説明

送信回路、集積回路装置及び電子機器

【課題】安定したデータ送信ができる送信回路、集積回路装置及び電子機器等を提供すること。
【解決手段】送信回路100は、電圧制御発振回路190を有し、搬送波の信号を生成するPLL回路110と、送信データDTXに基づいて、電圧制御発振回路190の変調用制御電圧信号入力ノードNBに対して、変調用制御電圧信号VMを出力する変調用制御電圧生成回路120と、電圧制御発振回路190の出力信号を増幅するパワーアンプ210とを含む。変調用制御電圧生成回路120は、送信データ出力期間の前の擬似信号出力期間に、擬似制御電圧信号を変調用制御電圧信号VMとして出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信回路、集積回路装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
Bluetooth(登録商標)などに代表される近距離無線通信システムでは、通信を行う端末の一方又は双方が移動しながら行う場合があり、その際には端末に内蔵された電源(乾電池等)を使用するために、電力消費の少ない通信方式が必要になる。そのための通信方式として、回路構成が単純で低消費電力化が見込める周波数変調方式が採用されている。このような周波数変調を行う回路として、電圧制御発振回路を送信データに基づいて直接制御して変調を行う回路が知られている。しかしこの回路では、電圧制御発振回路を直接制御して変調を行うために、変調用可変容量が搬送周波数に様々な影響を与えることが問題となっている。
【0003】
この課題に対して例えば特許文献1には、電圧制御発振回路の温度変化による周波数シフトを補正する手法が開示されている。
【0004】
しかしながらこの手法では、送信データ出力期間の開始時に、変調用可変容量の初期状態が安定しないために、搬送周波数が所望の周波数からシフトするなどの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−124803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、安定したデータ送信ができる送信回路、集積回路装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、電圧制御発振回路を有し、搬送波の信号を生成するPLL回路と、送信データに基づいて、前記電圧制御発振回路の変調用制御電圧信号入力ノードに対して、変調用制御電圧信号を出力する変調用制御電圧生成回路と、前記電圧制御発振回路の出力信号を増幅するパワーアンプとを含み、前記変調用制御電圧生成回路は、送信データ出力期間の前の擬似信号出力期間に、擬似制御電圧信号を前記変調用制御電圧信号として出力する送信回路に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、送信回路は、送信データ出力期間の前の擬似信号出力期間に、不定の制御電圧などによらずに、擬似制御電圧信号による周波数変調を行うことができる。
【0009】
また本発明の一態様では、前記送信データを前記変調用制御電圧生成回路に供給する制御回路を含み、前記制御回路は、前記擬似信号出力期間に擬似データを出力し、前記変調用制御電圧生成回路は、前記擬似データに基づいて前記擬似制御電圧信号を出力してもよい。
【0010】
このようにすれば、電圧制御発振回路は、擬似信号出力期間に、制御回路からの擬似データに基づく擬似制御電圧信号により周波数変調を行うことができる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記擬似信号出力期間に前記擬似データに基づき出力される前記擬似制御電圧信号は、前記送信データ出力期間の開始時の送信信号の周波数シフトを防止するための信号であってもよい。
【0012】
このようにすれば、送信データ出力期間において所望の搬送周波数でデータが送信されるから、周波数シフトにより受信機がデータを復調することができなくなることなどを防止できる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記擬似データは、論理レベルを連続的にトグルしたデータであってもよい。
【0014】
このようにすれば、擬似信号出力期間に、電圧値が高レベルと低レベルとの間を交互に遷移する変調用制御電圧信号により変調動作を行うことができる。その結果、擬似信号出力期間に、変調周波数の上側周波数と下側周波数との間を交互に遷移する周波数変調を行うことができる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記変調用制御電圧生成回路は、前記送信データをデジタル値からアナログ値に変換するD/A変換器と、前記D/A変換器の出力に対してフィルター処理を行うフィルター部とを含み、前記フィルター部のゲインは、前記擬似信号出力期間におけるゲインが前記送信データ出力期間におけるゲインよりも小さくなるように設定されてもよい。
【0016】
このようにすれば、擬似信号出力期間では、電圧値が高レベルと低レベルとの間を交互に遷移し、且つ送信データ出力期間よりも小さい振幅を有する変調用制御電圧信号により変調動作をおこなうことができる。すなわち、擬似信号出力期間に、送信データ出力期間よりも小さい周波数偏差で、上側周波数と下側周波数との間を交互に遷移する周波数変調を行うことができる。その結果、送信信号の中心周波数を所望の搬送周波数に設定することができる。
【0017】
また本発明の一態様では、前記変調用制御電圧生成回路は、前記送信データをデジタル値からアナログ値に変換するD/A変換器を含み、前記D/A変換器は、前記擬似信号出力期間において、前記送信データ出力期間には出力されない擬似信号出力用の中心電圧信号を出力し、前記変調用制御電圧生成回路は、前記擬似信号出力期間において、前記中心電圧信号を前記擬似制御電圧信号として出力してもよい。
【0018】
このようにすれば、擬似信号出力期間において、変調用制御電圧信号の中心電圧を所望の搬送周波数に対応させることができる。その結果、送信データ出力期間の開始時の送信信号の周波数シフト等を防止することができる。
【0019】
また本発明の一態様では、前記D/A変換器は、電圧分割回路を含み、前記送信データ出力期間において、前記電圧分割回路の複数の送信データ用タップのいずれかから電圧信号が出力され、前記擬似信号出力期間において、前記電圧分割回路の中心電圧信号用タップから前記中心電圧信号が出力されてもよい。
【0020】
このようにすれば、擬似信号出力期間において、D/A変換器から擬似信号出力用の電圧信号を出力することができる。
【0021】
また本発明の一様態では、前記変調用制御電圧生成回路は、前記送信データをデジタル値からアナログ値に変換するD/A変換器を含み、前記D/A変換器は、前記擬似信号出力期間において、前記送信データ出力期間に出力される複数の電圧信号のいずれかの電圧信号を出力し、前記変調用制御電圧生成回路は、前記擬似信号出力期間において、前記D/A変換器からの前記電圧信号を前記擬似制御電圧信号として出力してもよい。
【0022】
このようにすれば、中心電圧信号が出力された場合において送信時に周波数シフトが発生する場合でも、中心電圧と異なる疑似制御電圧を印加することができる。その結果、送信データの出力期間の開始時の送信信号の周波数シフトを防止することができる。
【0023】
また本発明の一態様では、前記電圧分割回路は、複数のユニット抵抗素子を含むラダー抵抗回路であり、前記複数のユニット抵抗素子は、第1の電源ノードと第2の電源ノードの間に直列に設けられ、前記複数のユニット抵抗素子のうちの少なくとも中心電圧信号生成用のユニット抵抗素子は、前記D/A変換器の入力データの1LSBに相当する電圧を生成する抵抗値の1/2の抵抗値を有してもよい。
【0024】
このようにすれば、ラダー抵抗回路を同一サイズで同一構造のユニット抵抗素子のみで構成することができるから、プロセス工程上のばらつきの影響などを低減することができ、各抵抗素子の抵抗値の精度を高めることが可能になる。
【0025】
また本発明の一態様では、前記ラダー抵抗回路は、前記第1の電源ノードと第1の抵抗分割ノードとの間に設けられる第1の抵抗回路と、前記第1の抵抗分割ノードと第n(nは2以上の偶数)の抵抗分割ノードとの間に設けられる第2の抵抗回路と、前記第nの抵抗分割ノードと前記第2の電源ノードとの間に設けられる第3の抵抗回路とを含み、前記ラダー抵抗回路が配置される領域の外周領域には、前記第1の抵抗回路及び前記第3の抵抗回路を構成する複数のユニット抵抗素子が配置され、前記外周領域の内側領域には、前記第2の抵抗回路を構成する複数のユニット抵抗素子が配置されてもよい。
【0026】
このようにすれば、抵抗値の要求精度が低い第1、第3の抵抗回路を外周領域に配置し、より要求精度が高い第2の抵抗回路を内側領域に配置することができる。こうすることで、外周領域に配置されるダミー抵抗素子を省略あるいは削減することができるから、ラダー抵抗回路のレイアウトに必要な面積を縮小することが可能になる。
【0027】
また本発明の一態様では、前記PLL回路は、前記擬似信号出力期間ではクローズループの動作に設定され、前記送信データ出力期間ではオープンループの動作に設定されてもよい。
【0028】
このようにすれば、擬似信号出力期間において、PLL回路のクローズループ動作により送信信号の周波数を所望の搬送周波数に設定し、送信データ出力期間において、設定された搬送周波数を中心周波数として、変調用制御電圧信号により周波数変調を行うことができる。
【0029】
また本発明の一態様では、前記PLL回路は、位相比較器と、ループフィルターと、前記位相比較器と前記ループフィルターとの間に設けられるスイッチ素子とを含み、前記スイッチ素子は、前記擬似信号出力期間ではオン状態であり、前記送信データ出力期間ではオフ状態であってもよい。
【0030】
このようにすれば、擬似信号出力期間ではPLL回路はクローズループの動作を行い、送信データ出力期間ではオープンループの動作を行うことができる。
【0031】
本発明の他の態様は、上記に記載の送信回路を含む集積回路装置及び電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】送信回路の基本的な構成例。
【図2】電圧制御発振回路の詳細な構成例。
【図3】図3(A)、図3(B)は制御電圧と発振周波数との関係の一例。
【図4】ループフィルターの構成例。
【図5】図5(A)、図5(B)は送信周波数の時間的変化を説明する図。
【図6】擬似信号出力期間における動作を説明する図。
【図7】電圧分割回路の構成例。
【図8】ラダー抵抗回路のレイアウトの一例。
【図9】集積回路装置の一例。
【図10】電子機器の一例。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0034】
本実施形態の送信回路によれば、送信データ出力開始時に生ずる送信信号の周波数シフト等を防止することができる。以下では、始めに本実施形態の送信回路の構成について説明し、次に本実施形態の送信回路の動作について説明する。最後に本実施形態の送信回路を含む集積回路装置及び電子機器について説明する。
【0035】
1.送信回路
図1に本実施形態の送信回路の基本的な構成例を示す。本実施形態の送信回路100は、PLL(Phase-Locked Loop)回路110、変調用制御電圧生成回路120、制御回路130、基準クロック生成回路160及びパワーアンプ210を含む。なお、本実施形態の送信回路100は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0036】
PLL回路110は、位相比較器170、ループフィルター180、電圧制御発振回路190、分周器200及びスイッチ素子SWAを含み、搬送波の周波数の信号を生成する。
【0037】
変調用制御電圧生成回路120は、D/A変換器140及びフィルター部150を含む。変調用制御電圧生成回路120は、送信データDTXに基づいて、電圧制御発振回路190の変調用制御電圧信号入力ノードNBに対して、変調用制御電圧信号VMを出力する。
【0038】
変調用制御電圧生成回路120は、送信データ出力期間の前の擬似信号出力期間に、擬似制御電圧信号を変調用制御電圧信号VMとして出力する。これは後述するように、送信データ出力期間の開始時の送信信号の周波数シフトを防止するためである。
【0039】
スイッチ素子SWAは、位相比較器170とループフィルター180との間に設けられ、擬似信号出力期間ではオン状態であり、送信データ出力期間ではオフ状態である。
【0040】
D/A変換器140は、送信データDTXをデジタル値からアナログ値に変換し、フィルター部150はD/A変換器140の出力に対してフィルター処理を行う。フィルター部150のゲインは、擬似信号出力期間におけるゲインが送信データ出力期間におけるゲインよりも小さく設定される。
【0041】
D/A変換器140は、擬似信号出力期間において、送信データ出力期間には出力されない擬似信号出力用の中心電圧信号を出力してもよい。変調用制御電圧生成回路120は、擬似信号出力期間において、中心電圧信号を上記の擬似制御電圧信号として出力する。
【0042】
また、D/A変換器140は、疑似信号出力期間において、送信データ出力期間に出力される複数の電圧信号のいずれかの電圧信号を出力してもよい。
【0043】
制御回路130は、送信データDTXを変調用制御電圧生成回路120に供給する。また、制御回路130は擬似信号出力期間に擬似データを出力してもよい。変調用制御電圧生成回路120は、この擬似データに基づいて上記の擬似制御電圧信号を出力する。この擬似データは、後述するように論理レベルを連続的にトグルしたデータである。
【0044】
基準クロック生成回路160は、基準クロックを生成して位相比較器170に出力する。パワーアンプ(PA)210は、電圧制御発振回路190の出力信号を増幅し、アンテナ220に供給する。
【0045】
図2に本実施形態の電圧制御発振回路190の詳細な構成例を示す。本構成例の電圧制御発振回路190は、搬送周波数制御用のバラクター及び周波数変調用のバラクターを含むLCタンク型電圧制御発振回路(LC−VCO:Voltage Controlled Oscillator)である。具体的には、2つのN型トランジスターT1、T2と、2つのP型トランジスターT3、T4と、2つのインダクター(コイル)L1、L2と、搬送周波数制御用バラクターC1、C2と、周波数変調用バラクターC3、C4と、電流源ISとを含む。
【0046】
インダクターL1、L2及び搬送周波数制御用バラクターC1、C2は、LC共振回路230を構成し、バラクターC1、C2に印加される電圧を変化させることでC1、C2の容量値を変化させ、発振周波数(搬送波の周波数)を制御する。搬送周波数制御電圧信号入力ノードNAには、ループフィルター180から搬送周波数を制御するための搬送周波数制御電圧信号VFが入力され、この電圧がバラクターC1、C2に印加される。
【0047】
周波数変調用バラクターC3、C4は、搬送周波数制御用バラクターC1、C2より小さい容量値を持ち、変調回路240を構成する。バラクターC3、C4に印加される電圧を変化させることでC3、C4の容量値を変化させ、その結果発振周波数が変化することで周波数変調を行う。変調用制御電圧信号入力ノードNBには、変調用制御電圧生成回路120から変調用制御電圧信号VMが入力され、この電圧がバラクターC3、C4に印加される。出力ノードNQからは、出力信号が分周器200及びパワーアンプ210に出力される。
【0048】
なお、本実施形態の電圧制御発振回路190は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えばN型トランジスターT1、T2を省略したり、逆にP型トランジスターT3、T4を省略したり、或いは電流源ISを高電位側電源ノードVDDとT3、T4のソースとの間に設けてもよい。
【0049】
図3(A)、図3(B)に電圧制御発振回路190の制御電圧と発振周波数との関係の一例を示す。図3(A)は、搬送周波数制御電圧VFと発振周波数との関係を示したものであって、例えば制御電圧が0.8Vの場合に発振周波数は2430MHzになる(図3(A)のA1)から、所望の搬送周波数が2430MHzである場合には、搬送周波数制御電圧を0.8Vに設定すればよい。
【0050】
図3(B)は、変調用制御電圧VMと発振周波数との関係を示したものである。例えば変調用制御電圧VMが0.68Vの場合に発振周波数は2429.5MHzであり(図3(B)のA2)、また変調用制御電圧VMが0.96Vの場合に発振周波数は2430.5MHzである(図3(B)のA3)。したがって、変調用制御電圧VMを0.68Vから0.96Vまでの間で変化させることで、搬送周波数である2430MHzを中心周波数として上側に500kHz、下側に500kHzだけシフトする周波数変調(FSK変調)が実現される。すなわち搬送周波数2430MHzに対して変調周波数fmを1MHzとする周波数変調が行われる。
【0051】
なお、図3(A)、図3(B)に示した制御電圧と発振周波数との関係は一例であって、バラクターC1〜C4の特性、インダクターL1、L2のインダクタンス値などに依存する。
【0052】
図4にループフィルター180の構成例を示す。ループフィルター180は、キャパシターCA、CB、抵抗素子RB、スイッチ素子SWB及びオペアンプOPAを含む。スイッチ素子SWBは、スイッチ素子SWAと同様の動作をする。すなわち搬送周波数設定期間にはオン状態であり、送信データ出力期間にはオフ状態である。搬送周波数設定期間では、ループフィルター180はキャパシターCA、CB及び抵抗素子RBから成るローパスフィルターとして動作し、送信データ出力期間では、キャパシターCAにより搬送周波数制御電圧信号VFの電圧が保持される。オペアンプOPAはボルテージフォロワーとして動作し、入力電圧と等しい電圧を出力する。
【0053】
2.送信回路の動作
以下では、始めに送信回路100の基本的な動作を説明し、次に従来の送信回路の問題について説明し、その後に本実施形態の送信回路100の動作の特徴を説明する。
【0054】
本実施形態のPLL回路110の動作は2つの動作に分けられる。第1の動作(第1のモード)はクローズループの動作(モード)であって、搬送周波数設定期間ではこの動作が行われる。この動作により、電圧制御発振回路190の発振周波数が、所望の搬送周波数(例えば2430MHz)に設定される。第2の動作(第2のモード)はオープンループの動作(モード)であって、送信データ出力期間ではこの動作が行われる。この動作により、変調用制御電圧VMに基づいて周波数変調が行われる。
【0055】
まず、第1の動作について図1を用いて説明する。この動作の期間では、スイッチ素子SWAはオン状態である。第1の動作の始めに、電圧制御発振回路190の搬送周波数制御電圧信号入力ノードNAに初期電圧値が設定され、電圧制御発振回路190はこの初期電圧値により定まる発振周波数で発振を開始する。電圧制御発振回路190の出力信号VOは分周器200で分周され、分周された信号VDは位相比較器170に入力される。
【0056】
位相比較器170では、基準クロック生成回路160から入力される基準クロック信号VCKと分周された信号VDとの位相が比較される。具体的には、VDの周波数がVCKの周波数よりも高い場合には、VDの位相はVCKの位相より速くなり、位相比較器170は出力信号VPとして初期電圧値よりも低い電圧を出力する。ループフィルター180は、位相比較器170の出力信号VPに含まれる高周波成分を除去して低周波成分のみを搬送周波数制御電圧信号VFとして電圧制御発振回路190に供給する。VFが始めに設定された初期電圧値からより低い電圧値に変化したことにより、電圧制御発振回路190の発振周波数は始めに設定された発振周波数よりも低い周波数に変化する。
【0057】
一方、VDの周波数がVCKの周波数よりも低い場合には、VDの位相はVCKの位相より遅くなり、位相比較器170は出力信号VPとして初期電圧値よりも高い電圧を出力する。その結果、ループフィルター180を通過して電圧制御発振回路190に供給される搬送周波数制御電圧信号VFは、始めに設定された初期電圧値からより高い電圧値に変化し、発振周波数は始めに設定された発振周波数よりも高い周波数に変化する。
【0058】
以上の動作を繰り返すことにより、最終的に発振周波数は基準クロックVCKの周波数のN倍(Nは分周器200の分周比)の周波数に設定される。この最終的に設定された周波数が所望の搬送周波数となる。温度や電源電圧の変動により発振周波数が所望の搬送周波数からシフトした場合には、位相比較器170がそのシフトに応じた電圧を出力することで、再び所望の搬送周波数に設定される。
【0059】
以上説明したように、搬送周波数設定期間では、PLL回路110の第1の動作(クローズループの動作)によって電圧制御発振回路190の発振周波数(出力信号VOの周波数)が所望の搬送周波数に設定される。
【0060】
次に第2の動作について図1を用いて説明する。第2の動作はオープンループの動作であって、この動作の期間では、スイッチ素子SWAはオフ状態である。第1の動作で設定された搬送周波数制御電圧信号VFの電圧(搬送周波数に対応する制御電圧)は、ループフィルター180により保持されて、電圧制御発振回路190に入力される。したがって第2の動作の期間においても、変調を行わない場合、すなわち変調用制御電圧信号VMの電圧が一定である場合には、出力信号VOの周波数は設定された搬送周波数を保持する。
【0061】
変調用制御電圧生成回路120は、制御回路130からの送信データDTXに基づいて、電圧制御発振回路190の変調用制御電圧信号入力ノードNBに対して、変調用制御電圧信号VMを出力する。具体的には、例えば送信データDTXは3bitのデジタル値であって、このデジタル値をD/A変換器140により8レベルのアナログ値(電圧値)に変換し、さらにフィルター部150で不要な高周波成分を除去して、変調用制御電圧信号VMとして出力する。
【0062】
電圧制御発振回路190の発振周波数は、変調用制御電圧信号VMの電圧変化に応じて変化する。したがって、例えばVMの電圧変化の下限値を図3(B)のA2に示すように設定し、またVMの電圧変化の上限値を図3(B)のA3に示すように設定することで、所望の変調周波数fmで周波数変調を行うことができる。なお、この第2の動作はオープンループの動作であるから、分周器200および位相比較器170は上記の変調動作に影響を与えない。
【0063】
以上説明したように、送信データ出力期間では、PLL回路110の第2の動作(オープンループの動作)により、変調用制御電圧信号VMに基づいて周波数変調が行われる。
【0064】
図5(A)、図5(B)は、上述した搬送周波数設定期間TSF及び送信データ出力期間TDXにおける送信周波数の時間的変化を説明する図である。図5(A)に示すように、搬送周波数設定期間TSFにおいて、送信周波数は所望の搬送周波数f0に設定される。そして搬送周波数設定期間TSFの後に続く送信データ出力期間TDXにおいて、変調周波数fmで周波数変調された送信信号が出力される。
【0065】
従来の送信回路では、図5(A)に示すように、送信データ出力期間TDXの開始時において送信信号の周波数シフトfsが生じることがあった。図5(B)は、周波数シフトfsが生じた場合の送信信号の周波数スペクトルを示したものである。このような周波数シフトが発生した場合には、所望の搬送周波数でデータが送信されないため、受信機がデータを復調することができなくなるおそれがある。また、周波数シフトが大きくなった場合には、他の周波数チャンネルまで影響を及ぼし、そのチャンネルを使用して通信を行っている機器も正常な通信ができなくなるおそれがある。
【0066】
この周波数シフトが生じる原因は、搬送周波数設定期間TSFにおいて、変調用制御電圧信号VMの電圧が中心電圧(搬送周波数に対応する電圧)に設定されていないためである。
【0067】
具体的には、例えば図3(B)に示したように、所望の搬送周波数が2430MHzであって、それを中心に上側に500kHz、下側に500kHzシフトする周波数変調を行う場合には、変調用制御電圧VMを0.68Vから0.96Vまでの間で変化させる。すなわち送信データ出力期間TDXでは、変調用制御電圧VMは0.68Vから0.96Vまでの間で変化する。一方、搬送周波数設定期間TSFでは、送信周波数を中心周波数(搬送周波数)である2430MHzに設定するために、変調用制御電圧VMを0.68V及び0.96Vの中心電圧である0.82Vに設定しておく必要がある。
【0068】
しかしながら変調用制御電圧信号VMは、デジタル値である送信データDTXをD/A変換器140によりアナログ値に変換することで生成しているために、中心電圧を出力することができない。例えば送信データDTXが3bitのデジタル値である場合には、D/A変換器140により最小値000から最大値111までの8レベルに対応する電圧が出力されるが、これら8レベルの中心電圧は出力されない。
【0069】
本実施形態の送信回路100では、搬送周波数設定期間TSFの期間内に擬似信号出力期間TPXをさらに設けることで上記の問題を解決する。すなわち擬似信号出力期間TPXでは、変調用制御電圧信号VMとして擬似制御電圧信号が出力される。この擬似制御電圧信号は、制御回路130が擬似信号出力期間TPXにおいて出力する擬似データに基づいて、変調用制御電圧生成回路120が生成する。この擬似データは、論理レベルを連続的にトグルしたデータである。また、フィルター部150のゲインは、擬似信号出力期間TPXにおけるゲインが送信データ出力期間TDXにおけるゲインよりも小さく設定される。なお、フィルター部150のゲインの設定動作は、制御回路130により行うことができる。
【0070】
図6は擬似信号出力期間TPXにおける動作を説明する図である。擬似信号出力期間TPXでは、電圧値が高レベルと低レベルとの間を交互に遷移し、すなわち論理レベルが連続的にトグルし、且つ送信データ出力期間TDXよりも小さい振幅を有する変調用制御電圧VMにより変調動作が行われる。つまり擬似信号出力期間TPXでは、送信データ出力期間TDXよりも小さい周波数偏差で、上側周波数と下側周波数との間を交互に遷移する周波数変調が行われる。変調周波数偏差が十分小さい場合には、PLL回路110のクローズループ動作に与える影響は無視できるから、図6に示すように、最終的に送信周波数は所望の搬送周波数f0に設定される。そして送信データ出力期間TDXの開始時には、擬似信号出力期間TPXで設定された搬送周波数を中心として周波数変調が開始されるから、送信周波数シフトは発生しない。
【0071】
なお、図6では、擬似信号出力期間TPXにおける変調は周波数の変化が小さいので、その周波数の変化は図示していない。また図6では、搬送周波数設定期間TSFの途中から擬似信号出力期間TPXが開始されるが、搬送周波数設定期間TSFの開始直後から擬似信号出力期間TPXが開始されてもよい。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の送信回路100によれば、擬似信号出力期間TPXを設けることにより、送信データ出力期間TDXの開始時の周波数シフトを防止することができる。
【0073】
3.D/A変換器の構成例
本実施形態の送信回路100では、上述した擬似信号出力期間TPXにおいて擬似データによる周波数変調を行うのではなく、D/A変換器140から中心電圧信号を出力し、これを擬似制御電圧信号として用いることもできる。すなわちD/A変換器140は、擬似信号出力期間TPXにおいて、送信データ出力期間TDXには出力されない擬似信号出力用の中心電圧信号を出力し、変調用制御電圧生成回路120は、擬似信号出力期間TPXにおいて、中心電圧信号を擬似制御電圧信号として出力する。このようにすることで、擬似信号出力期間TPXにおいて設定された搬送周波数を中心周波数として周波数変調が行われるから、送信データ出力期間TDXの開始時の周波数シフトを防止することができる。
【0074】
また上記の中心電圧信号を用いる場合であっても、スイッチSWAを切り替えるタイミング等により周波数シフトが発生することがある。例えば製造工程上のばらつきにより、スイッチSWAのスイッチングのタイミングが早くなる場合や遅くなる場合がある。このような場合には、D/A変換器140の出力信号の電圧が中心電圧からずれることがあり、その結果、周波数シフトが生じる。この周波数シフトを抑えるために、D/A変換器140は、疑似信号出力期間に中心電圧信号を出力せず、この周波数シフトを打ち消すように、送信データ出力期間に出力される複数の電圧信号のいずれかの電圧信号を出力してもよい。そして変調用制御電圧生成回路120は、擬似信号出力期間TPXにおいて、D/A変換器140からの電圧信号を擬似制御電圧信号として出力してもよい。
【0075】
D/A変換器140は、電圧分割回路を含み、送信データ出力期間TDXにおいて、電圧分割回路の複数の送信データ用タップのいずれかから電圧信号が出力される。また擬似信号出力期間TPXにおいて、電圧分割回路の中心電圧信号用タップから中心電圧信号が出力される。
【0076】
具体的には、電圧分割回路は、複数のユニット抵抗素子を含むラダー抵抗回路である。ユニット抵抗素子は、D/A変換器140の入力データ(送信データDTX)の1LSBに相当する電圧を生成する抵抗値の1/2の抵抗値を有し、高電位側電源ノードVDD(広義には第1の電源ノード)と低電位側電源ノードVSS(広義には第2の電源ノード)との間に直列に接続される。
【0077】
図7に電圧分割回路の構成例を示す。図7の構成例は、送信データDTXが3bitの場合であって、送信データ用タップから3bitのデジタル値に対応する8レベルの電圧信号V1〜V8のいずれかが選択されて出力される。さらに擬似信号出力期間TPXでは、中心電圧信号用タップから中心電圧信号VCが選択されて出力される。
【0078】
図7に示すように、ラダー抵抗回路(電圧分割回路)は、第1〜第3の抵抗回路250、260、270を含む。第1の抵抗回路250は、高電位側電源ノードVDD(広義には第1の電源ノード)と第1の抵抗分割ノードN1との間に設けられる。第2の抵抗回路260は、第1の抵抗分割ノードN1と第8の抵抗分割ノードN8(広義には第n(nは2以上の偶数)の抵抗分割ノード)との間に設けられる。第3の抵抗回路270は、第8の抵抗分割ノードN8(広義には第n(nは2以上の偶数)の抵抗分割ノード)と低電位側電源ノードVSS(広義には第2の電源ノード)との間に設けられる。
【0079】
第2の抵抗回路260を構成する抵抗素子R1〜R7は、複数のユニット抵抗素子を含む。例えば第1の抵抗素子R1は2つのユニット抵抗素子R1a、R1b(図示せず)を含み、第2の抵抗素子R1は2つのユニット抵抗素子R2a、R2b(図示せず)を含み、以下同様である。なお、第4の抵抗素子R4を構成するユニット抵抗素子R4a、R4bの中間ノードNCから、中心電圧VCが出力される。また図7には示していないが、第1、第3の抵抗回路250、270も、それぞれ複数のユニット抵抗素子で構成される。
【0080】
複数のユニット抵抗素子のうちの少なくとも中心電圧信号生成用のユニット抵抗素子、すなわち第4の抵抗素子R4を構成するユニット抵抗素子R4a、R4bは、D/A変換器140の入力データ(送信データDTX)の1LSBに相当する電圧を生成する抵抗値の1/2の抵抗値を有する。望ましくは、全てのユニット抵抗素子は、上記の1LSBに相当する電圧を生成する抵抗値の1/2の抵抗値を有する。このようにすることで、ラダー抵抗回路を同一サイズで同一構造のユニット抵抗素子のみで構成することができるから、プロセス工程上のばらつきの影響を低減することができ、各抵抗素子の抵抗値の精度を高めることができる。
【0081】
図8は、ラダー抵抗回路のレイアウトの一例を模式的に示したものである。図8に示すレイアウト例は、35個のユニット抵抗素子を配置したものである。ラダー抵抗回路が配置される領域の外周領域280には、第1の抵抗回路250及び第3の抵抗回路270を構成する複数のユニット抵抗素子が配置される。また外周領域の内側領域290には、第2の抵抗回路260を構成する複数のユニット抵抗素子が配置される。抵抗値の要求精度が低い第1、第3の抵抗回路250、270を外周領域280に配置し、より要求精度が高い第2の抵抗回路260を内側領域290に配置することで、通常のレイアウトの場合に外周領域に配置されるダミー抵抗素子を省略あるいは削減することができる。その結果、ラダー抵抗回路のレイアウトに必要な面積を縮小することができる。
【0082】
以上説明したように、本実施形態の送信回路100によれば、擬似信号出力期間TPXにおいて、中心電圧信号を擬似制御電圧信号として出力することにより、送信データ出力期間TDXの開始時の周波数シフトを防止することができる。
【0083】
以上では、中心電圧信号を出力することで周波数シフトを防止する手法について説明した。しかし、中心電圧信号を用いる場合であっても、スイッチSWAを切り替えるタイミング等により周波数シフトが発生することがある。その場合には、周波数シフトを抑えるために、D/A変換器140は、疑似信号出力期間TPXに中心電圧信号を出力せず、この周波数シフトを打ち消すように、送信データ出力期間TDXに出力される複数の電圧信号のいずれかの電圧信号を出力してもよい。
【0084】
具体的には、疑似信号出力期間TPXにおいて、図7に示す中心電圧信号用タップNC以外のタップ、すなわち複数の送信データ用タップN1〜N8のいずれかが選択されてもよい。例えば周波数シフトが正方向(高い周波数の方向)である場合は、それを打ち消すように中心電圧より低い電圧信号を出力するタップN5〜N8のいずれかが選択される。一方、周波数シフトが負方向(低い周波数の方向)である場合は、それを打ち消すように中心電圧より高い電圧信号を出力するタップN1〜N4のいずれかが選択される。このようにすれば、変調用制御電圧生成回路120は、擬似信号出力期間TPXにおいて、周波数シフトを打ち消す電圧を有する擬似制御電圧信号を出力することができる。その結果、スイッチSWAの切り換えのタイミング等に起因する周波数シフトを低減することができる。
【0085】
4.集積回路装置
図9に、本実施形態の送信回路100を含む集積回路装置300(無線通信用LSI)の一例を示す。集積回路装置300は、送信回路100、受信回路310及び制御回路130を含む。受信回路310は、低雑音増幅器(LNA)320、周波数変換回路330、フィルター340、検出回路350、復調回路360を含む。
【0086】
低雑音増幅器(LNA)320は、アンテナ220から入力される受信信号を増幅する。周波数変換回路330は、受信周波数から中間周波数へ周波数変換を行う。フィルター340は、不要な周波数成分を除去して所望の信号を出力する。検出回路350は、フィルター340の出力信号を受けて所望波の信号強度を検出する。検出された信号強度に基づいて、低雑音増幅器(LNA)320の利得(ゲイン)が制御される。復調回路360は、所望波の信号を復調して必要なデータを取り出す。
【0087】
制御回路130は、送受信の制御処理や集積回路装置300の外部の回路(ホストなど)とのデータ通信を行う。具体的には、例えば制御回路130は、搬送周波数の設定処理、変調処理、復調処理などを行う。
【0088】
上述したように、本実施形態の送信回路100によれば、擬似信号出力期間を設けることにより、送信データ出力期間の開始時の周波数シフトを防止することができる。その結果、安定したデータ通信が短時間で可能になるから、送受信全体に要する時間を短縮することができ、また消費電力も低減することができる。さらに通信効率の向上により電波の有効活用に寄与することができる。
【0089】
5.電子機器
図10に、本実施形態の集積回路装置300を含む電子機器400の一例を示す。本実施形態の電子機器400は、集積回路装置300、センサー部410、A/D変換器420、記憶部430、ホスト440、操作部450を含む。
【0090】
電子機器400は、例えば温度・湿度計、脈拍計、歩数計等であって、検出したデータを無線により送信することができる。センサー部410は、温度センサー、湿度センサー、ジャイロセンサー、加速度センサー、フォトセンサー、圧力センサー等を含み、電子機器400の用途に応じたセンサーが用いられる。センサー部410は、センサーの出力信号(センサー信号)を増幅し、フィルターによりノイズを除去する。A/D変換器420は、増幅された信号をデジタル信号に変換して集積回路装置300へ出力する。ホスト440は、例えばマイクロコンピューター等で構成され、デジタル信号処理や或いは記憶部430に記憶された設定情報や操作部450からの信号に基づいて電子機器400の制御処理を行う。記憶部430は、例えばフラッシュメモリーなどで構成され、設定情報や検出したデータ等を記憶する。操作部450は、例えばキーパッド等で構成され、使用者が電子機器400を操作するために用いられる。
【0091】
本実施形態の送信回路100によれば、擬似信号出力期間を設けることにより、送信データ出力期間の開始時の周波数シフトを防止することができる。その結果、安定したデータ通信が短時間で可能になる。これにより消費電力を低減することができるから、電池駆動の電子機器を長時間動作させることが可能になる。
【0092】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(第1の電源ノード、第2の電源ノード等)と共に記載された用語(VDDノード、VSSノード等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また送信回路、集積回路装置及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0093】
100 送信回路、110 PLL回路、120 変調用制御電圧生成回路、
130 制御回路、140 D/A変換器、150 フィルター部、
160 基準クロック生成回路、170 位相比較器、180 ループフィルター、
190 電圧制御発振回路、200 分周器、210 パワーアンプ、
220 アンテナ、230 LC共振回路、240 変調回路、
250 第1の抵抗回路、260 第2の抵抗回路、270 第3の抵抗回路、
280 外周領域、290 内側領域、300 集積回路装置、310 受信回路、
320 低雑音増幅器、330 周波数変換回路、340 フィルター、
350 検出回路、360 復調回路、400 電子機器、410 センサー部、
420 A/D変換器、430 記憶部、440 ホスト、450 操作部、
DTX 送信データ、NA 搬送周波数制御電圧信号入力ノード、
NB 変調用制御電圧信号入力ノード、SWA スイッチ素子、
VCK 基準クロック信号、VF 搬送周波数制御電圧信号、
VM 変調用制御電圧信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧制御発振回路を有し、搬送波の信号を生成するPLL回路と、
送信データに基づいて、前記電圧制御発振回路の変調用制御電圧信号入力ノードに対して、変調用制御電圧信号を出力する変調用制御電圧生成回路と、
前記電圧制御発振回路の出力信号を増幅するパワーアンプとを含み、
前記変調用制御電圧生成回路は、送信データ出力期間の前の擬似信号出力期間に、擬似制御電圧信号を前記変調用制御電圧信号として出力することを特徴とする送信回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記送信データを前記変調用制御電圧生成回路に供給する制御回路を含み、
前記制御回路は、前記擬似信号出力期間に擬似データを出力し、
前記変調用制御電圧生成回路は、前記擬似データに基づいて前記擬似制御電圧信号を出力することを特徴とする送信回路。
【請求項3】
請求項2において、
前記擬似信号出力期間に前記擬似データに基づき出力される前記擬似制御電圧信号は、前記送信データ出力期間の開始時の送信信号の周波数シフトを防止するための信号であることを特徴とする送信回路。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記擬似データは、論理レベルを連続的にトグルしたデータであることを特徴とする送信回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記変調用制御電圧生成回路は、
前記送信データをデジタル値からアナログ値に変換するD/A変換器と、
前記D/A変換器の出力に対してフィルター処理を行うフィルター部とを含み、
前記フィルター部のゲインは、前記擬似信号出力期間におけるゲインが前記送信データ出力期間におけるゲインよりも小さくなるように設定されることを特徴とする送信回路。
【請求項6】
請求項1において、
前記変調用制御電圧生成回路は、前記送信データをデジタル値からアナログ値に変換するD/A変換器を含み、
前記D/A変換器は、前記擬似信号出力期間において、前記送信データ出力期間には出力されない擬似信号出力用の中心電圧信号を出力し、
前記変調用制御電圧生成回路は、前記擬似信号出力期間において、前記中心電圧信号を前記擬似制御電圧信号として出力することを特徴とする送信回路。
【請求項7】
請求項6において、
前記D/A変換器は、電圧分割回路を含み、
前記送信データ出力期間において、前記電圧分割回路の複数の送信データ用タップのいずれかから電圧信号が出力され、
前記擬似信号出力期間において、前記電圧分割回路の中心電圧信号用タップから前記中心電圧信号が出力されることを特徴とする送信回路。
【請求項8】
請求項1において、
前記変調用制御電圧生成回路は、前記送信データをデジタル値からアナログ値に変換するD/A変換器を含み、
前記D/A変換器は、前記擬似信号出力期間において、前記送信データ出力期間に出力される複数の電圧信号のいずれかの電圧信号を出力し、
前記変調用制御電圧生成回路は、前記擬似信号出力期間において、前記D/A変換器からの前記電圧信号を前記擬似制御電圧信号として出力することを特徴とする送信回路。
【請求項9】
請求項7又は8において、
前記電圧分割回路は、複数のユニット抵抗素子を含むラダー抵抗回路であり、
前記複数のユニット抵抗素子は、第1の電源ノードと第2の電源ノードの間に直列に設けられ、
前記複数のユニット抵抗素子のうちの少なくとも中心電圧信号生成用のユニット抵抗素子は、前記D/A変換器の入力データの1LSBに相当する電圧を生成する抵抗値の1/2の抵抗値を有することを特徴とする送信回路。
【請求項10】
請求項9において、
前記ラダー抵抗回路は、
前記第1の電源ノードと第1の抵抗分割ノードとの間に設けられる第1の抵抗回路と、
前記第1の抵抗分割ノードと第n(nは2以上の偶数)の抵抗分割ノードとの間に設けられる第2の抵抗回路と、
前記第nの抵抗分割ノードと前記第2の電源ノードとの間に設けられる第3の抵抗回路とを含み、
前記ラダー抵抗回路が配置される領域の外周領域には、前記第1の抵抗回路及び前記第3の抵抗回路を構成する複数のユニット抵抗素子が配置され、
前記外周領域の内側領域には、前記第2の抵抗回路を構成する複数のユニット抵抗素子が配置されることを特徴とする送信回路。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかにおいて、
前記PLL回路は、前記擬似信号出力期間ではクローズループの動作に設定され、前記送信データ出力期間ではオープンループの動作に設定されることを特徴とする送信回路。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかにおいて、
前記PLL回路は、
位相比較器と、
ループフィルターと、
前記位相比較器と前記ループフィルターとの間に設けられるスイッチ素子とを含み、
前記スイッチ素子は、前記擬似信号出力期間ではオン状態であり、前記送信データ出力期間ではオフ状態であることを特徴とする送信回路。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の送信回路を含むことを特徴とする集積回路装置。
【請求項14】
請求項13に記載の集積回路装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−109162(P2011−109162A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258837(P2009−258837)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】