点Cを先に通過した後に、交差車両群Tが交差点を通過し、更にその後、自車両群Sが交差点Cを通過する。これにより、両方の車両群全体での燃料消費量の増加を抑制しつつ、衝突が回避される。
【0051】
なお、先行車両pは、加速しなくてもよい。また、自車両群Sの減速の程度は、交差車両群Tが交差点Cを通過した後に、自車両群Sが交差点Cに進入する程度であることが望ましい。また、高燃費車両群である交差車両群Tは、現車速を維持したままで交差点を通過することが望ましいが、交差車両群Tに対しても加速又は減速といった車速の変更を指示してもよい。
【0052】
次に、第3の場合の走行制御指示の処理について説明する。第3の場合、自車両群及び交差車両群の燃料消費効率が同等でなく(図5のS81で「No」の場合)、高燃費車両群に先行車両があり(S82で「Yes」の場合)、かつ、低燃費群には先行車両がない場合(S86で「No」の場合)は、低燃費車両群に減速を指示する(S87)。
【0053】
図9(A)に示す例では、自車両aと交差車両gとの衝突が予想されている。そして、自車両a及びその後続車両bからなる自車両群Sが、低燃費車両群であり、一方、交差車両g及びその後続車両h及びiからなる交差車両群Tが、高燃費車両群である。そして、低燃費車両群である自車両群Sには、先行車両がなく、一方、高燃費車両群である交差車両群Tには、2台の先行車両p1及びp2がある。すなわち、自車両aは、車群の先頭に位置しているが、交差車両gは、先行車両を含めた車群の中間に位置している。
【0054】
かかる場合、低燃費車両群である自車両群Sの各車両a及びbに対して、減速が指示される。その結果、図9(B)に示すように、先行車両p1及びp2及び交差車両群Tが交差点Cを先に通過した後に、自車両群Sが交差点を通過する。これにより、両方の車両群全体での燃料消費量の増加を抑制しつつ、衝突が回避される。
【0055】
なお、自車両群Sの減速の程度は、交差車両群Tが交差点Cを通過した後に、自車両群Sが交差点に進入する程度であることが望ましい。また、高燃費車両群である交差車両群Tは、現車速を維持したままで交差点Cを通過することが望ましいが、交差車両群T及びその先行車両p1及びp2に対して加速又は減速といった車速の変更を指示してもよい。
【0056】
また、図10(A)に示す例では、自車両aと交差車両gとの衝突が予想されている。そして、自車両a及びその後続車両bからなる自車両群Sが、高燃費車両群であり、一方、交差車両g及びその後続車両h、i及びjからなる交差車両群Tが、低燃費車両群である。そして、高燃費車両群である自車両群Sには、2台の先行車両p1及びp2があり、一方、低燃費車両群である交差車両群Tには、先行車両がない。すなわち、自車両aは、先行車両p1及びp2を含めた車群の中間に位置し、一方、交差車両gは、車群の先頭に位置している。
【0057】
かかる場合、低燃費車両群である交差車両群Tの各車両g、h、i及びjに対して、減速が指示される。その結果、図10(B)に示すように、先行車両p1及びp2及び自車両群Sが交差点Cを先に通過した後に、交差車両群Tが交差点Cを通過する。これにより、両方の車両群全体での燃料消費量の増加を抑制しつつ、衝突が回避される。
【0058】
なお、交差車両群Tの減速の程度は、自車両群Sが交差点Cを通過した後に、交差車両群Tが交差点Cに進入する程度であることが望ましい。また、高燃費車両群である自車両群Sは、現車速を維持したままで交差点を通過することが望ましいが、自車両群Sに対しても加速又は減速といった車速の変更を指示してもよい。
【0059】
次に、第4の場合の走行制御指示の処理について説明する。第4の場合、自車両群及び交差車両群の燃料消費効率が同等でなく(図5のS81で「No」の場合)、高燃費車両群及び低燃費車両群に先行車両がある場合(S82及びS86で「Yes」の場合)は、何れかの先行車両の走行制御指示に従う(S88)。すなわち、かかる場合には、先行車両どうしの衝突が予想され、その結果、先行車両を含めた車両群が設定されている。このため、それらの車両群における燃料消費効率比較の結果に基づいて、走行制御が指示される。
【0060】
図11(A)に示す例では、自車両aと交差車両gとの衝突が予想されるともに、自車両aの前方に位置する先行車両p1と、交差車両gの前方に位置する先行車両p3との衝突も予想されている。かかる場合、例えば、先行車両p1を自車両とし、先行車両p3を交差車両として、走行制御が指示される。そして、先行車両p3を先頭とする車両群(車両p3,p4,g及びh)が高燃費車両群であり、かつ、先行車両p1を先頭とする車両群(車両p1,p2,a及びb)が低燃費車両群である場合には、先行車両p1を先頭とする車両群に減速が指示される。その結果、図11(B)に示すように、先行車両p3を先頭とする車両群が交差点を先に通過した後に、先行車両p1を先頭とする車両群が交差点に進入する。これにより、両方の車両群全体での燃料消費量の増加を抑制しつつ、衝突が回避される。
【0061】
次に、第5の場合の走行制御指示の処理について説明する。第5の場合、自車両群及び交差車両群の燃料消費効率が同等である場合(図5のS81で「Yes」の場合)、自車両群及び交差車両群の各車両に対して、交差点を自車両群及び交差車両群の車両が交互に通過できるように、自車両群及び交差車両群の各車両に対して車間距離を空けるように指示する(S89)。
なお、自車両群の燃料消費効率と交差車両群の燃料消費効率との差が所定値以下である場合に、燃料消費効率が同等であるとするとよい。所定値は、経験的に任意好適な値を設定することができる。
【0062】
また、車間距離は、一方の車両群の車両の車長が長いほど、当該車両が交差点を通過する直前及び直後に当該交差点を通過する他方の車両群の車両どうしの車間距離を長くすることが望ましい。その場合、通信手段2によって交換されるデータには、自車両及び他車両の車長が含まれ、そのデータに基づいて車間距離が指示される。
【0063】
ここで、図12のフローチャートを参照して、交互通過指示の処理について説明する。
図13(A)に示す例では、自車両イ及びその後続車両ロ、ハ及びニからなる自車両群Sと、交差車両A及びその後続車両B、C及びDからなる交差車両群Tとは、燃料消費効率が互いに同等である。
【0064】
まず、交差車両Aが自車両イよりも先に交差点Cに進入して衝突することが予想される場合(S891で「Yes」の場合)、図13(B)に示すように、自車両イに対して、交差車両Aが交差点Cに到達するタイミングで、自車両イの位置が、交差点Cから交差車両Aの全長分の間隔をあけるように減速を指示する(S892)。
【0065】
なお、図13(B)では、自車両イの前に、交差車両Aの車長分を空けた例を示しているが、車間距離は、対応する車両の車長に安全マージンを加えた距離であることが望ましい。安全マージンは、運転者の特性、運転経験、交差点の交差角度、車両の重量、車両の加減速性能といった種々の要素に基づいて設定することができる。
【0066】
次いで、自車両イに対して、所定の車間距離をあけた後は、一定の車速で走行するように指示する(S893)。
なお、車両間隔は、交差する相手車両が交差点に到達するまでに、所定距離だけ空けるようにすれば良く、相手車両の交差点到達前に、予め、車間距離を所定距離だけあけておく必要はない。
【0067】
また、交差車両Aが自車両イよりも後に交差点Cに進入して衝突することが予測される場合(S891で「No」の場合)、自車両イに対して、現車速を維持することが指示される(S895)。この場合、交差車両Aが、自車両イの車長分の空間を空けるように減速する。
【0068】
次いで、図13(B)に示すように、自車両イ及び交差車両Aそれぞれの後続車両に対しても、順次にお互いに相手車両の全長に応じた車両間隔をあけるように指示する。このようにして、両方の車両群全体としての燃料消費量の増加が抑制されつつ、交差点における車両どうしの衝突が回避される。
なお、車間距離の制御は、エンジン制御部7によって直接制御してもよいし、車間距離の過不足を情報提示部8によって運転者に伝えるようにしてもよい。
【0069】
上述した各実施形態においては、本発明を特定の条件で構成した例について説明したが、本発明は種々の変更及び組み合わせを行うことができ、これに限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、自車両群及び交差車両群のいずれも複数の車両を含む例について説明したが、自車両群は、自車両に後続車両がない場合には自車両単独で構成される。また、交差車両群は、後者車両に後続車両がない場合には、交差車両単独で構成される。
【0070】
また、上記の実施形態は、ガソリン等の液化燃料を燃料とした例について説明したが、上記燃料は、電気自動車における電力消費量でもよく、これらが混在する場合には、エネルギー換算を実施した上で、燃料消費効率を比較することとしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 交差点検出手段
2 通信手段
3 交差車両抽出手段
4 車両設定手段
5 燃費比較手段
6 走行制御指示手段
7 エンジン制御部
8 情報提示部
9 GPS
10 ナビゲーションシステム
100 ECU
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用運転支援装置に係り、より詳細には、交差点における車両どうしの衝突を回避する際に、燃料消費量の増加を抑制するようにした車両用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転を支援する技術として、車車間通信を利用して、自車両の周囲の他車両の位置、速度及び進行方向情報を取得し、周囲の他車両を注目リストに登録し、衝突の可能性のある他車両に対して注意情報を送信する技術が下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−90663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の運転支援技術においては、無線により車両間でデータを送受信する車車間通信は、車両どうしの衝突の危険性を回避するといった安全性の向上のために利用されている。一方、近年、ガソリン等の車両用燃料の価格が上昇する傾向にあり、車両の燃料消費量をより少なくすることが望まれている。しかし、従来の運転支援技術においては、交差点における車両どうしの衝突を回避を図る際に、燃料消費量の増加を抑制することは考慮されていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、車車間通信等の通信を利用して、交差点における車両どうしの衝突を回避する際に、燃料消費量の増加を抑制するようにした車両用運転支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の車両用運転支援装置は、車両に搭載された車両用運転支援装置であって、自車両が接近している信号機のない交差点を検出する交差点検出手段と、上記自車両と他車両との間で、車両位置、車速、進行方向及び燃料消費効率を含むデータを交換する通信手段と、上記自車両及び上記他車両の車両位置、車速及び進行方向のデータを使用して、上記他車両のうち上記交差点において上記自車両との衝突が予測される交差車両を抽出する交差車両抽出手段と、上記自車両及び当該自車両に後続する一連の車両を自車両群として設定し、かつ、上記交差車両及び当該交差車両に後続する一連の車両を交差車両群として設定する車両群設定手段と、上記自車両の燃料消費効率、及び上記通信手段によって交換された上記他車両の燃料消費効率のデータを使用して、上記自車両群及び交差車両群それぞれの燃料消費効率を求め、かつ、それらの燃料消費効率どうしを比較する燃費比較手段と、上記自車両群及び上記交差車両群が、互いに衝突することなく上記交差点を通過することができるように、上記自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率が良い方の車両群の各車両に対して、車速の変更を指示する走行制御指示手段と、を備えることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明の車両用運転支援装置によれば、自車両群及び交差車両群のうち、燃料消費効率が良い方の車両群(以下、低燃費車両群とも称する。)の各車両に対して、車速の変更が指示される。これにより、自車両群及び交差車両群のうち、燃料消費効率が悪い方の車両群(以下、高燃費車両群とも称する。)の各車両の車速の変更の必要性が低減される。その結果、車車間通信等の通信を利用して交差点における車両どうしの衝突を回避する際に、両車両群全体としての燃料消費量の増加が抑制され、また、二酸化炭素の排出量の増加も抑制される。
なお、自車両又は交差車両に後続車両がない場合には、自車両又は交差車両単独で、車両群が構成されるものとする。
【0008】
また、本発明において好ましくは、上記燃費比較手段は、上記自車両群の燃料消費効率及び交差車両群の燃料消費効率を、それぞれの車両群に含まれる各車両の燃料消費効率の合計としてそれぞれ求める。
これにより、自車両群の燃料消費効率及び交差車両群の燃料消費効率が容易に求められる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、上記走行制御指示手段は、上記自車両群及び交差車両群のいずれにも先行車両がない場合に、燃料消費効率が良い方の車両群の各車両に対して、加速を指示するとともに、上記各車両の前後の車両間隔を短くすることを指示する。
【0010】
このように、燃料消費効率が良い方の車両群(低燃費車両群)の各車両が加速することにより、燃料消費効率が悪い方の車両群(高燃費車両群)が交差点を通過する前に、低燃費車両群が交差点を通過する。これにより、理想的には、高燃費車両群が車速を変更することなく交差点を通過することが可能となる。その結果、車車間通信等の通信を利用して交差点における車両どうしの衝突を回避する際に、両車両群全体としての燃料消費量の増加が抑制される。
【0011】
また、本発明において好ましくは、上記走行制御指示手段は、上記自車両群及び交差車両群のうちの一方の車両群にのみ先行車両がある場合に、上記自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率の良い方の車両群に減速を指示する。
【0012】
このように、燃料消費効率が良い方の車両群(低燃費車両群)の各車両が減速することにより、燃料消費効率が悪い方の車両群(高燃費車両群)が交差点を通過した後に、低燃費車両群が交差点を通過する。これにより、理想的には、高燃費車両群が車速を変更することなく交差点を通過することが可能となる。その結果、車車間通信等の通信を利用して交差点における車両どうしの衝突を回避する際に、両車両群全体としての燃料消費量の増加が抑制される。
【0013】
また、本発明において好ましくは、上記走行制御指示手段は、上記自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率の良い方の車両群にのみ先行車両がある場合に、上記先行車両に対して加速を指示する。
【0014】
これにより、先行車両が交差点を通過してから、燃料消費効率が悪い方の車両群(高燃費車両群)が交差点を通過するまでの時間が長くなる。その結果、先行車両と高燃費車両群の先頭車両との衝突の可能性が低減され、交通の安全の向上が図られる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、上記自車両群の燃料消費効率と交差車両群の燃料消費効率との差が所定値以下である場合に、上記走行制御指示手段は、上記交差点を上記自車両群及び交差車両群の車両が交互に通過できるように、上記自車両群及び交差車両群の各車両に対して車間距離を空けるように指示する。
【0016】
このように、自車両群及び交差車両群それぞれの燃料消費効率が同等である場合に、自車両群及び交差車両群の車両が交互に通過するようにすれば、いずれの車両群も車速を大きく変更する必要性が低減される。その結果、両方の車両群全体としての燃料消費量の増加が抑制されつつ、交差点における車両どうしの衝突が回避される。
【0017】
また、本発明において好ましくは、上記通信手段によって交換されるデータには、自車両及び他車両の車長が含まれ、上記走行制御指示手段は、一方の車両群の車両の車長が長いほど、当該車両が上記交差点を通過する直前及び直後に当該交差点を通過する他方の車両群の車両どうしの車間距離を長くするように指示する。
これにより、交差点を交互に通過するのに過不足のない適切な車間距離が指示される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用運転支援装置によれば、車車間通信等の通信を利用して、交差点における車両どうしの衝突を回避する際に、燃料消費量の増加が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の車両用運転支援装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】交差点付近の車両どうしの車車間通信の模式図である。
【図3】本発明の実施形態の車両用運転支援装置の動作例を説明するフローチャートである。
【図4】燃費比較の処理を説明するフローチャートである。
【図5】走行制御指示の処理を説明するフローチャートである。
【図6】(A)及び(B)は、自車両群及び交差車両群のいずれにも先行車両がない場合の車両の走行制御を説明する模式図である。
【図7】(A)及び(B)は、交差車両群にのみ先行車両があり、かつ、交差車両群が低燃費車両群である場合の走行制御を説明する模式図である。
【図8】(A)及び(B)は、自車両群にのみ先行車両があり、かつ、自車両群が低燃費車両群である場合の走行制御を説明する模式図である。
【図9】(A)及び(B)は、交差車両群にのみ先行車両があり、かつ、交差車両群が高燃費車両群である場合の走行制御を説明する模式図である。
【図10】(A)及び(B)は、自車両群にのみ先行車両があり、かつ、自車両群が高燃費車両群である場合の走行制御を説明する模式図である。
【図11】(A)及び(B)は、自車両群及び交差車両群のいずれにも先行車両がある場合の車両の走行制御を説明する模式図である。
【図12】自車両群の燃料消費効率と交差車両群の燃料消費効率とが同等である場合の走行制御指示の処理を説明するフローチャートである。
【図13】(A)及び(B)は、自車両群及び交差車両群それぞれの燃料消費効率が同等である場合の車両の走行制御を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明の車両用運転支援装置の実施形態を説明する。
まず、図1のブロック図を参照して、本実施形態の車両用運転支援装置の構成を説明する。図1に示すように、本実施形態の車両用運転支援装置は、車両に搭載された車両用運転支援装置であって、交差点検出手段1と、通信手段2と、交差車両抽出手段3と、車両群設定手段4と、燃費比較手段5と、走行制御指示手段6とを備えている。さらに、本実施形態の車両用運転支援装置は、エンジン制御部7及び情報提示部8を備えている。
【0021】
交差点検出手段1、交差車両抽出手段3、車両群設定手段4と、燃費比較手段5と、走行制御指示手段6の各ブロックは、それぞれ、車載ECU(electric control unit:電子制御装置)100における処理機能に相当する。これらの処理機能は、例えば、コンピュータにおいて所定のプログラムを実行することにより、或いはマイクロチップにより実現される。
【0022】
交差点検出手段1は、自車両の接近している信号機のない交差点を検出する。交差点は、地図データ及び自車両の位置によって検出される。自車両の現在位置は、GPS(global positioning system:全地球測位システム)9によって検出される。また、自車両の車速は、不図示の速度センサによって検知される。また、自車両の進行方向は、GPS及び不図示のジャイロによって検出される。また、交差点の位置、及び信号機の有無は、ナビゲーションシステム10の地図データとによって特定される。
【0023】
通信手段2は、自車両と他車両との間で、車車間通信により、車両位置、車速、進行方向及び燃料消費効率を含むデータを交換する。自車両の車速は、車速センサによって検出される。また、自車両の燃料消費効率は、不図示のメモリに格納されている。
【0024】
なお、図2に模式的に示すように、自車両c1と車車間通信を行う他車両c2及びc3は、交差点C付近の車両、例えば、交差点Cから所定距離以内(例えば、数百メートル以内)を走行している車両であるのがよい。所定距離は、経験的に任意好適な値を設定することができる。また、データの交換は、車車間通信によって自車両と他車両との間で直接行ってもよいし、路車間通信を介して間接的に行ってもよい。
また、燃料消費効率(燃費)は、単位燃料当たりの走行可能距離をいい、例えば、ガソリン等の燃料1リットル当たりの走行キロメートル数で表される。
【0025】
交差車両抽出手段3は、自車両及び他車両の車両位置、車速及び進行方向のデータを使用して、他車両のうち交差点において自車両との衝突が予測される交差車両を抽出する。例えば、自車両が現車速を維持した場合に交差点に到達する時刻T1と、他車両が現車速を維持した場合にその交差点に到達する時刻T2との時間差が所定値以内である場合に、その他車両を交差車両として抽出するとよい。
なお、自車両と他車両との衝突の予測にあたっては、従来公知の任意好適な技術を利用することができる。
【0026】
車両群設定手段4は、自車両及び当該自車両に後続する一連の車両を自車両群として設定し、かつ、交差車両及び当該交差車両に後続する一連の車両を交差車両群として設定する。車両群の設定にあたっては、前後に隣接する車両どうしの車間距離が所定距離以下である一連の車両を車両群として設定する。車間距離は、各車両の位置データから算出してもよいし、車両に装備されたレーダーで直接測定してもよい。
【0027】
燃費比較手段5は、自車両の燃料消費効率、及び通信手段によって交換された他車両の燃料消費効率のデータを使用して、自車両群及び交差車両群それぞれの燃料消費効率を求め、かつ、それらの燃料消費効率どうしを比較する。自車両群の燃料消費効率及び交差車両群の燃料消費効率は、それぞれの車両群に含まれる各車両の燃料消費効率の合計としてそれぞれ求められる。なお、自車両の燃料消費効率は、自車両のメモリ(図示せず)から読み出される。
【0028】
走行制御指示手段6は、自車両群及び交差車両群が、互いに衝突することなく交差点を通過することができるように、自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率の良い方の車両群(低燃費車両群)の各車両に対して、車速の変更を指示する。自車両に対する指示は、例えば、エンジン制御部7に伝えられて、スロットルの開度や燃料噴射量の調節によりエンジンが制御されることによって、車速が変更される。
【0029】
自車両に対する走行制御指示は、例えば、運転席のフロントパネルやダッシュボード上に配置された情報提示部8に伝えられる。情報提示部8は、運転者に対して表示及び音声の一方又は双方により車速の変更を指示する。また、自車両の後続車両及び他車両群の車両等の他車両に対する走行制御指示は、通信手段2を介してそれらの他車両に伝えられる。
【0030】
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施形態の車両用運転支援装置の動作例を説明する。
まず、通信手段2を介して、車車間通信により、自車両と他車両との間で、車両位置、車速、進行方向及び燃料消費効率を含むデータを交換する(S1)。
【0031】
次いで、交差点検出手段1によって、自車両が接近している信号機のない交差点を検出する(S2)。
【0032】
かかる交差点が検出された場合(S3において「Yes」の場合)、交差車両抽出手段3によって、自車両及び他車両の車両位置、車速及び進行方向のデータを使用して、他車両のうち交差点において自車両との衝突が予測される交差車両を抽出する(S4)。
【0033】
かかる交差車両が抽出された場合(S5におい「Yes」の場合)、車両群設定手段4により、自車両及び当該自車両に後続する一連の車両を自車両群として設定し、かつ、上記交差車両及び当該交差車両に後続する一連の車両を交差車両群として設定する(S6)。
【0034】
ここで、図6(A)を参照して、車両群の設定例を説明する。図6(A)では、図面下から上に向かって、自車両aが走行している。一方、自車両の接近している交差点Cに向かって、図面左から右に向かって、交差車両gが走行している。自車両aと交差車両gとが現車速を維持して交差点に進入した場合、互いに衝突することが予測されている。
【0035】
図6(A)に示す例では、自車両aに、車両b、c及びdが後続している。このため、自車両a及び自車両aに後続する一連の車両b、c及びdが、自車両群Sとして設定される。また、交差車両gには、車両h、i及びjが後続している。このため、交差車両g及び交差車両gに後続する一連の車両h、i及びjが、交差車両群Tとして設定される。
【0036】
次いで、燃費比較手段5により、自車両群S及び交差車両群Tそれぞれの燃料消費効率を求め、かつ、それらの燃料消費効率どうしを比較する(S7)。
ここで、図4のフローチャートを参照して、燃料比較手段5による燃費比較処理について説明する。
【0037】
まず、自車両群の燃料消費効率を算出する(S71)。図6(A)に示す例では、自車両群Sの燃料消費効率は、自車両群Sを構成する各車両a、b、c及びdの燃料消費効率の合計として求められる。例えば、自車両a、後続車両b、c及びdの燃料消費効率が、それぞれ10km/L、14km/L、11km/L、及び15km/Lである場合、自車両群Sの燃料消費効率は、これらの合計値として、50km/Lと算出される。
【0038】
次いで、交差車両群の燃料消費効率を算出する(S72)。図6(A)に示す例では、交差車両群Tの燃料消費効率は、交差車両群Tを構成する各車両g、h、i及びjの燃料消費効率の合計として求められる。例えば、交差車両g、後続車両h、i及びjの燃料消費効率が、それぞれ14km/L、21km/L、11km/L、及び15km/Lである場合、交差車両群Tの燃料消費効率は、これらの合計値として、61km/Lと算出される。
【0039】
次いで、自車両群の燃料消費効率と、交差車両群の燃料消費効率とを比較する(S73)。例えば、上記の自車両群Sの燃料消費効率50km/Lと、交差車両群Tの燃料消費効率61km/Lとを比較すると、自車両群Sの燃料消費効率の方が悪く(低く)、交差車両群Tの燃料消費効率の方が良い(高い)ことが分かる。すなわち、自車両群Sが、燃料消費効率の悪い高燃費車両群と判定され、かつ、交差車両群Tが、燃料消費効率の良い低燃費車両群と判定される。
【0040】
次いで、走行制御指示手段6により、自車両群及び上記交差車両群が、互いに衝突することなく交差点を通過することができるように、自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率の良い方の車両群の各車両に対して、車速の変更を指示する(図3のS8)。
【0041】
ここで、図5のフローチャートを参照して、走行制御指示の処理について説明する。ここでは、走行制御指示の処理を、第1〜第5の場合に分けて説明する。
まず、第1の場合の走行制御指示の処理について説明する。第1の場合、自車両群及び交差車両群の燃料消費効率が同等でなく(図5のS81で「No」の場合)、かつ、自車両群及び交差車両群のいずれにも先行車両がない場合(S82及びS83で「No」の場合)、燃料消費効率が良い方の車両群(低燃費車両群)の各車両に対して、加速を指示するとともに、各車両の前後の車両間隔を短くすることを指示する(S84)。
【0042】
例えば、図6(A)に示すように、交差車両群Tが低燃費車両群であって、自車両a及び交差車両gがいずれも先頭車両である場合、交差車両群Tの各車両g、h、i及びjに対して加速が指示され、かつ、各車両g、h、i及びjの前後の車間距離を短くすることが指示される。その結果、図6(B)に示すように、交差車両群Tが、交差点Cを先に通過した後に、自車両群Sが交差点Cを通過する。これにより、両方の車両群全体での燃料消費量の増加を抑制しつつ、衝突が回避される。
【0043】
なお、交差車両群Tの加速の程度は、自車両群Sが交差点に進入する前に、交差車両群Tが交差点を通過できる程度であることが望ましい。また、高燃費車両群である自車両群Sは、現車速を維持したままで交差点を通過することが望ましいが、自車両群Sに対して、減速を指示してもよい。
【0044】
また、図6(A)示した例では、自車両群が高燃費車両群であり、かつ、交差車両群が低燃費車両群である例を説明したが、自車両群が低燃費車両群であり、かつ、交差車両群が高燃費車両群である場合には、自車両群に対して加速が指示される。
【0045】
次に、第2の場合の走行制御指示の処理について説明する。第2の場合、自車両群及び交差車両群の燃料消費効率が同等でなく(図5のS81で「No」の場合)、高燃費車両群に先行車両がなく(S82で「Yes」の場合)、かつ、低燃費群にのみ先行車両がある場合(S83で「No」の場合)、低燃費車両群に減速を指示し、かつ、先行車両に加速を指示する(S85)。
【0046】
図7(A)に示す例では、自車両aと交差車両gとの衝突が予想されている。そして、自車両a及びその後続車両b、c及びdからなる自車両群Sが、高燃費車両群であり、一方、交差車両g及びその後続車両h及びiからなる交差車両群Tが、低燃費車両群である。そして、高燃費車両群である自車両群Sには、先行車両がなく、一方、低燃費車両群である交差車両群Tには、2台の先行車両p1及びp2がある。すなわち、自車両aは、車群の先頭に位置しているが、交差車両gは、先行車両を含めた車群の中間に位置している。
【0047】
かかる場合、低燃費車両群である交差車両群Tの各車両g、h及びiに対して、減速が指示され、かつ、交差車両群Tの先行車両p1及びp2に対して、加速が指示される。その結果、図7(B)に示すように、先行車両p1及びp2が交差点Cを先に通過した後に、自車両群Sが交差点を通過し、更にその後、交差車両群Tが交差点Cを通過する。これにより、両方の車両群全体での燃料消費量の増加を抑制しつつ、衝突が回避される。
【0048】
なお、先行車両p1及びp2は、加速しなくてもよい。また、交差車両群Tの減速の程度は、自車両群Sが交差点Cを通過した後に、交差車両群Tが交差点に進入する程度であることが望ましい。また、高燃費車両群である自車両群Sは、現車速を維持したままで交差点を通過することが望ましいが、自車両群Sに対しても加速又は減速といった車速の変更を指示してもよい。
【0049】
また、図8(A)に示す例では、自車両aと交差車両gとの衝突が予想されている。そして、自車両a及びその後続車両bからなる自車両群Sが、低燃費車両群であり、一方、交差車両g及びその後続車両h、i及びjからなる交差車両群Tが、高燃費車両群である。そして、低燃費車両群である自車両群Sには、1台の先行車両pがあり、一方、高燃費車両群である交差車両群Tには、先行車両がない。すなわち、自車両aは、先行車両pを含めた車群の中間に位置し、一方、交差車両gは、車群の先頭に位置している。
【0050】
かかる場合、低燃費車両群である自車両群Sの各車両a及びbに対して、減速が指示され、かつ、自車両群Sの先行車両pに対して、加速が指示される。その結果、図8(B)に示すように、先行車両pが交差点Cを先に通過した後に、交差車両群Tが交差点を通過し、更にその後、自車両群Sが交差点Cを通過する。これにより、両方の車両群全体での燃料消費量の増加を抑制しつつ、衝突が回避される。
【0051】
なお、先行車両pは、加速しなくてもよい。また、自車両群Sの減速の程度は、交差車両群Tが交差点Cを通過した後に、自車両群Sが交差点Cに進入する程度であることが望ましい。また、高燃費車両群である交差車両群Tは、現車速を維持したままで交差点を通過することが望ましいが、交差車両群Tに対しても加速又は減速といった車速の変更を指示してもよい。
【0052】
次に、第3の場合の走行制御指示の処理について説明する。第3の場合、自車両群及び交差車両群の燃料消費効率が同等でなく(図5のS81で「No」の場合)、高燃費車両群に先行車両があり(S82で「Yes」の場合)、かつ、低燃費群には先行車両がない場合(S86で「No」の場合)は、低燃費車両群に減速を指示する(S87)。
【0053】
図9(A)に示す例では、自車両aと交差車両gとの衝突が予想されている。そして、自車両a及びその後続車両bからなる自車両群Sが、低燃費車両群であり、一方、交差車両g及びその後続車両h及びiからなる交差車両群Tが、高燃費車両群である。そして、低燃費車両群である自車両群Sには、先行車両がなく、一方、高燃費車両群である交差車両群Tには、2台の先行車両p1及びp2がある。すなわち、自車両aは、車群の先頭に位置しているが、交差車両gは、先行車両を含めた車群の中間に位置している。
【0054】
かかる場合、低燃費車両群である自車両群Sの各車両a及びbに対して、減速が指示される。その結果、図9(B)に示すように、先行車両p1及びp2及び交差車両群Tが交差点Cを先に通過した後に、自車両群Sが交差点を通過する。これにより、両方の車両群全体での燃料消費量の増加を抑制しつつ、衝突が回避される。
【0055】
なお、自車両群Sの減速の程度は、交差車両群Tが交差点Cを通過した後に、自車両群Sが交差点に進入する程度であることが望ましい。また、高燃費車両群である交差車両群Tは、現車速を維持したままで交差点Cを通過することが望ましいが、交差車両群T及びその先行車両p1及びp2に対して加速又は減速といった車速の変更を指示してもよい。
【0056】
また、図10(A)に示す例では、自車両aと交差車両gとの衝突が予想されている。そして、自車両a及びその後続車両bからなる自車両群Sが、高燃費車両群であり、一方、交差車両g及びその後続車両h、i及びjからなる交差車両群Tが、低燃費車両群である。そして、高燃費車両群である自車両群Sには、2台の先行車両p1及びp2があり、一方、低燃費車両群である交差車両群Tには、先行車両がない。すなわち、自車両aは、先行車両p1及びp2を含めた車群の中間に位置し、一方、交差車両gは、車群の先頭に位置している。
【0057】
かかる場合、低燃費車両群である交差車両群Tの各車両g、h、i及びjに対して、減速が指示される。その結果、図10(B)に示すように、先行車両p1及びp2及び自車両群Sが交差点Cを先に通過した後に、交差車両群Tが交差点Cを通過する。これにより、両方の車両群全体での燃料消費量の増加を抑制しつつ、衝突が回避される。
【0058】
なお、交差車両群Tの減速の程度は、自車両群Sが交差点Cを通過した後に、交差車両群Tが交差点Cに進入する程度であることが望ましい。また、高燃費車両群である自車両群Sは、現車速を維持したままで交差点を通過することが望ましいが、自車両群Sに対しても加速又は減速といった車速の変更を指示してもよい。
【0059】
次に、第4の場合の走行制御指示の処理について説明する。第4の場合、自車両群及び交差車両群の燃料消費効率が同等でなく(図5のS81で「No」の場合)、高燃費車両群及び低燃費車両群に先行車両がある場合(S82及びS86で「Yes」の場合)は、何れかの先行車両の走行制御指示に従う(S88)。すなわち、かかる場合には、先行車両どうしの衝突が予想され、その結果、先行車両を含めた車両群が設定されている。このため、それらの車両群における燃料消費効率比較の結果に基づいて、走行制御が指示される。
【0060】
図11(A)に示す例では、自車両aと交差車両gとの衝突が予想されるともに、自車両aの前方に位置する先行車両p1と、交差車両gの前方に位置する先行車両p3との衝突も予想されている。かかる場合、例えば、先行車両p1を自車両とし、先行車両p3を交差車両として、走行制御が指示される。そして、先行車両p3を先頭とする車両群(車両p3,p4,g及びh)が高燃費車両群であり、かつ、先行車両p1を先頭とする車両群(車両p1,p2,a及びb)が低燃費車両群である場合には、先行車両p1を先頭とする車両群に減速が指示される。その結果、図11(B)に示すように、先行車両p3を先頭とする車両群が交差点を先に通過した後に、先行車両p1を先頭とする車両群が交差点に進入する。これにより、両方の車両群全体での燃料消費量の増加を抑制しつつ、衝突が回避される。
【0061】
次に、第5の場合の走行制御指示の処理について説明する。第5の場合、自車両群及び交差車両群の燃料消費効率が同等である場合(図5のS81で「Yes」の場合)、自車両群及び交差車両群の各車両に対して、交差点を自車両群及び交差車両群の車両が交互に通過できるように、自車両群及び交差車両群の各車両に対して車間距離を空けるように指示する(S89)。
なお、自車両群の燃料消費効率と交差車両群の燃料消費効率との差が所定値以下である場合に、燃料消費効率が同等であるとするとよい。所定値は、経験的に任意好適な値を設定することができる。
【0062】
また、車間距離は、一方の車両群の車両の車長が長いほど、当該車両が交差点を通過する直前及び直後に当該交差点を通過する他方の車両群の車両どうしの車間距離を長くすることが望ましい。その場合、通信手段2によって交換されるデータには、自車両及び他車両の車長が含まれ、そのデータに基づいて車間距離が指示される。
【0063】
ここで、図12のフローチャートを参照して、交互通過指示の処理について説明する。
図13(A)に示す例では、自車両イ及びその後続車両ロ、ハ及びニからなる自車両群Sと、交差車両A及びその後続車両B、C及びDからなる交差車両群Tとは、燃料消費効率が互いに同等である。
【0064】
まず、交差車両Aが自車両イよりも先に交差点Cに進入して衝突することが予想される場合(S891で「Yes」の場合)、図13(B)に示すように、自車両イに対して、交差車両Aが交差点Cに到達するタイミングで、自車両イの位置が、交差点Cから交差車両Aの全長分の間隔をあけるように減速を指示する(S892)。
【0065】
なお、図13(B)では、自車両イの前に、交差車両Aの車長分を空けた例を示しているが、車間距離は、対応する車両の車長に安全マージンを加えた距離であることが望ましい。安全マージンは、運転者の特性、運転経験、交差点の交差角度、車両の重量、車両の加減速性能といった種々の要素に基づいて設定することができる。
【0066】
次いで、自車両イに対して、所定の車間距離をあけた後は、一定の車速で走行するように指示する(S893)。
なお、車両間隔は、交差する相手車両が交差点に到達するまでに、所定距離だけ空けるようにすれば良く、相手車両の交差点到達前に、予め、車間距離を所定距離だけあけておく必要はない。
【0067】
また、交差車両Aが自車両イよりも後に交差点Cに進入して衝突することが予測される場合(S891で「No」の場合)、自車両イに対して、現車速を維持することが指示される(S895)。この場合、交差車両Aが、自車両イの車長分の空間を空けるように減速する。
【0068】
次いで、図13(B)に示すように、自車両イ及び交差車両Aそれぞれの後続車両に対しても、順次にお互いに相手車両の全長に応じた車両間隔をあけるように指示する。このようにして、両方の車両群全体としての燃料消費量の増加が抑制されつつ、交差点における車両どうしの衝突が回避される。
なお、車間距離の制御は、エンジン制御部7によって直接制御してもよいし、車間距離の過不足を情報提示部8によって運転者に伝えるようにしてもよい。
【0069】
上述した各実施形態においては、本発明を特定の条件で構成した例について説明したが、本発明は種々の変更及び組み合わせを行うことができ、これに限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、自車両群及び交差車両群のいずれも複数の車両を含む例について説明したが、自車両群は、自車両に後続車両がない場合には自車両単独で構成される。また、交差車両群は、後者車両に後続車両がない場合には、交差車両単独で構成される。
【0070】
また、上記の実施形態は、ガソリン等の液化燃料を燃料とした例について説明したが、上記燃料は、電気自動車における電力消費量でもよく、これらが混在する場合には、エネルギー換算を実施した上で、燃料消費効率を比較することとしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 交差点検出手段
2 通信手段
3 交差車両抽出手段
4 車両設定手段
5 燃費比較手段
6 走行制御指示手段
7 エンジン制御部
8 情報提示部
9 GPS
10 ナビゲーションシステム
100 ECU
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車両用運転支援装置であって、
自車両が接近している信号機のない交差点を検出する交差点検出手段と、
上記自車両と他車両との間で、車両位置、車速、進行方向及び燃料消費効率を含むデータを交換する通信手段と、
上記自車両及び上記他車両の車両位置、車速及び進行方向のデータを使用して、上記他車両のうち上記交差点において上記自車両との衝突が予測される交差車両を抽出する交差車両抽出手段と、
上記自車両及び当該自車両に後続する一連の車両を自車両群として設定し、かつ、上記交差車両及び当該交差車両に後続する一連の車両を交差車両群として設定する車両群設定手段と、
上記自車両の燃料消費効率、及び上記通信手段によって交換された上記他車両の燃料消費効率のデータを使用して、上記自車両群及び交差車両群それぞれの燃料消費効率を求め、かつ、それらの燃料消費効率どうしを比較する燃費比較手段と、
上記自車両群及び上記交差車両群が、互いに衝突することなく上記交差点を通過することができるように、上記自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率が良い方の車両群の各車両に対して、車速の変更を指示する走行制御指示手段と、
を備えることを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
上記燃費比較手段は、上記自車両群の燃料消費効率及び交差車両群の燃料消費効率を、それぞれの車両群に含まれる各車両の燃料消費効率の合計としてそれぞれ求める、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
上記走行制御指示手段は、上記自車両群及び交差車両群のいずれにも先行車両がない場合に、燃料消費効率が良い方の車両群の各車両に対して、加速を指示するとともに、上記各車両の前後の車両間隔を短くすることを指示する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用運転支援装置。
【請求項4】
上記走行制御指示手段は、上記自車両群及び交差車両群のうちの一方の車両群にのみ先行車両がある場合に、上記自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率が良い方の車両群に減速を指示する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用運転支援装置。
【請求項5】
上記走行制御指示手段は、上記自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率が良い方の車両群にのみ先行車両がある場合に、上記先行車両に対して加速を指示する、
ことを特徴とする請求項4記載の車両用運転支援装置。
【請求項6】
上記自車両群の燃料消費効率と交差車両群の燃料消費効率との差が所定値以下である場合に、上記走行制御指示手段は、上記交差点を上記自車両群及び交差車両群の車両が交互に通過できるように、上記自車両群及び交差車両群の各車両に対して車間距離を空けるように指示する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の車両用運転支援装置。
【請求項7】
上記通信手段によって交換されるデータには、自車両及び他車両の車長が含まれ、
上記走行制御指示手段は、一方の車両群の車両の車長が長いほど、当該車両が上記交差点を通過する直前及び直後に当該交差点を通過する他方の車両群の車両どうしの車間距離を長くするように指示する、
ことを特徴とする請求項6記載の車両用運転支援装置。
【請求項1】
車両に搭載された車両用運転支援装置であって、
自車両が接近している信号機のない交差点を検出する交差点検出手段と、
上記自車両と他車両との間で、車両位置、車速、進行方向及び燃料消費効率を含むデータを交換する通信手段と、
上記自車両及び上記他車両の車両位置、車速及び進行方向のデータを使用して、上記他車両のうち上記交差点において上記自車両との衝突が予測される交差車両を抽出する交差車両抽出手段と、
上記自車両及び当該自車両に後続する一連の車両を自車両群として設定し、かつ、上記交差車両及び当該交差車両に後続する一連の車両を交差車両群として設定する車両群設定手段と、
上記自車両の燃料消費効率、及び上記通信手段によって交換された上記他車両の燃料消費効率のデータを使用して、上記自車両群及び交差車両群それぞれの燃料消費効率を求め、かつ、それらの燃料消費効率どうしを比較する燃費比較手段と、
上記自車両群及び上記交差車両群が、互いに衝突することなく上記交差点を通過することができるように、上記自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率が良い方の車両群の各車両に対して、車速の変更を指示する走行制御指示手段と、
を備えることを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
上記燃費比較手段は、上記自車両群の燃料消費効率及び交差車両群の燃料消費効率を、それぞれの車両群に含まれる各車両の燃料消費効率の合計としてそれぞれ求める、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
上記走行制御指示手段は、上記自車両群及び交差車両群のいずれにも先行車両がない場合に、燃料消費効率が良い方の車両群の各車両に対して、加速を指示するとともに、上記各車両の前後の車両間隔を短くすることを指示する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用運転支援装置。
【請求項4】
上記走行制御指示手段は、上記自車両群及び交差車両群のうちの一方の車両群にのみ先行車両がある場合に、上記自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率が良い方の車両群に減速を指示する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用運転支援装置。
【請求項5】
上記走行制御指示手段は、上記自車両群及び交差車両群のうちの燃料消費効率が良い方の車両群にのみ先行車両がある場合に、上記先行車両に対して加速を指示する、
ことを特徴とする請求項4記載の車両用運転支援装置。
【請求項6】
上記自車両群の燃料消費効率と交差車両群の燃料消費効率との差が所定値以下である場合に、上記走行制御指示手段は、上記交差点を上記自車両群及び交差車両群の車両が交互に通過できるように、上記自車両群及び交差車両群の各車両に対して車間距離を空けるように指示する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の車両用運転支援装置。
【請求項7】
上記通信手段によって交換されるデータには、自車両及び他車両の車長が含まれ、
上記走行制御指示手段は、一方の車両群の車両の車長が長いほど、当該車両が上記交差点を通過する直前及び直後に当該交差点を通過する他方の車両群の車両どうしの車間距離を長くするように指示する、
ことを特徴とする請求項6記載の車両用運転支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−186413(P2010−186413A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31455(P2009−31455)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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