説明

車載地図表示装置

【課題】その装置の処理能力に合った適切な3次元地図画像を表示する車載地図表示装置を提供する。
【解決手段】地図データを読み込み(ステップS20)、車両の速度に応じて(ステップS30)、ステップS40の低速走行用処理、ステップS50の中速走行用処理、またはステップS60の高速走行用処理のいずれかを実行する。低速走行用処理では全ての構造物の立体画像をリアルデータに基づいて作成し、中速走行用処理や高速走行用処理では、一部の構造物の立体画像を非リアルデータに基づいて作成する。これにより、3次元地図画像に含まれるリアルデータに基づく構造物の立体画像と非リアルデータに基づく構造物の立体画像の割合を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体的な地図を表示する車載の地図表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の底面形状や高さ情報のデータを地図データに記憶しておき、その地図データを用いて建物の3次元形状を描画することにより、立体的でリアル感のある都市景観を再現した3次元地図画像を表示する装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−316702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される装置では、描画時の処理データ量によっては装置の処理能力に合った適切な3次元地図画像とならず、処理能力が不足して動作が不安定になったり、処理能力が高すぎて不要なコスト上昇を招いたりする場合がある。特に車両に搭載した場合は、車両の速度に応じて地図画像のスクロール速度が変化するが、そのスクロール速度の変化によって処理データ量が大幅に変化する。したがって、3次元地図画像を正しく表示できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車両に搭載され、その車両の周囲についての3次元地図画像を表示する車載地図表示装置において、構造物の外観を高リアルに表示するためのリアルデータと、構造物の外観を低リアルに表示するための非リアルデータとを含んだ地図データを読み込む地図データ読み込み手段と、リアルデータに基づく構造物の立体画像と、非リアルデータに基づく構造物の立体画像とを含む3次元地図画像を作成する地図画像作成手段と、地図画像作成手段により作成された3次元地図画像を表示モニタに表示する表示制御手段とを備え、地図画像作成手段は、車両の走行環境に応じて、3次元地図画像に含まれるリアルデータに基づく構造物の立体画像と非リアルデータに基づく構造物の立体画像の割合を変化させるものである。
請求項2の発明は、請求項1の車載地図表示装置において、走行環境とは車両の速度であり、地図画像作成手段は、車両の速度が大きいほど、3次元地図画像に含まれるリアルデータに基づく構造物の立体画像の割合を小さくするものである。
請求項3の発明は、請求項2の車載地図表示装置において、地図画像作成手段は、車両の速度が所定値未満の場合、全ての構造物についてリアルデータに基づく立体画像を作成し、車両の速度が所定値以上の場合、車両からの距離が所定のしきい値未満である構造物についてはリアルデータに基づく立体画像を作成し、車両からの距離がしきい値以上である構造物については非リアルデータに基づく立体画像を作成するものである。
請求項4の発明は、請求項3の車載地図表示装置において、地図画像作成手段は、車両からの距離がしきい値以上である構造物のうち特定の構造物については、リアルデータに基づく立体画像を作成するものである。
請求項5の発明は、請求項4の車載地図表示装置において、特定の構造物とは、予め特徴物として設定された構造物、または走行時の目標物に該当する構造物であることとするものである。
請求項6の発明は、請求項3〜5いずれか一項の車載地図表示装置において、構造物の種類に応じてしきい値を変化させるものである。
請求項7の発明は、請求項1〜6いずれか一項の車載地図表示装置において、同一の構造物について、リアルデータよりも非リアルデータの方がそのデータ量が少ないこととしたものである。
請求項8の発明は、請求項7の車載地図表示装置において、底面データによる底面頂点数、またはポリゴンデータによるポリゴン数のうち少なくともいずれか一方は、リアルデータよりも非リアルデータの方が少ないこととするものである。
請求項9の発明は、車両に搭載され、その車両の周囲についての3次元地図画像を表示する車載地図表示装置において、構造物の外観を高リアルに表示するためのリアルデータと、構造物の外観を低リアルに表示するための非リアルデータとを含んだ地図データを読み込む地図データ読み込み手段と、リアルデータに基づく構造物の立体画像と、非リアルデータに基づく構造物の立体画像とを含む3次元地図画像を作成する地図画像作成手段と、地図画像作成手段により作成された3次元地図画像を表示モニタに表示する表示制御手段とを備え、地図画像作成手段は、車両からの距離が所定のしきい値未満である構造物についてはリアルデータに基づく立体画像を作成し、車両からの距離がしきい値以上である構造物については非リアルデータに基づく立体画像を作成するものである。
請求項10の発明は、請求項9の車載地図表示装置において、地図画像作成手段は、車両からの距離がしきい値以上である構造物のうち特定の構造物については、リアルデータに基づく立体画像を作成するものである。
請求項11の発明は、請求項10の車載地図表示装置において、特定の構造物とは、予め特徴物として設定された構造物、または走行時の目標物に該当する構造物であることとするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、装置の処理能力に合った適切な3次元地図画像を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施形態によるナビゲーション装置の構成を図1に示す。図1のナビゲーション装置1は車両に搭載されており、自車両の前方に見える景観を立体的にリアル感のある画像で模擬した3次元地図画像を表示して、設定された目的地まで自車両を案内する。これにより、臨場感のある分かりやすいナビゲーション情報を運転者に提供するものである。
【0008】
ナビゲーション装置1は、制御回路11、ROM12、RAM13、現在地検出装置14、画像メモリ15、表示モニタ16、入力装置17およびディスクドライブ18を有している。ディスクドライブ18には、地図データが記録されたDVD−ROM19が装填される。
【0009】
制御回路11は、マイクロプロセッサおよびその周辺回路からなり、RAM13を作業エリアとしてROM12に格納された制御プログラムを実行することにより、各種の処理や制御を行う。この制御回路11において実行される処理により、DVD−ROM19に記録された地図データに基づいて、目的地までの推奨経路が探索されるとともに、自車両前方の景観を模擬した3次元地図画像が作成され、表示モニタ16に表示される。
【0010】
現在地検出装置14は、自車両の現在地すなわち自車位置を検出する装置であり、たとえば、自車両の進行方向を検出する振動ジャイロ14a、車速を検出する車速センサ14b、GPS衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ14c等からなる。ナビゲーション装置1は、この現在地検出装置14により検出された自車位置に基づいて、推奨経路を探索するときの経路探索開始点を決定するとともに、3次元地図画像の作成範囲を決定するときの視点位置を設定することができる。
【0011】
画像メモリ15は、表示モニタ16に表示するための画像データを一時的に格納する。この画像データには、制御回路11において作成された3次元地図画像の描画用データなどが含まれる。画像メモリ15に格納された画像データを用いて、自車両前方の景観を模擬した3次元地図画像などの各種画像が表示モニタ16に表示される。
【0012】
入力装置17は、ユーザが目的地の設定などを行うための各種入力スイッチを有し、これは操作パネルやリモコンなどによって実現される。ユーザは、表示モニタ16に表示される画面指示に従って入力装置17を操作することにより、地名や地図上の位置、施設名などを指定して目的地を設定し、その目的地までの経路探索をナビゲーション装置1に開始させることができる。ユーザの入力装置17の操作に応じて目的地が設定されると、現在地検出装置14により検出された現在地を経路探索開始点として、設定された目的地までの経路演算が所定のアルゴリズムにより行われ、目的地までの推奨経路が求められる。こうして求められた推奨経路にしたがって、目的地までの案内が行われる。
【0013】
ディスクドライブ18は、推奨経路の探索や3次元地図画像の作成に用いられる地図データを、装填されたDVD−ROM19より読み出す。なお、ここではDVD−ROMを用いた例について説明しているが、DVD−ROM以外の他の記録メディア、たとえばCD−ROMやハードディスクなどより、地図データを読み出すこととしてもよい。
【0014】
DVD−ROM19に記録された地図データには、推奨経路演算用の経路計算データ、推奨経路に従って自車両を目的地まで案内するときに用いられる交差点名称や道路名称などの経路誘導データ、道路を表す道路データ、3次元地図画像上に表示される建物や各種建造物などの構造物を表す構造物データ等が含まれる。
【0015】
構造物データには二種類のものがある。一つはリアル度の高いデータであり、各構造物の外観を忠実に再現して高リアルに表示することができる。このような構造物データは、リアルデータと呼ばれる。もう一つはリアルデータよりもリアル度の低いデータであり、各構造物の外観を低リアルに表示するものである。このような構造物データは、非リアルデータと呼ばれる。ここで、リアル度とは実物と同じように見える程度をいう。すなわち、高リアルとは実物をそのまま表示したかのように見える程度のことをいい、低リアルとは実物に近いが簡略化されたり一部省略されたりして見える程度のことをいう。各構造物について、このようなリアルデータと非リアルデータがそれぞれ設定されている。
【0016】
リアルデータと非リアルデータは、構造物を3次元で表示するための3次元形状データをそれぞれ備えている。これには、構造物の底面形状を表すための底面データ、構造物の壁面形状を複数のポリゴンによって表すためのポリゴンデータ、ポリゴンに貼り付けられる画像のデータであり、構造物の壁面の造形や模様、色彩等を表すためのテクスチャデータなどの各種データが含まれる。なお底面データは、その底面を構成する複数の頂点座標として表される。またポリゴンデータは、そのポリゴン数とそれぞれのポリゴンを形成する頂点座標列として表される。
【0017】
リアルデータと非リアルデータでは、3次元形状データにおける底面の頂点数や、ポリゴン数および各ポリゴンの頂点数、テクスチャデータのリアル度などが異なる。リアルデータでは、非リアルデータよりも数多くの頂点を用いて底面を構成したり、ポリゴン数やポリゴン頂点数を多くしたりすることにより、構造物の細かな形状まで再現することができる。また、リアルデータに含まれるテクスチャデータには、実物に近い外観とするために、高解像度の画像や実物を撮影した写真から作成された画像などが用いられる。一方、非リアルデータでは、底面の頂点数やポリゴン数などをリアルデータよりも少なくすることにより、構造物の形状を簡略化して表している。また、非リアルデータに含まれるテクスチャデータには、低解像度の画像や、一定の色彩や模様を用いてパターン化された画像などが用いられる。
【0018】
制御回路11において3次元地図画像を作成する際、リアルデータを用いた場合と非リアルデータを用いた場合とでは、制御回路11の処理負荷に違いが生じる。リアルデータを用いた場合は構造物を高リアルに表せる反面、大量のデータ処理が必要となるため、処理負荷が大きくなる。一方、非リアルデータを用いた場合、構造物は低リアルに表されるが、同一の構造物についてリアルデータよりも非リアルデータの方がそのデータ量が少ないため、処理負荷を小さくすることができる。
【0019】
また、自車両の速度の違いによっても制御回路11の処理負荷に違いが生じる。自車両の速度が速い場合は、それに応じて3次元地図画像のスクロール速度も上昇するため、自車両前方に見える構造物を3次元地図画像上に次々と表示しなければならず、処理負荷が大きくなる。しかし自車両の速度が遅い場合は、3次元地図画像のスクロール速度も上昇しないため、処理負荷が小さい。
【0020】
そこでナビゲーション装置1は、以上説明したような処理負荷の変動を考慮して、自車両の速度に応じて、3次元地図画像の表示に用いる構造物データの種類を変更する。すなわち、自車両の速度が遅い場合は、3次元地図画像において構造物の表示にリアルデータを多く用いるが、自車両の速度が速くなるにつれて、リアルデータよりも非リアルデータを多く用いるようにする。このようにすることで、制御回路11の処理負荷の変動を抑え、ハードウェアの処理能力に応じた適切な3次元地図画像を表示する。
【0021】
ナビゲーション装置1において表示モニタ16に表示される3次元地図画像の例を図2〜4に示す。図2は自車両の速度が比較的遅い場合、すなわち低速走行時の3次元地図画像の例である。この3次元地図画像には、建物21〜25の立体画像が表示されている。これらの建物は、全てリアルデータを用いて高リアルに表示されている。このように、低速走行時には全ての構造物の立体画像をリアルデータに基づいて表示する。
【0022】
図3は自車両の速度が中程度である場合、すなわち中速走行時の3次元地図画像の例である。図3において、建物21〜24については図2と同様にリアルデータを用いて高リアルに表示されているが、自車両から見て目立ちにくい建物25については、非リアルデータを用いて低リアルに表示されている。このように、中速走行時には、運転者があまり注目せず、3次元地図画像全体の見た目のリアル感に対する影響が少ない構造物について、その立体画像をリアルデータではなく非リアルデータに基づいて表示する。
【0023】
具体的には、自車両から所定距離以上離れた場所にあり、かつ遠くても高リアルに表示すべき特定の構造物に該当しない構造物を、中速走行時の3次元地図画像における非リアルデータに基づく低リアル表示の対象とする。ここで、遠くても高リアルに表示すべき特定の構造物とは、特徴的な構造物すなわち特徴物や走行時の目標物などを指す。特徴物とは、たとえば著名な建築物や、色彩や形状などの外観が目立つ建物などを言う。また、走行時の目標物とは、たとえば交差点付近に存在する建物や、推奨経路の方向に存在する建物などを言う。なお、どの構造物が特徴物であるかの情報は予め地図データにおいて設定されており、走行時の目標物については、設定された推奨経路や他の道路とその構造物との位置関係などに基づいて判断することができる。
【0024】
図4は自車両の速度が比較的速い場合、すなわち高速走行時の3次元地図画像の例である。図4において、建物22を除いた他の建物21および23〜25は、非リアルデータを用いて低リアルに表示されている。なお、建物22は前述のような特徴物に該当するものとする。このように、高速走行時には、一部の特徴物を除いた他の全ての構造物について、その立体画像をリアルデータではなく非リアルデータに基づいて表示する。
【0025】
以上説明したように、3次元地図画像の表示に用いる構造物データの種類を、自車両の速度に応じて構造物単位で変更することにより、自車両の速度に応じて、3次元地図画像に含まれるリアルデータに基づく構造物の立体画像と非リアルデータに基づく構造物の立体画像の割合を変化させる。これにより、制御回路11の処理負荷の変動を抑え、ハードウェアの処理能力に応じた適切な3次元地図画像を表示することができる。
【0026】
図2〜4のような3次元地図画像を表示モニタ16に表示する際に、制御回路11において実行される処理のフローチャートを図5に示す。このフローチャートが所定の処理周期ごとに実行されることにより、3次元地図画像の内容が更新される。ステップS10では、3次元地図画像の作成範囲を設定する。このとき、現在地検出装置14により検出される自車位置に基づいて視点位置を決定し、その視点位置から所定の方向および範囲内を3次元地図画像の作成範囲に設定する。
【0027】
ステップS20では、ディスクドライブ18を用いて、ステップS10において設定された3次元地図画像の作成範囲内の地図データをDVD−ROM19から読み込む。この地図データには、3次元地図画像の作成範囲内に存在する各構造物について、それぞれのリアルデータと非リアルデータが含まれている。
【0028】
ステップS30では、車速が低速、中速または高速のいずれであるかを判定する。車速が低速である場合はステップS40、車速が中速である場合はステップS50、車速が高速である場合はステップS60へそれぞれ進む。なお、車両から出力される車速パルス信号等に基づいて車速を計測し、その計測値が所定のしきい値T1未満である場合は低速、所定のしきい値T2(ただしT1<T2)以上である場合は高速、T1以上T2未満である場合は中速と判断するなどの方法により、ステップS30の判定を行うことができる。
【0029】
ステップS40へ進んだ場合、低速走行用の処理として、ステップS20で地図データを読み込んだ3次元地図画像の作成範囲内の全ての構造物について、その各構造物の立体画像をリアルデータに基づいて作成する。これにより、全ての構造物が高リアルに表示される。ステップS40を実行したら、ステップS70へ進む。
【0030】
ステップS50へ進んだ場合、中速走行用の処理を実行する。この中速走行用処理の具体的な内容については、後で図6のフローチャートを用いて説明する。また、ステップS60へ進んだ場合、高速走行用の処理を実行する。この高速走行用処理の具体的な内容については、後で図7のフローチャートを用いて説明する。ステップS50またはステップS60において中速走行用の処理または高速走行用の処理のいずれかを実行することにより、各構造物の立体画像がリアルデータまたは非リアルデータに基づいて作成される。ステップS50またはステップS60のいずれかを実行したら、ステップS70へ進む。
【0031】
ステップS70では、ステップS40、ステップS50またはステップS60のいずれかによって作成された構造物の立体画像を用いて、3次元地図画像を作成する。ステップS80では、ステップS70で作成された3次元地図画像を表示モニタ16に表示する。ステップS70を実行したら、図5のフローチャートを終了する。以上説明したような処理により、図2〜4のような3次元地図画像が表示モニタ16に表示される。
【0032】
次に、図6に示す中速走行用処理のフローチャートについて説明する。ステップS51では、図5のステップS20で読み込んだ地図データからいずれかの構造物を選択することにより、3次元地図画像において表示すべき構造物の選択を行う。
【0033】
ステップS52では、ステップS51で選択した構造物について、自車両からの距離が予め定められた所定のしきい値以上であるか否かを判定する。しきい値以上である場合はステップS53へ進み、しきい値未満である場合はステップS54へ進む。なお、このとき全ての構造物に対して同じしきい値に基づいて判定してもよいし、構造物の種類に応じてそのしきい値を変化させてもよい。たとえば、通常の建物や街路樹などについては、しきい値を小さくすることにより自車両から比較的近くても低リアルに表示し、信号機や標識類などについては、しきい値を大きくすることにより自車両から比較的遠くても高リアルに表示することができる。このようにすることで、構造物の種類に応じて高リアル表示と低リアル表示の境界となる距離を変化させ、より見やすい3次元地図画像とすることができる。
【0034】
ステップS53では、ステップS51で選択した構造物が、前述のような特徴物または走行時の目標物、すなわち遠くても高リアルに表示すべき構造物に該当するか否かを判定する。このような構造物に該当する場合はステップS54へ進み、該当しない場合はステップS55へ進む。
【0035】
ステップS54へ進んだ場合、ステップS54では、ステップS51で選択した構造物について、リアルデータに基づいてその構造物の立体画像を作成する。これにより、選択した構造物が高リアルに表示される。ステップS54を実行したら、ステップS56へ進む。
【0036】
一方ステップS55へ進んだ場合、ステップS55では、ステップS51で選択した構造物について、非リアルデータに基づいてその構造物の立体画像を作成する。これにより、選択した構造物が低リアルに表示される。ステップS55を実行したら、ステップS56へ進む。
【0037】
ステップS56では、3次元地図画像の作成範囲内にある全ての構造物を、それまでに実行されたステップS51において選択したか否かを判定する。全ての構造物を選択済みである場合は、図6のフローチャートを終了して図5のフローチャートに戻り、ステップS50から次のステップS70へ進む。まだ選択していない構造物がある場合はステップS51へ戻り、そのうちのいずれかを選択して上記の処理を繰り返す。以上説明したようにして、図6の中速走行用処理のフローチャートが実行される。
【0038】
次に、図7に示す高速走行用処理のフローチャートについて説明する。ステップS61では、図6のステップS51と同様に、図5のステップS20で読み込んだ地図データからいずれかの構造物を選択することにより、3次元地図画像において表示すべき構造物の選択を行う。
【0039】
ステップS62では、ステップS61で選択した構造物が、前述のような特徴物に該当するか否かを判定する。特徴物に該当する場合はステップS63へ進み、該当しない場合はステップS64へ進む。なお、このステップS62では図6のステップS53と異なり、走行時の目標物を判定の対象に含めない。また、図7のフローチャートでは、図6のステップS52のような自車両からの距離による判定を行わない。これらにより、一部の特徴物を除いた他の全ての構造物について、その立体画像をリアルデータではなく非リアルデータに基づいて表示するようにする。
【0040】
ステップS63では、図6のステップS54と同様に、ステップS61で選択した構造物について、リアルデータに基づいてその構造物の立体画像を作成する。これにより、選択した構造物が高リアルに表示される。一方ステップS64では、図6のステップS55と同様に、ステップS61で選択した構造物について、非リアルデータに基づいてその構造物の立体画像を作成する。ステップS63またはS64のいずれかを実行したら、ステップS56へ進む。
【0041】
ステップS65では、3次元地図画像の作成範囲内にある全ての構造物を、それまでに実行されたステップS61において選択したか否かを判定する。全ての構造物を選択済みである場合は、図7のフローチャートを終了して図5のフローチャートに戻り、ステップS60から次のステップS70へ進む。まだ選択していない構造物がある場合はステップS61へ戻り、そのうちのいずれかを選択して上記の処理を繰り返す。以上説明したようにして、図7の高速走行用処理のフローチャートが実行される。
【0042】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果を奏することができる。
(1)地図データを読み込み(ステップS20)、リアルデータに基づく構造物の立体画像と非リアルデータに基づく構造物の立体画像の少なくともいずれか一方または両方を含む3次元地図画像を作成するときに、車両の速度に応じて(ステップS30)、ステップS40、S50またはS60のいずれかの処理を実行することにより、3次元地図画像に含まれるリアルデータに基づく構造物の立体画像と非リアルデータに基づく構造物の立体画像の割合を変化させることとした。このようにしたので、ハードウェアの処理能力に合った適切な3次元地図画像を表示することができる。
【0043】
(2)車速が低速である場合は、全ての構造物の立体画像をリアルデータに基づいて作成する低速走行用処理を実行し(ステップS40)、中速や高速である場合は、一部の構造物の立体画像を非リアルデータに基づいて作成する中速走行用処理(ステップS50)、または高速走行用処理(ステップS60)を実行する。これにより、車両の速度が大きいほど、3次元地図画像に含まれるリアルデータに基づく構造物の立体画像の割合を小さくする(すなわち、3次元地図画像に含まれる非リアルデータに基づく構造物の立体画像の割合を大きくする)こととした。このようにしたので、車両の速度に応じて地図画像のスクロール速度が変化し、そのスクロール速度の変化によって処理データ量が変化しても、3次元地図画像を正しく表示することができる。
【0044】
(3)中速走行用処理において、車両から構造物までの距離が所定のしきい値以上であるか否かを判定し(ステップS52)、車両からの距離がしきい値未満である構造物についてリアルデータに基づく立体画像を作成し(ステップS54)、車両からの距離がしきい値以上である構造物について非リアルデータに基づく立体画像を作成する(ステップS55)。これにより、3次元地図画像に含まれるリアルデータに基づく構造物の立体画像と非リアルデータに基づく構造物の立体画像の割合を変化させることとした。このようにしたので、運転者が注目しやすい構造物は高リアルに表示し、運転者があまり注目せず、3次元地図画像全体の見た目のリアル感に対する影響が少ない構造物は、低リアルに表示することができる。
【0045】
(4)中速走行用処理において、車両からの距離がしきい値以上である構造物が特定の構造物、具体的には、予め特徴物として設定された構造物または走行時の目標物に該当する構造物であるか否かを判定し(ステップS53)、該当する構造物については、リアルデータに基づく立体画像を作成することとした(ステップS54)。このようにしたので、自車両から離れた位置にあっても運転者が注目しやすい構造物を高リアルに表示することができる。
【0046】
(5)構造物の種類に応じて上記のしきい値を変化させることとすれば、構造物の種類に応じて高リアル表示と低リアル表示の境界となる距離を変化させ、より見やすい3次元地図画像とすることができる。
【0047】
なお、以上説明した実施の形態において、図5のステップS30を実行せずにそのままステップS50へ進んで図6のフローチャートを実行することとしてもよい。このようにすれば、車両の速度に関係なく、車両からの距離が所定のしきい値未満である構造物についてはリアルデータに基づく立体画像を作成し(ステップS52、S54)、車両からの距離がしきい値以上である構造物のうち、予め設定された特徴物または走行時の目標物に該当する構造物については、リアルデータに基づく立体画像を作成し(ステップS52、S53、S54)、車両からの距離がしきい値以上である構造物のうち、予め設定された特徴物または走行時の目標物に該当しない構造物については、非リアルデータに基づく立体画像を作成する(ステップS52、S53、S55)ことができる。このようにしても、ハードウェアの処理能力に合った適切な3次元地図画像を表示することができる。
【0048】
以上説明した実施の形態では、車両の速度に応じて、リアルデータに基づく構造物の立体画像と非リアルデータに基づく構造物の立体画像の割合を変化させる例を説明したが、これ以外にも、たとえば道路の渋滞状況や時間帯、特定の車両に対する相対速度や相対距離など、様々な走行環境に応じてその割合を変化させることができる。このようにすれば、たとえば、運転者の画面注視行動を抑制したいような走行環境のときには、非リアルデータによる立体画像の割合を多くして画面のリアル感を低下させるなどの効果を得ることができる。
【0049】
上記で説明したような地図の表示方法は、車両用のナビゲーション装置以外にも、地図を表示する様々な車載装置について適用可能である。すなわち本発明は、リアルデータと非リアルデータを含んだ地図データを読み込み、リアルデータに基づく構造物の立体画像と非リアルデータに基づく構造物の立体画像の少なくともいずれか一方または両方を含む3次元地図画像を作成して表示する地図表示装置において、車両の速度に応じて、3次元地図画像に含まれるリアルデータに基づく構造物の立体画像と非リアルデータに基づく構造物の立体画像の割合を変化させるものについて、適用することができる。
【0050】
以上説明した各実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。
【0051】
上記の実施の形態では、本発明の各手段を制御回路11の処理によって実現している。具体的には、地図データ読み込み手段をステップS20、地図画像作成手段をステップS30〜S70、表示制御手段をステップS80によってそれぞれ実現している。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係には何ら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態によるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】低速走行時の3次元地図画像の例である。
【図3】中速走行時の3次元地図画像の例である。
【図4】高速走行時の3次元地図画像の例である。
【図5】3次元地図画像を表示するときに実行されるフローチャートである。
【図6】中速走行用処理のフローチャートである。
【図7】高速走行用処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 ナビゲーション装置
11 制御回路
12 ROM
13 RAM
14 現在地検出装置
15 画像メモリ
16 表示モニタ
17 入力装置
18 ディスクドライブ
19 DVD−ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、その車両の周囲についての3次元地図画像を表示する車載地図表示装置において、
構造物の外観を高リアルに表示するためのリアルデータと、構造物の外観を低リアルに表示するための非リアルデータとを含んだ地図データを読み込む地図データ読み込み手段と、
前記リアルデータに基づく構造物の立体画像と、前記非リアルデータに基づく構造物の立体画像とを含む3次元地図画像を作成する地図画像作成手段と、
前記地図画像作成手段により作成された3次元地図画像を表示モニタに表示する表示制御手段とを備え、
前記地図画像作成手段は、前記車両の走行環境に応じて、前記3次元地図画像に含まれる前記リアルデータに基づく構造物の立体画像と前記非リアルデータに基づく構造物の立体画像の割合を変化させることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項2】
請求項1の車載地図表示装置において、
前記走行環境とは前記車両の速度であり、
前記地図画像作成手段は、前記車両の速度が大きいほど、前記3次元地図画像に含まれる前記リアルデータに基づく構造物の立体画像の割合を小さくすることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項3】
請求項2の車載地図表示装置において、
前記地図画像作成手段は、
前記車両の速度が所定値未満の場合、全ての構造物について前記リアルデータに基づく立体画像を作成し、
前記車両の速度が所定値以上の場合、前記車両からの距離が所定のしきい値未満である構造物については前記リアルデータに基づく立体画像を作成し、前記車両からの距離が前記しきい値以上である構造物については前記非リアルデータに基づく立体画像を作成することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項4】
請求項3の車載地図表示装置において、
前記地図画像作成手段は、前記車両からの距離が前記しきい値以上である構造物のうち特定の構造物については、前記リアルデータに基づく立体画像を作成することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項5】
請求項4の車載地図表示装置において、
前記特定の構造物とは、予め特徴物として設定された構造物、または走行時の目標物に該当する構造物であることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項6】
請求項3〜5いずれか一項の車載地図表示装置において、
構造物の種類に応じて前記しきい値を変化させることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか一項の車載地図表示装置において、
同一の構造物について、前記リアルデータよりも前記非リアルデータの方がそのデータ量が少ないことを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項8】
請求項7の車載地図表示装置において、
前記リアルデータおよび前記非リアルデータは、構造物の底面形状を表すための底面データと、構造物の壁面形状を複数のポリゴンによって表すためのポリゴンデータとをそれぞれ含み、
同一の構造物について、前記底面データによる底面頂点数、または前記ポリゴンデータによるポリゴン数のうち少なくともいずれか一方は、前記リアルデータよりも前記非リアルデータの方が少ないことを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項9】
車両に搭載され、その車両の周囲についての3次元地図画像を表示する車載地図表示装置において、
構造物の外観を高リアルに表示するためのリアルデータと、構造物の外観を低リアルに表示するための非リアルデータとを含んだ地図データを読み込む地図データ読み込み手段と、
前記リアルデータに基づく構造物の立体画像と、前記非リアルデータに基づく構造物の立体画像とを含む3次元地図画像を作成する地図画像作成手段と、
前記地図画像作成手段により作成された3次元地図画像を表示モニタに表示する表示制御手段とを備え、
前記地図画像作成手段は、前記車両からの距離が所定のしきい値未満である構造物については前記リアルデータに基づく立体画像を作成し、前記車両からの距離が前記しきい値以上である構造物については前記非リアルデータに基づく立体画像を作成することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項10】
請求項9の車載地図表示装置において、
前記地図画像作成手段は、前記車両からの距離が前記しきい値以上である構造物のうち特定の構造物については、前記リアルデータに基づく立体画像を作成することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項11】
請求項10の車載地図表示装置において、
前記特定の構造物とは、予め特徴物として設定された構造物、または走行時の目標物に該当する構造物であることを特徴とする車載地図表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−171230(P2007−171230A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364339(P2005−364339)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】